特許第5683114号(P5683114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 伊藤園の特許一覧

特許5683114生姜汁の色調変化抑制方法、生姜汁含有飲料及びその製造方法
<>
  • 特許5683114-生姜汁の色調変化抑制方法、生姜汁含有飲料及びその製造方法 図000007
  • 特許5683114-生姜汁の色調変化抑制方法、生姜汁含有飲料及びその製造方法 図000008
  • 特許5683114-生姜汁の色調変化抑制方法、生姜汁含有飲料及びその製造方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5683114
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】生姜汁の色調変化抑制方法、生姜汁含有飲料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/44 20060101AFI20150219BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20150219BHJP
   A23L 1/30 20060101ALN20150219BHJP
【FI】
   A23L2/18
   A23L2/00 F
   !A23L1/30 B
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-14591(P2010-14591)
(22)【出願日】2010年1月26日
(65)【公開番号】特開2011-152063(P2011-152063A)
(43)【公開日】2011年8月11日
【審査請求日】2012年9月3日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】梅原 香奈子
(72)【発明者】
【氏名】永田 幸三
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 好衣
【審査官】 山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−258554(JP,A)
【文献】 特開2003−135000(JP,A)
【文献】 特開2007−185109(JP,A)
【文献】 特開平02−107151(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/054836(WO,A1)
【文献】 参考資料2:清涼飲料水の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号 抄),厚生労働省 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格部会,2009年 7月23日,URL,http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/07/s0723-16.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/212− 1/237
1/24 − 1/308
2/00 − 2/84
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Food Science and Tech Abst(FSTA)(ProQuest Dialog)
Foodline Science(ProQuest Dialog)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸又はその塩を添加することによりpHが3.5〜5.5に調整されてなる生姜汁を0.1〜0.7質量%含有する生姜汁含有飲料であって、前記飲料のpHが3.5〜5.0であることを特徴とする生姜汁含有飲料。
【請求項2】
前記生姜汁が、前記有機酸としてアスコルビン酸を添加されてなることを特徴とする請求項1に記載の生姜汁含有飲料。
【請求項3】
液体状態の生姜汁に有機酸又はその塩を添加し、当該生姜汁のpHを3.5〜5.5に調整する工程と、pHが3.5〜5.5に調整された生姜汁を含む飲料原料を用いて飲料を調製する工程とを含む生姜汁含有飲料の製造方法であって、前記飲料のpHが3.5〜5.0の範囲に調整されることを特徴とする生姜汁含有飲料の製造方法。
【請求項4】
前記調製された飲料を加熱殺菌する工程さらに含むことを特徴とする請求項3に記載の生姜汁含有飲料の製造方法。
【請求項5】
前記生姜汁に、前記有機酸としてアスコルビン酸を添加することを特徴とする請求項3又は4に記載の生姜汁含有飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生姜汁の色調変化抑制方法、生姜汁含有飲料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な種類の野菜の搾汁液を含有する飲料が上市されており、健康志向の高まりと相まってその市場は伸長を続けている。その中で、野菜に含まれる機能性成分を、手軽に摂取しやすい飲料の形態で摂取することにより、当該機能性成分による効果が奏されることが期待され、そのような機能性飲料も多数知られている。
【0003】
野菜に含まれる機能性成分として、生姜に含まれるショウガオール、ジンゲオール等の辛味成分が挙げられる。かかるショウガオール、ジンゲオール等は、血行を促進することで発汗作用を奏し得るため、冷え性の改善効果が期待される。このような観点から、従来、生姜(黒生姜の根茎)の搾汁液を含有し、冷え性改善効果を有する飲食品が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−67731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、生姜搾汁液(生姜汁)を飲料に配合すると、飲料中の生姜汁の色調が経時的に変化してしまい、特に飲料の製造工程における加熱殺菌処理により生姜汁の色調が顕著に変化してしまうという問題がある。
【0006】
このような問題点に鑑みて、本発明は、生姜汁の色調が経時的に変化してしまうのを抑制する方法、色調の変化が抑制された生姜汁を含有する生姜汁含有飲料、及び当該生姜汁含有飲料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第一に本発明は、生姜汁に有機酸又はその塩を添加し、当該生姜汁のpHを3.5〜5.5に調整することを特徴とする生姜汁の色調変化抑制方法を提供する(請求項1)。
【0008】
経時的に色調が変化してしまう生姜汁は、飲料原料としてそのまま使用することが困難な素材であるが、上記発明(請求項1)によれば、有機酸又はその塩を添加して生姜汁のpHを3.5〜5.5に調整することで、生姜汁の褐変を抑制することができ、生姜特有の鮮やかな黄色の液色を維持することができる。
【0009】
上記発明(請求項1)においては、前記生姜汁に、前記有機酸としてアスコルビン酸を添加するのが好ましい(請求項2)。かかる発明(請求項2)によれば、アスコルビン酸を添加して生姜汁のpHを調整することにより、得られる生姜汁の褐変を抑制することができるとともに、辛味、香味、飲みやすさ等を良好にすることができるため、当該生姜汁を用いて生姜汁含有飲料を製造することで、得られる生姜汁含有飲料の風味、呈味、香味、飲みやすさ等を良好にすることができる。
【0010】
第二に本発明は、有機酸又はその塩を添加することによりpHが3.5〜5.5に調整されてなる生姜汁を含有することを特徴とする生姜汁含有飲料を提供する(請求項3)。
【0011】
飲料、特に容器詰飲料は、常温での長期保存等を目的として製造段階において加熱殺菌処理に付されるところ、飲料に生姜汁を配合すると、加熱殺菌処理により飲料、特に生姜汁の色調が変化してしまうおそれがある。しかしながら、上記発明(請求項3)のように、生姜汁含有飲料に配合される生姜汁が、有機酸又はその塩の添加によりpHを3.5〜5.5に調整されていることで、当該飲料の色調変化、特に加熱殺菌後の当該飲料の色調変化を抑制することができる。
【0012】
上記発明(請求項3)においては、前記生姜汁が、前記有機酸としてアスコルビン酸を添加されてなるのが好ましい(請求項4)。かかる発明(請求項4)によれば、生姜汁含有飲料の色調変化、特に加熱殺菌後の当該飲料の色調変化をより効果的に抑制することができるとともに、当該飲料の風味、呈味、香味、飲みやすさ等を良好なものとすることができる。
【0013】
第三に本発明は、生姜汁に有機酸又はその塩を添加し、当該生姜汁のpHを3.5〜5.5に調整する工程を含むことを特徴とする生姜汁含有飲料の製造方法を提供する(請求項5)。かかる発明(請求項5)によれば、色調変化の抑制効果、特に加熱殺菌による色調変化の抑制効果に優れた生姜汁含有飲料を製造することができる。
【0014】
上記発明(請求項5)においては、pHが3.5〜5.5に調整された生姜汁を含む飲料原料を用いて飲料を調製する工程と、前記調製された飲料を加熱殺菌する工程とをさらに含むのが好ましい(請求項6)。かかる発明(請求項6)によれば、特に加熱殺菌による色調変化の抑制効果に極めて優れた生姜汁含有飲料を製造することができる。
【0015】
上記発明(請求項5,6)においては、前記生姜汁に、前記有機酸としてアスコルビン酸を添加するのが好ましい(請求項7)。かかる発明(請求項7)によれば、飲料の色調変化、特に加熱殺菌後の当該飲料の色調変化をより効果的に抑制することができるとともに、風味、呈味、香味、飲みやすさ等が良好な飲料を製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、生姜汁の色調が経時的に変化してしまうのを抑制する方法、色調の変化が抑制された生姜汁を含有する生姜汁含有飲料、及び当該生姜汁含有飲料の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】色調変化抑制試験1における2週間経過後の生姜汁(参考例1、実施例1〜5及び比較例1)を示す図面に代わるカラー写真である。
図2】色調変化抑制試験1における2週間経過後の生姜汁(実施例6〜12)を示す図面に代わるカラー写真である。
図3】色調変化抑制試験2における2週間経過後の生姜汁(実施例13〜17)を示す図面に代わるカラー写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る生姜汁含有飲料について説明する。
本実施形態に係る生姜汁含有飲料は、生姜汁に有機酸又はその塩を添加することによりpHを所定の値に調整してなる生姜汁を配合してなるものである。
【0019】
本実施形態に係る生姜汁含有飲料に含まれる生姜汁には、生姜の根茎部の搾汁液、当該搾汁液を濃縮した濃縮汁、生姜の根茎部の搾汁液に酵素処理等を施すことで清澄化した透明汁等が含まれる。
【0020】
なお、生姜汁の原料としての生姜(学名:Zingiber officinale)は、ショウガ科ショウガ属に属する多年草であって、日本全国各地で広く栽培されており、これらの地域から容易に入手することができる。生姜の品種を大別すると、大生姜、中生姜及び小生姜に分類されるが、本実施形態において使用し得る生姜としては、大生姜又は中生姜が好適である。
【0021】
生姜汁に添加し得る有機酸としては、例えば、アスコルビン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸等が挙げられ、これらの塩としては、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。これらのうち、特にアスコルビン酸を好適に用いることができる。アスコルビン酸を添加することによって、他の有機酸等を添加した場合に比し、生姜汁の呈味、風味、香味等が良好となり、呈味、風味、香味、飲みやすさ等に優れた生姜汁含有飲料とすることができる。
【0022】
本実施形態に係る生姜汁含有飲料は、生姜汁とともに、所望の他の野菜汁や果汁を配合してなるものであってもよい。当該生姜汁含有飲料に配合され得る野菜汁としては、例えば、ニンジン汁、レタス汁、キャベツ汁、ホウレンソウ汁、トマト汁、セロリ汁、タマネギ汁、有色甘藷汁、インゲン豆汁、ケール汁、カボチャ汁、ピーマン汁、アスパラガス汁、白菜汁、小松菜汁、明日葉汁、クレソン汁、ダイコン汁、三つ葉汁等が挙げられる。
【0023】
また、当該生姜汁含有飲料に含有され得る果汁としては、例えば、オレンジ果汁、リンゴ果汁、グレープフルーツ果汁、パイナップル果汁、ブドウ果汁、ピーチ果汁、温州ミカン汁等が挙げられる。
【0024】
なお、本実施形態に係る生姜汁含有飲料に配合され得る生姜汁や、所望により当該飲料に配合され得る野菜汁及び果汁は、食物繊維、タンパク質、タンニン、ペクチン質等の固形物(不溶性成分)を含むものであってもよい。このような不溶性成分を含むことで、生姜汁含有飲料に生姜や、他の野菜及び果実に由来する栄養素を十分に含有せしめることができるとともに、飲料における生姜汁、他の野菜汁及び果汁の呈味や食感を良好にすることができる。
【0025】
本実施形態に係る生姜汁含有飲料において、生姜汁の含有量は、生姜汁含有飲料全量に対して0.1〜0.7質量%であるのが好ましく、0.25〜0.6質量%であるのがより好ましい。生姜汁の含有量が上記範囲内であることで、生姜汁に含まれる化学的・生理的な活性を有する成分を当該飲料に十分に含有せしめることができるとともに、生姜の辛味や香味を十分に味わうことができ、嗜好性の高い飲料とすることができる。
【0026】
なお、他の野菜汁や果汁を生姜汁含有飲料に配合する場合、当該飲料におけるそれらの含有量は、当該飲料のバランス等を考慮して、適宜設定すればよい。
【0027】
本実施形態に係る生姜汁含有飲料は、飲料原料としての生姜汁に有機酸又はその塩が添加されることにより、pHが3.5〜5.5に調整された生姜汁を含有するものであり、好ましくは、pHが4.0〜5.0に調整された生姜汁を含有するものである。有機酸又はその塩の添加により生姜汁のpHが上記範囲に調整されていることで、当該生姜汁の色調変化(褐変)、特に加熱による色調変化を効果的に抑制することができ、結果として、当該生姜汁を配合して生姜汁含有飲料を製造する工程における加熱殺菌処理によって、当該飲料の色調が変化するのを抑制することができる。
【0028】
生姜汁への有機酸又はその塩の添加量は、使用する有機酸又はその塩の種類、生姜汁の原料としての生姜の種類(品種)等に応じて適宜調整することができるが、有機酸としてアスコルビン酸を用い、生姜として中生姜を用いる場合、生姜汁全量に対して0.1〜3.7質量%であるのが好ましく、0.2〜1.3質量%であるのがより好ましい。当該添加量が上記範囲内であることで、生姜汁のpHを3.5〜5.5に調整することができ、生姜汁の色調変化を効果的に抑制することができる。
【0029】
本実施形態に係る生姜汁含有飲料のpHは、3.5〜5.0であるのが好ましく、4.0〜4.5であるのがより好ましい。生姜汁含有飲料のpHが上記範囲であれば、生姜の辛味や香り等を損なうことなくほどよい酸味を与えることができる。なお、生姜汁含有飲料のpHを上記範囲内に調整するために、適宜、炭酸水素ナトリウム(重曹)等のpH調整剤を添加してもよい。
【0030】
また、本実施形態に係る生姜汁含有飲料は、所望により、砂糖、ブドウ糖、果糖、果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖、高果糖液糖、オリゴ糖、トレハロース、キシリトール、スクラロース、ステビア抽出物、ソルビトール、カンゾウ抽出物やラカンカ抽出物等の砂糖類及び甘味料;ペクチン、ゼラチン、コラーゲン、寒天、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、大豆多糖類、アラビアガム、グァーガム、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ジェランガム等の増粘安定剤;グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤;食物繊維、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナイアシン、パントテン酸等の強化剤;各種乳酸菌等をさらに含有していてもよい。
【0031】
本実施形態に係る生姜汁含有飲料は、容器に充填した形態で提供することができる。当該容器としては、例えば、金属缶、PETボトル、紙容器、ガラスビン等が挙げられるが、これらのうちPETボトルやガラスビン等の透明性を有する容器であるのが好ましい。本実施形態に係る生姜汁含有飲料は、飲料中の生姜汁の色調変化が抑制されているため、透明性を有する容器に充填し、長時間静置されたとしても、生姜汁含有飲料中の生姜汁の鮮やかな黄色の液色を維持することができ、当該飲料の見栄えを良好に維持することができる。
【0032】
本実施形態に係る生姜汁含有飲料を製造するには、まず、生姜を搾汁して得られる生姜汁に、生姜汁に対して有機酸又はその塩を添加し、当該生姜汁のpHを3.5〜5.5に調整する。これにより、得られる生姜汁の色調変化(褐変)を抑制することができる。
【0033】
次に、飲用に適した水(例えば、イオン交換水、井水、市水等)に、pHの調整がなされた生姜汁を上述したような含有量となるように添加し、所望によりその他の野菜汁、果汁、食品添加物等をさらに添加して攪拌し、飲料原液を調製する。
【0034】
そして、得られた飲料原液に所望によりpH調整剤等を添加することにより、飲料原液のpHを所定の範囲(3.0〜4.4)に調整する。その後、pHを調整した飲料原液を加熱殺菌して透明密閉容器等の容器に充填する。このようにして、本実施形態に係る生姜汁含有飲料を製造することができる。
【0035】
このようにして得られた本実施形態に係る生姜汁含有飲料は、有機酸又はその塩の添加によりpHが3.5〜5.5に調整されることで色調の変化、特に加熱による色調の変化が抑制された生姜汁を含むため、飲料製造工程において加熱殺菌がなされても、当該飲料の色調の変化を抑制することができる。
【0036】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例及び比較例を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0038】
〔実施例1〜5〕
生姜(坂田信夫商店社製,商品名:黄金の里,中生姜)11.9kgを、家庭用ジューサーに投入して搾汁し、搾汁液9.32kgを得た(収率78.2%)。得られた搾汁液に、当該搾汁液全量に対して所定量のアスコルビン酸を添加して所定のpHに調整し、95℃に加熱殺菌し、生姜汁を得た(実施例1〜5)。生姜汁のpH及びアスコルビン酸の添加量を表1に示す。なお、参考例1として、上記搾汁液のpHも表1にあわせて示す。
【0039】
〔実施例6〕
実施例1〜5と同様にして得られた搾汁液を95℃に加熱した後、当該搾汁液全量に対して所定量のアスコルビン酸を添加して所定のpHに調整し、生姜汁を得た(実施例6)。生姜汁のpH及びアスコルビン酸の添加量を表1にあわせて示す。
【0040】
〔実施例7〜12〕
アスコルビン酸に代えてクエン酸、アスコルビン酸ナトリウム、DL−リンゴ酸又は酒石酸を添加してpHを調整した以外は、実施例1と同様にして生姜汁を得た。生姜汁のpH及び各有機酸等の添加量を表1にあわせて示す。
【0041】
〔比較例1〕
pHを6.0に調整した以外は、実施例1と同様にして生姜汁を得た。アスコルビン酸の添加量を表1にあわせて示す。
【0042】
【表1】
【0043】
〔実施例13,14〕
生姜(坂田信夫商店社製,商品名:土佐一,大生姜)4.4kgを、家庭用ジューサーに投入して搾汁し、搾汁液3.28kgを得た(収率73.9%)。得られた搾汁液に、当該搾汁液全量に対して所定量のアスコルビン酸を添加して所定のpHに調整し、95℃に加熱殺菌し、生姜汁を得た(実施例13,14)。生姜汁のpH及びアスコルビン酸の添加量を表2に示す。
【0044】
〔実施例15〜17〕
アスコルビン酸に代えてクエン酸又はアスコルビン酸ナトリウムを添加してpHを調整した以外は、実施例13と同様にして生姜汁を得た。生姜汁のpH及び各有機酸等の添加量を表2にあわせて示す。
【0045】
【表2】
【0046】
〔試験例1〕色調変化抑制試験1
上記のようにして得られた生姜汁(実施例1〜12,比較例1)及び生姜を搾汁した搾汁液(参考例1)をそれぞれPETボトルに充填して45℃で保管し、その状態で1週間及び2週間経過後、各生姜汁(実施例1〜12,比較例1)及び搾汁液(参考例1)の色調の変化を目視により観察した。2週間経過後の参考例1、実施例1〜5及び比較例1の生姜汁のカラー写真を図1に、実施例6〜12の生姜汁のカラー写真を図2に示す。なお、図1のカラー写真における生姜汁は、左から順に参考例1、実施例1、2、3、4、5及び比較例1の生姜汁であり、図2のカラー写真における生姜汁は、左から順に実施例7、8、9、10、6、11及び12の生姜汁である。
【0047】
目視観察の結果、並びに図1及び図2から明らかなように、1週間経過後の参考例1の搾汁液(有機酸等を添加していない生姜汁)は、液色が暗くなり、著しい褐変が生じていたが、実施例1〜5の生姜汁は、2週間経過後であっても鮮やかな黄色の液色を呈していた。
【0048】
また、比較例1の生姜汁は、参考例1の濾液よりは明るい色を呈していたものの、実施例1〜5の生姜汁と比較すると、褐変が生じていることが確認された。なお、実施例1〜5の生姜汁の液色は、いずれも許容し得る範囲のものであるが、その中でも実施例1の生姜汁(アスコルビン酸の添加量が最も多い生姜汁)の液色が最も明るく、実施例5の生姜汁(アスコルビン酸添加量が最も少ない生姜汁)の液色が最も暗かった。したがって、アスコルビン酸の添加量(生姜汁のpH)により生姜汁の液色、ひいては生姜汁含有飲料の液色を調整し得ることが確認された。
【0049】
このように、生姜搾汁原液にアスコルビン酸を添加してpHを3.5〜5.5、好ましくは3.5〜5.0に調整することにより、生姜汁の色調の変化を抑制し得ることが判明した。
【0050】
さらに、実施例6〜12の生姜汁は、実施例1〜5の生姜汁のうち同一pHに調整したものと比較して、肉眼では液色の差を判別するのが困難であった。このように、生姜搾汁原液に添加する有機酸等の種類にかかわらず、pHを3.5〜5.5、好ましくは3.5〜5.0に調整することにより、生姜汁の色調の変化を抑制し得ることが判明した。
【0051】
また、実施例6の生姜汁は、濾液を加熱した時点では液色が暗くなり、褐変が生じていたが、その後アスコルビン酸を添加することで、他の実施例(実施例1〜5,7〜12)と同様に鮮やかな黄色の液色を呈した。この結果から、生姜搾汁原液の加熱後に有機酸等を添加することによっても、生姜汁の褐変を抑制し得ることが判明した。
【0052】
〔試験例2〕色調変化抑制試験2
上記のようにして得られた生姜汁(実施例13〜17)をそれぞれPETボトルに充填して45℃で保管し、1週間及び2週間経過後、各生姜汁(実施例13〜17)の色調の変化を目視により観察した。2週間経過後の実施例13〜17の生姜汁のカラー写真を図3に示す。なお、図3のカラー写真における生姜汁は、左から順に実施例13、14、15、16及び17の生姜汁である。
【0053】
目視観察の結果、及び図3から明らかなように、実施例13〜17の生姜汁は、2週間経過後であっても薄黄色の液色を呈していた。
【0054】
また、実施例13〜17の生姜汁の中では、実施例14及び16の生姜汁のようにpHを5.0に調整した方が、液色の変化が少なく、より褐変を抑制できることが確認された。一方、pHを3.5に調整した実施例13及び15の生姜汁は、液色が赤っぽく変色していた。
【0055】
さらに、クエン酸を添加した生姜汁(実施例16)よりもアスコルビン酸を添加した生姜汁(実施例14)の方が、さらに液色の変化が少なく、褐変抑制効果に優れていることが確認された。
【0056】
さらにまた、アスコルビン酸ナトリウムを添加した生姜汁(実施例17)よりもアスコルビン酸を添加した生姜汁(実施例13)の方が、液色に赤みが少なかった。この結果から、生姜搾汁原液にアスコルビン酸を添加してpHを5.0に調整することで、色調変化抑制効果に優れることが確認された。
【0057】
〔試験例3〕官能評価試験1
上記のようにして得られた生姜汁(実施例1〜12,比較例1)及び生姜を搾汁した搾汁原液から得られた濾液(参考例1)について官能評価試験を行った。
【0058】
官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された3名のパネラー(パネラーA,B,C)により、上記濾液(参考例1)についての辛味及び香りの項目、並びに飲みやすさの項目の2項目の評価点をそれぞれ「0点」とした上で、当該濾液(参考例1)を比較対象として、各生姜汁(実施例1〜12,比較例1)の各項目について、−3〜+3点の7段階で評価した。辛味及び香りについての試験結果を表3に、飲みやすさについての試験結果を表4に示す。なお、表3及び表4中の評価は、3名のパネラーの合計点が−1点以下のものを「×」、0〜2点のものを「△」、3〜5点のものを「○」、6点以上のものを「◎」とした。
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
表3及び表4に示すように、アスコルビン酸を添加することによりpHを4.5〜5.5に調整した生姜汁(実施例3〜5)、特にpHを5.0に調整した生姜汁(実施例4)が、各項目についての評価が良好であった。この結果から、有機酸等の中でもアスコルビン酸を生姜汁に添加することによって、当該生姜汁を飲料原料として用い、嗜好性の高い生姜汁含有飲料を製造可能であることが確認された。
【0062】
〔試験例4〕官能評価試験2
上記のようにして得られた生姜汁(実施例13〜16)について官能評価試験を行った。
【0063】
官能評価試験は、飲料の開発を担当する訓練された3名のパネラー(パネラーA,B,C)により、各生姜汁(実施例13〜16)について、辛味及び香り、並びに飲みやすさの観点からの総合評価で1位〜4位の順位をつけてもらい、その順位の合計(順位の数値の合計)に基づいて総合順位をつけた。結果を表5に示す。
【0064】
【表5】
【0065】
表5に示すように、アスコルビン酸を添加してpHを調整した生姜汁を飲料原料として使用することにより、嗜好性の高い生姜汁含有飲料を製造可能であることが確認された。
【0066】
上述したように、色調変化抑制試験及び官能評価試験の試験結果から、有機酸等の中でもアスコルビン酸を添加して生姜汁のpHを4.0〜5.0に調整することによって、生姜の品種を問わず、生姜汁の鮮やかな黄色の色調が変化してしまうのを抑制することができるものと考えられる。また、この生姜汁を飲料原料として使用して製造される生姜汁含有飲料の嗜好性を向上させることができるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、生姜汁の加熱により生じ得る褐変等の色調変化を抑制することができ、生姜本来の鮮やかな色調を有する生姜汁含有飲料の製造に有用である。
図1
図2
図3