特許第5681336号(P5681336)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5681336ブロックイソシアネート化合物含有反射防止膜形成組成物およびこれにより形成された反射防止膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5681336
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月4日
(54)【発明の名称】ブロックイソシアネート化合物含有反射防止膜形成組成物およびこれにより形成された反射防止膜
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/11 20150101AFI20150212BHJP
   G03F 7/11 20060101ALI20150212BHJP
   C08G 18/80 20060101ALI20150212BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20150212BHJP
【FI】
   G02B1/10 A
   G03F7/11 503
   C08G18/80
   C09D175/04
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2000-558150(P2000-558150)
(86)(22)【出願日】1999年6月23日
(86)【国際出願番号】JP1999003332
(87)【国際公開番号】WO2000001752
(87)【国際公開日】20000113
【審査請求日】2006年6月19日
(31)【優先権主張番号】特願平10-188380
(32)【優先日】1998年7月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】312001188
【氏名又は名称】AZエレクトロニックマテリアルズIP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108350
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘尾 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】カン ウェンビン
(72)【発明者】
【氏名】木村 健
(72)【発明者】
【氏名】松尾 祥子
(72)【発明者】
【氏名】西脇 良典
(72)【発明者】
【氏名】田中 初幸
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−090222(JP,A)
【文献】 国際公開第1998/07071(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/11
C08G 18/00− 18/87
C08L 1/00−101/14
C09D 4/00−201/10
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光波長の放射線を少なくとも吸収する吸光性基をポリマーの側鎖または主鎖に有する光吸収性ポリマーまたは露光波長の放射線を少なくとも吸収する色素単体および2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有することを特徴とする反射防止膜形成組成物。
【請求項2】
ブロックイソシアネート基を有する化合物が、下記一般式(I)で表される、ビスイソシアネート基がアルコール類、フェノール類またはオキシム化合物でブロックされた化合物であることを特徴とする請求項1記載の反射防止膜形成組成物。
【化1】
(式中、Xは、炭素数1〜30の直鎖または分岐アルキレン基、炭素数3〜30の二価の脂環族炭化水素基または炭素数4〜30の二価の芳香族環基を表し、R1、R2は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜30の芳香族環基またはイミノ基を有する炭素数3〜20の有機基を表す。)
【請求項3】
ブロックイソシアネート基を有する化合物が、下記一般式(II)で表される、アルコール類、フェノール類またはオキシム化合物でブロックされたイソシアネート基を側鎖に有する繰り返し単位を含む重合体であることを特徴とする請求項1記載の反射防止膜形成組成物。
【化2】
(式中、Yは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはハロゲン原子を表し、Zは、酸素原子またはNHを表し、R3は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜30の芳香族環基またはイミノ基を有する炭素数3〜20の有機基を表す。)
【請求項4】
ブロックイソシアネート基を有する化合物が、下記一般式(III)で表される、イソシアネート基がアルコール類、フェノール類またはオキシム化合物でブロックされたフェニルイソシアネートとホルムアルデヒドとの縮重合体であることを特徴とする請求項1記載の反射防止膜形成組成物。
【化3】
(式中、R4、R5は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜30の芳香族環基またはイミノ基を有する炭素数3〜20の有機基を表す。)
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載の反射防止膜形成組成物において、該組成物に更に熱または光酸発生剤、脂肪族スルホン酸またはその塩、芳香族スルホン酸またはその塩、およびメラミン誘導体またはエチレン尿素誘導体のような架橋剤の少なくとも一種が含まれることを特徴とする反射防止膜形成組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止膜形成組成物を用いて形成された反射防止膜。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
本発明は、新規反射防止膜形成組成物およびこれにより形成された反射防止膜に関する。更に詳しくは、本発明は、フォトリソグラフィー法によって集積回路素子などの超微細素子を製造する際に、基板からの露光用放射線の反射を有効に防止する反射防止膜の形成に特に適した反射防止膜形成組成物およびこれにより形成された反射防止膜に関する。
【0002】
【背景技術】
集積回路素子の製造分野においては、より高い集積度を得るために、リソグラフィープロセスにおける加工サイズの微細化が進んでおり、近年では、サブミクロンオーダーでの微細加工を可能にする技術開発が進められている。このリソグラフィープロセスにおいては、レジストを基板上に塗布し、マスクパターンを露光装置によって転写し、適当な現像溶液を用いて現像することによって、所望のレジストパターンを得ている。しかしながら、用いられる基板には反射率の高いものが多く、特に基板上に段差のあるものを使った場合、レジスト層を通過した露光光が基板によってレジスト層へ反射され、これにより、反射ノッチング、スタンディングウェーブ(定在波)あるいはレジストパターンの寸法ばらつきなどがもたらされるという問題があった。
【0003】
この問題を解決するために、種々の方法が検討されている。例えば、その一つとして、フォトレジスト中に露光用の光の波長領域に吸収を持つ色素を分散あるいは溶解する方法(米国特許第4,882,260号明細書)があり、また他の方法として、基板上に反射防止膜を形成し、基板にまで達した露光光を反射防止膜により吸収する方法がある。この反射防止膜による方法としては、無機化合物膜を真空蒸着、CVD法などにより基板上に形成する方法(C.Nolscher等,Proc.SIPE,1086,p.242(1989)、K.Bather等,Thin Solid Films,200,p.93(1991)、G.Czech等,Microelectronic Engineering,21,p.51(1993))、色素を溶解あるいは分散した有機ポリマー溶液を基板に塗布する方法、更に、ポリマーに化学的に発色団を結合させた重合体染料あるいはポリマー自体が光吸収性を有するものを用いて反射防止膜を形成する方法等が知られている。これら光吸収性のポリマーを用いる方法および光吸収性ポリマー材料については、例えば、特開平6−75378号公報、特開平6−118656号公報、WO第9412912号公報、米国特許第4,910,122号明細書、米国特許第5,057,399号明細書などに記載されている。
【0004】
ところで、上記有機反射防止膜を形成する際、反射防止膜を塗布する装置としてフォトレジストを塗布する装置が共用される場合が往々にしてあり、また廃液管理などの問題からも、反射防止膜組成物で用いられる溶剤とフォトレジスト組成物で用いられる溶剤が同じものであることが望まれる。しかし、反射防止膜とフォトレジスト膜とを同じ溶剤を用いて塗布形成する場合には、反射防止膜上にレジストを塗布する際に反射防止膜とレジスト膜とのインターミキシングが起こりやすい。これを防ぐためには、反射防止膜に熱架橋性機能を導入する必要があるが、用いられる架橋材の種類によっては、レジスト膜が反射防止膜材料の影響をうけ、フッティングやスカムの発生、レジスト画像の歪みなどを起こし、所望の解像度、所望の形状のレジスト画像を形成することができない場合がある。特に、レジスト材料として、KrFエキシマレーザーなどの露光波長で使用される化学増幅型レジストが用いられる場合には、このレジストが反射防止膜の性質、特に酸性度の影響を受け易いことから、反射防止膜の改善が要望されていた。更に、場合によっては、レジストと反射防止膜との界面付近では、反射防止膜自体の性質、例えば酸性度によって、レジストのパターン形状が変わること、即ち、アルカリ性の反射防止膜の場合、レジストパターンにすそ引きが見られ、酸性の反射防止膜の場合、レジストに食い込みが見られることがあり、レジストパターンに影響の少ない反射防止膜の開発が要望されていた。
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、反射防止効果が高く、レジスト塗布時のインターミキシングがなく、かつ、レジストのパターン形状への悪影響のない反射防止膜形成組成物および適切な酸性度をもつ反射防止膜を用いてのレジストパターン形成方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討を行ったところ、反射防止膜形成組成物に架橋剤として2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有せしめることにより、従来の欠点のない反射防止膜を形成することができることを見いだして本発明をなしたものである。
【0007】
すなわち、本発明は、露光波長の放射線を少なくとも吸収する吸光性基をポリマーの側鎖または主鎖に有する光吸収性ポリマーまたは露光波長の放射線を少なくとも吸収する色素単体および2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物を含有する反射防止膜形成組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、この反射防止膜形成組成物を用いて形成された反射防止膜に関する。
【0009】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の反射防止膜形成組成物では、2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物が用いられるが、この化合物は架橋剤として機能するものである。この2以上のブロックイソシアネート基を有する化合物としては、下記(1)〜(3)の化合物が、特に好ましいものとして挙げられる。
【0010】
(1)下記一般式(I)で示される、ビスイソシアネート基をアルコール類、フェノール類またはオキシム化合物でブロックした化合物。
【0011】
【化4】
【0012】
(式中、Xは、炭素数1〜30の直鎖または分岐アルキレン基、炭素数3〜30の二価の脂環族炭化水素基または炭素数4〜30の二価の芳香族環基を表し、R1、R2は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜30の芳香族環基またはイミノ基を有する炭素数3〜20の有機基を表す。)
【0013】
(2)下記一般式(II)で示される、アルコール類、フェノール類またはオキシム化合物でブロックされたイソシアネート基を側鎖に有する繰り返し単位を含む重合体。
【0014】
【化5】
【0015】
(式中、Yは、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基またはハロゲン原子を表し、Zは、酸素原子またはNHを表し、R3は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜30の芳香族環基またはイミノ基を有する炭素数3〜20の有機基を表す。)
【0016】
(3)下記一般弐(III)で表される、イソシアネート基がアルコール類、フェノール類またはオキシム化合物でブロックされたフェニルイソシアネートとホルムアルデヒドの縮重合物。
【0017】
【化6】
【0018】
(式中、R4、R5は、各々独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数4〜30の芳香族環基またはイミノ基を有する炭素数3〜20の有機基を表す。) なお、上記一般式(I)〜(III)において、芳香族環基は、ヘテロ芳香族環基を含むものである。
【0019】
以下、上記一般式(I)〜(III)で表される化合物について更に具体的に説明する。
【0020】
まず、一般式(I)で表わされるブロックビスイソシアネート化合物は、該当するビスイソシアネート化合物を所望のブロック剤と反応させることにより製造することができる。ビスイソシアネート化合物としては、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ビスイソシアネートメチルシクロヘキサン、ビスイソシアネートメチルベンゼン、ビスイソシアネートメチルエチルベンゼン、エチレンジイソシアネートなどのビスイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0021】
また、ブロック剤として用いられるアルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ベンジルアルコール、フェニルセロソルブ、フルフリルアルコール、シクロヘキサノール、ナフチルアルコール、アントラセンメタノール、4−ニトロベンジルアルコールなどが、フェノール類としては、例えばフェノール、クレゾール、キシレノール、p−エチルフェノール、o−イソプロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、チモール、p−ニトロフェノール、p−クロロフェノールのような置換フェノール、ナフトールなどが、オキシム化合物としては、例えばホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、2−ブタノンオキシム、アセトフェノンオキシム、メチルエチルケトオキシム、2,3−ブタンジオンオキシム、シクロヘキサノンオキシム、ジフェニルグリオキシム、ベンズアルデヒドオキシムなどが好ましいものとして挙げられ、特に好ましいのは、ブタノール、ベンジルアルコール、2−ブタノンオキシム、アセトオキシム、フェノールなどである。しかし、ブロック剤がこれら具体的に例示されたものに限定されるわけではない。
【0022】
このようなブロック剤によりブロックされたビスイソシアネート化合物は、それぞれ特定の温度において脱ブロック剤反応が起き、反応性の高いイソシアネート基を生成し、架橋が進む。なお、ブロック剤によるイソシアネート基のブロック化および脱ブロック化のメカニズム、ブロック剤、ビスイソシアネート系架橋材については、例えば、山下晋三編「架橋材ハンドブック」大成社発行(1990年)第232〜242頁などに記載されている。本発明において用いられるブロック剤(アルコール類、フェノール類、オキシム化合物)あるいはビスイソシアネート化合物としては、これら公知のものが何れも使用できる。
【0023】
また、一般式(II)で表される繰り返し単位を有する重合体は、イソシアネート基含有ポリマーをブロック剤であるアルコール類、フェノール類、あるいはオキシム化合物と反応させることにより製造することができる。イソシアネート基含有ポリマーは、単一重合体でも他の繰り返し単位を有する共重合体でもよい。また、一般式(II)で表される繰り返し単位を有する重合体は、イソシアネート基含有モノマーをブロック剤で予めブロックしてから重合する、あるいは必要に応じ他のモノマーと共重合することにより製造することができる。
【0024】
共重合体を形成するために利用することのできる他のモノマーは、基本的にはブロックイソシアネート基の架橋性に影響を与えないものであれば、従来公知のいずれのビニルモノマーをも用いうる。好ましいモノマーとしては、例えばアクリル酸;メタクリル酸;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレートなどのアクリル酸エステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル;スチレン;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル等が挙げられる。これら他のモノマーの中では、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが特に好ましいものである。共重合体中のブロックイソシアネート基の含有量は、架橋に必要な量以上であればよく、また、他のモノマーは、塗布性、安定性、溶解性などの要求に応じて、その種類および量を選択すればよい。
【0025】
更に、本発明において用いられる一般式(II)で表される繰り返し単位を有する重合体の平均分子量は、一般には1,000〜500,000、好ましくは1,000〜100,000である。
【0026】
また、一般式(II)で表される繰り返し単位を有する重合体を形成するために用いることができるブロック剤としては、上記一般式(I)の化合物を形成する際に用いられるアルコール類、フェノール類、オキシム化合物の何れをも用いることができる。
【0027】
更に、一般式(III)で表される縮重合体は、イソシアネート基含有縮重合物を、上記と同様のブロック剤を用いてブロックすることにより製造することができる。この場合においては、ブロック剤としてオキシム化合物が好ましいものとして挙げられる。また、縮重合体の平均分子量は、一般には500〜500,000、好ましくは1,000〜10,000である。
【0028】
次に、本発明の反射防止膜組成物において用いられる光吸収性材料は、フォトレジストを露光する際に用いられる波長を吸収するものであれば何れのものも用いることができる。これら光吸収性材料としては、例えば、従来反射防止膜を形成する際の光吸収性材料として知られた色素単体、側鎖に光吸収基を有するポリマー、主鎖に光吸収性基を有するポリマーなどを好ましく用いることができる。これら光吸収性材料については、具体的には、例えば米国特許第2,751,373号明細書、米国特許第2,811,509号明細書、米国特許第3,854,946号明細書、米国特許第4,609,614号明細書、米国特許第4,910,122号明細書、米国特許第5,057,399号明細書、米国特許第5,110,697号明細書、米国特許第5,234,990号明細書、特公平6−12452号公報、特公平6−64338号公報、ヨーロッパ特許第542008号明細書、米国特許第5,554,485号明細書、特開平6−75378号公報、特開平6−118656号公報、特開平6−313968号公報、特開平7−82221号公報、WO97/07145号公報、特開平10−48834号公報、WO98/12238号公報、特願平9−146800号明細書、PCT/JP98/02234号明細書、特願平10−66626号明細書に記載されているものが挙げられる。
【0029】
光吸収性材料としては、反射防止膜として使用される露光波長において、十分な吸収を持ったポリマーおよびその組成物でよく、好ましいものとしては、例えば、側鎖にベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等芳香族環基を有するようなビニルモノマーと(メタ)アクリル酸系エステルとの共重合体が挙げられる。具体的な例としては、例えば以下の式(IV)〜(VI)で示されるような共重合体(式中では、共重合成分のみが表示されている。)が挙げられる。共重合体は、式(IV)や式(VI)の共重合体のように、反応性官能基を持った(メタ)アクリル酸系エステルモノマーとの共重合体でもよいし、式(V)のように、安定なエステル基を持った(メタ)アクリル酸系エステルモノマーとの共重合体でも良い。前者の場合は当該反応性官能基と前述のブロックイソシアネート基を有する架橋剤が反応して架橋構造を作り、後者の場合は光吸収性材料とは反応しなくても架橋剤化合物相互の反応で自己架橋して強固な被膜が形成される。
【0030】
【化7】
【0031】
【化8】
【0032】
【化9】
【0033】
しかし、上記したように、本発明の反射防止膜形成組成物で用いられる光吸収性材料が、これら具体的に開示したものに限定されるわけではない。
【0034】
本発明の反射防止膜形成組成物で用いられる光吸収性材料およびイソシアネート含有化合物が、被膜形成性を有しないものである場合、あるいは光吸収性材料が被膜形成性を有するものであっても、更に反射防止膜形成組成物の被膜形成性を改善するために、適当な被膜形成性樹脂を添加含有せしめることができる。このような樹脂としては、従来レジスト用のベースポリマーとして使用されている、ノボラック樹脂、ヒドロキシスチレン含有ポリマー、ポリイミドのような主鎖型ポリマーが挙げられる。この場合、ポリマー自体は、イソシアネート基と反応する置換基を持たなくてもよい。この場合には、膜の不溶化は、ブロックイソシアネート化合物相互の架橋、あるいはブロックイソシアネート化合物と光吸収性材料の架橋による。更に、イソシアネート基と反応する置換基、たとえば、ヒドロキシ基などをもつ低分子化合物または、高分子化合物を添加することにより架橋密度を調整することも可能である。このような化合物としては、ポリヒドロキシスチレン、ノボラック、ヒドロキシエチルメタアクリレート、二官能性アルコールまたはカルボキシル基を含有するオリゴマーまたはポリマーなどがあげられる。
【0035】
本発明の反射防止膜形成組成物においては、組成物中の各成分を溶解あるいは分散させる溶剤が用いられる。用いる溶剤は、組成物中の各成分を溶解あるいは分散させるものであればどのようなものでもよい。使用される溶剤の例を挙げると、例えば、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、乳酸エチル(以下、「EL」という。)、メトキシプロパノール(以下、「PGME」という。)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」という。)、またはこれらの混合物があるが、使用される溶剤がこれらに限定されるものでない。上記溶剤中特に好ましい溶剤は、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、EL、PGME、PGMEAおよびPGMEとPGMEAの混合物である。
【0036】
また、反射防止膜形成組成物には、熱または光酸発生剤、脂肪族スルホン酸または芳香族スルホン酸、およびそれらの例えばアミン類との塩を添加することができる。これらの熱または光酸発生剤は、一般にコーティング物、フォトレジストなどに使用されるものである。そして、スルホン酸としては、メタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、フッ素含有アルキルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ナフタレンスルホン酸が挙げられ、また、塩を形成するアミン類としては、トリエチルアミン、アミノエタノール、ジアミノエタノール、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミンなどを用いることができる。
【0037】
また、架橋をより強固にするために、一般に使用される架橋剤、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミンに代表されるメラミン誘導体、エチレン尿素を含むエチレン尿素誘導体、またはエポキシ基含有物などを添加することができる。更に、基板への接着性および塗布性などを調整するために、界面活性剤やシラン系のレベリング剤など、従来反射防止膜等の光吸収性膜を形成する際に使用される既知の添加剤を添加することができる。
【0038】
なお、反射防止膜形成組成物の各成分について個々に説明したが、本発明の反射防止膜形成組成物は、ブロックイソシアネート基を含有する化合物を含まない従来公知の反射防止膜形成組成物(架橋剤を含まないものおよび架橋剤をすでに含むもの)に、本発明のブロックイソシアネート基を含有する化合物を添加含有せしめることによって得たものでよいことは勿論であり、これにより従来公知の反射防止膜の特性を改善することができる。
【0039】
本発明の反射防止膜形成組成物は、スピンコート、ロールコート、浸漬コート、流延コート法等従来より公知の方法により、乾燥膜厚が例えば300〜5000Åとなるように基板上に塗布され、ホットプレートあるいはオーブン上でベーキングされて、溶剤の蒸発および架橋が行われ、この膜の上に塗布形成される膜組成物の溶剤に対し不溶化される。ベーキング温度は、一般には70〜260℃程度である。
【0040】
本発明の反射防止膜形成組成物により形成された反射防止膜上には、通常フォトレジスト組成物が塗布されて、フォトレジスト層が形成される。本発明の反射防止膜上に適用されるフォトレジストとしては、従来公知のポジ型、ネガ型フォトレジストのいずれでもよい。使用できるフォトレジストの代表的な例を挙げると、ノボラック樹脂とキノンジアジド系感光剤からなるポジ型レジスト、化学増幅ポジ型あるいはネガ型レジスト、感光性の二重結合を有するあるいはアジドタイプのネガ型レジストなどである。しかし、本発明で反射防止膜上に適用されるフォトレジストがこれら例示されたものに限定されるわけではないし、更には反射防止膜上に形成される膜がレジスト膜に限られないことも勿論のことである。
【0041】
本発明の反射防止膜形成組成物は、集積回路製造時のボトム反射防止膜の形成に特に有用なものであるが、反射防止膜以外にもレジストと基板との相互作用を防ぐための隔離膜として使用することもできる。更に、段差付き基板の場合、反射防止膜を塗布することにより段差を埋め込むことができるため、平坦化膜としての機能も付与することができ、結果として、反射防止膜が塗布された段差基板上ではレジストの塗布均一性がよくなり、パターン寸法のばらつきを抑えることができる。
【0042】
【発明を実施するための最良の形態】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、これら実施例は単に本発明を説明するために例示したものであり、本発明が以下の実施例に記載されたものに限定されるわけではない。
【0043】
実施例1 ブロックイソシアネート基含有ポリマー1の合成
室温で、2−ブタノンオキシム38.3g(0.44モル)をテトラヒドロフラン550gに混ぜて、均一溶液を作成した。この溶液に、2−イソシアネートエチルメタアクリレート62g(0.4モル)を攪拌下滴下し、室温で3時間攪拌を続けたのち、メチルメタアクリレート40g(0.4モル)のテトラヒドロフラン100g溶液、およびアゾイソブチロニトリル(AIBN、開始剤)4.6gを加えた。この溶液を窒素気流下で20分間攪拌した後、65℃で7時間重合させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、ヘキサンに沈殿し、生成された白い粉末状物をろ過し、更にヘキサンで洗浄し、真空乾燥することによって、2−ブタノンオキシムでブロックされたイソシアネート含有ポリマー110gを得た。流動相をテトラヒドロフラン、ポリスチレンを標準物質として用いたGPC分析の結果、得られたポリマーの重量平均分子量Mwは35,000、数平均分子量Mnは13,400、分散度Mw/Mnは、2.61であった。
【0044】
実施例2 ブロックイソシアネート基含有ポリマー2の合成
室温で、2−ブタノンオキシム38.3g(0.44モル)をテトラヒドロフラン550gに混ぜて、均一溶液を作成した。この溶液に、2−イソシアネートエチルメタアクリレート62g(0.4モル)を攪拌下滴下し、室温で3時間攪拌を続けたのち、ベンジルメタアクリレート70.4g(0.4モル)のテトラヒドロフラン150g溶液およびAIBN4.6gを加えた。この溶液を、窒素気流下で20分間攪拌した後、65℃で8時間重合させた。反応終了後、反応液を室温まで冷却し、ヘキサンに沈殿し、生成された白い粉末状物をろ過し、更にヘキサンで洗浄し、真空乾燥することによって、2−ブタノンオキシムでブロックされたイソシアネート含有ポリマー120gを得た。流動相をテトラヒドロフラン、ポリスチレンを標準物質として用いたGPC分析の結果、得られたポリマーの重量平均分子量Mwは32,000、数平均分子量Mnは12,800、分散度Mw/Mnは、2.5であった。
【0045】
実施例3 ブロックイソシアネート含有ポリマー3の合成
室温で、2−ブタノンオキシム55.5gをプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)145gに溶解して得た溶液に、アルドリッチ社から市販されているフェニルジイソシアネートとホルムアルデヒドの縮重合樹脂50gを加え、10時間以上攪拌して、イソシアネート基がブロックされたポリマーの溶液を得た。この反応溶液に、PGMEAを液中の前記縮重合樹脂の濃度が10重量%となるように加え、この液を以下での反射防止膜組成物調整液として用いた。
【0046】
実施例4 反射防止膜組成物1の調整
まず、下記式(VI)で示される共重合体(式中では、共重合成分のみが表示されている。)10gをPGMEA300gに溶解し、この液に、上記実施例1で合成されたポリマーの10重量%PGMEA溶液20gを加え、室温で3時間攪拌した後、反応溶液を1ミクロン、0.5ミクロン、0.2ミクロン、0.1ミクロン、0.05ミクロンの順にミリポア社製のフィルターで加圧ろ過し、このろ過溶液を以下のレジストの評価およびその他の実験に使用した。
【0047】
【化10】
【0048】
実施例5 反射防止膜組成物2の調整
下記式(VII)で示される共重合体(式中では、共重合成分のみが表示されている。)10gをPGMEA300gに溶解し、この液に上記実施例1で合成されたポリマーの10重量%PGMEA溶液20gを加え、室温で3時間攪拌した後、反応溶液を、1ミクロン、0.5ミクロン、0.2ミクロン、0.1ミクロン、0.05ミクロンの順にミリポア社製のフィルターで加圧ろ過し、このろ過溶液を以下のレジストの評価およびその他の実験に使用した。
【0049】
【化11】
【0050】
実施例6 反射防止膜組成物3の調整
上記式(VII)で示される共重合体10gをPGMEA300gに溶解し、この液に実施例2で合成されたポリマーの10重量%PGMEA溶液20gを加え、室温で1時間攪拌した後、ヘキサメトキシメチルメラミン1gおよびp−ドデシルベンゼンスルホン酸とジメチルアミノエタノールの塩0.1gを加え3時間攪拌した後、反応溶液を1ミクロン、0.5ミクロン、0.2ミクロン、0.1ミクロン、0.05ミクロンの順にミリポア社製のフィルターで加圧ろ過し、このろ過溶液を以下のレジストの評価およびその他の実験に使用した。
【0051】
実施例7 反射防止膜組成物4の調整
クラリアント社製の遠紫外(DUV)用反射防止膜AZTMKrF−2液に、上記実施例1のポリマーの10重量%シクロヘキサノン溶液20g(AZTMKrF−2の固形分に対して20重量%)を加え、室温で3時間攪拌した後、反応溶液を1ミクロン、0.5ミクロン、0.2ミクロン、0.1ミクロン、0.05ミクロンの順にミリポア社製のフィルターで加圧ろ過し、このろ過溶液を以下のレジストの評価およびその他の実験に使用した。
【0052】
実施例8 反射防止膜組成物5の調整
実施例4に示されるアントラセン側鎖を有する共重合体10gをPGMEA300gに溶解し、この液に上記実施例3の10重量%溶液20gを加え、室温で3時間攪拌した後、溶液を1ミクロン、0.5ミクロン、0.2ミクロン、0.1ミクロン、0.05ミクロンの順にミリポア社製のフィルターで加圧ろ過し、このろ過溶液を以下のレジストの評価およびその他の実験に使用した。
【0053】
実施例9 反射防止膜組成物1の膜溶解性試験
上記組成物1をシリコンウエハー上にコートし、ホットプレートでベークした後、ベーク後の膜上にレジスト溶媒であるプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)および現像液テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38重量%容液をそれぞれ滴下し、60秒後に膜上の液を拭きとり、膜減りを確認した。結果を下表に示す。
【0054】
試験結果から、本発明のブロックイソシアネート基を持つ架橋性ポリマーを用いる場合、ベークなしまたは、低温ベークでは、膜自体がPGMEAのような溶剤に完全に溶け、このためレジスト溶剤でシリコンウエハーのエッジリンスおよびバックリンスが可能であることが、また適切な温度以上でベークすることにより膜減りはなくなり、次のレジスト塗布時の膜の溶解がないことがわかる。また、現像する時に、反射防止膜自体は変化しないこともわかる。更に、比較的高温(120℃以上)でのベークでないと膜が硬化しないため、安定な膜組成物が得られることもわかる。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例10 レジストパターン実験
上記実施例4〜8の本発明の反射防止膜溶液を、各々シリコンウエハー上に、220℃で60秒間ベーク後60ナノメートルとなるようにコートし、その後、クラリアント社のDUV用レジストAZTMDX2034Pを、90℃で60秒プリベーク後0.75ミクロンとなるようにコートし、ニコン社製のDUVステッパーEX10Bを用いて露光してから、105℃、90秒ベークした後に、2.38%TMAH溶液で現像した。得られたレジストパターンをSEM(走査型電子顕微鏡)観察した結果、いずれも基板からの反射による定在波、レジスト膜との相溶層がなく、良好なレジストパターンが得られた。
【0057】
[発明の効果]
以上述べたように、本発明の反射防止膜形成組成物を用いることにより、レジスト膜とのインターミキシングがなく、また露光によりレジスト層中に形成された酸の拡散浸透がなく、フッティング、スカムのないレジスト画像を形成することのできる、高性能で、使用しやすい、反射防止膜を形成することができる。
【0058】
【産業上の利用可能性】
上記詳述したように、本発明の反射防止膜形成組成物は、集積回路素子を製造する際に、基板上に設けられ射防止膜形成材料として有用である。