(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5681552
(24)【登録日】2015年1月16日
    
      
        (45)【発行日】2015年3月11日
      
    (54)【発明の名称】インプリントモールドの製造方法及びインプリントモールド
(51)【国際特許分類】
   B29C  33/38        20060101AFI20150219BHJP        
   B29C  59/02        20060101ALI20150219BHJP        
   H01L  21/027       20060101ALI20150219BHJP        
【FI】
   B29C33/38ZNM
   B29C59/02 B
   H01L21/30 502D
【請求項の数】11
【全頁数】13
      (21)【出願番号】特願2011-91034(P2011-91034)
(22)【出願日】2011年4月15日
    
      (65)【公開番号】特開2012-223909(P2012-223909A)
(43)【公開日】2012年11月15日
    【審査請求日】2013年12月13日
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
          (74)【代理人】
【識別番号】100102783
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎  高明
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】宗像  浩次
              
            
        
      
    
      【審査官】
        池ノ谷  秀行
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          特表2009−523312(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2004−071587(JP,A)      
        
        【文献】
          特開平03−100942(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2005−161667(JP,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C    33/00−33/76        
B29C    59/00−59/18
H01L    21/027      
        
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  基板上に、第1の凹部を有する第1の樹脂層を形成する工程と、
  前記第1の樹脂層上に前記第1の凹部を埋めるように第2の樹脂層を形成する工程と、
  前記第2の樹脂層の前記第1の樹脂層上の一部を選択的に除去して第2の凹部を形成するとともに、前記第1の凹部を埋めた前記第2の樹脂層の少なくとも一部を選択的に除去して前記基板の表面を露出しないように前記第2の凹部に連続して設けられる前記第2の凹部よりも深い第3の凹部を形成する工程と、
  前記第2の凹部及び前記第3の凹部に金属材料を充填する工程と、
  前記第1の樹脂層、前記第2の樹脂層及び前記基板を除去する工程
  とを含むことを特徴とするインプリントモールドの製造方法。
【請求項2】
  前記第1の樹脂層を形成する工程の前に、前記基板上に剥離層を形成する工程を更に含み、
  前記第1の樹脂層を形成する工程は、前記剥離層の表面の一部が露出するように前記第1の凹部を形成し、
  前記第3の凹部を形成する工程は、前記剥離層の表面の一部が露出するように前記第3の凹部を形成し、
  前記第1の樹脂層、前記第2の樹脂層及び前記基板を除去する工程は、前記剥離層を更に除去する
  ことを特徴とする請求項1に記載のインプリントモールドの製造方法。
【請求項3】
  前記第1の樹脂層を形成する工程は、前記基板の表面の一部が露出するように前記第1の凹部を形成し、
  前記第3の凹部を形成する工程は、前記基板の表面が露出しないように前記第1の凹部を埋めた前記第2の樹脂層の一部を残して前記第3の凹部を形成する
  ことを特徴とする請求項1に記載のインプリントモールドの製造方法。
【請求項4】
  前記第1の樹脂層を形成する工程は、前記基板の表面が露出しないように前記第1の樹脂層の一部を残して前記第1の凹部を形成し、
  前記第3の凹部を形成する工程は、前記第1の樹脂層の表面の一部が露出するように前記第3の凹部を形成する
  ことを特徴とする請求項1に記載のインプリントモールドの製造方法。
【請求項5】
  前記第1の凹部を有する前記第1の樹脂層を形成する工程は、
  前記基板上に前記第1の樹脂層を形成し、
  フォトリソグラフィ技術を用いて前記第1の樹脂層の一部を選択的に除去して前記第1の凹部を形成する
  ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインプリントモールドの製造方法。
【請求項6】
  前記第1の凹部を有する前記第1の樹脂層を形成する工程は、前記基板上に前記第1の凹部を有する前記第1の樹脂層を印刷することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインプリントモールドの製造方法。
【請求項7】
  前記金属材料を充填する工程は、
  前記第2の凹部及び前記第3の凹部上に金属薄膜を形成し、
  前記金属薄膜を給電層としてめっきにより金属材料を充填する
  ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインプリントモールドの製造方法。
【請求項8】
  前記金属材料を充填する工程は、導電性ペーストを印刷により充填することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のインプリントモールドの製造方法。
【請求項9】
  前記第1の樹脂層、前記第2の樹脂層及び前記基板を除去する工程は、共通の剥離液を用いて前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層を剥離することを特徴とする請求項1、3及び4のいずれか1項に記載のインプリントモールドの製造方法。
【請求項10】
  前記第1の樹脂層、前記第2の樹脂層及び前記基板を除去する工程は、共通の剥離液を用いて前記第1の樹脂層、前記第2の樹脂層及び前記剥離層を剥離することを特徴とする請求項2に記載のインプリントモールドの製造方法。
【請求項11】
  請求項7に記載の製造方法により製造されたインプリントモールドであって、
  第1の凸部と、
  前記第1の凸部上に設けられた第2の凸部と、
  前記第1の凸部及び前記第2の凸部の表面に設けられた金属薄膜
  とを備えることを特徴とするインプリントモールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、電子部品を実装するための配線板に配線パターンを形成するためのインプリントモールドの製造方法及びインプリントモールドに関する。
 
【背景技術】
【0002】
  電子機器の小型化、薄型化及び高機能化に伴って、電子機器に組み込まれる電子部品も小型化が進み、電子部品を実装する配線板(プリント配線板)のパターンも微細化されてきている。
【0003】
  転写によるパターン形成方法として、ナノインプリント(NIL)等のインプリント法、射出成形又はホットエンボス等がある。射出成形やホットエンボスでは樹脂が厚いためモールドに加えられた力は樹脂にのみ伝わる。一方、NILではステージ上に通常数十nm〜数μmの厚さの樹脂を載置し、樹脂にインプリントモールドを押し付けるため、ほとんどモールドとステージが接触した状態(換言すると、樹脂をモールドがほとんど貫いた状態、又は樹脂が薄く残った状態)になる。このように薄い樹脂に転写する点でNILは他の形成方法に比べて技術難易度が高いと言える。
【0004】
  インプリント法において、多層構造(多段形状)のモールドを用いた場合、多層構造のパターンを一括で樹脂に転写することができる。このため、層間のパターンの位置合わせが不要であり、かつ作製された多層構造の配線板において層間の材料の接合面が無くなることから、歩留り及び信頼性が向上することが期待される。また、単層構造のモールドを用いた場合に必要な複数の工程が一度で済むため、低コスト化にも寄与する。
【0005】
  多層構造のモールドとしては、基板上に2種類以上の材料を全面に成膜し、エッチングで凸部を形成することで2層以上積層したモールドを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、基板材料を複数回エッチング加工することにより多層構造のモールドを製造する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
 
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−71587号公報
【特許文献2】特開2009−72956号公報
 
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
  しかしながら、特許文献1に記載の手法では、凸部を厚く(例えば10μm程度)かつ矩形に近い形状にしたい場合、ドライエッチングをする必要がある。その場合、材料が限られ、厚く成膜するにはコストと精度が問題となる。
【0008】
  一方、特許文献2に記載の手法では、基板材料に対して深堀エッチング(例えば10μm程度)をすると加工面の粗さが増大し、また複数回のエッチングが行われる加工面は特に粗さが増大する。  
  上記問題点を鑑み、本発明の目的は、容易且つ安価に多層構造の凸部の表面を平滑化することができるインプリントモールドの製造方法及びインプリントモールドを提供することである。
 
【課題を解決するための手段】
【0009】
  本発明の一態様によれば、基板上に、第1の凹部を有する第1の樹脂層を形成する工程と、第1の樹脂層上に第1の凹部を埋めるように第2の樹脂層を形成する工程と、第2の樹脂層の第1の樹脂層上の一部を選択的に除去して第2の凹部を形成するとともに、第1の凹部を埋めた第2の樹脂層の少なくとも一部を選択的に除去して基板の表面を露出しないように第2の凹部に連通する第3の凹部を形成する工程と、第2の凹部及び第3の凹部に金属材料を充填する工程と、第1の樹脂層、第2の樹脂層及び基板を除去する工程とを含むインプリントモールドの製造方法が提供される。
【0010】
  本発明の一態様において、第1の樹脂層を形成する工程の前に、基板上に剥離層を形成する工程を更に含み、第1の樹脂層を形成する工程は、剥離層の表面の一部が露出するように第1の凹部を形成し、第3の凹部を形成する工程は、剥離層の表面の一部が露出するように第3の凹部を形成し、第1の樹脂層、第2の樹脂層及び基板を除去する工程は、剥離層を更に除去してもよい。
【0011】
  本発明の一態様において、第1の樹脂層を形成する工程は、基板の表面の一部が露出するように第1の凹部を形成し、第3の凹部を形成する工程は、基板の表面が露出しないように第1の凹部を埋めた第2の樹脂層の一部を残して第3の凹部を形成してもよい。
【0012】
  本発明の一態様において、第1の樹脂層を形成する工程は、基板の表面が露出しないように第1の樹脂層の一部を残して第1の凹部を形成し、第3の凹部を形成する工程は、第1の樹脂層の表面の一部が露出するように第3の凹部を形成しても良い。
【0013】
  本発明の一態様において、第1の凹部を有する第1の樹脂層を形成する工程は、基板上に第1の樹脂層を形成し、フォトリソグラフィ技術を用いて第1の樹脂層の一部を選択的に除去して第1の凹部を形成しても良い。
【0014】
  本発明の一態様において、第1の凹部を有する第1の樹脂層を形成する工程は、基板上に第1の凹部を有する第1の樹脂層を印刷しても良い。
【0015】
  本発明の一態様において、金属材料を充填する工程は、第2の凹部及び第3の凹部上に金属薄膜を形成し、金属薄膜を給電層としてめっきにより金属材料を充填しても良い。
【0016】
  本発明の一態様において、金属材料を充填する工程は、導電性ペーストを印刷により充填しても良い。
【0017】
  本発明の一態様において、第1の樹脂層、第2の樹脂層及び基板を除去する工程は、共通の剥離液を用いて第1の樹脂層及び第2の樹脂層を剥離しても良い。
【0018】
  本発明の一態様において、第1の樹脂層、第2の樹脂層及び基板を除去する工程は、共通の剥離液を用いて第1の樹脂層、第2の樹脂層及び剥離層を剥離しても良い。
【0019】
  本発明の他の態様によれば、本発明の一態様に係る製造方法により製造されたインプリントモールドであって、第1の凸部と、第1の凸部上に設けられた第2の凸部と、第1の凸部及び第2の凸部の表面に設けられた金属薄膜とを備えるインプリントモールドが提供される。
 
【発明の効果】
【0020】
  本発明によれば、容易且つ安価に多層構造の凸部の表面を平滑化することができるインプリントモールドの製造方法及びインプリントモールドを提供することができる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの一例を示す断面図である。
 
【
図2】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
 
【
図3】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造方法の一例を説明するための
図2に引き続く工程断面図である。
 
【
図4】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造方法の一例を説明するための
図3に引き続く工程断面図である。
 
【
図5】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造方法の一例を説明するための
図4に引き続く工程断面図である。
 
【
図6】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造方法の一例を説明するための
図5に引き続く工程断面図である。
 
【
図7】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造方法の一例を説明するための
図6に引き続く工程断面図である。
 
【
図8】本発明の実施の形態に係るインプリントモールドの製造方法の一例を説明するための
図7に引き続く工程断面図である。
 
【
図9】本発明の実施の形態の第1の変形例に係るインプリントモールドの製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
 
【
図10】本発明の実施の形態の第1の変形例に係るインプリントモールドの製造方法の一例を説明するための
図9に引き続く工程断面図である。
 
【
図11】本発明の実施の形態の第1の変形例に係るインプリントモールドの製造方法の一例を説明するための
図10に引き続く工程断面図である。
 
【
図12】本発明の実施の形態の第1の変形例に係るインプリントモールドの製造方法の一例を説明するための
図11に引き続く工程断面図である。
 
【
図13】本発明の実施の形態の第1の変形例に係るインプリントモールドの製造方法の一例を説明するための
図12に引き続く工程断面図である。
 
【
図14】本発明の実施の形態の第2の変形例に係るインプリントモールドの製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
 
【
図15】本発明の実施の形態の第2の変形例に係るインプリントモールドの製造方法の一例を説明するための
図14に引き続く工程断面図である。
 
【
図16】本発明の実施の形態の第2の変形例に係るインプリントモールドの製造方法の一例を説明するための
図15に引き続く工程断面図である。
 
【
図17】本発明の実施の形態の第2の変形例に係るインプリントモールドの製造方法の一例を説明するための
図16に引き続く工程断面図である。
 
【
図18】本発明の実施の形態の第2の変形例に係るインプリントモールドの製造方法の一例を説明するための
図17に引き続く工程断面図である。
 
【
図19】本発明の実施の形態の第3の変形例に係るインプリントモールドの製造方法の一例を説明するための工程断面図である。
 
【
図20】本発明の実施の形態の第3の変形例に係るインプリントモールドの製造方法の一例を説明するための
図19に引き続く工程断面図である。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0022】
  次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
 
【0023】
  また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
 
【0024】
<インプリントモールドの構造>
  本発明の実施の形態に係るインプリントモールド(以下、単に「モールド」という。)は、
図1に示すように、支持部10と、支持部10上に設けられた第1の凸部11a〜11eと、第1の凸部11a,11d,11e上に設けられた第2の凸部12a〜12cと、支持部10、第1の凸部11a〜11e及び第2の凸部12a〜12cの表面に設けられた金属薄膜5とを備える。
 
【0025】
  第1の凸部11a〜11e及び第2の凸部12a〜12cは、樹脂層に圧入して凹部を形成し、凹部に金属材料を充填して配線パターン及びビアパターンをそれぞれ形成するためのパターンである。第1の凸部11a〜11eの高さは1〜10μm程度、第2の凸部12a〜12cの高さは5〜50μm程度、直径10〜50μm程度である。支持部10、第1の凸部11a〜11e及び第2の凸部12a〜12cは、界面なく一体として形成されている。第1の凸部11a〜11e及び第2の凸部12a〜12cの高さ、形状、数、位置等は特に限定されない。
 
【0026】
  支持部10、第1の凸部11a〜11e及び第2の凸部12a〜12cの材料としては、銅(Cu)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)又は銀(Ag)等が使用可能である。
 
【0027】
  金属薄膜5の厚さは10〜500nm程度である。金属薄膜5の材料としては、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、チタンタングステン(TiW)又は銅(Cu)等が使用可能である。
 
【0028】
  本発明の実施の形態に係るモールドによれば、第1の凸部11a〜11e及び第2の凸部12a〜12cの多層のパターンを金属薄膜5を介して樹脂層に一括して転写することができる。更に金属薄膜5が平滑な表面を有するので、平滑なパターンを樹脂層に転写することができる。
 
【0029】
<モールドの製造方法>
  次に、本発明の実施の形態に係るモールドの製造方法の一例を、
図2〜
図8を用いて説明する。
 
【0030】
  (イ)
図2に示すように、シリコン(Si)等の基板1を用意する。基板1上に、スピンコート法、キャスティング法又はディスペンス法等により、1〜5μm程度の剥離層2を塗布する。剥離層2がフィルム状の場合はラミネートしても良い。剥離層2としては、感光性樹脂でもよく、剥離液に可溶であれば感光性樹脂以外の樹脂であっても良い。剥離層2がネガ型レジストの場合、次工程の現像時に溶出しないように全面露光を行う。
 
【0031】
  (ロ)
図3に示すように、スピンコート法、キャスティング法又はディスペンス法等により、基板1上に第1の樹脂層3を塗付する。フォトリソグラフィ技術を用いて露光及び現像することにより、第1の樹脂層3の一部を選択的に除去してパターニングする。この結果、
図4に示すように、剥離層2の表面の一部が露出するように第1の凹部3a〜3cが形成される。なお、フォトリソグラフィ技術を用いる代わりに、スクリーン印刷等により基板1上に第1の凹部3a〜3cを有する第1の樹脂層3を形成しても良い。
 
【0032】
  (ハ)
図5に示すように、スピンコート法、キャスティング法又はディスペンス法等により、第1の樹脂層3上に第1の凹部3a〜3cを埋めるように第2の樹脂層4を塗布する。
図1に示した第1の凸部11a〜11eとして微細配線が求められる場合、第2の樹脂層4としては一般にネガ型レジストより高い解像度を有するポジ型レジストを用いることが好ましい。
 
【0033】
  (ニ)フォトリソグラフィ技術を用いて露光及び現像することにより、第2の樹脂層4の第1の樹脂層3上の一部を選択的に除去してパターニングし、
図6に示すように第2の凹部4a〜4eが形成される。この時、第1の凹部3a〜3cを埋めた第2の樹脂層4が除去されることで、剥離層2の表面の一部が露出するように第2の凹部4a,4d,4eに連通する第3の凹部4f,4g,4hが形成される。なお、フォトリソグラフィ技術を用いる代わりに、スクリーン印刷等により第1の凹部が形成された樹脂層3上に第2の凹部4a〜4eを有する第2の樹脂層4を形成しても良い。
 
【0034】
  (ホ)
図7に示すように、スパッタ法又は無電解めっき法等により、第2の凹部4a〜4e及び第3の凹部4f,4g,4h上にクロム(Cr)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、チタンタングステン(TiW)又は銅(Cu)等からなる金属薄膜(シード層)5を10〜500nm程度で堆積する。
 
【0035】
  (ヘ)
図8に示すように、金属箔膜5を給電層とする電解めっき、無電解めっき等により、第2の凹部4a〜4e及び第3の凹部4f,4g,4hに銅(Cu)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)又は銀(Ag)等の金属材料を充填する。この結果、第2の凹部4a〜4eの反転パターンである第1の凸部11a〜11e、第3の凹部4f〜4hの反転パターンである第2の凸部12a〜12c、及び第1の凸部11a〜11e上に位置する支持部10が形成される。その後、必要に応じて、支持部10の基板1側の面と反対の面を研磨等により平滑化してもよい。なお、金属材料の充填条件を制御して、支持部10を設けなくても良い。この場合、粘着シート等により第1の凸部11a〜11e及び第2の凸部12a〜12cを支持することができる。
 
【0036】
  (ト)引き続き、剥離層2、第1の樹脂層3及び第2の樹脂層4を、水酸化ナトリウム水溶液等の剥離液を用いて剥離する。剥離液としては、剥離層2、第1の樹脂層3及び第2の樹脂層4に共通の剥離液を用いることが一括して剥離できるため好ましい。この結果、物理的な力を加えずに、金属薄膜5の表面に物理的損傷を与えることなく、剥離層2、第1の樹脂層3、第2の樹脂層4及び基板1を
図1に示すように除去することができる。
 
【0037】
  本発明の実施の形態に係るモールドの製造方法によれば、エッチングで加工することなくフォトリソグラフィ技術等を用いて多層構造のモールドを実現可能となる。モールドの金属薄膜5の表面の粗さは現像後のレジスト表面の粗さと同等であるので、エッチングを行う場合に比してモールドの表面の粗さを低減し、平滑化することができる。
 
【0038】
  更に、第1の凸部11a〜11e及び第2の凸部12a〜12cの高さは第1の樹脂層3及び第2の樹脂層4の厚さと同等であるので、基板1に対して深堀エッチングをする場合に比して容易に且つ低コストで凸部を高くすることができる。
 
【0039】
(第1の変形例)
  本発明の実施の形態の第1の変形例として、モールドの製造方法の他の一例を、
図9〜
図13を用いて説明する。
 
【0040】
  (イ)
図9に示すように、スピンコート法、キャスティング法又はディスペンス法等により、基板1上に第1の樹脂層3を形成する。フォトリソグラフィ技術を用いて露光及び現像することにより、第1の樹脂層3の一部を選択的に除去してパターニングする。この結果、
図10に示すように、基板1の表面の一部が露出するように第1の凹部3a〜3cが形成される。なお、フォトリソグラフィ技術を用いる代わりに、スクリーン印刷等により基板1上に第1の凹部3a〜3cを有する第1の樹脂層3を形成しても良い。
 
【0041】
  (ロ)
図11に示すように、スピンコート法、キャスティング法又はディスペンス法等により、第1の樹脂層3上に第1の凹部3a〜3cを埋めるように第2の樹脂層4を塗布する。フォトリソグラフィ技術を用いて露光及び現像することにより、第2の樹脂層4の第1の樹脂層3上の一部を選択的に除去してパターニングし、
図12に示すように、第2の凹部4a〜4eを形成する。これと同時に、第1の凹部3a〜3cを埋めた第2の樹脂層4の一部を選択的に除去して第3の凹部4f,4g,4hを形成する。このとき、露光量、現像時間及び現像温度等を制御することにより、第1の凹部3a〜3cを埋めた第2の樹脂層4の一部を基板1の表面が露出しないように残して第3の凹部4f,4g,4hを形成する。なお、フォトリソグラフィ技術を用いる代わりに、スクリーン印刷等により第1の凹部3a〜3cが形成された第1の樹脂層3に第2の凹部4a〜4e及び4f〜4hを有する第2の樹脂層4を形成しても良い。
 
【0042】
  (ハ)
図13に示すように、スパッタ法又は無電解めっき法等により、第2の凹部4a〜4e及び第3の凹部4f,4g,4h上に金属薄膜5を形成する。その後の工程は、本発明の実施の形態と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
 
【0043】
  本発明の実施の形態の第1の変形例に係るモールドの製造方法によれば、剥離層2を用いずに平滑な表面の金属薄膜5を有する多段構造のモールドを製造可能となる。
 
【0044】
(第2の変形例)
  本発明の実施の形態の第2の変形例として、モールドの製造方法の更に他の一例を、
図14〜
図18を用いて説明する。
 
【0045】
  (イ)
図14に示すように、スピンコート法、キャスティング法又はディスペンス法等により、基板1上に第1の樹脂層3を形成する。フォトリソグラフィ技術を用いて露光及び現像することにより、第1の樹脂層3の一部を選択的に除去してパターニングし、
図15に示すように、第1の凹部3a〜3cを形成する。このとき、露光量、現像時間及び現像温度等を制御することにより、基板1の表面が露出しないように第1の凹部3a〜3cの底部に第1の樹脂層3の一部が残るように第1の凹部3a〜3cを形成する。
 
【0046】
  (ロ)
図16に示すように、スピンコート法、キャスティング法又はディスペンス法等により、第1の凹部3a〜3cを埋めるように第2の樹脂層4を形成する。フォトリソグラフィ技術を用いて露光及び現像することにより、第2の樹脂層4の第1の樹脂層3上の一部を選択的に除去してパターニングし、
図17に示すように、第2の凹部4a〜4eを形成する。これと同時に、第1の凹部3a〜3cを埋めた第2の樹脂層4の一部を選択的に除去してパターニングする。この結果、第1の樹脂層3の表面の一部が露出するように第3の凹部4f,4g,4hが形成される。なお、フォトリソグラフィ技術を用いる代わりに、スクリーン印刷等により第1の凹部3a〜3cが形成された第1の樹脂層3に第2の凹部4a〜4eを有する第2の樹脂層4を形成しても良い。
 
【0047】
  (ハ)
図18に示すように、スパッタ法又は無電解めっき法等により、第2の凹部4a〜4e及び第3の凹部4f,4g,4h上に金属薄膜5を形成する。その後の工程は、本発明の実施の形態と実質的に同様であるので、重複した説明を省略する。
 
【0048】
  本発明の実施の形態の第2の変形例に係るモールドの製造方法によれば、剥離層2を用いずに平滑な表面の金属薄膜5を有する多段構造のモールドを製造可能となる。
 
【0049】
(第3の変形例)
  本発明の実施の形態の第3の変形例として、モールドの製造方法の更に他の一例を、
図19及び
図20を用いて説明する。
 
【0050】
  (イ)本発明の実施の形態と同様の工程を経て、
図6に示すように第3の凹部4f,4g,4hを形成する。その後、
図19に示すように、第2の凹部4a〜4e及び第3の凹部4f,4g,4hに、ニッケル(Ni)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、タングステン(W)、はんだ等の導電性ペーストを印刷により充填し、焼結する。この結果、第2の凹部4a〜4eの反転パターンである第1の凸部11a〜11e、第3の凹部4f〜4hの反転パターンである第2の凸部12a〜12c、及び第1の凸部11a〜11e上に位置する支持部10が形成される。なお、充填するペーストは導電性に限らない。
 
【0051】
  (ロ)
図20に示すように、剥離層2、第1の樹脂層3及び第2の樹脂層4を、水酸化ナトリウム水溶液等の剥離液を用いて剥離する。この結果、物理的な力を加えずに、剥離層2、第1の樹脂層3、第2の樹脂層4及び基板1を除去することができる。
 
【0052】
  本発明の実施の形態の第3の変形例によれば、第2の凹部4a〜4e及び第3の凹部4f,4g,4hにめっきの代わりに導電性ペーストを印刷により充填し焼結することにより、金属薄膜5のない平滑な表面の第1の凸部11a〜11e及び第2の凸部12a〜12cを有するモールドを製造可能となる。
 
【0053】
  なお、本発明の実施の形態の第1の変形例においても同様に、
図12に示した第2の凹部4a〜4e及び第3の凹部4f,4g,4hにめっきの代わりに導電性ペーストを印刷により充填し焼結することにより、金属薄膜5のない平滑な表面の第1の凸部11a〜11e及び第2の凸部12a〜12cを有するモールドを製造可能である。
 
【0054】
  なお、本発明の実施の形態の第2の変形例においても同様に、
図17に示した第2の凹部4a〜4e及び第3の凹部4f,4g,4hにめっきの代わりに導電性ペーストを印刷により充填し焼結することにより、金属薄膜5のない平滑な表面の第1の凸部11a〜11e及び第2の凸部12a〜12cを有するモールドを製造可能である。
 
【0055】
(その他の実施の形態)
  上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
 
【0056】
  例えば、本発明の実施の形態において
図1に示すように第1の凸部11a〜11e及び第2の凸部12a〜12cを有する2層構造のモールドの製造方法を説明したが、
図5及び
図6に示すように樹脂層の塗布及びフォトリソグラフィ技術を用いたパターニングを繰り返すことにより、3層構造以上の多層構造のモールドを製造することもできる。
 
【0057】
  また、本発明の実施の形態に係るモールドの製造方法は、単層構造のモールドの製造方法にも適用できる。例えば、本発明の実施の形態と同様の工程を経て、
図4に示すように第1の凹部3a〜3cを形成した後、第1の凹部3a〜3cに金属薄膜を形成し、その金属薄膜を給電層としてめっきにより第1の凹部3a〜3cに金属材料を充填する。その後、剥離層2及び第1の樹脂層3を剥離することにより、単層構造のモールドを製造することが可能である。
 
【0058】
  また、本発明の実施の形態の第2の変形例と同様の工程を経て、
図15に示すように第1の凹部3a〜3cを形成した後、第1の凹部3a〜3cに金属薄膜を形成し、その金属薄膜を給電層としてめっきにより第1の凹部3a〜3cに金属材料を充填する。その後、第1の樹脂層3を剥離することにより、単層構造のモールドを製造することが可能である。
 
【0059】
  このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
 
 
【符号の説明】
【0060】
  1…基板
  2…剥離層
  3…第1の樹脂層
  3a〜3c…第1の凹部
  4…第2の樹脂層
  4a〜4e…第2の凹部
  4f〜4h…第3の凹部
  5…金属薄膜
  10…支持部
  11a〜11e…第1の凸部
  12a〜12c…第2の凸部