(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、減速機構付モータを形成する構成部品のうち、特に大きな構成部品であるウォームホイールは、溶融したプラスチック等の樹脂材料を射出成形等することで所定形状に形成され、これにより減速機構付モータの軽量化および車載性の向上が図られている。その一方で、樹脂材料を用いてウォームホイールを射出成形する際に問題となるのが、例えば、ヒケの発生といった成形精度の低下が挙げられ、これはウォームホイールの外周側に形成される歯部に歪みを生じさせる原因となる。なお、上記ヒケとは樹脂材料の成形収縮により凹みや窪みが生じた状態になることを言う。
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された減速機構付モータにおいては、ウォームホイールの成形精度の低下に対して、ウォームホイールの形状を工夫する等の対策を施していないため、ウォームホイールを樹脂材料で形成した場合には、歯部に歪みが生じる虞がある。歯部に歪みが生じた場合には、ウォームと歯部との噛み合い抵抗の大きさがウォームホイールの周方向で部分的に異なるようなことが起き、具体的には、噛み合い抵抗が大きい部分においてはウォームホイールの回転速度が低下し、噛み合い抵抗が小さい部分においてはウォームホイールの回転速度が上昇する。このようなウォームホイールの回転速度の変化は、ホールICのスイッチング信号の長さ(矩形波の長さ)をばらつかせる原因となり、ホールICのスイッチング信号の長さにばらつきが生じた場合には、コントローラが障害物の挟み込みを誤検出する虞がある。つまり、障害物が無いにも関わらず減速機構付モータの回転駆動が停止したり反転駆動したりすることが起こり得る。
【0008】
本発明の目的は、ウォームホイールの成形精度を向上させて、ウォームと歯部との噛み合い抵抗の大きさがウォームホイールの周方向で部分的に異なるのを防止できる減速機構付モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の減速機構付モータは、アーマチュア軸を収容するモータケースと、前記モータケースに連結され、前記アーマチュア軸の回転を減速して出力する減速機構を収容するギヤケースと、を備えた減速機構付モータであって、前記減速機構は、ウォームと、外周側に前記ウォームと噛み合う歯部を有するウォームホイールと、により形成され、
前記歯部は前記ウォームホイールの軸方向に向けて傾斜しており、前記ギヤケースには、前記ウォームホイールを回転自在に支持する支持筒が設けられ、前記ウォームホイールは、前記支持筒に回動自在に装着される小径円筒部と、外周側に前記歯部を有する大径円筒部と、前記小径円筒部と前記大径円筒部とを連結する底部と、前記ウォームホイールの軸方向一側で、かつ前記ウォームホイールの径方向に沿う前記大径円筒部の前記歯部寄りに設けられ、前記ウォームホイールの周方向に沿って複数設けられる一側肉盗み部と、
隣り合う前記一側肉盗み部間に設けられる一側連結部と、前記ウォームホイールの軸方向他側で、かつ前記ウォームホイールの径方向に沿う前記大径円筒部の前記歯部寄りに設けられ、前記ウォームホイールの周方向に沿って複数設けられる他側肉盗み部と
、隣り合う前記他側肉盗み部間に設けられる他側連結部と、を備え、
前記他側連結部を、前記歯部の傾斜に合わせて傾斜して設け、前記一側肉盗み部および前記他側肉盗み部を、前記ウォームホイールの周方向に沿って交互に出現するよう、前記ウォームホイールの軸方向一側および軸方向他側に互い違いに配置し、
前記一側連結部および前記他側連結部の前記ウォームホイールの周方向に沿う両側で、前記一側肉盗み部および前記他側肉盗み部が前記ウォームホイールの軸方向に重なることを特徴とする。
【0010】
本発明の減速機構付モータは、
環状の本体部、および前記本体部に一体に設けられた複数のダンパ片を備えたダンパ部材と、セレーション部、および複数のトルク受け部を備えた出力部材と、を有し、前記底部には、複数のトルク出力部が形成され、隣り合う前記ダンパ片の間には、前記トルク出力部と前記トルク受け部とが、交互に配置され、隣り合う前記一側肉盗み部間の一側連結部および隣り合う前記他側肉盗み部間の他側連結部を、前記ウォームホイールの軸方向に沿う前記他側肉盗み部および前記一側肉盗み部にそれぞれ対向配置したことを特徴とする。
【0011】
本発明の減速機構付モータは、前記ウォームホイールの軸方向に沿う前記一側肉盗み部と前記他側肉盗み部との間に、前記ウォームと前記歯部との噛み合いを支持する噛合支持部を設け
、前記一側肉盗み部および前記他側肉盗み部の前記ウォームホイールの径方向に沿う幅寸法が、前記噛合支持部から前記ウォームホイールの軸方向一側および軸方向他側に向けて大きくなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の減速機構付モータによれば、ウォームホイールの軸方向一側でかつウォームホイールの径方向に沿う歯部寄りに、ウォームホイールの周方向に沿って複数の一側肉盗み部を設け、ウォームホイールの軸方向他側でかつウォームホイールの径方向に沿う歯部寄りに、ウォームホイールの周方向に沿って複数の他側肉盗み部を設け、一側肉盗み部および他側肉盗み部を、ウォームホイールの周方向に沿って交互に出現するよう、ウォームホイールの軸方向一側および軸方向他側に互い違いに配置する。したがって、ウォームホイールの軸方向一側および軸方向他側でかつ径方向に沿う歯部寄りの肉厚をバランス良く薄くして、これにより肉厚なものほど生じ易いヒケの発生を抑制することができる。よって、歯部が傾斜して形成されるような歪みの発生を防止して、ウォームホイールの成形精度を向上させることができ、ひいてはウォームと歯部との噛み合い抵抗の大きさがウォームホイールの周方向で部分的に異なるのを防止できる。
【0013】
本発明の減速機構付モータによれば、隣り合う一側肉盗み部間の一側連結部および隣り合う他側肉盗み部間の他側連結部を、ウォームホイールの軸方向に沿う他側肉盗み部および一側肉盗み部にそれぞれ対向配置するので、ウォームホイールの軸方向に沿う肉厚部分を短くすることができる。したがって、さらにヒケの発生を抑制してウォームホイールの成形精度をより向上させることができる。
【0014】
本発明の減速機構付モータによれば、ウォームホイールの軸方向に沿う一側肉盗み部と他側肉盗み部との間に、ウォームと歯部との噛み合いを支持する噛合支持部を設けるので、ウォームホイールにおけるウォームとの噛み合い部分の剛性を充分に確保できる。したがって、ウォームからウォームホイールの径方向に応力が伝達されるような場合があったとしても、噛合支持部によってウォームホイールが変形するのを防止でき、ひいては噛み合い部分の偏摩耗,異音の発生,動力伝達ロス等を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の第1実施の形態に係る減速機構付モータを示す部分断面図を、
図2は
図1のA−A線に沿う断面図を、
図3はウォームホイール,ダンパ部材および出力部材を示す分解斜視図を、
図4(a),(b)はウォームホイールの詳細構造を説明する平面図を、
図5(a)は
図4のB−B線に沿う断面図,(b)は
図4のC−C線に沿う断面図をそれぞれ表している。
【0018】
図1に示すように、減速機構付モータ10は、自動車等の車両に搭載されるパワーウィンド装置(図示せず)の駆動源として用いられ、ウィンドガラスを昇降させるウィンドレギュレータ(図示せず)を駆動するものである。減速機構付モータ10は、車両のドア内に形成される幅狭のスペース(図示せず)に設置されるため、
図2に示すように扁平形状に形成されている。減速機構付モータ10はモータ部20とギヤ部40とを備えており、モータ部20およびギヤ部40は複数の締結ネジ11(図示では2つ)により一体化(ユニット化)されている。
【0019】
モータ部20は、磁性材料よりなる鋼板をプレス加工(深絞り加工)することで有底筒状に形成されたモータケース21を備えている。モータケース21の内部には、断面が略円弧形状に形成された複数のマグネット22(図示では2つ)が固定され、各マグネット22の内側には、コイル(図示せず)が巻装されたアーマチュア23が、所定の隙間を介して回転自在に設けられている。そして、モータケース21の開口側(図中右側)にはブラシホルダ24が装着され、当該ブラシホルダ24によってモータケース21の開口側は閉塞されている。
【0020】
アーマチュア23の回転中心には、アーマチュア軸25が貫通して固定されている。アーマチュア軸25のアーマチュア23に近接する部位には、コンミテータ26が設けられ、当該コンミテータ26には、アーマチュア23に巻装されたコイルの端部が電気的に接続されている。コンミテータ26の外周部には、ブラシホルダ24に保持された一対のブラシ27が摺接するようになっており、各ブラシ27はバネ部材28によりそれぞれコンミテータ26に向けて所定圧で弾性接触している。これにより、コントローラ(図示せず)から駆動電流を各ブラシ27に供給することでアーマチュア23には回転力(電磁力)が発生し、ひいてはアーマチュア軸25が所定の回転数および回転トルクで回転するようになっている。
【0021】
モータケース21の底部側(図中左側)は段付形状に形成されており、当該部位にはモータケース21の本体部よりも小径となった有底筒部21aが設けられている。有底筒部21aには第1ラジアル軸受29が装着されており、第1ラジアル軸受29は、アーマチュア軸25の軸方向一側(図中左側)を回転自在に支持している。有底筒部21aの底部側には、第1スラスト軸受30が設けられ、当該第1スラスト軸受30とアーマチュア軸25との間には、第1スチールボール31が設けられている。
【0022】
ブラシホルダ24には第2ラジアル軸受32が装着されており、第2ラジアル軸受32は、アーマチュア軸25の軸方向他側(図中右側)を回転自在に支持している。このように、アーマチュア軸25の軸方向一側に第1ラジアル軸受29,第1スラスト軸受30および第1スチールボール31を設け、アーマチュア軸25の軸方向他側に第2ラジアル軸受32を設けることで、アーマチュア軸25(アーマチュア23)は、回転抵抗を殆ど発生させることなくスムーズに回転可能となっている。
【0023】
ギヤ部40はギヤケース41と当該ギヤケース41に取り付けられるコネクタ部材42とを備えている。ギヤケース41は、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することにより所定形状に形成され、モータケース21の開口側にコネクタ部材42を介して連結されている。
【0024】
ギヤケース41の内部には、外周側にウォーム43aが一体成形されたウォーム軸43と、ウォーム43aと噛み合う歯部44aを外周側に有するウォームホイール44とが回転自在に収容されている。ここで、ウォーム43aは螺旋状に形成され、歯部44aはウォームホイール44の軸方向に向けて緩やかな傾斜角度で傾斜している。これにより滑らかな動力伝達を可能としている。
【0025】
ウォーム軸43は、アーマチュア軸25と同軸上に設けられている。ウォーム軸43の軸方向に沿うモータケース21側(図中左側)は、アーマチュア軸25の軸方向に沿うギヤケース41側(図中右側)に対して、連結部材50を介して動力伝達可能に連結されている。連結部材50は、ウォーム軸43とアーマチュア軸25との軸ズレを吸収する軸ズレ吸収機能を備え、これにより減速機構付モータ10を形成する構成部品に寸法誤差等が生じて、各軸25,43に軸ズレが生じたとしても、アーマチュア軸25の回転をウォーム軸43にスムーズに伝達可能となっている。
【0026】
ウォーム軸43の軸方向に沿うモータケース21側とは反対側には、ギヤケース41の内部においてウォーム軸43を軸方向から支持する第2スラスト軸受45が設けられ、当該第2スラスト軸受45とウォーム軸43との間には、第2スチールボール46が設けられている。第2スラスト軸受45および第2スチールボール46は、ウォーム軸43をスムーズに回転させるものである。また、ウォーム軸43の軸方向に沿うウォーム43aの両側には、第3ラジアル軸受47および第4ラジアル軸受48が設けられ、各ラジアル軸受47,48は、ギヤケース41の内部で同軸上に固定されている。これにより、ウォーム軸43は、回転抵抗を殆ど発生させることなくスムーズに回転可能となっている。
【0027】
連結部材50の外周側には、環状のセンサマグネット51が一体回転可能に設けられている。センサマグネット51は、磁石粉末を樹脂等のバインダーで結合させたボンド磁石等により形成され、その周方向に沿ってN極,S極が交互に並ぶよう着磁されている。一方、コネクタ部材42の内部には、センサ基板42aが固定され、当該センサ基板42aのセンサマグネット51との対向部位には、一対のホールIC42b(図示では1つ)が装着されている。
【0028】
各ホールIC42bは、センサマグネット51の回転に伴う磁極の変化によりスイッチング動作し、当該スイッチング動作に伴うスイッチング信号(矩形波信号)をコントローラに送出するようになっている。コントローラは、各ホールIC42bからの矩形波信号の長さ等を検出し、ウォーム軸43の回転速度等(回転状態)を算出する。そして、ウォーム軸43(ウォームホイール44)の回転速度が低下した場合に、コントローラはウィンドガラスに障害物が接触していると判断し、減速機構付モータ10の回転駆動を停止または反転動作させる制御を実行する。ただし、本実施の形態においては、ホールIC42bに代えてMRセンサ(磁気抵抗素子)を用いることもできる。
【0029】
図2に示すように、ギヤケース41の底部41aには、ウォームホイール44を回転自在に支持する中空状の支持筒41bが一体に設けられ、当該支持筒41bは、ギヤケース41の内部に向けて突出している。支持筒41bの径方向内側には、出力部材70を回転自在に支持する支持ピン41cが貫通して固定され、当該支持ピン41cの先端側(図中上側)は、ギヤケース41の内部を貫通してギヤケース41の外部にまで延ばされている。
【0030】
ウォームホイール44には、
図2および
図3に示すように、ゴム等の弾性材料よりなるダンパ部材60およびプラスチック等の樹脂材料よりなる出力部材70が装着されている。ここで、ウォーム43a,ウォームホイール44,ダンパ部材60および出力部材70は、本発明における減速機構を構成している。また、ウォームホイール44,ダンパ部材60および出力部材70は、それぞれ一体化された状態(サブアッシー化された状態)のもとでギヤケース41の開口側(
図2中上側)から装着され、組み付け易い構造となっている。
【0031】
ダンパ部材60は、環状の本体部61と当該本体部61に一体に設けられる6つのダンパ片62とを備えている。各ダンパ片62は、本体部61の周方向に向けて略等間隔(略60°間隔)で、かつ本体部61の径方向外側に突出するよう設けられている。隣り合う各ダンパ片62の間には、ウォームホイール44に一体に設けた3つのトルク出力部44eと、出力部材70に一体に設けた3つのトルク受け部71a(図示では2つ)とが、ダンパ部材60の周方向に沿って交互に入り込むようになっている。これにより、ウォームホイール44が正逆方向に回転した際に、トルク出力部44eからダンパ片62を介してトルク受け部71aに回転トルクが伝達される。これにより、ダンパ片62が弾性変形することで、回転トルクの急激な変動等に伴う衝撃を緩和するようになっている。
【0032】
出力部材70は、ウォームホイール44側から、略円盤形状に形成された大径部71,略円柱形状に形成された小径部72,小径部72よりも小径に形成されて外周側にセレーション73aを有するセレーション部73を備えている。大径部71のウォームホイール44側(図中下側)には、隣り合う各ダンパ片62の間に入り込む3つのトルク受け部71aが一体に設けられ、当該各トルク受け部71aは、大径部71の周方向に沿って略等間隔(略120°間隔)で配置されている。
【0033】
小径部72は、大径部71の軸方向に沿う各トルク受け部71a側とは反対側(図中上側)に設けられ、小径部72の外周側には、ケースカバー80の内側リップ81が摺接するようになっている。ここで、ケースカバー80は、ギヤケース41の開口側(
図2中上側)を、外側リップ82を介して密閉しており、これによりギヤケース41の内部への雨水等の浸入を防止している。
【0034】
セレーション部73は、減速機構付モータ10の出力軸としての機能を有し、セレーション部73のセレーション73aには、ウィンドレギュレータを形成するドラム(図示せず)が噛み合うようになっている。そして、アーマチュア軸25の回転に伴うウォーム軸43の回転がウォームホイール44により減速され、高トルク化された出力がダンパ部材60を介して出力部材70のセレーション部73からウィンドレギュレータのドラムに伝達される。
【0035】
図4および
図5に示すように、ウォームホイール44は有底筒状に形成され、一対の上下金型(図示せず)を突き合わせた状態のもとで、各金型の内部に形成される空間にプラスチック等の溶融した樹脂材料を射出することで所定形状に形成(射出成形)されている。ウォームホイール44は、ギヤケース41の支持筒41bに回動自在に装着される小径円筒部44bと、外周側に歯部44aを有する大径円筒部44cと、小径円筒部44bと大径円筒部44cとを連結する底部44dとを備えている。
【0036】
底部44dには、ウォームホイール44の内部(
図5(a)中上側)に向けて突出し、ダンパ部材60の隣り合う各ダンパ片62間に入り込む3つのトルク出力部44eが一体に設けられている。各トルク出力部44eは、底部44dの周方向に沿って略等間隔(略120°間隔)で配置されている。
【0037】
図5に示すように、大径円筒部44cの軸方向一側(図中上側)、つまりウォームホイール44の軸方向一側でかつウォームホイール44の径方向に沿う歯部44a寄りには、ウォームホイール44の周方向に沿って複数の第1肉盗み部(一側肉盗み部)44fが設けられている。各第1肉盗み部44fは、大径円筒部44cの周方向に沿って略等間隔(略15°間隔)で24個配置され、歯部44aに近接配置されている。
【0038】
また、大径円筒部44cの軸方向他側(図中下側)、つまりウォームホイール44の軸方向他側でかつウォームホイール44の径方向に沿う歯部44a寄りには、ウォームホイール44の周方向に沿って複数の第2肉盗み部(他側肉盗み部)44gが設けられている。各第2肉盗み部44gは、大径円筒部44cの周方向に沿って略等間隔(略15°間隔)で24個配置され、歯部44aに近接配置されている。
【0039】
第1肉盗み部44fおよび第2肉盗み部44gは、大径円筒部44cにおける歯部44a周辺の樹脂の厚み(肉厚)を薄くして、所謂ヒケの発生を防止するもので、
図5(b)に示すように、ウォームホイール44の周方向に沿って交互に出現するよう、ウォームホイール44の軸方向一側および軸方向他側に互い違いに配置されている。
【0040】
隣り合う各第1肉盗み部44fの間には、第1連結部(一側連結部)44hが設けられ、各第1連結部44hは、ウォームホイール44の軸方向に沿って各第2肉盗み部44gと対向している。また、隣り合う各第2肉盗み部44gの間には、第2連結部(他側連結部)44iが設けられ、各第2連結部44iは、ウォームホイール44の軸方向に沿って各第1肉盗み部44fと対向している。つまり、各第1肉盗み部44fおよび各第2肉盗み部44gは、ウォームホイール44の軸方向に向けて、互いに部分的に重なるよう配置されている。
【0041】
ウォームホイール44の軸方向に沿う各第1肉盗み部44f(各第1連結部44h)と各第2肉盗み部44g(各第2連結部44i)との間には、ウォームホイール44の周方向に沿って噛合支持部44jが設けられている。噛合支持部44jは、ウォーム43aと歯部44aとの噛み合いを支持し、ウォームホイール44における噛み合いセンタGCの剛性を確保するようになっている。つまり、噛合支持部44jは、各第1肉盗み部44fおよび各第2肉盗み部44gを設けたことによるウォームホイール44の剛性低下を抑え、ウォームホイール44に比較的大きな反力が加わったとしても、ウォームホイール44が変形するのを防止するようになっている。
【0042】
以上詳述したように、第1実施の形態に係る減速機構付モータ10によれば、ウォームホイール44の軸方向一側でかつウォームホイール44の径方向に沿う歯部44a寄りに、ウォームホイール44の周方向に沿って複数の第1肉盗み部44fを設け、ウォームホイール44の軸方向他側でかつウォームホイール44の径方向に沿う歯部44a寄りに、ウォームホイール44の周方向に沿って複数の第2肉盗み部44gを設け、第1肉盗み部44fおよび第2肉盗み部44gを、ウォームホイール44の周方向に沿って交互に出現するよう、ウォームホイール44の軸方向一側および軸方向他側に互い違いに配置した。
【0043】
したがって、ウォームホイール44の軸方向一側および軸方向他側でかつ径方向に沿う歯部44a寄りの肉厚をバランス良く薄くして、これにより肉厚なものほど生じ易いヒケの発生を抑制することができる。よって、歯部44aが傾斜して形成されるような歪みの発生を防止して、ウォームホイール44の成形精度を向上させることができ、ひいてはウォーム43aと歯部44aとの噛み合い抵抗の大きさがウォームホイール44の周方向で部分的に異なるのを防止できる。
【0044】
また、第1実施の形態に係る減速機構付モータ10によれば、隣り合う第1肉盗み部44f間の第1連結部44hおよび隣り合う第2肉盗み部44g間の第2連結部44iを、ウォームホイール44の軸方向に沿う第2肉盗み部44gおよび第1肉盗み部44fにそれぞれ対向配置したので、ウォームホイール44の軸方向に沿う肉厚部分を短く(薄く)することができる。したがって、さらにヒケの発生を抑制してウォームホイール44の成形精度をより向上させることができる。
【0045】
さらに、第1実施の形態に係る減速機構付モータ10によれば、ウォームホイール44の軸方向に沿う第1肉盗み部44fと第2肉盗み部44gとの間に、ウォーム43aと歯部44aとの噛み合いを支持する噛合支持部44jを設けたので、ウォームホイール44におけるウォーム43aとの噛み合い部分の剛性を充分に確保できる。したがって、ウォーム43aからウォームホイール44の径方向に応力が伝達されるような場合があったとしても、噛合支持部44jによってウォームホイール44が変形するのを防止でき、ひいては噛み合い部分の偏摩耗,異音の発生,動力伝達ロス等を抑制することができる。
【0046】
次に、本発明の第2実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については、同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0047】
図6は第2実施の形態に係るウォームホイールを示す
図5(b)に対応した断面図を表している。
【0048】
第2実施の形態に係るウォームホイール90は、第1実施の形態に比して、第2肉盗み部(他側肉盗み部)91および第2連結部(他側連結部)92の形状が異なっている。
【0049】
第2肉盗み部91は、ウォームホイール90の外周側に設けた歯部44aの傾斜角度に合わせて緩やかな傾斜角度、例えばウォームホイール90の軸線に対してα°の傾斜角度で傾斜している。また、第2肉盗み部91の傾斜に合わせて第2連結部92においても傾斜している。これにより、歯部44aを形成する金型(図示せず)に、第2肉盗み部91を形成する凸部(図示せず)を設けることで、完成したウォームホイール90から当該金型を回転させつつ容易に取り外すことが可能となる。
【0050】
以上のように形成した第2実施の形態においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。これに加え、第2実施の形態によれば、金型の取り外し作業を容易に行うことができるので、ウォームホイール90の成形工程を簡素化することが可能となる。
【0051】
次に、本発明の第3実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については、同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0052】
図7は第3実施の形態に係るウォームホイールを示す
図5(b)に対応した断面図を表している。
【0053】
第3実施の形態に係るウォームホイール100は、第1実施の形態に比して、第1肉盗み部(一側肉盗み部)101,第1連結部(一側連結部)102,第2肉盗み部(他側肉盗み部)103,第2連結部(他側連結部)104の形状が異なっている。
【0054】
第1肉盗み部101および第2肉盗み部103の深さ寸法は、噛み合いセンタGCを越える長さにそれぞれ設定されており、これに伴い、隣り合う各第1肉盗み部101の間の第1連結部102および隣り合う各第2肉盗み部103の間の第2連結部104の長さ寸法が長くなっている。ここで、ウォームホイール100は、噛合支持部44j(
図5(b)参照)を備えていないが、第1連結部102および第2連結部104の長さ寸法を長く設定しているため、ウォームホイール100の噛み合いセンタGCにおける剛性は充分に確保される。
【0055】
以上のように形成した第3実施の形態においても、第1実施の形態と同様に、ヒケの発生を抑制して、ウォームホイール100の成形精度を向上させることができる。
【0056】
次に、本発明の第4実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した第1実施の形態と同様の機能を有する部分については、同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0057】
図8(a),(b)は第4実施の形態に係るウォームホイールの詳細構造を説明する平面図を表している。
【0058】
第4実施の形態に係るウォームホイール110は、第1実施の形態に比して、ウォームホイール110の軸方向一側に、第1肉盗み部44fに加えて第1サブ肉盗み部(一側肉盗み部)111を設け、ウォームホイール110の軸方向他側に、第2肉盗み部44gに加えて第2サブ肉盗み部(他側肉盗み部)112を設けた点が異なっている。
【0059】
各第1サブ肉盗み部111は、ウォームホイール110の径方向に沿う各第1肉盗み部44fの内側で、各第1肉盗み部44fに対して各第1連結部44hの長さよりも短い離間距離を介して設けられている。各第1サブ肉盗み部111の個数は第1肉盗み部44fと同じ個数に設定され、ウォームホイール110の周方向に沿う各第1サブ肉盗み部111の位置は、ウォームホイール110の径方向に沿う各第1連結部44hと対向する位置となっている。隣り合う第1サブ肉盗み部111の間には、第1サブ連結部(一側連結部)113が設けられている。
【0060】
また、各第2サブ肉盗み部112は、ウォームホイール110の径方向に沿う各第2肉盗み部44gの内側で、各第2肉盗み部44gに対して各第2連結部44iの長さよりも短い離間距離を介して設けられている。各第2サブ肉盗み部112の個数は第2肉盗み部44gと同じ個数に設定され、ウォームホイール110の周方向に沿う各第2サブ肉盗み部112の位置は、ウォームホイール110の径方向に沿う各第2連結部44iと対向する位置となっている。隣り合う第2サブ肉盗み部112の間には、第2サブ連結部(他側連結部)114が設けられている。
【0061】
以上のように形成した第4実施の形態においても、上述した第1実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0062】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、ウォームホイール44,90,100,110を、それぞれプラスチック等の樹脂材料を射出成形することで形成したものを示したが、本発明はこれに限らず、ヒケを発生し得る他の素材のウォームホイール、例えばアルミ材料等を鋳造成形することで形成したウォームホイールにも適用することができる。
【0063】
また、上記各実施の形態においては、減速機構付モータ10を、車両に搭載されるパワーウィンド装置の駆動源として用いたものを示したが、本発明はこれに限らず、サンルーフ装置等の他の駆動源としても用いることができる。
【0064】
さらに、上記各実施の形態においては、モータ部20として、ブラシ付の電動モータを採用したものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、ブラシレスの電動モータ等を採用することもできる。