(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5683240
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】作業用車両における作動油タンクの冷却機構
(51)【国際特許分類】
F15B 1/00 20060101AFI20150219BHJP
F15B 1/26 20060101ALI20150219BHJP
【FI】
F15B1/00 F
F15B1/06
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2010-269841(P2010-269841)
(22)【出願日】2010年12月3日
(65)【公開番号】特開2012-117638(P2012-117638A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】313004724
【氏名又は名称】ユニキャリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100000
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100068087
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 義弘
(72)【発明者】
【氏名】尾杉 匡哉
【審査官】
北村 一
(56)【参考文献】
【文献】
実開平03−025002(JP,U)
【文献】
実開昭59−163212(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 1/00; 1/26
F15B 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧駆動機器を搭載した作業用車両における作動油タンクの冷却機構であって、
作動油タンク内で、油圧駆動機器から作動油タンクに接続された戻り管の開口部が接続された戻り油室と、油圧ポンプに作動油を送る送り管が接続された送り油室と、を区画する位置に、当該開口部から送り出される油流により回転される攪拌翼車を回転自在に設け、
前記攪拌翼車は、作動油タンクの側壁間に架け渡された水平方向の回転軸の周囲に、当該回転軸方向に沿って横長の攪拌フィンが一定角度ごとに突設されるとともに、前記戻り管の開口部に対面して、上位置の前記攪拌フィンが配置され、
前記戻り管は、円形断面から開口部が水平方向に広がる横長扁平状の長円形断面に形成された
ことを特徴とする作業用車両における作動油タンクの冷却機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用車両に設けられた油圧機器の作動油タンクの冷却機構に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動用油圧機器で循環される作動油を溜める作動油タンクは、作動油が高圧に圧縮され昇温されることから、これを防止するために様々な対策がとられている。たとえば特許文献1のように、タンクの外壁面に凹凸を形成して表面積を増大させ、冷却効果を増大させるものや、特許文献2のように、タンク本体内にサブタンクを設け、サブタンク内に高温の作動油を戻すリターン管を接続し、サブタンクの底部に形成した導出口からタンク本体内に作動油を循環させるようにしたもの、特許文献3のように、冷却空気を通す通路をタンクを貫通して形成したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平5−2390号公報
【特許文献2】実開平5−69401公報
【特許文献3】特開2006−38079公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3では、タンク全体の構造を設計変更する必要があり、大掛かりな改造となる。
本発明は上記問題点を解決して、タンクの構造を変更することなく、簡単な機構を設けることにより、作動油を効果的に冷却することができる作業用車両における作動油タンクの冷却機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、油圧駆動機器を搭載した作業用車両における作動油タンクの冷却機構であって、
作動油タンク内に、油圧駆動機器から作動油タンクに接続された戻り管の開口部に対向して、当該開口部から吐出される油流により回転される攪拌翼車を回転自在に設け、
前記攪拌翼車は、回転軸の周囲に攪拌フィンが一定角度ごとに取り付けられたものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、戻り管の開口部から吐出される戻り作動油を攪拌フィンに衝突させて攪拌翼車を回転させ、回転される攪拌フィンにより、戻り管から吐出された高温の戻り作動油と、作動油タンク内の低温の作動油とを効果的に攪拌混合して、作動油の冷却を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る作動油タンクの冷却機構の実施例1を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施例1]
以下、本発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1において、11はたとえば作業用車両であるフォークリフトの作動油タンクであって、フォークリフトには、たとえば荷役用フォークを昇降させるリフトシリンダや、荷役用フォークを傾動させるチルトシリンダ、操舵用車輪を操舵するステアリングシリンダなどの油圧駆動機器が搭載されている。
【0009】
作動油タンク11のたとえば右側壁11Rの他端側底部に送り管(サクション管)12が接続され、この送り管12から油圧ポンプ(図示せず)により操作弁を介して上記いずれかのシリンダに高圧の送り作動油が送られる。また作動油タンク11のたとえば前壁11Fの中間部に戻り管(リターン管)13が接続され、シリンダから排出された高温の戻り作動油を前記操作弁を介して作動油タンク11に戻して循環させるように構成されている。
【0010】
送り管12の開口部には、作動油タンク11内に突出されてフィルタ12Fが取り付けられている。
戻り管13は、円形断面から接続端が水平方向に広がる横長扁平状の長円形断面に形成され、前壁11Fを貫通して開口部13aが開口されている。そして、この開口部13aに対向して、作動油タンク11内には、本発明に係る攪拌翼車21が配設されている。
【0011】
この攪拌翼車21は、作動油タンク11の前後方向の中間部で側壁11R,11L間の下部に水平方向に架け渡された支軸22と、この支軸22に軸受(図示せず)を介して回転自在に外嵌された回転軸筒(回転軸)23と、この回転軸筒23から、たとえば90°ごとに
、この回転軸23の半径方向に突設される、軸方向に沿って横長の攪拌フィン24とを具備し、戻り管13の開口部13aと、上位置の攪拌フィン24とが対面する位置に攪拌翼車21が配置されている。
そして、この攪拌翼車21により作動油タンク11内が戻り油室と送り油室とに区画する位置に配置されることで、高温の戻り作動油が直接、送り油室に送られて送り管12に吸引されないように構成されている。
【0012】
したがって、戻り管13の開口部13aから水平方向でかつ幅方向に広がるように吐出された高温の戻り作動油が、上位の攪拌フィン24の受圧面に効果的に衝突して、
図3に示すように、攪拌翼車21を時計方向に回転させる。これにより、滞留されて温度むらがある作動油を攪拌、流動化させて作動油タンク11内の油温のむらを解消し、作動油の冷却を促進させることができる。
【0013】
上記実施例1によれば、戻り管13の開口部13aから吐出される高温の戻り作動油を攪拌フィン24に衝突させて、戻り作動油のエネルギーを利用して攪拌翼車21を回転させ、攪拌翼車21の攪拌フィン24により、戻り管13から吐出された高温の戻り作動油と、作動油タンク11内の低温の作動油とを効果的に攪拌混合して、作動油の温度むらを無くして作動油を冷却を促進させることができる。
【0014】
また、戻り管13の開口部13aを
回転軸23の軸方向に沿って横長の攪拌フィン24に対応して、横長の扁平状に形成したので、開口部13aから吐出された作動油が、効率よく攪拌フィン24の面に衝突させて攪拌翼車21を効果的に回転させることができ、攪拌翼車21による攪拌効果を増大させることができる。
【0015】
なお、戻り管13の開口部13aを、
回転軸23の軸方向に沿って横長の攪拌フィン24の受圧面に対応して、横長の扁平に形成したが、開口部を円形として、戻り作動油を上位置の攪拌フィン24の面に案内するフィンを設けてもよい。
【0016】
また戻り管13の開口部13aと回転翼車21の配置は、作動油タンク11の形状に対応して任意な位置に設けることができる
【符号の説明】
【0017】
11 作動油タンク
11R,11L 側壁
11F 前壁
12 送り管
12F フィルタ
13 戻り管
21 回転翼車
22 支軸
23 回転軸筒(回転軸)
24 攪拌フィン