【実施例】
【0146】
実施例1
この実施例において、皮膚サンプルを以下のように調製した。表皮膜を、ヒト屍体全皮膚からKlingmanおよびChristopher,88
Arch.Dermatol.702 (1963)の熱分離法により分
離した。この方法は、全厚皮膚の温度60℃への60秒間の曝露を含み、この時間の後、角質層および表皮(表皮膜)の一部を真皮から静かに引き剥がした。
【0147】
実施例2
実施例1の手順により調製された、熱分離角質層サンプルを、1cm
2の切片に切り分け
た。次いで、これらの小さいサンプルをスライドの上に載せそして中央に6mmの穴を有する感圧性接着剤塗布ディスクを皮膚サンプルの上に適用することにより、これらをガラスのカバースライドに付着させた。次いで、サンプルを実験的試験のために準備した。いくつかの場合には、中性の緩衝化リン酸溶液または純水中に数時間浸すことにより、皮膚サンプルを水和させた。
【0148】
これらの未処理の皮膚サンプルの試験として、およそ810、905、1480および1550ナノメーターで放出するいくつかの異なる赤外レーザーダイオードの出力をサンプルに適用した。送達光学システムを、横に25μmの焦点くびれを最終対物が0.4の開口数を有して生じるように設計した。焦点に送達される全パワーを測定して、810nmと1480nmのレーザーダイ
オードについて50と200ミリワットとの間にあるようにした。このレーザーダイオードは
連続波(CW)の様式で操作可能であった。905nmおよび1550nmのレーザーダイオードを、お
よそ10から200ナノ秒長の高ピークパワーパルスを5000Hzまでの反復速度で産出するよう
に設計した。パルスレーザーについては、ピークのパワーレベルを測定して、905nmで45
ワットそして1550nmで3.5ワットであるようにした。
【0149】
これらの操作条件下では、どのレーザーからも、皮膚サンプルに対する明らかな影響はなかった。標的領域を60秒間連続的に照射し、次いで顕微鏡で検査した結果、いかなる可視的な影響もなかった。さらにサンプルを、改変されたFranzセル(代表的には、経皮送
達系を化学的透過エンハンサーに基づいて試験するために用いられる)中に置き、膜の一つの側から他方の側への電導率を、レーザーによる照射の前と後の両方において測定し、そして何の変化も示さなかった。4人の異なるドナーからの皮膚サンプルにおいて行われたこれらの試験に基づき、これらの波長において光学的エネルギーの皮膚組織へまたは皮膚組織を通してのカップリングは小さすぎて影響が検出不可能であると結論した。
【0150】
実施例3
実施例2の条件下で光エネルギーで照射された場合の生存被験体への潜在的な感覚を評価するために、6人のボランティアを用いて、各レーザー源の出力を彼らの指先、前腕および手の甲に適用した。810、905、および1550nmレーザーの場合には、被験体はレーザーが点けられた時または消された時に感じることができなかった。1480nmレーザーの場合には、70mWCWで操作する1480nmレーザーによる照射の間にいくらかの感覚があり、そして短時間後には、水吸収バンドの1つによる1480nm放射の吸収に起因して、小さな水泡が皮膚の下に形成された。明らかに、吸収されたエネルギーの量は、水泡の形成を誘導するのに十分であったが、角質層の切除を生ずるのには十分ではなかった。また、1480nmの光の吸収は、より深く、十分に水和された(85%から90%の水含有率)表皮および真皮の組織において主に起こり、比較的乾燥した(10%から15%の水含有率)角質層の組織においては起こらなかった。
【0151】
実施例4
天然の状態にある皮膚に対して影響がないことを実証した(実施例3)上で、一連の化学的化合物を、光エネルギーの吸収、次いでこの吸収されたエネルギーの伝導を介しての角質層の標的組織へまたは標的組織を通しての移動における有効性について評価した。試験された化合物には、Indiaインク;「SHARPIE」ブランドの消えない黒、青、および赤のマーキングペン;メチレンブルー;フクシン(fuschian)レッド;epolite#67(保護レーザーゴーグルのためのポリカーボネートレンズに成型するために開発された吸収化合物);ヨードチンキ;ヨードポリビニルピロリドン複合体(「BETADINE」);銅フタロシアニン;およびプリンターのインクが含まれる。
【0152】
実施例2に記載されたCWレーザーダイオードの両方を用いて、陽性の切除結果が、これら全ての製品を用いた場合に、実施例1に従って調製された熱分離角質層のインビトロサンプルにおいて観察された。しかし、いくつかの製品は他の製品よりもより良好な性能を示した。特に、銅フタロシアニン(CPC)およびepolite#67は、最も効果的な製品であった
。CPCのよりよい性能についての1つの推定的な理由としては、500℃よりも高いその高い沸点、およびCPCがその固相をこの温度まで維持するという事実があげられる。
【0153】
実施例5
銅フタロシアニンは、移植可能な縫合における使用に関してすでにFDAにより認可され
ており、そしてMerckインデックスにヒト生体適合性に関してやや温和なそして安定な分
子として列挙されているので、採られた次の段階は、健常なヒトのボランティアの皮膚へのCPCおよび集束光源の局所適用を組合せることであった。微細に砕粉されたCPCのイソプロピルアルコール中の懸濁液を調製した。用いられた適用方法は、溶液を振盪し、次いで標的部位に小滴を適用することであった。アルコールが気化するにつれ、次いで、固相のCPCの微細で均一なコーティングが皮膚の表面上に残った。
【0154】
次いで
図1に示す装置を、個体の皮膚の選択された領域を参照プレートに対して配置することにより、その部位に適用した(ここでCPCは局所的に皮膚の上にコートされている
)。参照プレートは、中央に4mmの穴を有するおよそ3cm×3cmの薄いガラス窓からなる。次いで、CPCで被覆された領域が中央の穴の中にくるように配置した。次いで、共焦点
のビデオ顕微鏡(
図1)を用いて皮膚の表面に鋭く焦点が合うようにした。ビデオシステムにおいて最も鋭く焦点が合うように皮膚を配置することはまた、レーザーシステムの焦点が皮膚の表面に一致するようにビデオシステムを配置することになった。次いで操縦者は、ビデオモニター上で標的部位における影響を観察しながら、レーザー光のパルスを活性化した。操縦者は、微細孔の深さが増加するにつれ微細孔におけるレーザースポットの集束ずれの程度を測定することにより、貫通の程度を視覚的に評価した。これは、切除された表面を組織の中へ、カメラ/レーザー源の位置を「z」軸に沿って皮膚の中へ向かって動かすことによって本質的に追跡することにより、操縦者が動力学的に補正し得る。角質層が表皮まで除去されているところで、穴の底の外見が顕著に変わり、より湿っぽくそしてより光るようになる。この変化を観察したら、操縦者はレーザーを脱活性化した。多くの場合、被験体の水和状態ならびに他の生理学的条件に依存して、間質液の劇的な流出が、この小さな領域にわたって角質層の障壁機能が除去されたことに応答して起こった。ビデオシステムを用いて、この穿孔部位での間質液の利用可能性の視覚的な記録を記録した。
【0155】
実施例6
CPCを透明な粘着性テープに適用し、次いでこれを個体の皮膚上の選択された部位に接
着させることを除いては、実施例5の手順に従った。結果は実質的に実施例5の結果と類似していた。
【0156】
実施例7
所定の色素混合物および付随する損傷の情報について切除の閾値パラメーターを決定するために、当該分野で周知の方法に従って、屍体の皮膚上で組織学的実験を行った。皮膚サンプルの一番上の表面を、アルコール中の銅フタロシアニン(CPC)溶液で処理した。ア
ルコールが気化した後、固相CPCの局所層は、皮膚表面上にわたって平均の厚さ10〜20μmで分布した。
図8Aは、レーザー適用前の全厚皮膚の断面図を示す。ここで、CPC層270、角質層274、および下にある表皮層278を示す。
図8Bは、810nm光の単一パルスが直径80μmの円にエネルギー密度4000J/cm
2で20msのパルス時間適用された後のサンプルを示す。有意
の量のCPCが角質層の表面上に、切除されたクレーター282の中心においてさえも、まだ存在することは注目に値する。実験室測定は、CPC上に入射する光エネルギーのたった約10
%のみが実際に吸収され、他の90%は反射されるかまたは後方散乱されることを示すことはまた注目すべきである。従って、所望の加熱を生じ得る色素層に送達される有効エネルギーフ束(flux)は、約400J/cm
2だけである。8Cは、810nm光の5つのパルスが適用され
た後のサンプルを示し、ここで角質層障壁は下にある組織に損傷を与えずに除去された。これらの結果は、「理想の」光学的に調節された熱切除性能を良く表している。
図8Dは、50パルスが適用された後のサンプルを示す。損傷を受けた組織286は、切除されなかった
組織の炭化および下にある組織の熱変性に起因して表皮層中に存在した。
図8A〜8Cは、脱水、凍結、および画像化のための調製物のアーチファクトに起因した角質層と下にある表皮層との間の分離を示す。
【0157】
実施例8
熱の切除機構の詳細を試験するために、熱切除法の種々の異なる実施態様を試行し得る皮膚組織の数学モデルを構築した。このモデルは、表面に局所的に投入された特定の熱フラックス、およびいくらか距離が離れている表面からの熱の除去を用いて、層状の半無限(semi-infinite)媒体における温度分布を計算する。すなわち、対流は、この2者の間で
適用される。線対称の時間依存的拡散の方程式は、ADI法(alternating-direction-implicitmethod)を使用して、円柱状の座標において解かれる。(注意:一定温度B.C.を低い方の境界に適用し、z>infとして扱う;そしてゼロ半径の熱フラックスを、最大半径の境界
に適用し、r>infとして扱う)。層は表面に対して平行であり、そして以下のように定義される:(1)色素;(2)角質層;(3)下層の表皮;および(5)真皮。半無限媒体中の深さおよび熱の特性、密度(rho)、比熱(c)、および伝導性(k)は、各層について明記されなければ
ならない。
【0158】
第1に、皮膚上の熱移動係数hを、周囲の大気温度、皮膚表面温度、および真皮の温度によって決定される「定常の」「1-D」温度分布に基づいて計算する。色素は存在しない
と仮定して、皮膚表面上に「h」を提供する。次いで、このプログラムによって色素層表面でのこの「h」の使用、または色素表面に所望される別の「h」の投入が可能になる。次に、「定常の」温度分布を、色素表面での明記された「h」を用いて、全ての層(色素
層を含む)を通して計算する。この温度分布は、時間依存的な加熱の問題についての初期
条件である。これは、「m−ファイル」初期mを構成する。次いで、このプログラムは、時間的に進行させ、計算し、そして各工程の温度領域を提示することによって、時間依存的な温度分布を解明する。
【0159】
本明細書中で記載される方法の各実施態様(そのそれぞれについて経験的なデータが集
められている)が、操作パラメーターの少なくとも1セットについてモデル化されている
。これは角質層の切除がどのようにして正確かつ制御可能な様式で達成され得るかを示す。シミュレーションの出力を、以下の異なる二つの形式のグラフにより示す:(1)皮膚の
断面図、これは、この図の最上部にプロットされた、3つの臨界温度閾値を規定する3本の等温線と共に、異なる組織層を示す、および(2)2つの異なる温度対時間のプロット、
1つは標的部位の直下にある角質層の中心部の地点についてであり、もう一方は表皮の生存細胞層と角質層の下面との境界の地点についてである。これらのプロットは、ミクロ熱電対を組織中へ移植することが可能であるかのように熱パルスを適用すると、各地点での温度が経時的にどのように変動するかを示す。さらに、このモデルの適用によって、この方法が使用され得る範囲内である、パラメーター限界の調査が可能になり、本方法の実施の2つの重要な局面のために外部の限界を設定し得る。第1に、本方法を疼痛または所望されない組織の損傷を伴わずに使用し得る範囲内である、外延を規定する一般的な場合を示す。
【0160】
本発明のいくつかの異なる実施態様において記載されるように、与えられた熱源のいずれについても、以下の点で、被験体の皮膚組織に対する効果が最適でなくなる点が存在する。それは、被験体が疼痛知覚を感知する、または下層の表皮および/または真皮中の生存細胞が温度を持続する、という点である。これによって、十分に長期間維持される場合、これらの組織に損傷が与えられる。従って、最適に加熱した局所銅フタロシアニン(CPC)色素の実施態様を基準線の方法として用いて試験シミュレーションを行って、異なる皮
膚組織層の熱時間定数が、本方法が疼痛または隣接組織層の損傷を伴わずに用いられ得る領域を本質的にどのように規定するかを確立した。
【0161】
図9および10は、皮膚および局所色素層の概略断面図を示す。各図において、3本の別々の等温線を示す:(1)123℃、この温度で組織中の水分の蒸発が組織の切除を生じる;(2)70℃、この温度が数秒間維持された場合、生存細胞が損傷を受ける;および(3)45℃、被験体が疼痛の知覚を感知する平均的な温度。この疼痛閾値は、いくつかの基本的な生理学の教科書に記載されているが、経験からこの閾値はいくらか主観的であることが示されている。実際、同一の個体での反復試験では、穿孔部位が互いに数ミリメートル以内で異なると、有意に異なる知覚量を示し得る。これはおそらく穿孔部位に関係した神経末端への近接度によるものである。
【0162】
グラフ上の寸法は、色素および皮膚の層を規定する平坦な境界と共に、それらの異なる層を示す(mで測定)。含まれる寸法について平均的な意味で、実際の皮膚組織は、より回
旋状の境界を有しているが、このモデルは実際の組織に存在する熱勾配の良好な近似値を提供する。ここ、およびこれに続く全てのシミュレーションで用いた、CPC色素層および
種々の皮膚層の厚さの寸法は、以下の通りである;色素、10m;角質層、30m;下層の表皮、70m;および真皮、100m。
【0163】
この特定のシミュレーションのためにこのモデルで用いたさらなる条件は、以下の表に示す:
【0164】
【表1】
【0165】
【表2】
【0166】
これらのシミュレーションを行う場合、以下の控えめな仮定を課する:
1.角質層のある部分が、その温度が含有水分の熱蒸発についての切除閾値温度を既に超えていることが示され得るが、この事象はモデル化されておらず、そしてこの蒸発によって生じる組織の続く熱エネルギーの損失は、このシミュレーションに計算に入れていない。これにより、シミュレーションを開始した時点から、下層の組織において示されるわずかな温度上昇がもたらされる。
【0167】
2.同様に、銅フタロシアニン(CPC)色素層のある部分が蒸発点の550℃に達したことが示されたとき、この事象はモデル化されていないが、この温度は単にこのレベルに完全に限定されている。このことによっても、シミュレーションが進行するにつれて、下層における続くわずかな温度上昇がもたらされる。
【0168】
これらの単純化をこのモデルにおいて用いたときでさえ、ドナーの組織サンプルでの臨床的研究と組織学的研究との両方に基づく、実行の予測値と実行の経験的観察値との間の相関は、顕著である。
図9および10において注目すべき重要なデータは、熱パルスが適用される時間の長さ、および等温線によって示される3つの異なる閾値温度の位置である。
【0169】
図9では、21ミリ秒のパルス長を用いており、70℃の等温線は、表皮中の角質層と生存細胞層とを分離する境界をちょうど横切る。これらの条件下でのドナー皮膚サンプルでのインビトロの研究では、50ミリ秒で送達された熱エネルギーの50パルスにより、生きている細胞のこの最上層に検出可能な損傷が生じる(
図8Dを参照のこと)。しかし、インビトロの研究において、これらの同一の操作パラメーターでの熱エネルギーの5パルスによっては、これらの組織には何らの顕著な損傷も生じなかったことも示された。少なくとも一過性の意味では、たとえ見かけの損傷閾値を超え得たとしても、この温度は、実際に細胞に何らかの損傷を生じさせるには、いくらかの累積的な時間の間維持されなけれなならないことが理にかなうようである。にもかかわらず、このシミュレーションによって示される基本的な情報は、熱パルスを400ジュール/cm
2の流束密度(fluxdensity)で20ミリ秒未満、「オン時」に保つ場合、たとえ切除の閾値等温線が角質層中にまたは角質層を通して十分に移動したとしても、下層の表皮内の生存細胞に損傷は生じない。言い換えれば、「オン時」が適切に短くなるように調節された低流束密度の熱エネルギー源を使用することにより、角質層の切除は、下層の表皮内の隣接する細胞にいかなる損傷も与えることなく達成され得る(
図8Cを参照のこと)。このことは、大部分はおそらくこれらの2つの組織層の熱の拡散率が有意に異なることによる。すなわち、角質層は、約10%から20%しか水分を含まず、熱伝導率が0.00123J(S*cm*K)であり、表皮(0.00421J(S*cm*K))よりもはるか
に低い。このことによって、切除が生じる地点に強力な空間的限定を維持しながら、温度を角質層に蓄積させ得る。
【0170】
図10では、
図9で概略した損傷の閾値臨界点で開始した大筋で同一のシミュレーションを、さらに長い時間で行う。加熱されている色素の直径60μmの環の内で、400ジュール/cm
2の同一の流束密度で58ミリ秒間熱パルスをオンにすることによって、45℃の疼痛知覚の等温線は、ちょうど、真皮に含まれる皮膚の神経支配された(innervated)層に入った。さらに、損傷の閾値等温線は、
図9で見られるよりもさらに表皮層へと有意にさらに移動した。このシミュレーションをこの方法で行った多くの臨床的研究と関係付けて、モデルの精度の優れた変型が、このモデルが、熱プローブを個体が感知する前に皮膚に適用し得る「オン時」期間をほぼ正確に示すという点で、得られる。臨床試験において、制御可能なパルス発生器を使用して、皮膚上の銅フタロシアニン(CPC)色素の局所的な層に適用
される一連の光パルスの「オン時」と「オフ時」とを設定した。80ミリ秒の一定の「オフ時」を維持する一方で、被験体が軽い「疼痛」知覚を訴えるまで「オン時」を段階的に増加した。例外なく、この研究に関与した全ての被験体は、45ミリ秒と60ミリ秒との間の「オン時」で、最初の「疼痛」を訴えたが、これはモデルによって予測されたものと非常に近似していた。さらに、「疼痛」の知覚に関して予め述べられていた部位−部位の変わりやすさが、これらの臨床研究において注目された。従って、「疼痛」として訴えられたものは、最初の明確な知覚が気付かれ得る時点である。1つの部位では、これが痛みとして訴えられ得、一方、隣接する部位では、同一の被験体は、単に「気づき得る」として訴えられ得る。
【0171】
この臨床研究の1つのエレメントは、同じ部位でさえ、熱パルスの不規則なパルス列が、被験体の精神生理的神経知覚と共に作用して、知覚された感覚の真性の減少を引き起こし得るということの理解である。例えば、一連のより短い長さの熱パルスを用いて、その領域のニューロンを飽和させ、このシナプス接合部で利用し得る神経伝達物質を瞬時に涸渇させ、それによって「疼痛」のメッセージを送る能力を制限し得る。次いで、これによって、これらの短いパルスに続く、より長いパルスが、この順序の最初に適用された場合よりも気づきにくくなることが可能になる。従って、いくつかの任意に生じさせたパルス列で一連の実験を行い、その結果はこの仮説と一致した。この状況についての類似点は、非常に熱い浴槽に最初に足を入れると、最初は疼痛を感じるが、熱知覚に対して順応するにつれてすぐに耐え得るようになる場合の知覚において見出され得る。
【0172】
実施例9
本発明の1つの目的は、隣接する生存組織にいかなる顕著な損傷も与えることなく、無痛で角質層に微細穿孔を達成することである。実施例8および
図9〜10に概略したシミュレーションに記載するように、微細穿孔がこのような無痛かつ非外傷性の様式で達成され得る、切除の標的スポット内の所定の熱エネルギー束密度のいずれもについても、境界が存在するようである。インビボおよびインビトロの研究の両方が、事実その通りであることを示し、そしてこれにより、経験的方法による、非常によく働くようであるいくつかの操作パラメーターの開発が可能になった。以下のシミュレーションのセットは、この方法が、これらの特定のパラメータを使用した場合にどのように働くかを示す。
【0173】
最初の場合では、10パルスのパルス列(10ミリ秒の「オフ時」で分けられる10ミリ秒の
「オン時」)を、CPCで覆った皮膚に適用する。
図11は、このパルス列が終了した直後の皮膚組織における最終的な温度分布を示す。見られ得るように、3つの臨界温度閾値を示す等温線は、角質層の切除が、真皮層神経には知覚が全くなく、かつ下層の表皮の生存細胞へのまたは生存細胞を通しての損傷の閾値の交差がほとんど無く達成されたことを示す。前述したように、実際に永久的な損傷を細胞に与えるためには、表皮細胞は特定の箇所まで加熱されなければならないのみならず、ある一定の時間(一般には約5秒間と考えら
れる)、その温度で維持されなければならないようである。
図12および
図13は、時間
を関数とした角質層および生存表皮の温度をそれぞれ示し、「オン時」の間の加熱および「オフ時」の間の冷却が全体で10サイクルであることを示している。行ったインビボ研究についてのこのシミュレーションに関して、このシミュレーションに適合するように設定した系パラメーターを伴う穿孔試みの90%より多くにおいて、角質層の有効な穿孔は、被験体に疼痛を伴わずに達成され、そして数日後の続く穿孔部位の顕微鏡検査では、組織への目立った損傷は見られなかったことに留意されたい。ドナーの全層皮膚サンプルで行ったインビトロの研究もまた、モデルの挙動予測と一致した。
【0174】
実施例10
インビボの経験的研究とこれらのシミュレーションとの両方を行うにあたり、皮膚を予冷することによって、疼痛または隣接する組織への損傷が起こる確率を減少させるための微細穿孔のプロセスの最適化が補助されるようである。実際に、単純な冷却したプレートを穿孔プロセスの前に皮膚に配置することによって、これは容易に達成され得る。例えば、穿孔標的部位を囲む直径1cm円に冷却したペルティエプレートを適用して、このプレートを数秒間約5℃で維持すると、組織の温度は顕著に低下する。実験室でこの目的のために使用する実験デバイスの概略図を
図3A〜Bに示す。
図11と
図14、
図12と
図15、および
図13と
図16の比較により、実施例9で概略した実行において用いられるものと正確に同じ10サイクルのパルス列を適用することによって、皮膚組織への温度の浸透または皮膚組織を通しての温度の浸透の制御がどれだけ改善されたかを理解し得る。さらに、角質層は表皮および真皮に比較して比較的低い温度拡散率および比熱を有することが有利である。一旦冷却されると、表皮および真皮の高度に水和した組織は、その温度を上昇させるためにより大きな熱エネルギー投入を要求し、一方、角質層は、比較的乾燥した構造により、切除の閾値まで迅速に加熱され得る。
【0175】
実施例11
一旦、角質層の効果的な無痛の切除および微細穿孔の基礎になるエネルギーを皮膚組織にまたは皮膚組織を通じて送達する基本的な熱伝導機構が理解されると、
図4〜7に示すホットワイヤ実施態様のような、必要とされる迅速な接触点の温度変調を達成するためのいくつかの異なる特定の方法が考えられ得る。
【0176】
本明細書中で記載するように、基本的な実施態様は、オーム加熱エレメント(
図4)(例
えば、小さなコードレスのはんだごてのチップ)を使用する。適切なサイズの比較的非反
応性のワイヤがその回りを巻き付け、ワイヤの少量が、ヒーターの本体から突き出された状態にある。定電流源で電気を印加する場合、ヒーターはある温度に達すると、数秒以内に、周囲の大気への対流損失によって定常状態に達する。同様に、ワイヤ(この熱システ
ムの一部である)は、定常状態に達して、その結果、ワイヤのまさにそのチップが、ほぼ
任意温度(これらのタイプの構成エレメントでは約1000℃まで)に上昇し得る。このチップは、所望の大きさの微細孔を正確に提供するようにサイズ決定され得る。
【0177】
実験室では、チップから突き出ている約2mmのワイヤを伴う「WAHL」コードレスはんだごての置き換え可能なチップに据え付けられた、直径80μmのタングステンワイヤが使用
されている。熱電対を用いて、チップの温度はその定常状態で測定され、そして定電流設定を変化させることによって、700℃を超える定常状態の温度に容易に達し得ることが留
意される。所望の変調を達成するために、低質量の、高速応答電気機械的アクチュエーターを、ワイヤの位置が200Hzの速度までで2mmを超えて直線的に移動され得るようチップに連結した。次いで、精密ステージ上に装置全体を備え付けることによって、この振動しているチップは、一回10ミリ秒未満の時間のみ皮膚に接触し(「オン時」)、一方、任意に長い期間の「オフ時」がパルス発生器を適宜にセットすることによって達成され得るような様式で、非常に制御可能に皮膚表面と接触し得た。これらのインビボの研究によって、穿孔を受けている被験体が、ワイヤのチップが皮膚と接触していると知る前にさえ、穿孔は、実際に達成され得ることが示された。
【0178】
光学的に加熱された局所CPC色素の実施態様とこの実施態様との性能を比較するために
、以下のシミュレーションを実施例8の手順に従って行った。本質的に、初期条件を変えるだけで、ホットワイヤの実施態様は同一のシミュレーションコードを用いて行われ得る。ワイヤとの接触は本質的に瞬時に起こるので、CPC色素層において時間依存的な熱の蓄
積はなく、そしてワイヤが皮膚との接触から物理的に除去される場合、加熱されたCPC色
素層での場合のような、表面上になお残る残熱は存在しない。また、ワイヤそれ自身が切除/微細穿孔についての標的される領域を規定するので、角質層への適用前に熱エネルギ
ーの横への拡散はあってはならない。「ホットワイヤ」実施態様の比較性能を
図17〜19に示す。
【0179】
実施例12
この実施例では、実施例10の手順に従って皮膚を予冷した以外は、実施例11の手順に従った。同様に、標的部位を予冷することによって、「ホットワイヤ」実施態様と同様の明確な結果が得られる。「ホットワイヤ」アプローチの予冷したシミュレーションの結果を、
図20〜22に示す。
【0180】
実施例13
本開示の背景の導入で議論したように、Tankovichの'803特許は、一見したところ本発
明の請求の範囲に類似しているようである。本実施例では、シミュレーションモデルを、Tankovich'803において明記された操作パラメーター(すなわち、1sのパルス幅および40,000,000W/cm
2の出力レベル)で設定した。
図23および24は、これらの条件下では、
角質層のどの部分も、水分が瞬時に蒸発する閾値である123Cに達せず、従って角質層の
切除/微細穿孔が生じないことを示す。実際、このタイプの高いピーク出力を適用すれば
、局所色素層への短時間のパルスは、皮膚に影響を及ぼさずに単に皮膚の表面の色素を蒸発させるのみである。従って、この実施例から、Tankovichの'803に明記される条件は、
本発明の請求の範囲では有効でないことが示される。
【0181】
実施例14
この実施例では、実施例6の手順に従って皮膚を穿孔した後に得た間質液を採取して分析し、そのグルコース濃度を決定した。データを4人の糖尿病でない被験体およびグルコース負荷試験を受けている6人のI型糖尿病の被験体について得た。被験体の年齢は、27から43歳の範囲であった。研究の目的は、被験体から十分な間質液(ISF)を無痛的に採取
するための方法の有用性を試験して、ISFサンプルのグルコース含量についてのアッセイ
を可能にし、次いでこれらの濃度を被験体の全血中に存在するグルコースレベルと比較することであった。
【0182】
全ての被験体に、血液およびISFのグルコースアッセイの両方を、Miles-Bayerからの「ELITE」システムを使用して行った。10人の被験体全員が同一の測定プロトコルを受け、
インスリン依存性糖尿病の被験体についてはグルコース負荷およびインスリン注射について考慮した調整を行った。
【0183】
研究の基本的な設計は、適度な数のボランティア(このうち何人かは糖尿病であり、何
人かは糖尿病でない)を募集することであり、彼らから、一連のISFと全血とのサンプルの対を3〜4時間の研究期間を通して3〜5分毎に採取した。血液およびISFのサンプルを
共にグルコースについてアッセイし、そして血中グルコースレベルと間質液との間の統計学的関係を決定した。全血のグルコースレベルと比較して、仮説をたてたISFグルコース
レベルの時間的な遅れを試験するために、研究の被験体をそのグルコースレベルが顕著で劇的な変化を表すように誘導した。これは、各被験体を試験の開始前の12時間絶食させ、次いで、3つの絶食した血液およびISFのグルコースレベルのセットで各被験体の基準線
グルコースレベルを確立した後に、被験体にグルコース負荷を与えることによって行った。基準線レベルを確立した後、被験体に以下のガイドラインに基づいて甘いジュースの形態でのグルコース負荷を与えた:
i.対照被験体については、グルコース負荷を体重1ポンドあたり0.75グラムのグルコースに基づいて算出した。
【0184】
ii.インスリン依存性糖尿病の被験体については、グルコース負荷は50グラムのグルコースであった。さらに、グルコース負荷の摂取の直後、糖尿病の被験体には、速効性インスリンの通常の午前の用量の自己注射を行わせた。糖尿病の被験体が300mg/dLを上回る絶食時グルコースレベルを示す場合には、最初にインスリンの自己注射を行ってもらい、そして血中グルコースレベルが120mg/dL未満に低下した後にグルコース負荷を提供した。
【0185】
募集した各被験体には、まず「インフォームド・コンセント」文書において研究について完全に説明した。彼らは公式的にこのプログラムに参加する前にこの文書を理解し、そしてそれに署名することが求められた。受諾に際し、彼らは病歴についての質問表を完成した。実行した詳細な臨床的手順は以下の通りであった:
(a)被験体は、研究の前夜の午後9:00から絶食し、水のみを摂取した。カフェイン、たばこ、果汁はこの期間中許可されなかった。
【0186】
(b)被験体は、翌日の午前9:00までに試験の施設に到着した。
【0187】
(c)被験体は、研究手順の間リラックスできるように、リクライニングチェアに座った。
【0188】
(d)被験体が到着したときから開始して3〜5分間隔で全血およびISFのサンプルの
両方を採取し、次の3〜4時間これを続けた。データを採取した期間は、被験体の血中グルコースレベルがグルコース負荷後に正常な範囲に戻り、そして安定した時に基づいた。ISFサンプルを、光学穿孔であるISFポンプ法(以下により詳細に記載)を用いて採取した。各ISFサンプルは、ほぼ5μL容量であり、ELITE試験片(strip)を満たすに十分であることを確実にした。血液サンプルを、従来の指穿刺ランセット(fingerpricklancet)を用いて
得た。ISFおよび血液のサンプルの両方を、Miles-BayerからのELITE家庭用血糖値測定器
システムでグルコースについて迅速にアッセイした。「真の」血中グルコースレベルの評価値を改善するために、各指スティックサンプルについて2つの別々のELITEアッセイを
行った。
【0189】
(e)与えられた個体について全データ採取期間を通して同一部位からのISFの連続し
た採取を容易にするために、5×5行列の25の微細孔を被験体の上部前腕部に作製した。各微細孔は直径が50μmと80μmとの間であり、それぞれは300μm離れていた。中央に6mmの穴を有する直径30mmのテフロン(登録商標)ディスクを、感圧接着剤で被験体の前腕部に接着し、そして6mmの中央の穴が5×5行列の微細孔にわたって位置するように、設置
した。小さな吸引ホースを接続し、穿孔した領域に軽く減圧(10〜12インチHg)を適用することにより、微細孔を通してISFを体外へ流出させるように誘導し得る便利な方法がこの
接着によって可能になった。(登録商標)ディスクの最上部に、透明なガラス窓を設置し、これによって操作者がその下の微細穿孔される皮膚を直接目視することが可能になった。5μLのISF滴が皮膚の表面上に形成された場合、この窓を通してその部位を視覚的にモニタリングすることによりこれは容易に確認され得た。この減圧のレベルは、約5ポンド/インチ
2(PSI)の公称圧力勾配を生じた。微細孔が全くなければ、ISFは、軽度の減圧の
みを用いて被験体の身体から採取され得なかった。
【0190】
(f)最初の3つのサンプルの対を採取した後、被験体に非常に甘くしたオレンジジュースの形態でグルコース負荷を与えた。与えたグルコースの量は、糖尿病でない被験体については体重1ポンドあたり0.75グラムであり、そして糖尿病の被験体については50グラムであった。糖尿病の被験体にはまた、グルコース負荷の摂取と同時に、この50グラムレベルのグルコースに基づいて適切に算出した投与量で、速効性のインスリンの注射(定期
的)を自己投与させた。インスリンの注射を受けたときと注射の最大の効果が現れる時と
の間の通常の1.5〜2.5時間の遅れで、糖尿病の被験体は、300mg/dLまでの範囲で血中グルコースレベルが上方向へ偏位し、次いで、インスリンが効果をもたらすにつれ正常な範囲へ急速に低下することを示すことが予測された。糖尿病でない被験体は、標準的なグルコース耐性試験のプロフィールを示すことが予測され、これは、代表的にはグルコース負荷の投与後の45分から90分までに、150mg/dLと220mg/dLとの間で血中グルコースレベルがピークに達し、次いで次の1時間程度にわたってその正常な基準線レベルに急速に低下することを示した。
【0191】
(g)グルコース負荷の投与、またはグルコース負荷およびインスリン注射の投与に続き、被験体に、次の3〜4時間の間に5分毎に、ISFおよび指穿刺全血のサンプルの採取
を、同時に行った。3つの連続するサンプル中の血中グルコースレベルが被験体のグルコースが安定したことを示したときに、サンプリングを終了した。
【0192】
これらのデータの試験に際して、いくつかの特徴が明らかであった。特に、ELITE試験
片の特定のバッチのいずれについても、血液について示されたレベルと比較して、血糖測定器(glucometer)でmg/dLのグルコースで示された出力において、明らかなずれが存在す
る。読みとり値の上昇は、ISF中にヘマトクリットが存在しないこと、およびISFと全血との間の電解質濃度の正常な差異によると予測される。この出力におけるずれの基礎となる理由にかかわらず、参照アッセイとの比較によって、真のISFグルコースレベルがELITEシステムによって出された値と直線的に相関することが決定された。そのスケーリング係数は、ELITE片のいずれの特定のバッチについても一定であった。結果として、ISFグルコースレベル値対全血測定値の比較については、一次の直線相関がISFデータに対して以下の
ように適用された:ISF
グルコース=0.606*ISF
ELITE+19.5。
【0193】
ISFグルコースレベルを測定するために使用した場合、このELITE血糖測定器の出力のスケーリングは、全データセットにわたって、血中グルコースレベルを評価するためにISF
の使用に関する誤差項(error terms)を試験することが可能になる。もちろん、線形スケーリングが全くなくても、ISFグルコース値と血中グルコースレベルとの間の相関は、ス
ケーリングした場合と同一である。
【0194】
ISFグルコースの題目に関する公開された大多数の文献ならびに予備的なデータに基づ
くと、ISFグルコースレベルと指スティックからの全血中に存在するグルコースレベルと
の間には、15〜20分の遅れが観察されることがもともと予測された。このことは、分析時にデータが示したものではない。特に、各個体のデータセットを解析して、ISFグルコー
スレベルと血中グルコースレベルとの間の最大の相関を達成するために必要とされた時間のずれを決定したとき、被験体のこのセットについての最悪の場合の時間の遅れはわずか13分であり、そして平均的な時間の遅れは、わずか6.2分であったことが発見された。数
人の被験体は、ほとんど瞬間的(約1分)な時間的追従を示した。
【0195】
このデータセットで観察された最小の遅れ量に基づいて、
図25に示すグラフは、長期の時間スケールで次々に連結した全10個のグルコース負荷試験を示す。全臨床データセットを全く同じ様式で処理した場合、ISFグルコースレベルと血中グルコースレベルとの間
で高レベルの追従を示す、時間のずれがまったくないデータが示される。全データセットを全体的にずらして最良の時間的追従評価値を見出した場合、ISFグルコースレベルと血
中グルコースレベルとの間の相関は、2分の遅れでr=0.97のr値でピークになる。これはr=0.964のずれのない相関からごく些細に改善されただけである。従って、分析の残
りについては、ISF値を時間のずれを課さずに処理する。すなわち、血液およびISFのグルコースレベルの各セットを、同時に採取したデータ対として扱う。
【0196】
ずれのないEliteISF読みとり値をISF中に存在する比例グルコースを反映するようにス
ケーリングした後、これらのデータに関する誤差を試験することは可能であった。これに関して最も単純な方法は、2つのELITE指スティック血中グルコース読みとり値の平均値
が実際に絶対的に正しい値であると仮定し、次いでスケーリング化ISF値をこれらの平均
血中グルコース値と単に比較することである。これらのデータは以下の通りである:標準偏差血液-ISF、13.4mg/dL;ISFの分散係数、9.7%;2つのELITEの標準偏差、8.3mg/dL;および血液の分散係数(Miles)、6%。
【0197】
これらのデータが示すように、血液に基づく測定値は既に誤差項を含む。実際、製造業者が公開した性能データは、ELITEシステムが、5%と7%との間の見かけの分散係数(CV)を有し、これは、血中のグルコースレベルおよびヘマトクリット量に依存していること
を示している。
【0198】
ISFグルコースと血中グルコースとの間の差異項をさらに見たものを、
図26に分散プ
ロットの形で示す。この図では、90%信頼区間の上部および下部の境界もまた、参考のために示す。たった2つの例外だけで、100mg/dL未満の血中グルコースレベルの範囲内の全てのデータがこの90%信頼区間の誤差バー内に収まっていることが認められることは興味深い。このことは、低血糖への傾向が消失する結果が、糖尿病の使用者にとって顕著に有意であるので、重要である。すなわち、それらを高めに予測するよりも40〜120mg/dLでグルコースレベルを低めに予測することがはるかに良い。
【0199】
本質的に、ELITEシステムをISFで使用したときの基本的なアッセイ誤差が全血でのELITEの使用に関連したアッセイ誤差に匹敵すると仮定した場合、血中グルコースからのISFグルコースの偏差は以下のように記載され得る:
ISF
偏差=[(ISF
実測値)
2+(ISF
実測値)
2]
1/2
この式を上記の値に適用して、ISF誤差項の評価した「真の」値を求め得る:
ISF
実測値=[(ISF
偏差)
2−(血液
実測値)
2]
1/2
すなわち、式を解くと、ISF
実測値=[(13.4)
2−(8.3)
2]
1/2=10.5mg/dl
血中グルコースレベルに対するISFの相対偏差のヒストグラムを
図27に示す。
【0200】
生体膜における孔を通る薬物送達
本発明はまた、薬物(現在は経膜的に送達されている薬物を包含する)を、角質層もしくは他の生体膜における微細孔を通して送達するための方法を包含する。1つの例示的な実施態様では、送達は、穿孔部位の上のリザーバーに溶液を入れることにより達成される。別の例示的な実施態様では、圧力勾配を、送達をさらに増強するために使用する。なお別の例示的な実施態様では、音波エネルギーを、送達をさらに増強するための圧力勾配と共にまたは用いずに、使用する。音波エネルギーは、伝統的な経皮的パラメーターに従って操作され得るか、または瞬間的に記載される音響流動効果の利用によって操作され得る。これにより、送達溶液を穿孔された生体膜に押し込む。
【0201】
実施例15
本実施例は、局所鎮痛剤であるリドカインの送達のための角質層穿孔の使用を示す。リドカイン溶液はまた、角質層を横切るその受動的拡散を増強するために設計された化学的浸透増強処方物を含んでいた。例示的な送達装置300の図面を
図28に示し、ここでは、装
置は、薬物含有溶液312を保持するためのリザーバー308を囲むハウジング304を備える。
ハウジングの上部は、音波エネルギーを提供し、角質層324中の微細孔320を通して薬物含有溶液の輸送を補助するための超音波トランスデューサー316を備える。超音波トランス
デューサー中のポート328は、角質層中の微細孔を通して薬物含有溶液の輸送をさらに補
助するために、それに対する圧力の付与を可能にする。送達装置は、個体の皮膚の選択された領域に対して、それが、少なくとも1つの、そして好ましくは複数の微細孔の上に置かれるように適用される。ハウジングの下部に付着された接着層332は、この装置を、リ
ザーバー中の薬物含有溶液が微細孔と液体連絡するように、皮膚に接着させる。微細孔を通しての薬物の送達は、下にある表皮336および真皮340中への輸送をもたらす。
【0202】
5人の被験体について、超音波とともに穿孔を用いて薬物送達の有効性を試験した。この実験では、親指と上腕との間で等しい間隔で配置され、約3インチ離れた被験体の左前腕上の2つの部位を用いた。親指近くの部位を、部位1と呼び、親指から最も遠い部位を部位2と呼ぶ。部位1は、対照として用い、ここでは、リドカインおよびエンハンサー溶液を、同じ送達装置300を用いて、しかし任意の角質層の微細穿孔または音波エネルギー
を用いずに適用した。部位2を、1cmの直径の円内に含まれる格子中で0.8mmの間隔で配
置された24の穴で穿孔した。部位2中の微細孔を実施例6の手順に従って生成した。リドカインおよび低レベルの超音波を適用した。超音波の適用を、0.4ボルトのピーク間入力(peak topeakinput)を用い、65.4kHz基礎周波数を伴う10Hzで生じる1000カウントのバ
ースト(burst)、即ち、15ミリ秒のバーストの間エネルギー化し、次いで次の85ミリ秒の
間は切られるトランスデューサーを用いたパルス変調信号を用い、バースト方式(burst mode)にセットされた注文製造のZevex超音波トランスデューサーアセンブリを用いて行った。増幅器のトランスデューサーへの測定された出力は、0.090ワットRMSであった。
【0203】
リドカインの適用の後、試験部位を横切って30ゲージのワイヤで擦ることにより感覚測定を行った。実験を両方の部位で行い、部位1では10〜12分間および部位2では2回の5分間の間隔を、同じ部位に対して連続的に適用した。両方の部位を、10〜0のスケールを用いるしびれ感について評価した。ここで、10はしびれ感のないことを示し、そして0は試験された被験体により報告されたような完全なしびれ感を示した。以下の結果の要約は5人の被験体すべてについてである。
【0204】
対照部位である部位1は、10〜12分でほとんどまたは全くしびれ感を示さなかった(ス
ケール7〜10)。約20分で、溶液が完全に角質層に浸透するにつれて、いくらかのしびれ感(スケール3)が部位1で観察された。部位1は、リドカイン適用の終了時にきれいにされた。部位2は、穿孔を含む1cm円中でほぼ完全なしびれ感(スケール0〜1)を示した。この1cm直径の円の外側では、しびれ感は、2.5cm直径の円では1までほぼ直線的に減少
し、2.5cm直径の円の外側ではしびれ感はなかった。第2回目の付与後の部位2の評価は
、約1.2cm直径の全体としてわずかにより大きなしびれの円を生じ、しびれ感は、前腕に
対して垂直な2〜2.5cmの直径と前腕に対して平行な2〜6cmの直径とを有する不規則な
卵形パターンで1まで直線的に減少した。この領域の外側ではしびれ感は認められなかった。代表的な被験者に対して得られた例示の結果のグラフ表示を
図29A〜Cに示す。
図29A
および29Bは、それぞれ、5および10分後に(穿孔された)部位2で得られた結果を示す。
図29Cは、部位1(穿孔のない対照)で得られた結果を示す。
【0205】
経皮流動を増強するための音波エネルギーおよびエンハンサー
音波トランスデューサーにより生成した音波エネルギー領域(field)の物理学が、音波
周波数が他の方法により変調され得、達成される流動速度を改善し得る方法において利用され得る。本明細書で参考として援用される米国特許第5,445,611号の
図1に示されるよ
うに、音波トランスデューサーのエネルギー分布は、近領域(nearfield)および遠領域(farfield)に分けられ得る。長さNにより特徴付けられる近領域は、最初のエネルギー最小から最後のエネルギー最大までのゾーンである。最後の最大の遠位にあるゾーンが遠領域である。近(N)領域パターンは、多数の密接な間隔で配置された局所圧力ピークおよび空白(null)が優勢である。近領域ゾーンの長さNは、周波数、サイズ、およびトランスデューサー面の形状、および超音波が通って伝わる媒体中の音の速度の関数である。単一トランスデューサーについては、その通常操作範囲内の強度変動は、線形様式である以外は、音波エネルギー分布の性質に影響しない。しかし、複数トランスデューサーを備えたシステムについては、すべてが周波数および振幅の両方において変調され、個々のトランスデューサーの相対強度は、それが皮膚であるか別の媒体であるか否かに拘わらず、音波媒体中のエネルギー分布に影響する。
【0206】
例えば、約1〜20%の範囲内で、適度の量だけ音波エネルギーの周波数を変えることにより、ピークおよび空白のパターンは、相対的に一定なままであるが、近領域ゾーンの長さNは周波数に正比例して変化する。周波数の顕著な変化(例えば、2以上の係数)は、ト
ランスデューサー中に異なるセットの共鳴または振動モードを生成する可能性が高く、有意にかつ予期不能な異なる近領域エネルギーパターンを生じる。従って、音波周波数における適度な変化を用いて、ピークと空白の複合パターンは、アコーディオン様様式で圧縮または伸張される。周波数変調の方向を選択することにより、これらの局所圧力ピークのシフトの方向は制御され得る。皮膚の表面で音波エネルギーを適用することにより、音波周波数の選択的変調は、皮膚を通るこれらの局所圧力ピークの動きを、身体の内部に向かって、または身体の表面に向かってのいずれかに制御する。高から低への周波数変調は、圧力ピークを身体内に駆動し、その一方、低から高への周波数変調は、圧力ピークを、身体内から皮膚の表面に向かってかつ皮膚を通って身体の外側に引っ張る。
【0207】
この適用のための代表的なパラメーターを、例えば、1.27cm直径の音波トランスデューサーおよび名目上10MHzの操作周波数および水の音響インピーダンスに類似の音響インピ
ーダンスを仮定すると、1MHzの周波数変調は、角質層の近傍で近領域エネルギーパターンのピークと空白の約2.5mmの動きを生成する。分析物の経皮的および/または経粘膜的回収の展望からは、この程度の動きは、角質層の十分に下の領域、そして表皮、真皮、およびその下のその他の組織さえへの接近を提供する。任意の所定のトランスデューサーについて、この周波数変調が最も効果的である周波数の最適範囲が存在し得る。
【0208】
皮膚を横切る薬物または分析物の流動性はまた、抵抗力(拡散係数)または駆動力(拡散
に対する勾配)のいずれかを変えることにより増加させ得る。流動性は、いわゆる浸透または化学的エンハンサーの使用により増強され得る。
【0209】
化学的エンハンサーは、2つの主な成分のカテゴリー、即ち、細胞エンベロープ混乱性化合物および溶媒、または細胞エンベロープ混乱性化合物と溶媒との両方を含む二元系から構成される。
【0210】
細胞エンベロープ混乱性化合物は、局所的薬学的調製物において有用であるとして当該技術分野で公知であり、そしてまた皮膚を通じる分析物の回収において機能する。これらの化合物は、角質層の細胞エンベロープの脂質構造を混乱させることにより皮膚浸透を補助すると考えられている。これら化合物の包括的なリストは、本明細書中に参考として援用される1982年6月13日に公開された欧州特許出願第43,738号に記載されている。任意の細胞エンベロープ混乱性化合物が本発明の目的に有用であると考えられる。
【0211】
適切な溶媒は、水;プロピレングリコールおよびグリセロールのようなジオール;エタノール、プロパノール、および高級アルコールのようなモノアルコール;DMSO;ジメチルホルムアミド;N,N-ジメチルアセトアミド;2-ピロリドン;N-(2-ヒドロキシエチル)ピロリドン、N-メチルピロリドン、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オンおよびその他のn-
置換-アルキル-アザシクロアルキル-2-オン(アゾン)などを含む。
【0212】
1985年8月27日に発行された、Cooperの米国特許第4,537,776号は、浸透増強のための
特定の二元系の使用を詳述する先行技術および背景情報の優れた要約を含む。その開示の完全性のため、その中で用いられる情報および用語を本明細書中に参考として援用する。
【0213】
同様に、上記で言及した欧州特許出願第43,738号は、親油性薬理学的活性化合物送達用の細胞エンベロープ混乱性化合物の広範なカテゴリーとともに、溶媒として選択されたジオールを用いることを教示する。細胞エンベロープ混乱性化合物およびジオールの開示における詳細さのために、欧州特許出願第43,738号のこの開示もまた、本明細書中に参考として援用される。
【0214】
メトクロプラミド浸透を増強するための二元系が、1985年8月21日に公開された、英国特許出願第GB 2,153,223 A号に開示され、そしてC8-32の脂肪族モノカルボン酸(C18-32の場合不飽和および/または分枝)の一価アルコールエステルまたはC6-24脂肪族モノアルコ
ール(C14-24の場合不飽和および/または分枝)および2-ピロリドン、N-メチルピロリドン
などのようなN-環状化合物からなる。
【0215】
プロピレングルコールモノラウレートおよびメチルラウレートとともに、ジエチレングリコールモノエチルまたはモノメチルエーテルからなるエンハンサーの組合せは、プロゲステロンおよびエストロゲンのようなステロイドの経皮送達を増強することが、米国特許第4,973,468号に開示されている。グリセロールモノラウレートおよびエタノールからな
る、薬物の経皮送達のための二重のエンハンサーが、米国特許第4,820,720号に示されて
いる。米国特許第5,006,342号は、エステル/エーテルの各脂肪酸/アルコール部分が約8
〜22炭素原子である、C
2からC
4アルカンジオールの脂肪酸エステルまたは脂肪アルコールエーテルからなる、経皮薬物投与のための多くのエンハンサーを列挙している。米国特許第4,863,970号は、局所適用のための浸透増強組成物を示し、この組成物は、所定量の、
オレイン酸、オレイルアルコール、およびオレイン酸のグリセロールエステルのような1つ以上の細胞エンベロープ混乱性化合物;C
2またはC
3アルカノールおよび水のような不活性希釈剤を含む浸透増強ビヒクル中に含まれる活性透過性物質を含む。
【0216】
その他の化学的エンハンサーは、二元系に必ずしも関連せず、Herschler、米国特許第3,551,554号;Herschler、米国特許第3,711,602号;およびHerschler、米国特許第3,711,606号で教示されるようなDMSOまたはDMSOの水溶液、ならびにCooper、米国特許第4,557,943号に記載されるようなアゾン(n-置換-アルキルアザシクロアルキル-2-オン)を含む。
【0217】
いくつかの化学的エンハンサーシステムは、毒性および皮膚過敏のような負の副作用を有し得る。米国特許第4,855,298号は、皮膚刺激特性を有する組成物を含む化学的エンハ
ンサーにより引き起こされる皮膚過敏を、抗刺激効果を提供するに十分な所定量のグリセリンを用いて低減する組成物を開示する。
【0218】
角質層の微細穿孔と、化学的エンハンサーの使用をともなう音波エネルギー適用の組合せは、角質層を通じる分析物回収または浸透送達の改善された速度を生じ得るので、利用された特定のキャリアビヒクルおよび特に化学的エンハンサーは、このいくつかが上記で述べられそして本明細書中に参考として援用されている先行技術ビヒクルの長いリストから選択され得る。当該技術分野で容易に入手可能であるものを特に詳細に記述しまたは列挙する必要があるとは考えられない。本発明は、化学的エンハンサー自身の使用に関せず、そして皮膚を通じる薬物の送達に有用なすべての化学的エンハンサーは、光学的微細穿孔において色素とともに、かつまた皮膚表面の下からおよび皮膚表面を通じて分析物の測定可能な回収または皮膚表面を通じる透過性物質または薬物の送達を行うことにおいて音波エネルギーとともに機能すると考えられる。
【0219】
実施例16
変調された音波エネルギーおよび化学的エンハンサーを、ヒト死体皮膚試料での経皮流動を制御する能力について試験した。これらの試験では、表皮膜は、実施例1の熱分離法によりヒト死体全体皮膚から分離した。表皮膜を切断し、そして角質層を上部(ドナー)区画または下部(レシーバー)区画のいずれかに面して浸透セルの二等分の間に配置した。改変されたFranzセルを用いて、米国特許第5,445,611号の
図2に示されるように表皮を保持した。各Franzセルは、1つ以上のクランプを用いて一緒に保持された上部チャンバーと
下部チャンバーからなる。下部チャンバーは、そこを通じて物質が添加または取り出され得るサンプリングポートを有する。角質層試料は、上部チャンバーと下部チャンバーとの間に、それらが一緒にクランプで固定されるときに保持される。各Franzセルの上部チャ
ンバーは改変されて、超音波トランスデューサーを、角質層膜の1cm以内に配置させるよ
うにする。メチレンブルー溶液を指標分子として用い、角質層の浸透を評価した。各実験のプロセスおよび結果の視覚による記録を、ビデオカメラおよびビデオカセットレコーダー(示さず)を用いて日時を記録した磁気テープ形式で得た。さらに、試料を、吸収分光光度計を用いる測定のために回収し、実験の間に角質層膜を浸透した色素の量を定量した。使用に適した化学的エンハンサーは、上記のような広範な範囲の溶媒および/または細胞
エンベロープ混乱性化合物にわたって変動し得る。利用された特定のエンハンサーは、50/30/15/2.5/2.5容量比のエタノール/グリセロール/水/グルセロールモノオレート/メチルラウレートであった。音波エネルギーを生成かつ制御するためのシステムは、プログラム可能な0〜30MHzの任意の波形発生器(StanfordResearchSystemsModel DS345)、20ワッ
ト0〜30MHz増幅器、および15および25MHzにそれぞれピーク共鳴を有する2つの非焦点超音波浸漬トランスデューサーを備えていた。同じドナーからの角質層試料の試験のために6つのセルを同時に調製した。一旦角質層試料を取り付け、それらを、任意の試験がなされる前に少なくとも6時間の間、蒸留水を用いて水和させた。
【0220】
実施例17
化学的エンハンサーなしの音波エネルギーの効果
実施例16で上記したように、熱分離した表皮を、特に他に注記されなければ、表皮側を上に向け、そして角質層側を下に向けてFranzセル中に置いた。下部チャンバーを蒸留水
で満たす一方、上部チャンバーを蒸留水中の濃縮メチレンブルー溶液で満たした。
【0221】
熱分離された表皮:上部チャンバーをメチレンブルー溶液で満たした直後、セルの1つにトランスデューサーを完全に浸漬して音波エネルギーを適用した。この配置は、例えば、トランスデューサーを、皮膚のひだの反対側に有すること、または音波エネルギーを、同様に配置された反射体プレートから反射させられるようにしてひだの他の側から収集デバイス中に分析物を「押す」ために用いられることに相当する。音波エネルギーセッティングは、最初、20ボルトピーク間(P-P)入力波形に等しい強度で、名目上25MHzの操作周波数にセットする。これは、おおよそ、トランスデューサーに対して1ワットの平均入力電力および同様に、この特定のトランスデューサーについて製造者の公称値1%の変換効率を仮定すると、活性領域の0.78cm
2表面または0.13ワット/cm
2の音波強度にわたって約0.01ワットの音波出力電力に相当する。3つの他の対照セルは、それらに適用される音波エ
ネルギーを有さなかった。5分後に音波エネルギーを遮断した。この間隔の間に任意のセルで角質層を横切る色素流動の可視的な指標は観察されず、2mlのレシーバー媒体中、約0.0015%(v/v)より低いレベルの色素溶液を示した。
【0222】
これらの同じ3つの対照セルおよび1つの実験セルの試験を以下のように継続した。音波エネルギーの強度は、70ボルトピーク間入力12ワット平均パワー入力の駆動装置から利用できる最大限の可能な出力、または(0.13ワット/cm
2)の音波出力強度まで増加させた。また、周波数をセットして30MHzから10MHzに変調または掃引(sweep)した。この20MHzの
掃引は1秒あたり10回実施し、即ち、掃引速度は10 Hzであった。これらの入力パワーレ
ベルでは、オーバーヒートを避けるために音波エネルギートランスデューサーをモニタリングする必要があった。接触熱電対をトランスデューサーの本体に付与し、そしてパワーのオンとオフをサイクルさせて42℃以下でトランスデューサーの最大温度を維持した。1分オンおよび1分オフの約50%のデューティサイクルで、約30分のサイクル最大パワーの後、なおメチレンブルー色素による角質層の肉眼で検出可能な浸透はなかった。
【0223】
次いで、冷却水ジャケットを音波エネルギートランスデューサーに取り付け、最大エネルギーレベルでさらなる励起を可能にした。同じ3つの対照セルおよび1つの実験セルを用い、音波エネルギーを、最大パワーで12時間実験セルに付与した。この時間の間、上部チャンバー中の流体の温度は、インビボの角質層の通常温度約31℃をほんのわずかに超える、ほんの35℃まで上昇した。上記のように、付与された音波エネルギーの12時間後、4つのセルすべてにおいて、角質層を通る色素流動の可視的な証拠がないことは明らかであった。
【0224】
実施例18
化学的エンハンサーなしの音波エネルギーの効果
穿孔された角質層:6つのセルを、実施例16で上記したように調製した。Franzセルの
上部チャンバーおよび下部チャンバーを保持するクランプを、上部区画を下部区画から通常シールするために必要な程度よりきつく、そして熱分離された表皮試料中に穿孔および「ピンホール」を人工的に導入する程度まで締めた。色素溶液を各セルの上部チャンバーに添加したとき、角質層中に形成された穿孔を通じる下部チャンバー中への色素漏失の即座の可視的な兆候があった。角質層が小さな「ピンホール」を有してこのように穿孔された細胞に音波エネルギーを付与したとき、角質層中のピンホールを通じる流体の輸送における急速な増加が観察された。指標色素分子の輸送速度は、音波エネルギーが付与されるか否かに直接関係した。即ち、音波エネルギーの付与は、角質層中のピンホールを通じる指標分子の即座の(ほぼ0.1秒未満の遅延時間)パルスを引き起こした。指標分子のこのパ
ルスは、音波エネルギーの遮断に際し即座に止まった(ほぼ0.1秒未満の遮断遅延)。パル
スは上記のように繰り返し得た。
【0225】
実施例19
音波エネルギーおよび化学的エンハンサーの効果
2つの異なる化学的エンハンサー製剤を用いた。Chemical Enhancer 1またはCE1は、50/30/15/2.5/2.5容量比のエタノール/グリセロール/水/グリセロールモノオレエート/メチルラウレートの混合物であった。これらは、一般に、薬学的賦形剤としての使用についてFDAにより安全、即ちGRASと見なされる成分である。化学的エンハンサー2またはCE2は、
経皮薬物送達の増強に非常に効果的であることが示された実験製剤であるが、一般に、長期間の経皮送達適用には刺激的過ぎると考えられている。CE2は、エタノール/グリセロール/水/ラウラドン(lauradone)/メチルラウレートを50/30/15/2.5/2.5の容量比で含んでいた。ラウラドンは、2-ピロリドン-5-カルボン酸(「PCA」)のラウリル(ドデシル)エステルであり、そしてまたラウリルPCAとも呼ばれる。
【0226】
6つのFranzセルを、熱分離された表皮を表皮層を下に設置、即ち、角質層側を上に向
けたことを除いて先(実施例16)のようにセットアップした。水和は、各試料を一晩蒸留水に曝すことにより確立した。実験を始めるために、6つのすべてのセル中の下部チャンバー中の蒸留水をメチレンブルー色素溶液で置き換えた。上部チャンバーを蒸留水で満たし、そしてセルを約30分間観察し、色素の通過がないことを確認し、いずれの細胞にもピンホール穿孔のないことを確認した。なにも見いだされなかったとき、上部チャンバー中の蒸留水を4つのセルから取り除いた。その他の2つのセルは、蒸留水対照として供した。次いで、2つの実験セルの上部チャンバーをCE1で満たし、そして他の2つの実験セルをCE2で満たした。
【0227】
音波エネルギーを、2つのCE2セルの1つに直ちに付与した。25 MHzトランスデューサ
ーを、0.13ワット/cm
2の最大強度で10 MHzから30MHzまで0.1秒毎の周波数掃引(sweeping)で用いた。50%デューテイサイクルで付与された音波エネルギーの10-15分後、色素流動
が肉眼で検出された。他の5つのセルでは色素流動は検出されなかった。
【0228】
次いで、同じセッティングでCE1を含む2つのセルのうちの1つに音波エネルギーを付
与した。5分以内に上部チャンバー中に色素が出現し始めた。従って、化学的エンハンサーをともなう音波エネルギーは、角質層を通るマーカー色素の経皮流動速度を著しく増加し、そして遅延時間を低減した。
【0229】
実施例20
音波エネルギーおよび化学的エンハンサーの効果
2つの化学的エンハンサーCE1およびCE2の製剤を、グリセリンを除いて調製し、そしてこれらのCE1MGおよびCE2MGと呼ぶ新たな製剤を、先のように試験した。水をグリセリンの代わりに置き換え、その他の成分の比率は変えなかった。3つのセルを、改変されたFranzセル中に、熱分離された表皮試料の表皮側を、チャンバーの上側に向けて調製した。次
いで、これらの試料を8時間蒸留水中で水和させた。水和工程の後、下部チャンバー中の蒸留水を、CE1MGまたはCE2MGのいずれかで置き換え、そして上部チャンバーを色素溶液で満たした。音波エネルギーを、3つのセルの各々に連続的に付与した。
【0230】
パルス状の、周波数変調された音波エネルギーを10分未満の合計時間付与したとき、角質層試料の浸透性における顕著な増加が観察された。角質層の浸透性は、化学的エンハンサーおよび音波エネルギーの両方に曝された領域を横切って比較的均一に変わった。色素が角質層を横切り得た「ピンホール」穿孔は観察されなかった。経皮流動速度は、音波エネルギーをオンまたはオフにすることによりすぐに制御可能であった。音波エネルギーをオフにすると、皮膚試料を通じて能動的に輸送される肉眼で観察できる色素がないように、経皮流動速度をすぐに低下させるように見えた;恐らく、速度は受動的拡散の速度まで減少した。音波エネルギーを再びオンにするとすぐに高レベルの流動速度を取り戻した。変調されたモードは、変調された速度で経皮流動速度における規則的な脈動増加を提供するようであった。音波エネルギーを一定の周波数にセットしたとき、この構成の経皮流動速度における最大の増加は、約27MHzで生じるようであった。
【0231】
3つすべての試料を用いて同じ結果が得られ、次いでセルからすべての流体を取り除き、そして角質層の両側に蒸留水をかけた。次いで、すぐに下部チャンバーを蒸留水で満たし、そして上部チャンバーを色素溶液で再び満たした。セルを30分間観察した。角質層試料中に穴は観察されず、そして下部チャンバー中に大量の色素は検出されなかった。下部チャンバー中に、先の曝露からの皮膚試料中に捕獲された色素およびエンハンサーに恐らく起因して少量の色素が肉眼で見えるようになった。さらに12時間後、検出された色素の量はなお非常に少量であった。
【0232】
実施例21
音波エネルギーおよび化学的エンハンサーの効果
穿孔された角質層:実施例16と同じドナーからの熱分離された表皮試料を用い、表皮側をチャンバーの上側に向けて3つのセルを調製した。試料を8時間水和させ、次いで下部チャンバー中の蒸留水をCE1MGまたはCE2MGのいずれかで置き換えた。次いで上部チャンバーを色素溶液で満たした。角質層試料中のピンホール穿孔は、色素を、角質層試料を通って下にあるエンハンサー含有チャンバー中に漏失させた。音波エネルギーを付与した。音波エネルギーを付与するとすぐに、色素分子が急速に孔を通じて押された。上記で示したように、孔を通る色素の急速な流動は、音波エネルギーの付与と直接にかつ即座に相関していた。
【0233】
実施例22
音波エネルギーおよび化学的エンハンサーの効果
低コスト音波エネルギートランスデューサーTDK#NB-58S-01(TDKCorp.)を、経皮流動速
度を増強するその能力について試験した。このトランスデューサーのピーク応答は、約5.4MHzであると測定され、他の局所ピークが、約7MHz、9MHz、12.4MHz、および16MHzで
生じた。
【0234】
次いで、このTDKトランスデューサーを、5.4MHzで、CE1MGと組み合わせた経皮流動速度を増強するその能力について試験した。表皮側を下部チャンバーに向けて3つのセルをセットアップし、次いで皮膚試料を8時間水和させた。色素溶液を下部チャンバーに置いた。トランスデューサーを、CE1MG中に浸漬した上部チャンバー中に置いた。音波エネルギ
ー励起として5.3から5.6MHzに掃引された周波数を用いると、顕著な量の色素が角質層を
通って移動し、そして5分でセルの回収ウェルに検出された。トランスデューサーが48℃の温度に達する局所加熱が生じた。音波エネルギーなしのCE1MGを用いる対照では、24時
間の曝露は、音波エネルギーをともなう5分の曝露より少ない色素を回収ウェル中に生成した。
【0235】
本実施例は、低コストの、低周波数音波エネルギートランスデューサーが、適切な化学的エンハンサーと組み合わせて用いられるとき、経皮流動速度に著しく影響し得ることを示す。理論的には、化学的エンハンサーとともに用いたとき、より高い周波数の音波エネルギーがより多くのエネルギーを角質層中に集中するが、より低い周波数の変調された音波エネルギーは、経皮流動速度を加速し、この技術を有用かつ実際的にし得る。
【0236】
実施例23
ヒト皮膚を横切る分子移動の証明:上記のTDKトランスデューサーおよびCE1MGを用いる試験を、このトランスデューサーの最高の局所共鳴ピークの1つである約12.4MHzで、12.5から12.8MHzまでの2Hz速度での周波数掃引および0.1W/cm
2未満の音波エネルギー密度
を用いて繰り返した。熱分離した表皮の表皮側を下に向け、色素溶液を下部チャンバーに置き、そしてエンハンサー溶液および音波エネルギーを上部チャンバー中に置いた。5分以内に顕著な量の色素が、角質層を横切って回収ウェル中に移動した。トランスデューサーにおけるオーム加熱は、5.4MHzで駆動される同じトランスデューサーを用いたときより顕著に少なく、化学的エンハンサーの温度増加はほんの約33℃であった。
【0237】
これらの低効率レベルでさえ、CE1MGおよびTDKトランスデューサーからの音波エネルギーを用いて得た結果は、モニタリング方向で顕著であった。米国特許第5,445,611号の
図3Aおよび3Bは、モニタリング方向で測定された経皮流動速度で3つの別のセルから得たデ
ータのプロットを示す。5分の時点でさえ、容易に測定可能な量の色素が、角質層の外側で、化学的エンハンサー中に存在し、これは表皮側から角質層を通り皮膚試料の「外側」領域までの輸送を示す。
【0238】
身体から分析物を回収およびモニタリングするための音波エネルギーまたは音波エネルギー/化学的エンハンサーアプローチの使用を最適化するために、目的の分析物の量をア
ッセイする手段が必要である。ユニットが、化学的エンハンサーを用いるかまたは用いないで音波エネルギーによって分析物を回収するプロセスにある間に複数の読み値を得るアッセイシステムは、広範な集団の基礎にわたって標準化し、かつ異なる皮膚特性および流動速度について規準化する必要性をなくする。回収システム中の分析物濃度が増加する時間に2つまたはそれ以上のデータ点をプロットすることにより、曲線に適合するアルゴリズムを適用して、曲線に関連する分析物の回収または流動速度を、平衡が達成される点に対して記載し、それによって区間(interval)濃度の測定を確立するパラメーターを決定し得る。この曲線の一般形は、個体により不変であり;パラメーターのみが変化する。一旦これらのパラメーターが確立されると、この関数の定常状態解法を解くこと(即ち時間は
無限大に等しい)、即ち、完全な平衡が確立される場合は、体内の分析物の濃度を提供す
る。従って、このアプローチは、皮膚浸透性における個体の変動に拘わらず、集団のすべてのメンバーについて、測定を、同じ量の時間で所望の正確さのレベルにすることを可能にする。
【0239】
いくつかの現存する検出技術が、本出願に適用可能であり、目下存在する。D.A.Christensen、1648Proceedings ofFiberOptic, Medical andFluorescent Sensors and Applications223-26(1992)を参照のこと。1つの方法は、ほぼ平行な様式で一緒に密接に配置さ
れている一対の光ファイバーの使用を含む。ファイバーの1つは、これを通って光エネルギーが伝達される供給源ファイバーである。他方のファイバーは感光ダイオードに連結された検出ファイバーである。光が供給源ファイバーを通って伝達されるとき、光エネルギーの一部である減衰波が、ファイバー表面に存在し、そしてこの光エネルギーの一部が検出ファイバーにより収集される。検出ファイバーは、捕獲した減衰波エネルギーを、それを測定する感光ダイオードに伝達する。このファイバーは、バインダーで処理されて測定されるべき分析物を引き付けかつ結合する。分析物分子が表面に結合する場合(分析物グ
ルコースのコンカナバリンAのような固定化レクチンへの、または固定化抗グルコース抗
体への結合のように)、2つのファイバー間の減衰波カップリングの量は変化し、そして
検出ファイバーにより捕獲されそしてダイオードにより測定されるエネルギー量も同様に変化する。短時間にわたって検出された減衰波エネルギーのいくつかの測定は、平衡曲線を記載するパラメーターの迅速な測定を支持し、それ故、身体内の分析物濃度の可能な計算を行う。このシステムを用いる5分以内の測定可能なフラックスを示す実験結果(米国
特許第5,445,611号の
図3Aおよび3B)は、正確な最後の読み値に対する十分なデータが、5分以内に採集されることを示唆する。
【0240】
その最も基礎的な実施態様では、音波エネルギーの付与および分析物の採集にに利用され得るデバイスは、天然または合成材料のいずれかの吸収パッドを備え、これは、用いられる場合、化学的エンハンサーの、そして皮膚表面からの分析物を受けるリザーバーとして供される。このパッドまたはリザーバーを、皮膚表面の選択された領域上に、受動的にまたは、革ひもまたは接着テープのような適切な固定手段によりに補助されるかのいずれかで、適所に保持される。
【0241】
音波エネルギートランスデューサーは、パッドまたはリザーバーが皮膚表面とトランスデューサーとの間にあり、そして適切な手段により適所に保持されるように配置される。電源がトランスデューサーに連結され、そしてスイッチ手段または任意の他の適切な機構により活性化される。トランスデューサーは活性化されて、周波数、位相または強度が変調された音波エネルギーを送達し、所望により、用いられる場合化学的エンハンサーを、リザーバーから皮膚表面を通って送達し、次いで、皮膚表面からリザーバー中に分析物を収集する。所望の固定されまたは変化する時間の後、トランスデューサーを不活性化する。今や目的の分析物を含むパッドまたはリザーバーは取り出され、分析物を、例えば、実験室で利用する任意の数の従来の化学的分析により、またはポータブルデバイスにより定量し得る。あるいは、分析物を定量するための機構を、分析物の収集のために用いるデバイス中に、デバイスの一体部分としてまたは付属物としてのいずれかとして構築され得る。分析物をモニタリングするデバイスは、本明細書に参考として援用される米国特許第5,458,140号に記載されている。
【0242】
実施例24
上記のような穿孔された皮膚表面を通じる試料採集の後、グルコースのような分析物を検出するための代替法は、酵素手段の使用により達成され得る。いくつかの酵素的な方法が、生物学的試料中のグルコースの測定のために存在する。1つの方法は、グルコースオキシダーゼを用いて試料中のグルコースを酸化し、グルコノラクトンおよび過酸化水素を発生させることを包含する。無色の色原体の存在下で、次いで過酸化水素を、ペルオキシダーゼによって水および発色産物に転換する。
【0243】
グルコースオキシダーゼ
グルコース グルコノラクトン+H
2O
2
2H
2O
2+ 色原体 H
2O
2+発色産物
発色産物の強度は、流体中のグルコースの量に比例する。この色は、従来の吸光度法または反射率法の使用により測定され得る。既知濃度のグルコースを用いる校正により、発色の量を用いて、採集した分析物中のグルコースの濃度を決定し得る。関係を決定するために試験することにより、被験体の血液中のグルコース濃度を計算し得る。次いで、この情報をフィンガー穿孔からの血中グルコース試験から得た情報を用いたのと同じ方法で用い得る。結果は5〜10分以内に得られ得る。
【0244】
実施例25
グルコース濃度の可視表示または読み出しを用いる任意のシステムは、診断医または患者にインスリンの投与または他の適切な投薬の必要性を示す。一定のモニタリングが所望され、そして矯正動作がほとんど同時にとられる必要がある重要な看護またはその他の状況では、表示は、適切な様式でのインスリンの投与またはその他の投薬の引き金となる適切な信号手段と連結され得る。例えば、外部または内部刺激に応答して活性化され得る、腹膜またはその他の体腔中に移植されるインスリンポンプがある。あるいは、角質層の微細穿孔による可能な増加した経皮流動速度および本発明で記載されたその他の技術を利用して、グルコース感知システムからの信号により調整された流動速度の制御を備えたインスリン送達システムを経皮的に実施し得る。このように、医療要求をモニタリングおよび/または診断するのみならず、矯正動作を同時に提供する、完全な生物医学的制御システ
ムが利用可能であり得る。
【0245】
同様の特性の生物医学的制御システムは、正確な電解質バランスを維持すること、またはプロスタグランジンのような測定された分析物パラメーターに応答して鎮痛薬を投与することのようなその他の状況で提供され得る。
【0246】
実施例26
聞こえる音と同様に、音波は、異なる特性を有する別の媒体に遭遇する場合、反射、屈折、および吸収を行い得る[D.Bommannanら、9
Pharm.Res.559(1992)]。反射器またはレ
ンズを用いて、目的の組織中の音波エネルギーの分布を集め得るかまたはそうでなければ制御し得る。ヒト身体上の多くの位置に対して、肌のひだ(fold offlesh)がこのシステ
ムを支持することを見出し得る。例えば、耳たぶは、音波の周波数および強度を変えることにより実現されることと同様の、方向制御を奏すること(例えば、分析物または浸透物
を穿孔された角質層を通して「押すこと」)を補助するために反射器またはレンズの使用
を可能にする便利な位置にある。
【0247】
実施例27
複数の音波エネルギートランスデューサーを用いて、穿孔された角質層を通る経皮流動の方向を、身体内にまたは身体からのいずれかに、選択的に向け得る。耳たぶのような皮膚のひだは、トランスデューサーをひだのいずれかの側上に位置させ得る。トランスデューサーは、選択的にまたは段階的な様式でエネルギーを与えられ、所望の方向に経皮流動を増強し得る。トランスデューサーまたは音響回路のアレイ(array)を構築し、レーダー
およびマイクロ波通信システムについて開発されたものと類似の段階的アレイ概念を用いて、目的の領域内に音波エネルギーを向けかつ集め得る。
【0248】
実施例28
この実施例では、熱分離された表皮試料が、最初、エキシマーレーザー(例えば、Lambda PhysikのモデルEMG/200;193nm波長、14nsパルス幅)で処理され、本明細書に参考とし
て援用される米国特許第4,775,361号に記載される手順に従って角質層を切除することを
除いて、実施例19の手順に従った。
【0249】
実施例29
この実施例では、熱分離された表皮試料が、最初、1,1'-ジエチル-4,4'-カルボシアニ
ンヨウ化物(Aldrich、
max=703nm)で処理され、次いで、合計70mJ/cm
2/50msを送達して
色素処理した試料にモデルTOLD915Oダイオードレーザー(ToshibaAmericaElectronic、690nmで30mW)を用いて角質層を切除することを除いて、実施例19の手順に従った。
【0250】
実施例30
この実施例では、色素がインドシアニングリーン(Sigmaカタログ番号I-2633;
max=775nm)であり、そしてレーザーがモデルDiolite800-50(LiCONiX、780nmで50mW)であること
を除いて、実施例29の手順に従った。
【0251】
実施例31
この実施例では、色素がメチレンブルーであり、そしてレーザーがモデルSDL-8630(SDLInc.;670nmで500mW)であることを除いて、実施例29の手順に従った。
【0252】
実施例32
この実施例では、色素が浸透エンハンサー、例えば、CE1を含む溶液中に含まれている
ことを除いて、実施例29の手順に従った。
【0253】
実施例33
この実施例では、色素およびエンハンサーを含む溶液が、超音波に曝すことにより補助されて角質層に送達されることを除いて、実施例29の手順に従った。
【0254】
実施例34
この実施例では、パルス光源が400〜1100nmの広範囲にわたり発光するが、システム中
に配置されたバンドパスフィルターを有して約650〜700nmの波長領域に出力を制限する短アークランプであることを除いて、実施例31の手順に従った。
【0255】
実施例35
この実施例では、熱分離された表皮試料が、最初、下にある組織に到達することなく、角質層中に微細穿孔を生成するように校正されたマイクロランセット(BectonDickinson)
を用いて穿孔されたことを除いて、実施例19の手順に従った。
【0256】
実施例36
この実施例では、熱分離された表皮試料が、最初、70-480mJ/cm
2/50msの範囲に集めら
れた音波エネルギーで処理され、角質層を切除することを除いて、実施例19の手順に従った。
【0257】
実施例37
この実施例では、角質層が、最初、流体の高圧ジェットを用いて水力学的に穿孔され、約100μmの直径までの微細穿孔を形成することを除いて、実施例19の手順に従った。
【0258】
実施例38
この実施例では、角質層が、最初、電気の短パルスを用いて穿孔され、約100μm直径までの微細穿孔を形成することを除いて、実施例19の手順に従った。
【0259】
実施例39
音響学的ストリーミング
治療物質の身体中への送達および/または身体内から外部リザーバー中への生体膜中に
形成された微細穿孔を通る流体の回収における音波エネルギーの新たな機構および適用がここで記載される。本発明のさらなる局面は、生物の外層下の生組織のインタクトな細胞(例えば、ヒト皮膚の表皮および真皮)のまわりおよびその間を流れる流体に対する音響学的ストリーミング(streaming)効果を引き起こす音波エネルギーの利用である。音響学
的ストリーミングは、これによって音波エネルギーが流体媒体と相互作用し得る十分に実証されたモードである。Nyborg,PhysicalAcousticsPrinciples and Methods、265-331
頁、VolII-Part B、Academic Press、1965。音響学的ストリーミング現象の最初の理論的分析は、Rayleigh(1884、1945)により与えられた。この対象の広範な処理において、Longuet-Higgins(1953-1960)は、任意の振動する円筒形表面の近傍に近づく結果となる二次元の流れに適用可能な結果を生じた。任意の表面に対する三次元近似は、Nyborg(1958)により開発された。Fairbanksら、1975UltrasonicsSymposiumProceedings, IEEEカタログ番
号 75,CHO 994-4SUにより記載されたように、音波エネルギー、および音響学的ストリー
ミング現象は、多孔性媒体を通る流体の流動性の促進において非常に有用であり得、潜在的受動的にまたは圧力勾配のみを付与した場合の50倍までの流動速度の測定可能な増加を示す。
【0260】
超音波を利用するすべての以前の経皮送達または抽出努力は、角質層を浸透化するために設計された音波エネルギーと皮膚組織との間の相互作用の方法に絞られていた。関連する相互作用の正確なモードは、角質層中の温度の局所的な上昇、そして結果として生じる角質細胞間の細胞間腔における脂質ドメインの融解に専ら起因すると仮定されてきた。Srinivasanら。他の研究者らは、角質層中の構造のマイクロキャビテーションおよびまたはせん断が、流体がより容易に流れ得るチャンネルを切り開くことを示唆した。一般に、経皮流動速度の増強のための音波システムの設計は、身体中に送達される薬物を含むゲル化または液体調製物の局所的な適用と組み合わせて用いる場合、被験体に対し「深い加熱」効果を生じるように設計された現存する治療的超音波ユニットの適用が、身体中への薬物流動速度における定量化し得る増加を生成し得るという初期の理解に基づいてきた。この生体膜に微細穿孔を作成する本明細書で教示された方法の意味では、音波エネルギーの使用は、今や古典的に定義された音移動(sonophoresis)の概念とは全く新たなおよび異なる意味であると考えられ得る。
【0261】
Franzセルの角質層(SC)中に存在したかまたは作成された小穴がインビトロ研究で用い
られた米国特許第5,458,140号および同第5,445,611号に述べられた実験的発見に基づき、穿孔されたSC試料のいずれかの側上の流体リザーバーに適切に駆動された超音波トランスデューサーが適用された際には、この穿孔された膜を通じて送液され得る流体の大きな流動速度の「音響学的ストリーミング」事象が生成され得る。
【0262】
本明細書で教示された、生物の生体膜に制御された微細穿孔を作成する方法を用いて、生物中にまたは生物からの流体の誘導に対する音波/流体相互作用の流体ストリーミング
モードの適用が、ここで実際的に探索され得る。例えば、臨床研究は、400μm平方中の一連の4つの80μm直径の微細穿孔を作成し、そして次いでこの領域に対して穏和な(Hgの10〜12インチ)の吸引を付与することにより、平均約1μlの間質液を誘導して、身体を外部チャンバー中に外部収集のために残し得ることを示した。穿孔部位を取り囲む組織の2〜6mm中に、内側に収束する同心円状の圧力波を能動的に発生するように構成された、小さな低パワーの音波トランスデューサーをこのシステムに追加することにより、このISF流
動速度が50%まで増加され得ることが証明された。
【0263】
皮膚組織における音波エネルギーの直接吸収のいくつかの形態(加熱を生成するために
必要とされるような)を作成する要望から我々自身を解放することにより、皮膚組織がそ
れに対して実質的に透明である、即ち、1kHzから500KHzの非常に低周波数の領域にある
音波エネルギーの周波数が決定され得る。試験された最も低い周波数のいくつかでさえ、有意な音響学的ストリーミング効果が、インビボ試験を観察するために顕微鏡を用いることにより観察され得、ここでは被験体の皮膚が微細穿孔され、そしてISFが誘導されて身
体から出て、皮膚の表面にプールされた。音波トランスデューサーにエネルギーを与えることにより、ISFが渦巻く場合、粒子物質の小片がISFとともに運ばれるような、音響学的ストリーミングの量の劇的な可視的徴候が示された。示された代表的な動きの大きさは以下のように記載され得る:皮膚の表面上のISFの3mm直径の円形のプールに対して、単一
の可視粒子は、1秒あたりほぼ3つの完全な軌道を完成しているように観察され得た。これは、2.5mm/秒より大きい直線流体速度に等しい。この作用のすべては、組織中への100mW/cm2より小さい音波パワーレベルで証明された。
【0264】
皮膚の上部表面、およびそこでの流体の活動を容易に観察し得るが、音波エネルギーの皮膚組織層内へのカップリングに応答して、これらの組織層内で動力学的になにが起こっているのかを評価することはさらにより困難である。このような大きな流体速度(例えば2.5mm/Sを超える)が表面上でこのように容易に誘導され得れば、生存真皮組織中に存在す
る細胞内チャンネルにおいて流体の流れにおけるいくらかの顕著な増加がまた、この音波エネルギー入力に応答して実現され得ると仮定し得る。現在のところ、低周波数の音波エネルギーが穿孔部位を取り囲む円中の領域に付与された場合の、所定のセットの微細穿孔を通して回収されたISFにおける増加が定量された。この実験では、穏和な吸引(HG10〜12インチ)にのみ基づくISF回収技術を、全く同じ装置を用いて、しかし音波トランスデューサーをかみ合わせて交替させた。一連の10の2分の回収期間にわたって、5つが単なる吸引でそして5つが吸引と音波エネルギー活性の両方で、音波供給源を活性化することにより、ほぼ50%より多いISFが同じ時間期間で回収可能であったことを観察した。これらの
データを
図30に示す。ISF流動速度におけるこの増加は、音波エネルギーに起因する試験
被験体からの感覚の増加の報告はなく実現された。この実験に用いた装置を
図31〜33に図示する。
図31〜33中のトランスデューサーアセンブリは、ほぼ8mmの内径および4mmの壁厚を有する、圧電材料の厚壁シリンダーからなる。シリンダーは、電場が外径および内径の金属被覆加工された表面を亘って付与される場合、シリンダーの壁の厚さが場の極性に応答して膨張または収縮するように極性を与えられている。実際には、この構成は、中央の穴の中に吸引されている組織を急速に圧搾するデバイスを生じ、これらの組織中に存在する流体に対して内放射状音響学的ストリーミング効果を生じる。この内側への音響学的ストリーミングは、穴の中央にある微細穿孔の位置によりISFをもたらすように応答し、
そこでそれは身体を外部採集に向かわせ得る。
【0265】
図34A-Bに示される類似のデバイスが構築され、そして試験され、そして類似の初期結
果を生じた。
図34A-Bの型では、Zevex,Inc.,Salt Lake City, Utahにより構築された超音波トランスデューサーを、音波ホーン(horn)に付加されたへら型伸長部を有するように改変した。4mm穴が、この伸長部の0.5mm厚のへら端部中に配置された。活性化された場合
、原則的な動きは、へらの長さに沿って長軸方向にあり、本質的に急速な前後の動きを生じる。4mmの穴の配置により引き起こされる金属へらの物理的摂動は、この点で、非常に活性な、しかし無秩序な大きな置換挙動を生じる。使用では、被験体の皮膚は、この穴に吸引され、そして次に音波エネルギーが、
図33に図示されるのと類似の様式で皮膚中に伝えられた。
【0266】
超音波のこの新たな適用の新規な局面は以下の基礎的な領域に存在する:
1.音波エネルギーの機能は、もはや、Langer、Kost、Bommannanおよびその他により
教示されたようなSC障壁膜を透過化することに焦点をあわせる必要はない。
【0267】
2.皮膚組織にほとんど吸収されないかなり低い周波数システムを利用し得、間質液を含む表皮細胞間の細胞間経路内に所望の流体ストリーミング現象をなおさらに作成し得る。
【0268】
3.組織とその中にある流体との相互作用のモードは、音波の文献で、細胞膜をせん断し、そして受動拡散プロセスを加速し得る古典的な振動性の相互作用とは独特かつ異なるモードとして認識されたいわゆる「ストリーミング」モードである。
【0269】
音波トランスデューサーに付与される幾何学的配置、周波数、パワーおよび変調を最適化することにより、穿孔された皮膚部位を通る流体流動における有意な増加が達成され得ることが示された。これらのパラメーターの最適化は、この顕微鏡的なスケールの環境で流体の流れの関係を支配する非線形を開発するために設計される。200kHz以下の周波数を用い、任意の検出可能な加熱またはその他の負の組織相互作用なしに、大きな流体効果が観察され得る。これらの測定可能な効果を生成するために必要な音波パワーレベルは非常に低く、代表的には、平均パワーレベルは100ミリワット/cm2以下である。
【0270】
従って、上記の実施例は、代表的システムであり、診断目的のためおよび浸透物の経皮送達のために、分析物の採集および定量における超音波または超音波および化学的エンハンサーの利用で採用され得る。本発明は、生体膜の穿孔とその後の音波エネルギーの適正な使用が、特に化学的エンハンサーの使用をともなう場合に、非侵襲性のまたは最小侵襲性の分析物の経皮的な測定または浸透物の送達を可能にするという発見に関する。しかしながら、本発明は、特定の例示のみに制限されない。多くの穿孔技術およびエンハンサーシステムが存在し、そのいくつかは、角質層を通る特定の分析物の検出および回収または浸透物の送達に、他よりも良好に機能し得る。しかし、本明細書中で呈示された指針内で、最適穿孔、エンハンサー、または付与される音波エネルギーの最適時間、強度および周波数、ならびに付与される音波エネルギーの周波数、振幅および位相の調節を得るための一定の量の実験は、当業者により容易に実施され得る。従って、本発明は、以下の請求項およびその機能的な等価物によってのみ範囲が制限される。
【0271】
さらなる進歩および改善
微細穿孔法の進歩および改善は、送達適用について特に適切なように実行されてきたが、それに限定されるものではない。一つの進歩は、上述の微細穿孔技術のいずれか一つを使用して、特に身体内への薬物または生物活性物質の送達のために、皮膚、粘膜、または植物外層を含む生体膜内へ、または生体膜を通過して選択された深さまで穿孔することである。別の進歩は、生体膜内に形成された微細穿孔を通しての生物への生物活性物質送達である。さらに別の他の進歩は、微細穿孔法の前、その間、または後に、薬物または生物活性物質のような物質を皮膚または粘膜内部層内に、またはそれを通過して送達する場合に、微細穿孔した皮膚または粘膜内部の層の透過性を増加するために、浸透増強手段を適用することである。
【0272】
生体膜内に形成される微細穿孔は、選択された深さまで伸長し得る。表皮内に伸長する微細穿孔は、角質層のみ、生細胞層内の選択された深さ、またはその下部にある結合組織層にまで貫通し得る。同様に、粘膜内に形成される場合は、微細穿孔は、上皮層の表層部のみ、または上皮内膜内の選択された深さ、またはその下部の固有層およびその下部組織内にまで貫通し得る。微細穿孔の深さは、いずれの場合においても生体膜の全深さを通して伸長し得る。
【0273】
選択された深度への微細穿孔法の実例として、角質層下の完全に水和した生細胞層内へ、またはその細胞層を通して十分なエネルギー送達を継続し得る熱プローブを利用する場合には、穿孔プロセスは、身体内へ選択された深さまで継続し、表皮、真皮を通して、そして所望ならばその下の皮下層内へ、またはそれを通して貫通し得る。表皮、真皮、上皮内膜または固有層内の生組織内に、またはそれを通過してある距離を伸びる微細穿孔が作製されるようにシステムを設計する場合の懸念は、いかに近接組織への損傷および穿孔プロセスの間の被験者への感覚(sensation)を最小にするかである。
【0274】
実験的に、本発明者らは、使用される熱プローブが、固体の電気的にまたは光学的に加熱されるエレメントであり、直径数百ミクロン以下であって支持基部から数ミリメーターまで突出するように物理的に限定された活性な熱プローブチップである場合は、電流の単一パルス、または複数パルスが、切除が、その物理的設計が許容する限りの深度まで、すなわち支持基部が組織内、または組織を通過する貫通度を限定するまで、貫通するのを可能にするために必要な熱エネルギーを組織内に送達し得ることを提示した。その熱プローブの電気的および熱的特性が、組織との接触において、エネルギーパルスが、そのプローブの温度を十分に急速に変調し得る場合には、この型の深部組織穿孔法は、本質的には被験者に無痛で達成し得る。実験は、熱エネルギー必要量がプローブに約20ミリ秒(20〜50
ミリ秒)未満以内に送達される場合には、手順が無痛であること示した。反対に、エネルギーパルスが、約20ミリ秒(20〜50ミリ秒)を越えて延長されなければならない場合、パルス幅の伸長に伴って、被験者に対する感覚は急速かつ非直線的に増加する。
【0275】
同様に、この型の選択された深さの穿孔を支持する電気的に加熱されたプローブの設計は、50〜150ミクロン直径のタングステンワイヤを湾曲させて鋭利にねじり、この点にお
いて最小内径をもつ180度に近い湾曲を形成することによりなされ得る。次いで、ワイヤ
のこの細密な「V」形部分は、「V」が、銅電極が埋め込まれた支持部からある一定の長さまで伸長するように備え付けられ得る。支持体から伸長するワイヤの長さは、ワイヤ加熱時の組織中への最大貫通距離を規定する。このタングステン「V」の各末端は、電流パル
ス回路に接続し得る支持キャリア上の電極の一つに接着される。電流が適切に制御された様式でワイヤに送達された場合、ワイヤは、電流の単一パルスまたは複数パルスにおいて熱切除プロセスをもたらすための所望の温度まで急速に加熱する。プローブの動力インピーダンスの測定およびタングステンエレメントの温度に対する抵抗係数を認知することにより、接点の温度の閉ループ制御を容易に確立し得る。また、プローブ接点および距離を置いて設置された第2の電極から身体を通したインピーダンスの動力学的にモニターすることにより、身体内により深く貫通する場合は、組織の異なるインピーダンス特性に基づいてプローブの深さを決定し得る。一旦、選択された生物の選択された組織のインピーダンス特性が日常的に決定されると、このパラメーターは、穿孔深度の決定に使用され得、そして穿孔深度制御のための制御システムにおいて使用され得る。
【0276】
同様に、この型の選択された深さの穿孔を支持する光学的に加熱されたプローブの一つの実施態様は、光ファイバーをとって、一端に固体キャップまたはコーティングからなるチップを配置することにより作製し得る。レーザーダイオードのような光源をファイバーの他端に結合させる。ファイバーに面するチップ面は、光源が発光する波長範囲にわたって、光量子がファイバー末端に到着して、この面に衝突する時に、そのいくつかが吸収されて、その後チップを加熱するのに十分な吸収係数を有さなければならない。このチップ、ファイバー、および光源のアセンブリのための特定の設計は、広範に変化し得るが、約50ー1000ミクロンの大きな直径を有するファイバーは現在一般的であり、そして数千ワットまでの光学エネルギーを放射する光源が同様に一般的である。実際の熱プローブを形成するチップは、タングステンのような高融点物質から作製され得、ファイバー末端における円柱状口径内へのファイバー挿入を可能とするように機械加工してファイバーに付着させ得る。チップ遠位端が、このチップからの熱拡散を制限し、そして使用される光パルス幅の時間枠内でチップをファイバーに付着させる支持円柱をバックアップするように作製されている場合、このチップ上での光量子事象は、ファイバー側、および組織表面に対して配置されている接触側の両方の温度を急速に上昇させる。ファイバー/チップアセンブ
リの組織表面上における配置は、チップを表面に対してある一定のバネ張力下で保持し、従ってその下部組織が切除される際に、チップ自身は組織内に進行するように設計された単純な機構により達成され得る。これにより熱切除プロセスは、所望の限り、組織中へまたは組織を通して持続させ得る。この光学的に加熱されたプローブの設計のさらなる特徴は、ファイバーにより収集される加熱されたチップからの黒体放射エネルギーをモニターすることにより、チップ温度の極めて単純な閉ルーブ制御がもたらされ得ることである。また、前述のように、プローブ接点および距離を置いて設置された第2の電極からの身体を通したインピーダンスの動力学的にモニターすることにより、身体内により深く貫通する場合は、組織び異なるインピーダンス特性に基づいてプローブの深さを見積もり得る。パルス幅とこの設計による感覚との間の関係は、前述の電気的に加熱したプローブについてと本質的にじ様である。
【0277】
例えば、いくつかのワクチン投与法は、ランゲルハンス細胞もしくは樹状細胞、またはこの免疫応答に重要なその他の細胞の近くにあるように真皮層内に送達された場合に、最も効果的であることが知られている。これは、表皮を通過するように設計された穿孔の深さ、すなわち多くの場合、約180ミクロンから250ミクロンの深さ、を意味する。
【0278】
別の例として、いくつかのタンパク質およびペプチドを送達する場合、投与部位における浸透物質に対する免疫応答を最小化し、そして同時に皮膚組織内のプロテアーゼ活性領域を迂回することが望ましい。この場合、皮膚内に300ミクロンの深さまで到達するよう
なさらにより深い孔が望ましい。
【0279】
あるいは、浸透物質の迅速な初期吸収を最小化し、そしてより長期間に渡る制御放出を提供するための角質層の障壁機能を保留するために、無傷の角質層の最小厚の層を残すことが望ましいこともある。
【0280】
本発明のそのさらなる特徴は、現在では生体膜層の穿孔と、様々な障壁において機能するように至適化され、生体効果に必要である望ましい化合物の内部空間への送達をもたらし得るその他の浸透増強技術とを組み合わせることにより獲得され得る大きな効率の増大である。特に、裸の、フラグメント化した、被包化した、またはその他の物質に結合させた核酸化合物を送達する場合、しばしば、所望の吸収とその後の治療成績を可能とするために、細胞を死滅させることなく生細胞内に、核酸を持ち込むことを所望する。エレクトロポレーション、イオン導入、磁場および熱また音波エネルギーの適用は、細胞膜およびその他の内部組織内に、一時的に開口を形成させ得る。本発明者らが、角質層または粘膜の上皮層または植物の外層、および所望ならば、表皮および真皮または植物内深部、を突破する方法を提示したので、今では、エレクトロポレーション、イオン導入、磁場および熱また音波エネルギーは、下層にあるこれらの組織障壁に選択的に作用し、細胞、毛細管、または標的組織内の他の膜を透過するように調整し得るパラメーターと共に使用され得る。エレクトロポレーション、イオン導入、磁場および熱または音波エネルギーは以前はこの用途には適用不能であった。
【0281】
50〜150ボルトを越えるパルスが角質層、粘膜外層、または植物外層を電気穿孔するた
めに日常的に使用されるエレクトロポレーションの場合は、本発明者らが提示する環境においては、わずか数ボルトまたはそれ以下のパルスが、標的組織内の細胞、毛細管、または他の膜を電気穿孔するためにはで十分である。これは主として、一旦皮膚、粘膜層、または植物外層が開口すると、電極間に存在する絶縁層の数が劇的に減少することに起因する。
【0282】
同様に、イオン導入は、これらの穿孔層を通過する液体流に対する物理的インピーダンスの劇的減少に起因する極めて少量の電流による微細穿孔を通しての核酸を含む液体培地の流量の調整のために効果があることが示され得る。
【0283】
音波エネルギーの場合、古典的には音波エネルギーは角質層または粘膜層の浸透をこの障壁を排除することにより加速するために使用されてきたのに対して、音波エネルギーは今では標的組織内の細胞、毛細管、またはその他の膜の浸透化のために使用され得る。エレクトロポレーション、イオン導入の場合と同様に、本発明者らは、物質の貫通膜流量において顕著な改善をもたらすのに必要な音波エネルギーレベルが、皮膚や粘膜層が無傷の場合と比較してかなり低量であることを証明した。その他の浸透増強測定は、微細穿孔部位における浸透圧または物理的圧力(例えば、微細穿孔を通して生物内に特定の液体流を強要するために浸透物質レザーバーに軽い気圧を適用する)の変化を含む。
【0284】
これら全ての活性な方法、すなわちエレクトロポレーション、イオン導入、磁場または熱または音波エネルギーの操作の態様は、単一でまたは組み合わせで適用される場合には、皮膚、粘膜層、または植物外層の穿孔実施後、物質の送達のために単一細胞膜が開口されるインビトロ適用において代表的に使用されるパラメーターを使用し得る利点を有する。これらのパラメーターの例は、文献において周知である。例えば、Sambvrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 第二版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、New York、1989。
【0285】
本発明の方法によって生体膜内に作製された微細穿孔は、高(および低)分子量治療用化合物の経皮的、経粘膜的、または経膜的高流量率送達を可能にする。さらには、身体へのこれらの非外傷性(non-traumatic)顕微鏡用開口は、体内における様々な分析物への
接近を可能とし、これらの分析物は体内濃度測定のためにアッセイされ得る。
【0286】
生物活性物質の送達
本発明による別の進歩は、以下のような生物活性物質の送達目的の生体膜の穿孔法の使用を含む:例えば、タンパク質およびペプチド(例えば、インスリン)を含むポリペプチド;LHRHを含む放出因子;炭水化物(例えば、ヘパリン);核酸;ワクチン;および次のような薬理学的に活性な物質、例えば、抗生物質や抗ウイルス剤のような抗感染剤;鎮痛剤および鎮痛剤の組み合わせ;食欲抑制剤;抗駆虫剤;抗関節炎剤;抗喘息剤;抗痙攣剤;抗うつ剤;抗糖尿病剤;止痢剤;抗ヒスタミン剤;抗炎症剤;抗偏頭痛調剤;制吐剤;抗腫瘍剤;抗パーキンソン氏病薬;止痒剤;抗精神病剤;解熱剤;鎮痙剤;抗コリン剤;交感神経刺激剤;キサンチン誘導体;カリウムおよびカルシウムチャネルブロッカー、ベータブロッカー、アルファブロッカーおよび抗不整脈治療剤を含む、心臓血管系調製物;降圧剤;利尿剤と抗利尿剤;一般冠状動脈、末梢および脳を含む血管拡張剤;中枢神経系刺激剤;血管収縮剤;鬱血除去剤を含む、咳および感冒用調剤;エストラジオール、テストステロン、プロゲステロンのようなホルモン、およびコルチコステロイドを含むその他のステロイドとその誘導体およびアナログ;睡眠薬;免疫抑制薬;筋肉弛緩薬;副交感神経遮断薬;精神刺激薬;鎮静薬;および神経安定薬。本発明による方法により、イオン化および非イオン化薬物両方の送達が可能であり、高分子量、中分子量、または低分子量薬物もまた送達し得る。
【0287】
DNAおよび/またはRNAの送達は、ポリペプチド発現の達成、免疫応答の刺激、または「
アンチセンス」核酸、特にアンチセンスRNAの使用によるポリペプチド発現の抑制のため
に使用され得る。「ポリペプチド」という用語は、本明細書においては、特定のサイズが指定されない限り、特にそのサイズには制限無く使用され、タンパク質を含む全ての長さのペプチドを含む。発現され得る代表的ポリペプチドは、以下から成る群から選択される:オキシトシン、バソプレッシン、副腎皮質刺激ホルモン、表皮成長因子、プロラクチン、黄体形成ホルモン、放出ホルモン、成長ホルモン、成長ホルモン放出因子、インスリン様成長因子、インスリン、エリスロポエチン、レプチンのような肥満タンパク質、ソマトスタチン、グルカゴン、グルカゴン様インスリン分泌性因子、副甲状腺ホルモン、インターフェロン、ガストリン、インターロイキンー2およびその他のインターロイキンおよび
リンホカイン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドルフィン、アンギオテンシン、レニン、ブラジキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、および合成アナログ、改変体とその薬理学的に活性なフラグメント、モノクローナル抗体およびワクチン。この群は限定的であることは意図されない、発現され得るペプチドまたはタンパク性薬物に対する唯一の限定は、その機能性の1つである。DNAおよび/またはRNAの送達は
、遺伝子治療、ワクチン接種、および生物内に核酸またはポリペプチドがインビボで投与されるべき治療状況において有用である。例えば、本明細書中で参考として援用される米国特許第5,580,859号。
【0288】
本発明の一つの例示的実施態様は、生体膜の穿孔を含むポリペプチドの長期投与の獲得、および次いで生体膜内のこの孔を通してのポリペプチドをコードするDNAの送達のため
の方法であり、これにより組織細胞はDNAを取り込み、少なくとも1カ月、より好ましく
は少なくとも6カ月間ポリペプチドを産生する。本発明の別の例示的実施態様は、生体膜の穿孔を含むポリペプチドの一過性発現の獲得、および次いで生体膜のこの孔を通してのポリペプチドをコードするRNAまたはDNA送達のための方法であり、これにより組織細胞(例えば、皮膚、粘膜、毛細管または下部組織)は、RNAまたはDNAを取り込み、約20日未満、通常では約10日未満、およびしばしば約3〜5日未満の期間ポリペプチドを産生する。RNAまたはDNAを取り込む細胞は、生体膜、下部組織、または毛細管によって到達し得る他の標的組織の細胞を含み得る。
【0289】
DNAおよび/またはRNAは、必要に応じてキャリアまたはビヒクル内の裸の核酸であり得
、および/またはミクロスフェア、リポソーム内に含まれ得、および/またはトランスフェクション促進タンパク質、微粒子、脂質複合体、ウイルス粒子、荷電性または中性脂質、炭水化物、リン酸カルシウム、またはその他の沈降剤、および/または核酸を安定させるための他の物質と結合し得る。核酸は、染色体内に組み込まれるか、またはプラズミド内、または裸のポリヌクレオチドとして組み込まれないかのいずれかでウイルスベクター内に含まれ得る。核酸はポリペプチドをコードし得、あるいは、例えば、細胞内において選択されたポリペプチドの翻訳を阻害するためのアンチセンスRNAをコードし得る。核酸がDNAである場合は、それ自体非複製型であるDNA配列であり得るが、レプリケーターをさら
に含むプラズミド内に挿入される。DNAはまた、ヒトにおいて機能的であるCMV IEPプロ
モーターのような転写プロモーターを含み得る。DNAはまた、DNA転写のためのポリメラーゼをコードし得る。一つの好ましい実施態様において、DNAは、ポリペプチドおよびDNA転写用ポリメラーゼのいずれもコードする。このDNAはポリメラーゼ、またはそれをコード
するmRNAと合わせて送達され得、mRNAは細胞内で翻訳される。本実施態様において、このDNAは、好ましくはプラズミドであり、そしてポリメラーゼは好ましくは、T7ポリメラー
ゼのようなファージポリメラーゼであり、ここでT7ポリメラーゼ遺伝子はT7プロモーターを含むべきである。
【0290】
本方法は、特定のポリペプチドの欠陥、欠損、または変異と関連する疾患を処置するために使用され得る。本発明の別の局面に従って、本方法は、個体の免疫法を提供し、ここでこのような個体はヒトまたは動物であり、この個体に対するDNAおよび/またはRNAを送
達を含み、ここでDNAおよび/またはRNAは、免疫原に対する免疫応答を誘導する免疫原性
翻訳産物をコードする方法である。本方法は、体液性免疫応答、細胞性免疫応答、またはその混合を誘導するために使用され得る。
【0291】
実施例40
この例示的な実施例は、mRNAの調製および送達を示す。
【0292】
一般的に、本発明の実施において、mRNAのインビトロでの転写に適切なプラスミドが、実質的に無制限数のcDNAを用いて当業者によって容易に構築され得ることが明らかであるはずである。このようなプラスミドは、選択されるRNAポリメラーゼについてのプロモー
ター、続いて5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、およびポリアデニル化領域について鋳型を有利に含み得る。これらの5’および3’の非翻訳領域間には特有の制限部位が、任意の選択されたcDNAのプラスミド中への挿入を容易にするために存在するべきである。次いで、選択された遺伝子を含むプラスミドのクローニング後、プラスミドを、ポリアデニル化領域での消化によって直鎖状にし、そしてインビトロで転写させてmRNA転写物を形成させる。これらの転写物は、好ましくは、5’キャップを有して提供される。あるいは、5’非翻訳配列(例えば、EMC)が使用され得、これは、5’キャップを必要としない。
【0293】
容易に入手可能なSP6クローニングベクター(pSP64T)は、効率的に翻訳されるmRNAで
ある、Xenopusのグロビン遺伝子由来の5’および3’隣接領域を提供する。開始コドンを
含む任意のcDNAをこのプラスミド中に導入し得、そしてmRNAを得られる鋳型DNAから調製
する。この特定のプラスミドを、目的のポリペプチドをコードする選択された任意のcDNAを挿入するために、BglIIで消化し得る。良好な結果が、直鎖状にし、次いでSP6RNAポリ
メラーゼで転写させた場合に、pSP64Tで得られ得るが、ファージT7RNAポリメラーゼとと
もにpSP64TのXenopusのグロビン隣接配列を使用することが好ましい。これを、pSP64T由
来の約150bpのHindIII/EcoRIフラグメントを精製すること、およびこのフラグメントを
直鎖状にしたpIBI131(International Biotechnologies,Inc., New Haven, Conn.から市販されている)の約2.9kbのHindIII/EcoRIフラグメントにT4リガーゼを用いて挿入する
ことによって達成する。得られるプラスミド(pXBG)を、2つのXenopusのグロビン配列
間に存在する独特のBglII部位での目的の任意の遺伝子を受容させるため、および選択さ
れた遺伝子のT7ポリメラーゼでの転写のために適合させる。
【0294】
外因性のポリヌクレオチドのインビボでの発現を実証するための便利なマーカー遺伝子は、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)である。pSV2-CAT(ATCC
番号 37155)の小さなBamHI/HindIIIフラグメントに由来するCAT遺伝子、およびBglII消化したpXBGの両方を、E.coliDNAポリメラーゼのKlenowフラグメントとともにインキュベ
ートして平滑末端を生成させ、次いで、T4 DNAリガーゼを用いて連結させてpSP-CATを形
成させた。次いで、このプラスミドをPstIおよびHindIIIで消化し、そして小さなフラグ
メントはpSP64Tの5’および3’-グロビン隣接配列間にCAT遺伝子を含む。T7プロモーターを含有するプラスミドpIBI131もまたPstIおよびHindIIIで消化し、そして長いフラグメントを精製する。次いで、このフラグメントをT4DNAリガーゼを用いてCAT遺伝子を含有するフラグメントに連結して、プラスミドpT7CAT-Anを形成させる。
【0295】
pT7CAT-AnプラスミドDNAを、当該分野で周知の方法(例えば、米国特許第5,580,859号
)に従って精製する。次いで、得られる精製されたプラスミドDNAを過剰のPstIでポリア
デニル化領域の下流で直鎖状にし、次いで得られる直鎖状のDNAを精製し、そして米国特
許第5,580,589号の実施例5の方法に従ってインビトロで転写させる。次いで、得られるmRNAを、米国特許第5,580,859号の実施例5の方法に従って精製する。これは、本発明の送達に十分に純粋である。
【0296】
精製したmRNAを、微細穿孔手順に従って、個体上の選択した部位を、生物学活性を最適化するように選択した孔の深さで穿孔すること、およびmRNAが細胞によって取り込まれる場合、mRNAが皮膚または粘膜を通って内在組織まで通過するように、このような部位へ有効量のmRNAを送達することによって送達する。穿孔した角質層または粘膜を通過するこの送達を、音波エネルギーを用いて、および/または実施例15の手順に従う音波エネルギーの使用によって、ならびに/あるいは細胞性の取り込みを増強させるためにエレクトロポレーションで、ならびに/あるいは皮膚もしくは粘膜中の孔を通じる流れを誘導するための圧力の差を用いて補助し得る。さらに、送達を、体内への孔を通じるmRNAの拡散を増強するため、または細胞へのmRNAの取り込みを容易にするために、mRNAをキャリア溶液(例えば、正に荷電した脂質複合体またはリポソーム)中に配置することによって補助し得る。
【0297】
実施例41
この実施例は、HIVのgp120タンパク質をコードするmRNAでの個体の免疫化を示す。mRNAは、gp120の遺伝子(AIDS ResearchandReagentProgram, National Institute of Allergy and Infectious Disease,Rockville,MDからのpIIIenv3-1)を実施例40のプラスミ
ドpXBGに挿入することを除いて、実施例40の手順に従って調製する。gp120遺伝子を含むmRNAを、実施例40の手順に従って送達する。
【0298】
実施例42
この実施例においては、HIVのgp120タンパク質をコードするDNAでの個体の免疫化を示
す。gp120遺伝子を、P.Muzzinら(Correction ofObesity and Diabetes in Genetically
Obese Mice by LeptinGene Therapy, 93 Proc.Nat’l Acad. Sci. USA 14804-14808(1996);G.Chenら、Disappearance ofBody Fat inNormal Rats Induced by Adenovirus-mediatedLeptin Gene Therapy,93Proc. Nat’lAcad. Sci. USA 14795-99(1996)、これらは本明細書中で参考として援用される)の手順に従って組換えアデノウイルスに挿入する。生じるDNAは、実施例41の手順に従って送達される。
【0299】
実施例43
本実施例において、HSV-2の糖タンパク質DをコードするDNAでgp120タンパク質をコー
ドするDNAを置換したこと、およびさらに有効量の糖タンパク質Dと組合せたこと除いて
、実施例42の手順に従う。
【0300】
実施例44
本実施例では、肥満タンパク質レプチンをコードする核酸(例えば、ヒトレプチンまたはラットレプチンcDNA(C. Guoxunら、DisappearanceofBody Fat in Normal Rats Induced by Adenovirus-mediatedLeptin, 93 Proc. Nat’lAcad.Sci. USA 14795-99(1996))、またはマウスレプチンcDNA(P.Muzzinら、Correctionof ObesityandDiabetes in
Genetically Obese Mice by Leptin Gene Therapy, 93Proc. Nat’l Acad. Sci.USA14804-14808(1996)、これらの両方は、本明細書中で参考として援用される)を、適切なプラスミドベクター中で送達する。哺乳動物発現ベクターpEUK-C1(Clonetech,PaloAlto,
Calif.)を、クローニングした遺伝子の一時的な発現のために設計する。このベクター
は、pBR322複製起点および細菌中での増殖のためのアンピシリン耐性マーカーを含み、そしてSV40複製起点、SV40後期プロモーター、ならびに哺乳動物細胞中で選択された遺伝子の複製および発現のためのSV40後期ポリアデニル化シグナルもまた含む、4.9kbのプラス
ミドである。独特のXhoI、XbaI、SmaI、SacI、およびBamHI制限部位のマルチクローニン
グ部位(MCS)を、SV40後期プロモーターとSV40後期ポリアデニル化シグナルとの間に配
置する。MCS中にクローニングしたDNAフラグメントをSV40後期プロモーターからRNAへ転
写させ、そしてクローニングしたフラグメント中の最初のATGコドンから翻訳させる。SV40VPIプロセシングシグナルを使用して、クローニングしたDNAの転写物をスプライシング
し、そしてポリアデニル化する。レプチン遺伝子を、当該分野で周知の技術(例えば、J.Sambrookら、MolecularCloning:ALaboratoryManual(第2版、1989)、これは、本明
細書中で参考として援用される)を使用してpEUK-C1のMCSにクローニングする。生じるプラスミドを、上記の実施例に記載の手順に従って、皮膚または粘膜の穿孔後にヒトまたは動物の個体に送達する。
【0301】
実施例45
ヘパリンの送達。ヘパリンは、1時間あたりおよそ1000から5000IUの静脈注入に等価である基底レベルの維持、5000〜1000IUのヘパリンまたは1500〜6000IUの低分子量のヘパリンの1日に2回の皮下注射が代表的な臨床的投与量である、有用な治療用物質である。通常は、ヘパリンは、経皮送達系の良好な候補とは考えられない。なぜなら、この物質の5000〜30000Daの分子量に主に起因する皮膚の通過に対するその比較的高い抵抗性のためで
ある。本明細書中に開示される微細穿孔技術を使用して、例えば、微細穿孔が配置されている皮膚表面に付着させた送達リザーバーから十分な量のヘパリンを投与した場合に、ヘパリンの有意な流速を容易に達成した。ヘパリン溶液を、約100μmの深さまで穿孔した皮膚に適用し、これによって、受動的な拡散またはイオントフォレイシス法(約1mA/cm
2
)との併用のいずれかを可能にする。これを、下部組織への微細穿孔を通じるヘパリンの輸送に十分な時間適用する。ヘパリンの送達の証拠を、受動的なおよびイオントフォレイシス法による増強された送達の両方のインビボ部位について顕微鏡試験によって示されるような、拡大した毛細血管の膨張および透過性によって観察した。主な駆動力として受動的な拡散を使用して有意なヘパリンの流れを示すことに加えて、高度に荷電した化合物であるヘパリンは、活性な制御可能な流速を可能にするために微細穿孔と電場との組み合わせのための天然の候補であり、そして同じ数の微細穿孔を通じる可能であるよりも早い流速が、受動的拡散法を用いて可能である。健常な男性のボランティアの手掌の前腕上の部位が1平方cmの面積中に36個の微細穿孔のマトリックスを作製することによって調製した、1つの実験を行った。イオントフォレイシスシステムのためのヘパリンナトリウム溶液および陰性電極を含有する小さいリザーバーを、この部位に取り付けた。陽性電極を、イオントフォレイシスシステムの販売元であるIomedから入手したヒドロゲル電極を使用し
て、いくらかの距離をあけて被験体の皮膚に取り付けた。このシステムを1平方cmあたり0.2ミリアンペアで10分間実施した。この期間の後、この部位の顕微鏡試験によって、毛
細血管の血管拡張によってヘパリンの送達の直接の証拠を示した。そして、吸引力を微細穿孔からの間質液のサンプルを抽出するために適用した場合、十分な赤血球がこの力のもとで毛細血管を出て、回収したISFをピンク色に色づける。このことは、この領域における増大した血管浸透性を示す。さらに、赤血球が凝固するかどうかを見るためにわきに配置する場合、凝固が起こらないことは、作業中の組織中に存在するヘパリンの抗凝固効果を示す。
【0302】
実施例46
インシュリンの送達:インシュリン(健常な個体中に通常存在する多くの化合物のような)は、例えば、外因性のインシュリンを必要とする糖尿病の個体中で、規定レベルおよび食事に応答する拍動性のボーラス様式で、ならびに被験体の活性レベルの両方で維持されなければならないポリペプチドである。現在、このことは、作用の早い皮下注射および作用の遅い処方物によって達成される。インシュリンの分子量(代表的には、約6000)のために、伝統的な経皮法または経粘膜法では、臨床的に有用なレベルでは送達され得ない。しかし、皮膚または粘膜のバリヤー層を通じて微細穿孔を開くことによって、生存組織中へのインシュリンの送達を可能にする明らかな通路が提供される。ここで、これらの組織中に存在する間質性の液体は、リンパ系および毛細血管のベッドへおよびその中へのインシュリンの拡散(浸透圧的に駆動することを含む)を可能にし、これによって臨床的に有用な量を送達する。Boehringer-MannheimCo.から購入した3500IU/mlの組換えヒトインシュリンを含有する濃縮したインシュリン溶液を、4平方cmを覆う手掌の前腕の被験体の皮膚の孔をあけた領域に対してレザーバー中で適用した。健常な44歳の男性の、糖尿病ではない被験体を、実験の開始の14時間前に絶食させた。静脈内および指の血液サンプルを、送達期を開始する前および後に定期的に採取し、そしてグルコース、インシュリン、およびC-ペプチドについてアッセイした。指の血液のグルコースデータは、約4時間後に
有意なおよび迅速な被験体のグルコースレベルの抑制を示し、10分間のサイクルにわたって開始時の100mg/dlから67mg/dlに低下し、次いで続く10分間で100まで回復し、このことから、送達されたインシュリンにかかわり、そしてそれを補う被験体のカウンター調節システムに起因すると仮説を立てた。44khzおよび0.2ワット/平方cmでの超音波作動の付加を含むこの手順の繰り返しは、送達の開始後30分未満に109mg/dlから78mg/dlに低下する
被験体のグルコースレベルによって示されるような、インシュリンのより迅速な送達を示した。実施例45の場合のように、ヘパリンの送達について、低電流イオントフォレイシスシステムをより大きい流動速度を容易にし、そして電流を変化させることによってこの流動速度を調節する能力を提供するために、微細穿孔と組合せ得、これによって組み立てられるべきシステムの要求される型についての送達を可能にする。インシュリンを用いた以前の研究は、代表的には、比較的高いイオントフォレイシス電流が完全な角質層の強力なバリア特性を克服するために必要とされることを示す。角質層または粘膜の穿孔により、および必要に応じて標的化される生物学膜中へまたはそれを介してより深い孔を作製するために穿孔パラメーターを設定することによって、より低い電流密度が、所望のインシュリン流動速度を生じるために必要とされる。
【0303】
同様に、荷電していないまたは低く荷電したインシュリン処方物について、微細穿孔を通る活性な流動性の増強は、音波の場または音波泳動法(sonophoresis)(これは、組織へのインシュリンの押し込みを補助するために、通常超音波として記載される周波数を含み得る)を組合せることによってもたらされ得る。音波の場のさらなる特徴は、組織にわたって血流への所望の吸収が行われ得るより大きな容積の組織にインシュリンが到達させる、生存可能な組織内の種々の障壁の浸透性を増強するその能力である。音波エネルギーを調節することは、より深い組織へまたは貫通する微細穿孔を通る化合物の総流動を調節することにおいて非常に有効であると示されており、これによってボーラス送達系を開発するための第2の手段を提供する。
【0304】
皮下注射として与える場合、インシュリン吸収の実際の経路は、依然としていくつかの議論の主題である。これが依然として明らかではない理由の1つは、集団内で、または同じ被験体においてもなお、注射ごとの基準について、実証される生体利用可能性の広範に変化するレベルである。1つの仮定される経路は、毛細管を通じて血流に入る直接的な吸収である。このプロセスを増強するための方法は、表面の穿孔を用いるエレクトロポレーションと組合せることであり、ここで、エレクトロポレーションは、毛細管の内皮膜の領域中での作用に対して特異的に最適化されており、これによって、この直接的な吸収を増強するために一時的に多数の開口部を作製する。以前に記載されているイオン導入法および音波泳動法を用いる場合、外表面の下のこれらの組織層中のエレクトロポレーションのこの型を実行するために必要とされるエレクトロポレーションシステムの総電圧振幅レベルは、しばしば、生体膜の外部層の大量のインピーダンスの低下に起因して、インタクトな外表面を通る浸透に必要とされるよりも低い。
【0305】
実施例47
微粒子の送達:リポソーム、脂質複合体、ナノスフェアを含むミクロスフェア、PEG沈
殿した(PEGellated)化合物(ポリエチレングリコールと混合した化合物)および薬物送達系の一部としての他の微粒子の使用は、多くの種々の特異的な適用について十分に開発されている。特に、体の組織中の内因性の成分(例えば、皮膚、組織、血流またはリンパ中に存在するマクロファージまたは他の細胞中のプロテアーゼ、ヌクレアーゼ、または炭水化物分解酵素)によって容易に崩壊される化合物を扱う場合、生体利用可能性の増大および/または徐放を、これらの技術の1つを利用することによってしばしば実現し得る。現在、一旦当業者がこれらの技術の1つを適用すると、処方物を、一般には、ある型の注射を介して送達する。本発明は、生体膜(例えば、皮膚または粘膜)を通過しかつ選択された深さまで体内に微細穿孔を作製することによって、この型の微粒子が皮膚または粘膜を介して送達されることを可能にする。上記のインシュリンの実施例に記載されるように、微細穿孔、エレクトロポレーション、イオン導入法、音波エネルギー、エンハンサー、および部位の機械的刺激(例えば、圧力または摩擦)を、特定の処方物の送達および/または取り込みを増強するために、任意の組合せで組合せ得る。いくつかの操作した微粒子の場合において、孔は、特定の生物学的に活性な領域をバイパスするように、または選択された領域内に粒子を配置するように設計された最適な深さを有し得る。いくつかの微粒子送達系について、表面下組織への、またはそれを貫通してそれらが送達された後の粒子へのエネルギー入射を、活性な化合物の加速された放出を誘発するために使用し得、これによって治療用物質の流動速度の外部制御を可能にする。
【0306】
実施例48
移植可能な分析物のモニタリングのための微粒子:微粒子の別の適用は、治療薬としてではなく、非侵入的に調べられ得るプローブ化合物のキャリアとして、例えば、体内の特定の分析物のレベルに関する情報を得るために外部読み取り系から電磁気照射によって粒子を送達することである。一例は、グルコース特異的蛍光団化合物を孔性のミクロスフェア中に取り込むことである。これは、周辺組織中に存在するグルコースレベルに依存し、振幅、波長、または蛍光寿命のいずれかにおいてその蛍光応答を変化させる。蛍光団を700nmから1500nmまでの範囲の励起波長を用いて活性であるように設計する場合、低コスト
の赤外光源(例えば、LEDまたはレーザーダイオード)を使用して、その蛍光応答を刺激
する。この蛍光応答は、700nmから1500nmまでのこの範囲に同様に存在する。これらの波
長では、皮膚および粘膜組織はほとんど吸収せず、従って、単純な系をこれらの様式で構築することが可能である。
【0307】
グルコースは、実験的な寿命の蛍光プローブが開発され、そして光学的な刺激および検出方法を用いて皮膚を通じて良好に調べられる皮下に挿入されたポリマー移植物中に取り込まれる、1つの候補分析物である。これは、単に、微細穿孔を介する生存組織層への、またはそれを貫通する送達を可能にするために、これらの実験的移植物の適切な大きさの微粒子への再形成を必要とする。しかし、任意の分析物を標的化し得、そして送達される微粒子を調べる方法は、光学的なエネルギーではなく磁場または電場を介し得る。
【0308】
実施例49
ワクチンの送達
細菌、ウイルス、トキソイド、または混合ワクチンを、固体、液体、懸濁物、または必要とされる場合はゲルとして調製する。この処方物は、ペプチド、タンパク質、炭水化物、DNA、RNA、完全な微生物、アジュバント、キャリアなどの任意の1つまたは組合せを含み得る。個体の選択された部位(皮膚または粘膜)に、上記の実施例45に記載する手順に従って穿孔し、そしてワクチンを穿孔した部位に適用する。微細穿孔の深さは、送達されるワクチンの型に依存し得る。この送達は、エレクトロポレーション、イオン導入法、磁気エネルギーまたは音波エネルギー、エンハンサー、および部位の機械的刺激(例えば、圧力または摩擦)で、細胞性の取り込みを増強するための上記の手順、ならびに/あるいはエレクトロポレーション、イオン導入法、磁気エネルギーまたは音波エネルギー、エンハンサー、および部位の機械的刺激(例えば、圧力または摩擦)の使用に従って補助され得る。さらなるまたは補強する用量を同じ様式で送達し、個体の免疫を達成し得る。
【0309】
実施例50
テストステロンの送達:市販の入手可能なテストステロンパッチ(TheraTech,Inc.のAndroderm
R patch)を、この浸透の送達に適用する場合、微細穿孔の利点を評価するための一連の実験において使用した。性機能亢進の男性被験体を2日間Androderm治療を受けさ
せ、その後、一連の静脈血サンプルを、この被験体の基底レベルのテストステロンが確立するためにその後の24時間まで採取した。次いで、2つの2.5mgのAndrodermパッチを製造業者に推奨されるように取り付け、そして静脈血サンプルの同様のセットを採取して、使用された経皮流動増強方法のみがパッチに含まれる化学的浸透エンハンサーである場合のテストステロンレベルを測定した。洗浄期間のさらに2日後、次いで、2つのAndroderm
パッチを同様に取り付けたが、しかし、取り付けの前に標的部位での皮膚表面に1部位あたり72個の微細穿孔で穿孔した。各孔は、約80μmの幅、および300μmの長さの寸法で、
そして80から120μmの深さにおよぶ。穿孔した送達位相について、同様の一連の静脈血サンプルを採取し、テストステロンを測定した。24時間のこれらの全てによるデータを、「経皮的テストステロン送達に対する微細穿孔の効果」と名づけた
図35に示す。これらのデータの注目すべき特徴は、微細穿孔が存在する場合に、被験体血液のテストステロンレベルがはるかにより迅速に上昇し、4時間を超える穿孔していないサイクル上昇端よりも本質的に優先する。曲線の傾きおよび曲線の下の面積を見ることによって、本発明者らは、3倍を超える流速が最初の4時間の間に微細穿孔によって起こったことを計算し得る。
【0310】
実施例51
アルプロスタジルの送達:アルプロスタジルまたはPGE1は、その血管拡張性挙動による男性の勃起性機能障害を処置するために治療的に使用されるプロスタグランジンである。この薬物についての標準的な送達様式は、陰茎の基部への直接的な注射であるか、または尿道へ挿入される坐剤を介する。一連の実験を、2人の健常な男性のボランティアで行った。各被験体は、皮膚の表面から測定した場合に、およそ100ミクロンの深さの孔を作製
する熱の孔パラメーターセットを用いて、陰茎幹の基部の領域上に12から36個の微細穿孔をあけることによって調製された1平方cmの部位を有した。濃縮したアルプロスタジルの溶液を、穿孔部位上に配置した小さいレザーバーパッチ中に配置した。次いで、超音波トランスデューサーをレザーバーの上部の置き、そして活性化し、そして被験体の勃起性および他の臨床的な応答をビデオテープに記録した。両方の被験体が、陰茎の有意な量の充血を生じ、適用された用量で70%以上の完全な勃起を達成すると概算した。さらに、送達された薬物の全身的なレベルに対する頬の潮紅応答を観察した。送達時間の30分から60分にわたって、両方の被験体は、顔面、首、胸部、および腕にまでおよぶ深在性の頬の潮紅を生じた。勃起応答および頬の潮紅の両方が、薬物(周知の血管拡張因子)の臨床的に活性な量の送達の証拠を提供する。
【0311】
実施例52
インターフェロンの送達:インターフェロンは、約17〜22,000の分子量のタンパク質であり、これは、種々の疾患状態(たとえば、ウイルス感染(例えば、B型肝炎およびC型肝炎)、免疫疾患(例えば、多発性硬化症)、およびガン(例えば、毛様細胞性白血病))を処置するために臨床的に投与される。これらのタンパク質の性質に起因して、インターフェロンは、現在は、注射によって投与されなければならない。なぜなら、これらは、経口で与えることができず、そして伝統的な経皮または粘膜を介する送達方法には大きすぎるからである。微細穿孔技術によるインターフェロンの送達を実証するために、1mlの送達溶液中に溶解された1mgあたり1億国際単位のインターフェロンの特異的活性を有するインターフェロンを含有する、αインターフェロン溶液の100マイクロリットルのアリ
コートを、150〜180μmの深さにまで穿孔した、穿孔された皮膚の1平方cmの領域に適用
する。従って、健常なヒト被験体の大腿上の毛細血管床の不足を生じる。試行を、インターフェロン溶液の有害な加熱を生じることなく下部組織へまたはそれを貫通して、孔を介するインターフェロンの移動を加速するために、純粋に受動的な拡散および十分な振幅、周波数、およびその調節でのその領域に対する音波エネルギーの適用のいずれかを使用して実施する。静脈血採取を、両方の試行について種々の時間の間隔で行い、そしてラジオイムノアッセイおよび生体アッセイを使用してインターフェロンレベルについてアッセイする。インターフェロンを、モニターした4時間にわたって血清中で検出する。音波によって増強させた送達実験についてのインターフェロンレベルは、受動的な実験についてよりも早く検出される。別の実験において、インターフェロンは、乾燥粉末形態で、直接、皮膚の穿孔領域の微細穿孔に投与される。インターフェロンは、上記と同じ技術を使用して血清中で検出される。別の試験において、インターフェロン溶液は、頬粘膜の穿孔組織に、裏打ちフィルムをともなって、または伴わずに、ゲル中に適用される。静脈血を採取し、そしてインターフェロンレベルについてアッセイする。インターフェロンは、モニターした3時間に渡って血清中で検出される。別の実験において、インターフェロンは、生体侵食性マトリクスを含む錠剤中に、穿孔された頬粘膜の領域にわたって錠剤の接触を提供する、粘膜接着性ポリマーマトリックスとともに組み込まれる。インターフェロンは、上記と同じ技術を使用して血清中で検出される。
【0312】
実施例53
モルヒネの送達:モルヒネの溶液を、ヒト被験体の手掌側の前腕上の穿孔領域に適用する。正の圧力勾配を使用して、モルヒネの存在について適切な時間の間隔で採取した静脈血のアッセイによって決定されるように、体内へのモルヒネの基底送達速度を提供する。約3〜6ng/mlのモルヒネの基底レベルを達成する。必要な場合には、さらなる圧力ボー
ラスを、モルヒネの送達においてスパイクを生じるように適用する。さらなる圧力ボーラスを、超音波の使用によって1つの試験において達成する;または圧力スパイクの使用によって別の実験において達成する。モルヒネの基底レベルが持続的に適用され、必要な場合には定期的にモルヒネの送達におけるスパイクを用いるこの型の送達は、慢性および突発的な痛みを処置することにおいて有用である。
【0313】
実施例54
植物への疾患耐性DNAの送達:選択したトウモロコシ植物の種子を、微細穿孔する。種
子を、疾患耐性タンパク質をコードするDNAを含む浸透性処方物の溶液中に入れる。音波
エネルギーを必要に応じて用いて、トウモロコシの種子へのDNAの送達を増強する。種子
を発芽させ、そして成熟するまで生長させる。得られる成熟したトウモロコシ植物の種子は、ここで、疾患耐性遺伝子を有する。
【0314】
実施例55
植物へのDNAの送達:テンサイの種子を、微細穿孔する。種子を、ヒト成長ホルモンをコードするDNAを含む浸透性処方物の溶液中に入れる。エレクトロポレーション、イオン
導入法、音波エネルギー、エンハンサー、およびこの部位の機械的な刺激(例えば、圧力)を使用して、種子へのDNAの送達を増強し得る。種子を発芽させ、そして成熟するまで
生長させる。得られる成熟したテンサイ植物の種子をここで回収し、そして続く精製および臨床的使用のためにヒト成長ホルモンが抽出され得る。
【0315】
実施例56
蛍光デキストラン粒子(MW約10,000ダルトン)を、約80μmの深さにおよぶ36個の微細
穿孔を形成したヒト被験体の手掌側の前腕上の1平方cmの皮膚を覆うレザーバーパッチによって水溶液中に適用した、1つの実験を行った。レザーバーパッチを、5分間放置した。穿孔部位および周辺の領域を、組織中への透過性物質の浸透を評価するために蛍光ビデオ顕微鏡で画像化した。蛍光は、5分以内のデキストランの有意な浸透が、最も近い微細穿孔から2mmを超えて離れて生じたことを示した。10分後に使用したビデオアッセイシステムは、さらなる拡散を示し、その結果、蛍光のフラッシュは孔から10mmに拡大した。この実験は、この技術が10,000の分子量を有する透過性物質の送達を可能にするという明らかな証拠を提供する。