特許第5681435号(P5681435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 高砂熱学工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5681435-ガス除湿装置 図000002
  • 特許5681435-ガス除湿装置 図000003
  • 特許5681435-ガス除湿装置 図000004
  • 特許5681435-ガス除湿装置 図000005
  • 特許5681435-ガス除湿装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5681435
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】ガス除湿装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/26 20060101AFI20150219BHJP
【FI】
   B01D53/26 101B
   B01D53/26 A
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-229709(P2010-229709)
(22)【出願日】2010年10月12日
(65)【公開番号】特開2012-81416(P2012-81416A)
(43)【公開日】2012年4月26日
【審査請求日】2013年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100549
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 嘉之
(74)【代理人】
【識別番号】100090516
【弁理士】
【氏名又は名称】松倉 秀実
(74)【代理人】
【識別番号】100123098
【弁理士】
【氏名又は名称】今堀 克彦
(72)【発明者】
【氏名】西村 浩一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 順
【審査官】 岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−266853(JP,A)
【文献】 特開2011−147876(JP,A)
【文献】 特開2005−103378(JP,A)
【文献】 特開昭54−061074(JP,A)
【文献】 特開平04−176317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02−53/12
B01D 53/26−53/28
B01D 53/34
F24F 1/00− 1/02
F24F 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
循環経路を循環する特定のガスを除湿するガス除湿装置であって、
前記循環経路を流れるガスを除湿する主デシカント除湿機と、
前記主デシカント除湿機から加熱再生に伴って排気される再生排ガスを除湿する一のデシカント除湿機、または、上流側のデシカント除湿機の再生排ガスを除湿するデシカント除湿機を直列に複数繋いだデシカント除湿機群によって形成される、前記主デシカント除湿機の再生排ガスを除湿する補助除湿部と、
前記一のデシカント除湿機から排気され再び吸引される再生排ガス、または、前記デシカント除湿機群のうち最下流側のデシカント除湿機から排気され再び吸引される再生排ガス中の湿分を凝縮させて、該再生排ガスを除湿するコンデンス除湿機と、を備える、
ガス除湿装置。
【請求項2】
前記補助除湿部は、上流側のデシカント除湿機の再生排ガスを除湿する複数のデシカント除湿機を直列に繋いだデシカント除湿機群によって形成されており、
前記コンデンス除湿機は、前記デシカント除湿機群のうち最下流側のデシカント除湿機から排気されて該最下流側のデシカント除湿機へ再び吸引される、該最下流側のデシカント除湿機の再生排ガス中の湿分を凝縮させて、該再生排ガスを除湿する、
請求項1に記載のガス除湿装置。
【請求項3】
前記補助除湿部は、上流側のデシカント除湿機の再生排ガスを除湿する複数のデシカント除湿機を直列に繋いだデシカント除湿機群によって形成されており、
前記主デシカント除湿機は、前記デシカント除湿機群のうち最上流側のデシカント除湿機で除湿されたガスと前記循環経路を循環するガスとを吸引して除湿する、
請求項1または2に記載のガス除湿装置。
【請求項4】
前記主デシカント除湿機および前記補助除湿部を形成する各デシカント除湿機は、吸湿材を担持した回転式の除湿ロータで除湿する、
請求項1から3の何れか一項に記載のガス除湿装置。
【請求項5】
前記補助除湿部を形成する各デシカント除湿機は、一つ上流側のデシカント除湿機の再生排ガスと同等量を定格処理量とする、
請求項1から4の何れか一項に記載のガス除湿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス除湿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グローブボックス等の各種装置類においては、不活性ガス等で満たされたガス空間が構成される。このようなガス空間を調湿するための除湿装置としては、例えば、デシカント方式のように湿分を吸湿材で除去するもの、コンプレッサ方式のように湿分を凝縮させて除去するもの、或いはこれらを組み合わせたハイブリッド方式のものが考案されている。ガス空間内の露点温度を極めて低くするにはデシカント方式が有効であるが、吸湿材の再生原理上、排ガスが不可避的に発生する。排ガスの損失を少なくする技術としては、例えば、特許文献1に挙げられるような除湿装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−74387号公報
【特許文献2】特開平6−63350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス空間内の露点温度を極めて低くするにはデシカント方式を採用せざるを得ないが、除湿装置の処理能力が大きいと再生時の排ガス量が膨大になる。上位の除湿装置から排気される高湿の排ガスを更に除湿する下位の除湿装置を直列的に設ければ、末端の除湿装置から最終的に系外へ排出される排ガス量を可及的に抑制できるが、排ガスを完全に無くすことはできず、また、除湿装置を多数設けることはイニシャルコストやランニングコストを増大させる虞がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、ガス空間内のガスをデシカント方式で除湿しつつ、系外へガスを排出させることの無い除湿装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、循環経路を循環する特定のガスをデシカント除湿機で除湿しつつ、この除湿機から加熱再生に伴って排気される再生排ガスを、一又は複数のデシカント除湿機によって形成される補助除湿部によって除湿し、補助除湿部を形成するデシカント除湿機の再生排ガスをコンデンス除湿機で除湿することにした。
【0007】
詳細には、循環経路を循環する特定のガスを除湿するガス除湿装置であって、前記循環経路を流れるガスを除湿する主デシカント除湿機と、前記主デシカント除湿機から加熱再生に伴って排気される再生排ガスを除湿する一のデシカント除湿機、または、上位のデシカント除湿機の再生排ガスを除湿するデシカント除湿機を直列に複数繋いだデシカント除湿機群によって形成される、前記主デシカント除湿機の再生排ガスを除湿する補助除湿部と、前記一のデシカント除湿機の再生排ガス、または、前記デシカント除湿機群のうち最下位のデシカント除湿機の再生排ガス中の湿分を凝縮させて、該再生排ガスを除湿するコンデンス除湿機と、を備える。
【0008】
ここで、上記循環経路とは、除湿対象のガスが循環する経路であり、主デシカント除湿機が設けられる経路である。この循環経路は、特定のガスで満たされた除湿対象のガス空
間を意味し、配管類によって形成される循環経路内の空間のみならず、例えば生産装置内に形成される空間を含む概念である。継続的な除湿が必要となる循環経路としては、例えば、ガス空間内に各種の製造物を持ち込む場合に同時に取り込んでしまう水分や、ガス空間内に新鮮な特定ガスを入れる際に合わせて取り込まれてしまう水分、或いはガス空間の内外の境界から進入する水分、或いは、ガス空間内で行なわれる化学的な処理等により揮発する溶剤類のベーパー等が定常的に発生する経路を例示できる。上記ガス除湿装置においては、主デシカント除湿機から再生時に排気される再生排ガスが流れる排ガス経路であって、前記循環経路と別途に設けられる排ガス経路に、一又は複数のデシカント除湿機が設けられており、排ガス経路に設けられたこれらのデシカント除湿機によって補助除湿部が形成されている。この排ガス経路において上位に位置するデシカント除湿機から排気される多湿の再生排ガスを下位のデシカント除湿機で除湿し、このデシカント除湿機から排気される多湿の再生排ガスを更に下位のデシカント除湿機で除湿するといった具合に、排ガス経路のガスの除湿を複数のデシカント除湿機によって多段階に渡り行なうことにより、下位のデシカント除湿機から排気される再生排ガスの湿分濃度が高まる。この排ガス経路において最上位に位置するデシカント除湿機は、主デシカント除湿機である。この結果、循環経路を循環する特定のガスの露点温度が極めて低く設定されているような場合であっても、排ガス経路における下位のデシカント除湿機から排気される再生排ガスの露点温度が高まり、コンデンス除湿機によって再生排ガス中の湿分を十分に凝縮させて除湿することが可能となる。なお、上記排ガス経路とは、主デシカント除湿機から再生時に排気される再生排ガスが流れる経路であり、上記循環経路とは異なる経路であるが、該循環経路と同様に前記特定のガスで満たされる経路である。
【0009】
ここで、コンデンス除湿機は、デシカント除湿機のように吸湿材を用いないため、再生が不要である。すなわち、コンデンス除湿機であれば、デシカント除湿機のように加熱再生によって不要となるガスが発生しない。よって、上記ガス除湿装置であれば、ガス空間内のガスを系外へ排出させることなく、循環経路を循環するガスをデシカント除湿機によって極めて低露点温度に保つことができる。
【0010】
なお、前記補助除湿部は、上位のデシカント除湿機の再生排ガスを除湿する複数のデシカント除湿機を直列に繋いだデシカント除湿機群によって形成されており、前記コンデンス除湿機は、前記デシカント除湿機群のうち最下位のデシカント除湿機から排気されて該最下位のデシカント除湿機へ再び吸引される、該最下位のデシカント除湿機の再生排ガス中の湿分を凝縮させて、該再生排ガスを除湿するものであってもよい。除湿装置がこのように構成されていれば、コンデンス除湿機に流入する再生排ガスの露点温度が高くなるため、コンデンス除湿機の除湿効率が高まる。
【0011】
また、前記補助除湿部は、上位のデシカント除湿機の再生排ガスを除湿する複数のデシカント除湿機を直列に繋いだデシカント除湿機群によって形成されており、前記主デシカント除湿機は、前記デシカント除湿機群のうち最上位のデシカント除湿機(すなわち、循環経路を直接除湿するデシカント除湿機)で除湿されたガスと前記循環経路を循環するガスとを吸引して除湿するものであってもよい。除湿装置がこのように構成されていれば、補助除湿機においてガスが十分に除湿されていなくても、露点温度の高いガスが循環経路へ流れることが無い。
【0012】
また、前記主デシカント除湿機および前記補助除湿部を形成する各デシカント除湿機は、吸湿材を担持した回転式の除湿ロータで除湿するものであってもよい。除湿装置がこのように構成されていれば、連続的な動作により安定的な除湿処理を実現できる。
【0013】
また、前記補助除湿部を形成する各デシカント除湿機は、一つ上位のデシカント除湿機の再生排ガスと略同等量を定格処理量とするものであってもよい。このように構成される
除湿装置であれば、補助除湿機の能力が必要最小限となり、ガスの消費を抑えつつ機器全体のランニングコストも低減できる。
【発明の効果】
【0014】
ガス空間内のガスをデシカント方式で除湿しつつ、系外へガスを排出させることが無くなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】除湿装置の構成図である。
図2】従来例に係る2段式の除湿装置の第一の例である。
図3】従来例に係る2段式の除湿装置の第二の例である。
図4】第一変形例に係る除湿装置の構成図である。
図5】第二変形例に係る除湿装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係る除湿装置の構成を図1に示す。除湿装置1は、図1に示すように、主除湿機10(本発明でいう主デシカント除湿機に相当する)、及び第一補助除湿機10Aと第二補助除湿機10Bとを有する補助除湿部10x(第一補助除湿機10Aと第二補助除湿機10Bの集合が本発明でいうデシカント除湿機群に相当する)を備える。除湿装置1は、窒素ガスやアルゴンガスといったいわゆる不活性ガス中に含まれる湿分の除去に用いるのが好適であるが、その他のガス(例えば、空気等)中に含まれる湿分の除去に用いてもよい。
【0017】
主除湿機10は、図1に示すように、除湿ロータ11、処理ファン12、再生ファン13、プレクーラ14、加熱装置15を備えている。
【0018】
除湿ロータ11は、円筒状の部材の内部に合成ゼオライトやシリカゲル等を主成分とする吸着剤を担持しており、内部を軸方向に沿ってガスが流れるように構成されている。除湿ロータ11の両端面には図示しないセクション分割カセットが配置されており、このカセットによって除湿ロータ11のガス通過域が3つのセクションに区画される。除湿ロータ11は、このセクション分割カセットと相対的に回転可能なようになっており、このカセットによって除湿ロータ11に処理領域R1、再生領域R2、パージ領域R3が形成される。
【0019】
処理領域R1には、処理ファン12から供されてプレクーラ14で冷却されたガスが通過する。処理領域R1は、通気されるガス中の水分を吸着し、露点温度が−50度以下の低露点ガスを排出する。再生領域R2には、加熱装置15で加熱されたガスが通過する。再生領域R2は、加熱されることにより、吸着した水分を離脱する。パージ領域R3は、除湿ロータ11のある一点が再生領域R2から処理領域R1へ遷移する途中で形成される領域である。パージ領域R3は、再生直後でインサービス前の高温状態にある吸着剤を冷却するための領域であり、処理ファン12から供されてプレクーラ14で冷却されたガスの一部が通過することにより冷却される。除湿ロータ11が図1の矢印が示す方向に回転することで、除湿ロータ11の定点が処理領域R1、再生領域R2、パージ領域R3の順に繰り返し遷移する。
【0020】
処理ファン12は、主除湿機10に供されるガスを、除湿ロータ11に形成される処理領域R1やパージ領域R3へ供給する電動式のファンである。処理ファン12の下流側に設けられるプレクーラ14は、処理対象のガスの温度を下げる。プレクーラ14には、冷凍機などの冷却設備から供給される冷媒が流れる。吸着剤の性能は、処理するガスの温度に大きく左右される。このため、主除湿機10は、プレクーラ14を設けてガスの温度を
安定させることで、除湿ロータ11から出るガスの温度や湿度を安定的に制御している。
【0021】
加熱装置15は、パージ領域R3から排出されたガスと再生領域R2から排出された後に同領域に戻るガスとを合流させた後に加熱する。加熱装置15は、電気ヒータ、蒸気コイル、或いはヒートポンプ等の加熱機器類で構成される。加熱装置15が加熱されたガスは、再生領域R2へ流れる。加熱装置15によって加熱された高温のガスが再生領域R2を通過することにより、再生領域R2の吸着剤が加熱されて高温になり、吸着剤に吸着されていた水が離脱する。
【0022】
第一補助除湿機10Aについても、主除湿機10と同様、図1に示すように、除湿ロータ11A、処理ファン12A、再生ファン13A、プレクーラ14A、加熱装置15Aを備えている。第一補助除湿機10Aは、処理能力を除いて主除湿機10と構成が同様である。第一補助除湿機10Aの処理能力は、主除湿機10の再生領域R2から該主除湿機10の機外へ排出されるガスを処理できる程度の能力であり、本実施形態では第一補助除湿機10Aの処理能力が主除湿機10の十分の一に設計されている。
【0023】
第二補助除湿機10Bについても、主除湿機10や第一補助除湿機10Aと同様、図1に示すように、除湿ロータ11B、処理ファン12B、再生ファン13B、プレクーラ14B、加熱装置15Bを備えている。但し、第二補助除湿機10Bは、主除湿機10や第一補助除湿機10Aと異なり、除湿クーラ16(本発明でいうコンデンス除湿機に相当する)を備えている。除湿クーラ16は、再生ファン13Bから排気されるガスを冷却して湿分を凝縮させる凝縮器であり、凝縮水がドレン配管17を通じて系外へ排出されるようになっている。すなわち、除湿クーラ16は、冷媒が管内を流れる冷却コイルを内蔵しており、冷却コイルを再生ファン13Bの排気が通過することで、ガス中の湿分が凝縮する。除湿クーラ16の冷却コイルを流れる冷媒は、再生ファン13Bから排気されるガスを冷却して湿分を十分に凝縮させることが可能であれば如何なる成分あるいは性状のものであってもよい。なお、除湿クーラ16は、第二補助除湿機10Bに内蔵されている必要は無く、第二補助除湿機10Bと別体であってもよい。
【0024】
また、ドレン配管17には、ドレントラップ、Uシール、あるいは気水分離器といったドレン水だけを通過させ、ガスの通過を阻む気液分離手段が設けられており、再生ファン13Bから排気されるガスがドレン配管17を介して系外へ漏出しないように構成されている。
【0025】
なお、第二補助除湿機10Bの処理能力は、第一補助除湿機10Aの再生領域R2Aから該第一補助除湿機10Aの機外へ排出されるガスを処理できる程度の能力であり、本実施形態では第一補助除湿機10Aの処理能力が主除湿機10の百分の一(第一補助除湿機10Aの十分の一)に設計されている。
【0026】
このように構成される除湿装置1では、各機器が動作することで以下のような処理が実現される。除湿装置1が除湿処理可能なガス(図1でいう“還気”に相当する)の流量を100とすると、主除湿機10に流入するガスの流量は110となる。その内訳は、ガス空間を有する所定装置からの還気が100、第一補助除湿機10Aからのガスが10である。なお、図1では、流量を囲み数字で示している。また、図1では、主除湿機10には所定装置からの換気および第一補助除湿機10Aからのガスの他に、窒素ガスを補給するラインが繋がっているが、この補給ラインは微少な窒素ガスの漏出分を補うためにある。ガスの補給は、減圧弁あるいは電磁弁等により自動で、或いは手動弁等により手動で適宜補給される。ここで、所定装置とは、除湿装置1が除湿処理するガスが満たされている空間を有する装置であり、例えば、窒素ガス(本発明でいう特定のガスの一態様である)で満たされた露点温度が−50℃以下であることが要求される各種の製造装置やグローブボ
ックス等のあらゆる装置類を指す。
【0027】
処理ファン12によって主除湿機10に流入したガスは、プレクーラ14で冷却された後に、除湿ロータ11に形成されている処理領域R1へ流量が100、パージ領域R3へ流量が10の割合で流れる。処理領域R1へ流れたガスは、除湿された後に所定の機器へ給気される。このように、主除湿機10は、所定の機器に供されているガスが循環する経路の途中に割り込むような形で配設されており、一方、処理ファン12の翼が回転することでこの循環経路をガスが循環する。
【0028】
パージ領域R3を通過するガスは、パージ領域R3に残留していた再生時の熱によって加熱される。このガスは、加熱装置15によって更に加熱された後に再生領域R2へ流れる。再生領域R2を通過したガスは、再生ファン13によって第一補助除湿機10Aへ送られるが、そのうちの一部は再生領域R2に向けて戻され、パージ領域R3から出たガスと合流して再生領域R2へ再び送られる。再生領域R2の吸着剤に吸着されている水分は、加熱装置15による加熱によって放出され、第一補助除湿機10Aへ送られる。
【0029】
第一補助除湿機10Aにおいても、主除湿機10と同様の処理が行われる。但し、第一補助除湿機10Aは、主除湿機10の排気および第二補助除湿機10Bで除湿されたガスを除湿するものであるため、第一補助除湿機10Aに流入するガスの流量は前述の主除湿機10に流入するガス流量100に対して11である。主除湿機10から排気されたガスは、第二補助除湿機10Bで除湿されたガスと合流し、処理ファン12Aによって除湿ロータ11Aの処理領域R1Aに流入する。第一補助除湿機10Aに流入したガスは、プレクーラ14Aによって冷却された後に、除湿ロータ11Aに形成されている処理領域R1Aへ流量が10、パージ領域R3Aへ流量が1の割合で流れる。処理領域R1Aへ流れたガスは、除湿された後に主除湿機10へ送られる。第一補助除湿機10Aで除湿されたガスが主除湿機10へ戻されることにより、ガスの有効利用が図られてガス補給にかかるコストが低減される。
【0030】
パージ領域R3Aを通過したガスは、主除湿機10と同様、加熱装置15Aによって加熱された後に再生領域R2Aへ流れる。再生領域R2Aを通過したガスは、再生ファン13Aによって第二補助除湿機10Bへ送られるが、そのうちの一部は再生領域R2Aに向けて戻され、パージ領域R3Aから出たガスと合流して再生領域R2Aへ再び送られる。再生領域R2Aの吸着剤に吸着されている水分は、加熱装置15Aによる加熱によって放出され、第二補助除湿機10Bへ送られる。なお、再生領域R2Aを通過するガスの熱は、主除湿機10の再生領域R2から排出されてパージ領域R3Aを経て再生領域R2Aに流入する主除湿機10の再生排ガス中の熱を含むことにより、主除湿機10の加熱再生で生じた熱が第一補助除湿機10Aの加熱再生に間接的に利用される。
【0031】
第二補助除湿機10Bにおいても、主除湿機10や第一補助除湿機10Aと同様の処理が行われる。但し、第二補助除湿機10Bは、第一補助除湿機10Aの排気を除湿するものであるため、第二補助除湿機10Bに流入するガスの流量は第一補助除湿機10Aに流入するガス流量11に対して1である。第一補助除湿機10Aから排気されたガスは、除湿クーラ16で除湿されたガスと合流し、処理ファン12Bによって除湿ロータ11Bに流入する。第二補助除湿機10Bに流入したガスは、プレクーラ14Bによって冷却された後に、除湿ロータ11Bに形成されている処理領域R1Bへ流量が1、パージ領域R3Aへ流量が0.1の割合で流れる。処理領域R1Bへ流れたガスは、除湿された後に第一補助除湿機10Aへ送られる。第二補助除湿機10Bで除湿されたガスが第一補助除湿機10Aへ戻されることにより、ガスの有効利用が図られてガス補給にかかるコストが低減される。
【0032】
パージ領域R3Bを通過したガスは、主除湿機10や第一補助除湿機10Aと同様、加熱装置15Bによって加熱された後に再生領域R2Bへ流れる。再生領域R2Bを通過したガスは、再生ファン13Bによって処理ファン12Bへ送られるが、その際に除湿クーラ16を通過する。また、除湿クーラ16を通過したガスは、第一補助除湿機10Aから出たガスと合流した後、処理ファン12Bへ送られる。再生領域R2Bの吸着剤に吸着されている水分は、加熱装置15Bによる加熱によって除湿ロータ11Bの吸着剤から離脱して放出されるが、除湿クーラ16の冷却コイルで凝縮水となり、ドレン配管を介して系外へ排出される。これにより、窒素ガスを系外へ漏出させることなく、窒素ガスの空間内に含まれる湿分が窒素ガスと完全に分離される。なお、再生領域R2Bを通過するガスの熱は、第一補助除湿機10Aの再生領域R2Aから排出されてパージ領域R3Bを経て再生領域R2Bに流入する第一補助除湿機10Aの再生排ガス中の熱を含むことにより、第一補助除湿機10Aの加熱再生で生じた熱が第二補助除湿機10Bの加熱再生に間接的に利用される。
【0033】
上述した第一補助除湿機10Aおよび第二補助除湿機10Bは、導入ガスは上位の除湿装置のみから取り入れられ、系外からの補給はしない。それらを備えない構成の除湿装置とした場合、換言すると、主除湿機10の再生領域R2から排気されるガスをそのまま系外に放出する場合、必要なガス補給量は10(このガス補給量は所定装置からの還気の量の10〜20%の範囲内で適宜変更されてもよい)となってしまう。一方、上述した除湿装置1のように第一補助除湿機10Aおよび第二補助除湿機10Bを備える構成とし、第二補助除湿機10Bに除湿クーラ16を設けた場合、必要なガス補給量は理論上ゼロ(実際にはダクトや各機器類からの漏れがあるため、漏出するガスを補う必要がある)となり、補給するガスの費用を削減することができる。
【0034】
例えば、図2に示すように、除湿装置を2つのロータからなる2段式の構成とした場合、ガス補給量を全循環量の0.5%程度にまで削減することができる。しかし、このように除湿装置を2段式の構成とする場合、装置が大型化して消費エネルギー量も増大して単段の場合に比べて3倍程度のランニングコストがかかり、更に、ガスの補給量をゼロにすることができない。また、例えば、図3に示すように、主除湿機の排気分のみを除湿処理する補助除湿機を採用し、補助除湿機の再生排ガスのみを系外へ排出する構成を採る場合、補助除湿機が処理するガス風量は主除湿機の10%程度で済むため、ガス補給量を0.5程度にまで削減しつつ、装置の消費エネルギーの増加量も10%程度で済み、除湿装置を図2のような2段式の構成とする場合に比べてランニングコストを削減できる。しかし、図3に示すような主除湿機の排気分のみを補助除湿機で除湿処理する構成を採っても、ガスの補給量をゼロにすることはできない。
【0035】
一方、本実施形態に係る除湿装置1であれば、補給が必要なガス量を理論上ゼロにすることができるため、大幅なランニングコストの削減が見込める。すなわち、窒素ガスの空間内を除湿する主除湿機10の排気を、第一補助除湿機10Aおよび第二補助除湿機10Bの2段階で除湿することにより、再生領域R2Bから排出されるガスの湿分が除湿クーラ16の冷却コイルで除湿できる濃度まで上昇する。これを除湿クーラ16で除湿することにより、ガスを系外へ排出させることなくガス空間を連続的に除湿できる。
【0036】
また、第二補助除湿機10Bは、全循環量の1%程度のガスを除湿するだけなので非常に小型のものでよく、消費エネルギーも小さい。例えば、図3に示すような構成の除湿装置に比べると、第二補助除湿機10Bが追加されたことによる消費エネルギーの増大分は全体の約3%程度である。これに対し、本実施形態に係る除湿装置1であれば、系外へ排気されていた0.5%の排出分をゼロにできる。よって、例えば、消費エネルギーの増加分が10万円/年であっても、ガスの低減分が500万円/年(窒素ガスの場合)となれば、第二補助除湿機10Bを追加した分の費用は十分に償還可能である。なお、ガスの単
価が更に高いものであれば、更なる効果が奏されることは言うまでも無い。
【0037】
なお、上記除湿装置1では、湿分をドレン配管17で系外へ排出させているが、例えば、ガス空間中の湿分が水ではなく、有用な溶剤であるような場合には、除湿クーラ16で凝縮した溶剤を回収して保存あるいは有効利用することも可能である。
【0038】
なお、上記除湿装置1は、以下のように変形してもよい。除湿装置1の第一変形例を図4に示す。図4に示す除湿装置1’は、主除湿機10’、及び補助除湿部10x’の第一補助除湿機10A’と第二補助除湿機10B’の構成が上記除湿装置1のものと若干相違している。すなわち、上記実施形態に係る除湿装置1の主除湿機10では、再生領域R2を通過したガスの一部が加熱装置15に再び加熱されて再生領域R2へ再度流れる構成を採っていたが、本変形例では、図4に示すように、再生領域R2を通過したガスが全て第一補助除湿機10A’へ流れる構成を採っている。第一補助除湿機10A’及び第二補助除湿機10B’についても同様である。このような除湿装置1’であっても、実施形態に係る除湿装置1と同様、消費エネルギー量を大幅に増大させることなくガス補給量を削減できる。
【0039】
また、上記除湿装置1は、以下のように変形してもよい。除湿装置1の第二変形例を図5に示す。図5に示す除湿装置1”は、主除湿機10”、及び補助除湿部10x”の第一補助除湿機10A”と第二補助除湿機10B”の構成が上記除湿装置1のものと若干相違している。すなわち、上記実施形態に係る除湿装置1の主除湿装置10では、処理ファン12から処理領域R1へ流れるガスの一部がパージ領域R3へ分流し、パージ領域R3を通過したのちに加熱装置15へ流入する構成を採っていたが、本変形例では、図5に示すように、処理領域R1を通過した後のガスの一部がパージ領域R3へ分流し、再生領域R2から出たガスと合流する構成を採っている。第一補助除湿機10A”及び第二補助除湿機10B”についても同様である。このような除湿装置1”であっても、実施形態に係る除湿装置1と同様、消費エネルギー量を大幅に増大させることなくガス補給量を削減できる。
【0040】
また、上記除湿装置1は、以下のように変形してもよい。上記除湿装置1では、2台の第一補助除湿機10A及び第二補助除湿機10Bで主除湿機10の排気を処理していたが、例えば、一又は複数台の主除湿機の排気を、除湿クーラを設けた一台の補助除湿機で処理してもよいし、或いは1台の主除湿機からの排気を3台以上の補助除湿機で処理してもよい。各除湿機の台数は、ガス空間の目標とする湿分濃度に応じて適宜決定される。
【0041】
なお、上記除湿装置1は、図1に示される主除湿機と、図4,5に示される補助除湿機とを相互に組み合わせてもよく、例えば、図1の主除湿機1に図4の第一補助除湿機10A’および第二補助除湿機10B’或いは図5の第一補助除湿機10A”および第二補助除湿機10B”を組み合わせたり、図4の主除湿機1’に図1の第一補助除湿機10Aおよび第二補助除湿機10B或いは図5の第一補助除湿機10A”および第二補助除湿機10B”を組み合わせたり、図5の主除湿機1”に図1の第一補助除湿機10Aおよび第二補助除湿機10B或いは図4の第一補助除湿機10A’および第二補助除湿機10B’を組み合わせたりしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態や変形例では、下位の除湿装置の除湿能力を上位の除湿装置の10%程度に設定していたが、本発明は、下位の除湿装置の除湿能力が上位の除湿装置の10〜20%程度の範囲内であれば好適に運転できる。すなわち、第一補助除湿機10Aの除湿能力を主除湿装置1の10〜20%程度とし、第二補助除湿機10Bの除湿能力を主除湿装置1の1〜4%程度とする。なお、これらの制限値は、発生する湿分の量や各除湿機の再生能力等に応じて適宜決定される。
【0043】
なお、各除湿装置の運転制御は、例えば、次のようにして行うことができる。例えば、実施形態にかかる除湿装置1に制御装置を設け、この制御装置が、主除湿機1の処理領域R1を通過するガスの入口温度と出口温度との温度差に基づいて主除湿機1の除湿量を検知し、この検知量に基づいて第一補助除湿機10Aの加熱装置15Aや第二補助除湿機10Bの加熱装置15Bを制御し、主除湿機1の除湿量を一定にするようにしてもよい。この場合、温度差と加熱装置の加熱量との相関は、例えば、予め作成した関数あるいはマップに基づいて特定する。主除湿機1の除湿量は、ドレン配管17を通じて最終的に系外へ排出される凝縮水の排水量と比例するため、主除湿機1の除湿量が低下して処理領域R1を通過するガスの入口温度と出口温度との温度差が小さくなる場合は各加熱装置の発熱量を増やして系外へ排出する凝縮水の排水量を増やす。また、主除湿機1の除湿量が上昇して処理能力R1を通過するガスの入口温度と出口温度との温度差が大きくなる場合は各加熱装置の発熱量を減らして系外へ排出する凝縮水の排水量を減らす。これにより、主除湿機1の除湿量が概ね一定の範囲内に保たれる。
【符号の説明】
【0044】
1,1’,1”・・除湿装置
10,10’,10”・・主除湿機
10x,10x’,10x”・・補助除湿部
10A,10A’,10A”・・第一補助除湿機
10B,10B’,10B”・・第二補助除湿機
16・・除湿クーラ
図1
図2
図3
図4
図5