特許第5680334号(P5680334)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5680334
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20150212BHJP
   F04D 23/00 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
   F04D19/04 D
   F04D23/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-109856(P2010-109856)
(22)【出願日】2010年5月12日
(65)【公開番号】特開2010-265894(P2010-265894A)
(43)【公開日】2010年11月25日
【審査請求日】2013年1月18日
(31)【優先権主張番号】10 2009 021 620.0
(32)【優先日】2009年5月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】391043675
【氏名又は名称】プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100157440
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 良太
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・ザックス
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・シリノフ
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−173880(JP,A)
【文献】 特開平02−009992(JP,A)
【文献】 特開昭61−210294(JP,A)
【文献】 特開平10−196586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
F04D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス入口(2)、ガス出口(3)およびサイド・チャネル・ポンプ段(6)を備えた真空ポンプ(1)であって、前記サイド・チャネル・ポンプ段は、外周部(603)と半径方向に突出する羽根(602;602′)とを設けた回転運動させられる羽根車(600)を含む、真空ポンプにおいて、
各羽根(602;602′)が、互いに連結された第1の部分羽根(621;651)および第2の部分羽根(622;652)を有し、各部分羽根(621、622;651、652)と羽根の運動方向(607)との間の角度(615;615′)が90°より小さい値であり、各部分羽根が、互いに平行な平面として形成された、回転方向に関する前部及び後部を有すること
第1および第2の部分羽根(621、622)が周方向にオフセットされることなく配置され、前記羽根(602;612)の間において羽根車(600)の周方向に中間ウェブ(630)が配置され、中間ウェブ高さ(631)は、羽根高さ(632)より小さく、羽根の運動方向(607)に減少する、または、第1および第2の部分羽根(651、652)が、周方向に相互にオフセット配置され、各部分羽根(651、652)の後部(653、654)は羽根車の外周部の中心線(660)を超えて伸長すること、
真空ポンプが、ガス入口の領域にホルベック・ポンプ段(4)を含み、このホルベック・ポンプ段(4)と前記サイド・チャネル・ポンプ段(6)の間に別のサイド・チャネル・ポンプ段(5)を含むことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
羽根(602;602′;612)がその後部(625、626;653、654)に、平面として形成された面取り部(616;656)を有することを特徴とする請求項に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
別のサイド・チャネル・ポンプ段(5)は、ロータ羽根(502)を備えたロータ(500)を含み、前記ロータ羽根は、回転方向に関して後方に位置する側に面取り部(516)を有することを特徴とする請求項1または2に記載の真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の真空ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
サイド・チャネル・ポンプ段を備えた真空ポンプは従来技術において既知であり、且つますます経済的意義を高めている。サイド・チャネル・ポンプ段は、ターボ分子ポンプ内に使用されたとき、ターボ分子ポンプをより高い圧力に対して排出させることを可能にする。ホルベック(Holweck)ポンプ段およびサイド・チャネル・ポンプ段を備えた真空ポンプは、きわめてコンパクトな構造サイズにおいて、分子流動範囲内の終端圧力を達成させる。このような真空ポンプに対する一例をドイツ特許公開第19930952号が提供し、ドイツ特許公開第19930952号は、吸込領域内において並列に作動するホルベック・ポンプ段を備え、且つそれに続くガス流れ内に複数のサイド・チャネル・ポンプ段を備えている。このサイド・チャネル・ポンプ段内に使用されている羽根車は簡単な構造に形成されている。即ち、ディスク形状の羽根車の羽根は羽根車の外周部に配置され、且つディスクから半径方向に突出している。羽根の間に中間ウェブが伸長し、中間ウェブは羽根車の全外周に沿って羽根と同じ高さを有している。
【0003】
サイド・チャネル・ポンプ段の真空特性値、特にポンプの排気速度および入口と出口との間の圧力比は、羽根、チャネルおよび回転部分と固定部分との間の隙間などの形態の関数である。一般に、良好な真空特性値は製造コストを上昇させることになる。
【0004】
他方で、サイド・チャネル・ポンプのポンプ能動部品の製造コストを低く抑える必要性が存在する。
上記の羽根車は従来良好な妥協を示してきたが、この妥協に対してさらに改善が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】ドイツ特許公開第19930952号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、真空ポンプのサイド・チャネル・ポンプ段が、改善された真空特性値と、同時に、ポンプ能動部品の簡単に製造可能な形状とを有する、真空ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、独立請求項1の特徴により解決される。本発明の有利な形態が従属請求項2−に記載されている。
請求項1に記載の羽根の形状は、コスト的に有利に製造可能である。冒頭記載の従来技術に比較して、少なくとも1つの部分羽根と羽根の運動方向との間の、90°より小さい角度により、低真空の範囲内における、サイド・チャネル・ポンプ段の入口と出口との間の圧力比の改善が結果として得られる。
【0008】
さらに、隣接する羽根の間の中間ウェブが、少なくとも部分的に、羽根より小さい高さを有するとき、この利点はさらに顕著となる。
少なくとも1つの部分羽根が回転方向に関して後方に位置する後部を有し、この後部が羽根車の外周部の中心線を超えて伸長するとき、真空特性値、特に圧力比のさらなる改善が達成される。
【0009】
羽根の後部に面取り部が設けられているとき、利点のさらなる拡大が達成される。
周方向における部分羽根のオフセットは有利に働き、且つ結果をさらに改善させる。
ガス流れ内において、サイド・チャネル・ポンプ段が他のサイド・チャネル・ポンプ段の後方に配置され、他のサイド・チャネル・ポンプ段はロータ羽根を備えたロータを含み、ロータ羽根が、回転方向に関して後方に位置する側に面取り部を有するとき、有利な組み合わせが得られる。羽根形態のこの選択は、従来技術に比較して、サイド・チャネル・ポンプ段の数を少なくすることを可能にし、したがって、改善された真空特性値において製造コストを低減させる。
【0010】
これらの変更態様の一実施例により本発明を詳細に説明し、且つそれらの利点を掘り下げることとする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、サイド・チャネル・ポンプ段を備えた真空ポンプの軸方向断面図を示す。
図2図2は、線I−I′による、軸中心線に直角な断面図を示す。
図3図3は、第1および第2の羽根を備えた羽根車を見た図を示す。
図4図4は、線II−II′による、第1および第2の羽根を備えた羽根車の断面図を示す。
図5図5は、一変更態様における、いくつかの羽根を備えた一部分を見た図を示す。
図6図6は、他のポンプ段のロータの部分を見た図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、この実施例の真空ポンプ1が縦断面図で示されている。ガス入口2およびガス出口3を設けた真空ポンプのハウジングは複数のハウジング部分20、21、22および23を有し、これらのハウジング部分内に、以下に説明される構成要素が装着されている。
【0013】
ガスは、ガス入口を通過して、はじめに、分子ポンプ段4内に到達し、分子ポンプ段は、ここでは、ホルベック構造様式で形成されている。分子ポンプ段は、内部ねじ山溝407を設けた内部ステータ405、および外部ねじ山溝408を設けた外部ステータ406を含む。ねじ山溝はねじ山状に伸長し、且つ内部ステータと外部ステータとの間に存在する回転シリンダ402と協働して、分子流動範囲内においてポンプ作用が設定される。シリンダは支持体400上に装着され、一方、支持体は軸8と結合されている。分子ポンプ段は対称に形成され且つ第2のシリンダ402′を有し、第2のシリンダは、それに付属のステータ構造部分と協働する。この形態により、並列供給機構が得られる。
【0014】
軸は駆動装置7により回転させられる。この駆動装置は、ステータ側に電気コイル12を含み、軸側に永久磁石13を含む。軸は転がり軸受10および11内に支持されている。
【0015】
分子ポンプ段から、ガスは、下流側に、第1の移送チャネル24を通過して高真空側のサイド・チャネル・ポンプ段5内に流入する。高真空側のサイド・チャネル・ポンプ段はロータ500を有し、ロータには少なくとも1つのロータ羽根が設けられている。ロータ羽根はサイド・チャネル501内において円運動を行う。このポンプ段内においてさらに圧縮されたガスは、第2の移送チャネル25を介してサイド・チャネル・ポンプ段6に移送され、ここでさらに圧縮され、最終的に、ガス出口を介して真空ポンプから排出される。
【0016】
図2に、サイド・チャネル・ポンプ段6が線I−I′による断面図で示されている。サイド・チャネル・ポンプ段を包囲するハウジング部分22は、リング状のサイド・チャネル601を有している。このサイド・チャネルのリングは中断部604により中断される。中断部は吸込側および吐出側を相互に分離し、且つ羽根車において搬送されたガス流れを羽根車から切り離す。サイド・チャネル内において、羽根車600の外周部603に配置されている少なくとも1つの羽根602が円運動を行う。羽根はこの外周部において半径方向に伸長している。羽根車が軸8により回転させられ且つガスが移送チャネル25を通過してサイド・チャネル内に流入したとき、ガスは羽根によりチャネルに沿って移動される。周方向におけるガスのこの搬送は中断部604において終端する。中断部において、ガスは後続のチャネルに移送される。チャネルは、このとき、他のポンプ段またはガス出口3に連絡している。
【0017】
図3に、羽根車の羽根の形態が外周部を見た図で示されている。羽根602は、第1の部分羽根621および第2の部分羽根622を有している。これらの部分羽根の各々は部分羽根後部625および626を有している。これらの両方の部分羽根の少なくとも1つは、羽根の運動方向607と、90°より小さい角度615を形成している。両方の部分羽根がこのような角度に傾斜され、且つ両方が共に運動方向に開いたVを形成するとき、それは好ましい。この手段は、羽根により達成される圧力比を上昇させる。さらなる上昇が面取り部616により達成され、面取り部は、部分羽根後部625および626に設けられ、且つ羽根車の面内に存在する部分羽根の外側角部に位置している。羽根の表面は平面から構成することが有利であり、その理由は、このとき、羽根はのこ引き加工によりきわめて簡単に且つコスト的に有利に製造可能であるからである。この方法においては、のこ歯が羽根車の外周部をのこ引き加工し、このとき、のこ歯は、羽根車の回転軸に対して傾斜され、即ち、回転軸はのこ歯の面内には存在していない。
【0018】
羽根車は羽根602のほかにさらに他の羽根612を有し、他の羽根は同じに形成されていることが有利である。羽根602および612の間に中間ウェブ630が配置されている。
【0019】
中間ウェブの形態は図4から明らかである。図4は、線II−II′による断面図を示す。中間ウェブ630は羽根602および612の間に配置されている。中間ウェブ高さ631は、少なくとも部分的に、羽根高さ632より小さいので、羽根の間に貫通空間が形成されている。貫通空間は圧力比を改善させる。この場合、形状は同様にのこ引き加工により容易に形成可能である。のこ引き加工の間に、のこ歯は羽根車の外周部の中心線を超えて入り込み、且つ中間ウェブの材料を除去する。のこ歯が上記のように傾斜されている場合、のこ引き過程内に形状が形成され、この形状において、中間ウェブのより高い部分は、運動方向607に関して、羽根602の前方に配置されている。
【0020】
図5における羽根車の外周部を見た図は、羽根の一変更態様を示す。羽根602′は2つの部分羽根651および652を有している。部分羽根の各々は部分羽根後部653および654を有している。これらの部分羽根後部の各々に面取り部656が配置され、面取り部は、羽根車の面内に存在する部分羽根の外側角部に位置している。部分羽根は、運動方向607と、90°より小さい角度615′を形成している。部分羽根は運動方向にオフセット量661だけ相互にオフセットされている。部分羽根後部は羽根車の中心線660を超えて伸長している。この変更態様は、同様に、のこ引き加工により簡単に製造可能であり、且つ達成可能な圧力比を上昇させる。
【0021】
図6に、高真空側のサイド・チャネル・ポンプ段5のロータの外周部を見た図が示されている。ロータの外周部に配置されている羽根502は、部分羽根後部513を設けた部分羽根551および552を有している。部分羽根後部に面取り部516が設けられている。
【0022】
図3−6に示されている構造は複数回反復され、且つ羽根車の外周部に沿って整数倍だけ現われる。
分子ポンプ段4と、図6に示すように形成されたロータを有する高真空側のサイド・チャネル・ポンプ段および図3−5に示す特徴をもつ羽根車を有するサイド・チャネル・ポンプ段との組み合わせは、改善された真空特性値を有する、コスト的に有利に製造可能な、コンパクトな真空ポンプを提供する。
【符号の説明】
【0023】
1 真空ポンプ
2 ガス入口
3 ガス出口
4 分子ポンプ段
5 高真空側のサイド・チャネル・ポンプ段
6 サイド・チャネル・ポンプ段
7 駆動装置
8 軸
10、11 転がり軸受
12 電気コイル
13 永久磁石
20、21、22、23 ハウジング部分
24 第1の移送チャネル
25 第2の移送チャネル
400 支持体
402、402′ シリンダ
405 内部ステータ
406 外部ステータ
407 内部ねじ山溝
408 外部ねじ山溝
500、600 羽根車、ロータ
501、601 サイド・チャネル
502、602、602′、612 羽根
513、625、626、653、654 部分羽根後部
516、616、656 面取り部
551、552、621、622、651、652 部分羽根
603 外周部
604 中断部
607 運動方向
615、615′ 角度
630 中間ウェブ
631 中間ウェブ高さ
632 羽根高さ
660 中心線
661 オフセット量
図1
図2
図3
図4
図5
図6