(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被把持部(W0)と、互いに異なる軸心を有する複数の被加工部(Wn)を備えた偏心ワーク(W)の複数の前記被加工部(Wn)を旋削加工するために用いる偏心ワーク用チャック装置において、
前記偏心ワーク(W)の前記被把持部(W0)を把持するワーク把持手段(20)と、前記ワーク把持手段(20)が前記被把持部(W0)を把持した状態で、そのワーク把持手段(20)を前記偏心ワーク(W)とともにチャック本体(10)の主軸中心線(C0)に並行な旋回中心線(C2)周りに回転移動させる調心手段(30)とを備え、
前記調心手段(30)は、前記ワーク把持手段(20)をチャック本体(10)に支持する旋回台(24)を備え、その旋回台(24)の前記チャック本体(10)に対する前記旋回中心線(C2)周りの回転移動により、前記偏心ワーク(W)の複数の前記被加工部(Wn)のうち、一の被加工部(W1)の軸中心線(D1)を前記チャック本体(10)の主軸中心線(C0)に合致させた状態と、他の被加工部(W2)の軸中心線(D2)を前記チャック本体(10)の主軸中心線(C0)に合致させた状態との間で、ワーク(W)を移動できるものであり、
前記旋回台(24)は、その外面又は内面に、前記旋回中心線(C2)に沿っていずれかの側へ向かうにつれて徐々に縮径する旋回台側テーパー面(24b)を有し、前記チャック本体(10)の基部(13)は、前記旋回台側テーパー面(24b)が面接触可能な基部側テーパー面(31b)を有し、前記旋回台(24)が前記基部(13)に対して前記旋回中心線(C2)に沿って相対移動することにより前記旋回台側テーパー面(24b)と前記基部側テーパー面(31b)とが接離可能で、前記旋回台側テーパー面(24b)と前記基部側テーパー面(31b)とが離反した状態で前記旋回台(24)は回転移動でき、前記旋回台側テーパー面(24b)と前記基部側テーパー面(31b)とが面接触した状態で前記旋回台(24)は前記基部(13)に固定され、前記旋回台側テーパー面(24b)と前記基部側テーパー面(31b)は、それぞれ前記旋回中心線(C2)を中心とする円錐面であり、前記旋回台(24)を前記旋回中心線(C2)周りの任意の方位で固定できるようにしたことを特徴とする偏心ワーク用チャック装置。
前記旋回台側テーパー面(24b)と前記基部側テーパー面(31b)とが面接触する際に、前記旋回台(24)が備える前記旋回中心線(C2)に直交する端面(24a)と、前記基部(13)が備える前記旋回中心線(C2)に直交する端面(31a)が面接触することにより、前記旋回台(24)と前記基部(13)とは、前記旋回台側テーパー面(24b)と前記基部側テーパー面(31b)、及び、前記両端面(24a,31a)とで保持されることを特徴とする請求項1に記載の偏心ワーク用チャック装置。
【背景技術】
【0002】
軸心の位置が互いに異なる複数の被加工部(旋削加工の必要な部分)を有するワーク、いわゆる偏心ワークを旋削加工する場合は、旋盤に対して専用の偏心ワーク用チャック装置が用いられることが多い。
【0003】
この偏心ワークは、チャック装置のジョウによって把持される少なくとも1箇所の加工済み部分(被把持部)と、それとは別に、旋削加工の必要な部分(被加工部)を複数箇所備えている。
【0004】
その複数の被加工部は、互いに軸心の位置が異なる周面を旋削面としており、「一の被加工部」と、それとは別に、少なくとも1箇所の「他の被加工部」を備える。このような偏心ワークとしては、例えば、クランクシャフトや、カムシャフト等が挙げられる。
【0005】
偏心ワーク用チャック装置として、例えば、特許文献1に示すものがある。このチャック装置は、例えば、長手状のワークWの軸方向に沿って、被把持部W0、第一被加工部W1、第二被加工部W2を備えたシャフトを想定する。
図7(a)に示すように、チャック本体1の主軸中心線(旋盤中心線)C0は、ワークWの被把持部W0の軸中心線から距離Lだけ偏心しており、且つ、第一被加工部W1と第二被加工部W2との位相差が180度となっている。
【0006】
まず、被把持部W0を、図中の符号C1を把持中心線とするコレットチャック(ワーク把持手段)2で把持することにより、第一被加工部W1の軸中心線をチャック本体1の主軸中心線C0に位置合わせし、その第一被加工部W1の旋削加工を行う(
図7(a)参照)。
【0007】
つぎに、別に設けたワークハンド(図示せず)によってワークWの前記被把持部W0を把持し、そのワークWを回転不能に位置決めした状態で、コレットチャック2による把持を解放する。
【0008】
そして、チャック本体1を、第一被加工部W1と第二被加工部W2の位相差に相当する180度だけ回転させ、コレットチャック2の把持中心線C1をチャック本体1の主軸中心線C0に対して回転移動させる。
【0009】
ワークハンドを、チャック本体1の主軸中心線C0に直交する面内におけるX軸及びY軸方向に適宜平行移送し、ワークWの被把持部W0をコレットチャック2の把持中心線C1の位置に合わせ、そのコレットチャック2で把持する。これによって、第二被加工部W2の軸中心線がチャック本体1の主軸中心線C0に位置合わせされ、その第二被加工部W2の旋削加工を行うことができる(
図7(b)参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の偏心ワーク用チャック装置によると、互いに軸心の異なる複数の被加工部を旋削加工するために、ワークWの位置決め及び把持を複数回行っている。
【0012】
すなわち、まず、最初の被加工部の旋削のためにワークWを把持し、次の被加工部の旋削のために、一旦その把持を解除した後にワークWの位置合わせを行い、再度の把持を行っている。
【0013】
このように、ワークWの位置決め及び把持を複数回行うと、加工工程の時間が長くなるとともに、その新たな位置決め及び把持を行う毎に誤差が生じ、加工精度を低下させるので好ましくない。
【0014】
そこで、この発明は、偏心ワーク用チャック装置において、旋削加工の工程全体に要する時間を短くし、加工精度を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、この発明は、被把持部と、互いに異なる軸心を有する複数の被加工部を備えた偏心ワークの複数の前記被加工部を旋削加工するために用いる偏心ワーク用チャック装置において、前記偏心ワークの前記被把持部を把持するワーク把持手段と、前記ワーク把持手段が前記被把持部を把持した状態で、そのワーク把持手段を前記偏心ワークとともにチャック本体の主軸中心線に並行な旋回中心線周りに回転移動させる調心手段とを備え、前記調心手段は、前記ワーク把持手段をチャック本体に支持する旋回台を備え、その旋回台の前記チャック本体に対する前記旋回中心線周りの回転移動により、前記偏心ワークの複数の前記被加工部のうち、一の被加工部の軸中心線を前記チャック本体の主軸中心線に合致させた状態と、他の被加工部の軸中心線を前記チャック本体の主軸中心線に合致させた状態との間で、ワークを移動できることを特徴とする偏心ワーク用チャック装置を採用した。
【0016】
従来の偏心ワーク用チャック装置によると、互いに軸心の異なる複数の被加工部を旋削加工するために、まず、最初の被加工部の旋削のためにワークを把持し、次の被加工部の旋削のために、一旦その把持を解除した後にワークの位置合わせを行い、再度の把持を行っていたが、この構成によれば、途中に行っていた把持の解除が不要であるから、旋削加工の工程全体に要する時間を短くし、加工精度を高めることができる。
【0017】
また、この構成において、前記旋回台は、その外面又は内面に、前記旋回中心線に沿っていずれかの側へ向かうにつれて徐々に縮径する旋回台側テーパー面を有し、前記チャック本体の基部は、前記旋回台側テーパー面が面接触可能な基部側テーパー面を有し、前記旋回台が前記基部に対して前記旋回中心線に沿って相対移動することにより前記旋回台側テーパー面と前記基部側テーパー面とが接離可能で、前記旋回台側テーパー面と前記基部側テーパー面とが離反した状態で前記旋回台は回転移動でき、前記旋回台側テーパー面と前記基部側テーパー面とが面接触した状態で前記旋回台は前記基部に固定される構成を採用することができる。
【0018】
この構成によれば、旋回台側テーパー面と基部側テーパー面との面接触によって、旋回台を、旋回中心線に対してより正確に調心された状態に固定することができる。
【0019】
なお、その旋回台側テーパー面と基部側テーパー面は、それぞれ旋回中心線周りに断続的に設けられていてもよいし、旋回中心線周り全周に亘って連続的に設けられていてもよい。
また、その旋回台側テーパー面と基部側テーパー面はそれぞれ旋回中心線を中心とする円錐面であることが望ましい。円錐面であれば、その円錐面同士の接触範囲において、旋回台を任意の方位に無段階で調整し、ワークに応じて旋回台を任意の方位に固定できる。
【0020】
さらに、これらの各構成において、前記旋回台側テーパー面と前記基部側テーパー面とが面接触する際に、前記旋回台が備える前記旋回中心線に直交する端面と、前記基部が備える前記旋回中心線に直交する端面が面接触することにより、前記旋回台と前記基部とは、前記旋回台側テーパー面と前記基部側テーパー面、及び、前記両端面とで保持される構成を採用することができる。
【0021】
この構成によれば、各テーパー面同士の面接触と、各端面同士の面接触とで、いわゆる2方向の面接触が可能である。このため、旋回台のチャック本体の基部に対する位置決めに対する精度が向上し、また、その固定がしっかりとしたものとなる。
【発明の効果】
【0022】
この発明は、偏心ワーク用チャック装置において、旋削加工の工程全体に要する時間を短くし、加工精度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。この実施形態は、軸心の位置が互いに異なる複数の被加工部Wnを有するいわゆる偏心ワークWを旋削加工するために、旋盤に用いられる偏心ワーク用チャック装置M(以下、チャック装置Mという)である。
【0025】
このチャック装置Mの構成は、
図1に示すように、旋盤の主軸中心線C0と同心に固定されるチャック本体10と、そのチャック本体10に設けられ、偏心ワークWの被把持部W0を把持するワーク把持手段20と、そのワーク把持手段20が被把持部W0を把持した状態で、そのワーク把持手段20を偏心ワークWとともにチャック本体10の主軸中心線C0に並行な旋回中心線C2周りに回転移動させる調心手段30とを備えている。
【0026】
この実施形態では、把持対象となる偏心ワークWは、そのワーク把持手段20によって把持される1箇所の加工済み部分(以下、被把持部W0という)と、それとは別に、旋削加工の必要な2箇所の被加工部Wn(以下、第一被加工部(一の被加工部)W1、第二被加工部(他の被加工部)W2という)を備えている。
【0027】
このような偏心ワークWとしては、例えば、クランクシャフトや、カムシャフト等が挙げられる。なお、この実施形態では、偏心ワークWの被把持部W0の軸中心線D0と、第一被加工部W1の軸中心線D1は一致しているが、この軸中心線D0,D1同士が一致していない偏心ワークWを把持対象とすることもできる。
【0028】
ワーク把持手段20は、チャック本体10の前面側に設けられる。ワーク把持手段20は、偏心ワークWの被把持部W0を、チャック本体10の軸心C0(前記主軸中心線C0を指す。以下同じ。)に並行な把持中心線C1と同心に把持し、且つ、チャック本体10の軸心C0方向に対する位置決めを行うストッパ15を配した、センタリング機能を有する引込み式チャックで構成されている。このワーク把持手段20の把持中心線C1は、後に説明する調心手段30の動きによりチャック本体10の軸心C0に対して移動するので、その把持中心線C1は、必ずしもチャック本体10の軸心C0には一致しない。
【0029】
なお、
図1(a)等において、符号11はバックプレート、符号12はアダプタプレート、符号13は基部、符号14は外周部材である。これらの部材が、ボルト等によって一体化され、チャック本体10を構成している。
【0030】
アダプタプレート12の前面側において、基部13、外周部材14の内側に形成された空間内には、旋回台24が設けられている。旋回台24は、チャック本体10の軸心C0と並行に設定された旋回中心線C2周りに回転移動することができる。チャック本体10の軸心C0と、旋回台24の旋回中心線C2とは、距離Lだけ隔てられている(
図6(a)参照)。
【0031】
この旋回台24が、前記調心手段30の一部を構成するとともに、前記ワーク把持手段20をチャック本体10に支持する機能も発揮している。
【0032】
まず、調心手段30を主体に説明すると、旋回台24は、その後方寄り部分の外面に、前記旋回中心線C2に沿って後方に向かうにつれて徐々に縮径する旋回台側テーパー面24bを有している。旋回台側テーパー面24bは、前記旋回中心線C2を中心とする直円錐の円錐面(円錐台面)で構成されている。
【0033】
また、チャック本体10の基部13は、前記旋回台側テーパー面24bが面接触可能な基部側テーパー面31bを有している。
すなわち、基部側テーパー面31bは、旋回中心線C2に沿って後方に向かうにつれて徐々に縮径し、同じく、前記旋回中心線C2を中心とする直円錐の円錐面(円錐台面)で構成されている。また、その基部側テーパー面31bの円錐面の母線と旋回中心線C2との成す角度が、旋回台側テーパー面24bの円錐面の母線と旋回中心線C2との成す角度と同一に設定されている。
【0034】
旋回台24は、チャック本体10の基部13に対して、旋回中心線C2に沿って前後方向に相対移動することにより、旋回台側テーパー面24bと基部側テーパー面31bとが接離可能である。
【0035】
また、旋回台24には、旋回台側テーパー面24bの前端から外径方向に立ち上がる端面24aが、その全周に亘って連続的に設けられている。端面24aは、旋回中心線C2に直交する面方向を有する平面である。
【0036】
基部13には、基部側テーパー面31bの前端から外径方向に立ち上がる端面31aが、その全周に亘って連続的に設けられている。端面31aは、旋回中心線C2に直交する面方向を有する平面である。
【0037】
旋回台24の旋回中心線C2方向への移動により、旋回台側テーパー面24bと基部側テーパー面31bとが面接触する際に、旋回台24が備える端面24aと、基部13が備える端面31aとが面接触するようになっている。
【0038】
このため、旋回台24が基部13に対して後方側へ引込まれた際に、旋回台24と基部13とは、旋回台側テーパー面24bと基部側テーパー面31b、及び、両端面24a,31aとの、2方向の面接触により保持され、動かないように固定される。
【0039】
また、旋回台24が基部13に対して前方へ押し出された際には、旋回台側テーパー面24bと基部側テーパー面31bとが離反し、また、両端面24a,31aも離反する。このため、旋回台24は、基部13に対して旋回中心線C2周りに回転移動可能な状態となる。
【0040】
この旋回台24の旋回中心線C2方向への移動は、チャック本体10内に設けた動作手段によって行うようになっている。
動作手段は、チャック本体10の軸心C0と同心に設けられたドローバ32と、前記旋回台24に接続されその旋回台24と一体に動く旋回台接続部材34,35、そのドローバ32のチャック本体10に対する軸心C0方向への進退の動きを、旋回台接続部材34,35、旋回台24に伝達する駆動部材33等からなる。
【0041】
チャック本体10外に設けた駆動源(図示せず)の作用により、ドローバ32がチャック本体10の軸心C0方向に進退し、その進退によって、駆動部材33、旋回台接続部材34,35を通じて、旋回台24が基部13に対して旋回中心線C2方向へ移動する。このとき、旋回台接続部材35の外面に形成された円筒面が、基部13の内面に形成された円筒面に摺動することで、その移動がガイドされている。
【0042】
また、この旋回台24の旋回中心線C2周りの回転移動は、チャック本体10外に設けた回転動作手段(図示せず)によって行うようになっている。
回転動作手段は、旋回台24の前面に設けられた係止手段41の溝部41aに、その溝部41aの周方向端壁間にぴったりと嵌る動作杆を入り込ませ、その動作杆を、旋回中心線C2周りの円周方向に所定角度移動させることにより、旋回台24をチャック本体10の基部13に対して回転移動させる。このとき、旋回台24は、前記動作手段により前面側に押し出されて回転可能な状態としておく。回転移動が終われば、前記動作手段により、旋回台24は引込まれてチャック本体10の基部13に固定される。
【0043】
つぎに、ワーク把持手段20の構成について説明すると、チャック本体10内には、流体圧の作用によってチャック本体10の軸心C0方向に移動するアクチュエータ21が備えられている。
【0044】
このアクチュエータ21は、前記旋回台24、旋回台接続部材34,35の内側に形成された空間内に収容され、軸心C0方向後方に位置する第一部材21aと、その第一部材21aの前方に位置する第二部材21bとを備える。第一部材21aと第二部材21bとは一体に移動する。
【0045】
アクチュエータ21の第一部材21aは、その軸方向中ほどに、軸心C0に直交する断面積の大きいピストン部27を備え、そのピストン部27の前後は、相対的に小径な前端部21d、後端部21eとなっている。前端部21dは第二部材21bの孔部21fにねじ結合され、後端部21eは、チャック本体10の軸心に設けられた中心部材16の凹部に嵌って軸心C0方向に摺動可能である。
【0046】
また、ピストン部27は、旋回台接続部材34,35の内側に形成された前記空間をシリンダ室26として、そのシリンダ室26内で軸心C0方向へ進退自在である。
【0047】
シリンダ室26内におけるピストン部27の後方側を後室26aとし、前方側が前室26bとなっており、その後室26aには、油路(流体路)25の第一ポート25aが、前室26bには、油路25の第二ポート25bが接続されて複動式シリンダとなっている。
【0048】
油路25は、軸心C0に沿って配置された中心部材16内を通って、チャック本体10外の流体供給手段(図示せず)に通じている。第一ポート25a、第二ポート25bのいずれか一方に油圧を供給し、他方の油圧を解放することで、そのピストン部27をシリンダ室26内で進退させることができる。また、第一ポート25a、第二ポート25bを閉じることで、ピストン部27を不動とすることができる。
【0049】
また、前記旋回台24は、その旋回中心線C2周りに複数の傾斜孔22を等分方位に有している。この実施形態では、3つの傾斜孔22を設けている。
【0050】
各傾斜孔22は、旋回台24の旋回中心線C2に対して同一の角度で傾斜する方向に伸びている。この実施形態では、傾斜孔22は、チャック本体10の後方から前方に向かって徐々に外径側に向かう傾斜方向となっているが、把持対象である偏心ワークWの形態、把持部分の設定によっては逆方向、すなわち、チャック本体10の後方から前方に向かって徐々に内径側に向かう傾斜方向となる場合もある。
【0051】
この傾斜孔22は、設置しようとするジョウ23bと同数形成され、その各傾斜孔22内に軸状のマスタージョウ23がぴったりと嵌められている。
また、マスタージョウ23の後端に設けた凹部23cに、アクチュエータ21の突部21cが入り込んでおり、アクチュエータ21が、チャック本体10の軸心C0方向に進退することにより、マスタージョウ23は、その傾斜孔22の伸びる方向に沿って旋回台24に対して相対移動可能である。
【0052】
各マスタージョウ23の前端には、ジョウ23bが設けられている。ジョウ23bは、ボルトでマスタージョウ23の前端に固定され、そのジョウ23の先端が偏心ワークWの被把持部W0に当接する把持部23aとなっている。
このため、チャック本体10の軸心C0周りに、マスタージョウ23と同数のジョウ23bが等分方位に放射状に設けられていることになる。この実施形態では、3つのジョウ23bを設けている。
【0053】
また、この実施形態では、マスタージョウ23は断面円形であり、傾斜孔22も断面円形となっており、両者は、その全周に亘って密着した状態で、その密着面が摺動しながら前記相対移動が行われる。
【0054】
マスタージョウ23が、傾斜孔22の伸びる方向に沿って旋回台24に対して相対移動することにより、ジョウ23bがチャック本体10の半径方向へ移動し、偏心ワークWをストッパ15に向かって後方へ引込みながら、その偏心ワークWの被把持部W0を把持したり、あるいは、その把持を解除することができる。
【0055】
このチャック装置Mの作用について説明すると、まず、
図1(a)(b)に示すように、偏心ワークWの複数の被加工部Wnのうち、第一被加工部W1の軸中心線D1をチャック本体10の軸心C0に合致させた状態に、偏心ワークWの被把持部W0を把持する。この把持は、ワーク把持手段20のジョウ23bが、偏心ワークWの被把持部W0の外周を掴むことで維持されている。
【0056】
この実施形態では、偏心ワークWの被把持部W0の軸中心線D0と、第一被加工部W1の軸中心線D1は一致しているので、その軸中心線D0,D1、及び、ワーク把持手段20の把持中心線C1は、いずれもチャック本体10の軸心C0に合致した状態である(
図5(a)、
図6(a)参照)。
【0057】
この状態で、第一被加工部W1の旋削加工を行う。
【0058】
つぎに、まず、
図2(a)(b)に示すように、偏心ワークWの複数の被加工部Wnのうち、第二被加工部W2の軸中心線D2をチャック本体10の軸心C0に合致させた状態に移行させる。
この移行は、ワーク把持手段20のジョウ23bが、偏心ワークWの被把持部W0の外周を掴むことを維持したまま、前記調心手段30の機能により行われる。
【0059】
すなわち、まず、
図1(a)に示す状態から
図3に示す状態へと、旋回台24をチャック本体10の基部13に対して、前方へ押し出す。この押出により、旋回台側テーパー面24bと基部側テーパー面31bとが離反し、また、両端面24a,31aも離反し、旋回台24は、基部13に対して旋回中心線C2周りに回転移動可能な状態となる。
【0060】
そこで、チャック本体10外に設けた前記回転動作手段を用い、旋回台24の前面に設けられた係止手段41の溝部41aに、その溝部41aの周方向端壁間にぴったりと嵌る動作杆を入り込ませ、その動作杆を、旋回中心線C2周りの円周方向に所定角度移動させることにより、旋回台24をチャック本体10の基部13に対して回転移動させる。
【0061】
この回転移動により、
図5(a)、
図6(a)に示す状態から、
図5(b)、
図6(b)に示す状態へと、偏心ワークWが移行する。
図5(a)、
図6(a)は、前述の
図1(a)に示す状態、すなわち、第一被加工部W1の軸中心線D1をチャック本体10の軸心C0に合致させた状態である。
図5(b)、
図6(b)は、前述の
図2(a)に示す状態、すなわち、第二被加工部W2の軸中心線D2をチャック本体10の軸心C0に合致させた状態である。
【0062】
回転動作手段には、旋回台24を、旋回中心線C2周りにどれだけの角度回転移動させれば、第一被加工部W1の軸中心線D1がチャック本体10の軸心C0に合致した状態から、第二被加工部W2の軸中心線D2がチャック本体10の軸心C0に合致した状態へと移行できるか、予めその情報が入力されている。このため、その入力情報に基づいて、回転動作手段が備えるコンピュータ等の制御手段が、自動的に、係止手段41の溝部41aに動作杆を入り込ませたり、あるいは、その動作杆を、旋回中心線C2周りの円周方向に所定角度移動させたり、さらには、その動作杆を溝部41aから離脱させたりすることができる。もちろん、この旋回台24の回転を手作業で行うことも可能である。
【0063】
つまり、
図6(a)に示すように、チャック本体10の軸心C0と、旋回台24の旋回中心線C2とは、チャック本体10の半径方向に距離Lだけ偏心している。
また、偏心ワークWの第一被加工部W1の軸中心線D1、第二被加工部W2の軸中心線D2は、それぞれ、その旋回中心線C2から距離L1、L2だけ半径方向に偏心しているので、旋回台24の旋回中心線C2周りの回転移動により、第一被加工部W1の軸中心線D1、第二被加工部W2の軸中心線D2を、順に、チャック本体10の軸心C0に合致させることができるのである。
【0064】
このとき、前記距離L1、L2は、距離Lと同一に設定されていることになる。したがって、相互に軸心の異なる被加工部Wnが、3箇所、あるいは4箇所以上存在する偏心ワークWの場合においても、その各被加工部Wnの軸中心線Dnの、前記旋回中心線C2からの各距離Lnが、前記距離Lと同一に設定されていれば、旋回台24の回転移動が許される方位内にある限り、ワーク把持手段20による把持をやり直す(持ち替える)必要なく、その把持を維持したまま旋削加工を行うことができる。
【0065】
回転移動が終われば、前記動作手段により、その回転後の方位で旋回台24は引込まれてチャック本体10の基部13に固定される。この状態で、第二被加工部W2の旋削加工を行い、その後、ワーク把持手段20による把持を解除して、偏心ワークWの旋削加工を終了する。
【0066】
なお、チャック本体10には、バランサーとしてウェイト50が取付けられており、また、旋回台24には、同じくバランサーとしてウェイト40が取付けられているので、このウェイト40,50を着脱したり、あるいは、重量の異なる各ウェイト40,50に取り替えることで、旋削加工時における重心のずれを補正することができる。バランサーの取付け位置は自由であるが、この実施形態のように、チャック本体10の前面や、旋回台24の前面に設けることが望ましい。
【0067】
このように、調心手段30は、ワーク把持手段20をチャック本体10に支持する旋回台24を備え、その旋回台24のチャック本体10に対する旋回中心線C2周りの回転移動により、偏心ワークWの複数の被加工部Wnのうち、一の被加工部W1の軸中心線D1をチャック本体10の軸心C0に合致させた状態と、他の被加工部W2の軸中心線D2をチャック本体10の軸心C0に合致させた状態との間で、ワークWを移動できる。
【0068】
なお、この実施形態では、ワーク把持手段20を引込み式チャックで構成したが、このワーク把持手段20を、例えば、コレットチャックなどセンタリング機能を有する他の把持手段で構成してもよい。
【0069】
また、この発明のチャック装置Mにおいて、把持対象となる偏心ワークWは、少なくとも1箇所の加工済み部分である被把持部W0を備え、それとは別に、旋削加工の必要な複数箇所の被加工部Wnを備えているものとできる。このため、実施形態のように、第一被加工部W1、第二被加工部W2の2箇所の被加工部Wnを有する偏心ワークW以外には限定されず、それ以外にも、例えば、互いに軸心の異なる3箇所、4箇所以上の被加工部Wnを有するものも、その対象とできる。
【0070】
さらに、この実施形態では、旋回台24は、その外面に、旋回中心線C2に沿って後方へ向かうにつれて徐々に縮径する旋回台側テーパー面24bを有しているものとしたが、この旋回台側テーパー面24bは、旋回台24の内面に設けてもよい。
旋回台24の内面に旋回台側テーパー面24bを設けた場合は、基部13に設けられる基部側テーパー面31bも、それに面接触し得るように、対応した位置に設定することとなる。
【0071】
また、その各テーパー面24b,31bを、旋回中心線C2に沿って後方へ向かうにつれて徐々に拡径する構成とすることもでき、さらには、各テーパー面24b、31bを円錐面以外のテーパー面で構成してもよい。各テーパー面24b、31bを円錐面以外で構成する場合、各テーパー面24b、31bを、例えば、四角錐や六角錐など多角錐(多角錐台)の側面といったように、旋回中心線C2周りに等分方位に配置された複数の同一勾配のテーパー面とすることができる。このとき、テーパー面24b,31b同士が面接触し得る旋回台24の回転方位において、前述の第一被加工部W1、第二被加工部W2など各被加工部Wnの各軸中心線D1,D2・・・Dnが、チャック本体10の軸心C0に合致するように設定することができる。