【実施例】
【0028】
以下に、本発明の積層体について、実施例に基づき詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0029】
〈実施例1〉
まず、実施例1の積層体におけるハードコート層の形成に用いる実施例1の樹脂を準備した。この実施例1の樹脂は、以下のような配合組成とした。
即ち、光重合反応性官能基が導入された二酸化珪素(シリカ)超微粒子をアクリル系樹脂に配合した有機無機ハイブリッドタイプ樹脂(JSR株式会社製、オプスターKZ6445、固形分50重量%含有溶液)10.0重量部、添加剤としてフッ素系化合物(ダイキン工業株式会社製、オプツールDAC−HP、フッ素系化合物成分20重量%含有溶液)0.8重量部、希釈溶剤としてメチルエチルケトン6.4重量部を配合した組成とした。
【0030】
この実施例1の樹脂を用い、第1プラスチックフィルムとして準備した厚さ125μmのポリメタクリル酸メチル(PMMA)フィルム(住友化学株式会社製、テクノロイS001G)の一方の面に、バーコータ法より硬化後の膜厚が15μmとなるように実施例1の樹脂を積層し、溶剤乾燥後、窒素パージ下で、高圧水銀灯により440mJ/cm
2の紫外線を照射し、層を硬化して、本発明の実施例1にかかる積層体におけるハードコート層を一方の面に設けた第1プラスチックフィルムを作製した。
【0031】
このハードコート層を設けた第1プラスチックフィルムのハードコート層を形成していない面に、アクリル系の光学用透明粘着剤を積層し25μmの粘着剤層を形成した。そして、この粘着剤層を介して、第2プラスチックフィルムとして準備した厚さ125μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製)を貼り合わせて、本発明の実施例1の積層体を作製した。
【0032】
〈実施例2〉
実施例2の積層体が実施例1の積層体と異なる点は、用いた第2プラスチックフィルムの厚さである。すなわち、実施例1で作製したハードコート層を設けた第1プラスチックフィルムを用い、このハードコート層を設けた第1プラスチックフィルムのハードコート層を形成していない面に、実施例1と同様に、25μmの粘着剤層を形成した。そして、この粘着剤層を介して、第2プラスチックフィルムとして準備した厚さ188μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製)を貼り合わせて、本発明の実施例2の積層体を作製した。
【0033】
〈実施例3〉
実施例3の積層体が実施例1の積層体と異なる点は、形成した粘着剤層の厚さである。すなわち、実施例1で作製したハードコート層を設けた第1プラスチックフィルムを用い、このハードコート層を設けた第1プラスチックフィルムのハードコート層を形成していない面に、アクリル系の光学用透明粘着剤を積層し50μmの粘着剤層を形成した。そして、この粘着剤層を介して、実施例1と同様に、第2プラスチックフィルムとして準備した厚さ125μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り合わせて、本発明の実施例3の積層体を作製した。
【0034】
〈実施例4〉
実施例4の積層体が実施例1の積層体と異なる点は、用いた第2プラスチックフィルムの材質である。すなわち、実施例1で作製したハードコート層を設けた第1プラスチックフィルムを用い、このハードコート層を設けた第1プラスチックフィルムのハードコート層を形成していない面に、実施例1と同様に、25μmの粘着剤層を形成した。そして、この粘着剤層を介して、第2プラスチックフィルムとして準備した厚さ125μmの2軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製)を貼り合わせて、本発明の実施例4の積層体を作製した。
【0035】
〈比較例1〉
比較のために、比較例1の積層体を作製した。比較例1の積層体が実施例1の積層体と異なる点は、比較例1の積層体は粘着剤層および第2プラスチックフィルムを備えていない点である。すなわち、実施例1で作製したハードコート層を一方の面に設けた第1プラスチックフィルムを、比較例1の積層体とした。
【0036】
〈比較例2〉
次いで比較例2の積層体を作製した。比較例2の積層体が実施例1の積層体と異なる点は、用いた第1プラスチックフィルムである。比較例2の積層体では、第1プラスチックフィルムとして、厚さ125μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。
【0037】
この厚さ125μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一方の面に、実施例1と同様に、実施例1の樹脂を積層し、溶剤乾燥後、これを硬化して、比較例2の積層体におけるハードコート層を一方の面に設けた第1プラスチックフィルムを作製した。そして、このハードコート層を設けた第1プラスチックフィルムのハードコート層を形成していない面に、実施例1と同様に、粘着剤層を形成し、第2プラスチックフィルムとして厚さ125μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り合わせて、比較例2の積層体を作製した。
【0038】
〈比較例3〉
さらに比較例3の積層体を作製した。比較例3の積層体が実施例1の積層体と異なる点は、ハードコート層の形成に用いた樹脂である。比較例3の樹脂は、フッ素系化合物を添加していない点で、上記の実施例1の樹脂と異なる。
【0039】
つまり、比較例3の樹脂は、以下のような配合組成とした。光重合反応性官能基が導入された二酸化珪素(シリカ)超微粒子をアクリル系樹脂に配合した有機無機ハイブリッドタイプ樹脂(JSR株式会社製、オプスターKZ6445、固形分50重量%含有溶液)10.0重量部、希釈溶剤としてメチルエチルケトン6.7重量部を配合した組成とした。
【0040】
この比較例3の樹脂を用い、実施例1と同様に、第1プラスチックフィルムとして準備した厚さ125μmのポリメタクリル酸メチル(PMMA)フィルムの一方の面に、上記実施例1と同一の条件で積層、乾燥、硬化して、比較例3の積層体におけるハードコート層を一方の面に設けた第1プラスチックフィルムを作製した。そして、このハードコート層を設けた第1プラスチックフィルムのハードコート層を形成していない面に、実施例1と同様に、粘着剤層を形成し、第2プラスチックフィルムとして厚さ125μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り合わせて、比較例3の積層体を作製した。
【0041】
以上により得られた実施例1〜実施例4、および比較例1〜比較例3の7種の積層体について、可撓性、鉛筆硬度、耐熱性およびカールを評価した。これらの評価結果を、積層体の試料内容とともに(表1)に示す。なお、(表1)の試料内容におけるプラスチックフィルムについては、ポリメタクリル酸メチルフィルムはPMMA、ポリエチレンテレフタレートフィルムはPET、ポリエチレンナフタレートフィルムはPENと表記した。また、それぞれの評価は、次のようにして行った。
【0042】
可撓性の評価は、積層体を、直径80mmの円筒に巻き付けて評価し、巻き付け後にクラックや剥離の有無を観察し、ハードコート層のクラックや剥離の無いものを○、クラックまたは剥離の発生が観察されたもの×とした。
【0043】
鉛筆硬度の評価は、JIS K5600−5−4に準じて行い、各種硬度の鉛筆を45゜の角度で試料の表面にあて、荷重をかけて引っ掻き試験を行い、傷がつかない最も硬い鉛筆の硬さを鉛筆硬度とした。
【0044】
耐熱性の評価は、積層体を一片が10cmの正方形になるように切り出して試料とし、この試料を150℃に調整した熱風乾燥機中で60分間熱処理して、正方形から形が変化のないものを○とし、形が正方形から変形したものを×とした。
【0045】
カールの評価は、耐熱性評価の結果、変形のないものを試料とし、この試料を水平面に置き、水平面から浮き上がった四隅の高さを測定し、この平均値をカール値とした。
【0046】
【表1】
【0047】
(表1)の評価結果に示したように、本発明の実施例1ないし実施例4の積層体は、いずれも、鉛筆硬度が5Hと極めて硬く、耐擦傷性、耐摩耗性に優れ、フィルムを撓ませた時でもハードコート層のクラックや剥離が無く、可撓性に優れたものであった。また、150℃で60分間熱処理した耐熱性の評価結果でも、変形が無く、カールも小さく、耐熱性に優れたものであった。したがって、画像表示装置等の保護膜として用いられる光学用の積層体としての実用性に優れていることが確認できた。
【0048】
一方、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)フィルムにハードコート層を設けたのみの粘着剤層および第2プラスチックフィルムを備えていない比較例1の積層体は、鉛筆硬度および可撓性に優れたものであったが、熱処理よる変形が大きく、耐熱性に劣っていた。
【0049】
第1プラスチックフィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた比較例2の積層体は、有機無機ハイブリッドタイプの被膜であるハードコート層と第1プラスチックフィルムとの密着性が悪く、フィルムを撓ませた時に界面で剥離やクラックが発生し、可撓性に劣っていた。
【0050】
フッ素系化合物を添加していない樹脂をハードコート層の形成に用いた比較例3の積層体は、実施例に比較して、ハードコート層に柔軟性が無く、フィルムを80mm径で折り曲げ撓ませた時にハードコート層にクラックが発生し、可撓性に劣っていた。
【0051】
比較例2および比較例3の積層体は、いずれも、鉛筆硬度が4Hであり、実施例に比較して鉛筆硬度が柔らかく、光学用の積層体として望ましい十分な鉛筆硬度が得られなかった。
【0052】
以上説明したように、本発明の積層体は、一方の面にハードコート層を設けた第1プラスチックフィルムと、この第1プラスチックフィルムの他方の面に粘着剤層を介して積層した第2プラスチックフィルムとを備えた積層体であって、前記第1プラスチックフィルムはアクリル系樹脂フィルムであり、前記ハードコート層は有機無機ハイブリッドタイプの被膜でありフッ素系化合物の添加剤を含む構成としたものである。
【0053】
そして、本発明の積層体によれば、一方の面にハードコート層を設けた第1プラスチックフィルムはアクリル系樹脂フィルムであり、ハードコート層は有機無機ハイブリッドタイプの被膜であるので、基材フィルムとハードコート層との密着性が良く界面での剥離やクラックが生じにくく、可撓性に優れたものとなるとともに、透明性に優れ、高硬度表面を有し、耐擦傷性、耐摩耗性に優れた積層体となる。
【0054】
また、有機無機ハイブリッドタイプの被膜にフッ素系化合物の添加剤を含有しているので、フィルムを撓ませた時でもハードコート層の被膜にクラックが生じにくく、可撓性に優れたものとなるとともに、ハードコート層の表面の平滑性が向上し滑りやすくなり傷が入りにくくなるため、さらに、耐擦傷性、耐摩耗性に優れた積層体となるとともに、第1プラスチックフィルムの他方の面に粘着剤層を介して第2プラスチックフィルムを備えているので、熱の影響による変形およびカールの発生を抑制することができ、画像表示装置等の保護膜として実用性に優れた積層体となる。