(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5682012
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】流体を脱気するためのセパレータ
(51)【国際特許分類】
B01D 19/00 20060101AFI20150219BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20150219BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20150219BHJP
B01D 71/70 20060101ALI20150219BHJP
F15B 21/04 20060101ALI20150219BHJP
B22F 5/10 20060101ALI20150219BHJP
【FI】
B01D19/00 H
B01D61/00
B01D69/10
B01D71/70
F15B21/04 C
B22F5/10
【請求項の数】19
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-538068(P2011-538068)
(86)(22)【出願日】2009年11月30日
(65)【公表番号】特表2012-510359(P2012-510359A)
(43)【公表日】2012年5月10日
(86)【国際出願番号】IB2009007575
(87)【国際公開番号】WO2010064106
(87)【国際公開日】20100610
【審査請求日】2012年11月28日
(31)【優先権主張番号】12/325,775
(32)【優先日】2008年12月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390033020
【氏名又は名称】イートン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】EATON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100135035
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 明夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ジェイ. ヒュンメルト
【審査官】
増田 健司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−171006(JP,A)
【文献】
特開昭56−076205(JP,A)
【文献】
特開平09−262406(JP,A)
【文献】
実開平02−091601(JP,U)
【文献】
特開2002−126426(JP,A)
【文献】
特開2003−062403(JP,A)
【文献】
特開2005−272841(JP,A)
【文献】
米国特許第03751879(US,A)
【文献】
特開2007−273167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00
B01D 61/00
B01D 69/10
B01D 71/70
B22F 5/10
F15B 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を脱気するためのセパレータ(38,138)であって、基板(60,160)と膜(62,162)を有し、
前記基板(60,160)は、基板の外側表面(70,170)とガス側方放出領域(74)を含み、かつ該放出領域(74)が前記セパレータ(38,138)からガスを排出するようになっているとともに、前記基板(60,160)には、前記放出領域(74)と連通する、ガスを輸送するためのポート(64,164)が固定され、該ポート(64,164)は、少なくとも部分的に前記基板(60,160)内に延びる長手方向の開口と、前記基板(60,160)内に位置して前記長手方向の開口に連通する一連の側方の開口(76)とを含んでおり、
前記膜(62,162)は、前記基板(60,160)に連通し、前記外側表面(70,170)にガスを浸透させるとともに前記基板(60,160)内への流体の進入を阻止して、前記外側表面(70,170)がガスを受け入れるようになっており、
前記基板(60,160)は、前記外側表面(70,170)から前記放出領域(74)にガスを輸送することを特徴とするセパレータ。
【請求項2】
前記基板(60,160)は、該基板(60,160)内に一連の小孔(68)を含み、ガスを前記基板(60,160)を介して浸透させ、かつ前記膜(62,162)のための構造支持体を提供することを特徴とする請求項1記載のセパレータ。
【請求項3】
前記基板の外側表面(70,170)は、前記膜(62,162)の少なくとも一部分と直接接触していることを特徴とする請求項1記載のセパレータ。
【請求項4】
前記膜(62,162)は、フッ化シリコンであることを特徴とする請求項1記載のセパレータ。
【請求項5】
前記基板(60,160)は、部分的に粉末冶金金属から構成されることを特徴とする請求項1記載のセパレータ。
【請求項6】
粉末冶金金属の粉末の粒子の大きさは、1ミクロン〜20ミクロンの範囲であることを特徴とする請求項5記載のセパレータ。
【請求項7】
粉末冶金金属は、ステンレス鋼であることを特徴とする請求項5記載のセパレータ。
【請求項8】
前記基板(60,160)は中空チューブ及び矩形状バーのいずれかで形成されていることを特徴とする請求項1記載のセパレータ。
【請求項9】
前記膜(62,162)は、前記基板の外側表面(70,170)の全体に接触していることを特徴とする請求項8記載のセパレータ。
【請求項10】
油圧システム(20)内の流体を脱気するためのシステムであって、セパレータ(38,138)とポート(64,164)を有し、
前記セパレータ(38,138)は、基板(60,160)と膜(62,162)を含み、前記基板(60,160)が基板の外側表面(70,170)とガス側方放出領域(74)を含み、かつ該放出領域(74)が前記基板(60,160)からガスを排出し、前記膜(62,162)が前記基板(60,160)に連通しており、
前記ポート(64,164)は、前記基板(60, 160)に固定されて前記放出領域(74)に連通するとともに、少なくとも部分的に前記基板(60, 160)内に延びる長手方向の開口と、前記基板(60, 160)内に位置して前記長手方向の開口に連通する一連の側方の開口(76)とを含み、ガスを前記セパレータ(38,138)から前記油圧システム(20)に輸送し、
前記膜(62,162)は、前記外側表面(70,170)にガスを浸透させるとともに前記基板(60,160)内への流体の進入を阻止して、前記外側表面(70,170)がガスを受け入れるようになっており、
前記基板(60,160)は、前記外側表面(70,170)から前記放出領域(74)にガスを輸送することを特徴とするシステム。
【請求項11】
前記基板(60,160)は、該基板(60,160)内に一連の小孔(68)を含み、ガスを前記基板(60,160)を介して浸透させ、かつ前記膜(62,162)のための構造支持体を提供することを特徴とする請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記ポート(64,164)は、前記セパレータ(38,138)からチェック弁(40)にガスを輸送するためのものであることを特徴とする請求項10記載のシステム。
【請求項13】
前記チェック弁(40)は、外部環境及び真空中の何れかに連通していることを特徴とする請求項12記載のシステム。
【請求項14】
前記基板の外側表面(70,170)は、前記膜(62,162)の少なくとも一部分と直接接触していることを特徴とする請求項10記載のシステム。
【請求項15】
前記基板(60,160)は、部分的に粉末冶金金属から構成されることを特徴とする請求項10記載のシステム。
【請求項16】
油圧システム(20)からの流体を脱気するための方法であって、
前記油圧システム(20)から、ガス側方放出領域(74)を含む基板(60,160)と膜(62,162)を有するセパレータ(38,138)に流体を受け入れ、
ガスを浸透させかつ流体の進入を阻止する膜(62,162)を介して、前記流体を移動させるとき、前記流体内に含まれるガスの少なくとも一部分から前記流体を分離し、
前記膜(62,162)からのガスを、前記基板(60,160)の前記ガス側方放出領域(74)に輸送し、
前記セパレータ(38,138)からのガスを、前記基板(60,160)に取り付けられて前記放出領域(74)に連通し、少なくとも部分的に前記基板(60, 160)内に延びる長手方向の開口と、前記基板(60,160)内に位置して前記長手方向の開口に連通する一連の側方の開口(76)とを含むポート(64,164)に移動させる、各ステップを有することを特徴とする方法。
【請求項17】
前記ポート(64,164)からガスをチェック弁(40)に輸送するステップを更に含むことを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記油圧システム(20)からガスを、前記チェック弁(40)を経由して移動するステップをさらに含んでいることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記膜(62,162)から前記基板(60,160)にガスを直接輸送するステップをさらに含み、前記基板(60,160)の外側表面(70,170)が、前記膜(62,162)の少なくとも一部分と直接接触していることを特徴とする請求項16記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータ、特に流体を脱気するためのセパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧システムは、油圧流体をシステム内で繰り返し循環させることによって作動する。この油圧流体の動きは、選択的にパワー油圧システム部品に用いられる。油圧システムが作動するとき、ある油圧システム部品から望まないガスが油圧流体内に浸透する。油圧流体がガスで飽和すると、油圧システムは、性能レベルの減少、望まないノイズ、又は油圧システム部品への潜在的損傷等を生じることになる。油圧流体がガスを手動で排気することは、費用がかかり、あるいは多大な時間を必要とし、またいくつかの形式の油圧システム、特に、永久にシールすることを目的とする油圧システムにおいて、必ずしも1つの選択肢とはならない。
【0003】
1つのアプローチでは、セパレータは、油圧流体からガスを取り除くために利用することができる。油圧流体内に捕捉されたガスを取り除くためのセパレータには、いくつかの公知の形式がある。このセパレータは、ガスを吸収する能力を有するが、油圧流体の吸収を制限する。
【0004】
少なくともいくつかの形式のセパレータにおいて、ガスを吸収するためにポリマーが使用される。このポリマーは、油圧流体からガスを吸収するように設計されており、セパレータに入る油圧流体を実質的に制限する。ポリマーの物理的特性は、修正することができ、セパレータへの油圧流体が進入するのを抑制する。1つの例では、ポリマーの微小多孔性及び疎水性を変えるために、ポリマーの外側表面が修正される。しかし、流体をはじく一方でガスを吸収できる能力を有するためのポリマーを製造することは、複雑な製造工程が必要で、費用がかかり、かつ近代の高圧の油圧回路の圧力より低い絶対圧力限界値を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、費用の点で効果のある油圧システム用のセパレータを提供することが必要とされる。このセパレータは、流体から少なくともいくらかのガスを吸収し、一方で、セパレータ内の流体の流れを実質的に制限する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、高圧アキュムレータ、低圧アキュムレータ、統合ポンプモータ、二次ポンプ、セパレータ、及びチェック弁を含む例示的な油圧システムの概略図である。
【
図6】
図6は、油圧システムからの流体を排出方法の処理流れ図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図面に従って考察を進めると、ここに開示されたシステム及び方法に対する説明的なアプローチが詳細に示されている。図面は、いくつかの可能なアプローチを示しているが、これらの図面は、必ずしも寸法通りではなく、ある特徴部分は、本発明の説明をより良くするために誇張され、取り除かれ、又は部分的に切り欠かれている。
さらに、ここに規定された記述は、包括的、または、図面に示された正確な形及び形状及び以下に示された記述に対して特許請求の範囲を制限することを意図していない。
【0008】
さらに、多数の基本定数が、以下の議論において導かれる。ある例では、基本定数の例示的な値が与えられている。他の場合、特定値が与えられていない。この基本定数の値は、開示システムと関連した環境条件及び作動条件と共に、関連したハードウエハの特性、及び互いに関連したこのような特性の相互関係によって決まるであろう。
【0009】
ここに開示された種々の例示的な説明に従って、セパレータが設けられている。このセパレータは、基板及び膜を含み、この基板は、基板の外側表面と、ガス側方排出領域とを含む。基板は、セパレータからガスを放出するためのものとなる。膜は、基板と連通している。また、膜は、基板の外側表面にガスを浸透させるためのものであり、かつ基板へ流体が進入するのを制限する。基板の外側表面は、ガスを受け入れるためのものであり、さらに、基板は、基板の外側表面から放出領域に受け入れられたガスを輸送するためのものとなる。また、ガスが基板を貫いて通過できるように、基板は、基板内に一連の小孔を含んでいる。この基板は、粉末冶金金属から作ることができる。そして、一例では、粉末冶金金属は、ステンレス鋼を含む。粉末粒子は、約1ミクロン〜約20ミクロンの間の大きさとすることができる。基板の放出領域は、ガスを輸送するためのポートに取り付けられ、基板の外側表面は、膜の少なくとも一部分に直接接触している。膜は、基板の外側表面全体に接触することもできる。
【0010】
また、流体を油圧システムから排出するための方法が開示される。この方法は、油圧システムからセパレータに流体を受け入れることを含む。このセパレータは、基板と膜を含む。基板は、ガスの側方放出領域を含む。流体は、この流体内に含まれるガスの少なくとも一部分から分離している。膜は、ガスを通過させ、かつ流体の進入を制限することができる。このガスは、膜から基板の放出領域に輸送される。ガスは、セパレータから、このセパレータに取り付けられたポートに移動することができる。
【0011】
図面を参照すると、
図1は、概略図として図示された例示的な油圧システム20を示している。油圧システム20は、高圧アキュムレータ30、低圧アキュムレータ32、統合ポンプモータ34、二次ポンプ36、セパレータ38、及びチェック弁40を含む。流体50は、油圧システム20を介して移動する。
図1の例では、流体50は、油圧システム内に用いられる適切な油圧流体である。例えば、キャスターオイル、グリコール、ミネラルオイル、またはシリコンであるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
ポンプモータ34は、低圧アキュムレータ32と高圧アキュムレータ30との間で流体50を移動させる。二次ポンプ36は、流体50を低圧アキュムレータ32からセパレータ38を通過させ、また、そこから低圧アキュムレータ32に戻す。
図1は、油圧システムとして、車両のハイブリッド駆動系に一般的に用いられる油圧システム20を示しているが、他の形式の油圧システムも同様に用いることができる。
図1に示されているように、セパレータ38が、油圧システムに用いられていることに注目すべきであり、このセパレータ38は、流体を排出するためのいくつかの利用に用いることができる。
【0013】
ポンプモータ34は、低圧アキュムレータ32と高圧アキュムレータ30の両方に流体連結され、また、低圧アキュムレータ32と高圧アキュムレータ30の間で流体50を輸送する。1つの例では、ポンプモータ34は、ポンプモードとモータモードで作動する統合ポンプモータとすることができ、流体50を低圧状態(低圧アキュムレータ32)及び高圧状態(高圧アキュムレータ30)の間で移動することになる。すなわち、ポンプモータ34は、前進及び後退で作動し、これにより、ポンプモータ34がポンプとして、またはモータとして作動させるかどうかを制御する。
【0014】
ポンプモータ34が前進するように作動させるとき、ポンプモータ34は、ポンプモードとすることができる。ポンプモードでは、流体50は、低圧アキュムレータ32から高圧アキュムレータ30に移動する。ポンプモードにおいて、車両のエンジン駆動系等の装置、これに限ったものではないが、流体50から運動エネルギーを取り出すことができる。ポンプモータ34は、逆に作動するとき、ポンプモータ34は、モータモードとなる。モータモードのとき、流体は、高圧アキュムレータ30から低圧アキュムレータ34に移動し、そして、ポンプモータ34のモータ部分を回転させる。
図1は、統合ポンプモータを例示するものであるが、個別のポンプと個別のモータを同様に用いることができる。
【0015】
高圧アキュムレータ30、低圧アキュムレータ32及びポンプモータ34は、流体50から装置に運動エネルギーを伝達するために用いられる油圧フロー回路を作り出し、また、パワー回路26とすることもできる。流体50は、パワー回路26内のポンプ及びポンプモータ34によって、高圧アキュムレータ30と低圧アキュムレータ32の間を移動する。しかし、パワー回路26のいくつかの部品の中に配置されるガスは、流体50内を貫くことができる。その結果、流体50は、ガスで飽和され、このガスは、油圧システム20の作動に害を与える。それゆえ、ガス脱気回路28が、流体50の内部で捕捉されるガスの少なくとも一部分を取り除くように設けられている。
【0016】
低圧アキュムレータ32、二次ポンプ36、セパレータ38、及びチェック弁40が、流体50からガスを取り除くのに用いられる脱気回路28を作り出す。脱気回路28は、低圧アキュムレータ32からの流体50が、二次ポンプ36によってセパレータ38に移動するように作動する。二次ポンプ36は、低圧アキュムレータ32とセパレータ38に流体連結している。二次ポンプ36は、二次ポンプ流体入口42と二次ポンプ流体出口44を含む。低圧アキュムレータ32は、二次ポンプ流体入口42を介して二次ポンプ36に流体連結する。セパレータ38は、二次ポンプ流体出口44を介して、二次ポンプ36に流体連結する。
図1に示す脱気回路28は、流体50の動きを容易にするための二次ポンプ36を含んでいるが、少なくともいくつかの脱気回路において、二次ポンプを削除することができる。
【0017】
セパレータ38は、2つの出口、流体出口52とガス出口54と同様に、セパレータ流体入口46を含む。このセパレータ流体入口46は、セパレータ38を二次ポンプ36に流体連結し、そして、二次ポンプ36から流体を受け入れる。流体出口52は、セパレータ38を低圧アキュムレータ32に流体連結する。ガス出口54は、セパレータ38をチェック弁40に接続する。
【0018】
セパレータ38は、流体50内に捕捉されるガスの実質的に全部ではないが、少なくとも一部分を取り除くことができる。脱気された流体50は、流体出口52を介してセパレータ38を出て、低圧アキュムレータ32に入る。低圧アキュムレータ32からの流体50は、パワー回路26を介して移動される。チェック弁40は、油圧システム20からセパレータ38によって移動したガスを放出することができる。
【0019】
セパレータ38によって移動したガスは、セパレータ38のガス出口54から流出し、チェック弁40に流入する。このチェック弁40は、ガスを一方向に流すことができ、この流れの方向は、矢印48で示される。即ち、チェック弁40は、油圧システム20から排出される流体50を一方向に流すことを可能にする。ガスは、油圧システム20から放出される。1つの例では、ガスは、真空中に、又は大気中に放出することができる。
図1は、チェック弁40を図示しているが、ガスが油圧システム20に再進入するのを妨げるいかなる装置も同様に用いることができることに注目すべきである。
【0020】
1つの例において、流体50内に捕捉されたガスの供給源は、高圧アキュムレータ30及び低圧アキュムレータ32に配置することができる。これは、両方のアキュムレータ30,32が、例えば、空気袋(図示略)に貯蔵された窒素ガスに制限されるものではないが、このような不活性ガスを含むことができるからである。このガスは、時々、アキュムレータ30,32内に配置された空気袋(図示略)を介して通過し、流体50内に入る。流体50内に捕捉されたガスを有することは望ましくない。なぜなら、油圧システム20は、性能、望まないノイズ、または流体50内に通気したガスがある場合、油圧システム部品に対するポテンシャルダメージを被るからである。それゆえ、脱気回路28は、流体50から通気したガスで分離するように設けることができる。大気圧等の他の供給源からガスは、同様に流体50内に捕捉されることに注目すべきである。
【0021】
図2は、基板60、膜62、及びポート64を有するセパレータ38を含むハウジング72が図示されている。ハウジング72は、油圧流体50の周囲圧力に耐えうる容器である。このハウジング72は、流体50がハウジング72に入りかつ膜62に接触する開口78を含む。基板60は、基板の外側表面70を含み、膜62が、基板の外側表面70の少なくとも一部分に接触し、かつこれを覆っている。膜62は、ガスが流体50から基板60内を貫くことが可能となるように形成されている。
【0022】
同時に、膜62は、基板60内に流体50が進入するのを制限するために用いることができる。1つの例では、膜62は、流体50が基板60に進入するのを阻止する。
図1は、セパレータ38を油圧セパレータとして図示しており、このセパレータ38は、流体を排出する、いくつかの利用形式において使用することができる。
【0023】
膜62は、基板60に連通し、流体50から基板の外側表面70に導かれたガスを移送する。膜62は、また、流体50のガス集中よりも低いガス集中を含むことができる。膜62に配置されたガス量は、流体50内に配置されたガスよりも低く、その結果、流体50内のガスは、膜62に引き寄せられ、流体50が膜62を越えて移動し、ガスは、流体50から抽出される。
【0024】
基板60は、膜62からガスの側方放出領域74に導かれたガスを輸送するために形成されている。ここで、基板の外側表面70は、膜62に連通することができる。基板60の放出領域74は、
図1に示すガス出口54に対応する。放出領域74は、基板60からガスを排出することができ、また、ポート64を経由してチェック弁40(
図1に図示された)と連通することができる。
【0025】
膜62は、流体50と接触し、かつ流体50内に捕捉されたガスの少なくとも一部分が基板の外側表面70を貫通することを可能にするが、基板60内に流体50が進入するのを防止する。
図2,3は、膜62によって流体50から抽出されたガスをガスの流れ66として示している。より特定すれば、ガスは、膜62を介して基板60に入る。ガスは、ガスの流れ66として膜62から出る。
図3に示すように、基板60は、膜62からガスの流れ66を受け入れ、この流れ66を放出領域74に輸送することができる。
【0026】
図2に戻ると、基板60は、膜62に構造支持体を与えるために用いられる、多孔性の、ガスが浸透可能な材料とすることができる。この基板60は、ある状況下において、膜62が、剛性等の物理的特性を有しないで、油圧システム20が被る負荷に耐えられるように、構造支持体を与えるのに用いることができる。言い換えれば、膜62は、自己支持体でない材料の薄い層とすることができる。その結果、基板60は、膜62に対して構造支持体を与えるのに特に重要となる。
【0027】
基板60は、基板の外側表面70から放出領域74にガスを輸送することが可能な種々の材料から構成することができる。1つの例において、基板60は、部分的に粉末冶金金属80から構成することができる。使用できる粉末冶金金属の1つの形式は、ステンレス鋼である。しかし、他の形式の金属を同様に使用できることに注目すべきである。
【0028】
基板60は、セパレータ38を介してガスの流れ66を最大にし、かつ基板の外側表面70と放出領域74の間の圧力差を最小にする材料特性を示すことができる。1つの例示では、粉末冶金金属80は、約1ミクロン〜約20ミクロンの範囲の粉末粒子サイズを含む。基板60は、粉末冶金金属で構成されるので、一連の小孔68は、表面および基板60内に存在する。小孔68は、ガスの流れ66が基板60を貫くことが可能となり、より大きな孔サイズは、より大きなガス透過率を生じる。しかし、孔サイズの増加は、基板60が膜62を支えるのに必要とされるように、制限されなければならない。すなわち、基板60が支持体として必要とされるように、孔の大きさをどの程度にするかの制限がある。1つの例では、小孔68のサイズが、約1〜約10ミクロンの範囲とすることができる。
【0029】
膜62は、ガスの流れ66の浸透を可能にするガス透過率の材料特性を有する材料から構成することができる。膜62は、また同様に、流体50の基板60内への進入を阻止することができる。1つの例では、膜62は、例えば、フッ化シリコン82等のポリマーから構成することができる。しかし、膜62として、他の材料を同様に用いることができることに注目すべきである。
【0030】
少なくともいくつかの例では、フッ化シリコン82は、膜62として用いられるとき、有効となる。これは、高いガス透過率、耐温度性、熱エージング、及び耐薬品性を有するフッ化シリコンの材料特性が、一般的に油圧システムに適合するからである。さらに、フッ化シリコンは、非常に薄く製造でき、また基板の外側表面70に接着することができるシートとして製造できる能力を備えている。基板60上に薄い、膜62の層が、小さい容積で高いガス透過率を導く薄い膜62として、特に望ましい。すなわち、薄い膜62は、表面領域70をより少なくでき、質量を減少させる結果となる。1つの例では、フッ化シリコン82は、複数の層に形成され、この層は、約0.1ミリ(0.0039インチ)から約0.5ミリ(0.02インチ)とすることができる。しかし、フッ化シリコンがこの特定例として用いられる一方で、他の材料も同様に膜62として用いることができることに注目すべきである。
【0031】
膜62は、高いガス透過率を有する材料から構成されるので、ガスを通過させて流体の進入を制限するために、セパレータ38において多数層の膜を使用することは、少なくともいくつかの応用において必要ではないかもしれない。
図3は、膜62の少なくとも一部分に直接接触している基板の外側表面70を示している。即ち、膜62と基板の外側表面70との間に中間層はなく、互いに接着されている。少なくともある状況では、膜62を基板の外側表面70に接着することは、いくつかの理由により有益である。第1に、膜62を基板の外側表面70に直接接着することは、セパレータ38における個々の要素の数を減らすことができる。更に、膜62を基板の外側表面70に接着することは、ガスが通過しなければならない中間層がないので、膜62と基板60との間のガスの透過率を増加することができる。
図3は、基板の外側表面70が単一層の膜62に直接接触していることを示すが、中間物質が膜62と基板60の両方を一緒に接着するのに用いることができ、更に、膜62は、同様に2つ以上の層から構成できることがわかる。また、フッ化シリコンといくつかの物質は、基板の外側表面70等の表面に容易に固着できるとは限らないことに注目すべきである。それゆえ、下塗り等の付加物を膜62に付加して、接着能力を改善する。
【0032】
基板の外側表面70への膜62の付着は、例えば、プリカレンダーフィルム(pre-
calendered film)、モールド、押し出しコーティング、または溶剤コーティングの機械的な付着等の種々の方法によって完成することができるが、これらに制限されるものではない。ポリマー溶剤コーティング等の溶剤コーティングは、基板の外側表面70への膜62の接着に特に有益となる。これは、溶剤コーティングが、基板の外側表面70の全体に連続したフィルムの被膜を与えることができるからである。それゆえ、基板60の全体は、膜62によってシールすることができる。
【0033】
基板60の放出領域74は、ガスの流れ66を輸送するように形成されたポート64に直接連通することができる。すなわち、基板60とポート64との間に付加的な部品はなく、このポート64は、基板60に固定される。ポート64は、ガスの流れ66に連通し、そして、ガスの流れ66をチェック弁40(
図1に図示されるように)に導く。1つの例では、ポート64は、金属から作られ、かつ基板60に直接固定される。ポート64は、ろう付け又は溶接等の結合プロセスによって基板60に固定することができるが、これに制限されない。ポート64は、複数の小孔68に連通する一連の小さい開口76を含むことができ、ガスの流れが複数の小孔68から開口76を介して連通できるようになる。この小さい開口76は、基板60間の圧力降下を減少させることができる。
【0034】
図4−5は、他のセパレータ138を図示し、ここでは、基板160が、中空チューブの形状をしている。基板の外部表面170の全体は、膜162で覆われている。それゆえ、基板160は、
図4では見ることができない。代わりに
図5は、セパレータ138を部分的に切欠いた図であり、膜162とともに基板160の両方が図示されている。
【0035】
図4に戻ると、セパレータ138は、前面186と後面188(想像線で示す)と同様に、外径表面D1と内径表面D2を含む。基板160の全体は、膜162によって覆われており、この結果、ガスの流れ166が吸収される4つの表面を提供する。言い換えれば、外径表面D1、内径表面D2、前面186、及び後面188の各々は、膜162によって覆われており、それゆえ、ガスの流れ166を吸収する。ガスの流れ166を吸収するための4つの異なる表面を有することは、セパレータ138が高いガス吸収能力を有し、一方、比較的小さいパッケージサイズを維持できるので有益である。
図2−3は、矩形状バーとして形作られた基板60が図示され、
図4−5は、中空チューブの基板160が図示されているが、基板は、利用次第で種々の形状に作ることができる。1つの例では、基板は、固体チューブの形状とすることができる。
【0036】
図6を参照すると、油圧システム20から流体50を脱気する工程600が図示されている。工程600は、流体50を油圧システム20からセパレータ38に受け入れるステップ602で始まる。上述したように、セパレータ38は、セパレータ38を二次ポンプ36に流体連結し、流体50を二次ポンプ36から受け入れるセパレータの流体入口46を含む。セパレータ38は、基板60と膜62を含む。基板60は、放出領域74を含み、この放出領域74は、基板60からガスを排出する。工程600は、次にステップ604に進む。
【0037】
ステップ604では、流体50が
セパレータ38を介して移動するとき、流体50内で捕捉されるガスの少なくとも一部分から流体50が分離される。さらに特定すると、膜62は、ガスを進入させ、流体50等の流体の進入を制限するように形成することができる。また、膜62は、基板60の中に流体50が進入するのを制限するために用いられ、そして、基板60内に流体50が実質的に進入できないようにする。更に、膜62は、流体50のガス集中よりも低いガス集中を含む。その結果、ガスは、膜62に向けて引き出される。流体50が膜62を通過して移動するとき、ガスは、流体50から抽出される。工程600は、次にステップ606に進む。
【0038】
ステップ606では、ガスの流れ66は、膜62から基板60に直接輸送される。これは、基板の外側表面70が、膜62の少なくとも一部分に直接接触することができるからである。ステップ606は、選択的なステップであることに注目すべきである。これは、別の例において、中間層が、膜62と基板60とを一緒に接着するのに用いることができることを意味する。工程600は、次にステップ608に進む。
【0039】
ステップ608では、ガスの流れ66は、膜62から基板60の放出領域74に輸送される。上述したように、膜62は、流体50と接触し、流体内に捕捉されているガスの少なくとも一部分は、膜62を介して浸透し、そして基板の外側表面70に進入する。同時に、膜62は、基板60内に流体50が進入するのを実質的に防止する。そして、基板の外側表面70が膜62に連通しているので、基板60は、ガスの流れ66を受け入れる。膜62からガスの流れ66を受け入れた後、基板60は、基板の外側表面70から放出領域74にガスの流れ66を輸送する。工程600は、次にステップ610に進む。
【0040】
ステップ610では、ポート64を経由してセパレータ38からガスの流れ66が移動する。このポート64は、セパレータ38に直接連通している。基板60の放出領域74は、ポート64に直接連通する。これは、基板60とポート64との間に別の付加的な部品を配置しないことを意味する。工程600は、次にステップ612に進む。
【0041】
ステップ612では、ガスの流れ66は、ポート64からチェック弁40に輸送される。
図1に見るように、セパレータ38は、ポートを介してチェック弁40と流体連通している。
図1に示すチェック弁40に注目すべきである。油圧システム20内にガスが再侵入することを防止するいくつかの装置が用いられる。工程600は、次にステップ614に進む。
【0042】
ステップ614では、チェック弁40によって油圧システム20からガスの流れ66が移動する。1つの例では、ガスの流れ66は、利用次第で、外部環境又は真空中の何れかに放出される。上述したように、チェック弁40は、1つの方向にのみガスを流すことができるように構成され、この流れ方向は、矢印48によって図示されている。チェック弁40は、ガスの流れ66の少なくとも大部分が油圧システム20内に再侵入するのを防止するとともに、ガスの流れ66を油圧システム20から換気するのに用いられる。工程600は、これで終了する。
【0043】
本発明は、上述した説明を参照して、特に図示されかつ記載してきた。これらの例は、本発明を遂行するための最良の実施形態を単に示すものである。当業者には理解できるように、ここに記載した本発明の実施例に対して種々の代替例は、以下に示す請求項に規定した本発明の精神及び範囲から逸脱しないで、本発明を実施するのに使用することができる。以下の請求項は、本発明の範囲を規定するものであり、これら請求項の範囲内にある方法及び装置及びこれらの等価物は、ここに包含される。本発明の記述は、ここに記載された全ての新規及び進歩性のある要素の組合せを含んでいることがわかるであろう。また、請求項は、新規及び進歩性のあるこれらの要素の組合せに対して、この利用または後の利用において提示される。さらに、上述の実例は説明に役立ち、また、単一ではない特徴及び要素は、この利用または後の利用において要求される全てに可能な組合せにとって重要である。