【実施例】
【0021】
図1〜
図3において、本発明の一実施形態の背面、正面及び一部側面の外観を図示しており、本実施形態は、ロッカーの扉(9)と嵌合する錠カバー(4)と、錠カバー(4)にレバー支持板(15)を介して固定されレバー下枠(12)及びレバー上枠(13)と一体となっているレバー(1)と、錠カバー(4)の一部である錠カバー固定枠部(41)とレバー下枠(12)に緩嵌することができるクラッチ(2)と、鍵を挿入する鍵穴部(8)と連動するカム(3)と、カム(3)に延設されている閂(32)と、レバー下枠(12)、レバー上枠(13)及びクラッチ(2)に貫通するロット棒(7)などで、構成されている。
【0022】
また、本実施形態はカム(3)に閂(32)が
図1及び
図2に示すように延設されているため、本実施形態において第一状態とは解錠状態であり、第二状態とは施錠状態である。
【0023】
レバー(1)は、錠カバー(4)内側に位置し、レバー(1)とは別個の部材であり錠カバー(4)と嵌合するレバー支持板(15)及び付勢バネを介して水平方向に枢動可能に略平板の形状に設けられる。すなわち、
図1(a)において、紙面の奥側より手前側に入ってくる手の指の腹を、レバー(1)に引っかけて、紙面の手前側より奥側に付勢バネの復元力に抗って枢動させることができ、また、レバー(1)から指を離せば付勢バネの復元力に従って、レバー(1)が元の位置に戻る。
【0024】
レバー(1)の下側及び上側に、それぞれレバー下枠(12)及びレバー上枠(13)が、レバー(1)と一体として設けられている。当該レバー下枠(12)は、レバー支持板(15)とレバー枠爪部(14)を介して係止し得るために、そしてクラッチ(2)と緩嵌し得るために、下側に略楕円形状の開口部と、その上部に略楕円形状の開口部の外形より小さい外径の円筒部とからなり、少なくとも上側の円筒部の内側の貫通孔はいずれの断面においても同形の円形を有しており、また、当該上側の円筒部に付勢バネを係止し得るため、レバー(1)との境界部分において切欠を有する。そして、当該レバー上枠(13)は、レバー支持板(15)とレバー枠爪部(14)を介して係止し得るため上側に円筒部と、その下部に上側の円筒部の外径より小さい外径の円筒部とからなっており、上側と下側の円筒部の内側の貫通孔はいずれの断面においても同形の円形を有している。なお、レバー下枠(12)及びレバー上枠(13)には鉛直方向に貫通孔を有するため、ロット棒(7)を貫通することができるが、ロット棒(7)の水平断面の対角線よりも、レバー下枠(12)及びレバー上枠(13)の貫通孔の内径のほうが大きいため、レバー下枠(12)及びレバー上枠(13)とロット棒(7)とは係止することができず、レバー(1)の水平方向の枢動に起因して、レバー下枠(12)及びレバー上枠(13)そのものによりロット棒(7)を水平方向に枢動することはできない。なお、レバー下枠(12)及びレバー上枠(13)とロット棒(7)とが係止しなければ良いのであり、レバー下枠(12)及びレバー上枠(13)の貫通孔の水平断面の形状と、ロット棒(7)の水平断面の形状は本実施例に限定されるものではない。また、レバー(1)と、レバー下枠(12)及びレバー上枠(13)とは、連動すれば良いのであり、各々別個の部品として作製し所定の方法により結合させてもよい。さらに、レバー(1)と、レバー下枠(12)、レバー上枠(13)の材質は、軽量化のため合成樹脂を使用することが好ましいが、ステンレスや鉄などの金属を使用することもできる。
【0025】
クラッチ(2)は、中心軸に水平断面が四角形である貫通孔を有する外形が円柱形状の基本骨格に、その下端に近い側面から水平方向に円柱状の突起物であるクラッチ突部(21)が突設され、その基本骨格の側面から略三角柱のクラッチ爪部(22)が中心軸を挟み対照にして両側に、そして上側にも、合計4個設けられている。下側の一対のクラッチ爪部(22)は、クラッチ突部(21)より下方にクラッチ突部(21)の突出方向よりクラッチ(2)の底面からみて反時計回りに45°回転した方向に突出するように設けられており、それら下側の一対のクラッチ爪部(22)を、クラッチ突部(21)を越えて上側に平行移動させた位置に、下側の一対のクラッチ爪部(22)の上下の高さより長い上側の一対のクラッチ爪部(22)が設けられている。そして、クラッチ(2)の貫通孔にロット棒(7)が貫通し、なおかつ内接しているため、クラッチ(2)の水平方向の枢動により、ロット棒(7)を水平方向に枢動することができる。なお、クラッチ(2)にロット棒(7)が内接することにより、クラッチ(2)とロット棒(7)の枢動が連動すれば良いのであり、クラッチ(2)の貫通孔の水平断面の形状と、ロット棒(7)の水平断面の形状は本実施例に限定されるものではない。また、クラッチ突部(21)は、カム(3)の枢動に伴いカム孔(31)の周囲の縁に当接できれば良いのであり、その形状は円筒形状に限定されるものではない。なお、クラッチ(2)の材質は、軽量化のため合成樹脂を使用することが好ましいが、ステンレスや鉄などの金属を使用することもできる。
【0026】
また、
図1に示すように、クラッチ(2)は、第一状態において、錠カバー固定枠部(41)とカム(3)に挟まれて位置し、鍵の枢動と連動するカム(3)のカム孔(31)の下側の縁にクラッチ突部(21)が係止することにより、上方に押し上げられて、レバー下枠(12)の略楕円形状の開口部に緩嵌する。
【0027】
さらに、
図2に示すように、クラッチ(2)は、第二状態において、カム孔(31)の上側の縁と錠カバー固定枠部(41)の下側の縁とに挟まれてクラッチ突部(21)が係止することにより、カム(3)及び錠カバー固定枠部(41)に対して固定される。
【0028】
カム(3)は、その一部と重なるように鍵穴部(8)が設けられているため枢動軸を共通し、また、鍵穴部(8)の略台形の突部と係合する突起物をカム(3)上に有することにより、鍵穴部(8)の枢動に連動して枢動することができる。カム(3)は、略L字の形状を有し、一端側に鍵穴部(8)が重なるように設けられており、他端側に閂(34)が延設されており、屈曲している部分に略三角形状のカム孔(31)が穿設されている。また、カム孔(31)は、クラッチ突部(21)が枢動できるように設けられていれば良く、窪みなどの穴を採用し得るのであって、貫通孔に限定されない。また、閂(34)は、カム(3)に延設せずに別個の部材として設けてもよい。
【0029】
また、
図1に示すように、カム(3)は、第一状態において、鍵穴部(8)の枢動により上方に押し上げられる方向に枢動し、カム(3)に延設された閂(32)をそれと係止し得るロッカーの筺体に設けられた係止孔(図示しない)から解錠されているため、レバー(1)を手により枢動することにより、ロッカーの扉(9)を開閉することができる。
【0030】
さらに、
図2に示すように、カム(3)は、第二状態において、鍵穴部(8)の枢動により下方に押し下げられる方向に枢動し、カム(3)に延設された閂(32)をそれと係止し得るロッカーの筺体に設けられた係止孔(図示しない)と係止されるため、レバー(1)を手により枢動しても、ロッカーの扉(9)を開閉することができない。
【0031】
錠カバー(4)は、扉(9)に設けた孔と嵌合することができ、レバー(1)、クラッチ(2)、カム(3)、鍵穴部(8)を取り付ける土台となる部材である。そして、錠カバー(4)の下側に、錠カバー(4)の一部として、一部穿孔された又は穿孔されていない小片板を組み合わされ、クラッチ(2)と係止することができる錠カバー固定枠部(41)が設けられている。また、錠カバー固定枠部(41)を構成する各種小片板の穿孔されている部分を、錠カバー固定枠部孔(42)として
図5〜
図7で図示している。
【0032】
上ラッチ(5)及び下ラッチ(6)は、それぞれ上ラッチ爪(51)及び下ラッチ爪(61)を介し、ロッカーの筺体に設けられたラッチ受け部(図示しない)との係止又は係止の解除により、扉(9)の上下位置での施錠又は解錠を行い得る部材である。上ラッチ(5)及び下ラッチ(6)は、一端にロット棒(7)を内接させる貫通孔を有しており、他端側にロッカーの筺体に設けられたラッチ受け部(図示しない)との係止し得る略三角板形状の上ラッチ爪(51)及び下ラッチ爪(61)を有する。また、上ラッチ(5)又は下ラッチ(6)のいずれか一方のみを用いて、ロッカーの筺体に設けられたラッチ受け部(図示しない)と係止させても良い。
【0033】
また、
図1に示すように、上ラッチ(5)及び下ラッチ(6)は、第一状態において、レバー(1)を手により枢動することに起因して、レバー下枠(12)、クラッチ(2)、ロット棒(7)とが連動することにより水平方向に枢動し、ロッカーの筺体に設けられたラッチ受け部(図示しない)と係止することできるし、また係止を解除することもできる。
【0034】
さらに、
図2に示すように、上ラッチ(5)及び下ラッチ(6)は、第二状態において、レバー(1)を手により枢動しても、レバー下枠(12)は連動するが、クラッチ(2)がレバー下枠(12)と緩嵌していないため、クラッチ(2)は枢動せず、そのため、クラッチ(2)に内接するロット棒(7)とともに枢動せず、ロッカーの筺体に設けられたラッチ受け部(図示しない)との係止を解除することできない。
【0035】
ロット棒(7)は、ロッカーの扉(9)の背面側に長軸が鉛直軸方向となるよう位置する四角柱の形状であり、
図1に示すように第一状態では、レバー(1)の水平方向の枢動に起因して、レバー下枠(12)に緩嵌するクラッチ(2)の枢動により連動して枢動し得る。ロット棒(7)がそのように枢動すると、前述したように上端で内接する上ラッチ(5)及び下端で内接する下ラッチ(6)がロッカーの筺体に設けられたラッチ受け部(図示しない)との係止が解除でき、扉(9)を開閉することができる。また、ロット棒(7)の形状は、レバー下枠(12)及びレバー上枠(13)に内接せず、かつ、クラッチ(2)に内接すれば良く、三角柱、六角柱などの断面が多角形の棒状の形状などを採用し得るのであって、四角柱に限定されない。
【0036】
また、ロット棒(7)は、
図2に示すように第二状態では、レバー下枠(12)とクラッチ(2)とは緩嵌されておらず、レバー(1)を枢動したとしてもクラッチ(2)にはその枢動が伝わらないため、クラッチ(2)に内接するロット棒(7)も枢動せず、上ラッチ(5)及び下ラッチ(6)がロッカーの筺体に設けられたラッチ受け部(図示しない)との係止が解除されず、閂(32)がカム(3)に延設されていなかったとしても扉(9)を開閉することができない。また、省スペースで製造するためなどの理由で、ロット棒(7)を2つに分割することができる。このときクラッチ(2)の貫通孔を仕切り板で塞ぐなとして、クラッチ(2)の内部で2つに分割されたロット棒(7)をつなぎ合わせることが好ましい。なお、上記のように2つに分割されたロット棒(7)のうち一本のみを用いても良い。
【0037】
鍵穴部(8)は、
図3に示すように鍵(図示しない)を差し込む穴が設けられており、鍵の枢動により
図1及び
図2の鍵穴部(8)の背面側も枢動する。鍵穴部(8)は、錠カバー(4)の正面より背面にかけて略円筒状の部分が貫通しており、その背面側に略台形の突部を有する円盤状の部分が固設されている。その略円筒状の部分と円盤状の部分との間にカム(3)の一端が挟持されている。
【0038】
ロッカーの扉(9)は、ロッカーの筺体と蝶番などを用いて取付けられる。ロッカーは種々物品を収容する装置としての一実施例であるので、本発明をロッカー以外の書籍やファイルなどの事務用品などを収容するキャビネットなど他の収容装置に用いることもできる。また、扉(9)の高さや幅なども必要に応じて任意に調整することができるし、ロッカーは一枚の扉ではなく二枚以上の扉を有していても良い。
【0039】
以下に、第一状態すなわち解錠状態から第二状態すなわち施錠状態への変動について、
図4〜
図10も参照しながら説明する。
【0040】
第一状態は、
図1、
図5、
図6、
図8、
図9に、第二状態は、
図2、
図3、
図4、
図7、
図10に示している。
【0041】
第一状態では、
図5に示すように、クラッチ(2)は、クラッチ突部(21)がカム孔(31)の下の縁に押し上げられ、レバー下枠(12)に緩嵌する位置にある。そして、レバー(1)の枢動に起因してレバー下枠(21)が枢動するため、
図5及び
図8に示すように、レバー下枠(12)と当接するクラッチ爪部(22)によりクラッチ(2)も枢動する。そして、クラッチ(2)に内接し貫通するロット棒(7)も連動して枢動するため、ロット棒(7)の上端及び下端が内接する上ラッチ(5)及び下ラッチ(6)も枢動し、ロッカーの筺体に設けられたラッチ受け部(図示しない)と係止することできるし、また係止を解除することもできる。このように第一状態、すなわち解錠状態では閂(32)の係止も解除され、上ラッチ(5)及び下ラッチ(6)の係止及び解錠がレバー(1)の操作により行うことができるので、扉(9)を開閉することができる。なお、レバー(1)が操作されると、
図5においてクラッチ突部(21)は、カム孔(31)の左側に枢動する。これは、
図8に示すように、レバー下枠(12)の略楕円形状の開口部と、クラッチ爪部(22)とは嵌合しているわけではなく一方の当接位置と他方の当接位置との間に自由に可動できる範囲があるためである。
【0042】
そして、第一状態から第二状態へと移行している一の途中状態では、鍵穴部(8)の正面の差し込み穴に鍵を入れ枢動され、鍵穴部(8)の背面側に位置する略台形状の突部を有する円盤状の部分が、カム(3)に設けられた突起物と係合し、カム(3)が下方に押し下げられる。
【0043】
第一状態にてロッカー内の荷物の出し入れ等で扉(9)を開閉しない場合、すなわち、第一状態にてレバー(1)を水平方向に枢動しない場合、クラッチ突部(21)は、第一状態において
図1、
図5、
図8に示す方向に突き出ている。このため、クラッチ突部(21)は、第一状態から第二状態へと移行している一の途中状態では、カム(3)の下方への枢動により、クラッチ突部(21)の突き出ている方向を変えることなく、カム孔(31)の下側の縁に支持され下降する。さらにカム(3)が下方に枢動すると、クラッチ突部(21)が錠カバー固定枠部(41)の下側の上縁に支持されることにより、クラッチ(2)は、第二状態の位置で静止する。
【0044】
他方、第一状態にてロッカー内の荷物の出し入れ等で扉(9)を開閉した場合、すなわち、第一状態にてレバー(1)を水平方向に枢動した場合、レバー下枠(12)とクラッチ(2)が緩嵌しているため、クラッチ突部(21)は、
図1、
図5、
図8の位置より水平方向に枢動し、
図6及び
図9に示す一の位置へと移動する。また、レバー(1)から手を離すと、レバー(1)とレバー下枠(12)との間に設けられている付勢バネの復元力によりレバー(1)は元の位置、すなわちレバー(1)操作する前の位置へと戻る。第一状態では、レバー下枠(12)とクラッチ(2)が緩嵌しているため、レバー(1)が元の位置に戻ったとき、クラッチ(2)も元の位置に戻るように枢動する。このため、クラッチ突部(21)は、
図1、
図5、
図8に示す位置に戻る。そして、クラッチ突部(21)は、第一状態から第二状態へと移行している一の途中状態では、前段落に説明したように、カム(3)の下方への枢動により、クラッチ突部(21)の突き出ている方向を変えることなく、カム孔(31)の下側の縁に支持され下降する。さらにカム(3)が下方に枢動すると、クラッチ突部(21)が錠カバー固定枠部(41)の下側の上縁に支持されることにより、クラッチ(2)は、第二状態の位置で静止する。
【0045】
第二状態では、
図7に示すように、クラッチ(2)は、クラッチ突部(21)がカム孔(31)の上側の縁と錠カバー固定枠部(41)の下側の縁とに挟まれてクラッチ突部(21)が係止することにより、カム(3)及び錠カバー固定枠部(41)に対して固定される。また、クラッチ(2)とレバー下枠(12)との緩嵌は解除されているので、レバー(1)を操作しても、クラッチ(2)は枢動することがないので、クラッチ(2)に内接するロット棒(7)、上ラッチ(5)及び下ラッチ(6)も枢動せず、ロッカーの筺体に設けられたラッチ受け部(図示しない)と係止を解除することができない。このように第二状態、すなわち施錠状態では、上ラッチ(5)及び下ラッチ(6)が係止され、あらに閂(32)も係止されているため、扉(9)を開けることはできない。
【0046】
さらに、第二状態から第一状態へと移行するとき、クラッチ(2)は、カム(3)の上方への枢動により、カム孔(32)の下縁とクラッチ突部(21)が当接しながら、枢動することなく第一状態の位置に押し上げられる。