特許第5683162号(P5683162)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5683162
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   H05B 6/12 20060101AFI20150219BHJP
   F24C 15/34 20060101ALI20150219BHJP
【FI】
   H05B6/12 317
   F24C15/34 F
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-169671(P2010-169671)
(22)【出願日】2010年7月28日
(65)【公開番号】特開2012-33292(P2012-33292A)
(43)【公開日】2012年2月16日
【審査請求日】2013年1月21日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】川村 武志
(72)【発明者】
【氏名】榎園 聰
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−073453(JP,A)
【文献】 特開2005−211743(JP,A)
【文献】 特開平10−196596(JP,A)
【文献】 特開2010−040476(JP,A)
【文献】 特開2008−310962(JP,A)
【文献】 特開2008−043595(JP,A)
【文献】 特開2006−222095(JP,A)
【文献】 特開2003−290094(JP,A)
【文献】 特開2004−217156(JP,A)
【文献】 特開2008−201230(JP,A)
【文献】 特公平06−008639(JP,B2)
【文献】 実開平06−017864(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/12
F24C15/34
F04D17/00−17/18
F04D29/00−29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を載置する天板と、この天板で上部開口部が覆われた本体と、を備え、
前記本体の内部には、前記被加熱物を誘導加熱する複数の加熱コイルと、
この複数の加熱コイルの駆動を制御する制御回路を搭載した基板と、
この基板及び前記加熱コイルより上流側に設けられた冷却ファンと、
前記冷却ファンの吸引力で外気を吸引して、この外気で前記基板及び前記加熱コイルを冷却する風路と、
前記風路の前記冷却ファンよりも上流側に水の前記冷却ファンへの浸入を防止する水浸入防止構造と、
前記冷却ファンを収容するファンケーシングと、が設けられ
前記水浸入防止構造は、
前記ファンケーシングの内部に設けられ、前記冷却ファンの少なくとも一部を覆う水浸入防止部材を少なくとも有するように構成される
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記風路は、前記本体の後方上部に形成された吸気口と、この吸気口から下方に延設された吸気ダクトと、前記ファンケーシングとを備え、
前記ファンケーシングは、前記吸気ダクトと連通し、下部に排水口を有し、
前記吸気ダクトは、側壁と、背壁と、この背壁よりも長さの短い前壁とから構成された水平断面の形状が矩形状のダクトであり、
前記冷却ファンは、複数の羽根を放射状且つ均等に配設して構成された円筒状の羽根部を備え、
前記水浸入防止構造は、前記水浸入防止部材と、前記吸気ダクトの前壁の内面に設けられ、前記吸気ダクトの内側を向き、斜め下方に突出した板状のリブと、を備え、
前記水浸入防止部材は、前記羽根部の一部を覆い、少なくとも、前記吸気ダクトの前壁の下端と前記ファンケーシングの上部との接続部付近と前記排水口より外側の上方とを結ぶ直線と、前記羽根部の円筒で囲まれた部分を覆うことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記板状のリブは、前記吸気ダクトの前壁の内面の上下方向に複数並設されることを特徴とする請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記風路は、前記本体の後方上部に形成された吸気口と、この吸気口から下方に延設された吸気ダクトと、前記ファンケーシングとを備え、
前記ファンケーシングは、前記吸気ダクトと連通し、下部に排水口を有し、
前記吸気ダクトは、側壁とこの側壁とほぼ同じ長さの背壁とこの背壁よりも長さの短い前壁とから構成された水平断面の形状が矩形状のダクトであり、
前記冷却ファンは、複数の羽根を放射状且つ均等に配設して構成された円筒状の羽根部を備え、
前記水浸入防止構造は、前記吸気ダクトの前壁の下端と前記ファンケーシングの上部の接続部付近と前記排水口より外側の上方とを結ぶ直線と、前記水浸入防止部材と、前記ファンケーシングの、前記排水口より外側と前記直線の前記排水口側の端部との間の内面に立設した板状のリブと、を備え、
前記水浸入防止部材は、前記羽根部の円筒で囲まれた部分とを少なくとも覆う
ことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記リブの形状は、平板状であることを特徴とする請求項4記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記リブの断面形状はほぼ弧状であり、前記弧状の凹部側の開口が水浸入方向に向いていることを特徴とする請求項4記載の加熱調理器。
【請求項7】
前記水浸入防止部材は、前記リブの上方に前記リブを覆うように配置された別の板状のリブを備えたことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記風路は、前記本体の後方上部に形成された吸気口と、この吸気口から下方に延設された吸気ダクトと、前記ファンケーシングとを備え、
前記ファンケーシングは、前記吸気ダクトと連通し、下部に排水口を有し、
前記吸気ダクトは、側壁とこの側壁とほぼ同じ長さの背壁とこの背壁よりも長さの短い前壁とから構成された水平断面の形状が矩形状のダクトであり、
前記冷却ファンは、複数の羽根を放射状且つ均等に配設して構成された円筒状の羽根部を備え、
前記水浸入防止構造は、前記水浸入防止部材と、この水浸入防止部材の前記排水口より上流側の底面から下方に立設した1つ以上の板状のリブと、を備え、
前記水浸入防止部材は、前記羽根部の一部を覆い、少なくとも、前記吸気ダクトの前壁の下端と前記ファンケーシングの上部との接続部付近と前記排水口より外側の上方とを結ぶ直線と、前記羽根部の円筒で囲まれた部分を覆うことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記水浸入防止部材の下部に錘を備え、
前記水浸入防止部材は、前記羽根の回転軸を中心として回動可能であることを特徴とする請求項7記載の加熱調理器。
【請求項10】
前記風路は、前記本体の後方上部に形成された吸気口と、この吸気口から下方に延設された吸気ダクトと、前記ファンケーシングとを備え、
前記ファンケーシングは、前記吸気ダクトと連通し、下部に排水口を有し、
前記吸気ダクトは、側壁とこの側壁とほぼ同じ長さの背壁とこの背壁よりも長さの短い前壁とから構成された水平断面の形状が矩形状のダクトであり、
前記冷却ファンは、複数の羽根を放射状且つ均等に配設して構成された円筒状の羽根部を備え、
前記水浸入防止構造は、前記水浸入防止部材と、前記ファンケーシングの前記排水口の上流側の底部の内面に立設した1つ以上の板状のリブと、を備え、
前記水浸入防止部材は、前記羽根部の一部を覆い、少なくとも、前記吸気ダクトの前壁の下端と前記ファンケーシングの上部との接続部付近と前記排水口より外側の上方とを結ぶ直線と、前記羽根部の円筒で囲まれた部分を覆うことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記ファンケーシングは、前記1つ以上のリブを隠し、水などの重量物によって重力方向に押し込まれたときには、前記リブが突出するように沈み込む弾性部材を備えたことを特徴とする請求項10記載の加熱調理器。
【請求項12】
前記ファンケーシングの底部であって前記排水口の上流側に別の排水口を設けたことを特徴とする請求項2〜11のいずれかに記載の加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱調理器において、フラットな天板上に載置された鍋は、この天板の下方に配設された加熱コイルから発せられた交番磁界により誘導加熱されるので、火を使わずに鍋を加熱することができる。加熱時には被加熱物(鍋)、加熱コイル、加熱コイルを制御する基板上の制御回路などからも発熱があるため、冷却ファンを用いて強制空冷が行われている。従来の加熱調理器において、冷却ファンを駆動することで、外気を吸気孔から吸引し、冷却ファン経由で基板に通風し、さらに加熱コイルに通風することでこれらの冷却が行われる。
【0003】
このような加熱調理器では、調理中に鍋の煮こぼれあるいは、鍋の倒壊が発生すると、吸気口や排気口に汁や水などの液体が浸入する。以下の話では液体は水であるとする。水が排気口から入っても、排気口と接続される部分には水に濡れると甚大な被害を受けるものがなく、底部に溜まった水は外部へ徐々に排出されていくので、それほど問題ではない。これに対して、水が吸気口から入ると、冷却ファンの吸引力により、冷却ファンの下流の基板に流れ込み、この基板上の制御回路などに水が付着することで、ショートによる故障、発火や電子部品の劣化などの甚大な被害を及ぼす。
このような問題を解決するために、吸気孔から冷却ファンまでの風路内に水の下流への浸入を阻止する防水構造(水切り板、遮蔽部材、排水口、庇状の仕切り板、ルーバー)を施した加熱調理器が知られている (例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−73453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された従来例は、上記のように構成されているため、大量の水が吸気口から流入した場合、遮蔽部材の上端に水がかかることによって跳ね返った水が冷却ファンの吸引力により、直接この冷却ファンに入り込み、モーターの損傷や下流の基板に回り込むことでショートなど基板に甚大な被害を与えてしまうという問題は依然として解決できなかった。
また、吸引された外気が冷却ファンを通過するまでに上記防水構造により空気の圧力損失が少なからず発生して無視できないという問題があった。
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決するために為されたものであり、主な目的は、水が吸気口から流入しても冷却ファン及び基板への水の流入をほぼ完全に阻止可能な加熱調理器を得ることにある。
また、通常は空気の圧力損失を低減すると共に、水が吸気口から流入した場合には、冷却ファンへの水の流入をほぼ完全に阻止可能な加熱調理器を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る加熱調理器は、被加熱物を載置する天板と、この天板で上部開口部が覆われた本体と、を備え、本体の内部には、被加熱物を誘導加熱する複数の加熱コイルと、この複数の加熱コイルの駆動を制御する制御回路を搭載した基板と、この基板及び加熱コイルより上流側に設けられた冷却ファンと、前記冷却ファンの吸引力で外気を吸引して、この外気で基板及び加熱コイルを冷却する風路と、風路の冷却ファンよりも上流側に水の冷却ファンへの浸入を防止する水浸入防止構造と、前記冷却ファンを収容するファンケーシングと、が設けられ、前記水浸入防止構造は、前記ファンケーシングの内部に設けられ、前記冷却ファンの少なくとも一部を覆う水浸入防止部材を少なくとも有するように構成されるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、大量の水が吸気口から流入しても冷却ファン及びその下流にある基板への水の流入を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態1における加熱調理器の風路の構成を示す説明図である。
図2】本発明の実施の形態1における加熱調理器の風路における水浸入防止構造を示す図である。
図3】本発明の実施の形態1における加熱調理器の風路における別の水浸入防止構造を示す図である。
図4】本発明の実施の形態1における加熱調理器の風路におけるさらに別の水浸入防止構造を示す図である。
図5】本発明の実施の形態1における加熱調理器の風路におけるさらに別の水浸入防止構造を示す図である。
図6】本発明の実施の形態2における加熱調理器の風路における水浸入防止構造を示す図である。
図7】本発明の実施の形態3における加熱調理器の風路における水浸入防止構造を示す図である。
図8】本発明の実施の形態4における加熱調理器の風路における水浸入防止構造を示す図である。
図9】本発明の実施の形態5における加熱調理器の風路における水浸入防止構造を示す図である。
図10】本発明の実施の形態6における加熱調理器の風路における水浸入防止構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
ここでは、一例として加熱口が2口以上の加熱調理器を挙げて説明する。
図1は本発明の実施の形態1における加熱調理器の風路の構成を示す説明図であり、天板を外した状態を示す斜視図である。
図1に示すように、加熱調理器100は、本体10と、本体10の上部に設けられ、鍋などの被加熱物を載置する天板(図示せず)とから構成されている。本体10は2段に構成されており、上段には、加熱コイル(図示せず)が少なくとも左右の前側に1つずつ設けられている。また下段には、左右のほぼ中央且つ前側に魚などを焼くためのグリル20が設けられている。グリル20の前側には、グリルの引き出し、押し込みを操作するためのグリル扉21が設けられている。また、グリル20の背面には、グリル20内で発生した排煙を外部へ排出するためのグリル排気ダクト22が接続され、後方へ延設され、さらに上方へ延設され、上端はグリル排気口23となっている。
また、グリル20を左右に挟む前側には操作部30が設けられており、調理モード選択や火力設定などのスイッチ類が設けられている。
また、グリル20の左右の外側には、風路40が1つずつ設けられている。この風路40は、吸気口41、外気を吸気口41から吸引するための冷却ファン42、冷却ファン42の出口と接続され、基板43を収納する基板ケーシング44、及び加熱コイル用風路ダクト45から構成されている。加熱コイル用風路ダクト45の底部は基板ケーシング44の天面と連通し、加熱コイル用風路ダクト45の天面には加熱コイルに供給する冷却風を噴出するための通気孔45Aが多数穿設されている。なお、吸気口41と冷却ファン42との間のダクトを吸気ダクト46と呼ぶ。
【0011】
次に、風路の動作について簡単に説明する。調理者が操作部30の運転スイッチを操作することで、冷却ファン42が図示しない駆動回路によって回転駆動される。これにより、外気が冷却ファン42の吸引力によって吸気口41から吸引され、さらに吸気ダクト46及び冷却ファン42を順次通過した後、基板ケーシング44内を通過する。このとき、基板43は通過する外気と熱交換することで冷却される。また、基板ケーシング内で基板43との熱交換を終了した空気は、その後上昇して加熱コイル用風路ダクト45内に入り、通気孔45Aから噴流となって上方へ噴出し、加熱コイル用風路ダクト45の上部に位置する加熱コイル(図示せず)を冷却する。加熱コイルとの熱交換を完了した空気は後方へ進み、後部に設けられた排気口(図示せず)から外部へ排出される。
【0012】
図2は本発明の実施の形態1における加熱調理器の風路における水浸入防止構造を示す図である。図2(a)は部分的に破断させて内部の構造を示す斜視図、図2(b)は同側面図である。
図2に示すように、吸気ダクト46は2つの側壁Sと、側壁Sとほぼ同じ長さの背壁Bと背壁Bよりも高さの短い前壁Fとから構成されており、水平断面の形状が略矩形状のダクトである。また、吸気ダクト46の上端は同様に略矩形状の吸気口41を形成している。
また、吸気ダクト46の前壁Fの内面下端には吸気ダクトの内側を向き、斜め下方に突出した板状のリブA51が設けられている。また、冷却ファン42は、複数の羽根を放射状且つ均等に配設して構成された略円筒状の羽根部421と、羽根部421を回転駆動するファンモーター422と、羽根部421及びファンモーター422を収容するファンケーシング423とから構成されており、ファンケーシング423の底部には、排水口47が形成されている。
【0013】
また、羽根部421及びファンモーター422を備えた冷却ファン42の下部にはほぼ半円状の両側面とこの両側面を接続する底部とから成る水浸入防止部材52がその上端に形成された平面状の弦部を斜め上向きになるようにして羽根部421の約半分を覆っている。この弦部の一端は吸気ダクト46の前壁Fの下端とファンケーシング423の上部との接続部付近に位置し、弦部の他端は排水口47の上方に位置している。また、水浸入防止部材52はネジ止め部49によってファンケーシング423にネジ止め、即ち固定されている。
この水浸入防止部材52により、冷却ファン42への水の浸入が防止される。
さらに、ファンケーシング423は内壁と外壁の二重壁で構成されており、羽根部421及びファンモーター422の全体を収容するとともに、一部は外方に延設されて、その先端は吸気ダクト46と連通している。また、ファンケーシング423の底部側外壁の上端は吸気ダクト46の背壁の下端と接続されており、ファンケーシング423の底部側内壁の上部は吸気ダクト46の背壁と密着している。また、ファンケーシング423の排水口47の下流側と前記弦部の間は、内壁と外壁は分かれており、この内壁は水浸入防止部材52に密接している。また、この内壁には、板状のリブB53が、ファンケーシング423の排水口47の下流側に立設しており、リブB53の一方の面は水浸入防止部材52の面と密着している。
また、ファンケーシング423の上記以外の部分では内壁と外壁はほぼ密着している。
【0014】
次に、水が流入した場合の動作を説明する。
天板上に載置された鍋などの被加熱物が転倒したり、煮零れが発生したりすると、吸気口41から水が浸入する。吸気口41から浸入した水の主な軌跡として、次の2通りが挙げられる。
第1は、大量の水が浸入した場合であり、仮にリブB53が無い場合には、吸気口41から吸気ダクト46を通過した大量の水は重力によりそのまま落下してファンケーシング423の底部側の上端付近に勢いよく当たり、その後ファンケーシング423の内壁に沿って滑り落ちながら排水口47へ向かう。そして、大部分の水はそのまま排水口47から外部へ排出される。しかしながら、多量の水はそのままファンケーシング423の内壁に沿って勢い良く浸入するため、水浸入防止部材52を乗り越えて羽根部421へ浸入してしまう虞がある。
【0015】
次に、このような水の浸入を防止する水浸入防止構造について説明する。
上述したように、大量の水が浸入した場合、吸気口41から吸気ダクト46を通過した大量の水は重力によりそのまま落下してファンケーシング423の底部側の上端付近に勢いよく当たり、その後ファンケーシング423の内壁に沿って滑り落ちながら排水口47へ向かう。そして、大部分の水は、排水口47から外部へ排出されるが、一部の水は水平方向に進んだ後、リブB53に衝突する。これにより、最初にリブB53に到達した一部の水は勢いよく周囲に四散するが、後続の水はこのリブB53及び四散し切れない水によって堰き止められるため、以降の大部分の水はそのまま排水口47から外部へ排出される。また一部の水はリブB53の外側から水浸入防止部材52の直線部への進行を続行するがその勢いは初期の水に比べてかなり弱くなる。
このように水がファンケーシング423の底部側の上端付近に当たる際及び、水がリブB53に衝突する際に、水の跳ね返りがあるが、水浸入防止部材52が、羽根部421をほぼ完全に覆っているので、跳ね返った水が羽根部421に浸入するのをほぼ完全に防止することができる。
【0016】
第2は、少量の水が、吸気ダクト46の前壁Fの内側壁面を伝って冷却ファン42側へ流入する場合である。この場合、ほぼ矩形状の板で構成されるリブA51が無いと、水は吸気ダクト46の前壁の内側壁面の内側壁面とファンケーシング423との接続部分まで伝って流れ落ちた後、ファンケーシング423のほぼ水平な内壁面に沿って折れ曲がり、この内壁面の水平方向に沿って伝いながらゆっくりと移動する。そして、水が水浸入防止部材52の上端部よりさらに外右側に移動した後、羽根部421に落下して浸入してしまう虞がある。
【0017】
次に、このような水の浸入を防止する水浸入防止構造について説明する。
吸気ダクト46の前壁の内側壁面の内側壁面とファンケーシング423との接続部分、即ち、吸気ダクト46の前壁の内側壁面の下端に内側下方に突出したリブA51を設ける。これにより、吸気口41からリブA51の内壁面を伝って流れ落ちた水は、板状のリブA51を伝って羽根部421から遠ざかるように下方に流れ、リブA51の先端から落下する。板状のリブA51の先端から落下した水は、さらにファンケーシング423の内壁面に落下した後、そのままファンケーシング423を伝って下方に流れ落ち、排水口47から外部へ排出される。
従って、この場合も水の浸入をほぼ完全に阻止することができる。
【0018】
なお、四散して跳ね返った水が水浸入防止部材52を乗り越えない範囲であれば、図3に示すように、ファンケーシング423から立設するリブB53の位置を変えても良い。
また、上記の例では、板状のリブA51の数は1つのみであった。しかしながら、図4の51A、51Bに示すように吸気ダクト46の前壁の内面の上下方向に2つ並設しても良いし、さらに多くの数を上下方向に並設しても良い。
また、上記の例では、排水口47が1つの場合について説明したが、図5に示すように2つでも良いし、それ以上有っても良い。
【0019】
実施の形態2.
図6は本発明の実施の形態2における加熱調理器の風路における水浸入防止構造を示す図である。図6において、図2と同符号は同一または相当部分である。平板状のリブB53を断面形状がほぼ弧状に曲がったリブB53Aに置き換えた以外は図2の構成と同じである。
ここでは、図2の構成と異なる部分について説明する。
リブB53Aは、断面形状がほぼ弧状に曲がった板状の部材で構成され、水浸入方向に凹部の開口が向いた状態でファンケーシング423の内壁面から立設している。
【0020】
次に、水浸入防止構造について説明する。
調理中に天板上に載置された鍋などの被加熱物が転倒したり、煮零れが発生したりすることで、吸気口41から大量の水が浸入すると、水は実施の形態1と同様に流れ落ちて勢い良くリブB53Aに衝突する。しかしながら、衝突によって跳ね返った水は断面形状がほぼ弧状に曲がったリブB53Aによって効率良く排水口47の上方付近に集められる。従って、この後、集められた水は排水口47からほぼ完全に排出される。
従って、実施の形態1と違い、水がリブB53Aによって四散することはないため、実施の形態1よりも水の羽根部421への浸入阻止効果が向上する。
【0021】
実施の形態3.
図7は本発明の実施の形態3における加熱調理器の風路における水浸入防止構造を示す図である。図7において、図2と同符号は同一または相当部分である。
リブC54を追加した以外は図2の構成と同じである。
ここでは、図2の構成と異なる部分について説明する。
リブC54は、水浸入防止部材52上に立設し、平板状または下方に凹部の開口が向いたほぼ弧状に曲がった板状の部材で構成されている。
【0022】
次に、水浸入防止構造について説明する。
天板上に載置された鍋などの被加熱物が転倒したり、煮零れが発生したりすることで、吸気口41から大量の水が浸入すると、実施の形態1と同様に流れ落ちて勢い良くリブB53に衝突する。これにより、最初にリブB53に到達した一部の水は勢いよく周囲に四散するが、衝突によって四散して跳ね返った水は水浸入防止部材52上に立設したリブC54によって上方への移動を遮断される。従って、リブC54によって遮断された水はそのまま落下して他の水と共に効率良く排水口47から排出される。これにより、実施の形態1よりも水の羽根部421への浸入阻止効果が向上する。
【0023】
実施の形態4.
図8は本発明の実施の形態4における加熱調理器の風路における水浸入防止構造を示す図である。図8において、図2と同符号は同一または相当部分である。
リブD55を追加した以外は図2の構成と同じである。
ここでは、図2の構成と異なる部分について説明する。
リブD55は、水浸入防止部材52のほぼ下端から少なくとも1つが立設し、平板状または水浸入方向に凹部の開口が向いたほぼ弧状に曲がった板状の部材で構成されている。
【0024】
次に、水浸入防止構造について説明する。
天板上に載置された鍋などの被加熱物が転倒したり、煮零れが発生したりすることで、吸気口41から大量の水が浸入すると、実施の形態1と同様に流れ落ちて勢い良くリブB53に向かう。しかしながら、リブB53に衝突する前にリブD55に衝突する。これにより、最初にリブB53に到達した一部の水は勢いよく周囲に四散するが、衝突した個所が水浸入防止部材52の下端以下の高さであり、水浸入防止部材52の高さが十分にあるため、衝突によって四散して跳ね返った水の一部は上方へ上昇するが、水浸入防止部材52を乗り越えることができない。また、従って、水浸入防止部材52によって羽根部421への浸入を阻止された水はそのまま落下して他の水と共に効率良く排水口47から排出される。これにより、水の勢いはリブD55によって弱められ、リブB53に衝突する勢いは著しく弱められるため、四散量が著しく少なくなる。従って、水は効率良く排水口47から排出される。これにより、実施の形態1よりも水の羽根部421への浸入阻止効果が向上する。
【0025】
実施の形態5.
図9は本発明の実施の形態5における加熱調理器の風路における水浸入防止構造を示す図である。図9において、図8と同符号は同一または相当部分である。
水浸入防止部材52の下端部をより比重の大きい素材に置き換えるか、あるいは水浸入防止部材52の下部に、水浸入防止部材52より比重の大きい材料で構成された錘521を内蔵させる。また、水浸入防止部材52の円弧の頂部とファンモーター軸を中心にほぼ点対称の位置に多少の遊び48を持たせ、さらにネジ止め部49のネジを取り外すことで、この遊び48の範囲内で水浸入防止部材52を回動可能に構成する。また、リブB53の一側面は水浸入防止部材52に密着するのではなく、水浸入防止部材52と密接する。これ以外は図8の構成と同じである。
【0026】
次に、水浸入防止構造について説明する。
天板上に載置された鍋などの被加熱物が転倒したり、煮零れが発生したりすることで、吸気口41から大量の水が浸入すると、実施の形態1と同様に流れ落ちて勢い良くリブB53に向かう。しかしながら、リブB53に衝突する前にリブD55に衝突する。このとき、水浸入防止部材52は錘521によって重くさらに若干回動可能なため、最初にリブB53に到達した一部の水のエネルギーはリブD55と共に水浸入防止部材52が回動することで、効率良く吸収される。このため、浸入した水の周囲への四散量は激減する。また衝突した個所が水浸入防止部材52の下端以下の高さであり、水浸入防止部材52の高さが十分にあるため、衝突によって四散して跳ね返った水の一部はほんのわずか上方へ上昇するが、水浸入防止部材52を乗り越えることが到底できない。従って、水浸入防止部材52によって羽根部421への浸入を阻止された水はそのまま落下して他の水と共に効率良く排水口47から排出される。これにより、水の流速はリブD55によって弱められ、リブB53に衝突するエネルギーは著しく小さくなり実施の形態4よりも水の羽根部421への浸入阻止効果が向上する。
水の浸入が収束すると、水の流速が急激に小さくなる。そして、錘521の重力がこの水の力の内、重力方向の成分を上回ると、水浸入防止部材52は元の位置(錘の重心が最下部の位置)まで回動して戻る。
なお、上記の例では、リブB53がファンケーシング423から立設し、その一側面は水浸入防止部材52と密接する場合について説明したが、リブB53自体をファンケーシング423から切り離し、水浸入防止部材52に取り付けても良い。
【0027】
実施の形態6.
図10は本発明の実施の形態6における加熱調理器の風路における水浸入防止構造を示す図である。図10において、図2と同符号は同一または相当部分である。
ファンケーシング423の下部の内側壁面に複数のリブE56を設け、さらに通常時はこのリブE56を完全に埋め、水などの重みでリブE56の大部分が突出できる程度に効率良く沈下するようにゴムやウレタンなどの弾性部材424を敷き詰める。これ以外は図2の構成と同じである。
【0028】
次に、水浸入防止構造について説明する。
水浸入防止部材は固定していることを前提とする。
通常調理中は、弾性部材424が沈下しないため、冷却ファン42によって吸気口41から吸引された空気は吸気ダクト46を通過した後、リブE56によって圧力損失なく吸引される。
また、天板上に載置された鍋などの被加熱物が転倒したり、煮零れが発生したりすることで、吸気口41から大量の水が浸入すると、吸気ダクト46内を落下して勢い良くファンケーシング423の底部側の上端付近に当たる。このとき、ファンケーシング423の底部側に敷きつめられた弾性部材424が水の勢い及び水の重みにより図10(b)の波線で示す位置まで沈下するため、今まで弾性部材424の下に隠れていたリブE56が突出して現れる。従って、勢い良く落下した水は現れた複数のリブE56に次々に衝突するため、その流れの速度が急激に弱められる。また、最初に衝突した水は弾性部材424によってその速度が吸収される。また、以降の水の速度も先行する水の速度が小さくなっているため、この先行する水が抵抗になるため、その速度が激減する。なお、複数のリブE56の内、落下した水が最初に衝突するリブE56の位置を上下に調整することにより、さらに水の四散効果を弱めることが可能である。従って、衝突によって四散して跳ね返った水の一部は少しだけ上方へ上昇するが、水浸入防止部材52を乗り越えることは到底できない。従って、水浸入防止部材52によって羽根部421への浸入を阻止された水はそのまま落下して他の水と共に効率良く排水口47から排出される。これにより、水の勢いはリブD55によって弱められ、リブB53に衝突する勢いは著しく実施の形態1よりも水の羽根部421への浸入阻止効果が向上する。
また、水が排水された後、水の落下が止まると、弾性部材は、元の位置まで復帰するので、以降の調理において、吸気口41から吸引された冷却用空気の圧力損失が激減する。
このとき、わずかな水が吸気ダクトの背壁B及び側壁Sを伝って、流れ落ち、さらにファンケーシング423の底部を伝って排水口47から排出される。また、吸気ダクト46の側壁を伝って、わずかな水が流れ落ちるが、前壁F側を伝って流れ落ちる水は、リブA51によって吸気ダクトの内側へ流れ落ち、そのままファンケーシング423の底部を伝って排水口47から排出される。
【0029】
なお、上記の各実施の形態では、水浸入防止部材52を2つの半円状の板材とこれらを接続する底部で構成したが、これに限る必要はない。少なくとも、吸気ダクト46の前壁Fの下端とファンケーシング423の上部との接続部付近と排水口47より外側(図2(b)の排水口の右側の側壁より右側)の上方とを結ぶ直線と、羽根部421の円筒で囲まれた円筒の一部を覆うようなものであれば良い。
【0030】
10 本体、20 グリル、21 グリル扉、22 グリル排気ダクト、23 グリル排気口、30 操作部、40 風路、41 吸気口、42 冷却ファン、43 基板、44 基板ケーシング、45 加熱コイル用風路ダクト、45A 通気孔、46 吸気ダクト、47 排水口、48 遊び、49 ネジ止め部、51 リブA、52 水浸入防止部材、53、53A リブB、54 リブC、55 リブD、56 リブE、100 加熱調理器、421 羽根部、422 ファンモーター、423 ファンケーシング、424 弾性部材、B 背壁、F 前壁、S 側壁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10