特許第5683151号(P5683151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5683151
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】防塵ネット及びこれを用いた防塵柵
(51)【国際特許分類】
   E01F 7/02 20060101AFI20150219BHJP
【FI】
   E01F7/02
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-155177(P2010-155177)
(22)【出願日】2010年7月7日
(65)【公開番号】特開2011-236724(P2011-236724A)
(43)【公開日】2011年11月24日
【審査請求日】2013年7月3日
(31)【優先権主張番号】特願2010-92307(P2010-92307)
(32)【優先日】2010年4月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085198
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 久夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098604
【弁理士】
【氏名又は名称】安島 清
(74)【代理人】
【識別番号】100087620
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 範夫
(72)【発明者】
【氏名】今本 芳明
(72)【発明者】
【氏名】塩田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 有哉
(72)【発明者】
【氏名】円尾 哲也
(72)【発明者】
【氏名】森 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】村上 琢哉
【審査官】 ▲高▼橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−288640(JP,A)
【文献】 特開昭57−077704(JP,A)
【文献】 特開2002−115212(JP,A)
【文献】 実開平05−030214(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/00 − 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
充実率が60〜75%で幅狭の帯状に形成され、長手方向の一方の一辺と左右のの外周にそれぞれネット端縁部が設けられ、長手方向の他方の一辺に折り返えし部が設けられた複数の小ネットと、
充実率が60〜75%で幅狭の帯状に形成され、長手方向の二辺と左右の二辺の外周にそれぞれネット端縁部が設けられた最上段の小ネットと、を有し、
前記複数の小ネットは互いに、一方の小ネットの前記折り返えし部に他方の小ネットの前記ネット端縁部を重ね合わせて接合され、
かつ、前記最上段の小ネットは、前記複数の小ネットのうちの前記ネット端縁部が重ね合わされていない前記折り返えし部を具備する小ネットに、当該小ネットの前記折り返えし部を、前記最上段の小ネットの前記ネット端縁部に重ね合わせて接合されていることを特徴とする防塵ネット。
【請求項2】
前記小ネットのネット端縁部は、周縁を内側に折り返えした折り返えし部と、長手方向に複数の連結部を介して連結された継手部を有し、前記折り返えし部に継手部を外方に位置させて重ねられ、該折り返えし部に一体に固定された連結帯とによって形成したことを特徴とする請求項1記載の防塵ネット。
【請求項3】
前記防塵ネットは、すき間のメッシュが長方形で長辺と短辺との長さの比が1.0以上2.0以下であり、かつ短辺の長さが1mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の防塵ネット。
【請求項4】
上下方向に所定の間隔でフックが設けられ、所定の間隔で地上に立設された複数の鋼管柱と、該複数の鋼管柱に前記フックを介してそれぞれ取付けられた複数本の横ワイヤと、前記鋼管柱の軸方向に前記フックを介してそれぞれ取付けられた縦ワイヤとを備え、
前記請求項1〜3のいずれかに記載の防塵ネットを形成する前記複数の小ネットの前記長手方向の一方の一辺の外周に設けられたネット端縁部および前記最上段の小ネットの前記長手方向の二辺の外周に設けられたネット端縁部、前記複数本の横ワイヤにそれぞれ固定すると共に、
該防塵ネットを形成する前記複数の小ネットの前記左右の二辺の外周に設けられたネット端縁部および前記最上段の小ネットの前記左右の二辺の外周に設けられたネット端縁部、前記縦ワイヤに固定したことを特徴とする防塵柵。
【請求項5】
充実率が60〜75%で幅狭の帯状に形成され、長手方向の一辺と左右の二辺の外周にそれぞれネット端縁部が設けられ、長手方向の他方の一辺に折り返えし部が設けられた少なくとも一対の小ネットと充実率が60〜75%で幅狭の帯状に形成された1枚または複数枚のラップシートと、を具備する防塵ネットと、
上下方向に所定の間隔でフックが設けられ、所定の間隔で地上に立設された複数の鋼管柱と、該複数の鋼管柱に前記フックを介してそれぞれ取付けられた横ワイヤと、前記鋼管柱の軸方向に前記フックを介してそれぞれ取付けられた縦ワイヤとを備え、
前記ネット端縁部は、折り返えし部と、該折り返えし部に設置された継手部とを具備し、
前記少なくとも一対の小ネットは、それぞれのネット端縁部同士が対向した姿勢に配置され、かつ、該対向したネット端縁部同士の間に前記横ワイヤが配置され、それぞれの前記継手部と前記横ワイヤとが締結ワイヤによって一体に固定され、
前記ラップシートは、互いに隣接した一対の前記小ネットに跨がって、それぞれの前記長手方向のネット端縁部と前記横ワイヤとの隙間を覆うことを特徴とする防塵柵。
【請求項6】
前記複数の鋼管柱の上端部に発塵源側に張り出した頭部金物を設け、該頭部金物と前記鋼管柱との間に前記防塵ネットが斜めに展張された忍び返えしを設けたことを特徴とする請求項4又は5記載の防塵柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、土砂置場や工場の石炭ヤードなどに設置される防塵ネット及びこの防塵ネットを用いた防塵柵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、多量の石炭が野外に堆積された工場の石炭ヤードなどにおいては、強風などにより石炭ヤードに存在する粉塵等が舞い上って飛散するため、石炭ヤードの周囲や風上、風下などに粉塵等の飛散を防止するための防塵柵が設けられている。
【0003】
このような防塵柵は、一般に、横方向に所定の間隔で立設した支柱の間に、パンチングメタルの如き多数の小孔を有する金属板を取り付けて構成している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、防塵ネットを取付部材によりワイヤ又は鋼管柱などの支持体に取付けるようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−133113号公報(第8、9頁、図1図2
【特許文献2】特開2008−121158号公報(第3頁、図1図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の防塵柵は、多数の小孔を有する金属板を支柱の間に取り付けて構成しているため、重量が大で施工が面倒であるばかりでなく、設置費用がきわめて高価であった。
また、特許文献2の防塵ネットを用いた場合は、取付部材が風荷重によって変形することにより、支持体と防塵ネットとの間のすき間が広がり、このすき間から粉塵が漏れるという問題があった。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、施工が容易で防塵効果が大であり、その上コストを大幅に低減することのできる防塵ネット及びこの防塵ネットを用いた防塵柵を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る防塵ネットは、充実率が60〜75%で幅狭の帯状に形成され、長手方向の一方の一辺と左右のの外周にそれぞれネット端縁部が設けられ、長手方向の他方の一辺に折り返えし部が設けられた複数の小ネットと、
充実率が60〜75%で幅狭の帯状に形成され、長手方向の二辺と左右の二辺の外周にそれぞれネット端縁部が設けられた最上段の小ネットと、を有し、
前記複数の小ネットは互いに、一方の小ネットの前記折り返えし部に他方の小ネットの前記ネット端縁部を重ね合わせて接合され、
かつ、前記最上段の小ネットは、前記複数の小ネットのうちの前記ネット端縁部が重ね合わされていない前記折り返えし部を具備する小ネットに、当該小ネットの前記折り返えし部を、前記最上段の小ネットの前記ネット端縁部に重ね合わせて接合されたものである。
【0009】
また、前記防塵ネットを形成する小ネットのネット端縁部は、周縁を内側に折り返えした折り返えし部と、長手方向に複数の連続部を介して連続された継手部を有し、前記折り返えし部に継手部を外方に位置させて重ねられ、該折り返えし部に一体に固定された連結体とによって形成したものである。
【0010】
また、前記防塵ネットは、すき間のメッシュが長方形で長辺と短辺との長さの比が1.0以上2.0以下であり、短辺の長さを1mm以上10mm以下とした。
【0011】
本発明に係る防塵柵は、上下方向に所定の間隔でフックが設けられ、所定の間隔で地上に立設された複数の鋼管柱と、該複数の鋼管柱に前記フックを介してそれぞれ取付けられた複数本の横ワイヤと、前記鋼管柱の軸方向に前記フックを介してそれぞれ取付けられた縦ワイヤとを備え、
記防塵ネットを形成する前記複数の小ネットの前記長手方向の一方の一辺の外周に設けられたネット端縁部および前記最上段の小ネットの前記長手方向の二辺の外周に設けられたネット端縁部、前記複数本の横ワイヤにそれぞれ固定すると共に、
該防塵ネットを形成する前記複数の小ネットの前記左右の二辺の外周に設けられたネット端縁部および前記最上段の小ネットの前記左右の二辺の外周に設けられたネット端縁部、前記縦ワイヤに固定したものである。
【0012】
本発明に係る防塵柵は、充実率が60〜75%で幅狭の帯状に形成され、長手方向の一辺と左右の二辺の外周にそれぞれネット端縁部が設けられ、長手方向の他方の一辺に折り返えし部が設けられた少なくとも一対の小ネットと充実率が60〜75%で幅狭の帯状に形成された1枚または複数枚のラップシートと、を具備する防塵ネットと、
上下方向に所定の間隔でフックが設けられ、所定の間隔で地上に立設された複数の鋼管柱と、該複数の鋼管柱に前記フックを介してそれぞれ取付けられた横ワイヤと、前記鋼管柱の軸方向に前記フックを介してそれぞれ取付けられた縦ワイヤとを備え、
前記ネット端縁部は、折り返えし部と、該折り返えし部に設置された継手部とを具備し、
前記少なくとも一対の小ネットは、それぞれのネット端縁部同士が対向した姿勢に配置され、かつ、該対向したネット端縁部同士の間に前記横ワイヤが配置され、それぞれの前記継手部と前記横ワイヤとが締結ワイヤによって一体に固定され、
前記ラップシートは、互いに隣接した一対の前記小ネットに跨がって、それぞれの前記長手方向のネット端縁部と前記横ワイヤとの隙間を覆うものである。
【0013】
また、複数の鋼管柱の上端部に発塵源側に張り出した頭部金物を設け、該頭部金物と前記鋼管柱との間に前記防塵ネットが斜めに展張された忍び返えしを設けたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、施工が容易で防塵効果が大であり、その上コストを従来の防塵柵に比べて約2分の1に低減することができる防塵ネット及びこれを使用した防塵柵を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態に係る防塵ネットを使用した防塵柵の正面図である。
図2図1の側面図である。
図3図2の上部拡大図である。
図4図1の鋼管柱の上面、側面及び横ワイヤの説明図である。
図5図4の支持部材及びフックの説明図である。
図6図1の縦ワイヤの取付状態の説明図である。
図7図1の防塵ネットの説明図である。
図8】防塵ネットによる防塵効果を示すグラフである。
図9】目合の大きさによる防塵効果の相違を示す説明図である。
図10】本発明の一実施の形態に係る防塵ネットを形成する小ネットの説明図及びそのネット端縁部の説明図である。
図11図10の小ネットを接合して形成した防塵ネットの正面図である。
図12図11のネット端縁部の接合状態を示す説明図である。
図13】防塵ネットの横ワイヤへの取付状態を示す説明図である。
図14】上下の防塵ネットの横ワイヤへの取付状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明の一実施の形態に係る防塵ネットを使用した防塵柵の正面図、図2図1の側面図、図3図2の上部の拡大図である。
図において、100は地上に多量の石炭が堆積された発塵源となる石炭ヤードで、その風下側には防塵柵1が設置されている。
【0017】
防塵柵1において、2a、2b、2c(以下、単に2と記すことがある)は、例えば、下端部の外径が800mm、高さが9mの鋼管柱で、横方向に例えば9m間隔で地盤Gに設置された複数本の基礎杭4a、4b、4cに溶接接合されて立設されており、上端部には石炭ヤード100側に張り出して、後述の忍び返えしが形成される頭部金物3が設けられている。5は各鋼管柱2の間において、地盤Gに設置された複数本の下端固定杭である。なお、鋼管柱に代えてトラス柱を用いてもよい。
【0018】
両側の鋼管柱2a、2c(以下、側部鋼管柱と記すことがある)の側面にはタラップ6が設けられている。また、正面の上下方向には、図4図5(a)、(b)に示すように、所定の間隔(例えば100cm間隔)で断面コ字状の支持部材7が溶接により設けられており、各支持部材7には鋼管柱2の軸方向と直交してU字状のフック8が取付けられている。9はフック8の支持部材7側に取付けられた例えば鉄筋からなる保護体である。
【0019】
また、側部鋼管柱2a、2cの間に立設された鋼管柱2b(以下、中間鋼管柱と記すことがある)は、側面にタラップ6が設けられており、正面の上下方向には、側部鋼管柱2a、2cに設けた支持部材7と同じ高さ位置にそれぞれ支持部材7が設けられている。そして、図5(c)に示すように、中間鋼管柱2bの軸方向に対してθ°傾けて(例えば、θ°は45°)フック8が設けられている。なお、図示してないが、このフック8にも保護体9が設けられている。
【0020】
10は両端部が側部鋼管柱2a、2cの各支持部材7に設けたフック8に取り付けられた横メッセンジャーワイヤ(以下、横ワイヤという)で、各横ワイヤ10は、一方の端部に設けたシャックル11が側部鋼管柱2cの支持部材7に設けたフック8に取り付けられ、中間鋼管支柱2bの支持部材7のフック8に挿通されて、他端がシャックル11、ターンバックル12、割りシンプル13により他方の側部鋼管柱2aの支持部材7に設けたフック8に取付けられている。
【0021】
15は各鋼管柱2a〜2cの上下方向に設けられた縦メッセンジャーワイヤ(以下縦ワイヤという)で、例えば、中間鋼管柱2bにおいては、図6(a)に示すように、縦ワイヤ15の下端部に設けたシャックル11が最下部の支持部材7のフック8に取付けられ、上方に向って各支持部材7のフック8に挿通され、図6(b)に示すように、上端部に設けたシャックル11が頭部金物3の先端部に設けた支持板8a(又はフック8)に取り付けられている。このとき、中間鋼管柱2bの各支持部材7に設けたフック8には、横ワイヤ10と縦ワイヤ15の両方が挿通されているが、フック8はθ°傾斜して設けられているので、両ワイヤ10、15を容易に挿通することができる。
【0022】
側部鋼管柱2a、2cに設けた縦ワイヤ15も、中間鋼管柱2bの場合と同様に、下端部が最下部の支持部材7のフック8に取り付けられ、上方に向って各支持部材7のフック8に挿通され、上端部が頭部金物3の先端部に設けた支持板8a(又はフック8)に取付けられる。
【0023】
20は鋼管柱2a〜2cの間に展張された防塵ネットである。このような防塵ネット20は、目合(メッシュ)が大きいと粉塵等が吹き抜けてしまい、目合が小さいと粉塵等によって詰り易く、このため粉塵等が舞い上ってしまうおそれがある。
【0024】
そこで、本発明の発明者らは、図7に示すように、外径dが1.6〜2.2mmのポリエステル繊維21により、繊維21の中心部間隔Sが2.5〜5.0mmで、その間にほぼ四角形状の目合22が形成された防塵ネット20を形成し、ネット地の面積に対するポリエステル繊維21の占有面積の割合い(%)(以下、充実率という)を種々変化させて防塵効果を調査した。
【0025】
調査の結果によれば、充実率が75%を超えると、防塵ネット20の繊維21に対して目合が小さくなり、その結果、風の流れは防塵ネット20を乗り越える流れが主となり、粉塵は舞い上がってしまう。また、充実率60%未満となると、防塵ネット20の繊維面積と目合が同程度の大きさとなるため、風が流れやすく、粉塵が一緒に通過してしまい、いずれの場合も防塵効果が低くなった。
【0026】
風洞実験により、充実率70%と充実率50%のネットの防塵効果を比較した。具体的には、風速一定の中で、ネットの上流から同量の粉塵を飛散させてネットの50cm後方に粘着シートを設置し、粉塵を捕捉してその状況を比較した。その結果、充実率70%に比べて充実率50%の場合は粉塵の付着量が圧倒的に多く、防塵効果が得られていないことがわかった。
【0027】
一方、充実率が60〜75%の間、その中でも充実率が70%近傍の場合には、防塵ネット20を通過する風速が低くなり、このため、一部の塵埃等が目合22を通過しても、通過後下方に落下してしまい、飛散しないことがわかった。
充実率70%の防塵ネット20を製作し、そこに大型扇風機で風を起こして防塵ネット20による風速の低減を調べた。大型扇風機はネットの手前(上流側)4mに配置し、防塵ネット20の前後の風速を計測した。扇風機を用いたので距離によって風速は減少するため、防塵ネット20がない場合も実施し、防塵ネット20の有無による風速の比較により風速の低減を調査した。その結果を図8に示す。これより、防塵ネット20を設置すると、防塵ネット20背後(下流側)は30%の風速に減少することがわかる。
【0028】
また、防塵ネット20の目合22の形状を変化させて防塵効果について検討したところ、防塵ネット20目合にも最適形状があることを見出した。
同じ風速の下で目合形状の寸法を変化させて防塵ネット20の防塵効果の比較実験を行った。充実率は70%と一定した。その結果を表1に示す。結果は防塵ネット20の背後において粘着テープで捕捉した粒径30μm粉塵の1cm2あたりの捕捉数である。捕捉数が多いほど、防塵効果がないことを示す。ここでは捕捉数が1000以下を要求値として判定した。これより、図7の短辺bが5mmの場合は、長辺aが15mm以上とa/b(表1で辺長比)が2を超えると防塵効果が低下することがわかる。また、正方形に近い形状であっても一辺の長さが12mmを上回ると防塵効果が落ちることがわかった。なお、防塵ネット20の短辺bは鉛直方向(縦方向)、水平方向(横方向)のどちらでも防塵効果はほぼ同じである。
【0029】
【表1】
【0030】
目合が大きくなると防塵効果が落ちる傾向が見られる理由については、図9に示すように、目合が大きいと生成される渦のサイズが大きく、その渦によりネット上流側の粉塵を引き込んでいると考えられる。目合が小さければ目合から生成される渦は小さくなるため、良好な防塵効果は得られるが、目合の一辺が1mm以下となると粉塵により目詰まりするため好ましくない。
【0031】
そこで、本発明においては、目合22が長方形で長辺と短辺の長さの比が1.0以上2.0以下であり、短辺の長さが1mm以上10mm以下で、充実率が60〜75%の範囲の防塵ネットを使用することにした。
【0032】
この防塵ネット20は製造上の問題もあり、本発明の実施例においては、図10(a)に示すように、幅1m、長さ5m(但し、長さは適宜変更)の小さい防塵ネット(以下、小ネット20aという)を形成し、この小ネット20aを上下方向に複数接合して防塵ネット20を構成した。
【0033】
この小ネット20aは、長手方向の一辺を除く三辺の先端部を、図10(b)に示すように、内側に折り返えして折り返えし部23を設け、その上に例えば合成樹脂からなり折り返えし部23とほぼ同じ大きさの補強板24を挟んで、小ネット20aと同じ材料からなり、折り返えし部23とほぼ同じ大きさで、先端部に複数の連結部27を介して継手部26が設けられた連結帯25を当接し、例えば樹脂系のロープ28により一体に固定したものである。なお、補強板24は省略してもよい。以下、この部分をネット端縁部30という。なお、小ネット20aの前記長手方向の一辺(図10(a)の上辺)には、折り返えし部23だけが設けられている。
【0034】
このような小ネット20aは、図11に示すように、複数の小ネット20a〜20eを上下方向に接合して防塵ネット20が形成される。
小ネット20a〜20eの接合にあたっては、図12に示すように、最下段の小ネット20aの上辺のネット端縁部30a(折り返えし部23だけ設けられている)の上に、次段の小ネット20bのネット端縁部30を、継手部26を折り返えし部23より外方に位置させて重ね合わせ、例えば、樹脂系のロープ28により一体に固定する。
【0035】
同様にして、順次最上段の小ネット20eまでを接合することにより、幅W:9m、高さH:5mの防塵ネット20が形成される。なお、最上段の小ネット20eは、四辺にネット端縁部30が設けられている。
【0036】
次に、上記のように構成した防塵ネット20の鋼管柱2a〜2cへの展張手順の一例について説明する。なお、図1の鋼管柱2a〜2cの間隔及び高さは前述の通りであり、防塵ネット20は小ネット20a〜20eを接合した高さH:5mのものを使用した。
先ず、小ネット20a〜20eを接合して形成した2枚の防塵ネット20の隣接する側のネット端縁部30を、図12で説明した手順に準じて接合し、幅W:9m、高さH:5mの大きい防塵ネット20を形成する。
【0037】
ついで、この大きい防塵ネット20を鋼管柱2a〜2cに設けた横ワイヤ10と縦ワイヤ15の前面側(石炭ヤード100側)に位置させ、上方に引き上げて各小ネット20a〜20eの接合部のネット端縁部30を各横ワイヤ10に対向させる(各横ワイヤ10と各ネット端縁部30の位置は整合するようになっている)。
そして、図13に示すように、各ネット端縁部30の継手部26を横ワイヤ10に当接させ、例えば樹脂系の締付ワイヤ40により、継手部26を横ワイヤ10に締め付けて固定する。
【0038】
また、同じ要領で、大きい防塵ネット20の両側縁部を、側部鋼管柱2aと中間鋼管柱2bに設けた縦ワイヤ15に固定する。
次に、下端部のネット端縁部30を、地盤Gに設けた下端固定杭5に締付ワイヤ40等により固定する。
【0039】
同様にして、上部の大きい防塵ネット20を側部鋼管柱2aと中間鋼管柱2b及び頭部金物3の先端部に取付ける。これにより、上部に防塵ネット20による忍び返えし3a(図2図3参照)が形成される。
そして、図14に示すように、下部の防塵ネット20のネット端縁部30の継手部26を横ワイヤ10の下に位置させ、上部の防塵ネット20のネット端縁部30の継手部26を横ワイヤ10の上に位置させて、上下の継手部26を締付ワイヤ40により横ワイヤ10に締付けて一体に固定する。
【0040】
しかし、これだけでは横ワイヤ10と上下の防塵ネット20のネット端縁部30との間に大きなすき間が形成されるので、本発明においては、さらに、上下の防塵ネット20のネット端縁部30の外面側(石炭ヤード100側)の長手方向に、例えば、防塵ネット20と同じ構造で、継手部26より長く先端部に折り返えし部23(又はネット端縁部30)を有するラップシート31を設け、この上下のラップシート31で上下の防塵ネット20のネット端縁部30及び横ワイヤ10を覆い、上下の折り返えし部23を締結ワイヤ40等で締付けて固定し、すき間を閉塞した。
【0041】
同様にして、中間鋼管柱2bの側部鋼管柱2cの間にも防塵ネット20を展張した。
【0042】
上述の防塵ネット20の展張手順はその一例を示すものでこれに限定するものではなく、例えば次のように適宜変更することができる。
上記説明では、5枚の小ネット20aを接合して防塵ネット20を構成した場合を示したが、4枚あるいは6枚の小ネット20aを接合して防塵ネット20を接合してもよく、鋼管柱2の高さなどに対応して適宜変更することができる。
【0043】
また、上記のようにして構成した2枚の防塵ネット20をあらかじめ横方向に接合して、側部鋼管柱2a、2cと中間鋼管柱2bとの間にそれぞれ取り付ける場合を示したが、2枚の防塵ネット20をあらかじめ接合せず、それぞれ横ワイヤ10及び縦ワイヤ15に取り付けたのち、隣接する防塵ネット20のネット端縁部30を締付けワイヤ40等で固定してもよい。
【0044】
さらに、防塵ネット20を横ワイヤ10と縦ワイヤ15の前面側(石炭ヤード100側)に取付けた場合を示したが、横ワイヤ10と縦ワイヤ15の背面側に取付けてもよい。
また、防塵ネット20を鋼管柱2aと2b、2bと2cの間に下から順次取付けた場合を示したが、上から下に向って順次取付けてもよい。
【0045】
上記の実施の形態の説明では、発塵源である石炭ヤード100の風下に、3本の鋼管柱2a〜2cを立設し、これに防塵ネット20を取付けて防塵柵1を設けた場合を示したが、防塵柵1は発塵源の周囲や風上などに設置してもよく、また、防塵ネット20を展張する鋼管柱2の数、間隔、高さなども、現場の状況に応じて適宜設定することができる。
【0046】
また、上記の説明では、鋼管柱2の間及び鋼管柱2に沿って横ワイヤ10及び縦ワイヤ15を設けた場合を示したが、ワイヤに代えて鋼棒を用いてもよい。
さらに、防塵ネット20をポリエステル系の合成繊維で形成した場合を示したが、他の材料を用いてもよい。
【0047】
本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
充実率が60〜75%の防塵ネット20を用いたので、粉塵等の吹き抜けや飛散を効果的に防止することができる。
また、防塵柵の上端部に、石炭ヤード100側に斜め上方に延設された忍び返えしを設けたので、若し粉塵等が上方に飛んでも外部に飛散するのを防止することができる。
【0048】
また、防塵ネット20は、外周に継手部26を有するネット端縁部30が設けられた小ネット20を複数枚接合し、この接合部を隣接する鋼管柱2に設けた横ワイヤ10と縦ワイヤ15に固定するようにしたので、施工が容易で、かつ横ワイヤ10及び縦ワイヤ15に確実に固定することができる。
さらに、対向する上下の防塵ネット20と横ワイヤ10との接合部にラップシート31を設けて、接合部に形成されたすき間を確実に閉塞するようにしたので、粉塵等の吹き抜けを防止することができる。また、設置コストを従来の防塵柵に比べて約2分の1に低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
上記の説明では、本発明に係る防塵柵1を、発塵源である石炭ヤードの防塵のために設けた場合を示したが、本発明に係る防塵柵は、防風柵、防塵柵、防雪柵等にも実施することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 防塵柵、2 鋼管柱、3 頭部金物、3a 忍び返えし、6 タラップ、7 支持部材、8 フック、10 横ワイヤ、11 シャックル、15 縦ワイヤ、20 防塵ネット、20a 小ネット、22 目合、23 折り返えし部、25 連結帯、26 継手部、30 ネット端縁部、31 ラップシート、100 石炭ヤード。
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