【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0038】
〔実施例1〜5〕
生姜(坂田信夫商店社製,商品名:黄金の里,中生姜)11.9kgを、家庭用ジューサーに投入して搾汁し、搾汁液9.32kgを得た(収率78.2%)。得られた搾汁液に、当該搾汁液全量に対して所定量のアスコルビン酸を添加して所定のpHに調整し、95℃に加熱殺菌し、生姜汁を得た(実施例1〜5)。生姜汁のpH及びアスコルビン酸の添加量を表1に示す。なお、参考例1として、上記搾汁液のpHも表1にあわせて示す。
【0039】
〔実施例6〕
実施例1〜5と同様にして得られた搾汁液を95℃に加熱した後、当該搾汁液全量に対して所定量のアスコルビン酸を添加して所定のpHに調整し、生姜汁を得た(実施例6)。生姜汁のpH及びアスコルビン酸の添加量を表1にあわせて示す。
【0040】
〔実施例7〜12〕
アスコルビン酸に代えてクエン酸、アスコルビン酸ナトリウム、DL−リンゴ酸又は酒石酸を添加してpHを調整した以外は、実施例1と同様にして生姜汁を得た。生姜汁のpH及び各有機酸等の添加量を表1にあわせて示す。
【0041】
〔比較例1〕
pHを6.0に調整した以外は、実施例1と同様にして生姜汁を得た。アスコルビン酸の添加量を表1にあわせて示す。
【0042】
【表1】
【0043】
〔実施例13,14〕
生姜(坂田信夫商店社製,商品名:土佐一,大生姜)4.4kgを、家庭用ジューサーに投入して搾汁し、搾汁液3.28kgを得た(収率73.9%)。得られた搾汁液に、当該搾汁液全量に対して所定量のアスコルビン酸を添加して所定のpHに調整し、95℃に加熱殺菌し、生姜汁を得た(実施例13,14)。生姜汁のpH及びアスコルビン酸の添加量を表2に示す。
【0044】
〔実施例15〜17〕
アスコルビン酸に代えてクエン酸又はアスコルビン酸ナトリウムを添加してpHを調整した以外は、実施例13と同様にして生姜汁を得た。生姜汁のpH及び各有機酸等の添加量を表2にあわせて示す。
【0045】
【表2】
【0046】
〔試験例1〕色調変化抑制試験1
上記のようにして得られた生姜汁(実施例1〜12,比較例1)及び生姜を搾汁した搾汁液(参考例1)をそれぞれPETボトルに充填して45℃で保管し、その状態で1週間及び2週間経過後、各生姜汁(実施例1〜12,比較例1)及び搾汁液(参考例1)の色調の変化を目視により観察した。2週間経過後の参考例1、実施例1〜5及び比較例1の生姜汁のカラー写真を
図1に、実施例6〜12の生姜汁のカラー写真を
図2に示す。なお、
図1のカラー写真における生姜汁は、左から順に参考例1、実施例1、2、3、4、5及び比較例1の生姜汁であり、
図2のカラー写真における生姜汁は、左から順に実施例7、8、9、10、6、11及び12の生姜汁である。
【0047】
目視観察の結果、並びに
図1及び
図2から明らかなように、1週間経過後の参考例1の搾汁液(有機酸等を添加していない生姜汁)は、液色が暗くなり、著しい褐変が生じていたが、実施例1〜5の生姜汁は、2週間経過後であっても鮮やかな黄色の液色を呈していた。
【0048】
また、比較例1の生姜汁は、参考例1の濾液よりは明るい色を呈していたものの、実施例1〜5の生姜汁と比較すると、褐変が生じていることが確認された。なお、実施例1〜5の生姜汁の液色は、いずれも許容し得る範囲のものであるが、その中でも実施例1の生姜汁(アスコルビン酸の添加量が最も多い生姜汁)の液色が最も明るく、実施例5の生姜汁(アスコルビン酸添加量が最も少ない生姜汁)の液色が最も暗かった。したがって、アスコルビン酸の添加量(生姜汁のpH)により生姜汁の液色、ひいては生姜汁含有飲料の液色を調整し得ることが確認された。
【0049】
このように、生姜搾汁原液にアスコルビン酸を添加してpHを3.5〜5.5、好ましくは3.5〜5.0に調整することにより、生姜汁の色調の変化を抑制し得ることが判明した。
【0050】
さらに、実施例6〜12の生姜汁は、実施例1〜5の生姜汁のうち同一pHに調整したものと比較して、肉眼では液色の差を判別するのが困難であった。このように、生姜搾汁原液に添加する有機酸等の種類にかかわらず、pHを3.5〜5.5、好ましくは3.5〜5.0に調整することにより、生姜汁の色調の変化を抑制し得ることが判明した。
【0051】
また、実施例6の生姜汁は、濾液を加熱した時点では液色が暗くなり、褐変が生じていたが、その後アスコルビン酸を添加することで、他の実施例(実施例1〜5,7〜12)と同様に鮮やかな黄色の液色を呈した。この結果から、生姜搾汁原液の加熱後に有機酸等を添加することによっても、生姜汁の褐変を抑制し得ることが判明した。
【0052】
〔試験例2〕色調変化抑制試験2
上記のようにして得られた生姜汁(実施例13〜17)をそれぞれPETボトルに充填して45℃で保管し、1週間及び2週間経過後、各生姜汁(実施例13〜17)の色調の変化を目視により観察した。2週間経過後の実施例13〜17の生姜汁のカラー写真を
図3に示す。なお、
図3のカラー写真における生姜汁は、左から順に実施例13、14、15、16及び17の生姜汁である。
【0053】
目視観察の結果、及び
図3から明らかなように、実施例13〜17の生姜汁は、2週間経過後であっても薄黄色の液色を呈していた。
【0054】
また、実施例13〜17の生姜汁の中では、実施例14及び16の生姜汁のようにpHを5.0に調整した方が、液色の変化が少なく、より褐変を抑制できることが確認された。一方、pHを3.5に調整した実施例13及び15の生姜汁は、液色が赤っぽく変色していた。
【0055】
さらに、クエン酸を添加した生姜汁(実施例16)よりもアスコルビン酸を添加した生姜汁(実施例14)の方が、さらに液色の変化が少なく、褐変抑制効果に優れていることが確認された。
【0056】
さらにまた、アスコルビン酸ナトリウムを添加した生姜汁(実施例17)よりもアスコルビン酸を添加した生姜汁(実施例13)の方が、液色に赤みが少なかった。この結果から、生姜搾汁原液にアスコルビン酸を添加してpHを5.0に調整することで、色調変化抑制効果に優れることが確認された。
【0057】
〔試験例3〕官能評価試験1
上記のようにして得られた生姜汁(実施例1〜12,比較例1)及び生姜を搾汁した搾汁原液から得られた濾液(参考例1)について官能評価試験を行った。
【0058】
官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された3名のパネラー(パネラーA,B,C)により、上記濾液(参考例1)についての辛味及び香りの項目、並びに飲みやすさの項目の2項目の評価点をそれぞれ「0点」とした上で、当該濾液(参考例1)を比較対象として、各生姜汁(実施例1〜12,比較例1)の各項目について、−3〜+3点の7段階で評価した。辛味及び香りについての試験結果を表3に、飲みやすさについての試験結果を表4に示す。なお、表3及び表4中の評価は、3名のパネラーの合計点が−1点以下のものを「×」、0〜2点のものを「△」、3〜5点のものを「○」、6点以上のものを「◎」とした。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
表3及び表4に示すように、アスコルビン酸を添加することによりpHを4.5〜5.5に調整した生姜汁(実施例3〜5)、特にpHを5.0に調整した生姜汁(実施例4)が、各項目についての評価が良好であった。この結果から、有機酸等の中でもアスコルビン酸を生姜汁に添加することによって、当該生姜汁を飲料原料として用い、嗜好性の高い生姜汁含有飲料を製造可能であることが確認された。
【0062】
〔試験例4〕官能評価試験2
上記のようにして得られた生姜汁(実施例13〜16)について官能評価試験を行った。
【0063】
官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された3名のパネラー(パネラーA,B,C)により、各生姜汁(実施例13〜16)について、辛味及び香り、並びに飲みやすさの観点からの総合評価で1位〜4位の順位をつけてもらい、その順位の合計(順位の数値の合計)に基づいて総合順位をつけた。結果を表5に示す。
【0064】
【表5】
【0065】
表5に示すように、アスコルビン酸を添加してpHを調整した生姜汁を飲料原料として使用することにより、嗜好性の高い生姜汁含有飲料を製造可能であることが確認された。
【0066】
上述したように、色調変化抑制試験及び官能評価試験の試験結果から、有機酸等の中でもアスコルビン酸を添加して生姜汁のpHを4.0〜5.0に調整することによって、生姜の品種を問わず、生姜汁の鮮やかな黄色の色調が変化してしまうのを抑制することができるものと考えられる。また、この生姜汁を飲料原料として使用して製造される生姜汁含有飲料の嗜好性を向上させることができるものと考えられる。