特許第5682017号(P5682017)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5682017
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】電磁弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20150219BHJP
【FI】
   F16K31/06 305S
   F16K31/06 385A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-24339(P2013-24339)
(22)【出願日】2013年2月12日
(62)【分割の表示】特願2009-35238(P2009-35238)の分割
【原出願日】2009年2月18日
(65)【公開番号】特開2013-100914(P2013-100914A)
(43)【公開日】2013年5月23日
【審査請求日】2013年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100084858
【弁理士】
【氏名又は名称】東尾 正博
(74)【代理人】
【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由
(72)【発明者】
【氏名】富永 元規
(72)【発明者】
【氏名】片山 義唯
(72)【発明者】
【氏名】辻村 真一
【審査官】 関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−092175(JP,A)
【文献】 特開2007−100740(JP,A)
【文献】 特表2000−517264(JP,A)
【文献】 特開2008−190603(JP,A)
【文献】 特開2004−360748(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/033855(WO,A1)
【文献】 実開昭61−107798(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06−31/11,
B60T 15/00−17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁されたコイルにより吸引駆動される弁体と、該弁体が接離する弁座と、前記弁座が設けられた第1の壁面とこの第1の壁面に対向する第2の壁面とによって区画され、前記弁体および前記弁座が配置される弁室と、前記弁体の外周側に配置され、前記弁体を開弁方向へ付勢する付勢部材を備える電磁弁において、
前記付勢部材は、前記第1の壁面と前記第2の壁面のうち、何れか一つに支持させた一端部側から、前記弁体に当接させた他端部側へ向けて延在する弾性片を有し、その弾性片は、前記弁体に当接させた他端部から軸方向に延び出しながら径方向外側に向けて放射状に延びており、さらに、その弾性片は周方向に間隔をあけて配置された複数の板ばねで形成され、これ等弾性片の他端部は自由端となっていて前記弁体の先端近くのテーパ部に当接することを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記付勢部材の前記一端部は前記第2の壁面に支持され、その付勢部材の前記他端部は前記弁体に当接させられていることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブレーキ液圧などの制御に利用する常開(ノーマルオープン)型の電磁弁
、特に、圧力制御の安定性と信頼性を高めた電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のブレーキ液圧制御を行なう電磁弁が、例えば、下記特許文献1に記載されている
。同文献に開示されたその電磁弁は、コイルへの通電時に発生した磁力によって吸引され
るプランジャ(可動鉄心)が有底筒状のスリーブ(バルブキャップ)内に摺動自在に保持
されている。また、弁体はプランジャに当接し、弁体を案内するガイド(固定鉄心)の一
端がプランジャに対向し、プランジャ及び弁体はコイルスプリングによって開弁方向に付
勢されている。その付勢力によりコイルに通電していないときには弁体が弁座から離反し
てその2者によって構成される弁部が全開になり、コイルに通電すると電磁吸引力でプラ
ンジャが吸引されてそのプランジャに押し動かされる弁体が弁座に押し当てられ、弁部が
完全に閉鎖される。これは、周知の常開型のオン、オフ制御電磁弁である。
【0003】
なお、同様の構成の電磁弁で、コイルへの通電量を制御して弁部を境にした上流側と下
流側の流体の圧力の差(差圧)をリニアに制御する常開型の差圧制御電磁弁も知られてい
る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−347597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲の特許文献1が開示している電磁弁は、制御される流体(作動液)がシートに設けられた流路から弁部を通って弁室に流入し、弁室に配置された弁体とそれを付勢するコイルスプリングとの間の隙間及びコイルスプリングの線間隙間を通って流出路に流れる。その途中に、流体が弁体とコイルスプリングに流体力を与える。
【0006】
常開型の電磁弁(いわゆるNO弁)は、弁体に働く3つの力(磁力で発生させた推力、スプリングによる付勢力及び流体力)のバランスを取りながら弁体の位置を保持して弁部の開度調整、圧力制御を行なう。
しかし、弁部を通って弁室に流入する作動液の流れは乱流であるため、弁体のリフト量が大きくなって作動液の流量が多くなるほど、流体力は不安定になる。このため、流体力により弁体が偏心、振動し、弁の開度調整が不安定になり、弁位置変動の影響が制御に現われて常開型電磁弁の圧力制御が不安定になっていた。
【0007】
従来の常開型電磁弁においては、流入路から弁座を通過して弁室に流入してきた流体が流出路へ流れる途中、弁体を付勢したコイルスプリングの線間を通過することで流れが妨げられ、弁体に働く流体力をより不安定にしていた。
【0008】
この発明は、常開型電磁弁の信頼性を向上させること、そのために、流入路から弁室に
流入した作動液の流れを乱さずに弁体の周囲から弁体を離れる方向へ誘導して流出路に導くことで、作動液の流量が多くても弁体に働く流体力を安定させ、弁の開度調整、圧力制御を安定させた電磁弁を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、この発明においては、
励磁されたコイルにより吸引駆動される弁体と、該弁体が接離する弁座と、前記弁座が設けられた第1の壁面と、この第1の壁面に対向する第2の壁面に区画され、前記弁体および前記弁座が配置される弁室と、前記弁体の外周側に配置され、前記弁体を開弁方向へ付勢する付勢部材を備える電磁弁を改善の対象にして、
前記付勢部材に前記第1の壁面および前記第2の壁面のうち、何れか一つに支持させた一端部側から、前記弁体に当接させた他端部側へ向けて延在する弾性片を具備させた。
そして、その弾性片は、前記弁体に当接させた他端部から軸方向に延び出しながら径方向外側に向けて放射状に延びているものにした。さらに、その弾性片は周方向に間隔をあけて配置された複数の板ばねで形成され、これ等弾性片の他端部は自由端となっていて前記弁体の先端近くのテーパ部に当接するものにした。
【0010】
かかる電磁弁は、前記付勢部材の前記一端部は前記第2の壁面に支持され、その付勢部材の前記他端部は前記弁体に当接させられているものが好ましい。また、前記弾性片は、板ばねで形成されたものや線ばねで形成されたものが考えられ、どちらの形態も好ましい。
【発明の効果】
【0011】
この発明の電磁弁は、弁体が電磁吸引力で駆動されて閉弁方向に動いたときに前記弾性片が弾性変形してその弾性片に弾性復元力が生じ、その力が開弁方向への付勢力となって弁体に作用する。従って、コイルスプリングを使わずに常開型の電磁弁を成立させることができる。
【0012】
前記弾性片が板ばねで形成されたものは、前記弾性片が軸方向に伸びて作動液の流れを遮り難いものになっており、コイルスプリングに比べてスプリングの隙間を通過する流体の抵抗が小さくなる。
【0013】
これにより、付勢部材への乱流の影響が小さくなる。また、弁体の変位に伴う支持点の変位も起らず、支持点の変位によるばね力の変動も起こらない。これらのことが有効に作用して電磁弁の弁部の開度調整と圧力制御の安定性が高まる。
【0014】
前記弾性片が線ばねで形成されたものも、その弾性片が板ばねで形成されたものと同様の作用が得られ、弾性片が板ばねで形成された付勢部材を有する電磁弁と優位差のない効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の電磁弁を使用状態にして示す断面図
図2図1の電磁弁の要部の拡大断面図
図3図1の電磁弁に設けた付勢部材(板ばね)の展開図
図4図1の電磁弁に設けた付勢部材の斜視図
図5】この発明の電磁弁の他の例の要部を示す断面図
図6図5の電磁弁に設けた付勢部材(板ばね)の展開図
図7図5の電磁弁に設けた付勢部材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面の図1図15に基づいて、この発明の電磁弁の実施の形態を説明する。
【0017】
この発明の電磁弁は、弁体に加わる流体力の影響(乱流の影響)を、弁体を付勢する付勢部材の形状と支持方法を工夫することで軽減したものである。
【0018】
図1に示した電磁弁1Aは、コイル2aに通電することで磁力を発生する電磁石2と、
その磁力で吸引して軸方向に押し動かされる弁体4aとその弁体4aが接離する弁座4b
とで構成される弁部4と、弁座4bの上流に設けられた流入路5と、弁座4bの下流に設
けられた弁室6と、この弁室6に通じた流出路7と、弁体4aを開弁方向に付勢する付勢部材8Aと、チェック弁9を備えている。
【0019】
弁座4bと流入路5は、ガイド2cとは別体のシート10に形成されており、チェック弁9もそのシート10に組み込まれている。シート10は電磁石2のガイド2cへ圧入され、弁室6は、ガイド2cとシート10の間に形成されている。流出路7はガイド2cに形成され、弁室6とホイールシリンダ24を連通する。21は、電磁弁1Aを制御するECU(電子制御装置)である。
【0020】
図示の電磁弁1Aは、車両用ブレーキ液圧制御ユニットのハウジング22に組み付けた状態にしており、この例では、液圧源23からホイールシリンダ24に供給されるブレーキ液圧を制御する。液圧源23は、マスタシリンダと動力駆動のポンプ(いずれも図示せず)を組み合わせたものが一般的で、必要に応じて動力駆動のポンプで発生させた液圧を貯える蓄圧器も採用される。
【0021】
チェック弁9は、ホイールシリンダ24の除圧時にマスタシリンダに向けて戻されるブ
レーキ液を通す。このチェック弁9は、電磁弁1Aの外部に設けることもでき、この発明の必須の要素ではない。
【0022】
電磁石2は、コイル2aと、各々が磁性体で形成されたヨーク2b、弁体4aを案内す
る筒状のガイド2c、コイル2aを覆うスリーブ2d、そのスリーブ2d内を摺動して弁
体4aを押し動かすプランジャ2eを備えており、コイル2aに通電して磁力を発生させ
る。
【0023】
電磁弁1Aが、常開型のオン、オフ制御電磁弁である場合、コイル2aには、ECU21から予め設定した電流が供給され、弁体4aに加わった開弁力(付勢部材8Aの力と弁体4aに作用する流体力を加算した力)に打ち勝つ磁力が発生してプランジャ2eが吸引駆動され、弁体4aが弁座4bに押し当てられて弁部4が完全に閉じられる。
【0024】
一方、電磁弁1Aが、差圧制御電磁弁である場合は、ECU21から所望大きさに制御された電流がコイル2aに供給される。その電流によって発生した磁力でプランジャ2eが吸引駆動されて弁体4aがその弁体4aに対向して働く力のバランス点に押し動かされ、弁部4の開度がリニアに調整されて流入路5と弁室6のブレーキ液の差圧が制御される。
【0025】
以上の構成は、従来品と変わるところがない。即ち、図示の電磁弁1Aには、この発明を特徴づける構成として、弁体の付勢をコイルスプリングではなく付勢部材(前記付勢部材8Aなど)を設けて行っており、その付勢部材の設置によって、弁室6内に発生する乱流が弁体4aに及ぼす影響が軽減される。
【0026】
前記付勢部材は、周方向に間隔をあけて配置された複数の板ばね又は線ばねで形成して
いる。板ばね製の付勢部材8Aを採用した電磁弁1Aの一例を、図1図4に示す。
【0027】
この電磁弁1Aに採用した付勢部材8Aは、一端側にリング状連結部8aを設けている。また、リング状連結部8aの外周に、成形前の展開状態では放射状に延びだし、成形後の形状ではリング状連結部8aから軸方向に延び出しながら径方向に変位して弁体4aのばねが係止する係止部4dに至る弾性片8bを、周方向に一定間隔をあけて複数本(図は3本)設けており、各弾性片8bがばね力発生部として構成されたものになっている。
【0028】
電磁弁に組み込まれた状態の付勢部材8Aは、一端のリング状連結部8aが弁室6の第
2の壁面6bで支持され、弾性片8bの先端を弁体4aの先端近くの係止部(テーパ部)
に当接させる。リング状連結部8aは、第2の壁面6bに接するとともに、弾性片8bの
基端部外側が第2の壁面6bにつながる弁室側壁6dに当接・圧入されて固定されてもよ
い。
【0029】
このような構造にすると、弁体4aが電磁吸引力で駆動されて閉弁方向に動いたときに
弾性片8bが弾性変形してその弾性片8bに弾性復元力が生じ、その力が開弁方向への付
勢力となって弁体4aに作用する。従って、コイルスプリングを使わずに常開型の電磁弁
を成立させることができる。
【0030】
板ばねで形成した図示の付勢部材8Aは、弾性片8bが軸方向に伸びて流体の流れを遮
り難いものになっており、コイルスプリングに比べてスプリングの隙間を通過する流体の
抵抗が小さくなる。これにより、付勢部材8Aへの乱流の影響が小さくなる。また、弁体
4aの変位に伴う支持点の変位も起らない構造になっており、支持点の変位によるばね力
の変動も起こらない。これらのことが有効に作用して電磁弁の弁部の開度調整と圧力制御
の安定性が高まる。
【0031】
図5図7は、板ばねで形成された付勢部材8Aの他の例を表している。この付勢部材8Aは、一端のリング状連結部8aから伸びださせた複数の弾性片8bの折り曲げ箇所を上述した付勢部材よりも多くしており、この点と、一端のリング状連結部8aの支持を弁室6の第1の壁面6aで行ったことが図1の電磁弁と相違しているが、この構造でも図1の電磁弁と優位差のない効果を得ることができる。
【0036】
板ばねで構成される付勢部材は、複数に分けたものを所要箇所に個々に取り付けて構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
この発明の電磁弁1Aは、高度で安定した圧力制御が要求される液圧機器、例えば、自動車に搭載される液圧ブレーキ装置のブレーキ液圧制御ユニットなどに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1A 電磁弁
2 電磁石
2a コイル
2b ヨーク
2c ガイド
2d スリーブ
2e プランジャ
4 弁部
4a 弁体
4b 弁座
4d 係止部
5 流入路
6 弁室
6a 第1の壁面
6b 第2の壁面
7 流出路
8A,8B,8C 付勢部材
8a リング状連結部
8b 弾性片
8c 脚部
8d 押圧部
8e 線ばね
9 チェック弁
10 シート
21 ECU
22 ハウジング
23 液圧源
24 ホイールシリンダ
C 軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7