(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、人が遠隔操作型アクチュエータを直接持って操作すると、手の震え等が被切削物に対する工具の位置決め精度に影響する。精度良く加工するには、多くの経験が必要である。特に、ガイド部が湾曲形状である場合、ガイド部の先端に設けた工具の位置を予測し難く、操作がより一層に複雑で困難になる。それに伴って、切削時間も長くなる。遠隔操作型アクチュエータを人工関節置換手術の手術用として使用する場合、切削時間が長いと、患者の負担が大きい。
【0011】
このため、用途等によっては、上の説明で言うところの遠隔操作型アクチュエータであるアクチュエータ本体を、1自由度または2自由度以上の自由度を持つ操作台に搭載して、手の震え等の悪影響を排除することが必要となる。この種の遠隔操作型アクチュエータとしては、例えば特許文献8に記載のものが知られている。しかし、従来のものは、操作台とアクチュエータ本体とが電気的に結合されていたため、電気系統に故障が生じた場合、アクチュエータ本体が暴走して周囲のものを傷つけるおそれがある。よって、特に安全性が重視される医療用の遠隔操作型アクチュエータでは、アクチュエータ本体を手動で操作する構成であるのが望ましい場合がある。
【0012】
この発明は、アクチュエータ本体の先端に設けられた工具の姿勢を遠隔操作で変更することができ、アクチュエータ本体を確実に支持し、かつアクチュエータ本体が軽量で、その位置および姿勢を手動で正確に変更することができる遠隔操作型アクチュエータを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前提構成の遠隔操作型アクチュエータは、先端に工具を有するアクチュエータ本体を、任意の自由度を有する操作台に搭載した遠隔操作型アクチュエータであって、前記アクチュエータ本体は、前記操作台に固定された本体基端ハウジングと、この本体基端ハウジングに基端が結合された細長形状のスピンドルガイド部と、このスピンドルガイド部の先端に先端部材連結部を介して姿勢変更自在に取付けられた先端部材と、この先端部材に回転自在に設けた前記工具とを備え、前記先端部材は、前記工具を保持するスピンドルを回転自在に支持し、前記スピンドルガイド部は、工具回転用駆動源の回転を前記スピンドルに伝達する回転軸と、両端に貫通したガイド孔とを内部に有し、先端が前記先端部材に接して進退動作することにより前記先端部材を姿勢変更させる姿勢操作部材を前記ガイド孔内に進退自在に挿通し、姿勢変更用駆動源により駆動されて前記姿勢操作部材を進退させる姿勢変更用駆動機構を前記本体基端ハウジング内に設けたものとしたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、先端部材に設けた工具の回転により、骨等の切削加工が行われる。その際、姿勢変更用駆動機構により姿勢操作部材を進退させると、この姿勢操作部材の先端が先端部材に対し作用することにより、スピンドルガイド部の先端に取付けられた先端部材が姿勢変更する。姿勢変更用駆動機構を駆動する姿勢変更用駆動源は、先端部材から離れた位置に設けられており、上記先端部材の姿勢変更は遠隔操作で行われる。姿勢操作部材はガイド孔に挿通されているため、姿勢操作部材が長手方向と交差する方向に位置ずれすることがなく、常に先端部材に対し適正に作用することができ、先端部材の姿勢変更動作が正確に行われる。
【0015】
アクチュエータ本体は、任意の自由度を有する操作台に搭載されているため、アクチュエータ本体を任意の位置および姿勢に安定状態に支持することができ、工具の位置決め等について正確な操作が実現できる。また、操作台の自由度に応じて、アクチュエータ本体の操作範囲が限定され、複雑な経路においてもアクチュエータ本体の位置および姿勢を操作することができるため、工具の位置決め精度や操作性が向上する。さらに、手動操作でアクチュエータ本体の位置および姿勢を変更するため、操作者の意思に反してアクチュエータ本体が暴走することがなく、安全性が高い。
【0016】
この発明において、前記操作台は回転対偶部および直動部のいずれか、または両方を有し、これら回転対偶部および直動部のうちの少なくとも1つを任意の位置で静止させる静止機構を設けるのが良い。
静止機構を設ければ、操作者が誤って操作台の操作部から手を放してしまっても、アクチュエータ本体の姿勢が一定に保たれ安全である。また、操作者がアクチュエータ本体を一定な姿勢に保とうとする労力が省け、操作性が向上する。
【0017】
この発明において、前記スピンドルガイド部は湾曲部を有していても良い。スピンドルガイド部が湾曲している方が、工具が患部等に届きやすい場合があるからである。
【0018】
この発明における第1の発明の遠隔操作型アクチュエータは、前記前提構成において、前記スピンドルガイド部が湾曲部を
有し、前記操作台は1つ以上の回転対偶部を有し、そのうちの1つの回転対偶部の回転中心が前記スピンドルガイド部の湾曲部の曲率中心と一致してい
る。
回転対偶部の回転中心がスピンドルガイド部の湾曲部の曲率中心と一致していれば、スピンドルガイド部は、その回転対偶部の回転中心に対して一定の円周上を動くことになる。そのため、操作者が工具の先端位置の軌道を予測し易く、操作性が良い。
【0019】
この発明に
おける第2の発明の遠隔操作型アクチュエータは、前記前提構成において、前記操作台は、固定部材に対し入力部材を、3組以上の入力側リンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各入力側リンク機構は、それぞれ前記固定部材および入力部材に一端が回転可能に連結された固定側および入力側の端部リンク部材と、これら固定側および入力側の端部リンク部材の他端をそれぞれ回転可能に連結した中央リンク部材とでなり、前記各入力側リンク機構は、前記各リンク部材を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する固定側部分と入力側部分とが対称を成す形状である入力側リンク作動装置と、前記固定部材に対し出力部材を、前記入力側リンク機構と同じ組数の出力側リンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各出力側リンク機構は、それぞれ前記固定部材および出力部材に一端が回転可能に連結された固定側および出力側の端部リンク部材と、これら固定側および出力側の端部リンク部材の他端をそれぞれ回転可能に連結した中央リンク部材とでなり、前記各出力側リンク機構は、前記各リンク部材を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する固定側部分と出力側部分とが対称を成す形状である出力側リンク作動装置とを備え、前記3組以上の入力側リンク機構および出力側リンク機構のうち互いに対応する2組以上の入力側リンク機構と出力側リンク機構間に、それぞれ入力側リンク機構における固定側の端部リンク部材の回転を出力側リンク機構における固定側の端部リンク部材に伝達する2つ以上の回転伝達機構を設けたものであり、出力側リンク作動装置の前記出力部材に前記アクチュエータ本体を搭載したもので
ある。
【0020】
この構成によると、操作台は、それぞれ3組以上のリンク機構を有する入力側と出力側の2つのリンク作動装置を備えたものであり、各リンク作動装置は、固定部材と入力部材、または固定部材と出力部材が互いに直交2軸方向に移動自在な2自由度機構となる。この2自由度機構は、可動範囲が広く、スムーズな動作が可能である。例えば、入力側リンク作動装置の場合、固定部材の中心軸と入力部材の中心軸の最大折れ角は約±90°であり、固定部材に対する入力部材の旋回角を0°〜360°の範囲に設定できる。出力側リンク作動装置についても同様である。
【0021】
入力側リンク作動装置の入力部材を動かすと、2つ以上の回転伝達機構により、入力側リンク機構の固定側の端部リンク部材の回転が、出力側リンク機構の固定側の端部リンク部材に伝達されて、出力側リンク作動装置の出力部材が動作する。入力側リンク作動装置と出力側リンク作動装置は同じ構成であるため、入力部材と出力部材は同じ動きをする。そのため、入力部材に設けた操作部材を操作して出力部材に設けたアクチュエータ本体を動作させる場合、操作部材の操作とアクチュエータ本体の動作が一致し、感覚的に操作しやすい。回転伝達機構の数を2つ以上としたのは、入力側リンク作動装置の動作に対する出力側リンク作動装置の動作を確定するのに必要なためである。
【0022】
前記入力側リンク作動装置と前記出力側リンク作動装置は、前記入力側リンク機構と前記出力側リンク機構が前記固定部材に対し互いに鏡面対称となる配置であって良い。
鏡面対称となる配置であると、入力側リンク作動装置の動作と出力側リンク作動装置の動作が互いに鏡面対称となり、操作者の動かしたい方向に動くことになり、操作性が良い。
【0023】
また、前記入力側リンク作動装置と前記出力側リンク作動装置は、前記入力側リンク機構と前記出力側リンク機構が前記固定部材に対し互いに回転対称となる配置であっても良い。
回転対称となる配置であると、入力側リンク作動装置の動作と出力側リンク作動装置の動作が互いに回転対称となり、操作者の動かしたい方向と反対側に動く。そのため、固定部材を支点にして操作する感覚になり、操作性が良い。
【0024】
2組以上の前記入力側リンク機構または前記出力側リンク機構に、固定側の端部リンク部材の回転角を検出する回転角検出手段を設けるのが良い。
回転角検出手段を設ければ、この回転角検出手段の出力信号より、入力側リンク作動装置または出力側リンク作動装置の姿勢を算出することができる。
【0025】
上記回転角検出手段を設ける場合、この回転角検出手段の出力信号を順変換して前記出力部材の角度を算出する角度算出手段と、この角度算出手段により算出された出力部材の角度を表示する角度表示手段とを設けるのが望ましい。
角度算出手段および角度表示手段を設ければ、角度表示手段に表示される出力側リンク作動装置または出力側リンク作動装置の現在の姿勢を見ながら操作することが可能となり、操作性が向上する。
【0026】
前記固定部材に前記工具回転用駆動源および前記姿勢変更用駆動源のいずれか、または両方を設け、前記工具回転用駆動源の回転を前記回転軸に伝達する工具回転用可撓性ワイヤおよび前記姿勢変更用駆動源の回転を前記姿勢変更用駆動機構に伝達する姿勢変更用可撓性ワイヤのいずれか、または両方を、前記出力側リンク作動装置の前記出力側リンク機構の内側を通して設けるのが良い。
固定部材に工具回転用駆動源や姿勢変更用駆動源を設けることにより、出力側リンク作動装置の出力部材に設置したアクチュエータ本体に回転駆動源を設ける必要がなくなるため、アクチュエータ本体を含む可動部を軽量化でき、操作性が向上する。また、工具回転用可撓性ワイヤや姿勢変更用可撓性ワイヤを、出力側リンク機構の内側を通して設ければ、これら可撓性ワイヤが邪魔にならず、さらに操作性が向上する。
【0027】
前記固定部材に前記姿勢変更用駆動源を設け、この姿勢変更用駆動源の回転を姿勢変更用可撓性ワイヤを、介して前記姿勢変更用駆動機構の入力軸に伝達し、前記姿勢変更用駆動機構は、前記入力軸の回転を進退動作に変換する動作変換機構を有し、この動作変換機構の回転部分の中心軸を、前記入力軸、および前記スピンドルガイドの基端における前記回転軸と平行に配置するのが良い。
この構成であると、姿勢変更用可撓性ワイヤの本体基端ハウジング側端とスピンドルガイドの基端における回転軸とが平行となるため、姿勢変更用可撓性ワイヤと本体基端ハウジングとの連結が容易である。
【0028】
前記工具回転用可撓性ワイヤおよび姿勢変更用可撓性ワイヤは、可撓性を有するアウタチューブの内部に、両端がそれぞれ回転の入力端および出力端となる可撓性のインナワイヤを複数の転がり軸受によって回転自在に支持し、隣合う転がり軸受間に、これら転がり軸受に対して予圧を与えるばね要素を設けた構造とするのが良い。
工具回転用可撓性ワイヤおよび姿勢変更用可撓性ワイヤの回転軸となるインナワイヤをアウタチューブの内部に設けることで、インナワイヤを保護することができる。インナワイヤを複数の転がり軸受によって回転自在に支持し、隣合う転がり軸受間にばね要素を設けることにより、インナワイヤの固有振動数が低くなることを抑えられ、インナワイヤを高速回転させることが可能である。
【発明の効果】
【0029】
この発
明における第1の発明の遠隔操作型アクチュエータは、先端に工具を有するアクチュエータ本体を、任意の自由度を有する操作台に搭載した遠隔操作型アクチュエータであって、前記アクチュエータ本体は、前記操作台に固定された本体基端ハウジングと、この本体基端ハウジングに基端が結合された細長形状のスピンドルガイド部と、このスピンドルガイド部の先端に先端部材連結部を介して姿勢変更自在に取付けられた先端部材と、この先端部材に回転自在に設けた前記工具とを備え、前記先端部材は、前記工具を保持するスピンドルを回転自在に支持し、前記スピンドルガイド部は、工具回転用駆動源の回転を前記スピンドルに伝達する回転軸と、両端に貫通したガイド孔とを内部に有し、先端が前記先端部材に接して進退動作することにより前記先端部材を姿勢変更させる姿勢操作部材を前記ガイド孔内に進退自在に挿通し、姿勢変更用駆動源により駆動されて前記姿勢操作部材を進退させる姿勢変更用駆動機構を前記本体基端ハウジング内に設
け、前記スピンドルガイド部は湾曲部を有し、前記操作台は1つ以上の回転対偶部を有し、そのうちの1つの回転対偶部の回転中心が前記スピンドルガイド部の湾曲部の曲率中心と一致したものとしたため、アクチュエータ本体の先端に設けられた工具の姿勢を遠隔操作で変更することができ、アクチュエータ本体を確実に支持し、かつアクチュエータ本体が軽量で、その位置および姿勢を手動で正確に変更することができる
。
この発明における第2の発明の遠隔操作型アクチュエータは、前記前提構成において、前記操作台は、固定部材に対し入力部材を、3組以上の入力側リンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各入力側リンク機構は、それぞれ前記固定部材および入力部材に一端が回転可能に連結された固定側および入力側の端部リンク部材と、これら固定側および入力側の端部リンク部材の他端をそれぞれ回転可能に連結した中央リンク部材とでなり、前記各入力側リンク機構は、前記各リンク部材を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する固定側部分と入力側部分とが対称を成す形状である入力側リンク作動装置と、前記固定部材に対し出力部材を、前記入力側リンク機構と同じ組数の出力側リンク機構を介して姿勢を変更可能に連結し、前記各出力側リンク機構は、それぞれ前記固定部材および出力部材に一端が回転可能に連結された固定側および出力側の端部リンク部材と、これら固定側および出力側の端部リンク部材の他端をそれぞれ回転可能に連結した中央リンク部材とでなり、前記各出力側リンク機構は、前記各リンク部材を直線で表現した幾何学モデルが、前記中央リンク部材の中央部に対する固定側部分と出力側部分とが対称を成す形状である出力側リンク作動装置とを備え、前記3組以上の入力側リンク機構および出力側リンク機構のうち互いに対応する2組以上の入力側リンク機構と出力側リンク機構間に、それぞれ入力側リンク機構における固定側の端部リンク部材の回転を出力側リンク機構における固定側の端部リンク部材に伝達する2つ以上の回転伝達機構を設けたものであり、出力側リンク作動装置の前記出力部材に前記アクチュエータ本体を搭載したため、アクチュエータ本体の先端に設けられた工具の姿勢を遠隔操作で変更することができ、アクチュエータ本体を確実に支持し、かつアクチュエータ本体が軽量で、その位置および姿勢を手動で正確に変更することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
この発明の一実施形態を
図1〜
図4と共に説明する。
図1はこの実施形態の概略構成を示す正面図であり、この遠隔操作型アクチュエータは、先端に回転式の工具1を有するアクチュエータ本体6を、操作台50に搭載したものである。この実施形態の操作台50は、1つの直動部51と2つの回転対偶部52,53を持つ。詳しくは、水平な設置面54に直動部51を設置し、この直動部51の可動ステージ51a上に第1の部材55を固定して設け、この第1の部材55の先端と第2の部材56の基端とを第1の回転対偶部52で連結し、さらに第2の部材56と取付台57とを第2の回転対偶部53で連結してある。直動部51の動作方向軸と各回転対偶部52,53の回転中心軸は、互いに平行である。直動部51には、例えばボールねじ機構(図示せず)やリニアガイドが用いられる。また、回転対偶部52,53には、転がり軸受や滑り軸受が用いられる。
【0032】
前記取付台57は、第2の回転対偶部53を除く部分の正面形状がL字状で、L字の片方の辺部分57aにアクチュエータ本体6の本体基端ハウジング4が固定状態に搭載され、他方の辺部分57bに操作部材58が取付けられる。操作部材58を操作することで、直動部51および回転対偶部52,53を動作させ、アクチュエータ本体6の位置および姿勢を変更する。直動部51および回転対偶部52,53は、操作者の指令に基づき、モータ等の駆動源(図示せず)の動力で動作させても良い。
【0033】
図2に示すように、第1の回転対偶部52には、この第1の回転対偶部52を任意の位置で静止させる静止機構59が設けられている。図示例の第1の回転対偶部52は、第1の部材55に回転対偶軸52aが固定して設けられ、この回転対偶軸52aを中心に第2の部材56が回転できるように、軸受(図示せず)等で第2の部材56を支持している。静止機構59は、第1の部材55を貫通するねじ孔55aにねじ部59aaが螺合する静止部材59aを有し、この静止部材59aの先端を第2の部材56の側面に接触させることで、第1の部材55に対して第2の部材56を回転不能とさせる構造である。
【0034】
このような静止機構59を設ければ、操作者が誤って操作台50の操作部材58から手を放してしまっても、取付台57に搭載されたアクチュエータ本体6の姿勢が一定に保たれるため安全である。また、操作者がアクチュエータ本体6を一定な姿勢に保とうとする労力が省け、操作性が向上する。静止機構59を設ける箇所は、第1の回転対偶部52に限らず、直動部51であっても良く、あるいは第2の回転対偶部53であっても良い。
【0035】
図1に示すように、アクチュエータ本体6は、回転式の工具1を保持する先端部材2と、この先端部材2が先端に姿勢変更自在に取付けられた細長形状のスピンドルガイド部3と、このスピンドルガイド部3の基端が結合された本体基端ハウジング4と、この本体基端ハウジング4内の工具回転用駆動源41および姿勢変更用駆動源42を制御するコントローラ5とを備える。コントローラ5は、本体基端ハウジング4から離して設けられていても良い。
【0036】
図3と共に、先端部材2およびスピンドルガイド部3の内部構造について説明する。
先端部材2は、略円筒状のハウジング11の内部に、一対の軸受12によりスピンドル13が回転自在に支持されている。スピンドル13は、先端側が開口した筒状で、中空部に工具1のシャンク1aが嵌合状態に挿入され、回り止めピン14によりシャンク1aが回転不能に結合される。この先端部材2は、先端部材連結部15を介してスピンドルガイド部3の先端に取付けられる。先端部材連結部15は、先端部材2を姿勢変更自在に支持する手段であり、球面軸受からなる。具体的には、先端部材連結部15は、ハウジング11の基端の内径縮径部からなる被案内部11aと、スピンドルガイド部3の先端に固定された抜け止め部材21の鍔状部からなる案内部21aとで構成される。両者11a,21aの互いに接する各案内面F1,F2は、スピンドル13の中心線CL上に曲率中心Oが位置し、基端側ほど径が小さい球面とされている。これにより、スピンドルガイド部3に対して先端部材2が抜け止めされるとともに、姿勢変更自在に支持される。この例は、曲率中心Oを通るX軸回りに先端部材2が姿勢変更する構成であるため、案内面F1,F2が、点Oを通るX軸を軸心とする円筒面であってもよい。
【0037】
スピンドルガイド部3は、工具回転用駆動源41(
図1)の回転を前記スピンドル13へ伝達する回転軸22を有する。回転軸22は、スピンドルガイド部3から本体基端ハウジング4(
図1)にわたって設けられており、その基端が本体基端ハウジング4の基端付近に位置している。この例では、回転軸22はワイヤとされ、ある程度の弾性変形が可能である。ワイヤの材質としては、例えば金属、樹脂、グラスファイバー等が用いられる。ワイヤは単線であっても、撚り線であってもよい。
図3(C)に示すように、スピンドル13と回転軸22とは、自在継手等の継手23を介して回転伝達可能に接続されている。継手23は、スピンドル13の閉塞した基端に設けられた溝13aと、回転軸22の先端に設けられ前記溝13aに係合する突起22aとで構成される。上記溝13aと突起22aとの連結箇所の中心は、前記案内面F1,F2の曲率中心Oと同位置である。
【0038】
スピンドルガイド部3は、このスピンドルガイド部3の外郭となる外郭パイプ25を有し、この外郭パイプ25の中心に前記回転軸22が位置する。回転軸22は、それぞれ軸方向に離れて配置された複数の転がり軸受26によって回転自在に支持されている。各転がり軸受26間には、これら転がり軸受26に予圧を発生させるためのばね要素27A,27Bが設けられている。ばね要素27A,27Bは、例えば圧縮コイルばねである。転がり軸受26の内輪に予圧を発生させる内輪用ばね要素27Aと、外輪に予圧を発生させる外輪用ばね要素27Bとがあり、これらが交互に配置されている。前記抜け止め部材21は、固定ピン28により外郭パイプ25のパイプエンド部25aに固定され、その先端内周部で転がり軸受29を介して回転軸22の先端部を回転自在に支持している。パイプエンド部25aは、外郭パイプ25と別部材とし、溶接等により結合してもよい。
【0039】
外郭パイプ25の内径面と回転軸22の間には、両端に貫通する1本のガイドパイプ30が設けられ、このガイドパイプ30の内径孔であるガイド孔30a内に、姿勢操作部材31が進退自在に挿通されている。この例では、姿勢操作部材31は、ワイヤ31aと、その両端に設けた柱状ピン31bとでなる。先端部材2側の柱状ピン31bの先端は球面状で、先端部材2のハウジング11の基端面に当接している。本体基端ハウジング4側の柱状ピン31bの先端も球面状で、後記レバー43b(
図4)の前面に当接している。
【0040】
上記姿勢操作部材31が位置する周方向位置に対し180度の位相の位置には、先端部材2のハウジング11の基端面とスピンドルガイド部3の外郭パイプ25の先端面との間に、例えば圧縮コイルばねからなる復元用弾性部材32が設けられている。この復元用弾性部材32は、先端部材2を所定姿勢側へ付勢する作用をする。
【0041】
また、外郭パイプ25の内径面と回転軸22の間には、前記ガイドパイプ30とは別に、このガイドパイプ30と同一ピッチ円C上に、複数本の補強シャフト34が配置されている。これらの補強シャフト34は、スピンドルガイド部3の剛性を確保するためのものである。ガイドパイプ30と補強シャフト34の配列間隔は等間隔とされている。ガイドパイプ30および補強シャフト34は、外郭パイプ25の内径面におよび前記転がり軸受26の外径面に接している。これにより、転がり軸受26の外径面を支持している。
【0042】
図4は、本体基端ハウジング4の内部構造を示す。本体基端ハウジング4内には、工具回転用駆動源41と姿勢変更用駆動源42とが設けられている。工具回転用駆動源41は、例えば電動モータであり、その出力軸41aが前記回転軸22の基端に結合されている。回転軸22は、後記レバー43bに形成された開口44を貫通させてある。姿勢変更用駆動源42は、例えば電動リニアアクチュエータであり、
図4(A)の左右方向に移動する出力ロッド42aの動きが、姿勢変更用駆動機構43を介して前記姿勢操作部材31に伝達される。姿勢変更用駆動機構43は、支軸43a回りに回動自在なレバー43bを有し、このレバー43bにおける支軸43aからの距離が長い作用点P1に出力ロッド42aの力が作用し、支軸43aからの距離が短い力点P2で姿勢操作部材31に力を与える構成であり、姿勢変更用駆動源42の出力が増力して姿勢操作部材31に伝達される。すなわち、この実施形態の姿勢変更用駆動機構43は、増力伝達機構である。なお、電動アクチュエータ等を設ける代わりに、手動により先端部材2の姿勢を遠隔操作してもよい。
【0043】
本体基端ハウジング4内には、姿勢変更用駆動源42の動作量を検出する動作量検出器45が設けられている。この動作量検出器45の検出値は、姿勢検出手段46に出力される。姿勢検出手段46は、動作量検出器45の出力により、先端部材2のX軸(
図3)回りの傾動姿勢を検出する。姿勢検出手段46は、上記傾動姿勢と動作量検出器45の出力信号との関係を演算式またはテーブル等により設定した関係設定手段(図示せず)を有し、入力された出力信号から前記関係設定手段を用いて傾動姿勢を検出する。この姿勢検出手段46は、コントローラ5に設けられたものであっても、あるいは外部の制御装置(図示せず)に設けられたものであってもよい。
【0044】
また、本体基端ハウジング4内には、電動アクチュエータである姿勢変更用駆動源42に供給される電力量を検出する供給電力計47が設けられている。この供給電力計47の検出値は、荷重検出手段48に出力される。荷重検出手段48は、供給電力計47の出力により、先端部材2に作用する荷重を検出する。荷重検出手段48は、上記荷重と供給電力計47の出力信号との関係を演算式またはテーブル等により設定した関係設定手段(図示せず)を有し、入力された出力信号から前記関係設定手段を用いて荷重を検出する。この荷重検出手段48は、コントローラ5に設けられたものであっても、あるいは外部の制御装置に設けられたものであってもよい。
【0045】
コントローラ5は、コンピュータおよびこれに実行されるプログラムからなる制御装置を備え、前記姿勢検出手段46および荷重検出手段48の検出値に基づき、工具回転用駆動源41および姿勢変更用駆動源42を制御する。制御内容については、後で説明する。
【0046】
この遠隔操作型アクチュエータの動作を説明する。
アクチュエータ本体6は、操作台50に搭載されているため、任意の位置および姿勢に安定状態に支持される。操作台50は1つの直動部51と2つの回転対偶部52,53を有し、操作台50の操作部材58を操作することで、アクチュエータ本体6の位置および姿勢を変更させられる。アクチュエータ本体6の操作範囲は限定され、複雑な経路においてもアクチュエータ本体の位置および姿勢を正確に操作することができるため、工具1の位置決め精度や操作性が良い。また、手動操作でアクチュエータ本体6の位置および姿勢を変更するため、操作者の意思に反してアクチュエータ本体6が暴走することがなく、安全性が高い。
【0047】
工具回転用駆動源41を駆動すると、その回転力が回転軸22を介してスピンドル13に伝達されて、スピンドル13と共に工具1が回転する。工具1を回転させて骨等を切削加工する際に先端部材2に作用する荷重は、供給電力計47の検出値から、荷重検出手段48によって検出される。このように検出される荷重の値に応じてアクチュエータ本体6の送り量や先端部材2の姿勢変更を制御することにより、先端部材2に作用する荷重を適正に保った状態で骨の切削加工を行える。
【0048】
使用時には、姿勢変更用駆動源42を制御して、遠隔操作で先端部材2の姿勢変更を行う。例えば、姿勢変更用駆動源42により姿勢操作部材31を先端側へ進出させると、姿勢操作部材31によって先端部材2のハウジング11が押されて、先端部材2は
図3(A)において先端側が下向きとなる側へ案内面F1,F2に沿って姿勢変更する。逆に、姿勢操作部材31を後退させると、復元用弾性部材32の弾性反発力によって先端部材2のハウジング11が押し戻され、先端部材2は
図3(A)において先端側が上向きとなる側へ案内面F1,F2に沿って姿勢変更する。このとき、先端部材連結部15には、姿勢操作部材31の圧力、復元用弾性部材32の弾性反発力、および抜け止め部材21からの反力が作用しており、これらの作用力の釣り合いにより先端部材2の姿勢が決定される。先端部材2の姿勢は、動作量検出器45の検出値から、姿勢検出手段46によって検出される。そのため、遠隔操作で先端部材2の姿勢を適正に制御できる。
【0049】
姿勢操作部材31はガイド孔30aに挿通されているため、姿勢操作部材31が長手方向と交差する方向に位置ずれすることがなく、常に先端部材2に対し適正に作用することができ、先端部材2の姿勢変更動作が正確に行われる。また、スピンドル13と回転軸22との連結箇所の中心が案内面F1,F2の曲率中心Oと同位置であるため、先端部材2の姿勢変更によって回転軸22に対して押し引きする力がかからず、先端部材2が円滑に姿勢変更できる。
【0050】
この遠隔操作型アクチュエータは、例えば人工関節置換手術において骨の髄腔部を削るのに使用されるものであり、施術時には、先端部材2の全部または一部が患者の体内に挿入して使用される。このため、上記のように先端部材2の姿勢を遠隔操作で変更できれば、常に工具1を適正な姿勢に保持した状態で骨の加工をすることができ、人工関節挿入用穴を精度良く仕上げることができる。また、アクチュエータ本体6が安定状態に支持されるので、操作がし易く、加工時間を短縮できる。それにより、手術用として使用する場合に、患者の負担を軽減できる。
【0051】
細長形状であるスピンドルガイド部3には、回転軸22および姿勢操作部材31を保護状態で設ける必要があるが、外郭パイプ25の中心部に回転軸22を設け、外郭パイプ25と回転軸22との間に、姿勢操作部材31を収容したガイドパイプ30と補強シャフト34とを円周方向に並べて配置した構成としたことにより、回転軸22および姿勢操作部材31を保護し、かつ内部を中空して軽量化を図りつつ剛性を確保できる。また、全体のバランスも良い。
【0052】
回転軸22を支持する転がり軸受26の外径面を、ガイドパイプ30と補強シャフト34とで支持させたため、余分な部材を用いずに転がり軸受26の外径面を支持できる。また、ばね要素27A,27Bにより転がり軸受26に予圧がかけられているため、ワイヤからなる回転軸22を高速回転させることができる。そのため、スピンドル13を高速回転させて加工することができ、加工の仕上がりが良く、工具1に作用する切削抵抗を低減させられる。ばね要素27A,27Bは隣合う転がり軸受26間に設けられているので、スピンドルガイド部3の径を大きくせずにばね要素27A,27Bを設けることができる。
【0053】
図1のアクチュエータ本体6はスピンドルガイド部3が直線形状であるが、姿勢操作部材31は可撓性であるため、
図5のようにスピンドルガイド部3が湾曲していても、先端部材2の姿勢変更動作を確実に行える。スピンドルガイド部3の一部分のみが湾曲形状であってもよい。スピンドルガイド部3が湾曲形状であれば、直線形状では届きにくい骨の奥まで先端部材2を挿入することが可能となる場合があり、人工関節置換手術における人工関節挿入用穴の加工を精度良く仕上げることが可能になる。
【0054】
スピンドルガイド部3を湾曲形状とする場合、外郭パイプ25、ガイドパイプ30、および補強シャフト34を湾曲形状とする必要がある。また、回転軸22は変形しやすい材質を用いるのが良く、例えば形状記憶合金が適する。
【0055】
図5の遠隔操作型アクチュエータは、
図1のものと比べて、アクチュエータ本体6が異なるだけではなく、操作台50も異なる。すなわち、この操作台50は、1つの直動部61と1つの回転対偶部62を持つ。詳しくは、水平な設置面64に直動部61を設置し、この直動部61の可動ステージ61a上に第1の部材65を固定して設け、この第1の部材65の先端と第2の部材66の基端とを回転対偶部62で連結し、第2の部材66の先端に取付台57を固定してある。直動部61の動作方向軸と回転対偶部62の回転中心軸は、互いに直交している。
【0056】
また、この図示例では、アクチュエータ本体6のスピンドルガイド部3の曲率中心Qと回転対偶部62の回転中心とを一致させてある。それにより、スピンドルガイド部3は回転対偶部62の回転中心から曲率半径Rの距離にある一定の円周上を動くことになり、操作者が工具1の先端位置の軌道を予測し易く、操作性が良い。
【0057】
図6〜
図11は、この発明の異なる実施形態を示す。この遠隔操作型アクチュエータの操作台50は、入力側と出力側の2つのリンク作動装置102A,102Bを備える。両リンク作動装置102A,102Bの固定部材114A,114Bが、それぞれ共通の固定台103に固定されている。広義では、2つの固定部材114A,114Bと固定台103とを合わせたものも「固定部材」である。以下、この広義の固定部材を「広義固定部材104」とする。請求の範囲で言うところの「固定部材」は「広義固定部材104」のことである。
【0058】
図8(A)に示すように、入力側リンク作動装置102Aは、固定部材114Aに対し入力部材115Aを3組の入力側リンク機構111A〜113Aを介して姿勢変更可能に連結したものであり、
図8(B)に示すように、出力側リンク作動装置102Bは、固定部材114Bに対し出力部材115Bを3組の出力側リンク機構111B〜113Bを介して姿勢変更可能に連結したものである。両リンク作動装置102A,102Bは、入力側リンク機構111Aと出力側リンク機構111Bとが広義固定部材104に対し互いに鏡面対称となるように配置されている。この点を除けば、両リンク作動装置102A,102Bは基本的に同じ構造である。なお、
図6〜
図8では、入力側および出力側の各3組のリンク機構のうち、それぞれ1組のリンク機構111A,111Bのみが表示されている。
【0059】
図9は入力側リンク作動装置102Aの斜視図、
図10は出力側リンク作動装置102Bの斜視図である。先に説明したように、両リンク作動装置102A,102Bはリンク機構111A,111Bが鏡面対称の配置であることを除けば同じ構造であるため、重複を避けるために、以下の説明では入力側リンク作動装置102Aについて記し、入力側リンク作動装置102Aと出力側リンク作動装置102Bとで名称や符号が異なる箇所についてのみ、出力側リンク作動装置102Bの名称や符号を括弧内に記すことにする。
【0060】
入力側リンク作動装置102A(出力側リンク作動装置102B)は、3組の入力側リンク機構111A,112A,113A(出力側リンク機構111B,112B,113B)を具備する。以下、各リンク機構111A,112A,113A(111B,112B,113B)を、「111A〜113A(111B〜113B)」と表記する。これら3組のリンク機構111A〜113A(111B〜113B)は、それぞれ幾何学的に同一形状をなす。すなわち、各リンク機構111A〜113A(111B〜113B)は、後述の各リンク部材111a〜113a,111b〜113b,111c〜113cを直線で表現した幾何学モデルが、中央リンク部材111b〜113bの中央部に対する入力側部分と出力側部分が対称を成す形状である。
【0061】
各リンク機構111A,112A,113A(111B,112B,113B)は、固定側の端部リンク部材111a,112a,113a、中央リンク部材111b,112b,113b、および入力側(出力側)の端部リンク部材111c,112c,113cで構成され、4つの回転対偶からなる3節連鎖のリンク機構をなす。以下、上記各リンク部材をそれぞれ「111a〜113a」、「111b〜113b」、「111c〜113c」と表記する。端部リンク部材111a〜113a,111c〜113cは球面リンク構造で、3組のリンク機構111A〜113A(111B〜113B)における球面リンク中心PA,PC(
図8)は一致しており、また、その中心PA,PCからの距離も同じである。端部リンク部材111a〜113a,111c〜113cと中央リンク部材111b〜113bとの連結部となる回転対偶軸は、ある交差角をもっていてもよいし、平行であってもよい。但し、3組のリンク機構111A〜113A(111B〜113B)における中央リンク部材111b〜113bの形状は幾何学的に同一である。
【0062】
1組のリンク機構111A〜113A(111B〜113B)は、前記固定部材114A(114B)と、前記入力部材115A(出力部材115B)と、これら固定部材114A(114B)および入力部材115A(出力部材115B)のそれぞれに回転可能に連結させた2つの端部リンク部材111a〜113a,111c〜113cと、両端部リンク部材111a〜113a,111c〜113cのそれぞれに回転可能に連結されて両端部リンク部材111a〜113a,111c〜113cを互いに連結する1つの中央リンク部材111b〜113bとを具備する。
【0063】
この実施形態のリンク機構111A〜113A(111B〜113B)は回転対称タイプで、固定部材114A(114B)および端部リンク部材111a〜113aと、入力部材115A(出力部材115B)および端部リンク部材111c〜113cとの位置関係が、中央リンク部材111b〜113bの中心線Aに対して回転対称となる位置構成になっている。
図6は、固定部材114A(114B)の中心軸Bと入力部材115A(出力部材115B)の中心軸Cとが同一線上にある状態を示し、
図7は、固定部材114A(114B)の中心軸Bに対して入力部材115A(出力部材115B)の中心軸Cが所定の作動角をとった状態を示す。各リンク機構111A〜113A(111B〜113B)の姿勢が変化しても、固定側と入力側(出力側)の球面リンク中心PA,PC間の距離L(
図8)は変化しない。
【0064】
図11に示すように、固定部材114A(114B)は、その中心部に貫通孔116が軸方向に沿って形成され、また、大きな角度がとれるように外形を球面状としたドーナツ形状をなしている。固定部材114A(114B)には、半径方向に延びる軸部材嵌挿用の貫通孔118が円周方向等間隔で3個形成され、各貫通孔118に複列の軸受119を介して軸部材120が嵌挿されている。入力部材115A(出力部材115B)も同じ構造で、その中心部に貫通孔116(
図9、
図10)が軸方向に沿って形成されている。
【0065】
前記軸受119は、例えば深溝玉軸受であって、固定部材114A(114B)の貫通孔118に内嵌された外輪119aと、軸部材120に外嵌された内輪119bと、これら外輪119aと内輪119b間に回転自在に介挿されたボール等の転動体119cとからなる。つまり、外輪119aは固定部材114A(114B)に固定され、内輪119bは軸部材120と共に回転する構造である。軸部材120の外側端部は、固定部材114A(114B)から突出し、その突出ねじ部120aに端部リンク部材111a,112a,113aが結合され、ナット123による締付けでもって軸受119に所定の予圧量を付与して固定されている。固定部材114A(114B)に対して軸部材120を回転自在に支承する軸受119は、止め輪122により固定部材114A(114B)から抜け止めされている。なお、軸受119としては、
図11に図示されているように深溝玉軸受を複列で配設する以外に、アンギュラ玉軸受、ローラ軸受、あるいは滑り軸受を使用することも可能である。
【0066】
また、固定部材114A(114B)に設けられた3本の軸部材120のうち、端部リンク部材111a,112aが結合された2本の軸部材120には、端部リンク部材111a,112aとナット123との間にギア部材121A(121B)が軸部材120と一体回転するように取付けられている。このギア部材121A(121B)は、
図6〜
図10に図示されているように扇形の平歯車である。両ギア部材121A,121Bは、同径同ピッチであり、対応するもの同士が互いに噛み合っている。
【0067】
なお、軸部材120と端部リンク部材111a〜113aとは、加締め等により結合される。キーあるいはセレーションにより結合することが可能である。その場合、結合構造の緩みを防止でき、伝達トルクの増加を図ることができる。また、軸部材120とギア部材121A(121B)とは、スプライン等により一体に回転するように結合される。
【0068】
入力部材115A(出力部材115B)は、軸部材120の外側端部にギア部材121A(121B)が設けられていない点を除いて、固定部材114A(114B)と同一構造である。軸部材120の円周方向位置は等間隔でなくてもよいが、固定部材114A(114B)および入力部材115A(出力部材115B)は同じ円周方向の位置関係とする必要がある。これら固定部材114A(114B)および入力部材115A(出力部材115B)は、3組のリンク機構111A〜113A(111B〜113B)で共有され、各軸部材120に端部リンク部材111a〜113a,111c〜113cが連結される。
【0069】
端部リンク部材111a〜113a,111c〜113cはL字状をなし、一辺を固定部材114A(114B)および入力部材115A(出力部材115B)から突出する軸部材120に結合し、他辺を中央リンク部材111b〜113bに連結する。端部リンク部材111a〜113a,111c〜113cは、大きな角度がとれるようにリンク中心側に位置する軸部125の屈曲基端内側が大きくカットされた形状を有する。
【0070】
中央リンク部材111b〜113bはほぼL字状をなし、両辺に貫通孔124を有する。この中央リンク部材111b〜113bは、大きな角度がとれるようにその周方向側面がカットされた形状を有する。端部リンク部材111a〜113a,111c〜113cの他辺から一体的に屈曲成形された軸部125を、複列の軸受126を介して中央リンク部材111b〜113bの両辺の貫通孔124に挿通する。
【0071】
軸受126も、例えば深溝玉軸受であって、中央リンク部材111b〜113bの貫通孔124に内嵌された外輪126aと、端部リンク部材111a〜113a,111c〜113cの軸部125に外嵌された内輪126bと、これら外輪126aと内輪126b間に回転自在に介挿されたボール等の転動体126cとからなる。端部リンク部材111a〜113a,111c〜113cに対して中央リンク部材111b〜113bを回転自在に支承する軸受126は、止め輪127により中央リンク部材111b〜113bから抜け止めされている。
【0072】
図9(
図10)に図示された前記リンク機構111A〜113A(111B〜113B)において、固定部材114A(114B)および入力部材115A(出力部材115B)の軸部材120の角度、長さ、および端部リンク部材111a〜113a,111c〜113cの幾何学的形状が固定側と入力側(出力側)で等しく、また、中央リンク部材111b〜113bについても固定側と入力側(出力側)で形状が等しいとき、中央リンク部材111b〜113bの対称面に対して中央リンク部材111b〜113bと、固定部材114A(114B)および入力部材115A(出力部材115B)と連結される端部リンク部材111a〜113a,111c〜113cとの角度位置関係を固定側と入力側(出力側)で同じにすれば、幾何学的対称性から入力部材114A(114B)および端部リンク部材111a〜113aと、入力部材115A(出力部材115B)および端部リンク部材111c〜113cとは同じに動き、固定側と入力側(出力側)は同じ回転角になって等速で回転することになる。この等速回転するときの中央リンク部材111b〜113bの対称面を等速二等分面という。
【0073】
このため、固定部材114A(114B)および入力部材115A(出力部材115B)を共有する同じ幾何学形状のリンク機構111A〜113A(111B〜113B)を円周上に複数配置させることにより、複数のリンク機構111A〜113A(111B〜113B)が矛盾なく動ける位置として中央リンク部材111b〜113bが等速二等分面上のみの動きに限定され、これにより固定側と入力側(出力側)は任意の作動角をとっても等速回転が得られる。
【0074】
各リンク機構111A〜113A(111B〜113B)における4つの回転対偶の回転部、つまり、端部リンク部材111a〜113a,111c〜113cと固定部材114A(114B)および入力部材115A(出力部材115B)との2つの連結部、および端部リンク部材111a〜113a,111c〜113cと中央リンク部材111b〜113bの2つの連結部に軸受119,126を介在させた構造とすることにより、その連結部での摩擦抵抗を抑えて回転抵抗の軽減を図ることができ、滑らかな動力伝達を確保できると共に耐久性を向上できる。
【0075】
この軸受119,126を介在させた構造では、軸受119,126に予圧を付与することにより、ラジアル隙間とスラスト隙間をなくし、連結部でのがたつきを抑えることができ、固定側と入力側(出力側)間の回転位相差がなくなり等速性を維持できると共に振動や異音の発生を抑制できる。特に、前記軸受119,126の軸受隙間を負すきまとすることにより、入出力間に生じるバックラッシュを少なくすることができる。
【0076】
この入力側リンク作動装置102A(出力側リンク作動装置102B)の構成によれば、固定部材114A(114B)に対する入力部材115A(出力部材115B)の可動範囲を広くとれる。例えば、固定部材114A(114B)の中心軸Bと入力部材115A(出力部材115B)の中心軸Cの最大折れ角を約±90°とすることができる。また、固定部材114A(114B)に対する入力部材115A(出力部材115B)の旋回角を0°〜360°の範囲で設定できる。
【0077】
また、この構成の入力側リンク作動装置102A(出力側リンク作動装置102B)は、固定部材114A(114B)および
入力部材115A
(出力部材115B)に軸受119の外輪119aを内包すると共に内輪119bを端部リンク部材111a〜113a,111c〜113cと結合させて、固定部材114A(114B)および
入力部材115A
(出力部材115B)内に軸受119を埋設したので、全体の外形を大きくすることなく、固定部材114A(114B)および
入力部材115A
(出力部材115B)の外形を拡大することができる。そのため、固定部材114A(114B)を固定台103に取付けるための取付スペース、入力部材115Aに後述する操作部材106(
図6、
図7)を取付けるための取付スペース、および出力部材115Bに駆動装置(図示せず)を取付けるための取付スペースの確保が容易である。
【0078】
図6および
図7に示すように、入力側リンク作動装置102Aに設けた前記2個の入力側ギア部材121Aと出力側リンク作動装置102Bに設けた前記2個の出力側ギア部材121Bとは、互いに対応するもの同士が噛み合っている。両ギア部材121A,121Bは、同じ歯数である。これら互いに噛み合う一対のギア部材121A,121Bで、回転伝達機構105を構成する。すなわち、1つの操作台50に付き、2組の回転伝達機構105が設けられている。この2組の回転伝達機構105により、入力側リンク機構111A,112Aにおける固定側の端部リンク部材111a,112aの回転を出力側リンク機構111B,112Bにおける固定側の端部リンク部材111a,112aに伝達する。3組の入力側リンク機構111A〜113Aおよび出力側リンク機構111B〜113Bのうち2組に回転伝達機構105を設けたのは、入力側リンク作動装置102Aの動作に対する出力側リンク作動装置102Bの動作を確定するのに必要なためである。3組の入力側リンク機構111A〜113Aおよび出力側リンク機構111B〜113Bの全て回転伝達機構105を設けても良い。
【0079】
入力側リンク作動装置102Aの入力部材115Aには、手動操作用の操作部材106が取付けられる。また、出力側リンク作動装置102Bの出力部材115Bには、取付台57を介してアクチュエータ本体6が搭載される。アクチュエータ本体6は、前記実施形態のものと同じ構成である。固定台103は、直動部107の可動ステージ107a上に固定して設けられる。
【0080】
操作部材106を操作して入力側リンク作動装置102Aの入力部材115Aを動かすと、2組の回転伝達機構105により、入力側リンク機構111A,112Aの固定側の端部リンク部材111a,112aの回転が、出力側リンク機構111B,112Bの固定側の端部リンク部材111a,112aに伝達されて、出力側リンク作動装置102Bの出力部材115Bが動作する。入力側リンク機構111A〜113Aと出力側リンク機構111B〜113Bは鏡面対称の配置であるため、入力部材115Aと出力部材115Bは鏡面対称の動きをする。そのため、操作部材106の操作と出力部材115Bに搭載したアクチュエータ本体6の動作が一致し、感覚的に操作しやすい。
【0081】
回転伝達機構105は、入力側ギア部材121Aと出力側ギア部材121Bとの噛み合いにより、入力側リンク機構111A,112Aにおける固定側の端部リンク部材111a,112aから出力側リンク機構111B,112Bにおける固定側の端部リンク部材111a,112aへ回転を伝達する構成であるため、回転伝達機構105内での滑りが発生せず、確実に回転を伝達できる。入力側ギア部材121Aと出力側ギア部材121Bは同じ歯数であるため、入力側リンク機構111A,112Aにおける固定側の端部リンク部材111a,112aと出力側リンク機構111B,112Bにおける固定側の端部リンク部材111a,112aの回転数が等しくなり、入力側リンク作動装置102Aから出力側リンク作動装置102Bへ同じ運動を伝達することができる。
【0082】
図12は異なる実施形態を示す。この実施形態の操作台50は、回転伝達機構105をベルト伝動機構としたものである。入力側リンク作動装置102Aと出力側リンク作動装置102Bは同形同寸であって、固定台103に対して互いに回転対称となる配置で固定されている。そして、各固定部材114A,114Bに設けられた各3本の軸部材120のうち、端部リンク部材111aが結合された軸部材120を含む2本の軸部材120に、前記実施形態におけるギア部材121A,121Bの代わりに同一径のプーリ130A,130Bを設け、これらプーリ130A,130Bに伝動ベルト131をけさ掛けで掛けてある。上記プーリ130A,131Bと伝動ベルト131とで、回転伝達機構105を構成する。伝動ベルト131は、歯付きのタイミングベルトとするのが好ましい。この実施形態の場合、例えば、固定台103は固定構造物に固定して設置される。
【0083】
この構成によると、入力側リンク機構111Aにおける固定側の端部リンク部材111aと出力側リンク機構111Bにおける固定側の端部リンク部材111aの回転数が等しく、入力側リンク作動装置102Aから出力側リンク作動装置102Bへ同じ運動が伝達される。入力側リンク機構111A〜113Aと出力側リンク機構111B〜113Bは回転対称の配置としてあるため、入力側リンク作動装置102Aの動作と出力側リンク作動装置102Bの動作の関係も互いに回転対称となる。つまり、操作部材106の操作方向と反対の方向にアクチュエータ本体6が動き、固定台103を支点にしてアクチュエータ本体6を操作する感覚が得られる。アクチュエータ本体6の種類や使用状況によっては、上記のように操作部材106の操作とアクチュエータ本体6の動作が逆である方が、操作部材106の操作とアクチュエータ本体6の動作が同じであるよりも操作性が良いことがあり、その場合にこの実施形態の構成を採用すると良い。
【0084】
図13〜
図15はさらに異なる実施形態を示す。この実施形態の操作台50は、固定部材114A,114B、入力部材115A,および出力部材115Bに対し端部リンク部材111a〜113a,111c〜113cを支持する軸受119(
図15)を外輪回転タイプとしたものである。入力側リンク作動装置102Aの固定部材114Aと固定側の端部リンク部材111a〜113aの連結部を例にとって説明すると、
図15に示すように、固定部材114Aの円周方向の3箇所に軸部133が形成され、この軸部133に複列で設けた軸受119の内輪119bが外嵌され、端部リンク部材111a〜113aに形成された軸受支持部134に軸受119の外輪119aが内嵌している。つまり、内輪119bは固定部材114Aに固定され、外輪119aが端部リンク部材111a〜113aと共に回転する構造である。軸部133の先端ねじ部133aに螺着したナット123による締付けでもって、軸受119に所定の予圧量を付与している。固定部材114Bと固定側の端部リンク部材111a〜113aの連結部、入力部材115Aと入力側の端部リンク部材111c〜113cの連結部、および出力部材115Bと出力側の端部リンク部材111c〜113cの連結部も、上記同様の構造である。
【0085】
3本の固定側の端部リンク部材111a〜113aのうちの、端部リンク部材111aを含む2本の端部リンク部材に、入力側ギア部材121A(
図13、
図14(A))が一体に形成されている。また、出力側リンク作動装置102Bの固定部材114Bと固定側の端部リンク部材111a〜113aの連結部には、出力側ギア部材121B(
図13、
図14(B))が一体に形成されている。これら一対のギア部材121A,121Bで、回転伝達機構105を構成する。ギア部材121A,121Bは、端部リンク部材111aと別体とし、固定具(図示せず)により端部リンク部材111aに固定してもよい。
【0086】
また、図例では、固定側の端部リンク部材111aに対し中央リンク部材111bを支持する軸受126は、端部リンク部材111aの軸受支持部135に外輪126aが内嵌し、中央リンク部材111bの軸部136に内輪126bが外嵌している。入力側および出力側の端部リンク部材111cと中央リンク部材111bの連結部も、上記同様の構造である。
なお、固定部材114A,114B、入力部材115A、および出力部材115Bには、前記実施形態と同様に、中心部に軸方向に沿う貫通孔116が形成されている。
【0087】
図16〜
図18に示すように、操作台50に、入力側および出力側のリンク作動装置102A,102Bを任意の姿勢で位置決めするための静止機構を設けても良い。
図16の静止機構143は、固定部材114Aに対し固定側の端部リンク部材111aを支持する軸受119が外輪回転タイプである入力側リンク作動装置102A(
図13〜
図15)に設けた例であり、固定部材114Aの軸部133に、端部リンク部材111aの側面に接触するように静止部材137を螺着させてある。これにより、端部リンク部材111aと静止部材137との摩擦力により、端部リンク部材111aの回転自由度が抑制される。このような静止部材137を、3つの端部リンク部材111a〜113aのうち2つ以上に設ければ、リンク作動装置102A,102Bの動きが抑制され、リンク作動装置102A,102Bを任意の姿勢で固定することが可能になる。静止部材137は、出力側リンク作動装置102Bに設けても良い。また、入力側または出力側の端部リンク部材(図示せず)の回転対偶部に設けても良い。いずれの場合も、上記と同様の作用・効果が得られる。
【0088】
図17の静止機構143も、前記軸受119が外輪回転タイプである入力側リンク作動装置102A(
図15)に設けた例であり、固定部材114Aの軸部133に取付けられたギア138と、このギア138に係合可能なストッパ139とで回転拘束手段140を構成している。ストッパ139は、端部リンク部材111aに固定した取付部材141のストッパ保持孔141a内に保持され、ばね142により軸部133の中心側に付勢されており、球状の先端部がギア138の外周面に当接している。ストッパ139の先端部がギア138の溝に係合することで、端部リンク部材111aの回転自由度が抑制される。このような回転拘束手段140を、3つの端部リンク部材111a〜113aのうち2つ以上に設ければ、リンク作動装置102A,102Bの動きが抑制され、リンク作動装置102A,102Bを任意の姿勢で固定することが可能になる。この回転拘束手段140は、出力側リンク作動装置102Bに設けても良い。また、入力側または出力側の端部リンク部材(図示せず)の回転対偶部に設けても良い。いずれの場合も、上記と同様の作用・効果が得られる。
【0089】
図18に示す静止機構143は、固定部材114Bに対し固定側の端部リンク部材111aを支持する軸受119が内輪回転タイプである出力側リンク作動装置102B(
図11)に設けた例であり、固定側の端部リンク部材111aの回転対偶部と回転伝達機構105を構成するギア部材121Bとの間に、ワンウェイクラッチ144を介在させてある。ワンウェイクラッチ144は、回転伝達機構105からの入力時は回転を許容するが、端部リンク部材111aからの入力に対してはロックする機能を有する。これにより、出力側リンク作動装置102Bに力が作用した場合でも、入力側リンク作動装置102Aに回転力が伝達されないため、リンク作動装置102A,102Bはそのままの姿勢で保持される。つまり、出力部材115Bおよびこの出力部材115Bに搭載されているアクチュエータ本体6に外力が作用しても、操作が乱されることが無くて、安全である。
【0090】
図19は、リンク作動装置102A,102Bの姿勢を検出する姿勢検出機構の概略構成図である。この姿勢検出機構150は、出力側リンク作動装置102Bの3つの固定側の端部リンク部材111a〜113aのうち2つ以上に設けられた回転角検出手段151を有する。図例では、2つの回転角検出手段151により、固定側の端部リンク部材111a,113aの回転角を検出する。例えば、回転角検出手段151はロータリエンコーダであり、固定部材114Bにボルト152で固定された取付部材153に設置されている。そして、ロータリエンコーダである回転角検出手段151の回転軸151aが、固定部材114Bの軸部133に設けた孔154に固定状態で挿入されている。
【0091】
上記2つの回転角検出手段151の出力信号は、角度算出手段155に送られる。角度算出手段155は、上記出力信号より、リンク作動装置102A,102Bの姿勢を表す折れ角θ(
図20)および旋回角φ(
図20)を算出する。折れ角θは、固定部材114A(114B)の中心軸Bに対して入力部材115A(出力部材115B)が傾斜した垂直角度のことであり、旋回角φは、固定部材114A(114B)の中心軸Bに対して入力部材115A(出力部材115B)が傾斜した水平角度のことである。そして、算出された折れ角θおよび旋回角φを角度表示手段156に表示する。このような姿勢検出機構150を設ければ、角度表示手段156に表示されるリンク作動装置102A,102Bの姿勢を見ながら操作台50を操作することができ、操作性が向上する。
【0092】
なお、上記角度算出手段155による折れ角θおよび旋回角φの算出は、下記の関係式を順変換することで行われる。順変換とは、端部リンク部材111a〜113aの回転角度から折れ角θおよび旋回角φを算出する変換のことである。
cos(θ/2)sinβn−sin(θ/2)sin(φ+δn)cosβn+sin(γ/2)=0
ここで、βn(
図20におけるβ1,β2)は、固定部材114Bに回転自在に連結された固定側の端部リンク部材111a〜113aの連結端における回転角である。γ(
図20)は、固定側の端部リンク部材111aに回転自在に連結された中央リンク部材111b〜113bの連結端軸と、出力側の端部リンク部材111c〜113cに回転自在に連結された中央リンク部材111b〜113bの連結端軸とが成す角度である。δn(
図20におけるδ1,δ2,δ3)は、基準となる固定側の端部リンク部材111aに対する各固定側の端部リンク部材111a〜113aの円周方向の離間角である。
【0093】
図21は、さらに異なる実施形態を示す。この遠隔操作型アクチュエータは、操作台50の固定台103に、共に回転駆動源である工具回転用駆動源41および姿勢変更用駆動源42を設置し、両駆動源41,42の回転力を、工具回転用可撓性ワイヤ60Aおよび姿勢変更用可撓性ワイヤ60Bによりアクチュエータ本体6側へ伝達するようにしたものである。各可撓性ワイヤ60A,60Bは、出力側リンク作動装置102Bの固定部材114Bおよび出力部材115Bの各貫通孔116に挿通させて設けられている。可撓性ワイヤ60A,60Bについては、後で詳しく説明する。
【0094】
このように工具回転用駆動源41および姿勢変更用駆動源42を操作台50の固定台103に設置すると、アクチュエータ本体6を軽量化でき、操作性が向上する。工具回転用駆動源41や姿勢変更用駆動源42の回転をアクチュエータ本体6側に伝達する可撓性ワイヤ60A,60Bは可撓性を有するため、出力側リンク作動装置102Bの姿勢を変化させても、工具回転用駆動源41および姿勢変更用駆動源42の回転力を確実にアクチュエータ本体6側へ伝達することができる。各リンク機構111B〜113Bの姿勢が変化しても、固定側と出力側の球面リンク中心間の距離Lが変化しないため、可撓性ワイヤ60A,60Bに大きなアキシアル力(引張り力)が作用することがない。また、可撓性ワイヤ60A,60Bは、固定部材114Bおよび出力部材115Bの各貫通孔116に挿通して設けられているため、取り回しが容易であり、操作時の邪魔にならない。
【0095】
工具回転用駆動源41および姿勢変更用駆動源42のうちいずれか一方だけを固定台103に設置しても良い。その場合、工具回転用可撓性ワイヤ60Aおよび姿勢変更用可撓性ワイヤ60Bのうちいずれか一方だけを、出力側リンク作動装置102Bの固定部材114Bおよび出力部材115Bの各貫通孔116に挿通させて設けることとなる。
【0096】
図22に、可撓性ワイヤ60A,60Bの一例の構造を示す。可撓性ワイヤ60A(60B)は、可撓性のアウタチューブ61と、このアウタチューブ61の内部の中心位置に設けられた可撓性のインナワイヤ62と、このインナワイヤ62を前記アウタチューブ61に対して回転自在に支持する複数の転がり軸受63とを備える。インナワイヤ62の両端は、それぞれ回転の入力端62aおよび出力端62bとなる。アウタチューブ61は、例えば樹脂製である。インナワイヤ62としては、例えば金属、樹脂、グラスファイバー等のワイヤが用いられる。ワイヤは単線であっても、撚り線であってもよい。
【0097】
各転がり軸受63はアウタチューブ61の中心線に沿って一定の間隔を開けて配置されており、隣合う転がり軸受63間に、これら転がり軸受63に対して予圧を与えるばね要素64I,64Oが設けられている。ばね要素64I,64Oは、例えば圧縮コイルばねであり、インナワイヤ62の外周を巻線が囲むように設けられる。ばね要素は、転がり軸受63の内輪に予圧を発生させる内輪用ばね要素64Iと、外輪に予圧を発生させる外輪用ばね要素64Oとがあり、これらが交互に配置されている。
【0098】
前記アウタチューブ61の両端には、このアウタチューブ61を結合対象部材に結合する継手65が設けられている。継手65は、雄ねじ部材66と雌ねじ部材73とで構成される。
雄ねじ部材66は、内周に貫通孔67が形成された筒状の部材であって、軸方向中央部の外周に雄ねじ部68が形成されている。雄ねじ部材66の軸方向の一方端には、内径および外径が同一径で軸方向に延びる円筒部69が設けられている。この円筒部69の外径は、アウタチューブ61の内径部に嵌合する寸法とされている。また、軸方向の他方端には、外径側に拡がるフランジ部70が設けられている。このフランジ部70は結合対象部材に結合する結合手段であって、円周方向複数箇所に、ボルト等の固定具を挿入するための通孔71が形成されている。前記貫通孔67は、円筒部69側からフランジ部70側に向かって、小径部67a、中径部67b、大径部67cの順に段階的に内径が大きくなっている。中径部67bには、インナワイヤ62を回転自在に支持する転がり軸受72が嵌め込まれる。
【0099】
雌ねじ部材73は、円筒状部74と、この円筒状部74の一端から内径側へ延びるつば状部75とを有する筒状の部材であって、円筒状部74の内周先端側に、前記雄ねじ部材66の雄ねじ部68に螺合する雌ねじ部76が形成されている。つば状部75の内径は、アウタチューブ61が外周に嵌合する寸法とされている。
【0100】
アウタチューブ61を結合対象部材に結合する際には、まず、雄ねじ部材66の円筒部69をアウタチューブ61の内径部に嵌合させ、かつ雌ねじ部材73のつば状部75をアウタチューブ61の同一端の外径部に嵌合させた状態で、雄ねじ部材66の雄ねじ部68と雌ねじ部材73の雌ねじ部76とを螺合させる。これにより、雄ねじ部材66の円筒部69と雌ねじ部材73のつば状部75とで、アウタチューブ61の一端を内外から挟み込んで固定する。インナワイヤ62は、雄ねじ部材66の貫通孔67に挿通し、貫通孔67の中径部67bに嵌め込んだ転がり軸受72によって支持させる。次いで、雄ねじ部材66のフランジ部70を結合対象部材に結合する。この結合は、通孔71に挿通したボルト等の固定具(図示せず)によって行う。以上で、アウタチューブ61と他の部材との結合が完了し、
図22の状態となる。
【0101】
この状態から、雄ねじ部68と雌ねじ部76の螺合を外すことで、雄ねじ部材66の円筒部69および雌ねじ部材73のつば状部75による拘束からアウタチューブ61が解放され、アウタチューブ61と結合対象の部材との結合が解除される。これらアウタチューブ61と結合対象部材との結合操作およびその解除操作は容易である。
【0102】
また、アウタチューブ61と継手65を結合した状態で、雄ねじ部材66の結合手段(フランジ部70)により可撓性ワイヤ60A(60B)と結合対象部材との結合操作および解除操作を行っても良い。これら可撓性ワイヤ60A(60B)と結合対象部材との結合操作およびその解除操作はさらに容易となる。
【0103】
前記インナワイヤ62の入力端62aおよび出力端62bには、回転軸と連結するカップリング79が設けられている。工具回転用可撓性ワイヤ60Aの場合、インナワイヤ62の入力端62aに連結される回転軸は工具回転用駆動源41の出力軸であり、インナワイヤ62の出力端62bに連結される回転軸はアクチュエータ本体6に設けた回転軸22の基端である。また、姿勢変更用可撓性ワイヤ60Bの場合、インナワイヤ62の入力端62aに連結される回転軸は姿勢変更用駆動源42の出力軸であり、インナワイヤ62の出力端62bに連結される回転軸は後記減速機81の入力軸81aである。以下の説明では、上記工具回転用駆動源41の出力軸、回転軸22、姿勢変更用駆動源42の出力軸、および減速機81の入力軸81aを、まとめて回転軸78とする。
【0104】
図示例のカップリング79は、軸方向に貫通する貫通孔79aを有し、この貫通孔79aと外周との間に軸方向に離れて2つのねじ孔79bを設けてある。前記貫通孔79aにインナワイヤ62および回転軸78を両側から挿入し、ねじ孔79bに螺着したボルト等のねじ部材(図示せず)の先端をインナワイヤ62および回転軸78に押し付けることで、これらインナワイヤ62および回転軸78をカップリング79に固定して、インナワイヤ62と回転軸78とを連結する。
【0105】
この構成の可撓性ワイヤ60A(60B)は、隣合う転がり軸受63間に、これら転がり軸受63に対して予圧を与えるばね要素64I,64Oを設けたことにより、インナワイヤ62の固有振動数が低くなることを抑えられ、インナワイヤ62を高速回転させることが可能である。内輪用ばね要素64Iおよび外輪用ばね要素64Oは、インナワイヤ62の長さ方向にわたり交互に配置されているため、アウタチューブ61の径を大きくせずに、ばね要素64I,64Oを設けることができる。
【0106】
図23は、
図21に示す遠隔操作型アクチュエータの本体基端ハウジング4の内部構造を示す。本体基端ハウジング4内には、前記回転軸22が左右方向に沿って設けられ、その基端が工具回転用可撓性ワイヤ60Aのインナワイヤ62と前記カップリング79を介して結合されている。それにより、工具回転用駆動源41(
図21)の回転が、回転軸22へ伝達される。また、本体基端ハウジング4には、姿勢変更用駆動機構43が設けられている。姿勢変更用駆動機構43は、姿勢変更用可撓性ワイヤ60Bにより伝達される姿勢変更用駆動源42(
図21)の回転を減速して出力する減速機81と、この減速機81の出力を回転運動から直線往復運動に変換する動作変換機構43cとを有する。
【0107】
動作変換機構43cは、両端部が軸受82で支持され一端が減速機81の出力軸81baにカップリング83を介して連結されたねじ軸84aと、このねじ軸84aに図示しないボールを介して螺合するナット84bとでなるボールねじ機構84を備え、前記ナット84bに、リニアガイド85によりねじ軸84aの軸方向に移動自在に案内された直動部材86が固定されている。そして、直動部材86の先端面からなる接触部86aに姿勢操作部材31の基端が当接している。
【0108】
減速機81の出力軸81bの回転が、ボールねじ機構84により直線運動に変換されて、直動部材86がリニアガイド85に沿って直線移動する。直動部材86が
図23(A)の左側へ移動するときは、直動部材86に押された姿勢操作部材31が前進し、直動部材86が右側へ移動するときは、前記復元用弾性部材32の弾性反発力により押し戻されて姿勢操作部材31が後退する。
【0109】
直動部材86にはリニアスケール87aが設置され、このリニアスケール87aの目盛を、本体基端ハウジング4に固定されたリニアエンコーダ87bが読み取る。これらリニアスケール87aとリニアエンコーダ87bとで、姿勢操作部材31の進退位置を検出する位置検出手段87を構成する。正確には、リニアエンコーダ87bの出力は進退位置推定手段88に送信され、この進退位置推定手段88により姿勢操作部材31の進退位置を推定する。つまり、位置検出手段87は、減速機81と姿勢操作部材31間の動力伝達手段である直動部材86の動作位置を検出し、この検出結果から姿勢操作部材31の進退位置を推定する。
【0110】
進退位置推定手段88は、姿勢操作部材31の進退位置とリニアエコンコーダ87bの出力信号との関係を演算式またはテーブル等により設定した関係設定手段(図示せず)を有し、入力された出力信号から前記関係設定手段を用いて姿勢操作部材31の進退位置を推定する。この進退位置推定手段88は、コントローラ5(
図21)に設けられたものであっても、あるいは外部の制御装置に設けられたものであってもよい。コントローラ5は、進退位置推定手段88の検出値に基づき、姿勢変更用駆動源42を制御する。
【0111】
姿勢変更用駆動源42の回転が、姿勢変更用可撓性ワイヤ60Bのインナワイヤ62を介して減速機81に伝達され、減速機81により減速される。さらに、減速機81の出力軸81bの回転運動が動作変換機構43cにより直線往復運動に変換されて、最終出力部材である直動部材86に伝達される。この直動部材86の進退動作が接触部86aより姿勢操作部材31の基端へ伝達されて、姿勢操作部材31が進退動作する。減速機81が設けられているため、姿勢変更用駆動源42の出力するトルクが小さくても、大きなトルクを発生させて、直動部材86に大きな作用力を与えることができる。そのため、姿勢操作部材31を確実に進退動作させることができ、先端部材2に設けた工具1を正確に位置決めできる。
【0112】
先端部材2の姿勢は、位置検出手段87により検出される姿勢操作部材31の進退位置から求められる。位置検出手段87の検出値、正確にはリニアエンコーダ87bの検出値をコントローラ5にフィードバックさせて、姿勢変更用駆動源42の出力量を制御するフィードバック制御を行えば、工具1の位置決め精度を向上させることができる。
【0113】
図24は、姿勢変更用駆動機構43の動作変換機構43cの異なる例を示す。この動作変換機構43cは、ウォーム91とウォームホイール92とを組み合わせた構成である。具体的には、動作変換機構43cは、両端部が軸受94で支持され一端が減速機81の出力軸81bにカップリング83を介して連結されたウォーム91と、支持軸95に支持され前記ウォーム91と噛み合うウォームホイール92とを備える。ウォームホイール92は動作変換機構の最終出力部材であって、このウォームホイール92の先端面からなる接触部92aに姿勢操作部材31の基端が当接している。なお、ウォームホイール92は、円周の一部にだけ歯が設けられ形状をしており、回転軸22が挿通される開口92bを有している。
【0114】
姿勢変更用駆動源42の回転が、姿勢変更用可撓性ワイヤ60Bのインナワイヤ62を介して減速機81に伝達され、減速機81により減速される。さらに、ウォーム91とウォームホイール92とでなる減速機構により減速されて、ウォームホイール92へ伝達される。ウォームホイール92の接触部92aが姿勢操作部材31に対して滑り接触しながら、ウォームホイール92が揺動することにより、姿勢操作部材31に進退動作を与える。すなわち、接触部92aが
図24(A)の左側へ回動するときは、接触部92aに押された姿勢操作部材31が前進し、接触部92aが右側へ回動するときは、前記復元用弾性部材32の弾性反発力により押し戻されて姿勢操作部材31が後退する。
【0115】
姿勢操作部材31の進退位置は、位置検出手段96により検出される。この図例の場合、位置検出手段96は、ウォームホイール92の背面に設けた被検出部96aと、本体基端ハウジング4に固定して設けられ前記被検出部96aの変位を検出する検出部96bとでなる。位置検出手段96は、光学式であっても磁気式であってもよい。正確には、検出部96bの出力は進退位置推定手段97に送信され、この進退位置推定手段97により姿勢操作部材31の進退位置を推定する。つまり、位置検出手段96は、減速機81と姿勢操作部材31間の動力伝達手段であるウォームホイール92の動作位置を検出し、この検出結果から姿勢操作部材31の進退位置を推定する。
【0116】
以下、アクチュエータ本体6における先端部材2の姿勢を変更させる構成が異なる実施形態を示す。
図25に示すアクチュエータ本体6は、外郭パイプ25内の互いに180度の位相にある周方向位置に2本のガイドパイプ30を設け、そのガイドパイプ30の内径孔であるガイド孔30a内に、前記同様の姿勢操作ワイヤ31aおよび柱状ピン31bからなる姿勢操作部材31が進退自在に挿通してある。2本のガイドパイプ30間には、ガイドパイプ30と同一ピッチ円C上に複数本の補強シャフト34が配置されている。復元用弾性部材32は設けられていない。案内面F1,F2は、曲率中心が点Oである球面、または点Oを通るX軸を軸心とする円筒面である。
【0117】
本体基端ハウジング4(図示せず)または操作台(図示せず)には、2つの姿勢操作部材31をそれぞれ個別に進退操作させる2つの姿勢変更用駆動源42(図示せず)が設けられており、これら2つの姿勢変更用駆動源42を互いに逆向きに駆動することで先端部材2の姿勢変更を行う。例えば、
図25における上側の姿勢操作部材31を先端側へ進出させ、かつ下側の姿勢操作部材31を後退させると、上側の姿勢操作部材31によって先端部材2のハウジング11が押されることにより、先端部材2は
図25(A)において先端側が下向きとなる側へ案内面F1,F2に沿って姿勢変更する。逆に、両姿勢操作部材31を逆に進退させると、下側の姿勢操作部材31によって先端部材2のハウジング11が押されることにより、先端部材2は
図25(A)において先端側が上向きとなる側へ案内面F1,F2に沿って姿勢変更する。その際、先端部材連結部15には、上下2つの姿勢操作部材31の圧力、および抜け止め部材21からの反力が作用しており、これらの作用力の釣り合いにより先端部材2の姿勢が決定される。この構成では、2つの姿勢操作部材31で先端部材2のハウジング11に加圧されるため、1つ姿勢操作部材31だけで加圧される前記実施形態に比べ、先端部材2の姿勢安定性を高めることができる。
【0118】
図26に示すアクチュエータ本体6は、外郭パイプ25内の互いに120度の位相にある周方向位置に3本のガイドパイプ30を設け、そのガイドパイプ30の内径孔であるガイド孔30a内に前記同様の姿勢操作部材31が進退自在に挿通してある。3本のガイドパイプ30間には、ガイドパイプ30と同一ピッチ円C上に複数本の補強シャフト34が配置されている。復元用弾性部材32は設けられていない。案内面F1,F2は曲率中心が点Oである球面であり、先端部材2は任意方向に傾動可能である。
【0119】
本体基端ハウジング4内(
図28)または操作台(図示せず)には、3つの姿勢操作部材31(31U,31L,31R)をそれぞれ個別に進退操作させる3つの姿勢変更用駆動源42(42U,42L,42R)が設けられており、これら3つの姿勢変更用駆動源42(42U,42L,42R)を互いに連係させて駆動することで先端部材2の姿勢変更を行う。
【0120】
例えば、
図26における上側の1つの姿勢操作部材31Uを先端側へ進出させ、かつ他の2つの姿勢操作部材31L,31Rを後退させると、上側の姿勢操作部材31Uによって先端部材2のハウジング11が押されることにより、先端部材2は
図26(A)において先端側が下向きとなる側へ案内面F1,F2に沿って姿勢変更する。このとき、各姿勢操作部材31の進退量が適正になるよう、各姿勢変更用駆動源が制御される。各姿勢操作部材31を逆に進退させると、左右の姿勢操作部材31L,31Rによって先端部材2のハウジング11が押されることにより、先端部材2は
図26(A)において先端側が上向きとなる側へ案内面F1,F2に沿って姿勢変更する。
【0121】
また、上側の姿勢操作部材31Uは静止させた状態で、左側の姿勢操作部材31Lを先端側へ進出させ、かつ右側の姿勢操作部材31Rを後退させると、左側の姿勢操作部材31Lによって先端部材2のハウジング11が押されることにより、先端部材2は右向き、すなわち
図26(A)において紙面の裏側向きとなる側へ案内面F1,F2に沿って姿勢変更する。左右の姿勢操作部材31L,31Rを逆に進退させると、右の姿勢操作部材31Rによって先端部材2のハウジング11が押されることにより、先端部材2は左向きとなる側へ案内面F1,F2に沿って姿勢変更する。
【0122】
このように姿勢操作部材31を円周方向の3箇所に設けることにより、先端部材2を上下左右の2軸(X軸、Y軸)の方向に姿勢変更することができる。その際、先端部材連結部15には、3つの姿勢操作部材31の圧力、および抜け止め部材21からの反力が作用しており、これらの作用力の釣り合いにより先端部材2の姿勢が決定される。この構成では、3つの姿勢操作部材31で先端部材2のハウジング11に加圧されるため、さらに先端部材2の姿勢安定性を高めることができる。姿勢操作部材31の数をさらに増やせば、先端部材2の姿勢安定性をより一層高めることができる。
【0123】
図27は
図26に示すものと比べてスピンドルガイド部3の内部構造が異なる実施形態を示す。このアクチュエータ本体6のスピンドルガイド部3は、外郭パイプ25の中空孔24が、中心部の円形孔部24aと、この円形孔部24aの外周における互いに120度の位相をなす周方向位置から外径側へ凹んだ3つの溝状部24bとでなる。溝状部24bの先端の周壁は、断面半円形である。そして、円形孔部24aに回転軸22と転がり軸受26とが収容され、各溝状部24bにガイドパイプ30が収容されている。
【0124】
外郭パイプ25を上記断面形状としたことにより、外郭パイプ25の溝状部24b以外の箇所の肉厚tが厚くなり、外郭パイプ25の断面2次モーメントが大きくなる。すなわち、スピンドルガイド部3の剛性が高まる。それにより、先端部材2の位置決め精度を向上させられるとともに、切削性を向上させられる。また、溝状部24bにガイドパイプ30を配置したことにより、ガイドパイプ30の円周方向の位置決めを容易に行え、組立性が良好である。
【0125】
図26や
図27のように姿勢操作部材31が周方向の3箇所に設けられているアクチュエータ本体6では、本体基端ハウジング4内を以下のように構成する。
工具回転用駆動源41および姿勢変更用駆動源42を本体基端ハウジング4の内部に設ける場合、例えば
図28に示すように、各姿勢操作部材31(31U,31L,31R)をそれぞれ個別に進退操作させる3つの姿勢変更用駆動源42(42U,42L,42R)を左右並列に配置すると共に、各姿勢変更用駆動源42に対応するレバー43b(43bU,43bL,43bR)を共通の支軸43a回りに回動自在に設け、各レバー43bにおける支軸43aからの距離が長い作用点P1(P1U,P1L,P1R)に各姿勢変更用駆動源42の出力ロッド42aの力が作用し、支軸43aからの距離が短い力点P2(P2U,P2L,P2R)で姿勢操作部材31に力を与える構成としてある。これにより、各姿勢変更用駆動源42の出力が増力して対応する姿勢操作部材31に伝達させることができる。なお、回転軸22は、上側の姿勢操作部材31U用のレバー43bUに形成された開口44を貫通させてある。
【0126】
また、工具回転用駆動源(図示せず)および姿勢変更用駆動源(図示せず)を本体基端ハウジング4の外部に設ける場合、例えば
図29に示すように、各姿勢変更用駆動源から姿勢変更用可撓性ワイヤ60Bを介して回転が伝達される減速機81(81U,81L,81R)を設置すると共に、各減速機81の出力軸81bの回転運動を直線往復運動に変換する3つの姿勢変更用駆動機構43(43U,43L,43R)を、それぞれ姿勢操作部材31(31U,31L,31R)に対応させて配置する。
図29は、姿勢変更用駆動機構43を、
図23に示す直動機構型の動作変換機構とした例である。各減速機81および各姿勢変更用駆動機構43は、回転軸22を中心にして放射状に配置してある。
【0127】
以上、医療用の遠隔操作型アクチュエータについて説明したが、この発明はそれ以外の用途の遠隔操作型アクチュエータにも適用できる。例えば、機械加工用とした場合、湾曲状をした孔のドリル加工や、溝内部の奥まった箇所の切削加工が可能になる。