【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、熱伝導材料の単一片から製造される熱交換器であって、流体を案内すると共に該流体と熱交換器との間で熱を伝達するためのフィンを備えている、熱交換器を提供することによって、この目的を達成することになる。この熱交換器において、フィン間に、横断フィン部が設けられており、横断フィン部は、フィン間の距離よりも短い距離にわたって、フィンを実質的に横切る方向に延在しており、かつ流体の流れ方向を実質的に横切る方向に延在しており、横断フィン部は、フィン間に流れる流体をフィン間の蛇行経路に追従させるために、互いに隣接するフィンに近接してまたは互いに隣接するフィン上に互い違いに配置されており、上記横方向は、フィンと実質的に直交している。
【0011】
好ましい実施形態では、熱交換器は、金属、例えば、アルミニウムの単一片から製造されている。従って、鋳造技術を利用することによって、この熱交換器を簡単に製造することができる。
【0012】
本発明によるこのような熱交換器を利用するのに際して、熱交換器のフィンは、流体の流れに配置されるのに極めて適している。この場合、フィンは、フィンの長軸が流体の流れ方向に位置するように、配置されるようになっている。従って、流体と熱交換器との間の接触面が拡大され、これによって、流体と熱交換器との間の熱伝達が高められることになる。
【0013】
フィン上に配置された横断フィン部によって、フィン間における流体が移動する経路が延びることが確実になる。加えて、フィン内の通路が狭くなり、その結果、フィン間における流体の流速が増大する。フィン間における流体が移動する経路が延びる効果および狭くなった通路によって流速が増大する効果は、概して、互いに相殺されることになる。しかし、驚いたことに、流体と熱交換器との間の熱交換の程度は、熱交換に有効な接触面の変化によるよりも、増大した流速によって、より強い影響を受けることになる。従って、熱交換器の全体的な大きさを変更することなく、高流速をもたらす横断フィン部を配置するために、フィンをさらに離間して配置し、これによって、接触面を低減させることがさらに有利であることが、見出されている。
【0014】
さらに有利な実施形態では、横断フィン部が設けられていない場合と比較して、流体の流速を増大させることによって、熱交換効果がさらに一層高められることが見出されている。ファンを用いて流速を高めることが有利である。横断フィン部を有することなく熱交換面がほぼ等しくなっている熱交換器と比較して、フィンが横断フィン部を備えている場合、フィン間の流体の滞留時間が短くなるにも関わらず、流体の流速がより増大することによって、より多量の熱が交換されることになる。
【0015】
さらに他の実施形態では、下流側の横断フィン部は、上流側におけるよりも2つの互いに隣接するフィン間の距離のより長い部分にわたって、延在している。下流側では、流体がさらに冷却され、流体が占める体積が縮小し、これによって、流速、従って、熱伝達が低下する可能性がある。この下流側では、横断フィン部をさらに延ばすことによって通路の大きさを縮小することによって、この流速低下の影響を補うことができ、その結果、より高い流速、従って、より高い熱伝達が維持されることになる。
【0016】
さらに他の実施形態では、本発明による熱交換器は、第2の流体を案内するための第1の導管をさらに備えている。この導管は、熱交換器の熱伝導材料の単一片内の引っ込んだ所に配置されている。第2の導管は、第2の流体をそれぞれ冷却および加熱するのに極めて適している。
【0017】
特定の好ましい実施形態では、熱交換器のフィンに沿って流れる第1の流体からの熱は、特にそれらのフィンを介して、熱交換器に伝達されるようになっている。フィンに近接して配置された横断フィン部は、単位流体量当たりの熱交換器への可能な最大熱量の伝達を可能とするために、流体と熱交換器との間のより大きな熱交換を担うものである。次いで、熱交換器は、この熱を導管内の第2の流体に伝達する。これによって、第1の流体から第2の流体への熱の間接的な伝達が、効率よく実現されることになる。
【0018】
特定の代替的な実施形態では、熱伝達の方向が、前述の実施形態において述べた方向と逆方向になっている。この場合、第1の導管を通流する第2の流体が、熱を熱交換器に放出するようになっている。次いで、熱交換器が、フィン間を流れる第1の流体を加熱することになる。
【0019】
さらに他の有利な実施形態では、横断フィン部は、フィン上に設けられており、これによって、フィンと横断フィン部との間に十分な熱接触がもたらされることになる。これによって、横断フィン部が熱交換器と第1の流体との間の接触面の拡大に貢献するという付加的な効果が得られる。
【0020】
さらに他の実施形態では、横断フィン部は、フィンを実質的に横切る方向に延在している。
【0021】
さらに他の実施形態では、本発明は、第3の流体を案内するための第2の導管をさらに備えている熱交換器を提供することになる。この導管は、熱交換器の熱伝導材料の単一片内の引っ込んだ所に配置されている。第2の導管の利点は、熱交換を3つの流体間で起こすことができることにある。有利に適用されるさらに特定の実施形態は、以下に述べるCH水と水道水の両方を加熱するためのコンビボイラーである。
【0022】
種々の実施形態において、熱交換器内の第1の導管および第2の導管は、種々の形態を取れるようになっている。これらの導管は、好ましくは、可能な最長の滞留時間を実現するために、熱交換器を通る可能な最長経路を画定している。これによって、良好な熱交換器が得られることになる。小型熱交換器を得るために、熱交換器を通る単一の直線通路としてではなく、曲管によって互いに接続された複数の直線通路として、または代替的に単一の湾曲通路として、導管を具体化すると、有利である。さらに、製造技術的な理由から、熱交換器の外側において曲管片によって互いに接続された複数の直線通路を実現することが一般的により簡単であるが、曲管は、熱交換器自体の内部に配置されていてもよい。
【0023】
好ましい実施形態では、本発明は、導管が第2の熱伝導材料の中空ガイドを含んでいる熱交換器を提供することになる。この中空ガイドは、熱交換器に実質的にぴったりと嵌合して収められている。例えば、中空ガイドとしてパイプを用いることによって、このような実施形態を製造することができる。次いで、例えば、このパイプを金型内に配置することによって、熱交換器がパイプの少なくとも一部の周りに鋳込まれる。具体的には、パイプを金型内に配置した後、例えば、パイプの融点よりも低い温度の溶融金属によって、金型を充填することによって、熱交換器が成形されることになる。このような方法によれば、導管の曲管を熱交換器内に配置することも容易である。
【0024】
特定の実施形態では、横断フィン部が、2つの互いに隣接するフィン間の距離の半分よりもかなり短い距離にわたって、フィン間の空間内に延在している熱交換器が提供されることになる。
【0025】
代替的な実施形態では、横断フィン部が、フィン間の空間において、互いに隣接するフィン間の真ん中の位置まで延在している熱交換器が提供されることになる。
【0026】
熱交換のための可能な最も大きい接触面をもたらすために、熱交換器は、可能な最も多くの数のフィンを備えていなければならない。しかし、所定の大きさの熱交換器において、フィンの数を増すと、その結果、フィンが互いにより近接して配置されることになり、これによって、フィン間の通路が、ますます狭くなる。もしフィン間の通路があまりにも狭くなると、フィン間の流体の貫流が悪影響を受ける。特に、流体が蒸気を含むガス混合物、例えば、燃焼ガスの場合、フィン間の通路があまりにも狭いと、フィン間における凝縮が流体の貫流を妨げることになる。加えて、フィンを有する熱交換器を製造するための選択された技術も、フィン間の距離を制限する。フィン間に横断フィン部を配置することが、この現象をさらに強めることになる。従って、所定の設計において、流体の良好な貫流をさらに保証するために、フィン間の最小距離が必要とされる。横断フィン部の存在によって、この最小距離は、大きくなる。横断フィン部がフィンを横切る方向により長く延びるにつれて、この最小距離もより大きくなる。このように、フィンが延在するこの距離は、実用上の理由からも制限されることになる。出願人は、試験によって、横断フィン部が延在している距離を除くフィン間の最小距離は、3mmであることを確認している。この場合、選択された射出成形技術が、制限因子であることが見出されている。しかし、距離が小さくなるにつれて、ある時点において、フィン間の流体の貫流が、悪影響を受けることになる。
【0027】
本発明による特定の実施形態では、水を加熱するための水加熱装置が提供されることになる。この水加熱装置は、熱を生じさせるための加熱要素と、加熱要素によって生じた熱を吸収するための熱交換器と、熱交換器内に鋳込まれた流体用の導管の供給側に接続された供給接続手段であって、水用の供給導管に接続されることが可能になっている、供給接続手段と、熱交換器内に鋳込まれた流体用の導管の排出側に接続された排出接続手段であって、加熱された水用の排出導管に接続されることが可能になっている、排出接続手段と、を備えている。例示的な実施形態では、加熱要素は、ガスを燃焼するバーナから構成されている。高温燃焼ガスが、熱交換器に沿って、具体的にはフィン間で案内され、これによって、この高温燃焼ガスが熱をフィン、従って、熱交換器に放出することになる。供給接続手段に接続された水供給源が水を熱交換器内の導管に供給するようになっている。熱交換器からの熱が、導管内の水を加熱する。次いで、加熱された水は、排出接続手段に接続された排出部を介して熱交換器内の導管から流出することになる。
【0028】
さらに特定の実施形態では、水加熱装置は、水道水用の温水加熱器から構成されている。他の実施形態では、水加熱装置は、セントラルヒーティング用のCH水を加熱するためのCHボイラーから構成されている。
【0029】
さらに他の実施形態では、本発明は、水道水およびCH水を加熱するためのコンビボイラーを提供することになる。このコンビボイラーは、温水加熱器を備えている。温水加熱器は、熱交換器を備えており、この熱交換器では、第1の導管が水道水を案内するために設けられており、第2の導管がCH水を案内するために設けられている。この実施形態は、極めて有利である。何故なら、先行技術によるコンビボイラーは、一般的に、熱交換器によって吸収された熱がCH水の加熱または水道水の加熱のいずれに用いられるかを選択するために、三方弁を利用しているからである。CH水用の導管と共に水道水用の導管を熱交換器に設けることによって、三方弁を省略することができ、CH水用および水道水の両方を同時に加熱することができる。
【0030】
本発明のさらに他の態様によれば、熱交換器を製造するための方法が提供されることになる。この方法は、熱伝導材料の単一片から熱交換器を製造するための金型を設けることを含んでいる。金型は、流体を案内することを目的として鋳込まれることになる導管の供給部を受け入れるための開口と、流体を案内することを目的として鋳込まれることになる導管の排出部を受け入れるための開口と、を少なくとも備えている。金型は、熱交換器上にフィンを一体成形するための凹部を備えている。フィン用の凹部は、フィン上にまたはフィンに近接して横断フィン部を成形するための凹部を同様に備えており、横断フィンは、フィン間の距離よりも短い距離にわたって、フィンを実質的に横切る方向に延在するようになっており、かつ成形されることになるフィン間を流れることが可能な流体の予想される流れ方向を実質的に横切る方向に延在するようになっている。横断フィン部は、互いに隣接して成形されることになるフィン間を流れる流体をフィン間の蛇行経路に追従させるために、成形されることになるフィンに近接してまたは該フィン上に互い違いに配置されるようになっている。上記横方向は、フィンと実質的に直交するようになっている。さらに、この方法は、流体を案内するための導管を金型内に配置することであって、導管の供給部が、供給部用の金型の開口に受け入れられ、導管の排出部が、排出部用の金型の開口に受け入れられる、ことと、除去可能な実質的に非圧縮性のコアを流体用の導管内に配置することと、少なくとも一種の熱伝導材料または金型内において熱伝導材料に少なくとも変換可能な材料によって、金型を充填することと、熱伝導材料の単一片から作製される熱交換器を得るために、金型の充填物を処理することと、熱交換器から金型を取り外すことと、流体用導管からコアを除去することと、を含んでいる。
【0031】
この方法を具体化する適切なプロセスとして、例えば、本発明による熱交換器を成形するための射出成形プロセスが挙げられる。このプロセスでは、溶融金属、例えば、溶融アルミニウムが、例えば、銅からなる導管が配置された金型内に加圧下で導入されるようになっている。この液体金属が金型内で凝固し、これによって、熱交換器がその形状を呈し、横断フィン部を有するフィンが金型の形状によって形成されることになる。
【0032】
この方法の他の適切なプロセスでは、射出成形ではなく、むしろ大気圧下の鋳造が用いられるようになっている。本発明による方法が、金型を用いて熱交換器を成形するどのようなプロセスに適用されてもよいことが、当業者には明らかであろう。例えば、金型を粒状物によって充填し、その後、金型内の粒状物を該粒状物の溶融温度に至らせることも考えられる。ここでも、冷却および凝固の後、単一片から作製されたフィンおよび横断フィン部を有する熱交換器が得られることになる。代替的に、2つの物質が金型内に導入されてもよく、これらの物質が、任意選択的に、例えば、熱処置のようなさらなる処理の後、互いに反応し、これによって、本発明の熱交換器が得られるようになっていてもよい。
【0033】
以下、添付の図面を参照して、本発明のさらに他の実施形態およびさらに他の利点が提示されることになる。