(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上下に延びるステム軸線を軸心として上下に貫通する貫通孔が形成されるヘッドパイプ部に対して、左右一対のフロントフォーク部材を連結するアッパーブラケット及びアンダーブラケットが回転可能に支持される自動二輪車のステアリング構造において、
前記貫通孔に挿通されて、前記ヘッドパイプ部に支持されている基軸と、
ヘッドパイプ部から露出した部分に設けられ、前記貫通孔に挿通された前記基軸が前記ステム軸線周りに回動することを阻止する回り止め部と、
前記基軸の上端部に設けられ、且つアッパーブラケットを前記ステム軸線に対して偏心するステアリング軸線周りに回動可能に支持する上側偏心軸部と、
前記基軸の下端部に設けられ、且つアンダーブラケットを前記ステアリング軸線周りに回動可能に支持する下側偏心軸部と、を備え、
下側偏心軸部が、前記基軸と一体に形成されており、
上側偏心軸部が、前記基軸に対して着脱可能に形成されており、
前記ステアリング構造は、前記上側偏心軸部と前記基軸とを固定する固定機構を備えており、
前記ヘッドパイプは、前記ステム軸線に対して前記ステアリング軸線が偏心する第1ステアリング構造のほか、前記ステム軸線とステアリング軸線とが一致する第2ステアリング構造に適用可能であって、前記第2ステアリング構造におけるハンドルの旋回範囲を制限するハンドルストッパを突起として備えており、
前記回り止め部は、前記突起を車幅方向両側から挟み込む挟持部と、前記挟持部内に配置された前記突起に当接する当接部と、該当接部が前記突起に当接する位置を調整する調整機構と、を備えていることを特徴とする、自動二輪車のステアリング構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、レース用の場合、操向の感度等を変更するために、ハンドルの旋回中心位置を、ドライバーの好みに応じて変更することが望まれている。従来のステアリング構造において、ハンドルの旋回中心位置はステアリング軸の軸線上にある。このため、ハンドルの旋回中心位置を変更するには、ヘッドパイプ部においてステアリング軸を支持する貫通孔の形成位置を変更する必要がある。この場合、ドライバーの嗜好に合わせてヘッドパイプ部を設計する必要があり、同一規格のヘッドパイプ部を利用することができない。この結果、自動二輪車のコストアップを招いてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、ヘッドパイプ部において貫通孔の形成位置を変更することなく、ハンドルの旋回中心位置を変更できる、ステアリング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上下に延びるステム軸線を軸心として上下に貫通する貫通孔が形成されるヘッドパイプ部に対して、左右一対のフロントフォーク部材を連結するアッパーブラケット及びアンダーブラケットが回転可能に支持される自動二輪車のステアリング構造において、前記貫通孔に挿通される基軸と、ヘッドパイプ部から露出した部分に設けられ、前記貫通孔に挿通された前記基軸が前記ステム軸線周りに回動することを阻止する回り止め部と、前記基軸の上端部に設けられ、且つアッパーブラケットを前記ステム軸線に対して偏心するステアリング軸線周りに回動可能に支持する上側偏心軸部と、前記基軸の下端部に設けられ、且つアンダーブラケットを前記ステアリング軸線周りに回動可能に支持する下側偏心軸部と、を備えることを特徴とする、自動二輪車のステアリング構造を提供する。
【0008】
(a)好ましくは、前記上側偏心軸部及び前記下側偏心軸部の一方が、前記基軸と一体に形成されており、前記上側偏心軸部及び前記下側偏心軸部の他方が、前記基軸に対して着脱可能に形成されており、前記ステアリング構造は、前記他方の偏心軸部と前記基軸とを固定する固定機構を備えている。
【0009】
(b)好ましくは、下側偏心軸部が、前記基軸と一体に形成されており、上側偏心軸部が、前記基軸に対して着脱可能に形成されている。
【0010】
(c)好ましくは、前記固定機構は、前記他方の偏心軸部が前記ステアリング軸線から外れて固定されることを防止する位置決め部を備えている。
【0011】
(d)好ましくは、前記固定機構が、前記他方の偏心軸部を前記基軸に締結するボルトと、前記他方の偏心軸部及び前記基軸の一方に形成された位置決めピンと、前記他方の偏心軸部及び前記基軸の他方に形成された前記位置決めピンに係合するピン穴と、を備えている。
【0012】
(e)好ましくは、前記回り止め部は、前記ヘッドパイプ部に形成される突起を車幅方向両側から挟み込む挟持部を備えている。
【0013】
(f)好ましくは、前記回り止め部は、前記挟持部内に配置された前記突起に当接する当接部と、該当接部が前記突起に当接する位置を調整する調整機構と、を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ヘッドパイプ部において貫通孔の形成位置を変更することなく、ハンドルの旋回中心位置を変更できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本実施形態の構成)
図1は、自動二輪車1を左上後方から見た全体斜視図である。
図1において、自動二輪車1は、メインフレーム2、スイングアーム3、ハンドル4、左右一対のフロントフォーク部材5、前輪6、及び後輪7を備えている。前輪6は、左右一対のフロントフォーク部材5によって支持されている。後輪7は、スイングアーム3によって支持されている。スイングアーム3は、メインフレーム2に対して揺動自在に支持されている。また、自動二輪車1の前部に、ステアリング構造100が配置されている。
【0017】
図2は、ステアリング構造100を左上後方から見た斜視図である。
図2において、メインフレーム2は、ヘッドパイプ部10と、ヘッドパイプ部10から後方に延びる左右一対のサイドフレーム19と、を備えている。
【0018】
図3は、ステアリング構造100を右上前方から見た斜視図である。
図3において、左右一対のフロントフォーク部材5は、アッパーブラケット8及びアンダーブラケット9によって連結されている。アッパーブラケット8は、ヘッドパイプ部10の上方に配置されており、アンダーブラケット9は、ヘッドパイプ部10の下方に配置されている。ステアリング構造100において、アッパーブラケット8及びアンダーブラケット9は、ヘッドパイプ部10に対して、回転可能に支持されている。
【0019】
図4は、ステアリング構造100を示す側断面図である。
図4において、ヘッドパイプ部10は中空であり、上壁10a及び下壁10bを有している。上壁10aに上ボス部11が形成されており、下壁10bに下ボス部12が形成されている。ヘッドパイプ部10には、上下に延びるステム軸線10Aが設定されている。上ボス部11及び下ボス部12の中心軸線は、ステム軸線10A上に形成されている。このため、ヘッドパイプイブ10には、ステム軸線10Aを軸心とする貫通孔が、上ボス部11の内面及び下ボス部12の内面によって形成されている。
【0020】
ステアリング構造100は、ステム200を備えている。ステム200は、基軸20、下側偏心軸部30、及び上側偏心軸部40を備えている。下側偏心軸部40は基軸20の下端部に設けられ、上側偏心軸部40は基軸20の上端部に設けられている。基軸20及び下側偏心軸部30は一体に形成されている。上側偏心軸部40は、基軸20に対して着脱可能に形成されている。
【0021】
図5から
図10を参照して、ステム200をより詳しく説明する。
図5から
図7は、基軸20及び下側偏心軸部30を示している。
図5は、基軸20及び下側偏心軸部30の下面図である。
図6は基軸20及び下側偏心軸部30の側面図である。
図7は基軸20及び下側偏心軸部30の上面図である。
図8から
図10は、上側偏心軸部40を示している。
図8は上側偏心軸部40の下面図である。
図9は上側偏心軸部40の側面図である。
図10は上側偏心軸部40の上面図である。
【0022】
図6において、基軸20は、中心軸線20Aに沿って延びる多段の円柱状部材である。基軸20は、下端部21、中間部22、及び上端部23を有している。上端部
23及び下端部
21の外径は等しく、中間部22の外径は、上端部
23及び下端部
21の外径よりも小さい。また、上端部
23内に肉抜き孔27が形成されており、中間部22内に肉抜き孔28が形成されている。
【0023】
図6において、下側偏心軸部30は、下側偏心軸31、ストッパ部32、及び挟持部33を備えている。下側偏心軸31は、中心軸線31Aに沿って下方に延びる円柱状部材である。下側偏心軸31の中心軸線31Aは、基軸20の中心軸線
20Aに対して偏心している。ストッパ部32は、中心軸線31Aに垂直な面内において
下ボス部
12の外側に広がる板状部材である。また、ストッパ部32は、下側偏心軸31及び基軸20の下端部
21を連結している。挟持部33は、ストッパ部32と一体に形成されている。挟持部33の構成は後述する。
【0024】
図9において、上側偏心軸部40は、上側偏心軸41、ストッパ部42、及び挿入部43を備えている。上側偏心軸41は、中心軸線41Aに沿って上方に延びる円柱状部材である。上側偏心軸部40が基軸20に固定されているとき、上側偏心軸41の中心軸線41Aは、基軸20の中心軸線
20Aに対して偏心している。ストッパ部42は、中心軸線41Aに垂直な面内において
上ボス部
11の外側に広がる板状部材である。挿入部43は、中心軸線43Aに沿って下方に延びる円柱状部材である。上側偏心軸部40が基軸20に固定されているとき、中心軸線43Aは、基軸20の中心軸線
20Aに一致する。
【0025】
図4、及び
図5から
図10を参照して、上側偏心軸部40を基軸20に固定する固定機構、及び基軸20に対して上側偏心軸部40を位置決めする位置決め部を説明する。
【0026】
図5、
図6に示されるように、基軸20の上端部23内には、上方に開口する穴部24が形成されている。上側偏心軸部40が基軸20に取り付けられるとき、穴部24内に上側偏心軸部40の挿入部43が挿入される。このため、穴部24の内面が上側偏心軸部40の挿入部43の外面に略一致するように、穴部24は形成されている。上端部23には、穴部24の下面から下方に向けて、ボルト穴25が形成されている。ボルト穴25には雌ねじが形成されており、ボルト穴25は
図4に示されるボルト70に噛み合う。
図8、
図9、及び
図10に示されるように、挿入部43及びストッパ部42には、貫通孔44が形成されている。穴部24内に挿入部43が挿入されているときに、ボルト70を貫通孔44内に挿通し且つボルト70を締結することによって、上側偏心軸部40が基軸20に固定される。つまり、固定機構は、基軸20に形成されたボルト穴25、挿入部43及びストッパ部42に形成された貫通孔44、及びボルト70を、少なくとも備えている。
【0027】
図7に示されるように、基軸20には、穴部24の下面から上方に突出するピン26が形成されている。ピン26の中心軸線は、ボルト穴25の中心軸線に対して偏心している。一方、
図8に示されるように、上側偏心軸部40には、挿入部43の下面から上方に形成されたピン穴45が設けられている。ピン穴45の中心軸線は、貫通孔44の中心軸線に対して偏心している。ピン26の中心軸線とボルト穴25の中心軸線との位置関係は、ピン穴45の中心軸線と貫通孔44の中心軸線との位置関係に等しい。なお、
図7は上面図であり、
図8は下面図であるため、
図7及び
図8において、ボルト穴25に対するピン26の位置が、貫通孔44に対するピン穴45の位置に対して逆になっている。このため、穴部24内に挿入部43が挿入されているときに、ピン26がピン穴45内に挿入される。更に、ボルト70を貫通孔44内に挿通し、ボルト70を締結することによって、上側偏心軸部40が基軸20に対して固定されると共に、上側偏心軸部40が基軸20に対して中心軸線20A周りで位置決めされる。つまり、固定機構は、位置決め部として、ピン26及びピン穴45を備えている。
【0028】
再び
図4を参照して、ヘッドパイプ部10に対してステム200を支持する支持構造、及びヘッドパイプ部10に対してステム200を組み付ける組み付け方法を説明する。基軸20は、ヘッドパイプ部10の上ボス部11及び下ボス部12内に挿入されている。基軸20の上端部21の外面と上ボス部11の内面との間には、スペーサー13が圧入されている。基軸20の下端部22の外面と下ボス部12の内面との間には、スペーサー14が圧入されている。スペーサー13、14は、上ボス部11の内面及び下ボス部12の内面と基軸20の外面との間の隙間を埋めている。このため、基軸20はヘッドパイプ部10に支持されている。本実施形態において、スペーサー13及びスペーサー14はボールベアリングである。基軸20がヘッドパイプ部10に支持されている状態において、基軸20の中心軸線20Aは、ヘッドパイプ部10に設定されているステム軸線10Aに一致している。また、基軸20には、上側偏心軸部40がボルト70により固定されている。
【0029】
組み付け方法は、次の工程を備えている。まず、上ボス部11にスペーサー13のアウターレースが圧入される。また、下ボス部12にスペーサー14のアウターレースが圧入される。スペーサー14のアウターレースにボールが嵌め込まれる。一方、基軸20の下端部21には、スペーサー14のインナーレースが圧入されている。次に、インナーレース付きの基軸20が、ヘッドパイプ部10の貫通孔内に下方から挿入され、上端部23がスペーサー14のアウターレース内に配置され、下端部21がスペーサー13のアウターレース内に配置される。基軸20に固定されたインナーレースが下ボス部12に固定されたアウターレース及びボールを閉じる。次に、上ボス部11に固定されたアウターレースにボールが嵌め込まれる。一方、上側偏心軸部40の挿入部43には、押さえナット71が嵌められると共に、スペーサー13のインナーレースが圧入されている。次に、押さえナット71及びインナーレースを有する挿入部43が、ヘッドパイプ部10の上ボス部11内に上方から挿入される。この結果、挿入部43に固定されたインナーレースが、上ボス部11に固定されたアウターレース及びボールを閉じる。次に、ボルト70により、上側偏心軸部40が基軸20に締結される。ここで、押さえナット71は、スペーサー13のインナーレースと上側偏心軸部40のストッパ部42の下面との間に位置している。このため、ボルト70の締結により、スペーサー13においてインナーレースがアウターレースに押し付けられ、スペーサー14においてインナーレースがアウターレースに押し付けられる。この結果、上側偏心軸部40のストッパ部42と下側偏心軸部30のストッパ部32との間に、スペーサー13、14、及び押さえナット71が完全に挟み込まれる。このようにして、ステム200の組み付け、及びヘッドパイプ部10へのステム200の組み付けが、同時に完了する。
【0030】
アッパーブラケット8及びアンダーブラケット9は、次のように、ステム200に支持されている。アンダーブラケット9に形成された貫通孔9a内に下側カラー53が嵌められている。下側カラー53の内側には、2つのベアリング51、52が配置されている。2つのベアリング51、52の内側には、下側偏心軸部30の下側偏心軸31が配置されている。このようにして、アンダーブラケット9が、下側偏心軸部30の下側偏心軸31に回転自在に支持される。一方、アッパーブラケット8に形成された貫通孔8a内に上側カラー63が嵌められている。上側カラー63の内側には、2つのベアリング61、62が配置されている。2つのベアリング61、62の内側には、上側偏心軸部40の上側偏心軸41が配置されている。このようにして、アッパーブラケット8が、上側偏心軸部40の上側偏心軸41に回転自在に支持される。
【0031】
下側偏心軸部30の下側偏心軸31の中心軸線31A及び上側偏心軸部40の上側偏心軸41の中心軸線41Aは一致している。中心軸線31A及び中心軸線41Aは、自動二輪車1におけるステアリング軸線4Aを構成している。アッパーブラケット8に固定されるハンドル4の操作によって、ステアリング軸線4A周りに、2つのフロントフォーク部材5に支持される前輪6が旋回する。
【0032】
図2において、ステアリング構造100は、ステム200がステム軸線10A周りに回動することを阻止する、下側回り止め部300及び上側回り止め部400を備えている。
【0033】
図2において、下側回り止め部300は、ヘッドパイプ部10に形成される突起15を車幅方向両側から挟み込む挟持部33を備えている。挟持部33は、上述したように、下側偏心軸部30に設けられている。
【0034】
図4に示されるように、突起15は、下ボス部12の後方且つ下方に形成されている。なお、突起15は、従来のステアリング構造において、ハンドル4の旋回範囲を制限するハンドルストッパとして、ヘッドパイプ部10に形成されている。従来のステアリング構造では、ステム軸線10Aにステアリング軸線4Aが一致するように構成され、フロントフォーク部材5又はアンダーブラケット9の一部が、ハンドルストッパとしての突起15に接触できるように、自動二輪車1が設計されている。
【0035】
図5において、挟持部33は、中心軸線31Aの半径方向に延びる2つの突出部33aを備えている。各突出部33aには、雌ねじが形成されたボルト孔33bが形成されている。
【0036】
図2において、各突出部33aのボルト孔33bには、当接ボルト72が挿入されている。当接ボルト72はネジ軸のみからなっている。当接ボルト72をスクリュードライバーにより操作することによって、ボルト孔33b内における当接ボルト72の位置を調整できる。このため、当接ボルト72は、挟持部33内に配置された突起15に当接可能である。ボルト孔33b及び当接ボルト72に形成される雄ネジは、当接ボルト72が突起15に当接する位置を調整する調整機構を構成している。したがって、ステアリング構造100は、挟持部33及び調整機構を備えている。
【0037】
図2において、上側回り止め部400は、上側偏心軸部40のストッパ部42とヘッドパイプ部10の上壁10aとを連結する連結ブラケット73を備えている。連結ブラケット73はU字形状を有しており、ボルトを挿通するための4箇所の挿通孔73aを有している。連結ブラケット73は、上壁10aに対して2箇所でボルトにより固定され、ストッパ部42に対して2箇所でボルトにより固定される。
【0038】
図8において、ストッパ部42は、2つのボルト孔42aを有している。ボルト孔42aは、ストッパ部42を上下に貫通している。ボルト孔42aの内面は雌ねじに形成されている。
【0039】
(本実施形態の作用、効果)
本実施形態は、次の作用、効果を有している。
【0040】
本実施形態は、基軸20、回り止め部300及び400、上側偏心軸部40、及び下側偏心軸部30を備えている。上側偏心軸41の中心軸線41A及び下側偏心軸31の中心軸線31Aは一致しており、中心軸線41A及び中心軸線31Aは、基軸20の中心軸線20Aに対して偏心している。基軸20、上側偏心軸部40、及び下側偏心軸部30がヘッドパイプ部10に取り付けられているとき、中心軸線20Aはステム軸線10Aに一致し、中心軸線41A及び中心軸線31Aはステアリング軸線4Aに一致する。つまり、ステアリング軸線4Aの位置が、ステム軸線10Aの位置とは異なっている。また、回り止め部300及び400により、ステム軸線10A周りの基軸20の回転が制止されている。このため、本実施形態は、ヘッドパイプ部10において貫通孔(上ボス部11及び下ボス部12)の形成位置を変更することなく、ハンドル4の旋回中心位置(ステアリング軸線4A)を変更できる。
【0041】
下側偏心軸部30が基軸20と一体に形成されており、上側偏心軸部40が基軸20に対して着脱可能に形成されている。また、本実施形態は、上側偏心軸部40と基軸20とを固定する固定機構(ボルト穴25、貫通孔44、及びボルト70)を備えている。このため、本実施形態は、ヘッドパイプ部10に対して、基軸20、上側偏心軸部40、及び下側偏心軸部30を着脱可能としながら、基軸20、上側偏心軸部40、及び下側偏心軸部30が個別に形成される場合と比べて、部品点数の増大や強度の低下を抑制できる。
【0042】
特に、2つの偏心軸部のうち、路面に近い下側偏心軸部30が、基軸20と一体に形成されている。走行時に自動二輪車1が路面から受ける荷重は、前輪6及びフロントフォーク部材5から、アッパーブラケット8よりもアンダーブラケット9を経由して、ヘッドパイプ部10に伝達される。つまり、下側偏心軸部30と基軸20との連結部には、上側偏心軸部40と基軸20との連結部よりも、大きな荷重が加わる。このため、本実施形態は、荷重の掛かる部位の剛性を、一体化によって比較的容易に得ることができる。
【0043】
固定機構は、位置決め部(ピン26及びピン穴45)を備えている。このため、本実施形態は、着脱可能に構成された上側偏心軸部40が基軸20に対してずれることを防止できる。
【0044】
特に、位置決め部は、ピン26及びピン穴45からなっている。このため、本実施形態は、簡易な構成により、上側偏心軸部40を基軸20に対して位置決めできる。
【0045】
下側回り止め部300は、ヘッドパイプ部10に形成される突起15を車幅方向両側から挟み込む挟持部33を備えている。このため、本実施形態は、回り止めのために必要なヘッドパイプ部10の形状を簡単化できる。
【0046】
下側回り止め部300は、当接ボルト72及び当接ボルトの位置を調整する調整機構(ボルト孔33b及び当接ボルト72に形成される雄ネジ)を備えている。このため、ヘッドパイプ部10の加工精度が低い場合であっても、所望の位置において基軸20の回り止めを実現できる。
【0047】
(変形例)
本実施形態は、次の変形構成を採用できる。
【0048】
ヘッドパイプ部10に対してステム200を着脱可能とするために、上側偏心軸部40及び下側偏心軸部30の少なくとも一方が、基軸20に対して着脱可能であればよい。本実施形態では、基軸20及び下側偏心軸部30が一体化され、上側偏心軸部40は基軸20に対して着脱可能である。これに代えて、基軸20及び上側偏心軸部40が一体化され、下側偏心軸部30が基軸20に対して着脱可能であってもよい。
【0049】
本実施形態は、下側回り止め部300及び上側回り止め部400を備えているが、少なくとも1つの回り止め部を備えていればよい。
【0050】
回り止め部として、ヘッドパイプ部10とステム200との間に、一方の突起と他方の凹部を有する挟持部との組み合わせを採用できる。本実施形態では、ヘッドパイプ部10に突起が形成され、
下側偏心軸部
30に挟持部33が形成されている。これに代えて、ヘッドパイプ部10に挟持部が形成され、
下側偏心軸部
30に突起が形成されてもよい。
【0051】
基軸20をヘッドパイプ部10の上ボス部10及び下ボス部20内に支持するスペーサー13及び14は、ベアリングに限定されない。また、スペーサーを設ける代わりに、上ボス部10及び下ボス部20の内径に等しくなるように基軸20の外径を設計しても良い。
【0052】
本実施形態では、下側カラー53及び上側カラー63は、共に、同心カラーである。同心カラーにおいて、カラーの内周面の中心は、カラーの外周面の中心に一致している。ここで、下側カラー53には、アンダー
ブラケット9を支持するベアリング51、52に接触する内周面と、アンダーブラケット9の内周面に接触する外周面とが形成されている。上側カラー63にも、同様に、内周面及び外周面が形成されている。下側カラー53及び上側カラー63に、同心カラーではなく偏心カラーを採用することも可能である。偏心カラーにおいて、カラーの内周面の中心は、カラーの外周面の中心に対して偏心している。この場合、フロントフォーク部材5の位置が、基軸20に対して水平面内で変更される。このため、前輪6の位置を、メインフレーム2に対して前後方向で調整できる。