(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5680319
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】手摺
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20150212BHJP
【FI】
E04F11/18
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-68888(P2010-68888)
(22)【出願日】2010年3月24日
(65)【公開番号】特開2011-202376(P2011-202376A)
(43)【公開日】2011年10月13日
【審査請求日】2012年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】丸岡 大地
(72)【発明者】
【氏名】笠原 康貴
【審査官】
西村 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−240309(JP,A)
【文献】
実開平04−101431(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手摺材と、手摺子と、手摺材と手摺子を連結する連結部材を備え、連結部材は、手摺材に回動可能に連結してあるとともに、手摺子の上端部に固定してあり、且つ手摺材に取付けた状態で手摺子との固定及び解除ができるものであり、手摺子との固定を解除して回動させることで連結部材が手摺子と分離することを特徴とする手摺。
【請求項2】
連結部材は、手摺材の長手方向に直交する水平な軸回りに回動可能であることを特徴とする請求項1記載の手摺。
【請求項3】
手摺材と、手摺子と、手摺材と手摺子を連結する連結部材を備え、連結部材は、手摺材に回動可能に連結してあるとともに、手摺子の上端部に固定してあり、手摺子との固定を解除して回動させることで連結部材が手摺子と分離するものであり、連結部材は、手摺子の軸心からずれた位置にある垂直な軸回りに回動可能に設けてあることを特徴とする手摺。
【請求項4】
手摺材と、手摺子と、手摺材と手摺子を連結する連結部材を備え、連結部材は、手摺材に回動可能に連結してあるとともに、手摺子の上端部に固定してあり、手摺子との固定を解除して回動させることで連結部材が手摺子と分離するものであり、連結部材は、手摺材の長手方向と平行な軸回りに回動可能に設けてあることを特徴とする手摺。
【請求項5】
手摺材と、手摺子と、手摺材と手摺子を連結する連結部材を備え、連結部材は、手摺材に回動可能に連結してあるとともに、手摺子の上端部に固定してあり、手摺子との固定を解除して回動させることで連結部材が手摺子と分離するものであり、連結部材は、手摺子の軸心からずれた位置にあり且つ手摺材の長手方向と平行な軸回りに回動可能に設けてあることを特徴とする手摺。
【請求項6】
連結部材と手摺子との間にスペーサーを設けてあることを特徴とする請求項1,2,3,4又は5記載の手摺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段等に設けられる手摺材と手摺子とを備えた手摺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の階段等の手摺として、手摺材と手摺子とを溶接や釘等で一体化したものがあり、そのような手摺のデザインを変更するには全体を交換する必要があり、それには多大な費用と手間がかかる。
特許文献1には、階段の踏み板に手摺子12を起立して設け、手摺子12の上端部に連結部材を介して手摺材1を架設した階段用の手摺が記載されている。連結部材は、特許文献1の第4,5図に示されているように、手摺材1の下面に当接してネジ止めされる取付板8の下方に略球形の受体6を有すると共に、受体6にねじ軸4が横軸15で回動自在に連結されており、手摺子の上端部に埋め込んだナット3に連結部材のねじ軸4をねじ込み、且つ手摺子の上端部に取付けたキャップ5の上面のくぼみに受体6を当接して、手摺子と手摺材とを連結している。
このような手摺において手摺子は、木材を削ったり金属の鋳物で一体成形するなどして装飾性を持たせているが、後から手摺子のデザインを変更したい場合には、手摺子を取外して交換するしかなかった。上述のように、手摺子と手摺材との連結部材は、ねじ軸4を手摺子12に上方からねじ込んでいるため、手摺材1を取外さなければ連結部材を手摺子12から分離することができず、そのため手摺子の交換さえ簡単に行えない。
また、手摺子12に飾りを取付けて装飾することが考えられるが、上述のような手摺では手摺材1を取外さなければ連結部材を手摺子12から分離できず、手摺子12に上方から飾りを嵌めることができないので、後から手摺子に飾りを取付けるのは容易ではなく、誰にでも行えるような作業ではなかった。したがって、手摺のデザインを変えるには大変手間と費用がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−194256号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、手摺子に後から飾りを取付けることで簡単にデザインを変更できる手摺の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による手摺は、手摺材と、手摺子と、手摺材と手摺子を連結する連結部材を備え、連結部材は、手摺材に回動可能に連結してあるとともに、手摺子の上端部に固定してあり、
且つ手摺材に取付けた状態で手摺子との固定及び解除ができるものであり、手摺子との固定を解除して回動させることで連結部材が手摺子と分離することを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明による手摺は、請求項1記載の発明の構成に加え、
連結部材は、手摺材の長手方向に直交する水平な軸回りに回動可能であることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明による手摺は、
手摺材と、手摺子と、手摺材と手摺子を連結する連結部材を備え、連結部材は、手摺材に回動可能に連結してあるとともに、手摺子の上端部に固定してあり、手摺子との固定を解除して回動させることで連結部材が手摺子と分離するものであり、連結部材は、手摺子の軸心からずれた位置にある垂直な軸回りに回動可能に設けてあることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明による手摺は、
手摺材と、手摺子と、手摺材と手摺子を連結する連結部材を備え、連結部材は、手摺材に回動可能に連結してあるとともに、手摺子の上端部に固定してあり、手摺子との固定を解除して回動させることで連結部材が手摺子と分離するものであり、連結部材は、手摺材の長手方向と平行な軸回りに回動可能に設けてあることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明による手摺は、
手摺材と、手摺子と、手摺材と手摺子を連結する連結部材を備え、連結部材は、手摺材に回動可能に連結してあるとともに、手摺子の上端部に固定してあり、手摺子との固定を解除して回動させることで連結部材が手摺子と分離するものであり、連結部材は、手摺子の軸心からずれた位置にあり且つ手摺材の長手方向と平行な軸回りに回動可能に設けてあることを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明による手摺は、
請求項1,2,3,4又は5記載の発明の構成に加え、連結部材と手摺子との間にスペーサーを設けてあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明による手摺は、手摺材と手摺子を連結する連結部材が、手摺材に回動可能に連結してあるとともに、手摺子の上端部に固定してあり、手摺子との固定を解除して回動させることで連結部材が手摺子と分離するため、手摺材及び連結部材を取外すことなく、連結部材の手摺子との固定を解除するだけで手摺子に上方からリング状の飾りを嵌めることができ、これにより手摺子のデザインを簡単に変更することができる。
【0012】
請求項2記載の発明による手摺は、
連結部材を手摺材の長手方向に直交する水平な軸回りに回動可能に設けたことで、手摺材の角度の違いに対応できる。
【0013】
請求項3記載の発明による手摺は、
連結部材を手摺子の軸心からずれた位置にある垂直な軸回りに回動可能に設けたので、連結部材を回動させる際に連結部材が手摺子と干渉せずに容易に回動させられ、また回動させると連結部材が手摺子と分離し、手摺子に飾りを嵌めるのが容易である。
【0014】
請求項4記載の発明による手摺は、
連結部材を手摺材の長手方向と平行な軸回りに回動可能に設けたので、手摺子との固定を解除して連結部材を回動させると連結部材が手摺子と分離し、手摺子に上方からリング状の飾りを嵌めることができる。また、連結部材が手摺材の長手方向と平行な軸回りに回動可能に設けてあることで、手摺材の配置位置を調節することができる。
【0015】
請求項5記載の発明による手摺は、
連結部材の回動軸が手摺子の軸心からずれた位置にあるため、連結部材の手摺子との固定を解除するのが容易であり、また連結部材を上向きに回動させることで、連結部材が手摺子と干渉するのを防ぐことができる。さらに、連結部材が手摺材の長手方向と平行な軸回りに回動可能に設けてあることで、手摺材の配置位置を調節することができる。
【0016】
請求項6記載の発明による手摺は、
連結部材と手摺子との間にスペーサーを設けてあるので、スペーサーを外すことで連結部材と手摺子との間に隙間ができるため、連結部材を回動させて手摺子と分離するのが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1-1】手摺子に飾りを後付けする際の手順を順に示す斜視図である。
【
図1-2】手摺子に飾りを後付けする際の手順(
図1−1の続き)を順に示す斜視図である。
【
図2】本発明の手摺の一実施形態を示す正面図である。
【
図3】(a)は
図2のA部拡大図であり、(b)は(a)のC−C断面図である。
【
図4】(a)は
図2のB部拡大図であり、(b)は(a)のD−D断面図である。
【
図5】同手摺の正面図であって、飾りの配置を変えてデザインを変更した例を示す。
【
図6】(a)は本発明の手摺の他の実施形態を示す正面図、(b)は同手摺の側面図である。
【
図7】(a)は連結部材の他の実施形態を示す正面図であり、(b)は(a)のE−E断面図である。
【
図9】(a)は連結部材のさらに別の実施形態を示す正面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図2〜4は、本発明の手摺の一実施形態であって、階段10に取付けた手摺の例を示している。本手摺は、階段10の側端部に沿って複数の手摺子2a,2b,2b,…が間隔をおいて鉛直に起立して設けてあり、手摺子2a,2b,2b,…の上端部に連結部材3を介して手摺材1が架設してある。手摺子2a,2bは、アルミの丸棒を使用しており、両端の手摺子2aは直径40mm、中間の手摺子2bは直径20mmと細くなっている。各手摺子2a,2bは、下端部を金具11とネジ12で階段10の踏み板上面に固定してある。手摺材1には木の丸棒を使用している。
【0019】
手摺材1には、
図3に示すように、連結部材3と繋ぐための連結ベース7が取付けてある。連結ベース7は、手摺材1の下方に垂下する連結部13と、連結部13より手摺材1の外周に沿って円弧状にのびる取付部14を有し、取付部14に斜め上向きにネジ15を手摺材1にねじ込み、手摺材1に固定してある。連結部材3は、平面視略円形のベース部16と、ベース部16より内側(通路側)に向けてのびる略L字形に曲がったアーム部17とを有しており、アーム部17の先端部外側に手摺材1に固定した連結ベース7の連結部13を当接し、内側からのネジ5(請求項3中の「手摺材の長手方向に直交する水平な軸」に相当)で連結ベース7と連結してある。よってネジ5を緩めると、連結部材3が手摺材1に対してネジ5を支点に回動自在となり、これにより本連結部材3は手摺材1の角度変化に対応できる。連結部材3のベース部16には、中心にボルト挿通孔18及びザグリ穴19が形成してあり、ベース部16の下面と手摺子2b上端面との間にスペーサー20を挟み、上方からベース部16に挿通した六角ボルト4のネジ部を手摺子2bの中心に設けてある孔21にねじ込んで、ベース部16を手摺子2bに固定している。アーム部17が内側に向けて設けてあることで、手摺材1は手摺子2bの軸心よりも内側にずれた位置に配置されており、そのため階段10を上り下りする人が手摺材1につかまりやすくなっている。
図3は、中間の細い手摺子2b用の連結部材3を示しているが、
図4に示すように、両端の太い手摺子2a用の連結部材3も、スペーサー20を違わせただけで、同一のものを使用している。
【0020】
図2に示すように、中間の手摺子2bには飾り6が取付けてあり、これにより手摺子2bにデザイン性をもたせている。飾り6は、
図1−2に示すように、手摺子2bの外周に嵌めるリング状のものであり、上部と下部に傾斜面部22を設け、上下端に向かうにつれて外径を細くしてあり、中間にくびれ部23が設けてある。飾り6の中心に上下に貫通して設けた手摺子挿通孔24は、手摺子2bの外径よりも若干大きく形成してある。
【0021】
飾り6は、手摺子2bに任意に取付けられるものであって、手摺材1を架設する前に予め取付けることもできるが、後から住人が後付けすることもできる。飾り6を後付けする際の手順を説明すると、まず
図1−1(a)に示すように、手摺子2bの飾り6を取付けたい位置にスポンジシール25を取付ける。次に、
図1−1(b)に示すように、ソケットレンチ等の工具を使用して連結部材3を手摺子2bに固定している六角ボルト4を外し、その後スペーサー20を抜き取る。手摺材1が手摺子2bの軸心に対して内側に偏心していることで、六角ボルト4を外す際に手摺材1が邪魔にならず、六角ボルト4を上方にまっすぐ容易に抜き取ることができる。次に、連結部材3を手摺材1の連結ベース7に固定しているネジ5を緩めた上で、
図1−1(c)に示すように、連結部材3をネジ5を支点に回動させる。スペーサー20を抜き取ることで、連結部材3の下面と手摺子2b上面との間に隙間ができるため、連結部材3は手摺子2bと干渉することなく回動させられる。すると連結部材3が手摺子2b上端部と分離するので、
図1−2(d)に示すように、この状態で飾り6を手摺子2bに上方から嵌める。
図1−2(e)に示すように、飾り6をスポンジシール25を巻いた位置にスライドさせると、飾り6はスポンジシール25によりその位置に保持されるので、飾り6のくびれ部23に側方から止めネジ26を挿入し、飾り6を固定する。そうして手摺子2bに飾り6を取付けたら、連結部材3とスペーサー20を元に戻し、ネジ5と六角ボルト4を締め込んで再び固定する。
【0022】
図5は、飾り6の取り付け方の他の例を示している。
図5(a)は、1本おきの手摺子2bに飾り6を4つずつ取付けており、且つ手摺子2bの中間部に飾り6を上下に重ねて取付けている。
図5(b)では、飾り6を波状の模様を成すような配置で取付けている。このように、飾り6は住人の好みやセンスに応じて自由に取付けることができ、取付ける数は任意に選択でき、取付ける位置も手摺子2bの長手方向の任意の位置に取付けできる。
【0023】
以上に述べたように本手摺は、手摺子2bに飾り6を自由に取付けることができ、これにより多様なデザインを簡単に実現できる。しかも飾り6の取付けは、連結部材3を手摺子2bに固定している六角ボルト4を外し、連結部材3を回動させることにより、連結部材3が手摺材1と連結したままで手摺子2b上端部から分離し、手摺子2bに上方から飾り6を嵌めることができるため、飾り6の取付け作業を誰にでも簡単に行うことができる。手摺材1が手摺子2bの軸心から内側にずれた位置にあるため、六角ボルト4を外したり手摺子2bに飾り6を嵌めたりするのが容易である。
【0024】
図6は、本発明の手摺の他の実施形態であって、建物内の吹抜けに面した床27の縁に設けられる落下防止用の手摺に適用した例を示している。連結部材3が、手摺材1の長手方向に直交する水平軸(ネジ5)で回動自在になっているため、本実施形態のように手摺材1を水平に架設する場合でも階段用のものと同一の連結部材3が使用でき、先に述べたのと同様の手順で手摺子2bに自由に飾り6を後付けし、デザインを変更することができる。なお、手摺子2a,2bや飾り6も階段用のものと同一のものを使用できる。
【0025】
図7,8は、連結部材3の他の実施形態を示している。本実施形態では、連結部材3のアーム部17が手摺材1に固定した連結ベース7に対して下方からのネジ5(請求項4中の「手摺子の軸心からずれた位置にある垂直な軸」に相当)で回動自在に連結してあり、手摺子2bに飾り6を嵌めるときは、六角ボルト4を外した上で、
図8に示すように、連結部材3をネジ5を支点に回動させれば連結部材3が手摺子2b上端部から分離するので、手摺子2bに上方から飾り6を簡単に嵌めることができる。本実施形態の場合は、スペーサー20を抜き取らなくても連結部材3を回動させることができ、スペーサー20を省略することもできる。
【0026】
図9は、連結部材3のさらに別の実施形態を示している。本実施形態では、連結部材3のアーム部17が手摺材1に固定した連結ベース7に対して、手摺材1の長手方向と平行な水平方向のネジ5(請求項5,6中の「手摺材1の長手方向と平行な軸」に相当)で回動自在に連結してある。ネジ5は、手摺子2bの軸心からずれた位置にある。手摺子2bに飾り6を嵌めるときは、六角ボルト4を外した上で、
図9(b)に示すように、連結部材3をネジ5を支点に上向きに回動させれば連結部材3が手摺子2b上端部から分離し、手摺子2bに上方から飾り6を簡単に嵌めることができる。連結部材3の回動軸(ネジ5)が手摺子2bの軸心から外れた位置にあることで、スペーサー20を抜き取らなくても連結部材3を回動させることができ、スペーサー20を省略することもできる。また、連結ベース7の固定角度を変えることで、手摺材1の配置位置を内外方向に調節できる。
スペーサー20を設ける場合は、連結部材3の回動軸(ネジ5)を手摺子2bの真上の位置に設けることもできる。
【0027】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。連結部材の具体的な形態や回動軸の向き等は、適宜変更することができる。また、手摺子や飾りの材質や形状等についても、適宜変更することができる。手摺材を手摺子の真上に配置することもできる。
【符号の説明】
【0028】
1 手摺材
2a,2b 手摺子
3 連結部材
4 六角ボルト(固定部材)
5 ネジ(回動軸)
6 飾り