特許第5682210号(P5682210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5682210-空気入りタイヤ 図000006
  • 特許5682210-空気入りタイヤ 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5682210
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20150219BHJP
【FI】
   B60C15/06 Q
   B60C15/06 N
   B60C15/06 F
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-225551(P2010-225551)
(22)【出願日】2010年10月5日
(65)【公開番号】特開2012-76669(P2012-76669A)
(43)【公開日】2012年4月19日
【審査請求日】2013年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田村 将司
【審査官】 柳元 八大
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−155208(JP,A)
【文献】 特開平11−091320(JP,A)
【文献】 特開平04−015110(JP,A)
【文献】 特開平02−169309(JP,A)
【文献】 米国特許第05048584(US,A)
【文献】 特開平01−266003(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0065184(US,A1)
【文献】 特開平09−099716(JP,A)
【文献】 特開平05−077616(JP,A)
【文献】 特開2000−301919(JP,A)
【文献】 特表2002−521253(JP,A)
【文献】 特開平08−318718(JP,A)
【文献】 特開平08−300913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤであって、
ビードコアの周りにタイヤの内側から外側に折り返したカーカス層と、
前記カーカス層の外側に折り返した部分の外側に配設され、タイヤ周方向及びタイヤ径方向に対する傾斜の向きがお互いに同じ方向になるように傾斜角度を持って傾斜した複数の補強線材を有する複数層のビード側面補強層と、
を備え、
前記複数層のビード側面補強層のトレッド側の端部近傍において、前記複数層のビード側面補強層の間に応力緩和ゴム層を配設し
前記応力緩和ゴム層のJIS−A硬度が、前記ビード側面補強層のコートゴムのJIS−A硬度以下である、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記応力緩和ゴム層のJIS−A硬度をHsとすると、Hsは50以上60以下である、
請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記応力緩和ゴム層の厚みをT(mm)とすると、Tは0.2mm以上3.0mm以下である、
請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記応力緩和ゴム層を配設することにより、前記ビード側面補強層間における前記補強線材同士の距離は、0.4〜3.2mmである、
請求項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記応力緩和ゴム層は、
前記ビードコアの内径の位置から、前記内径の位置から遠い方の、前記複数層のビード側面補強層の端部までの距離の内で最大距離をRH(mm)としたとき、
前記内径の位置からの距離が0.5RHの位置から、前記内径の位置からの距離が1.1RHの位置までの間の範囲に配設される、
請求項1からのいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラックやバス等に用いられる重荷重用空気入りタイヤは、高内圧の空気圧条件で使用されるが、高荷重条件下で使用される場合があるため、特にリムと接触するビード部における損傷が発生しやすい。この対策として、特許文献1(特開平8−318718号公報)のように、スチールチェーファおよび補強層を配置して、ビード部におけるカーカス折返部のセパレーション発生を抑制する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8―318718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記技術では、高荷重条件において、スチールチェーファおよび補強層の補強線材が、カーカス部材から剥離する不具合が生じる場合がある。
スチールチェーファを構成するスチール補強線材、および補強層を構成するナイロン補強線材は、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に対して角度を持って傾斜している。しかし、この傾斜角度がタイヤの製造工程において、さらにタイヤ周方向に近づくように傾くため、この傾きの増大により、スチールチェーファあるいは補強層がカーカス部材から剥離し易くなり、あるいは、スチールチェーファと補強層とが互いに剥離し易くなる。
【0005】
一般的に、グリーンタイヤ(未加硫タイヤ)を成形する過程において、ビード部は、ドラムに巻き付けたビード部材の周りに、カーカス部材、スチールチェーファ、および補強層を巻き回して折り返す(ターンアップ)ことにより成形される。このとき、スチールチェーファおよび補強層におけるタイヤの径方向の端部は、ターンアップされたときにタイヤ周方向に引き延ばされる。このため、ターンアップされたスチールチェーファおよび補強層には、タイヤ径方向外側から内側に圧縮する力が働く。
【0006】
スチールチェーファを構成するスチール補強線材、および補強層を構成するナイロン補強線材は、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に対して角度を持って傾斜している。このため、スチールチェーファおよび補強層のタイヤ径方向外側から内側に対して圧縮する力が働くと、スチールチェーファおよび補強層の補強線材は、タイヤ径方向内側よりもタイヤ径方向外側において、上述したようにタイヤ周方向に沿うようにタイヤ周方向に対する角度が小さくなる。これにより、スチールチェーファおよび補強層は、タイヤ径方向外側の補強線材の密度(以降、この密度をエンド数ともいう)がタイヤ径方向内側の補強線材の密度よりも大きくなる。すなわち、スチールチェーファおよび補強層のコートゴム材の量が補強線材に対して少なくなり、スチールチェーファおよび補強層の受けた応力に対する変形が十分に追従できなくなる。このため、例えば空気入りタイヤに高荷重がかかり、スチールチェーファおよび補強層に対してせん断力等の応力がかかった場合に、スチールチェーファおよび補強層のタイヤ周方向外側の端部が起点となって剥離が起こりやすくなる。この剥離がビード部の耐久性に悪影響を与えている。
【0007】
本発明の課題は、従来とは異なる構造により、補強層が剥離することを防止し、ビード部におけるタイヤの耐久性を向上させる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、以下の空気入りタイヤにより達成することができる。
【0009】
本発明の一態様は、空気入りタイヤである。当該空気入りタイヤは、
ビードコアの周りにタイヤの内側から外側に折り返したカーカス層と、
前記カーカス層の外側に折り返した部分の外側に配設され、タイヤ周方向及びタイヤ径方向に対する傾斜の向きがお互いに同じ方向になるように傾斜角度を持って傾斜した複数の補強線材を有する複数層のビード側面補強層と、
を備え、
前記複数層のビード側面補強層のトレッド側の端部近傍において、前記複数層のビード側面補強層の間に応力緩和ゴム層を配設し
前記応力緩和ゴム層のJIS−A硬度が、前記ビード側面補強層のコートゴムのJIS−A硬度以下である。
【0011】
前記応力緩和ゴム層のJIS−A硬度をHsとすると、Hsは50以上60以下である。
【0012】
前記応力緩和ゴム層の厚みをT(mm)とすると、Tは0.2mm以上3.0mm以下である。
【0013】
前記応力緩和ゴム層を配設することにより、前記ビード側面補強層間における前記補強線材同士の距離は、0.4mm以上3.2mm以下である。
【0014】
前記応力緩和ゴム層は、
前記ビードコアの内径の位置から、前記内径の位置から遠い方の、前記複数層のビード側面補強層の端部までの距離の内で最大距離をRH(mm)としたとき、
前記内径の位置からの距離が0.5RHの位置から、前記内径の位置からの距離が1.1RHの位置までの間の範囲に配設される。
【発明の効果】
【0015】
上述の空気入りタイヤでは、空気入りタイヤに重荷重が加わったときにビード部に剥離が発生すること防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の空気入りタイヤの一実施形態の断面を示す図である。
図2図1のタイヤのビード部の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面に示す実施形態に基づいて、本発明の空気入りタイヤを説明する。
なお、以下で用いるタイヤ周方向とは、空気入りタイヤがタイヤ回転軸を中心に回転したとき、タイヤの回転する方向をいう。タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に対して直交する方向をいう。タイヤ外表面とは、空気入りタイヤが大気と接触する、サイド部、ビード部、トレッド部等の表面をいい、タイヤ内表面とは、空気入りタイヤがホイールに装着されたとき、ホイールと空気入りタイヤで囲まれるタイヤ空洞領域に接する面をいう。タイヤの内側とは、タイヤ内表面の側をいい、タイヤの外側とは、タイヤ外表面の側をいう。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態の重荷重用空気入りタイヤ(以降、単にタイヤという)10の断面を示す図である。図2は、タイヤのビード部の断面を示す図である。タイヤ10の「重荷重用」タイヤとは、JATMA YEAR BOOK 2009(日本自動車タイヤ協会規格)のC章に定められるタイヤをいう。本実施形態は、重荷重用空気入りタイヤであるが、JATMA YEAR BOOK 2009(日本自動車タイヤ協会規格)のA章に定められる乗用車用タイヤあるいはB章に定められる小型トラック用タイヤであってもよい。
【0019】
タイヤ10は、図1および図2に示されるように、スチールベルト部材12、スチールカーカス部材14、ビードコアとしてのビード部材16を構造材として含み、トレッドゴム部材18、サイドゴム部材20、ビードフィラーゴム部材22、インナライナーゴム部材23、リムクッションゴム部材24等の公知のゴム部材が配されている。タイヤ10は、この他に、1層のビード補強層25(図2参照)と、2層のビード側面補強層26(図2参照)と、応力緩和ゴム層50とを含む。スチールカーカス部材14は、ビード部材16の周りにタイヤの内側から外側に折り返されている(ターンアップされている)。
【0020】
タイヤ10は、3枚のスチールベルト部材12が積層されているが、3枚のスチールベルト部材12に限定されない。例えば、4枚のスチールベルト部材が用いられてもよい。
【0021】
ビード補強層25は、複数のスチール補強線材30をコートゴム材で被覆したコード層であり、スチールカーカス部材14の折り返された部分のタイヤの外側に配設されている。複数のスチール補強線材30は、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に対して角度を持って傾斜する。ビード側面補強層26は、ビード補強層25のタイヤの外側に配設され、複数のナイロン補強線材40をコートゴム材で被覆したコード層である。なお、ビード側面補強層26に使用されるコートゴム材は、JIS硬度が60〜70の範囲であることが好ましい。複数のナイロン補強線材40は、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に対して角度を持っており、複数のスチール補強線材30とは逆の方向に、傾斜する。複数のスチール補強線材30および複数のナイロン補強線材40において、タイヤ周方向に対して傾斜する角度は、15〜35度が好ましい。
【0022】
2層のビード側面補強層26は、タイヤ周方向に沿ってビード内径の位置からビード部21のタイヤ径方向外側であってビード補強層25の側面に沿って配置される。2層のビード側面補強層26は、ビード補強層25の外側(タイヤ外表面側)であってビード補強層25の面に積層するように配置される第1ビード側面補強層26aと、第1ビード側面補強層26aの面に積層されるように配置される第2ビード側面補強層26bとから成る。第2ビード側面補強層26bのタイヤ径方向外側の端部は、第1ビード側面補強層26aのタイヤ径方向外側の端部よりも、タイヤ径方向外側に位置する。すなわち、第2ビード側面補強層26bにおけるビード部材16のタイヤ径方向内側にある内径の位置からタイヤ径方向外側における端部までの長さ(タイヤ径方向に沿った高さ)は、第1ビード側面補強層26aにおけるビード部材16のタイヤ径方向内側にある内径の位置からタイヤ径方向外側における端部までの長さ(タイヤ径方向に沿った高さ)よりも長い(高い)。
【0023】
応力緩和ゴム層50は、2層のビード側面補強層26のタイヤ径方向外側(トレッド側)の端部近傍において、2層のビード側面補強層26の間に配設される。応力緩和ゴム層50は、2層のビード側面補強層26のタイヤ径方向外側(トレッド側)の端部近傍において、タイヤ径方向に沿った所定の高さを有する。
【0024】
タイヤ10のグリーンタイヤ(未加硫タイヤ)を成形する過程において、ドラムに巻き付けたビード部材16の周りに、スチールカーカス部材14、ビード補強層25、およびビード側面補強層26を巻き回して折り返して(ターンアップして)ビード部21を成形する。ビード補強層25はビード部材16の両側に巻き回され、ビード側面補強層26はビード部材16のタイヤ外表面側の片側にターンアップされる。このとき、ビード側面補強層26のタイヤの径方向の端部は特に、ターンアップされたときにタイヤ周方向に引き延ばされることになる。このため、ターンアップされたビード側面補強層26には、タイヤ径方向外側から内側に圧縮する力が働く。しかも、ビード側面補強層26の複数のナイロン補強線材40は、タイヤ周方向およびタイヤ径方向に対して角度を持って傾斜している。このため、ビード側面補強層26のタイヤ径方向外側から内側に圧縮する力が働くことにより、ビード側面補強層26のタイヤ径方向外側における補強線材が周方向に沿うように傾斜が緩くなる。これにより、複数のスチール補強線材30および複数のナイロン補強線材40は、タイヤ径方向外側の補強線材のエンド数がタイヤ径方向内側の補強線材のエンド数よりも大きくなる。すなわち、ビード側面補強層26のコートゴム材の量が補強線材に対して少なくなる。このため、例えばタイヤ10に高荷重がかかり、ビード側面補強層26に対してせん断力がかかった場合に特に、剥離が起こりやすくなる。
【0025】
応力緩和ゴム層50は、そのJIS−A硬度が、ビード側面補強層26のコートゴム材のJIS−A硬度と同等あるいはそれ以下であることが好ましい。具体的には、応力緩和ゴム層のJIS−A硬度は、50〜60の範囲であることがビード側面補強層26の剥離防止の点で好ましい。
【0026】
また、応力緩和ゴム層50の厚みTは、0.2mm以上3.0mm以下であることがビード側面補強層26の剥離防止の点で好ましい。
【0027】
また、応力緩和ゴム層50は、ビード部材16のタイヤ径方向内側の内径の位置からの距離が0.5RHの位置(以下、下端位置とする)から、ビード部材16のタイヤ径方向内側の内径の位置からの距離が1.1RHの位置(以下、上端位置とする)までの範囲に配設されることがビード側面補強層26の剥離防止の点で好ましい。すなわち、応力緩和ゴム層50は、その下端位置が0.5RH以上であり、その上端位置が1.1RH以下である範囲に配置されることが好ましい。このとき、距離RHは、ビード部材16のタイヤ径方向内側にある内径の位置から、ビード側面補強層26のうち、タイヤ径方向外側の端部が上記内径の位置から遠い方の第2ビード側面補強層26bのタイヤ径方向外側の端部までの距離である。
【0028】
また、応力緩和ゴム層50が配設されている領域において、第1ビード側面補強層26aにおける複数のナイロン補強線材40と、第2ビード側面補強層26bにおける複数のナイロン補強線材40との補強層間距離Dは、0.4mm以上3.2mm以下であることがビード側面補強層26の剥離防止の点で好ましい。補強層間距離Dは、詳細には、ナイロン補強線材40の外周間の距離である。
【0029】
このようなタイヤ10の効果を実施例1〜17、従来例を用いて調べた。
実施例1〜17,従来例のタイヤは、いずれもサイズが1200R20のトラック・バス用タイヤである。このタイヤについて、ビード部21において剥離が生じるまでの走行距離を評価した。
なお、ビード部21において剥離が生じるまでの走行距離は、仕様リム20×8.50V、空気圧830kPa(TRA規格)で、1本のタイヤの最大荷重の250%(TRA規格)である91.98kNをかけて速度25km/hでドラム耐久試験を行なって評価した。なお、この走行距離は、従来例を100として指数化した。指数が大きいほど、走行距離は長くなり、耐久性が向上することを示す。
【0030】
(実施例1〜4、従来例)
まず、応力緩和ゴム層50を設けない場合(従来例)と、応力緩和ゴム層50を設ける場合(実施例1〜4)と、について調べた。
実施例1〜4のタイヤは、図1、2に示す形態を採用し、応力緩和ゴム層50の硬度を種々変化させた。このとき、実施例1〜4において、応力緩和ゴム層50の厚みT=1.0(mm)であり、応力緩和ゴム層50の上端位置(タイヤ径方向外側の端部位置)は1.0RHであり、応力緩和ゴム層50の下端位置(タイヤ径方向内側の端部位置)は0.8RHである。
【表1】
【0031】
上記表1によると、実施例1〜4の走行距離指数はいずれも100を越えており、実施例1〜4はビード部21において剥離が生じ難いことがわかる。特に、応力緩和ゴム層50のJIS−A硬度が50および60である場合(実施例3、4)に、走行距離指数が顕著に大きくなっており、ビード部21における剥離を抑制する効果が顕著であることが判る。これにより、応力緩和ゴム層50のJIS−A硬度が50〜60の範囲であることが、ビード部21への剥離発生を抑制する点で、好ましい。なお、JIS−A硬度とは、JISK6253(タイプA)に準拠し測定したゴム硬度である。
【0032】
(実施例5〜8)
実施例5〜8のタイヤは、図1、2に示す形態を採用し、応力緩和ゴム層50の厚みTを種々変化させた。このとき、実施例5〜8において、JIS−A硬度は55であり、応力緩和ゴム層50の上端位置は1.0RHであり、応力緩和ゴム層50の下端位置は0.8RHである。下記表2の走行距離指数は、上述の従来例を基準(100)とした。
【表2】
【0033】
上記表2によると、実施例5〜8の走行距離指数はいずれも100を超えており、実施例5〜6はビード部21において剥離が生じ難いことがわかる。特に、応力緩和ゴム層50の厚みTが0.2(mm)および3.0(mm)である場合(実施例7、8)に、走行距離指数が顕著に大きくなっており、ビード部21における剥離を抑制する効果が顕著であることが判る。これにより、応力緩和ゴム層50の厚みTが0.2(mm)以上3.0(mm)以下であることが、ビード部21への剥離発生を抑制する点で、好ましい。
【0034】
(実施例9〜12)
実施例9〜12のタイヤ10は、図1、2に示す形態を採用し、応力緩和ゴム層50の配置位置を種々変更させた。このとき、実施例9〜12において、JIS−A硬度は55であり、T=1.0(mm)である。下記表3の走行距離指数は、上述の従来例を基準(100)とした。
【表3】
【0035】
上記表3によると、実施例9〜12の走行距離指数はいずれも100を超えており、実施例9〜12はビード部21において剥離が生じ難いことがわかる。実施例9,10によると、応力緩和ゴム層50の上端位置が1.1RHよりも小さい場合に、走行距離指数が大きくなっていることが判る。また、実施例11,12によると、応力緩和ゴム層50の下端位置が0.5RH以上である場合に、走行距離指数が大きくなっていることが判る。これにより、応力緩和ゴム層50は、その下端位置が0.5RH以上であり、その上端位置が1.1RH以下である範囲に配置されることが、ビード部21への剥離発生を抑制する点で、好ましい。
【0036】
(実施例13〜17)
実施例13〜17のタイヤは、図1、2に示す形態を採用し、補強層間距離Dを種々変化させた。このとき、実施例13〜17において、JIS−A硬度は55であり、応力緩和ゴム層50の厚み=1.0(mm)であり、応力緩和ゴム層50の上端位置は1.0RHであり、応力緩和ゴム層50の下端位置は0.8RHである。下記表2の走行距離指数は、上述の従来例を基準(100)とした。
【表4】
【0037】
上記表4によると、実施例13〜17の走行距離指数がいずれも100を越えており、実施例13〜17は、ビード部21において剥離が生じ難いことがわかる。補強層間距離Dは、0.4mm以上3.2mm以下である場合(実施例14,15,16)に、走行距離指数が特に大きくなっており、ビード部21における剥離を抑制する効果が顕著であることが判る。これにより、補強層間距離Dは、0.4mm以上3.2mm以下であることが、ビード部21への剥離発生を抑制する点で、好ましい。
【0038】
以上、本発明の空気入りタイヤについて説明したが、本発明の空気入りタイヤは上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしても良いのはもちろんである。
【符号の説明】
【0039】
10 空気入りタイヤ
14 スチールカーカス部材
16 ビード部材
20 サイドゴム部材
22 ビードフィラーゴム部材
24 リムクッションゴム部材
25 ビード補強層
26 ビード側面補強層
26a 第1ビード側面補強層
26b 第2ビード側面補強層
30 スチール補強線材
40 ナイロン補強線材
50 応力緩和ゴム層
図1
図2