(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施例について説明する。
【0012】
まず、光変調器モジュールに備わる光変調器の一例として、マッハツェンダ型光変調器について説明する。
図1(a)は、マッハツェンダ型の光変調器10の模式的な平面図である。
図1(b)は、
図1(a)のA−A線断面図である。
図1(a)および
図1(b)を参照して、光変調器10は、光導波路が形成された基板14を備える。基板14は、LiNbO
3(LN)基板、LiTaO
2基板等の、電気光学結晶を有する電気光学基板である。
【0013】
光導波路は、入射導波路と、入射導波路から分岐して形成される平行導波路11aおよび平行導波路11bと、平行導波路11a,11bが合流する出射導波路とを含む。光導波路は、基板14にTi(チタン)等の金属を熱拡散させることによって形成される。
【0014】
図1(b)を参照して、基板14の光導波路側の面には、バッファ層15が設けられている。光導波路は、バッファ層15によって覆われている。バッファ層15は、光導波路を伝播する光が後述する電極によって吸収されることを防ぐために設けられている。バッファ層15は、例えば、厚さ0.2μm〜2μm程度のSiO
2等である。
【0015】
平行導波路11a上には、バッファ層15を介して、信号電極12が設けられている、平行導波路11b上には、バッファ層15を介して、接地電極13aが設けられている。また、バッファ層15上において、信号電極12を挟んで接地電極13aと反対側に、接地電極13bが設けられている。それにより、信号電極12および接地電極13a,13bは、コプレーナ電極を構成する。基板14としてZカット基板を用いる場合には、Z方向の電解に起因する屈折率変化を利用するために、信号電極12および接地電極13aは、平行導波路の真上に配置される。
【0016】
光変調器10を高速で駆動する場合、信号電極12および接地電極13a,13bの終端を抵抗で接続することによって進行波電極を構成し、進行波電極の入力側からマイクロ波信号を印加する。この場合、電界によって平行導波路11a,11bの屈折率が一例として+Δn、−Δnのように変化する。それにより、平行導波路11a,11b間の位相差が変化するため、マッハツェンダ干渉が生じる。その結果、出射導波路から、強度変調された信号光が出力される。電極の断面形状を変化させることでマイクロ波の実効屈折率を制御し、光の速度とマイクロ波の速度とを整合させることによって高速の光応答特性を得ることができる。
【0017】
図2(a)は、比較例1に係る光変調器モジュールの模式的な平面図である。
図2(b)は、
図2(a)のB−B線断面図である。
図2(a)および
図2(b)を参照して、光変調器10は、金属製のパッケージ20内に収容されている。
図2(a)および
図2(b)では省略されているが、パッケージ20には上部に蓋が設けられていてもよい。パッケージ20の一端には、光ファイバ21aが内部を通るコネクタ22aが設けられている。パッケージ20の他端には、光ファイバ21bが通るコネクタ22bが設けられている。光変調器10の入射導波路は、光ファイバ21aの光軸と一致するように配置されている。光変調器10の出射導波路は、光ファイバ21bの光軸と一致するように配置されている。
【0018】
信号電極12の一端と接地電極13a,13bの一端とは、終端抵抗23を介して接続されている。信号電極12および接地電極13a,13bの他端は、中継基板31を介して外部に導かれている。中継基板31の上面には、信号電極12用の信号電極33が形成されている。信号電極33には、ハンダ34によってリードピン36が接続されている。リードピン36は、パッケージ20の側壁を貫通する同軸コネクタ35を介して外部に導かれている。なお、リードピンはリード線よりも硬性があるため、パッケージなど接地とリードピンとの間隔を正確に維持することができる。したがって、伝送路としてインピーダンスマッチングを正確にとることができる。
【0019】
中継基板31の上面には、さらに、接地電極13a,13bに接続される接地電極33aが形成されている。
図2(c)を参照して、この接地電極33aは、ビアホール33bを介して、中継基板31の下面に形成された接地電極32に接続されている。接地電極32は、パッケージ20と導通している。パッケージ20は、接地されている。
【0020】
比較例1に係る光変調器モジュールにおいては、エッジマウント型コネクタ等を介して、ドライバアンプからの出力電気信号をリードピン36に入力する必要がある。したがって、実装が容易ではない。
【0021】
図3(a)および
図3(b)は、比較例2に係る光変調器モジュールを説明するための図である。比較例2に係る光変調器モジュールは、実装を容易にするための表面実装型のモジュールである。比較例2に係る光変調器モジュールにおいては、ドライバアンプからの出力電気信号がプリント基板から入力される。したがって、実装性が改善される。
【0022】
図3(a)は、
図2(b)に対応する図である。比較例2においては、実装性向上を目的として、フレキシブル基板41を用いている。フレキシブル基板41は、柔軟性を有する基板であり、ポリイミド、液晶ポリマー等からなる。本例においては、パッケージ20の下面に、パッケージ20を貫通する絶縁性のガラス部材25が設けられている。ガラス部材25は、一例として円柱状に形成されている。また、ガラス部材25の下面に、フレキシブル基板41が設けられている。リードピン36は、ガラス部材25およびフレキシブル基板41を貫通して、フレキシブル基板41の下面まで導かれている。
【0023】
本例においては、接地電極32を介して接地電極13aに接続されるリードピン37a、および、接地電極32を介して接地電極13bに接続されるリードピン37bが設けられている。リードピン37a,37bは、ガラス部材25およびフレキシブル基板41を貫通して、フレキシブル基板41の下面まで導かれている。また、リードピン37a,38bは、リードピン36を基準として対称配置されている。
【0024】
図3(b)は、フレキシブル基板41を下面側から視た図である。
図3(b)を参照して、フレキシブル基板41の下面には、信号電極43および接地電極45a,45bが形成されている。リードピン36は、ハンダ42を介して信号電極43に接続されている。リードピン37aは、ハンダ44aを介して接地電極45aに接続されている。リードピン37bは、ハンダ44bを介して接地電極45bに接続されている。接地電極45a,45bは、信号電極43を基準として対称配置されている。それにより、コプレーナ線路(CPW)が形成される。
【0025】
比較例2に係る構成によれば、フレキシブル基板41の下面において、接地用のリードピンおよび信号用のリードピンの両方をハンダ付けすることができるので、実装性が高い。特にリードピン数が多い場合には有利である。しかしながら、ハンダ付けのためには、隣り合うリードピンの間隔を例えば1mm以上離す必要がある。この場合、信号電極と接地電極との間隔が大きくなる。それにより、特性インピーダンスが局所的に所望値(例えば50Ω)から大きくずれて反射特性(S11)が劣化する。また、接地用のリードピンと電極との接触面積がリードピンの部分に限られるため、高周波に対して十分に接地できない。それにより、透過特性(S21)が劣化する。反射特性(S11)および劣化特性(S21)は、20Gbps、40Gbps等の高速変調帯域で問題となり得る。また、DQPSK変調器、DP−QPSK変調器等の複数の信号線がある変調器においては、高密度化が難しくなり、実装に必要な面積が広くなるなどの問題が生じ得る。そこで、以下の実施例では、スペース上の制約を抑制しつつ、高周波特性と実装性とを両立することができる光変調器モジュールについて説明する。
【0026】
ここで、反射特性(S11)は、ドライバアンプから光変調器への入力電力Pinに対する反射電力(Pr)の比である。透過特性(S21)は、ドライバアンプから光変調器への入力電力Pinに対する出力電力Poutの比である。具体的には、反射特性(S11)はPr/Pin(dB)であり、透過特性(S21)はPout/Pin(dB)である。
【実施例1】
【0027】
図4(a)〜
図4(c)は、実施例1に係る光変調器モジュール100を説明するための図である。光変調器モジュール100は、実装を容易にするための表面実装型のモジュールである。
図4(a)は、
図3(a)に対応する図である。
図4(b)は、
図3(b)に対応する図であり、フレキシブル基板41およびパッケージ20を下面側から視た図である。
図4(c)は、フレキシブル基板41を上面側から視た図である。
【0028】
図4(a)および
図4(b)を参照して、リードピン36は、ガラス部材25を貫通して、フレキシブル基板41の側面に接しつつフレキシブル基板41の下面にまで導かれている。本実施例においては、ガラス部材25は円柱状に形成されており、リードピン36は当該円柱の略中心を貫通している。リードピン36は、ハンダ42を介して、フレキシブル基板41の下面の信号電極43に接続されている。
【0029】
なお、リードピン36がフレキシブル基板41の側面に接して設けられていることから、リードピン36とフレキシブル基板41との接触面積が十分に得られないことがある。そこで、リードピン36の断面を矩形状にすることによって、リードピン36とフレキシブル基板41との接触面積を確保することができる。
【0030】
フレキシブル基板41の上面には、接地電極45が所定の幅を持って形成されている。リードピン36がフレキシブル基板41の側面に沿って設けられていることから、接地電極45は、当該側面から離間して形成されている。例えば、フレキシブル基板41の上面において、リードピン36が設けられている箇所を囲む半円領域を回避して接地電極45が設けられていてもよい。接地電極45は、ハンダ44を介して、パッケージ20の外壁(例えば下面)に接続されている。例えば、接地電極45は、ガラス部材25に隣接する部位のパッケージ20の下面に接続されていてもよい。
【0031】
本例においてはリードピン36がフレキシブル基板41の側面に設けられていることから、フレキシブル基板41の当該側面とパッケージ20とが離間している。それにより、フレキシブル基板41の下面側から、ハンダ44の流れ出しを確認することができる。
図4(b)では、流れ出しとして、ハンダ44a,44bが確認される。それにより、パッケージ20とフレキシブル基板41の接地電極45との接続状態を確認することができる。したがって、高い歩留まりを維持することができる。
【0032】
本実施例においては、接地用にリードピンを用いず、フレキシブル基板41の上面に形成された接地電極45とパッケージ20の外壁とが接続されている。この場合、リードピンを用いる場合に比較して、接触面積が広くなる。それにより、高周波に対して十分に接地することができる。その結果、Sパラメータの劣化を抑制することができる。また、インピーダンスミスマッチを低減するためのスペーサ等を用いる必要がないため、スペース上の制約を抑制することができる。
【0033】
また、本実施例においては、フレキシブル基板41の上面に所定の幅を持つ接地電極45が形成され、フレキシブル基板41の下面に信号電極43が形成されていることから、マイクロストリップ(MSL)構造が形成されている。特性インピーダンスは基板の厚みと信号線幅とによる影響が支配的となるので、フレキシブル基板41の厚みと信号電極43の線幅を所望の値付近に管理することによって、インピーダンスが所望値(例えば50Ω)付近になる。それにより、反射特性(S11)が改善される。
【0034】
また、信号電極43がフレキシブル基板41の下面に形成されていることから、光変調器モジュール100の実装が容易である。なお、接地電極45は、ビアホール等を介してフレキシブル基板41の下面に導くことができる。したがって、フレキシブル基板41を用いて、光変調器モジュール100を表面実装することができる。
【0035】
以上のことから、本実施例によれば、スペース上の制約を抑制しつつ、高周波特性と実装性とを両立することができる。
【0036】
なお、本実施例で用いているハンダの代わりに、導電性接着剤等を用いてもよい。また、
図4(d)を参照して、断面円形のリードピン36を用いる場合には、フレキシブル基板41がリードピン36と接する部位が半円形に欠けていてもよい。この場合、リードピン36とフレキシブル基板41との接触面積を広くすることができる。さらに、本実施例ではフレキシブル基板41を用いているが、剛性の高い基板を用いてもよい。
【0037】
なお、パッケージ20とフレキシブル基板41との接続部における断面形状はMSL構造であることが好ましいが、
図4(c)を参照して、接地電極45の一部はリードピン36を回避するように形成されている。これは、短絡やインピーダンスの局所的低下を回避するためである。しかしながら、リードピン36が接地電極45と離れすぎると、MSLモードが成立しなくなり、高周波特性が劣化する。そこで、接地電極45とリードピン36との最短距離dYを適正範囲内に設定することが好ましい。
図5(a)は、30GHzにおけるSパラメータと最短距離dYとの関係の計算結果である。
図5(a)を参照して、反射特性(S11)を−20dB以下に抑えるためには、最短距離dYを260μm以下にすることが好ましい。
【0038】
なお、比較例2では、信号用および接地用の両方のリードピンがフレキシブル基板を貫通して突き出ていたが、本実施例においては、リードピン36だけがフレキシブル基板41の下面から下方へ突き出ている。それにより、リードピン36の先端から接地電極45までの距離が長くなる。リードピン36の突き出し長が長くなるとインピーダンスのミスマッチが大きくなるおそれがある。そこで、リードピン36の突き出し長と30GHzにおけるSパラメータとの関係を計算した。計算結果を
図5(b)に示す。
図5(b)を参照して、反射特性(S11)を−20dB以下に抑えるためには、リードピン36がフレキシブル基板41から突き出ている部分の長さが590μm以下にすることが好ましい。
【0039】
なお、
図4(a)〜
図4(c)の構成では、接地電極45とパッケージ20との接触面積が大きくなる。この場合、温度や湿度が変化した場合に、フレキシブル基板41、ハンダ44およびパッケージ20の膨張係数の差に起因する応力が強くなり、特性劣化や破損を引き起こすおそれがある。特にDP−QPSK変調器などの端子数が多い変調器においてこの問題は顕著となり、長期信頼性を劣化させる主要因となりうる。
(フレキシブル基板の他の例1)
【0040】
そこで、フレキシブル基板41の下面側から接地電極45を観察できることが好ましい。
図6(a)および
図6(b)は、フレキシブル基板41の他の例を説明するための図である。
図6(a)は、フレキシブル基板41の下面とリードピン36側の側面とが描かれた斜視図である。
図6(b)は、フレキシブル基板41の下面が描かれた平面図である。
【0041】
図6(a)および
図6(b)を参照して、フレキシブル基板41において、リードピン36が配置される箇所に切欠きが形成されている。リードピン36は、この切欠き部分に配置されて信号電極43に接続される。フレキシブル基板41のリードピン36側の側面に、さらに切欠き46aおよび切欠き46bが形成されていてもよい。切欠き46a,46bの形状は、特に限定されるものではないが、一例として半円形である。切欠き46aおよび切欠き46bは、リードピン36が配置される切欠きを基準にして対称位置に設けられている。また、切欠き46a,46bは、
図4(c)の接地電極45が形成される箇所に設けられている。それにより、フレキシブル基板41の下面から接地電極45を確認することができる。また、接地電極45とパッケージ20とを接続するハンダ44の流れ出しを確認することができる。
(フレキシブル基板の他の例2)
【0042】
図7(a)および
図7(b)は、フレキシブル基板41の他の例を説明するための図である。
図7(a)は、フレキシブル基板41の下面とリードピン36側の側面とが描かれた斜視図である。
図7(b)は、フレキシブル基板41の下面が描かれた平面図である。
【0043】
図7(a)および
図7(b)を参照して、接地電極45の一部は、フレキシブル基板41の端部から突出するフライングリードとなっていてもよい。この場合、フレキシブル基板41のリードピン36側の端からフライングリードを確認することができる。それにより、接地電極45を確認することができる。また、接地電極45とパッケージ20とを接続するハンダ44の流れ出しを確認することができる。
(フレキシブル基板の他の例3)
【0044】
図8(a)および
図8(b)は、フレキシブル基板41の他の例を説明するための図である。
図8(a)は、フレキシブル基板41の下面とリードピン36側の側面とが描かれた斜視図である。
図8(b)は、フレキシブル基板41の下面が描かれた平面図である。
図8(a)および
図8(b)を参照して、接地電極45の一部は、フレキシブル基板41の側面まで延びていてもよい。それにより、接地電極45を確認することができる。また、接地電極45とパッケージ20とを接続するハンダ44の流れ出しを確認することができる。
(フレキシブル基板の他の例4)
【0045】
図9(a)および
図9(b)は、フレキシブル基板41の他の例を説明するための図である。
図9(a)は、フレキシブル基板41の下面とリードピン36側の側面とが描かれた斜視図である。
図9(b)は、フレキシブル基板41の下面が描かれた平面図である。
図9(a)および
図9(b)を参照して、フレキシブル基板41のリードピン36側の側面には、切欠き部分の側壁に電極47a,47bが形成されていてもよい。さらに、接地電極45は、これらの電極47a,47bに接続されていてもよい。この場合、接地電極45を確認することができる。また、接地電極45とパッケージ20とを接続するハンダ44の流れ出しを確認することができる。
(パッケージの他の例)
【0046】
図10は、パッケージ20の他の例を説明するための図である。
図10は、フレキシブル基板41およびパッケージ20の下面と、フレキシブル基板41のリードピン36側の側面とが描かれた斜視図である。
図10を参照して、パッケージ20が接地電極45に接続される箇所において、パッケージ20に溝26a,26bが形成されていてもよい。すなわち、パッケージ20の下面において、パッケージ20が接地電極45に接続される箇所に凹部が形成されていてもよい。
【0047】
この場合、ハンダ44によってパッケージ20と接地電極45とを接続する場合、溝26a,26bにハンダ44が流れ込む。それにより、ハンダ44の流れ出しを確認することができる。これらの溝26a,26bは、フレキシブル基板41のリードピン36側の端部を横切るように設けられていることが好ましい。ハンダ44の流れ出しの確認が容易となるからである。
【実施例2】
【0048】
図11(a)〜
図11(c)は、実施例2に係る光変調器モジュール100aを説明するための図である。
図11(a)は、
図4(a)に対応する図である。
図11(b)は、
図4(b)に対応する図であり、フレキシブル基板41を下面側から視た図である。
図11(c)は、
図4(c)に対応する図であり、フレキシブル基板41を上面側から視た図である。
【0049】
図11(a)〜
図11(c)を参照して、リードピン36は、ガラス部材25を貫通するとともに、フレキシブル基板41を貫通してフレキシブル基板41の下面にまで導かれている。本実施例においては、ガラス部材25は円柱状に形成されており、リードピン36は当該円柱の略中心を貫通している。リードピン36は、ハンダ42によって、フレキシブル基板41の下面の信号電極43に接続されている。
図11(c)を参照して、接地電極45は、リードピン36が貫通する部位と所定の距離を空けて形成されている。それにより、接地電極45とリードピン36とのショートを防止することができる。
【0050】
本実施例においては、リードピン36がフレキシブル基板41を貫通していることから、ガラス部材25を囲むように、フレキシブル基板41をパッケージ20に接続させることができる。この場合、フレキシブル基板41とパッケージ20との接触面積が広くなる。それにより、フレキシブル基板41とパッケージ20との接着強度を高くすることができる。
【0051】
なお、フレキシブル基板41と、フレキシブル基板41の延長上のパッケージ20との間に隙間が形成されていることが好ましい。この場合、接地電極45の接続箇所が当該隙間において露出する。それにより、フレキシブル基板41の下面側から接地電極45の接続箇所を確認することができる。また、フレキシブル基板41とパッケージ20との接続箇所において、接地電極が露出するようにパッケージ20に切欠きが形成されていることが好ましい。この場合、接地電極45の接続箇所を確認することができる。
【0052】
また、接地電極45の上面において、ハンダ44とリードピン36との間に、絶縁性のカバーレイ48が設けられていることが好ましい。この場合、ハンダ44の流れ出しによるリードピン36と接地電極45とのショートが抑制される。カバーレイ48として、例えばポリイミド等を用いることができる。
【0053】
図12(a)〜
図12(d)は、フレキシブル基板41の例を説明するための図である。
図12(a)〜
図12(d)は、フレキシブル基板41を下面側から視た図である。
図12(a)を参照して、フレキシブル基板41には、接地電極45が形成されている箇所に貫通孔49が形成されていてもよい。貫通孔49は、ガラス部材25を回避して形成されている。
【0054】
図12(b)を参照して、フレキシブル基板41には、接地電極45が形成されている箇所に、切欠き49aが形成されていてもよい。切欠き49aは、ガラス部材25を回避して形成されている。
図12(c)を参照して、フレキシブル基板41には、ガラス部材25を囲むように、複数の貫通孔49bが形成されていてもよい。貫通孔49bは、リードピン36の貫通孔と同形状であってもよい。この場合、貫通孔を形成する工程が簡略化される。
【0055】
なお、高周波特性を考慮すると、貫通孔49、49bおよび切欠き49aの外縁のうち、リードピン36側にハンダが付着していることが好ましい。また、応力低減のために、貫通孔49、49bおよび切欠き49aの外縁のうちリードピン36から遠い側にハンダが付着していないことが好ましい。さらに、貫通孔49、49bおよび切欠き49aが透明性誘電層で覆われていることが好ましい。この場合、ハンダの這い上がりを抑制することができる。
【0056】
図12(d)を参照して、フレキシブル基板41の下面において、リードピン36に対して信号電極43と反対側にビア49cが形成されていてもよい。この場合、リードピン36に結合できなかった信号の直進を抑制することができる。また、フレキシブル基板41の下面に接地電極50を設け、ビア49cを介して接地電極45と接続させてもよい。この場合、信号電極43、接地電極45および接地電極50によってグランデッドコプレーナ構造が形成されるため、リードピン36周辺のグランドが強化される。なお、ビア49cは埋め込みでもよいが、貫通ビアであればグランドの強化とハンダの確認とを両立することができる。なお、
図12(a)〜
図12(d)の構成は、リードピン36がフレキシブル基板41の側面に沿って設けられている実施例1に適用することもできる。
【0057】
上記各実施例において、フレキシブル基板41に、パッケージ20との固定用の貫通孔が形成されていてもよい。
図13(a)は、フレキシブル基板41に固定用の貫通孔が形成されている例を説明するための平面図である。
図13(a)では、フレキシブル基板41の下面が描かれている。
図13(a)を参照して、フレキシブル基板41に、固定用の貫通孔51が形成されていてもよい。
【0058】
図13(b)は、貫通孔51に固定ピン52が挿入されている例を説明するための平面図である。
図13(c)は、
図13(b)のC−C線断面図である。
図13(b)および
図13(c)を参照して、貫通孔51に固定ピン52を挿入することによって、フレキシブル基板41とパッケージ20との固定強度を向上させることができる。また、固定用ピンをリードピン36よりもフレキシブル基板41の下面側に突出させることによって、光変調器モジュールの製造性を向上させることができるとともに、フレキシブル基板41の固定強度を向上させることができる。
【0059】
なお、MSL構造を採用する場合、フレキシブル基板41を伝播するMSLモードのインピーダンス値が重要となる。CPWモードと異なり、フレキシブル基板41の厚みと信号電極43の線幅とが重要なパラメータとなる。フレキシブル基板41を50Ωに設定する場合、フレキシブル基板41が薄いと信号電極43の線幅を狭くする必要がある。この場合、導体損失が増えるおそれがあり、信号線幅の微妙な変化によってインピーダンスが大きく変わるおそれがある。そこで、フレキシブル基板41の厚みを数10μmから100μm程度にすることが好ましい
【0060】
ただし、フレキシブル基板41を厚くすることによって柔軟性が損なわれる場合には、フレキシブル基板41は、パッケージ20との接続箇所と比較して柔軟性の高い部位を有していてもよい。例えば、
図14(a)を参照して、フレキシブル基板41上の接地電極45の幅が、パッケージ20との接続箇所以外の一部で狭くなっていてもよい。または、
図14(b)を参照して、接地電極45が接続部以外で網目状になっていてもよい。これらの場合、フレキシブル基板41の柔軟性を向上させることができる。
【0061】
または、接地電極45が、接続部以外の一部で信号電極43と同一面にのみ設けられていてもよい。例えば、
図15(a)を参照して、フレキシブル基板41とパッケージ20との接続箇所を領域1とし、フレキシブル基板41とプリント基板60の接続箇所を領域3とする。フレキシブル基板41は、リードピン36と反対側の端部においてプリント基板60と接続されている。領域1と領域3との間の領域を、領域2とする。領域1,3はMSLまたはGCPWであるが、領域2を片面電極とすることによって、フレキシブル基板41の柔軟性を向上させることができる。
【0062】
なお、フレキシブル基板41に十分な柔軟性が得られれば、
図15(b)を参照して、リードピン36をパッケージ20の側面に垂直に出して、フレキシブル基板41を90度に曲げてもよい。
【0063】
図16(a)は、比較例2に係る光変調器モジュールのSパラメータの計算結果である。
図14(b)は、
図12(d)で説明した実施例2に係る光変調器モジュール100aのSパラメータの計算結果である。
図14(a)および
図14(b)を参照して、実施例2に係る光変調器モジュール100aにおいては、比較例2に係る光変調器モジュールに比較して、反射特性(S11)および透過特性(S21)の両方とも改善されている。
【実施例3】
【0064】
図17(a)は、実施例3に係る光変調器モジュール100bを説明するための図である。
図17(a)は、
図4(a)に対応する図である。
図17(b)および
図17(c)は、パッケージ20を下面側から視た図である。
【0065】
本実施例においては、
図17(a)を参照して、ガラス部材25の外周に外部導体39が設けられている。それにより、リードピン36とガラス部材25と外部導体39とが同軸線路(例えば50Ω)を形成する。本実施例においては、この同軸線路がパッケージ20の下面の凹部に挿入されている。
【0066】
この場合、ハンダ44は、外部導体39の外周を回り込むようにしてフレキシブル基板41と接続されていることが好ましい。そこで、
図17(b)のように、外部導体39の外周に沿ってパッケージ20に溝が設けられていることが好ましい。この場合、この溝を通ってハンダ44が外部導体39の外周を回り込むようになる。溝に、ハンダ44を流し込む入口と流れ出しを確認するための出口とを、それぞれ設けることによって、効率よくハンダ付けすることができる。
【0067】
なお、
図17(c)を参照して、外部導体39の外周を回り込む溝を2経路としてもよい。この場合、ハンダ44の流れ出しを確認するための出口が2つ設けられることになるため、両方の経路の流れ出しを確認することができる。それにより、いずれの経路においてもハンダ44の流し込みができていることを確認することができる。その結果、十分な接地が得られ、Sパラメータの劣化を抑制することができる。
【0068】
なお、ガラス部材25とフレキシブル基板41との密着性が低下すると、ガラス部材25とフレキシブル基板41との間に隙間が形成される。この場合、隙間において特性インピーダンスが大きくなるおそれがある。そこで、
図18を参照して、リードピン36の信号電極43と接続される箇所の太さ(Wair)を、リードピン36のガラス部材25を貫通する箇所の太さ(Wglass)よりも大きくしてもよい。この場合、インピーダンスが補正される。なお、信号電極43と接続される箇所のリードピン36の断面は、円でも矩形でもよく、特に限定されるものではない。
【実施例4】
【0069】
図17は、実施例4に係る光送信機200の全体構成を説明するためのブロック図である。
図17を参照して、光送信機200は、光デバイス210、データ生成部220等を備える。光デバイス210は、上記いずれかの光変調器モジュールを備えた半導体レーザ等である。データ生成部220は、光デバイス210を駆動するための駆動信号を光デバイスに送信する。光デバイスは、データ生成部220からの駆動信号に応じて光変調信号を出力する。出力された光変調信号は、光ファイバ等を介して外部に出力される。
【0070】
上記各実施例においては、光変調器としてマッハツェンダ型光変調器を用いたが、それに限られない。接地電極および信号電極を備える光変調器であれば、上記各実施例に適用することができる。
【0071】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0072】
(付記)
(付記1)
信号電極および接地電極を備える光変調器と、
前記光変調器を収容し、前記光変調器の接地電極と導通する導電性のパッケージと、
前記パッケージとハンダまたは導電性接着剤によって接続される接地電極が一面に形成され、信号電極が他面に形成された基板と、
前記光変調器の信号電極と前記基板の信号電極とを電気的に接続するリードピンと、を備えることを特徴とする光変調器モジュール。
(付記2)
図4(b)、
図4(c)
前記基板の接地電極および信号電極は、マイクロストリップライン構造を有することを特徴とする付記1記載の光変調器モジュール。
(付記3)
図4(a)
前記パッケージを貫通する絶縁部材が設けられ、
前記リードピンは、前記絶縁部材を貫通することを特徴とする付記1〜3のいずれかに記載の光変調器モジュール。
(付記4)
図4(a)、
図4(b)
前記リードピンは、前記基板の側面に接しつつ前記他面に延びることを特徴とする付記1〜3のいずれかに記載の光変調器モジュール。
(付記5)
図4(b)
前記リードピンは、断面矩形状であることを特徴とする付記4記載の光変調器モジュール。
(付記6)
図4(d)
前記基板の側面に、前記リードピンが配置される切欠きが形成されていることを特徴とする付記4記載の光変調器モジュール。
(付記7)
図6
前記基板の側面に、前記基板の接地電極を露出させる切欠きが形成されていることを特徴とする付記1〜6のいずれかに記載の光変調器モジュール。
(付記8)
図9
前記基板の側面に、切欠きが形成され、
前記基板の接地電極は、前記切欠きまで延びることを特徴とする付記1〜6のいずれかに記載の光変調器モジュール。
(付記9)
図10
前記パッケージには、前記基板に接続される面において、前記基板の端部を横切る溝が形成されていることを特徴とする付記1〜8のいずれかに記載の光変調器モジュール。
(付記10)
図11(a)
前記パッケージには、前記パッケージと前記基板の接地電極との接続箇所において、前記接地電極を露出させる切欠きが形成されていることを特徴とする付記1〜9のいずれかに記載の光変調器モジュール。
(付記11)
図12(a)、
図12(c)、
図12(d)
前記パッケージと前記基板の接地電極との接続箇所において、前記基板に貫通孔が形成されていることを特徴とする付記1〜10のいずれかに記載の光変調器モジュール。
(付記12)
図12(d)
前記基板の他面に接地電極が形成され、
前記他面の接地電極は、前記貫通孔を介して前記一面の接地電極と電気的に接続されていることを特徴とする付記1〜11のいずれかに記載の光変調器モジュール。
(付記13)
図12(b)
前記パッケージと前記基板の接地電極との接続箇所において、前記基板の一面から他面まで延びる切欠きが形成されていることを特徴とする付記1〜12のいずれかに記載の光変調器モジュール。
(付記14)
図11(a)
前記基板の一面において、前記接地電極と前記リードピンとの間に絶縁性のカバーレイが設けられていることを特徴とする付記1〜13のいずれかに記載の光変調器モジュール。
(付記15)
図5(a)
前記リードピンと前記基板の接地電極との最短距離は、260μm以下であることを特徴とする付記1〜14のいずれかに記載の光変調器モジュール。
(付記16)
図5(b)
前記リードピンが前記基板の他面から突出する長さは、590μm以下であることを特徴とする付記1〜15のいずれかに記載の光変調器モジュール。
(付記17)
図13(b)、
図13(c)
前記基板には、貫通孔を介して、前記基板と前記パッケージとを固定するための固定ピンが設けられていることを特徴とする付記1〜16のいずれかに記載の光変調器モジュール。
(付記18)
図4
前記基板は、フレキシブル基板であることを特徴とする付記1〜17のいずれかに記載の光変調器モジュール。
(付記19)
図14(a)、
図14(b)
前記基板は、前記パッケージとの接続箇所と比較して柔軟性の高い部位を有することを特徴とする付記18記載の光変調器モジュール。
(付記20)
図18
前記リードピンのうち前記ガラス部材から前記パッケージ外側に突き出た部分の太さが、前記ガラス部材における太さよりも大きいことを特徴とする付記1〜19のいずれかに記載の光変調器モジュール。