(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
化粧料を使用すべき人から得られた角層細胞標本において、角層細胞中のメラニン存在量が多く、且つ、その分布の不均一性が高い場合に、その人に使用されるべき化粧料であることを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
化粧料を使用すべき人の皮膚において、励起光によって皮膚から生じる蛍光を計測し、該蛍光強度から推測される皮膚内のAGEs量が多かった場合に、その人に使用されるべき化粧料であることを特徴とする、請求項1〜8の何れか一項に記載の皮膚外用剤。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本発明のAGEs分解剤>
メイラ
ード反応は、アミノ酸と還元糖が加熱により褐色の色素が生成する反応である。糖化反応は、還元糖のカルボニル基及びアミノ酸のアミノ基がシッフ塩基を形成した後、エナミノ
ールを経由し、アマドリ転位により安定なアマドリ化合物を生成する初期段階と、それ以降の、脱水、加水分解、炭素間の開裂により、α−ジカルボニル化合物を生成し、その後、α−ジカルボニル化合物、シッフ塩基、アマドリ化合物の分解、脂質過酸化反応由来のアルデヒド、糖の自動酸化及び分解などにより糖化最終産物(AGEs)が生成する後期段階に分類することが出来る。AGEsは、糖化反応の結果生じる生成物の総称であり、単一の化合物を意味するものではない。また、糖化反応は、最終生成物のAGEs生成に至る過程において、生体内蛋白質と分子内又は分子間の無秩序な架橋構造を形成することにより、物理的又は生理的な変化を引き起こし、特に、真皮の糖化反応は、皮膚の色調のくすみ、弾力性、肌の肌理等の美肌、美白的な要因に深く関与することが知られている。このため、真皮AGEs分解作用を有する成分には、糖化反応を抑制することにより、くすみなどの皮膚症状を予防又は改善する作用が存する。一方、くすみには、前記の糖化反応が主体となるくすみの他、色素細胞(メラノサイト)における著しいメラニン産生亢進、角化細胞(ケラチノサイト)へのメラニン過剰移送及び蓄積、更には、ケラチノサイトの機能低下、並びに、タ
ーンオ
ーバ
ーの遅延等の現象を引き起こすことにより生じるくすみも存在する。この様な肌荒れ症状を伴う色素沈着に起因するくすみに対しては、真皮AGEs分解剤のみを使用することにより予防又は改善することは難しかった。
【0012】
本発明の皮膚外用剤は、1)AGEs分解剤と、2)炎症関連因子とを含有することを特徴とする。本発明のAGEs分解剤としては、AGEs量を減少させる作用を有する成分であれば、特段の限定なく適応することが出来、さらに好ましいものとしては、角層に存在するAGEs量を減少させる作用を有する成分が好適に例示出来る。本発明のAGEs分解剤には、生成されたAGEsを分解する作用を有する成分に加え、糖化反応により産生されるAGEsの生成を抑制する作用を有する成分も包含される。また、本発明のAGEs分解剤としては、例えば、特開2007−161662号公報に記載されたAGEs分解作用評価(α−ジケトンのC-C結
合切断能の測定、グルコ
ース−牛血清アルブミンAGEs分解能の測定)においてAGEs分解作用を示す成分が好適に例示出来る。前記AGEs分解作用評価においてAEGs分解作用を有する成分とは、前記AEGs分解作用評価のα−ジケトンのC-C結合切断能の測定評価において、
1−フェニル−1,2−プロパンジオンの量より算出される安息香酸の理論量に対し、実際に生成する安息香酸の量が、40%以上である物質、又は、グルコ
ース−牛血清アルブミンAGEs分解能の測定評価において、AGEs分解率が15%以上である物質を意味する。本発明者によれば、かかる評価系においてAGEs分解作用を有する成分としては、モクセイ科オリ
ーブ属、ユキノシタ科ユキノシタ属、バラ科ポテンチラ属、マメ科アスパラトゥス属
、バラ科シモツケソウ属、キク科ヨモギ属、マメ科ゲンゲ属する植物より得られる植物抽出物が好適に例示出来、さらに好ましくは、モクセイ科オリ
ーブ属オリ
ーブ、ユキノシタ科ユキノシタ属ユキノシタ、バラ科ポテンチラ属トルメンチラ、バラ科キジムシロ属カワラサイコ、バラ科ポテンチラ属ミヤマキンバイ、マメ科アスパラトゥス属ルイボス、バラ科シモツケソウ属シモツケソウ、キク科ヨモギ属ヨモギ、マメ科ゲンゲ属レンゲソウより得られる植物抽出物が好適に例示出来る。また、前記AGEs分解作用を有する成分の内、さらに好ましいものとしては、角層AGEs分解剤が好適に例示出来る。角層AGEs分解剤としては、例えば、ヒト角層中のAGEs分解作用を有する成分、又は、ヒト角層におけるAGEsの生成を抑制する作用を有する成分が好適に例示出来る。かかるヒト角層中に存在するAGEs分解作用を有する成分とは、例えば、特願2009−154495号に記載のヒト角層中におけるAGEs分解作用評価において、パネラ
ーより採取された角層標本に、抗AGEs抗体を反応させ、該反応部位を検知し、AGEs分解剤との共存下では、非共存下よりも明らかに反応部位が少なかった場合に、角層中に存在するAGEsの分解作用を有する成分と言うことが出来る。また、かかるヒト角層中におけるAGEsの生成を抑制する作用を有する成分としては、ヒト角層中におけるAGEs生成抑制評価において、角層標本をグルコ
ース溶液に浸漬させて37℃で放置してAGEsを生成させた場合、前記AGEs分解剤との共存下では、非共存下よりも明らかに反応部位が少なかった場合に、角層中におけるAGEsの生成を抑制する作用を有する成分が好適に例示出来る。本発明者の検討によれば、かかるヒト角層中のAGEs分解作用を有する成分、又は、ヒト角層におけるAGEsの生成を抑制する作用を有する成分としては、マメ科ゲンゲ属に属する植物より得られる植物抽出物が好適に例示出来、より好ましくは、マメ科ゲンゲ属レンゲソウより得られる植物抽出物が好適に例示出来る。マメ科ゲンゲ属レンゲソウより得られる植物抽出物は、AGEs分解作用、取り分け、表皮又は角層AGEsの分解作用に優れる。
【0013】
本発明のAGEs分解剤は、単純な化学物質、又は、動物又は植物より得られる抽出物を意味し、皮膚外用剤に、かかる成分を唯1種のみ含有することも出来るし、2種以上を組み合わせて含有させることも出来る。ここで、本発明の植物抽出物とは、抽出物自体、抽出物の分画、精製した分画、抽出物乃至は分画、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。かかるAGEs分解剤としては、本発明者等の検討によれば、モクセイ科オリ
ーブ属、ユキノシタ科ユキノシタ属、バラ科ポテンチラ属、マメ科アスパラトゥス属、バラ科シモツケソウ属、キク科ヨモギ属、マメ科ゲンゲ属する植物より得られる植物抽出物が好適に例示出来、より好ましくは、モクセイ科オリ
ーブ属オリ
ーブ、ユキノシタ科ユキノシタ属ユキノシタ、バラ科ポテンチラ属トルメンチラ、バラ科キジムシロ属カワラサイコ、バラ科ポテンチラ属ミヤマキンバイ、マメ科アスパラトゥス属ルイボス、バラ科シモツケソウ属シモツケソウ、キク科ヨモギ属ヨモギ、マメ科ゲンゲ属レンゲソウより得られる植物抽出物、さらに好ましくは、マメ科ゲンゲ属レンゲソウより得られる植物抽出物が好適に例示出来、さらに好ましくは、マメ科ゲンゲ属レンゲソウより得られる植物抽出物が好適に例示出来る。マメ科ゲンゲ属レンゲソウより得られる植物抽出物は、AGEs分解作用、取り分け、表皮AGEsの分解作用に優れる。
【0014】
前記のAGEs分解作用を有する植物抽出物の内、モクセイ科オリ
ーブ属オリ
ーブは、北アフリカ原産の常緑高木であり、果実は、オリ
ーブオイルやピクルスとして使用されている。日本においては、香川県の小豆島などで栽培されている。ユキノシタ科ユキノシタ属ユキノシタは、中国・日本を原産地とする常緑多年草であり、民間薬として使用されている。また、日本においては、北海道から九州に渡る幅広い地域にて栽培されている。バラ科ポテンチラ属トルメンチラは、ヨ
ーロッパに分布する多年草であり、肌を引きしめる効果や抗菌作用がある。バラ科ポテンチラ属ミヤマキンバイは、中国を原産地とする砂礫地、草地に生育する多年草の高山植物であり、日本においては、本州中部以北、北海道、千島列島等に成育する。バラ科キジムシロ属カワラサイコは、日本においては、本州、四国、九州の日当たりのよい河原、砂地などに生育する多年草である。全草を翻白草、根を紅柴胡と称し、解熱通経薬として使用する。マメ科アスパラトゥス属ルイボスは、南アフリカ共和国の西ケ
ープ州の北に広がるセダルバ
ーグ山脈一帯のみに自生する針葉樹様の葉を持つ植物であり、葉を乾燥し健康茶に用いる。バラ科シモツケソウ属シモツケソウは、日本、中国原産の多年草の小低木であり、日本においては、関東以西の本州、四国、九州に自生している。キク科ヨモギ属ヨモギは、欧州、北アフリカ原産の耐寒性多年草であり、日本においては、草もち、お灸のもぐさなど古くから利用されてきた。日本においては、本州から九州、沖縄に渡る広い範囲に自生する。マメ科ゲンゲ属レンゲソウは、中国原産の二年草で、利尿、解熱作用があることが知られている。また、日本全土において、栽培されている。
【0015】
かかる植物の抽出物を作製するためには、植物自体を裁断、破粉、粉砕等し溶媒にて抽出することも出来るが、好ましくは、植物体の全部乃至は一部或いはその加工物を溶媒で抽出することが好ましい。なお、前記の植物抽出物を得るためには、植物体の全部又は一部であれば特段の限定なく使用出来、例えば、果実、果皮、樹皮、幹、枝、葉、花、根、種子等が挙げられる。これらは単独の部位を用いてもよいし、2部位以上を用いてもよい。
【0016】
また、前記植物抽出物を製造する際に用いる抽出溶媒としては、極性溶媒が好ましく、水、エタノ
ール、イソプロピルアルコ
ール、ブタノ
ールなどのアルコ
ール類、1,3−ブタンジオ
ール、ポリプロピレングリコ
ールなどの多価アルコ
ール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエ
ーテル、テトラヒドロフランなどのエ
ーテル類から選択される1種乃至は2種以上が好適に例示出来る。
【0017】
本発明のAGEs分解剤は、皮膚外用剤全量に対し、0.0001質量%〜10質量%、より好ましくは、0.001質量%〜5質量%、さらに好ましくは、0.05質量%〜3質量%含有することが好ましい。これは、AGEs分解剤の含有量が少なすぎると、AGEs分解作用、取り分け、角層中におけるAGEs分解又は生成抑制作用などの皮膚中のAGEs含有量を減少させる作用、並びに、後記の炎症関連因子の美白成分、抗炎症成分又は抗プラスミン成分との併用効果を奏さない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、この系の自由度を損なう場合が存するためである。さらに、本発明の皮膚外用剤において、前記の植物抽出物よりなるAGEs分解剤を、保湿などのAGEs分解作用以外の作用を目的に配合した場合であっても、前記抽出物が、角層中におけるAGEsの存在量を減少させる作用を有する場合は、本願発明の構成と効果を充足するので、本発明の技術的範囲に属する。
【0018】
本発明における前記の植物抽出物より得られるAGEs分解作用を有する成分は、日本において自生又は生育された植物、漢方生薬原料などとして販売される日本産のものを用い、抽出物を作製することも出来るし、丸善製薬株式会社などの植物抽出物を取り扱う会社より販売されている市販の抽出物を購入し、使用することも出来る。抽出に際しては、植物体、地上部又は木幹部は予め、粉砕或いは細切して抽出効率を向上させるように加工することが好ましい。抽出物は、植物体、地上部乃至はその乾燥物1質量に対して、溶媒を1〜30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬する。浸漬後は、室温まで冷却し、所望により不溶物を除去した後、溶媒を減圧濃縮するなどにより除去することが出来る。しかる後、シリカゲルやイオン交換樹脂を充填したカラムクロマトグラフィ
ーなどで分画精製し、所望の抽出物を得ることが出来る。
【0019】
<本発明のモクセイ科オリ
ーブ属オリ
ーブより得られる抽出物の製造方法>
オリ
ーブの葉3kgに50%エタノ
ール水溶液5Lを加え、2時間加熱環流し、ろ過によって不溶物を取り除き減圧濃縮し、本発明のオリ
ーブより得られる植物抽出物を44g得た。
【0020】
<本発明のユキノシタ科ユキノシタ属ユキノシタより得られる植物抽出物の製造方法>
ユキノシタの葉3.5kgに50%エタノ
ール水溶液6Lを加え、2時間加熱環流し、ろ過によって不溶物を取り除き減圧濃縮し、本発明のユキノシタより得られる植物抽出物を41g得た。
【0021】
<本発明のバラ科ポテンチラ属トルメンチラより得られる植物抽出物の製造方法>
バラ科ポテンチラ属トルメンチラの全草の乾燥物100gを、細切した後、500mLの50%エタノ
ール水溶液を加えて3時間、加熱還流し、冷却後濾過にて不溶物を取り除いた後、減圧濃縮し、ついで凍結乾燥し、植物抽出物1を得た。しかる後に、植物抽出物1に200mLの水と200mLの酢酸エチルを加え、液液抽出を行い、酢酸エチル相をとり、減圧濃縮し、本発明のバラ科ポテンチラ属トルメンシラより得られる植物抽出物を得た。
【0022】
<本発明のバラ科キジムシロ属カワラサイコより得られる植物抽出物の製造方法>
バラ科キジムシロ属カワラサイコの全草の乾燥物100gを、細切した後、500mLの50%エタノ
ール水溶液を加えて3時間、加熱還流し、冷却後濾過にて不溶物を取り除いた後、減圧濃縮し、ついで凍結乾燥し、植物抽出物2を得た。しかる後に、植物抽出物2に200mLの水と200mLの酢酸エチルを加え、液液抽出を行い、酢酸エチル相をとり、減圧濃縮し、本発明のバラ科キジムシロ属カワラサイコより得られる植物抽出物を得た。
【0023】
<本発明のバラ科ポテンチラ属ミヤマキンバイより得られる植物抽出物の製造方法>
バラ科ポテンチラ属ミヤマキンバイの全草の乾燥物100gを、細切した後、500mLの50%エタノ
ール水溶液を加えて3時間、加熱還流し、冷却後濾過にて不溶物を取り除いた後、減圧濃縮し、ついで凍結乾燥し、植物抽出物3を得た。しかる後に、植物抽出物3に200mLの水と200mLの酢酸エチルを加え、液液抽出を行い、酢酸エチル相をとり、減圧濃縮し、本発明のバラ科ポテンチラ属ミヤマキンバイより得られる植物抽出物を得た。
【0024】
<本発明のマメ科アスパラトゥス属ルイボスより得られる植物抽出物の製造方法>
マメ科アスパラトゥス属ルイボスの葉の乾燥物100gを、細切した後、500mLの50%エタノ
ール水溶液を加えて3時間、加熱還流し、冷却後濾過にて不溶物を取り除いた後、減圧濃縮し、ついで凍結乾燥し、抽出物4を得た。しかる後に、抽出物4に200mLの水と200mLの酢酸エチルを加え、液液抽出を行い、酢酸エチル相をとり、減圧濃縮し、本発明のマメ科アスパラトゥス属ルイボスより得られる植物抽出物を得た。
【0025】
<本発明のバラ科シモツケソウ属シモツケソウより得られる植物抽出物の製造方法>
バラ科ポテンチラ属シモツケソウの全草の乾燥物100gを、細切した後、500mLの50%エタノ
ール水溶液を加えて3時間、加熱還流し、冷却後濾過にて不溶物を取り除いた後、減圧濃縮し、ついで凍結乾燥し、抽出物5を得た。しかる後に、抽出物5に200mLの水と200mLの酢酸エチルを加え、液液抽出を行い、酢酸エチル相をとり、減圧濃縮し、本発明のバラ科シモツケソウ属シモツケソウより得られる植物抽出物を得た。
【0026】
<本発明のキク科ヨモギ属ヨモギより得られる植物抽出物の製造方法>
キク科ヨモギ属ヨモギの全草の乾燥物100gを、細切した後、500mLの50%エタノ
ール水溶液を加えて3時間、加熱還流し、冷却後濾過にて不溶物を取り除いた後、減圧濃縮し、ついで凍結乾燥し、抽出物6を得た。しかる後に、抽出物6に200mLの水と200mLの酢酸エチルを加え、液液抽出を行い、酢酸エチル相をとり、減圧濃縮し、本発明のキク科ヨモギ属ヨモギより得られる植物抽出物を得た。
【0027】
<本発明のマメ科ゲンゲ属レンゲソウより得られる植物抽出物の製造方法>
マメ科ゲンゲ属レンゲソウの全草及び種子の乾燥物1
kgを細断し、10
Lのエタノ
ール溶液を加え、50℃以下の温度にて一晩浸漬した後、濾過にて不溶物を除去することにより、エタノ
ール溶液抽出物である抽出物を得た。
【0028】
以下の方法に従い、本発明のAGEs分解剤のAGEs分解作用を評価した。
【0029】
<試験例1: AGEs分解作用評価1(α−ジケトンのC-C結合切断能の測定)>
22mM 1−フェニル−1,2−プロパンジオン/メタノ
ール+0.1M リン酸緩衝液(PH7.4) 1mLと、本発明の植物抽出物(モクセイ科オリ
ーブ属オリ
ーブより
得られる植物抽出物、ユキノシタ科ユキノシタ属ユキノシタより得られる植物抽出物、バラ科ポテンチラ属トルメンチラより得られる植物抽出物、バラ科キジムシロ属カワラサイコより得られる植物抽出物、バラ科ポテンチラ属ミヤマキンバイより得られる植物抽出物
、マメ科アスパラトゥス属ルイボスより得られる植物抽出物、バラ科シモツケソウ属シモツケソウより得られる植物抽出物、キク科ヨモギ属ヨモギより得られる植物抽出物、マメ科ゲンゲ属レンゲソウより得られる植物抽出物) 1mLを混合し、37℃で10時間反
応させ、安息香酸の量をHPLCにて定量した。
(HPLC条件)
分析条件 検出器 :紫外吸光光度計(測定波長:260nm)
カラム :東ソ
ーTSK−ODS80TsQA
カラム温度:室温
移動層 :氷酢酸2g/アセトニトリル 500mL+エデト酸二ナトリウム溶液(1→250) 500mL
流量:1mL/min
【0030】
前述した本発明のAGEs分解剤に付いて、試験例1に記載の方法に従いAGEs分解作用評価(α−ジケトンのC-C結合切断能の測定)を実施した。本発明のAGEs分解作用を有する植
物抽出物の切断能は、モクセイ科オリ
ーブ属オリ
ーブより得られる植物抽出物(29%)、ユキノシタ科ユキノシタ属ユキノシタより得られる植物抽出物(35%)、バラ科ポテンチラ属トルメンチラより得られる植物抽出物(32%)、バラ科キジムシロ属カワラサイコより得られる植物抽出物(29%)、バラ科ポテンチラ属ミヤマキンバイより得られる植物抽出物(34%)、マメ科アスパラトゥス属ルイボスより得られる植物抽出物(25%)、バラ科シモツケソウ属シモツケソウより得られる植物抽出物(37%)、キク科ヨモギ属ヨモギより得られる植物抽出物(33%)、マメ科ゲンゲ属レンゲソウより得られる植物抽出物(43%)であった。本発明のAGEs分解剤には、優れたAGEs分解作用が認められた。
【0031】
<試験例2: AGEs分解作用評価2(グルコ
ース−牛血清アルブミンAGEs分解能の測定)
>
以下の試験材料を用い、AGEs分解作用評価を実施した。
AGE-BSA:グルコ
ースと牛血清アルブミン(BSA)を37℃で12週間以上インキュベ
ートし、PD−10 columns(Amersham Biosciences 17−0851−01)にて余分なグ
ルコ
ースを除いたもの、1次抗体 :Anti-Albumin、Bovine Serum、Rabbit−Poly ROCKLAND 201−41331/20000、2次抗体 :Goat anti−rabbit IgG horseradish peroxidase conjugate BioRAD 170−6515 1/10000、基質 :TMB solution Wako 546−01911
(手順)
Type I コラ
ーゲンコ
ートした96穴マイクロプレ
ート(Bio Coat 35 4407
)に10μg/mLのAGE-BSAを100μL加え、1.0μg(AGE-BSA/well) 37℃にて4時間静置した後、0.05%Tween20/PBS(−)にて3回洗浄(マイクロミキサ
ー上で室温、3分間振とうし)、PBS(−)に溶解した濃度(1×10−4%)の試料を1
00μL加え、37℃で10時間以上反応させる。その後、0.05%Tween20/PBS(
−)にて3回洗浄し、1次抗体を各wellに100μL/well加え、室温で30分間静
置する。0.05%Tween20/PBS(−)にて3回洗浄し、2次抗体を100μL/we
ll入れ、室温30分間静置する。0.05%Tween20/PBS(−)にて3回洗浄し、TMBを100μL/well加え、室温15分反応させる。1N 塩酸を100μL/well入れ、反応を止め、450nmの吸光度を測定する。AGEsの量を変え、検量線を引き、この検量線より残存AGEs量を定量した。残存AGEsを添加したAGEsより減じ、添加したAGEsで除し、100を乗じてAGEs分解率を算出した。
【0032】
前述した本発明のAGEs分解剤に付いて、試験例2に記載の方法に従いAGEs分解作用評価(グルコ
ース−牛血清アルブミンAGEs分解能の測定)を実施した。本発明のAGEs分解作用を有する植物抽出物のグルコ
ース−牛血清アルブミンAGEs分解能は、モクセイ科オリ
ーブ属オリ
ーブより得られる植物抽出物(25%)、ユキノシタ科ユキノシタ属ユキノシタより得られる植物抽出物(28%)、バラ科ポテンチラ属トルメンチラより得られる植物抽出物(24%)、バラ科キジムシロ属カワラサイコより得られる植物抽出物(28%)、バラ科ポテンチラ属ミヤマキンバイより得られる植物抽出物(31%)、マメ科アスパラトゥス属ルイボスより得られる植物抽出物(24%)、バラ科シモツケソウ属シモツケソウより得られる植物抽出物(32%)、キク科ヨモギ属ヨモギより得られる植物抽出物(33%)、マメ科ゲンゲ属レンゲソウより得られる植物抽出物(37%)であった。本発明のAGEs分解剤には、優れたAGEs分解作用が認められた。
【0033】
<試験例3: ヒト角層中におけるAGEsの産生抑制作用評価>
角層中のAGEsは次のようにして検出できる。皮膚より市販の粘着テ
ープ等を利用してテ
ープストリッピングにより角層採取を行い、溶剤で半日処理して粘着テ
ープ部分を除去する。得られた角層に対して免疫組織染色を行い、染色された角層標本を顕微鏡下で観察する。結果を
図1に示す。前記溶剤としては、有機溶媒、特にキシレンが好ましく例示できる。免疫組織染色の条件として、一次抗体(anti AGE monocronal antibody(mouse) TransGenic KH001)、ビオチン化2次抗体(Biotin-Rabbit Anti Mouse IGg conjugate ZYMED 81-6740)、ABC試薬(R.T.U VECTASTAIN Elite ABC REAGENT BECTOR PK-7100)、AEC基質(ENVISION kit/HRP(AEC) Dako K3464)が好ましく例示できる。対照として、70%エタノ
ール溶液に浸漬した角層標本を用意した。角層標本を、100mMグルコ
ースを溶解した70%エタノ
ール溶液に浸漬する。また、本発明のAGEs分解剤であるマメ科ゲンゲ属レンゲソウより得られる植物抽出物 0.1%共存下、非共存下で、37度で8日間放置後、AGEsを検知した。マメ科ゲンゲ属レンゲソウより得られる植物抽出物の非共存下においては、対照と比較して明らかに反応部位が多く、グルコ
ースによりAGEsが産生したことがわかった。マメ科ゲンゲ属レンゲソウより得られる植物抽出物 0.1%共存下では、非共存下に比べて明らかに反応部位が少なく、マメ科ゲンゲ属レンゲソウより得られる植物抽出物がヒト角層中におけるAGEsの産生抑制作用を有することがわかった。この度合いは、標識の存在面積比によって定量化することができるし、該標識の存在割合は、後述の如く、スコアなどで簡便に数値化できる。結果を
図1に示す。
【0034】
本発明のAGEs分解剤は、皮膚中のAGEsを分解する作用、取り分け、ヒト角層中のAGEsを分解する作用、さらには、後述する炎症関連因子と共に皮膚外用剤中に含有することにより美白作用、取り分け、肌荒れ症状を伴う色素沈着予防又は改善に対する増強作用に優れる。さらに、かかる成分と炎症関連因子を含有する皮膚外用剤は、前記のAGEs分解剤が有するAGEs産生(合成)を抑制する作用又はAGEs分解を促進する作用などのAGEs存在量を減少させる作用により、皮膚中のAGEsを分解し、しみ、くすみをはじめとするAGEsが関与する色素沈異常による肌症状の悪化に対する予防又は改善作用を発揮するのに加え、AGEsの関与が少ないとされるメラニン過剰産生に起因する肌荒れ症状を伴う色素沈着の予防又は改善に対し、優れた効果を発揮する。
【0035】
<本発明の抗炎症関連因子>
本発明の炎症関連因子は、前記のAGEs分解剤と共に皮膚外用剤に含有させることにより、美白作用、取り分け、重層剥離などの肌荒れ症状を伴う色素沈着の予防又は改善作用、治り難いしみ、くすみなどの色素沈着異常などの色素沈着に対する優れた予防又は改善作用を発揮する。本発明の炎症関連因子としては、美白成分、抗炎症成分、抗プラスミン成分などが好適に例示出来る。本発明の炎症関連因子に付いて、以下に述べる。
【0036】
本発明の皮膚外用剤は、1)AGEs分解剤と、2)炎症関連因子とを含有することを特徴とする。本発明の皮膚外用剤に含有される炎症関連因子としては、炎症関連因子であれば、特段の限定なく適応することが出来、具体的には、美白成分、抗炎症成分、抗プラスミン成分などが好適に例示出来る。本発明の炎症関連因子としては、単純な化学物質、生薬又は動植物より得られる抽出物を意味し、かかる成分を唯1種のみ含有することも出来るし、2種以上を組み合わせて含有させることも出来る。ここで、本発明の抽出物とは、抽出物自体、抽出物の分画、精製した分画、抽出物乃至は分画、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。
【0037】
本発明の炎症関連因子の内、美白成分に付いて述べる。本発明の美白成分としては、美白作用を有する成分であれば、特段の限定なく適応することが出来、より好ましくは、メラニン産生抑制剤、α−MSH抑制剤、メラノサイトデンドライト伸長抑制剤、プロトンポンプ阻害剤が好適に例示出来る。本発明の美白成分は、それ自身に美白作用が存するのみならず、前記のAGEs分解剤と共に皮膚外用剤に含有させることにより、美白作用の増強作用、具体的には、紫外線暴露による色素沈着異常に対する予防又は改善作用を増強する作用、取り分け、重層剥離などの肌荒れ症状を伴う色素沈着の予防又は改善作用、治り難いしみ、くすみなどの色素沈着異常などの肌症状の予防又は改善作用を増強する作用に優れる。
【0038】
前記メラニン産生抑制剤としては、4−アルキルレゾルシノ
ール及び/又はそれらの塩、アスコルビン酸誘導体及び/又はそれらの塩、ハイドロキノン及び/又はそれらの塩、ビタミンE及び/又はその誘導体、パンテテイン−S−スルホン酸及び/又はその塩等が好適に例示出来る。また、本発明のメラニン産生抑制剤としては、メラニン産生抑制作用を有する成分であれば特段の限定なく適応することが出来るが、より好ましくは、例えば、特開2009−155236号公報に記載のメラニン産生抑制作用試験において、細胞毒性を示さない被験物質添加濃度において、50%以上のメラニン産生抑制作用を示す成分が好適に例示出来る。
【0039】
前記の4−アルキルレゾルシノ
ール及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に付いて述べる。本発明の4−アルキルレゾルシノ
ール誘導体は、メラニン産生抑制作用を有する4−アルキルレゾルシノ
ール及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であれば、特段の限定なく適応することが出来、より好ましくは、4−アルキルレゾルシノ
ールの4位アルキル基の炭素数が、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基、さらに好ましくは、炭素数3〜7の直鎖又は分岐のアルキル基を有する4−アルキルレゾルシノ
ール及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩好適に例示出来る。前記の4−アルキルレゾルシノ
ール及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に関し好ましいものを具体的に例示すれば、4−メチルレゾルシノ
ール、4−エチルレゾルシノ
ール、4−プロピルレゾルシノ
ール、4−(1−メチルエチル)レゾルシノ
ール、4−n−ブチルレゾルシノ
ール、4−(2−メチルプロピルレゾルシノ
ール)、4−(1−メチルエチルレゾルシノ
ール)、1−エチルプロピルレゾルシノ
ール、1−エチル−2−メチルプロピルレゾルシノ
ール、1−イソプロピル−2−メチルプロピルレゾルシノ
ール、1−ブチルペンチルレゾルシノ
ール、1−イソプロピル−2−メチルプロピルレゾルシノ
ール、1−ブチルペンチルレゾルシノ
ール、1−イソブチル−3−メチルブチルレゾルシノ
ール、4−(1−メチルプロピル)レゾルシノ
ール、4−(1−メチルブチル)レゾルシノ
ール、4−tert−ブチルレゾルシノ
ール及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩等が好適に例示出来、より好ましくは、4−n−ブチルレゾルシノ
ール及び/又はその薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。
【0040】
前記の4−アルキルレゾルシノ
ール及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が、前記AGEs分解剤と共に働き、美白作用、具体的には、紫外線暴露による色素沈着異常の予防又は改善作用、取り分け、重層剥離などの肌荒れ症状を伴う色素沈着の予防又は改善作用、治り難いしみ、くすみなどの色素沈着異常などの肌症状の予防又は改善作用に対する増強効果を奏するためには、皮膚外用剤全量に対し、総量で0.0001質量%〜5質量%、より好ましくは、0.001質量%〜3質量%、さらに好ましくは、0.01質量%〜2質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記効果を奏さない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、徒に系の自由度を損なう場合が存するためである。
【0041】
前記の4−アルキルレゾルシノ
ールは、相当するアルキル基を有するカルボン酸とレゾルシンを塩化亜鉛の存在下、縮合し、亜鉛アマルガム/塩酸により還元する方法、又は、相当するアルキル基を有するアルコ
ール及びレゾルシンを200〜400℃の高温下にて縮合させる方法等の公知の合成方法(例えば、Lille ,J. ; Bitter, L. A.; Peiner, V. Trudy-Nauchono- Issledovatel' skii Institut Slantsev (1969)、No.18、 127−134、特開2006−124358号公報、特開2006−124357号公報を参照)に従い製造することも出来るし、市販の試薬として購入することも出来る。
【0042】
前記のアスコルビン酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に付いて述べる。本発明のアスコルビン酸誘導体及びそれらの薬理学的に許容される塩は、メラニン産生抑制作用を有するアスコルビン酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩であれば特段の限定なく適応することが出来、より好ましくは、水溶性のアスコルビン酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。前記のアスコルビン酸誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に関し具体例を挙げれば、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル、アスコルビン酸−2−グルコシド(単に、アスコルビン酸グルコシドと表記する場合も存する)及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来、より好ましくは、アスコルビン酸、アスコルビン酸−2−グルコシド及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。
【0043】
前記のアスコルビン酸、その誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が、前記AGEs分解剤と共に働き、美白作用、取り分け、紫外線暴露による色素沈着異常の予防又は改善作用に対する増強効果、取り分け、重層剥離などの肌荒れ症状を伴う色素沈着の予防又は改善作用、治り難いしみ、くすみなどの色素沈着異常などの肌症状の予防又は改善作用に対する増強作用を奏するためには、皮膚外用剤全量に対し、総量で0.1質量%〜10質量%、より好ましくは、0.5質量%〜5質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記効果を奏さない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、徒に系の自由度を損なう場合が存するためである。
【0044】
前記のハイドロキノン誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に付いて述べる。本発明のハイドロキノン誘導体及びそれらの薬理学的に許容される塩は、メラニン産生抑制作用を有するハイドロキノン誘導体及びそれらの薬理学的に許容される塩導体であれば特段の限定なく適応することが出来、より好ましくは、ハイドロキノン配糖体が好適に例示出来る。前記のハイドロキノン配糖体の糖鎖部分としては、L−アラビノ
ース、D−キシロ
ース、D−リボ
ース、D−キシルロ
ース、D−リキソ
ース、D−リブロ
ース等の五炭糖、D−グルコ
ース、D−ガラクト
ース、D−マンノ
ース、D−タガロ
ース、D−フルクト
ース、L−ソルボ
ース等の六炭糖、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、シアル酸、ムラミン酸等のアミノ酸糖が好適に例示出来る。さらに、ウロン酸又はそのメチル化合物、アセチル化合物としては、D−グルクロン酸、D−ガラクツロン酸、D−マンヌロン酸、L−イズロン酸等のウロン酸又はそれらのメチル化合物、アセチル化合物が好適に例示出来る。かかる化合物の内、より好ましいものしては、ハイドロキノンとグルコ
ースが結合した化学構造を有するアルブチン及び/又はその薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。
【0045】
前記のハイドロキノン誘導体は、ハイドロキノンと相当する糖より常法により得ること
が出来る。例えば、アルブチンは、ハイドロキノンとグルコ
ースよりなる溶液に、β−グルコシダ
ーゼを用いた酵素反応により合成することが出来る(例えば、特開平05−176785号公報)。
【0046】
また、前記のハイドロキノン誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が、前記AGEs分解剤と共に働き、美白作用、取り分け、紫外線暴露による色素沈着異常の予防又は改善作用に対する増強効果、取り分け、重層剥離などの肌荒れ症状を伴う色素沈着の予防又は改善作用、治り難いしみ、くすみなどの色素沈着異常などの肌症状の予防又は改善作用に対する増強作用を奏するためには、皮膚外用剤全量に対し、総量で0.001質量%〜5質量%、より好ましくは、0.1質量%〜3質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記効果を奏さない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、徒に系の自由度を損なう場合が存するためである。
【0047】
前記のビタミンE、その誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩に付いて述べる。本発明のビタミンE、その誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩は、メラニン産生抑制作用を有するビタミンE、その誘導体及びそれらの薬理学的に許容される塩であれば特段の限定なく適応することが出来る。前記ビタミンE、その誘導体及びそれらの薬理学的に許容される塩に関し好ましいものを具体的に例示すれば、ビタミンE、ビタミンEアセテ
ート(酢酸トコフェロ
ール)、ビタミンEニコチネ
ート、ビタミンEオロテ
ート及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来、より好ましくは、ビタミンE及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が好適に例示出来る。
【0048】
また、前記のビタミンE、その誘導体及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が、前記AGEs分解剤と共に働き、美白作用、取り分け、紫外線暴露による色素沈着異常の予防又は改善作用に対する増強効果、取り分け、重層剥離などの肌荒れ症状を伴う色素沈着の予防又は改善作用、治り難いしみ、くすみなどの色素沈着異常などの肌症状の予防又は改善作用に対する増強作用を奏するためには、皮膚外用剤全量に対し、総量で0.05質量%〜10質量%、より好ましくは、0.2質量%〜5質量%、より好ましくは、0.5質量%〜3質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記効果を奏さない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、徒に系の自由度を損なう場合が存するためである。
【0049】
前記のパンテテイン−S−スルホン酸及び/又はその薬理学的に許容される塩に付いて
述べる。本発明のパンテテイン−S−スルホン酸は、遊離酸の形態のみならず、塩の形態
で使用することも出来る。前記のパンテテイン−S−スルホン酸の塩としては、薬理学的に許容される塩であれば、特段の限定なく使用出来る。例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、トリエタノ
ールアミン塩、モノエタノ
ールアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩等が好適に例示できる。中でもアルカリ土類金属塩が好ましく、カルシウム塩が特に好ましい。これは特に、皮膚外用剤の形態で使用した場合に、生体利用性が高いためである。前記パンテテイン−S−ス
ルホン酸には、光学異性体が存在し、D−体、DL−体のいずれも本発明に使用出来るが、
好ましくはD−体である。また、パンテティン−S−スルホン酸及びその塩は既知化合物であり、既に化粧料原料として市販されているものが存し、かかる市販品を購入して使用することが出来る。この様な市販品としては、パンテティン−S−スルホン酸のカルシウム
塩である「パンテティンSスルホン酸CA−70」(相互薬工株式会社)が好適に例示でき
る。
【0050】
また、前記のパンテテイン−S−スルホン酸及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩が、前記AGEs分解剤と共に働き、美白作用、取り分け、紫外線暴露による色素沈着異常の予防又は改善作用に対する増強効果、取り分け、重層剥離などの肌荒れ症状を伴う色素沈着の予防又は改善作用、治り難いしみ、くすみなどの色素沈着異常などの肌症状の予防又は改善作用に対する増強作用を奏するためには、皮膚外用剤全量に対し、総量で0.001質量%〜1.0質量%、より好ましくは、0.005質量%〜0.8質量%、より好ましくは、0.01質量%〜0.3質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記効果を奏さない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、徒に系の自由度を損なう場合が存するためである。
【0051】
また、前記のシソ科メリッサ属メリッサより得られる植物抽出物に付いて述べる。シソ科メリッサ属メリッサは、南ヨ
ーロッパ原産の植物であり、比較的早い時期に日本に移入され、現在は日本全土においてその成育が認められ、一部には自生しているところも存す
る。かかるシソ科メリッサ属メリッサの抽出物作製に用いる植物部位としては、全草または地上部が好適に例示出来る。本発明の実施例では、日本で育成されたメリッサを購入し、使用した。抽出に際して、植物体乃至はその乾燥物は予め、粉砕或いは細切して抽出効率を向上させるように加工することが好ましい。抽出物は、植物体乃至はその乾燥物1質量部に対して、溶媒を1〜30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬する。浸漬後は、室温まで冷却し、所望により不溶物を除去した後、溶媒を減圧濃縮するなどにより除去することが出来る。しかる後、シリカゲルやイオン交換樹脂を充填したカラムクロマトグラフィ
ーなどで分画精製し、所望の抽出物を得ることが出来る。尚、本発明においては、抽出物とは、抽出物自体、抽出物を分画、精製した分画、抽出物乃至は分画、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。
【0052】
また、前記のシソ科メリッサ属メリッサより得られる植物抽出物が、前記AGEs分解剤と共に働き、美白作用、取り分け、紫外線暴露による色素沈着異常の予防又は改善作用に対する増強効果、取り分け、重層剥離などの肌荒れ症状を伴う色素沈着の予防又は改善作用、治り難いしみ、くすみなどの色素沈着異常などの肌症状の予防又は改善作用に対する増強作用を奏するためには、皮膚外用剤全量に対し、総量で0.000001質量%〜10質量%、より好ましくは、0.00001質量%〜5質量%、より好ましくは、0.0001質量%〜3.0質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記効果を奏さない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、徒に系の自由度を損なう場合が存するためである。
【0053】
前記のα−MSH産生抑制剤に付いて述べる。本発明のα−MSH産生抑制剤は、α−MSH産生抑制作用を有する成分であれば特段の限定なく適応することが出来る。本発明のα−MSH産生抑制作用を有する成分としては、例えば、特開2009−067804号公報に記載のα−MSH産生抑制作用評価系において培養細胞内c−AMP産生量を減少させる作用を有する成分が好適に例示出来る。この様な成分としては、マメ科クララ属に属する植物より得られる植物抽出物が好適に例示出来、より好ましくは、マメ科クララ属クララより得られる植物抽出物が好適に例示出来る。α−MSH産生抑制剤は、生体内におけるメラニン産生に関与する重要な情報伝達物質のα−MSH産生を抑制する、又は、細胞間の情報伝達を阻害することにより細胞内c−AMP産生を抑制し、メラニン産生を抑制する。
【0054】
前記のα−MSH産生抑制剤が、前記AGEs分解剤と共に働き、美白作用、取り分け、紫外線暴露による色素沈着異常の予防又は改善作用に対する増強効果、取り分け、重層剥離などの肌荒れ症状を伴う色素沈着の予防又は改善作用、治り難いしみ、くすみなどの色素沈着異常などの肌症状の予防又は改善作用に対する増強作用を奏するためには、皮膚外用剤全量に対し、総量で0.00001質量%〜15質量%、より好ましくは、0.0001質量%〜10質量%、より好ましくは、0.01質量%〜5質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記効果を奏さない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、徒に系の自由度を損なう場合が存するためである。
【0055】
前記のメラノサイトのデンドライト伸長抑制剤に付いて述べる。本発明のメラノサイトのデンドライト伸長抑制剤は、メラノサイトの伸長抑制作用を有する成分であれば特段の限定なく適応することが出来る。本発明のメラノサイトのデンドライト伸長抑制作用を有する成分としては、例えば、特開2009−046503号に記載のメラノサイトのデンドライト伸長抑制作用評価においてデンドライト伸長抑制作用を有する成分が好適に例示出来る。この様な成分を具体的に例示すれば、メチルオフィオポゴナノンB、ソフォラフラバノンA、キク科ノコギリソウ属セイヨウノコギリソウより得られる植物抽出物、ユリ科ジャノヒゲ属に属する植物より得られる植物抽出物等が好適に例示出来る。メラノサイトのデンドライト伸長抑制剤は、メラニン産生亢進に起因する色素沈着異常に加え、メラニン産生量があまり寄与しないメラノサイトのデンドライトからメラニン顆粒の移動亢進により生じる色素沈着異常に対しても有効である。
【0056】
キク科ノコギリソウ属セイヨウノコギリソウは、ヨ
ーロッパを原産とする帰化植物の常緑多年草であり、日本においては、全国に自生することが知られている。また、バクモントウは、ユリ科ジャノヒゲ属に属する植物の肥大根茎を乾燥したものであり、漢方薬などとして利用される。ユリ科ジャノヒゲ属に属する植物としては、ジャノヒゲ(リュウノタマ)、ノシランなどが知られている。ユリ科ジャノヒゲ属ジャノヒゲは、日本、中国を原産地とする常緑多年草である。ユリ科ジャノヒゲ属ノシランは、日本を原産地とする常緑多年草であり、北海道から沖縄に渡る広い範囲に生育する。前記の植物抽出物を作製するのに好ましい植物部位としては、キク科ノコギリソウ属セイヨウノコギリソウであれば、地上部が、ユリ科ジャノヒゲ属に属する植物より得られる植物抽出物としては、根茎が好適に例示出来る。尚、本発明においては、抽出物とは、抽出物自体、抽出物を分画、精製した分画、抽出物乃至は分画、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。
【0057】
前記のメラノサイトのデンドライト伸長抑制剤が、前記AGEs分解剤と共に働き、美白作用、具体的には、紫外線暴露による色素沈着異常の予防又は改善作用に対する増強効果、取り分け、重層剥離などの肌荒れ症状を伴う色素沈着の予防又は改善作用、治り難いしみ、くすみなどの色素沈着異常などの肌症状の予防又は改善作用に優れる。かかる成分が、前記AGEs分解剤と共に皮膚外用剤中に含有し、効果を奏するためには、皮膚外用剤全量に対し、総量で0.01質量%〜10質量%、より好ましくは、0.05質量%〜5質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記効果を奏さない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、徒に系の自由度を損なう場合が存するためである。
【0058】
前記プロトンポンプ阻害剤に付いて述べる。本発明のプロトンポンプ阻害剤は、プロトンポンプ阻害作用を有する成分であれば、特段の限定なく適応することが出来る。プロトンポンプ阻害剤は、生体膜に存在しプロトンを能動輸送する膜H
+−ATPase、及び/又は、イオンポンプのNa
+/K
+−ATPaseと共役的に働きプロトンを受動輸送するNa
+/H
+交換輸
送系等に作用し、細胞又は細胞小器官内におけるプロトン濃度を調節する生体機能分子に作用し、プロトン輸送を阻害することにより細胞又は細胞小器官内における酸性化を誘引する作用に優れる。細胞又は細胞小器官内における酸性化作用は、pH依存的に働くイオンチャネル、酵素(例えば、チロシナ
ーゼ等)などの生体機能分子の生物活性又は機能に大きな影響を与える。メラニン産生の鍵酵素であるチロシナ
ーゼ酵素は、pH変動により大きな影響を受けるため、酸性化によりチロシナ
ーゼ活性を低下させメラニン産生を抑制する。本発明のプロトンポンプ阻害作用を有する成分としては、例えば、特願2009−219292号公報に記載のプロトンポンプ阻害作用評価においてプロトンポンプ阻害作用を示す成分が好適に例示出来る。本発明のプロトンポンプ阻害作用を有する成分の内、好ましいものを具体的に例示すれば、シソ科タチジャコウソウ属に属する植物、マメ科クララ属に属する植物、サトイモ科ショウブ属に属する植物、ウリ科ヘチマ属に属する植物、ユキノシタ科アジサイ属に属する植物、サルノコシカケ科マツホド菌核、マメ科ハギ属に属する植物より得られる植物抽出物が好適に例示出来、より好ましくは、シソ科タチジャコウソウ属タイムより得られる植物抽
出物、マメ科クララ属クララより得られる植物抽出物、ショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物、サトイモ科ショウブ属ショウブより得られる植物抽出物、ウリ科ヘチマ属ヘチマより得られる植物抽出物、ユキノシタ科アジサイ属アマチャより得られる植物抽出物、サルノコシカケ科マツホド菌核ブクリョウより得られる植物抽出物、マメ科ハギ属キハギより得られる植物抽出物、マメ科ハギ属トウクサハギより得られる植物抽出物が好適に例示出来る。
【0059】
前記のプロトンポンプ阻害作用を有する成分が、前記AGEs分解剤と共に働き、美白作用、具体的には、紫外線暴露による色素沈着異常の予防又は改善作用に対する増強効果、取り分け、重層剥離などの肌荒れ症状を伴う色素沈着の予防又は改善作用、治り難いしみ、くすみなどの色素沈着異常などの肌症状の予防又は改善作用を発揮するためには、皮膚外用剤全量に対し、総量で0.000001質量%〜10質量%、より好ましくは、0.00001質量%〜5質量%、さらに好ましくは、0.0001質量%〜3質量%含有することが好ましい。これは、少なすぎると前記効果を奏さない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、徒に系の自由度を損なう場合が存するためである。
【0060】
また、本発明の必須成分にあたる美白成分の内、好ましいものとして例示出来るメラニン産生抑制剤、α−MSH抑制剤、メラノサイトデンドライト伸長抑制剤、プロトンポンプ
阻害剤は、単純な化学物質に関しては、化合物をそのまま使用することも出来るし、薬理学的に許容される塩の形態として利用することも出来る。これらの塩としては、皮膚外用剤で使用されるものであれば、特段の限定無く使用でき、例えば、アルカリ塩であれば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、トリエタノ
ールアミン塩、モノエタノ
ールアミン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩等が好適に例示できる。又、酸との塩であれば、塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの鉱酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩等が好適に例示できる。
【0061】
かかる美白成分は、皮膚外用剤中に前記のAGEs分解剤と共に含有させることにより、優れた美白作用、具体的には、紫外線暴露による色素沈着異常の予防又は改善作用に対する増強効果、取り分け、重層剥離などの肌荒れ症状を伴う色素沈着の予防又は改善作用、治り難いしみ、くすみなどの色素沈着異常などの肌症状の予防又は改善作用を発揮する。かかる効果は、前記のAGEs分解剤、美白成分の有する薬理作用、更には、両成分による薬理学的な相加又は相乗作用に加え、標的部位への美白成分の送達効率を向上させる作用等によるものと考えられる。
【0062】
本発明の炎症関連因子の内、抗炎症成分に付いて述べる。本発明の皮膚外用剤は、1)AGEs分解剤と、2)炎症関連因子とを含有することを特徴とする。本発明の抗炎症成分としては、抗炎症作用を有する物質であれば特段の限定なく適応出来、例えば、キク科カミツレ属カミツレ(カモミ
ール)の抽出物、キク科ゴボウ属ゴボウの抽出物、カバノキ科カバノキ属シラカバの抽出物、クルミ科コウキ属に属する植物の抽出物、マメ科カンゾウ属カンゾウの抽出物等の抗炎症作用を有する植物抽出物に加え、クラリノン、グラブリジン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸及びその誘導体などの抗炎症植物抽出物に含有される主要な成分が好ましく例示出来る。これらの抗炎症成分の内、さらに好ましいものとしては、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン酸アルキル及びその塩、並びに、グリチルレチン酸及びその塩が好適に例示出来る。本発明の抗炎症作用を有する植物抽出物は、水やエタノ
ールなどの低級アルコ
ールを溶媒として、植物体乃至はその加工物に1〜20倍量加え、所望により攪拌を適宜加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、不溶物を濾過などで除去した後、所望により、減圧溜去等で溶媒を除去し、場合によっては「ダイアイオンHP20」等を担体としてカラムクロマトグラフィ
ー等で精製分画し、使用することができる。植物抽出物を作製するのに好ましい植物部位としては、キク科カミツレ属カモミ
ールであれば花蕾、キク科ゴボウであれば根部、マメ科クララ属クララであれば地下茎部、カバノキ科カバノキ属シラカバであれば樹皮、クルミ科コウキ属に属する植物であれば葉部、マメ科カンゾウ属カンゾウであれば地下茎が好ましく例示できる。グリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン酸アルキル及びその塩、グリチルリチン酸及びその塩などのグリチルレチン酸誘導体は、抗炎症作用のほかに、メラニン産生抑制作用、保湿作用等を有する。本発明の抗炎症成分としては、単純な化学物質、生薬又は動植物より得られる抽出物を意味し、かかる成分を唯1種のみ含有することも出来るし、2種以上を組み合わせて含有させることも出来る。ここで、本発明の抽出物とは、抽出物自体、抽出物の分画、精製した分画、抽出物乃至は分画、精製物の溶媒除去物の総称を意味する。
【0063】
本発明は、1)AGEs分解剤と、2)炎症関連因子、特に、抗炎症成分を含有する皮膚外用剤は、美白作用、具体的には、紫外線暴露により生じる色素沈着に対して優れた抑制作用を有するが、この様な用途に対し皮膚外用剤を使用する際には、紫外線暴露による炎症を惹起する可能性が高く、炎症反応及びそれに付随する種々の皮膚反応は、メラニン生成を亢進させる。従って、この様な抗炎症作用を有する成分を含有させることにより、炎症が沈静化する又は更なる炎症を抑えると共に、経皮的水分蒸散量の増加が抑制される。即ち、炎症後の肌荒れの出現も抑制される。また、色素沈着も重篤化することを防ぐことが出来る。
【0064】
前記の抗炎症成分の内、グリチルレチン酸誘導体及びその塩は、医薬部外品の有効成分として知られている成分であり、グリチルレチン酸アルキル及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩としては、例えば、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸ラウリル及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩等が好適に例示出来、グリチルリチン酸及び/又はその塩としては、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸アンモニウム等が好適に例示出来、これらの内、グリチルリチン酸ステアリル、グリチルリチン酸ジカリウムが好ましい。これは、使用例が豊富で安全性が高いことが既に知られているからである。かかる成分の好ましい含有量は、皮膚外用剤全量に対し0.00001質量%〜3質量%であり、より好ましくは、0.0001質量%〜2質量であり、さらに好ましくは、0.001〜1質量%である。これは少なすぎると前記効果を奏しない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、この系の自由度を損なう場合が存するためである。かかる成分は、皮膚に対して、抗炎症作用、メラニン産生抑制作用、肌荒れ改善作用などが発現するが、本発明の皮膚外用剤においては、前記のAGEs分解剤と共に働いて、優れた美白作用、具体的には、紫外線暴露による色素沈着異常の予防又は改善作用に対する増強効果、取り分け、重層剥離などの肌荒れ症状を伴う色素沈着の予防又は改善作用、治り難いしみ、くすみなどの色素沈着異常などの肌症状の予防又は改善作用を発揮する。
【0065】
かかる成分は、皮膚に対して、抗炎症作用、メラニン産生抑制作用、肌荒れ改善作用などを発現するが、本発明の皮膚外用剤においては、前記のAGEs分解剤と共に働いて、優れた美白作用、具体的には、紫外線暴露による色素沈着異常の予防又は改善作用に対する増強効果、取り分け、重層剥離などの肌荒れ症状を伴う色素沈着の予防又は改善作用、治り難いしみ、くすみなどの色素沈着異常などの肌症状の予防又は改善作用を発揮する。かかる成分は、AGEs分解剤と共に含有させることにより、紫外線暴露後の皮膚の炎症に対し皮膚外用剤として投与した場合、より速やかに炎症を抑え、皮膚バリア機能の回復効果を示し、肌状態悪化の予防効果が増大し、その結果として、本発明の皮膚外用剤のメラニン生成抑制効果も向上する。即ち、このような形態の皮膚外用剤は、皮膚に炎症がある場合にも、紫外線によって引き起こされる色素沈着症予防用の皮膚外用剤として好ましい。
【0066】
本発明の炎症関連因子の内、抗プラスミン成分に付いて述べる。本発明の皮膚外用剤は、1)AGEs分解剤と、2)炎症関連因子とを含有することを特徴とする。プラスミンとは、前駆体であるプラスミノ
ーゲンが、プラスミノ
ーゲンアクチベ
ータ
ー(PA)により活性化されることにより得られるプロテア
ーゼ酵素である。本発明における抗プラスミン成分とは、プラスミンが有するプラスミン酵素活性を抑制する作用を有する成分を意味する。本発明の抗プラスミン成分としては、通常、抗プラスミン成分として知られているものであれば特段の限定無く使用することが出来、例えば、トラネキサム酸、トラネキサム酸メチルアミドの様なトラネキサム酸誘導体、アプロチニン、ε−アミノカプロン酸或いはこれらの塩が好ましく例示できる。これらの中で特に好ましいものは、トラネキサム酸、トラネキサム酸メチルアミドの様なトラネキサム酸誘導体、ε−アミノカプロン酸及び/又はそれらの薬理学的に許容される塩である。また、かかる成分は、抗炎症作用、抗アレルギ
ー作用に加え、前記AGEs分解剤とともに働き、美白作用、具体的には、紫外線暴露による色素沈着異常の予防又は改善作用に対する増強効果、取り分け、重層剥離などの肌荒れ症状を伴う色素沈着の予防又は改善作用、治り難いしみ、くすみなどの色素沈着異常などの肌症状の予防又は改善作用を発揮する。
【0067】
かかる成分は、一種を単独で含有させることも出来るし、二種以上を組み合わせて含有させることも出来る。また、本発明の抗プラスミン成分は、そのまま使用することも出来るし、アルカリと共に処理するなどして、塩の形態として使用することも出来る。抗プラスミン成分の塩としては、生理的に許容される塩であれば特に限定されない。生理的に許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属、トリエチルアミン塩、トリエタノ
ールアミン塩、アンモニウム塩、モノエタノ
ールアミン塩、ピペリジン塩等の有機アミン塩、リジン塩、アルギン酸塩等の塩基性アミノ酸塩などが好適に例示出来る。
【0068】
前記の抗プラスミン成分の含有量は、皮膚外用剤全量に対し0.0001質量%〜5質量%であることが好ましく、0.05質量%〜5質量%であることがより好ましい。これは少なすぎると前記の抗プラスミン成分が有する抗炎症作用、抗アレルギ
ー作用、並びに、前記AGEs分解剤との併用効果が発現せず、多すぎても、効果が頭打ちになり、この系の自由度を損なう場合が存するためである。
【0069】
<本発明の皮膚外用剤>
本発明の皮膚外用剤は、1)AGEs分解剤と、2)炎症関連因子とを含有することを特徴とする。本発明の皮膚外用剤に含有されるAGEs分解剤としては、前述の通り、AGEs分解作用を有する成分であれば特段の限定なく適応出来るが、本発明者等の検討によれば、モクセイ科オリ
ーブ属、ユキノシタ科ユキノシタ属、バラ科ポテンチラ属、マメ科アスパラトゥス属、バラ科シモツケソウ属、キク科ヨモギ属、マメ科ゲンゲ属に属する植物より得られる植物抽出物が好適に例示出来、さらに好ましくは、モクセイ科オリ
ーブ属オリ
ーブ、ユキノシタ科ユキノシタ属ユキノシタ、バラ科ポテンチラ属トルメンチラ、バラ科キジムシロ属カワラサイコ、バラ科ポテンチラ属ミヤマキンバイ、マメ科アスパラトゥス属ルイボス、バラ科シモツケソウ属シモツケソウ、キク科ヨモギ属ヨモギ、マメ科ゲンゲ属レンゲソウより得られる植物抽出物が好適に例示出来る。また、本発明の皮膚外用剤に含有される炎症関連因子としては、美白成分、抗炎症成分、抗プラスミン成分が好適に例示出来る。前記の美白成分の内、好ましいものとしては、メラニン産生抑制剤、α−MSH産生抑制剤、メラノサイトのデンドライド伸長抑制剤、プロトンポンプ阻害剤などが好適に例示出来る。前記メラニン産生抑制剤の内、好ましいものを具体的に例示すれば、4−アルキルレゾルシノ
ール及び/又はそれらの塩、アスコルビン酸誘導体及び/又はそれらの塩、ハイドロキノン及び/又はそれらの塩、ウルソ
ール酸及び/又はそれらの塩、ビタミンE及び/又はその誘導体、パンテテイン−S−スルホン酸及び/又はその塩などが好適に例示出来る。前記のα−MSH抑制剤に関し、好ましいものを具体的に例示すれば、マメ科クララ属クララより得られる植物抽出物が好適に例示出来る。前記のメラノサイトのデンドライド伸長抑制剤に関し、好ましいものを具体的に例示すれば、メチルオフィオポゴナノンB、ソフォラフラバノンA、キク科ノコギリソウ属セイヨウノコギリソウより得られる植物抽出物、ユリ科ジャノヒゲ属に属する植物より得られる植物抽出物などが好適に例示出来る。前記のプロトンポンプ阻害剤に関し、好ましいものを具体的に例示すれば、シソ科タチジャコウソウ属タイムより得られる植物抽
出物、マメ科クララ属クララより得られる植物抽出物、ショウガ科ショウガ属ショウガより得られる植物抽出物、サトイモ科ショウブ属ショウブより得られる植物抽出物、ウリ科ヘチマ属ヘチマより得られる植物抽出物、ユキノシタ科アジサイ属アマチャより得られる植物抽出物、サルノコシカケ科マツホド菌核ブクリョウより得られる植物抽出物、マメ科ハギ属キハギより得られる植物抽出物、マメ科ハギ属トウクサハギより得られる植物抽出物などが好適に例示出来る。また、前記の抗炎症成分としては、グリチルリチン酸及びその薬理学的に許容される塩が好適に例示出来、これらの内、好ましいものを具体的に例示すれば、グリチルレチン酸及びその塩、グリチルレチン酸アルキル及びその塩、並びに、グリチルリチン酸及びその塩が好適に例示出来る。また、前記の抗プラスミン成分の内、好ましいものを具体的に例示すれば、トラネキサム酸及びその塩、トラネキサム酸メチルアミド及びその塩、ε−アミノカプロン酸及びその塩が好適に例示出来る。
【0070】
本発明の皮膚外用剤は、1)AGEs分解剤と、2)炎症関連因子とを含有することを特徴とする。かかる皮膚外用剤は、優れた美白作用、具体的には、紫外線暴露による色素沈着異常の予防又は改善作用に対する増強効果、取り分け、重層剥離などの肌荒れ症状を伴う色素沈着の予防又は改善作用、治り難いしみ、くすみなどの色素沈着異常などの肌症状の予防又は改善作用を有する。紫外線暴露等の物理的刺激により、メラノサイトにおいては、メラニンの産生亢進が起こる。さらに、メラノサイトにおけるメラニン産生亢進が、過度又は慢性的な場合には、メラノサイトにおけるメラニン産生亢進、さらには、ケラチノサイトへのメラニンの過剰輸送、蓄積及び排出遅延などの現象が生じ、ケラチノサイトにおける細胞機能不活性化、タ
ーンオ
ーバ
ーの遅延等のダメ
ージが与えられ、治り難いしみ、くすみ、肌荒れ症状を伴う色素沈着異常などの皮膚症状が発生する。この様な、ケラチノサイトにおける細胞機能低下が起因する色素沈着異常による皮膚症状を呈する人においては、角層標本を作製した場合には、有核細胞の出現率が平均に比べ高く、皮膚の重層剥離等の皮膚症状が観察される。本発明の皮膚外用剤は、美白用、具体的には、紫外線暴露による色素沈着異常の予防又は改善用に有用であるが、特に、前記の肌荒れ症状を伴う色素沈着異常、治り難いしみ、くすみなど、ケラチノサイトにおける細胞機能低下が起因する色素沈着に対する予防又は改善用に好適であり、かかる皮膚症状を呈する人を対象に使用することが特に好ましいため、角層標本の作製による有核細胞の出現率、皮膚の重層剥離等の皮膚症状の観察による症状を指標とし、投与する対象を設定することが好ましい。
【0071】
また、1)AGEs分解剤と、2)炎症関連因子とを含有する皮膚外用剤の製剤化にあたっては、通常の食品、医薬品、化粧料などの製剤化で使用される任意成分を含有することが出来る。本発明の皮膚外用剤としては、医薬品、医薬部外品、化粧品などが好適に例示出来、日常的に摂取出来ることから、化粧品、医薬部外品などに適応することが好ましい。その投与経路としては、かかる成分が連続投与される場合、さらには安全性を考慮した場合、経皮的に投与されることが好ましい。本発明の皮膚外用剤としては、皮膚に外用で適用されるものであれば、特段の限定無く使用することができ、例えば、化粧料、皮膚外用医薬、皮膚外用雑貨などが好適に例示でき、化粧料に適用することが特に好ましい。これは本発明の皮膚外用剤が、比類無き使用感の良さを有しているため、使用感が重要な化粧料に特に好適であるためである。また、本発明の皮膚外用剤としては、例えば、化粧料などのロ
ーション、乳液、エッセンス、クリ
ーム、パック化粧料、洗顔化粧料、クレンジング化粧料等が好ましく例示できる。更にその剤形としては、化粧料の領域で知られているものであれば特段の限定はなく、ロ
ーション製剤、水中油乳化製剤、油中水乳化製剤、複合エマルション乳化製剤等に好ましく例示できる。
【0072】
本発明の皮膚外用剤においては、かかる成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボ
カド油、トウモロコシ油、オリ
ーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワ
ー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パ
ーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコ
ール、ステアリルアルコ
ール、イソステアリルアルコ
ール、ベヘニルアルコ
ール、オクチルドデカノ
ール、ミリスチルアルコ
ール、セトステアリルアルコ
ール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコ
ール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロ
ールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロ
ールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエ
ーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコ
ーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノ
ールアミンエ
ーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレ
ート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコ
ール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエ
ーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエ
ート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレ
ート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレ
ート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコ
ールモノオレ
ート、POEジステアレ
ート等)、POEアルキルエ
ーテル類(POE2−オクチルドデシルエ
ーテル等)、POEアルキルフェニルエ
ーテル類(POEノニルフェニルエ
ーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエ
ーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエ
ーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体
類;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパ
ール剤類;レ
ーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマ
ー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤;桂皮酸系紫外線吸収
剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ
ール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノ
ール、イソプロパノ
ール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB
6塩酸塩、ビタミンB
6トリパルミテ
ート、ビタミンB
6ジオクタノエ
ート、ビタミンB
2又はその誘導体、ビタミンB
12、ビタミンB
15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロ
ール、β−トコフェロ
ール、γ−トコフェロ
ール、ビタミンEアセテ
ート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノ
ール等の抗菌剤;ヘクトライト、ジメチルジステアリルアンモニウム変性ヘクトライトなどの有機変性粘土鉱物などが好ましく例示できる。
【0073】
本発明の皮膚外用剤は前記の必須成分を含有することを特徴とする。本発明の皮膚外用剤は、化粧料の領域で知られているものであれば特段の限定はなく、ロ
ーション製剤、水中油乳化製剤、油中水乳化製剤、複合エマルション乳化製剤等に乳化剤形の形態としては、油中水乳化剤形でも、水中油乳化剤形でも構わないが、油中水乳化剤形が特に好ましい。ここで、油中水乳化剤形とは外相に油相を有する乳化剤形を総合して称する言葉であり、内相に水相を含有していても良いし、水中油エマルションなどの乳化物を有していても良い。
【0074】
本発明の皮膚外用剤においては、通常の化粧料などの皮膚外用剤で使用されている非界面活性剤を含有することが出来る。更に、乳化状態を安定に保つ意味でアルキル変性カルボキシビニルポリマ
ー及び/又はその塩を含有させることも好ましい。かかる成分の好ましい含有量は、皮膚外用剤全量に対して、0.01〜0.5質量%であり、より好ましくは0.05〜0.3質量%である。かかる成分は、皮膚に投与後前記必須成分であるアモジメチコンと複合膜を作り、アモジメチコンの効果を増強させるので、その意味でも含有することが好ましい。かかるアルキル変性カルボキシビニルポリマ
ーには市販品が存し、かかる市販品を購入して使用することが出来る。好ましい市販品としては、日本サ
ーファクタント工業株式会社から市販され、炭素数10〜30のアルキル基でアルキル変性されている「ペムレン(PEMUREN;登録商標)TR−1」、「ペムレン(PEMUREN;登録商標)TR−2」、BFグッドリッチ社(米)から市販されている「カ
ーボポ
ール(CARBOPOL;登録商標)1382」などがあり、アルキル変性されていないカルボキシビニルポリマ
ーとしては、BFグッドリッチ社(米)から市販されている「カ
ーボポ
ール(CARBOPOL;登録商標)Ultrez10」、「カーボポール(CAR
BOPOL;登録商標)940」などがある。このような親水性高分子は、唯一種を用いても、二種以上を組み合わせて用いても構わない。本発明の水中油型乳化皮膚外用剤は、このような親水性高分子を、0.05〜1質量%含有することが好ましく、0.08〜0.5質量%含有することがより好ましい。これより少ないと乳化系が不安定化するし、これより多いと系の粘度が高くなりすぎて、塗布性が悪くなる。
【0075】
また、前記の任意成分の中で特に好ましいものとしては、非イオン界面活性剤であり、中でも、親油性の界面活性剤であって、乳化状態に於いて構造形成性に優れるもの好ましく、かかる非イオン界面活性剤としては、ソルビタンステアリン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステルなどが特に好適に例示できる。かかる成分の好ましい含有量は0.1〜5質量%であり、より好ましくは0.2〜3質量%である。かかる成分を加えることにより、皮膚との接着性に優れるようになる。
【0076】
本発明の皮膚外用剤は、1)AGEs分解剤と、2)炎症関連因子とを含有することにより、「美白用」、「色素沈着改善用」、「シミ改善用」、「くすみ改善用」などの色素関連異常に関する予防又は改善用として効果を発揮する。また、1)AGEs分解剤と、2)炎症関連因子とを含有する皮膚外用剤には、紫外線暴露などによる色素沈着異常に対する予防又は改善作用以外の作用を奏するものも存在する。その様な作用の発現を目的とし、1)AGEs分解剤と、2)炎症関連因子とを含有する皮膚外用剤であっても、美白作用、具体的には、紫外線暴露による色素沈着に対する予防又は改善効果が発揮されている場合には本発明の効果を利用するものであるので、本発明の技術的範囲に属する。紫外線暴露などによる色素沈着異常に対する予防又は改善以外の作用としては、保湿作用、シワ形成に対する予防又は改善作用、肌荒れ予防又は改善作用、抗老化改善作用などが挙げられる。
【0077】
本発明の皮膚外用剤は、前記の任意成分や必須成分を常法に従って処理することにより製造することが出来る。
【0078】
以下に、実施例を挙げて、更に詳細に本発明について説明を加える。
【実施例1】
【0079】
<製造例1: 本発明の皮膚外用剤の製造1>
表1及び表2に記載の処方成分よりなる皮膚外用剤(化粧料1〜10)を作製した。即ち、処方成分イ)、ロ)及びハ)をそれぞれ70℃に加熱し、イ)にロ)を加え中和し、これに徐々にハ)を加えて乳化し、ホモジナイザ
ーで乳化粒子を整え、攪拌冷却し、皮膚外用剤(化粧料1〜10)を得た。また同時に、表1の処方成分中、「本発明のAGEs分解剤」を「水」に置換した比較例1、「本発明の炎症関連因子」を「水」に置換した比較例2、「本発明のAGEs分解剤」及び「本発明の炎症関連因子」を共に「水」に置換した比較例3を作製した。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
【実施例2】
【0082】
<試験例4: 本発明の皮膚外用剤(皮膚外用剤)の色素沈着抑制作用評価1>
実施例1に記載の方法に従い製造した皮膚外用剤(化粧料1〜10)及び比較例1〜3の化粧料を用い、色素沈着抑制効果を調べた。自由意思で参加したパネラ
ーの上腕内側部に、試験初日(1日目)に1.5cm×1.5cmの試験部位を設け、試験部位の皮膚明
度(L*値)を色彩色差計(CR-300、コニカミノルタ株式会社)にて測定した。試
験初日に皮膚明度を測定した後、試験部位に最少紅斑量の2倍量(2MED)の紫外線を1回照射した。紫外線照射終了直後より1日3回、14日連続して、各試験部位に各検体(化粧料1〜8又は比較例1〜3の化粧料)を50μL塗布した。塗布終了24時間後(15日目)に色彩色差計(CR-300、コニカミノルタ株式会社)にて各試験部位の皮膚明度(L*値)を測定し、試験初日のL*値に対するΔL*値を算出した。結果を表3に示す。ΔL*値は色素沈着の程度が強いほど低い値となるため、ΔL*値が大きい程、色素沈着が抑制されたと判断することができる。これにより、本発明の皮膚外用剤である化粧料1〜10は優れた色素沈着抑制効果を有することが分かる。また、比較例1及び比較例2も色素沈着抑制作用が認められたが、その効果は、化粧料1〜10に比較し弱かった。これにより、本発明の皮膚外用剤である化粧料1〜10は、優れた色素沈着抑制効果を示すことが分かる。
【0083】
【表3】
【実施例3】
【0084】
<製造例2: 本発明の皮膚外用剤の製造2>
実施例1に記載の化粧料8及び化粧料9に関し、「本発明のAGEs分解剤」、並びに、「本発明の炎症関連因子」の濃度を、表4に記載の濃度に変更した皮膚外用剤(化粧料11〜20)を作製した。本実施例における皮膚外用剤の作製にあたり、「本発明のAGEs分解剤」、並びに、「本発明の炎症関連因子」の質量%の増減により生じた全体の質量%は、処方成分中の「水」の質量%を増減させることによ
り調整した。
【0085】
【表4】
【実施例4】
【0086】
<試験例5: 本発明の皮膚外用剤(皮膚外用剤)の色素沈着抑制作用評価2>
実施例3に記載の方法に従い製造した皮膚外用剤(化粧料11〜20)及び実施例1に記載の比較例1〜3に関し、実施例2に記載の方法に従い色素沈着抑制作用を評価した。結果を表5に示す。これにより、本発明の皮膚外用剤である化粧料11〜20は優れた色素沈着抑制効果を有することが分かる。また、比較例1及び比較例2も色素沈着抑制作用が認められたが、その効果は、化粧料11〜20に比較し弱かった。これにより、本発明の皮膚外用剤である化粧料11〜20は、優れた色素沈着抑制効果を示すことが分かる。
【0087】
【表5】
【実施例5】
【0088】
<製造例3: 本発明の皮膚外用剤の製造3>
本発明の皮膚外用剤として、表1及び表2に記載の化粧料1に関し、処方成分の「ペムレンTR−2」を「カルボキシビニルポリマ
ー」に置換した皮膚外用剤(化粧料21)の製造を試みたが乳化することが出来ず、皮膚外用剤(化粧料21)は製造することが出来なかった。
【実施例6】
【0089】
<製造例4: 本発明の皮膚外用剤の製造4>
表6及び表7に記載の処方成分を有する化粧料22〜31を作製した。また同時に、表6の処方成分中、「本発明のAGEs分解剤」を「水」に置換した比較例4、「本発明の炎症関連因子」を「水」に置換した比較例5、「本発明のAGEs分解剤」及び「本発明の炎症関連因子」を共に「水」に置換した比較例6を作製した。
【0090】
【表6】
【0091】
【表7】
【実施例7】
【0092】
<試験例6: 本発明の皮膚外用剤(皮膚外用剤)の色素沈着抑制作用評価3>
実施例2に記載の方法に従い、化粧料22〜31、比較例4〜6に関し、色素沈着抑制作用を評価した。結果を表8に示す。これにより、本発明の皮膚外用剤である化粧料22〜31は優れた色素沈着抑制効果を有することが分かる。また、比較例4及び比較例5も色素沈着抑制作用が認められたが、その効果は、化粧料22〜31に比較し弱かった。これにより、本発明の皮膚外用剤である化粧料22〜31は、優れた色素沈着抑制効果を示すことが分かる。
【0093】
【表8】
【実施例8】
【0094】
<試験例7: 本発明の皮膚外用剤(皮膚外用剤)の色素沈着抑制作用評価4>
実施例1に記載の方法に従い製造した皮膚外用剤(化粧料1〜10)、比較例1〜3に関し、以下の手順に従い色素沈着抑制作用評価を行った。メラニン量が平均より多いパネラ
ーの選択にあたっては、皮膚から粘着テ
ープストリッピングにより採取した角層細胞の標本を、硝酸銀水溶液を用いたメラニン染色を行うことにより可視化し、これを顕微鏡下観察することにより判定した。また、判定にあたっては、平均的な存在状況を中心にスコア化して判別した。さらに、前記パネラ
ーの内、角層標本を用い有核細胞の出現率が平均よりも高い、乃至は、重層剥離の度合いが平均よりも多い人を観察により選択しパネラ
ーとした。前記の特性を有する自由意思で参加したパネラ
ーの両上腕内側部に1.5cm×1.5cmの部位を上下2段に分け測定部位を設け、最少紅斑量(1MED)の紫外線照射を1日1回、3日連続して3回照射した。照射終了後1日より、1日1回28日連続してサンプル50μLを塗布した。1部位は無処置部位とした。塗布終了24時間後に色彩
色差計(CR-300、コニカミノルタ株式会社)にて各試験部位の皮膚明度(L*値)
を測定し、無処置部位のL値に対するΔL*値を算出した。L*値は、色素沈着の程度が強いほど低い値となる。従って、ΔL*値が大きい程、色素沈着が抑制されたと判断することができる。結果を表9に示す。これにより、本発明の皮膚外用剤である化粧料1〜10は、優れた色素沈着抑制効果を示すことが分かる。
【0095】
【表9】