特許第5681806号(P5681806)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5681806あらかじめ形成された胃バンドおよび使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5681806
(24)【登録日】2015年1月16日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】あらかじめ形成された胃バンドおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20150219BHJP
【FI】
   A61B17/00 320
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-536927(P2013-536927)
(86)(22)【出願日】2011年11月1日
(65)【公表番号】特表2014-500052(P2014-500052A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】US2011058787
(87)【国際公開番号】WO2012061386
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2013年7月2日
(31)【優先権主張番号】61/408,743
(32)【優先日】2010年11月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595033056
【氏名又は名称】ザ クリーブランド クリニック ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】The Cleveland ClinicFoundation
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】スカー,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ブレザー,ステイシー
(72)【発明者】
【氏名】チャンド,ビパン
(72)【発明者】
【氏名】タラリコ,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】マウスタラ,ファディ
【審査官】 毛利 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0157107(US,A1)
【文献】 特表2003−532489(JP,A)
【文献】 特表2010−527707(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/090334(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0260316(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/065654(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の副側部および第2の副側部と、第1の主側部および第2の主側部と、によって画定される、対向して配置された第1の主面および第2の主面を含み、前記第1の主面が下側のカラー部と上側のバンド部とを含む、可撓性を有する支持体と、
前記上側のバンド部に固着され、前記支持体の前記第1の副側部と前記第2の副側部との間に延在する複数の可撓性を有するバンド部材と、を備え、
前記バンド部材は各々、第1の端および第2の端を含み、前記第1の端および前記第2の端は、当該第1の端と第2の端とを連結するための取付機構を有し、前記バンド部材同士は、スペース領域によって互いに分離されており、
前記上側のバンド部は、前記下側のカラー部と前記第1の主側部の間に配置され、前記下側のカラー部は、前記上側のバンド部から前記第2の主側部に延在し、
前記バンド部はすべて、前記下側のカラー部にはない、あらかじめ形成された胃バンド。
【請求項2】
前記支持体は、
非生体吸収性層と、
生体吸収性層と、をさらに含む、請求項1に記載のあらかじめ形成された胃バンド。
【請求項3】
前記支持体の前記スペース領域は、前記第1の副側部と前記第2の副側部との間に延在するミシン目を含む、請求項1に記載のあらかじめ形成された胃バンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は主に、あらかじめ形成された胃バンドに関し、特に、胃バイパス術後の胃嚢の拡張を予防または低減するための、あらかじめ形成された胃バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
病的肥満は、重大な医学的状態である。病的肥満には、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患、脳卒中、鬱血性心不全、さまざまな整形外科的障害、寿命が著しく短くなる肺動脈弁閉鎖不全症などが合併症として付随する。この点を考慮すると、病的肥満に付随する金銭的および物理的なコストは相当なものである。実際、肥満に関連したコストは、米国だけでも1000億ドルを超えると推定される。
【0003】
肥満を治療するために、多岐にわたる術式が開発されてきた。現在行われている最も一般的な術式は、ルーワイ胃バイパスである。この術式は極めて複雑で、通常は、病的肥満が認められる人々の治療に用いられている。減量手術の他の形態として、フォビパウチ術、胆膵路変更術、胃形成すなわち「ストマックステープリング」があげられる。また、胃での食物の通り道を制限して満腹感に作用する、体内装着可能な器具が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの術式には多くの利点があるにもかかわらず、依然として欠点が残っている。たとえば、こうした術式で作られた胃嚢は、時間が経過すると拡張し、それによって体重を元に戻してしまう可能性があることがわかっている。このような患者では、胃嚢の拡張を予防または低減する目的で、外科医がシラスティックバンドを作り、これを胃嚢に巻きつける「バンディングを併用するバイパス」術を行う。しかしながら、外科医が手術室でバンドを作らなければならず、それには30分、あるいはそれ以上も要することがあるため、このプロセスは煩雑である。それに、このようなバンドは、一旦装着されると、破損した場合に、あらためて侵襲的な手術が必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は主に、あらかじめ形成された胃バンドに関し、特に、胃バイパス手術後の胃嚢の拡張を予防または低減するための、あらかじめ形成された胃バンドに関する。本発明の一態様は、可撓性を有する支持体と複数のバンド部材とを備える、あらかじめ形成された胃バンドを含む。可撓性を有する支持体は、第1の副側部および第2の副側部と、第1の主側部および第2の主側部と、によって画定される、対向して配置された第1の主面および第2の主面を含む。第1の主面は、下側のカラー部と上側のバンド部とを含む。複数の可撓性を有するバンド部材は、上側のバンド部に固着され、支持体の第1の副側部と第2の副側部との間に延在する。バンド部材は各々、第1の端および第2の端を含む。この第1の端および第2の端は、第1の端と第2の端とを連結するための取付機構を有する。バンド部材同士は、スペース領域によって互いに分離されている。
【0006】
本発明のもうひとつの態様では、被術者の胃嚢の膨張を制限するための方法が提供される。この胃嚢は、減量手術で形成され、吻合部を含む。この方法の一工程は、可撓性を有する支持体と、その表面に配置された複数のバンド部材と、を備える胃バンドを提供することを含む。可撓性を有する支持体は、第1の副側部および第2の副側部と、第1の主側部および第2の主側部と、によって画定される、対向して配置された第1の主面および第2の主面を含む。第1の主面は、下側のカラー部と上側のバンド部とを含む。複数の可撓性を有するバンド部材は、上側のバンド部に固着され、支持体の第1の副側部と第2の副側部との間に延在する。バンド部材は各々、第1の端および第2の端を含み、この第1の端および第2の端は、当該第1の端と第2の端とを連結するための取付機構を有する。バンド部材同士は、スペース領域によって互いに分離されている。胃嚢の寸法を求めた後、求めた胃嚢の寸法に基づいて、胃バンドの大きさを任意に加減してもよい。その後、胃バンドを胃嚢に固定する。この胃バンドは、胃嚢の拡張を予防または低減する。
【0007】
==関連出願==
本出願は、2010年11月1日にファイルされた米国仮特許出願第61/408,743号の優先権の利益を主張するものであり、その主題を本明細書に援用する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の上記の特徴および他の特徴は、添付の図面を参照してなされる以下の説明を読めば、本発明が関連する分野の当業者らにとって明らかになるであろう。
図1A】可撓性を有する支持体と、これに固着された複数の可撓性を有するバンド部材とを備え、本発明の一態様によって構成される、あらかじめ形成された胃バンドの(伸ばした状態での)斜視図である。
図1B図1Aに示す胃バンドを、この胃バンドの副側部側から見た側面図である。
図1C図1Bの胃バンドの別の構成を示す側面図である。
図1D図1Aの胃バンドを、筒状に丸めた状態で示す斜視図である。
図2A図1Aのバンド部材のうちの1つの係合していない取付機構を示す斜視図である。
図2B図2Aの取付機構を係合状態で示す斜視図である。
図2C図2Aの取付機構の別の構成を示す斜視図である。
図2D図2Cの取付機構を係合状態で示す斜視図である。
図2E図2Aの取付機構の別の構成を示す斜視図である。
図2F図2Eの取付機構を係合状態で示す斜視図である。
図2G図2Aの取付機構の別の構成を示す斜視図である。
図2H図2Gの取付機構を係合状態で示す斜視図である。
図3】正常な胃腸管(GI)の解剖学的形態を示す概略図である。
図4】ルーワイバイパス後のGIの解剖学的状態を示す概略図である。
図5図1Aの胃バンドを胃嚢の寸法に合わせた状態を示す概略図である。
図6図5の胃バンドを胃嚢に巻きつけた状態を示す示す概略図である。
図7】胃嚢に固定された図6の胃バンドを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は主に、あらかじめ形成された胃バンドに関し、特に、胃バイパス術後の胃嚢の拡張を予防または低減するための、あらかじめ形成された胃バンドに関する。図1A図1Dは、胃バイパス術後の胃嚢12(図4)の拡張を予防または低減するための、あらかじめ形成された胃バンド10を含む本発明の一態様を示す。バンディングを併用するバイパス術の途中で手術室(OR)で作らなければならない従来技術の胃バンドとは異なり、本発明では、容易にサイズ変更が可能で、すみやかに装着できる、あらかじめ形成された胃バンド10(図1A)を提供することによって、手術に必要な時間を短縮する。また、本発明のあらかじめ形成された胃バンド10は、胃バンドを交換する必要が生じた場合に、容易に取り出すことが可能である。このため、あとから侵襲的な手術をする必要がない。
【0010】
I.あらかじめ形成された胃バンド
本発明の一態様は、可撓性を有する支持体14と、これに固着された複数のバンド部材16とを備える、あらかじめ形成された胃バンド10を提供する。胃バンド10は、バンディングを併用するバイパス手術の前に形成される。バンディングを併用するバイパス手術は、すでに形成された胃嚢12(図4)に「バンドを巻きつけて」、後に胃嚢が拡張するのを予防または低減する術式である。胃バンド10(図1A)は、伸ばした状態(図1Aに示す)と筒状に丸めた状態(図1D)との間で変形可能である。上述したように、手術の前に胃バンド10を形成すると、手術室で外科医がそれぞれのバンドを新たに作る必要がなくなり重要な時間を節約できるため、利点がある。
【0011】
(a)可撓性を有する支持体14
本発明のもうひとつの態様では、あらかじめ形成された胃バンド10は、胃嚢12(図4)に取り付けるための可撓性を有する支持体14を備える。可撓性を有する支持体14(図1A)は、複数のバンド部材16を取り付けるためのプラットフォームとして機能する。また、支持体14は、支持体を実質的に胃嚢12(図4)の全体に巻きつけられるように、十分に可撓性すなわち柔軟である。支持体14は、図1A図1Dには略矩形で示されているが、支持体を胃嚢12(図4)の実質的に全体に巻きつけることができれば、支持体がどのような形状であっても構わないことは自明であろう。
【0012】
図1A図1Bに示すように、支持体14は、対向して配置された第1の主面18および第2の主面20を備える。第1の主面18および第2の主面20は、第1の副側部22および第2の副側部24と、第1の主側部26および第2の主側部28とによって画定されている。第1の副側部22および第2の副側部24は、支持体14の幅Wをほぼ画定し、第1の主側部26および第2の主側部28は、支持体の長さLをほぼ画定する。支持体14の実際の寸法は、個々の被術者の解剖構造に応じて変わることになるが、支持体の幅Wを約2cmから約8cmにすることができ、支持体の長さLを約4cmから約10cmにすることができる。本発明の一例では、支持体14の幅Wを約4cmにすることができ、長さLを約6.5cmにすることができる。
【0013】
支持体14の第1の主面18は、下側のカラー部30と、上側のバンド部32とを含む。上側のバンド部32は、複数のバンド部材16を収容し、これを固定するのに適するようにされている。下側のカラー部30は、上側のバンド部32を、胃バイパス術の一環で形成される吻合部34(図4)から守るよう構成される。図1Aに示すように、第1の主面18の外周面上のバンド部材16が存在しないすなわち欠如している部分が、支持体14の下側のカラー部30を画定する。上側のバンド部32と下側のカラー部30の寸法は、必要に応じて変更可能であり、必ずしも互いに等しいとはかぎらない。詳細については後述するように、胃バンド10を装着する前に上側のバンド部32および/または下側のカラー部30の大きさを変更(たとえば、切り取るなど)し、胃嚢12(図4)の解剖構造に合わせることが可能である。
【0014】
支持体14の全体または一部のみに、装着後の胃バンド10が遠位側に動いてしまうのを防止するための少なくとも1つの毛状突起(図示せず)をさらに含むことも可能である。この毛状突起は、支持体14の第2の主面20の外周面に配置可能であり、支持体と同一の材料で形成されても、異なる材料で形成されてもよい。また、毛状突起は、第2の主面20とは別のものとしてこれに取り付けられてもよいし、第2の主面20と一体に形成されてもよい。胃バンド10を被術者に装着すると、毛状突起は胃嚢12(図4)および/または吻合部34に接触し、支持体14が遠位側の吻合部84に向かって遠位方向に移動するのを防止することができる。
【0015】
支持体14(図1A)は、追加でまたは任意に、第1の副側部22と第2の副側部24との間に延在する少なくとも1本のミシン目(点線で示す)を含む。詳細については後述するように、ミシン目を用いると、胃バンド10の装着前に、(たとえば、切り取るか引っ張る力によって)支持体14の1つまたは2つ以上の規定部分を容易に取り除くことができる。たとえば、胃嚢12(図4)の実寸がわかった時点で、支持体14の幅Wを手術室内ですみやかに調節することができる。このように、支持体14に形成した1本以上のミシン目(図1A)によって、手術室内で胃バンド10を微調整するのに必要な時間と労力を削減することが可能である。
【0016】
支持体14の少なくとも一部は、生体吸収性材料および/または非生体吸収性材料で作られる。生体吸収性材料は、少なくとも一部が生体によって吸収され、たとえば、生体吸収性ポリマーまたはコポリマーの1種類または組み合わせがあげられる。生体吸収性ポリマーは、その分解によって生じる副生成物が、被術者の体内で自然な経路を介して生物同化または排泄されるポリマーを含むものであってもよい。材料の吸収速度または分解速度が、所望の時間(たとえば1年など)をかけて実質的にすべての材料が分解または吸収されるような対数的なものであっても構わないことは、自明であろう。生体吸収性ポリマーの例として、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトンまたはポリヒドロキシアルカノエートならびに、胃バンド10を装着予定の被術者から、別の人からあるいは、組織工学のプロセスで得られる、心膜組織、コラーゲンまたは他の生体材料または組織などの組織ベースの材料をあげることができる。非生体吸収性材料の例として、ポリプロピレン、ポリエチレン、テレフタラート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸PTFE(ePTFE)、ポリアリールエーテルケトン、ナイロン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリブタエステル(polybutester)、シリコーンおよび/またはこれらのコポリマーなどの非吸収性ポリマーをあげることができる。
【0017】
本発明の一例では、支持体14の少なくとも一部を、生体吸収性および/または非生体吸収性のメッシュで作製することが可能である。生体吸収性および/または非生体吸収性のメッシュは、互いに離れた複数の孔すなわち開口を有する目の粗い材料、布帛または構造体を含むものであってもよい。たとえば、支持体14は、非吸収性ePTFEメッシュで作製されてもよいし、あるいは、ポリグリコール酸:トリメチレンカーボネート繊維(たとえば、W.L. Gore & Associates, Flagstaff, AZから市販されているGORE BIO−Aなど)製の生体吸収性の合成メッシュで作製されてもよい。このメッシュは、組織内殖および/または生体吸収(すなわち、メッシュが生体吸収性材料からなる場合)を促進するために、少なくとも部分的に多孔性である。メッシュの孔の大きさは、胃バンド10の意図した構成に応じて、同一であっても、ばらついていてもよい。
【0018】
支持体14は、単層構成(図1A図1B)であっても多層構成(図1C)であってもよい。図1Cに示すように、たとえば、支持体14は、同一または異なる材料で作られた、互いに隣接する第1の層36および第2の層38を含むものであってもよい。たとえば、第1の層36が非生体吸収性材料からなるものであってもよく、第2の層38は生体吸収性材料からなるものであってもよい。あるいは、第1の層36を含む材料のほうが、第2の層38よりも吸収速度が遅くても構わない。また、第1の層36および第2の層38を形成するのにメッシュ材料を用いる場合、第1の層は、第2の層より孔の密度が高くてもよいし、あるいは、第1の層のほうが、第2の層より孔の大きさが小さくてもよい。
【0019】
(b)可撓性を有するバンド部材16
本発明のもうひとつの態様では、複数の可撓性バンド部材16が、支持体14の第1の主面18に固着されている。バンド部材16は、1つの取付具または複数の取付具(たとえば、縫い目、クリップ、接着剤など)(図示せず)の組み合わせを用いて、支持体14の第1の主面18に固定配置または装着可能である。あるいは、1本または2本以上のバンド部材16を、支持体14全体の中または支持体14の一部だけの中に配置することも可能である。バンド部材16は、胃嚢12(図4)に食物塊を通過させられるよう十分に可撓性または弾性であり、かつ、時間の経過とともに胃嚢が過剰に拡張し、不安定になるのを防げるだけの剛性を有する。
【0020】
図1A図1Dにはバンド部材16を3本しか示していないが、支持体14に何本のバンド部材を連結してもよいことは、自明であろう。詳細については後述するように、バンド部材16は、一度装着されると、胃嚢12(図4)の外周に十分な張力を提供する。実質的に均一な張力が長期にわたって確実に印加されるようにするために、胃バンド10の一部として2本または3本以上のバンド部材16(図1A)を含むようにして、これらのバンド部材のうちの1本が破損したり機能しなくなったときのために、支持機構を冗長化しておくと望ましいことがある。
【0021】
バンド部材16は各々、支持体14の第1の副側部22と第2の副側部24との間に延在し、シラスティック材料(たとえば、シリコーンなど)またはナイロン(たとえば、2mmのナイロン環など)といった可撓性かつ生物学的に不活性な材料で作製される。また、バンド部材16は各々、長さが、支持体14の長さLと実質的に等しい。バンド部材16は各々、スペース領域40によって互いに離れている。スペース領域40は、幅を約2mmから約7mmにすることができる。本発明の一例では、スペース領域40は、幅を約5mmにすることができる。各スペース領域40は、追加でまたは任意に、少なくとも1本のミシン目を含んでもよい。上述したように、ミシン目を設けることで、胃バンド10の装着前に、支持体14の1つまたは複数の規定部分を(たとえば、切り取るか引っ張る力によって)容易に取り除くことができるようになる。
【0022】
図2A図2Hを参照すると、バンド部材16は各々、第1の端42および第2の端44を含み、この第1および第2の端は、相互連結用の取付機構を含む。通常、取付機構は、第1の端42と第2の端44とをしっかり係合させることで各バンド部材16をリング状にする、オス/メスでの連結、摩擦係止による連結、圧入または磁石による連結のうちの1つまたは組み合わせを含み得る。図示はしていないが、バンド部材を何かで支えて開いたままにしておく必要が生じた場合に、近くにある構造体に穴をあけてしまう2つの別々の端ができてしまわないように、バンド部材16が各々、取付機構とは実質的に逆の破断点を含んでもよいことは自明であろう。図2A図2Hには多岐にわたる取付機構を図示するが、いずれも例示を意図したものにすぎず、本発明を限定するものではない。
【0023】
取付機構の一例を図1A図2Bに示す。取付機構は「ジップタイ」状に構成され、バンド部材16の第1の端42に配置された、複数の歯があり平らで可撓性を有する返し付き先端部46(図2A)を含む。返し付き先端部46は、剛性材料で作られても半剛性材料(たとえば、金属、金属合金またはプラスチックなど)で作られてもよく、バンド部材16自体と一体に形成されてもよいし、別に取り付けられても(たとえば、埋め込まれるなど)よい。バンド部材16の第2の端44は、返し付き先端部が挿入される開口部48を含み得る。図2Bに示すように、返し付き先端部46は、開口部48と嵌合してリング構造を形成可能である。得られるリング構造の直径は、返し付き先端部の歯50が開口部の外周に順次「係止」されて適所におさまるよう返し付き先端部46を開口部48に通して前進させることで、調節(たとえば縮径)可能である。
【0024】
取付機構のもうひとつの例を、図2C図2Dに示す。図2A図2Bの取付機構と同様に、バンド部材16の第1の端42は、複数の歯が設けられた平坦で可撓性を有する返し付き先端部46を含む。バンド部材16の第2の端44は、返し付き先端部46の全体または一部のみを挿入するのに合った形状の空洞部52を含む。図2Dに示すように、返し付き先端部46を空洞部52に挿入した後、歯50が空洞部内で適所に「係止」されるまで返し付き先端部を少しずつ前進させることで、取付機構によって形成されるリング構造を所望の直径に調節(たとえば縮小)することができる。
【0025】
取付機構のもうひとつの例を図2E図2Fに示す。この取付機構は、バンド部材16の第1の端42および第2の端44に(それぞれ)固定装着された第1のベルクロ部54および第2のベルクロ部56(図2E)を備える。ほとんどの使用者はベルクロで留めることに慣れており、ベルクロなら何段階にも調節が可能で製造も比較的容易であることから、ベルクロ部54および56を使用すると都合がよい。バンド部材16の外周面上の第1のベルクロ部54および第2のベルクロ部56の大きさと位置は、第1のベルクロ部と第2のベルクロ部とが互いに接した(図2F)ときに、第1の端42と第2の端44が互いに固定して留められるよう構成されている。第1のベルクロ部54および第2のベルクロ部56は、ナイロンなどの1種類または2種類以上の生体適合性材料で作製可能である。
【0026】
取付機構のもうひとつの例を図2G図2Fに示す。概して、この取付機構は、一般的な照明器具のプルスイッチに似た構成を持つものであればよい。たとえば、バンド部材16の第1の端42に受け部材58を含むことができ、バンド部材の第2の端44に、空間的に離れた複数の接続部材60を含むことができる。受け部材58および接続部材60は、バンド部材16と同一の材料で形成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。また、受け部材58および接続部材60は、バンド部材16自体に別のものとして取り付けられてもよいし、バンド部材と一体の部品として(たとえば成形されるなど)形成されてもよい。図2Hに示すように、受け部材58は、接続部材60のうちの1つと嵌合して、リング構造を形成可能である。受け部材58を接続部材60の別の1つと嵌合させることで、リング構造の直径を必要に応じて調節することができる。
【0027】
II.使用方法
胃バイパス術は通常、(1)(たとえば胃の有効容積を減らすなどして)食事摂取量減少効果を生み出すおよび/または(2)(たとえば腸バイパスの施術などによって)栄養吸収阻害効果を生み出すという2つの機序のうちの少なくとも1つによって体重減少を促すことを目的とする。本発明は、病的肥満患者の体重を減少させる多岐にわたる外科的な胃バイパス術の効果を高めるのに用いられる。たとえば、本発明には、ルーワイ胃バイパス(RYGB)、袖状胃切除術、十二指腸変更または胆膵路変更を伴う袖状胃切除術、垂直胃形成術(VBG)、バイパスを併用したVBG、Magenstrasse and Mill法、調節性胃バンディング、再建手術での用途があり得る。
【0028】
正常で自然のままの胃の解剖学的形態を、図3に示す。同図には、食道62、食道胃接合部64、胃66、幽門部68、十二指腸70、空腸72を示してある。上述したものなどの胃バイパス術では、胃バンディング以外、被術者の胃腸管の解剖学的形態を永久に変えている。
【0029】
本発明の一態様では、被術者の胃嚢12の拡張を抑えるための方法が提供される。上述したように、胃嚢12は、胃バイパス術の施術中に形成可能である。上述したいくつかの胃バイパス術に共通するように、胃嚢12が、(たとえば腸管部分74を有するなどの)吻合部34を含むこともある。本発明の一例では、胃嚢12は、腹腔鏡下RYGBの施術中に形成可能である。図4は、RYGB後の解剖学的状態を示し、これには食道62、食道胃接合部64、胃嚢12(neo-stomachと呼ばれることもある)、胃嚢のステープルまたは縫合線76、バイパスされた胃のステープルまたは縫合線78、バイパスされた胃80および幽門部68、十二指腸70、近位の吻合部34、Roux脚82、遠位の腸管吻合部84を含む。
【0030】
この方法の一工程は、胃バンド10(図5)を提供することを含む。上述したように、胃バンド10は、複数の可撓性を有するバンド部材16が連結された可撓性を有する支持体14を備える。本発明の一例では、胃バンド10は、図1A図1Bに示すものと同様の構成を有するものであればよい。たとえば、胃バンド10は、生分解性メッシュ支持体14の第1の主面18にそれぞれ固着された、第1のバンド部材16’、第2のバンド部材16’’、第3のバンド部材16’’’を含み得る。胃バンド10は、長さLを約6.5cmにすることができ、幅Wを約3〜4cmにすることができる。また、各スペース領域40の幅を約5mmにすることができる。
【0031】
胃バンド10を提供した後、胃嚢の寸法を求めるために、胃嚢12を可視化する。胃嚢12の寸法は、たとえば開腹または腹腔鏡下での手術直後の肉眼所見で把握できる。あるいは、超音波、磁気共鳴画像法、核磁気共鳴などの既知の画像化方法のうちの1つまたは組み合わせを用いて、胃嚢12の寸法を求めてもよい。
【0032】
胃嚢12の実寸に応じて、支持体14の第2の主面20を胃嚢の実質的に全体に巻きつけることができるように、胃バンド10の大きさを任意に決定する。上述したように、支持体14の一部を切り取るおよび/または1本または2本以上のバンド部材16を取り除くことによって、胃バンド10を最適な大きさにすることができる。支持体14の幅Wを狭くする必要がある場合、たとえば、支持体14の第1の主側部26に引っ張る力(図5に暗色の矢印で示す)を加えることでミシン目に沿って支持体を引き裂き、第3のバンド部材16’’’を取り除くことが可能である。
【0033】
次に、支持体14の第2の主面20を胃嚢12に接触させる。腹腔鏡下での手術時、たとえば、胃バンド10を、第1のポート(図示せず)経由で配置することができ、その後、必要に応じて第2のポート(図示せず)経由で操作できる。図6に示すように、第2の主面20は、支持体14の下側のカラー部30が吻合部34の近位側にくるように胃嚢12に巻きつけられる。下側のカラー部30を図6に示すように配置することで、胃バンド10の装着後にバンド部材16’および16’と吻合部34とが不必要に接触して、場合によっては吻合部またはその付近がこすれたり裂けたりすることがなくなる。次に、第1のバンド部材16’および第2のバンド部材16’’それぞれの第1の端42および第2の端44が互いに隣接するまで、支持体14を少しずつ胃嚢12に巻きつけていく。その後、支持体14を(たとえば縫い合わせるなどして)適所で固定する。
【0034】
支持体14を適所で固定し、第1のバンド部材16’および第2のバンド部材16’’それぞれの第1の端42および第2の端44が互いに隣接したら、各バンド部材の取付機構を操作して、胃嚢12のまわりに胃バンド10を固定する。各取付機構が、返し付き先端部46と開口部48の構成を持つ場合、第1のバンド部材16’および第2のバンド部材16’’が(上述したような)リング状になるように、返し付き先端部を開口部に嵌合すればよい。必要であれば、1つまたは複数の個々の返し付き先端部の歯50が1つまたは複数のそれぞれの開口部の外周に順次「係止」されて適所におさまるよう1つまたは複数の返し付き先端部46を1つまたは複数の開口部48に通して前進させることで、リング状になった第1のバンド部材16’および第2のバンド部材16’’それぞれの直径を調節する(たとえば縮小するなど)ことが可能である。
【0035】
第1のリング部材および第2のリング部材それぞれの張力は、胃嚢を過剰に拡張させることなく、食物塊が胃嚢に入り、胃嚢から出ることができるよう十分に規定されている。本発明は、新たに形成した胃嚢を、時間が経過しても安定した状態に保つ。これがゆえに、被術者の体重が戻ってしまう可能性が低減または排除される。
【0036】
必要があれば、手術を追加する必要なく、胃バンドの全体または一部を取り出したり交換したりできることは自明であろう。たとえば、別に開腹手術または腹腔鏡下での手術を行う必要なく、内視鏡を用いる手技を行って、被術者から胃バンドの一部または全体を取り出すことができる。
【0037】
本発明に関する上記の説明から、当業者であれば、改善、変更、改変に気づくであろう。このような改善、変更、改変は当業者の技能の範囲内であり、添付の特許請求の範囲に包含されることを想定している。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図3
図4
図5
図6
図7