特許第5683273号(P5683273)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5683273
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】光学活性カルボン酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/41 20060101AFI20150219BHJP
   C07C 51/43 20060101ALI20150219BHJP
   C07C 51/02 20060101ALI20150219BHJP
   C07C 51/09 20060101ALI20150219BHJP
   C07C 61/22 20060101ALI20150219BHJP
   C07C 51/353 20060101ALI20150219BHJP
   C07B 57/00 20060101ALN20150219BHJP
   C07B 55/00 20060101ALN20150219BHJP
【FI】
   C07C51/41
   C07C51/43
   C07C51/02
   C07C51/09
   C07C61/22
   C07C51/353
   !C07B57/00 346
   !C07B55/00 A
【請求項の数】11
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2010-542119(P2010-542119)
(86)(22)【出願日】2009年12月9日
(86)【国際出願番号】JP2009070613
(87)【国際公開番号】WO2010067824
(87)【国際公開日】20100617
【審査請求日】2012年11月8日
(31)【優先権主張番号】特願2008-316849(P2008-316849)
(32)【優先日】2008年12月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146581
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 公樹
(74)【代理人】
【識別番号】100115750
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 敏昭
(74)【代理人】
【識別番号】100113583
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 範子
(74)【代理人】
【識別番号】100153039
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真有
(74)【代理人】
【識別番号】100160462
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 有希子
(74)【代理人】
【識別番号】100161160
【弁理士】
【氏名又は名称】竹元 利泰
(74)【代理人】
【識別番号】100164460
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100119622
【弁理士】
【氏名又は名称】金原 玲子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 耕司
(72)【発明者】
【氏名】久保田 和夫
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−151724(JP,A)
【文献】 特開2004−123596(JP,A)
【文献】 特開2006−169158(JP,A)
【文献】 Journal of Organic Chemistry,1966年,31,P240-243
【文献】 日本化学会編,光学異性体の分離[季刊 化学総説 No.6],株式会社 学会出版センター,1996年 6月10日,第3版,P45-54
【文献】 Journal of the American Chemical Society,1978年,100(16),P5199-203
【文献】 Tetrahedron Asymmetry,2004年,15,P2057-2060
【文献】 Tetrahedron Letters,1991年,32(13),P1613-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/41
C07C 51/02
C07C 51/09
C07C 51/353
C07C 51/43
C07C 61/22
C07B 55/00
C07B 57/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
で表される化合物と(R)−α−フェニルエチルアミンとを、含水酢酸エチルを用いて反応させ一般式(II)
【化2】
で表される化合物を得た後に、
当該一般式(II)で表される化合物を、含水酢酸エチルを用いて再結晶させる工程を含む、一般式(II)で表される化合物の製造方法。
【請求項2】
含水酢酸エチルの含水率が0.5%〜3.0%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
一般式(II)で表される化合物を酸で処理して、一般式(A)
【化3】
で表される化合物を得る工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
一般式(III)
【化4】
で表される立体異性体に酸触媒下、C1〜C6アルキルアルコールを反応させて得られる一般式(IV)
【化5】
(ここで、Rは、C1〜C6アルキル基を示す。)で表される化合物を、溶媒中、塩基と反応させて、一般式(V)
【化6】
(ここで、Rは、前記と同義である。)で表されるエステルを得、該エステルをC1〜C6アルキルアルコール中、加水分解させて、一般式(I)
【化7】
で表される化合物を製造する方法。
【請求項5】
一般式(IV)で表される化合物から一般式(V)で表される化合物を得る工程の溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミドである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
一般式(IV)で表される化合物から一般式(V)で表される化合物を得る工程の塩基が1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エンである、請求項4または請求項5に記載の方法。
【請求項7】
加水分解に用いる溶媒がメタノールまたはエタノールである、請求項4〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
加水分解に用いる塩基が水酸化ナトリウムである、請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
一般式(III)
【化8】
で表される立体異性体を溶媒中、塩基と反応させて、一般式(I)
【化9】
で表される化合物を製造する方法。
【請求項10】
溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミドである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
塩基が、水素化ナトリウムである、請求項9または請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性化血液凝固第X因子(FXa)の阻害作用を示し、血栓性疾患の予防および/または治療薬として有用な化合物の中間体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性化血液凝固第X因子(activated factor XまたはFXaと称する場合がある。)の阻害作用を示し、血栓性疾患の予防および/または治療薬として有用な化合物として、例えば、下記の式(X)
【0003】
【化1】
【0004】
で表されるN−(5−クロロピリジン−2−イル)−N−((1S,2R,4S)−4−[(ジメチルアミノ)カルボニル]−2−{[(5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミド、その塩またはそれらの水和物、例えば、下記の式(Y)
【0005】
【化2】
【0006】
で表される化合物Xのp−トルエンスルホン酸 一水和物が知られている(特許文献1〜4)。
【0007】
これらのFXa阻害化合物の中間体として、下記の一般式(A)で表される(S)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸(以下、化合物Aと称する場合がある。)が知られている(特許文献1〜4)。
【0008】
【化3】
【0009】
化合物Aは、(R)−α−フェニルエチルアミン(以下、(R)−PEAと称する場合がある。)を用いて3−シクロヘキセン−1−カルボン酸(以下、化合物Iと称する場合がある。)を光学分割することによって得られることが知られている(非特許文献1)。非特許文献1には光学分割において使用する溶媒が記載されておらず、再結晶は5回以上も必要と記載されている。
【0010】
化合物Aは、酵素による不斉水解反応によって得られることも報告されている(非特許文献2)。しかし、本方法は多量の溶媒を必要とし、工業的製造を想定した場合、容積効率の観点から効率的な方法が必須であった。さらに、非特許文献1および非特許文献2の方法では、立体異性体(R)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸が副産物として生成するが、いずれの文献にもこれを再利用する方法については何ら記載されていない。
【0011】
また、D−パントラクトンを不斉補助基として用いる不斉Diels−Alder反応にて立体選択的に化合物Aを得る方法も報告されている(非特許文献3)。しかし、D−パントラクトンは高価であり、工業的製造を想定した場合、より安価な方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第03/000657号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/000680号パンフレット
【特許文献3】国際公開第03/016302号パンフレット
【特許文献4】国際公開第04/058715号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Harold M.Schwartz et al.,J.Am.Chem.Soc.,100,5199−5203,1978
【非特許文献2】Cihangir Tanyeli et al.,Tetrahedron:Asymmetry,15,2057−2060,2004
【非特許文献3】Barry M.Trost et al.,Tetrahedron Lett.,32,1613−1616,1991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、3−シクロヘキセン−1−カルボン酸から(S)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸の(R)−α−フェニルエチルアミン塩または(S)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸を安価で効率的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、驚くべきことに:3−シクロヘキセン−1−カルボン酸から(S)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸の(R)−α−フェニルエチルアミン塩を得る工程の反応溶媒および再結晶溶媒として含水アセトンまたは含水酢酸エチルを用いると、効率的に純度の高い(S)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸の(R)−α−フェニルエチルアミン塩が得られること;ならびに、上記工程で得られる立体異性体(R)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸を3−シクロヘキセン−1−カルボン酸にラセミ化することで、このラセミ体を(S)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸の(R)−α−フェニルエチルアミン塩または(S)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸の製造に再利用することができることを見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、安価で効率的に(S)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸の(R)−α−フェニルエチルアミン塩および/または(S)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸を製造する方法が提供される。さらに、本発明により、3−シクロヘキセン−1−カルボン酸から(S)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸を得るときの不要な立体異性体(R)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸を3−シクロヘキセン−1−カルボン酸にラセミ化する方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
すなわち、本発明は、
[1]一般式(I)
【0018】
【化4】
【0019】
で表される化合物と(R)−α−フェニルエチルアミンとを、溶媒として含水アセトンまたは含水酢酸エチルを用いて反応させることを特徴とする、一般式(II)
【0020】
【化5】
【0021】
で表される化合物の製造方法;
[2]さらに、一般式(II)で表される化合物を、再結晶溶媒として含水アセトンまたは含水酢酸エチルを用いて再結晶させる工程を含む、[1]に記載の方法;
[3]溶媒及び再結晶溶媒として含水酢酸エチルを用いることを特徴とする、[2]に記載の方法;
[4]含水酢酸エチルの含水率が0.5%〜3.0%である、[3]に記載の方法;
[5]一般式(II)で表される化合物を酸で処理して、一般式(A)
【0022】
【化6】
【0023】
で表される化合物を得る工程をさらに含む、[1]〜[4]のいずれか1に記載の方法;
[6][1]の製造方法において得られる一般式(III)
【0024】
【化7】
【0025】
で表される立体異性体に酸触媒下、C1〜C6アルキルアルコールを反応させて得られる一般式(IV)
【0026】
【化8】
【0027】
(ここで、Rは、C1〜C6アルキル基を示す。)で表される化合物を、溶媒中、塩基と反応させて、一般式(V)
【0028】
【化9】
【0029】
(ここで、Rは、前記と同義である。)で表されるエステルを得、該エステルをC1〜C6アルキルアルコール中、加水分解させて、一般式(I)
【0030】
【化10】
【0031】
で表される化合物を製造する方法;
[7]一般式(IV)で表される化合物から一般式(V)で表される化合物を得る工程の溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミドである、[6]に記載の方法;
[8]一般式(IV)で表される化合物から一般式(V)で表される化合物を得る工程の塩基が1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エンである、[6]または[7]に記載の方法;
[9]加水分解に用いる溶媒がメタノールまたはエタノールである、[6]〜[8]のいずれか1に記載の方法;
[10]加水分解に用いる塩基が水酸化ナトリウムである、[6]〜[9]のいずれか1に記載の方法;
[11][1]の製造方法において得られる一般式(III)
【0032】
【化11】
【0033】
で表される立体異性体を溶媒中、塩基と反応させて、一般式(I)
【0034】
【化12】
【0035】
で表される化合物を製造する方法;
[12]溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミドである、[11]に記載の方法;
[13]塩基が、水素化ナトリウムである、[11]または[12]に記載の方法;
に関する。
【0036】
本明細書において、「C1〜C6アルキル」とは、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖のアルキル基をいう。C1〜C6アルキルとしては、例えば、メチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルが挙げられる。
【0037】
本明細書において、「C1〜C6アルキルアルコール」としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールまたはイソプロピルアルコールが挙げられる。
【0038】
本明細書において、「含水溶媒」とは、水と水以外の溶媒との混合溶媒をいう。水と水以外の溶媒との混合は、反応の前であってもよいし反応の途中であってもよく、水と水以外の溶媒とが溶媒として作用する環境であれば特に限定されない。
【0039】
本明細書において、「当量」とは、特に記載されない限り、モル当量を意味する。
【0040】
下記の式(X)
【0041】
【化13】
【0042】
で表される、N−(5−クロロピリジン−2−イル)−N−((1S,2R,4S)−4−[(ジメチルアミノ)カルボニル]−2−{[(5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロチアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−イル)カルボニル]アミノ}シクロヘキシル)エタンジアミド(N1-(5-Chloropyridin-2-yl)-N2-((1S, 2R, 4S)-4-[(dimethylamino)carbonyl]-2-{[(5-methyl-4, 5, 6, 7-tetrahydrothiazolo[5, 4-c] pyridine-2-yl)carbonyl]amino}cyclohexyl) ethanediamide)は、式(Y)で表される化合物のフリー体であり、世界保健機構(WHO)には、国際一般名称(International Nonproprietary Names、INN):エドキサバン(edoxaban)、N−(5−クロロピリジン−2−イル)−N’−[(1S,2R,4S)−4−(N,N−ジメチルカルバモイル)−2−(5−メチル−4,5,6,7−テトラヒドロ[1,3]チアゾロ[5,4−c]ピリジン−2−カルボキサミド)シクロヘキシル]オキサミド(N-(5-chloropyridin-2-yl)-N’-[(1S, 2R, 4S)-4-(N, N-dimethylcarbamoyl)-2-(5-methyl-4, 5, 6, 7-tetrahydro[1, 3]thiazolo[5, 4-c]pyridine-2-carboxamido)cyclohexyl]oxamide)として登録されている。
【0043】
以下に本発明の方法について詳述する。
【0044】
【化14】
【0045】
(ここで、Rは、C1〜C6アルキル基を示す。)
(工程a)
一般式IIで表される化合物(以下、化合物IIと称する場合がある。)は、溶媒中、化合物Iに光学活性な塩基として(R)−PEAを作用させることで結晶性のジアステレオマー塩として得ることができる。この塩の再結晶をさらに繰り返すことでより純度の高い化合物IIを得ることができる(工程a)。
【0046】
化合物Iおよび(R)−PEAは、公知の方法で合成することができるし、市販先から購入することもできる。
【0047】
塩分割における溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノールもしくはイソプロピルアルコール等のアルコール溶媒;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルt−ブチルエーテルもしくはシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒;蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルもしくは酢酸フェニル等のエステル溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンもしくはテトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンもしくはメチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;ベンゼン、クロロベンゼン、トルエンもしくはキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトニトリル、N,N,−ジメチルホルムアミド、N,N,−ジメチルアセトアミドもしくはN−メチルピロリドン等の含窒素溶媒が挙げられ、好ましくは、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジイソプロピルエーテル、酢酸エチル、クロロホルム、アセトン、トルエン、アセトニトリルまたはこれらの混合溶媒が挙げられ、より好ましくは、酢酸エチル、アセトン、エタノールとジイソプロピルエーテルの混合溶媒、酢酸エチルとアセトンの混合溶媒、水とアセトンの混合溶媒(以下、含水アセトンと称する場合がある。)または水と酢酸エチルの混合溶媒(以下、含水酢酸エチルと称する場合がある。)が挙げられる。
【0048】
塩分割の溶媒として含水アセトンを用いる場合の含水率は、特に限定されないが、3%〜90%が好ましく、4%〜70%がより好ましい。溶媒として含水酢酸エチルを用いる場合の含水率は、特に限定されないが、0.1%〜3%が好ましく、0.5%〜3%がより好ましい。
【0049】
塩分割の溶媒の量は、特に限定されないが、化合物Iに対して5倍〜30倍(v/w)が好ましく、5倍〜10倍(v/w)がより好ましい。
【0050】
塩分割の晶析の温度は、使用する溶媒により異なるが、−10℃〜溶媒の沸点で好ましくは0℃から60℃である。温度は、一定に保っていてもよいし、結晶が析出する温度で数時間維持した後、段階的に冷却していってもよい。段階的に冷却する場合、例えば、40℃〜60℃で2〜6時間維持した後、徐冷(例えば、5〜10℃/時間ずつ、好ましくは、20〜40℃までは5℃/時間ずつ、−10℃〜20℃までは10℃/時間ずつ)冷却するのが光学純度の面で好ましい。
【0051】
塩分割の晶析の時間は、1時間から48時間の範囲でよく、好ましくは16時間から30時間の範囲である。
【0052】
(R)−PEAの量は、特に限定されないが、例えば、化合物Iに対して0.5当量〜2当量、好ましくは0.5当量〜1当量で反応させるのがよい。
【0053】
晶析した化合物IIをろ過する温度は、特に限定されないが、−20℃〜50℃が好ましく、−10℃〜30℃がより好ましい。
【0054】
析出した結晶は、例えば、ろ過、遠心分離または傾斜法によって単離することができる。単離した結晶は必要に応じて適当な溶媒で洗浄することができる。
【0055】
化合物Iの(R)−PEAを用いた光学分割により得られた化合物IIは、溶媒中で加熱して溶解した後、冷却し再結晶させることで光学純度をさらに上げることができる。
【0056】
再結晶における溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノールもしくはイソプロピルアルコール等のアルコール溶媒;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルt−ブチルエーテルもしくはシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒;蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルもしくは酢酸フェニル等のエステル溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンもしくはテトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンもしくはメチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;ベンゼン、クロロベンゼン、トルエンもしくはキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;または、アセトニトリル、N,N,−ジメチルホルムアミド、N,N,−ジメチルアセトアミドもしくはN−メチルピロリドン等の含窒素溶媒が挙げられ、好ましくは、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジイソプロピルエーテル、酢酸エチル、クロロホルム、アセトン、トルエン、アセトニトリルまたはこれらの混合溶媒が挙げられ、より好ましくは、酢酸エチル、アセトン、エタノールとジイソプロピルエーテルの混合溶媒、酢酸エチルとアセトンの混合溶媒、含水アセトンまたは含水酢酸エチルが挙げられる。含水アセトンを用いる場合の含水率は、特に限定されないが、3%〜90%が好ましく、4%〜70%がより好ましい。溶媒として含水酢酸エチルを用いる場合の含水率は、特に限定されないが、0.1%〜3%が好ましく、0.5%〜3%がより好ましい。再結晶における溶媒は、塩分割において用いた溶媒と異なる種類の溶媒を用いてもよいが、同じ溶媒を用いるのが好ましい。
【0057】
再結晶における溶媒の量は、特に限定されないが、化合物IIに対して5倍〜30倍(v/w)が好ましく、5倍〜10倍(v/w)がより好ましい。
【0058】
再結晶の晶析の温度は、使用する溶媒により異なるが、−10℃〜溶媒の沸点で好ましくは0℃から60℃である。温度は、一定に保っていてもよいし、結晶が析出する温度で数時間維持した後、段階的に冷却していってもよい。段階的に冷却する場合、例えば、40℃〜60℃で2〜6時間維持した後、徐冷(例えば、5〜10℃/時間ずつ、好ましくは、20〜40℃までは5℃/時間ずつ、−10℃〜20℃までは10℃/時間ずつ)冷却するのが光学純度の面で好ましい。
【0059】
再結晶の晶析の時間は、1時間から48時間の範囲でよく、好ましくは16時間から30時間の範囲である。
【0060】
再結晶により晶析した化合物IIをろ過する温度は、特に限定されないが、−20℃〜50℃が好ましく、−10℃〜30℃がより好ましい。
【0061】
再結晶の回数は、目的の化合物が良好な純度で良好な収率で得られる限り特に限定されないが、本発明の方法によれば、少なくとも5回以下、好ましくは、3回以下、より好ましくは2回以下という極めて少ない回数の再結晶で高い純度の化合物IIを得ることができる。従って、本発明の方法は、化合物II、さらには以下に詳述するように化合物IIを用いて得られる化合物A、ひいては特許文献1〜4等に記載される活性化血液凝固第X因子阻害剤として有用な化合物を工業的に製造する方法として非常に有用である。
【0062】

(工程b)
化合物IIに塩酸または硫酸等の酸を作用させることにより、化合物Aを得ることができる(工程b)。
【0063】
工程(b)に用いられる酸としては、特に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸が挙げられ、好ましくは、塩酸または硫酸が挙げられる。
【0064】
工程(b)に用いられる溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノールもしくはイソプロピルアルコール等のアルコール溶媒;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルt−ブチルエーテルもしくはシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒;蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルもしくは酢酸フェニル等のエステル溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンもしくはテトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンもしくはメチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;ベンゼン、クロロベンゼン、トルエンもしくはキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;または、アセトニトリル、N,N,−ジメチルホルムアミド、N,N,−ジメチルアセトアミドもしくはN−メチルピロリドン等の含窒素溶媒が挙げられ、好ましくは、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエンまたはこれらの混合溶媒が挙げられ、より好ましくは、酢酸エチル、ジクロロメタンまたはトルエンが挙げられる。
【0065】
工程(b)に用いられる溶媒の量は、特に限定されないが、化合物IIに対して5倍〜30倍(v/w)が好ましく、5倍〜10倍(v/w)がより好ましい。
【0066】
工程(b)に用いられる反応温度は、使用する溶媒により異なるが、−78℃から溶媒の沸点で、好ましくは0℃から30℃である。
【0067】
工程(b)に用いられる反応時間は10分から24時間の範囲でよく、好ましくは15分から8時間の範囲である。
【0068】
このようにして合成された化合物Aは、例えば、特許文献1〜4等に記載される活性化血液凝固第X因子(FXa)阻害剤として有用な化合物の中間体として有用である。
【0069】

(工程c、工程dおよび工程e)
化合物Iは、一般式(III)で表される化合物(以下、化合物IIIと称する場合がある。)に酸触媒下、C1〜C6アルキルアルコールを反応させて、一般式(IV)で表される化合物(以下、化合物IVと称する場合がある。)を得(工程c)、該化合物IVを溶媒中、塩基と反応させて式(V)で表されるエステル(以下、化合物Vと称する場合がある。)を得(工程d)、次いで化合物VをC1〜C6アルキルアルコール中、加水分解を行なう(工程e)ことで得ることができる。
【0070】
工程(c)に使用される酸触媒は、特に限定されないが、例えば、塩酸、硫酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸が挙げられ、好ましくは、塩酸、硫酸が挙げられる。
【0071】
工程(c)に使用されるC1〜C6アルキルアルコールは、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールまたはイソプロピルアルコールが挙げられ、好ましくは、メタノールまたはエタノールが挙げられる。
【0072】
工程(c)に使用される溶媒は、出発物質をある程度溶解し反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、水;メタノール、エタノールもしくはイソプロピルアルコール等のアルコール溶媒;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルt−ブチルエーテルもしくはシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒;蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルもしくは酢酸フェニル等のエステル溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンもしくはテトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンもしくはメチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;ベンゼン、クロロベンゼン、トルエンもしくはキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;または、アセトニトリル、N,N,−ジメチルホルムアミド、N,N,−ジメチルアセトアミドもしくはN−メチルピロリドン等の含窒素溶媒が挙げられ、好ましくは、メタノールまたはエタノールが挙げられる。
【0073】
工程(c)に使用される溶媒の量は、特に限定されないが、化合物IIIに対して5倍〜30倍(v/w)が好ましく、5倍〜10倍(v/w)がより好ましい。
【0074】
工程(c)の反応温度は、使用する溶媒により異なるが、−78℃から溶媒の沸点で、好ましくは、室温から溶媒の沸点である。
【0075】
工程(c)の反応時間は、反応時間は1時間から24時間の範囲でよく、好ましくは、3時間から20時間の範囲である。
【0076】
工程(d)に使用される溶媒は、出発物質をある程度溶解し反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール溶媒;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルt−ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒;蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸フェニル等のエステル溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトニトリル、N,N,−ジメチルホルムアミド、N,N,−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の含窒素溶媒が挙げられ、好ましくは、N,N,−ジメチルホルムアミド、N,N,−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンが挙げられる。
【0077】
工程(d)に使用される溶媒の量は、特に限定されないが、化合物IIIに対して1倍〜30倍(v/w)が好ましく、5倍〜10倍(v/w)がより好ましい。
【0078】
工程(d)に使用される塩基は、特に限定されないが、例えば:ナトリウム、カリウムもしくはリチウム等のアルカリ金属またはマグネシウムもしくはカルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩またはアルコキサイド;水素化ナトリウム、水素化カリウムもしくは水素化リチウム等の金属水素化物;n−ブチルリチウムもしくはメチルリチウム等のアルキルリチウム試薬;または、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)もしくはジメチルアニリン等の塩基性複素環化合物が挙げられる。また、この工程は、反応を促進させるためにテトラブチルアンモニウムブロミドもしくはベンジルトリエチルアンモニウムクロリド等の四級アンモニウム塩やヨウ化カリウムもしくはヨウ化ナトリウム等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属のヨウ化物およびクラウンエーテル等の存在下で行うこともある。
【0079】
これらの塩基のうち、アルコキサイド、金属水素化物または塩基性複素環化合物が好ましく、ナトリウムエトキシド、水素化ナトリウムまたはDBUがより好ましい。
【0080】
工程(d)に使用される塩基の量は、特に限定されないが、化合物IIIに対して1当量〜30当量が好ましく、1当量〜5当量がより好ましい。
【0081】
工程(d)の反応温度は、使用する溶媒により異なるが、−78℃から溶媒の沸点で、好ましくは50℃から溶媒の沸点である。
【0082】
工程(d)の反応時間は、反応時間は1時間から24時間の範囲でよく、好ましくは6時間から20時間の範囲である。
【0083】
工程(e)における加水分解は酸またはアルカリを用いて行われ、酸性加水分解には塩酸、硫酸等の酸を用いる。アルカリ性加水分解には:水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウムもしくは炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウムもしくは炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩などの塩基が用いられ、塩基は通常、水溶液として用いられる。加水分解のうち、アルカリ性加水分解が好ましい。
【0084】
工程(e)に使用される溶媒は、出発物質をある程度溶解し反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノールもしくはイソプロピルアルコール等のアルコール溶媒;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルt−ブチルエーテルもしくはシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒;蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルもしくは酢酸フェニル等のエステル溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンもしくはテトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンもしくはメチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;ベンゼン、クロロベンゼン、トルエンもしくはキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;または、アセトニトリル、N,N,−ジメチルホルムアミド、N,N,−ジメチルアセトアミドもしくはN−メチルピロリドン等の含窒素溶媒が挙げられ、好ましくは、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、N,N,−ジメチルホルムアミド、N,N,−ジメチルアセトアミドまたはN−メチルピロリドン等が挙げられ、より好ましくは、メタノール、エタノールまたはイソプロピルアルコールが挙げられる。
【0085】
工程(e)に使用される塩基の量は、特に限定されないが、化合物IIIに対して1当量〜30当量が好ましく、1当量〜5当量がより好ましい。
【0086】
工程(e)の反応温度は、使用する溶媒により異なるが、−78℃から溶媒の沸点で、好ましくは50℃から溶媒の沸点である。
【0087】
工程(e)の反応時間は、反応時間は1時間から24時間の範囲でよく、好ましくは6時間から20時間の範囲である。
【0088】

(工程f)
化合物Iは、化合物IIIを、溶媒中、塩基と反応させても得ることができる。
【0089】
本工程に使用される溶媒は、出発物質をある程度溶解し反応を阻害しないものであれば特に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノールもしくはイソプロピルアルコール等のアルコール溶媒;ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルt−ブチルエーテルもしくはシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒;蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルもしくは酢酸フェニル等のエステル溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンもしくはテトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトンもしくはメチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;ベンゼン、クロロベンゼン、トルエンもしくはキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;または、アセトニトリル、N,N,−ジメチルホルムアミド、N,N,−ジメチルアセトアミドもしくはN−メチルピロリドン等の含窒素溶媒が挙げられ、好ましくは、含窒素溶媒が挙げられ、より好ましくは、N,N,−ジメチルホルムアミドが挙げられる。
【0090】
本工程に使用される溶媒の量は、特に限定されないが、化合物IIIに対して1倍〜50倍(v/w)が好ましく、5倍〜10倍(v/w)がより好ましい。
【0091】
本工程に使用される塩基は、特に限定されないが、例えば:ナトリウム、カリウムもしくはリチウム等のアルカリ金属またはマグネシウムもしくはカルシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩またはアルコキサイド;水素化ナトリウム、水素化カリウムもしくは水素化リチウム等の金属水素化物;n−ブチルリチウムもしくはメチルリチウム等のアルキルリチウム試薬;または、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)もしくはジメチルアニリン等の塩基性複素環化合物が挙げられる。これらの塩基のうち、金属水素化物が好ましく、水素化ナトリウムがより好ましい。
【0092】
本工程に使用される塩基の量は、特に限定されないが、化合物IIIに対して0.1当量〜10当量が好ましくは、1当量〜5当量が好ましい。
【0093】
本工程の反応温度は、使用する溶媒により異なるが、−78℃から溶媒の沸点で、好ましくは50℃から溶媒の沸点である。
【0094】
本工程の反応時間は、反応時間は、反応時間は1時間から24時間の範囲でよく、好ましくは6時間から20時間の範囲である。
【0095】
このように、本発明の方法によれば、工程(a)において得られる不要な立体異性体の化合物IIIを、化合物Iに変換して再度、化合物IIおよび化合物A、さらには特許文献1〜4等に記載される活性化血液凝固第X因子阻害剤として有用な化合物を得る工程に用いることができる。従って、本発明の方法は、廃棄物が少ない環境に配慮した優れた方法であるといえる。
【0096】

以下に実施例を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0097】
なお、得られた化合物の光学純度(%ee)は、次のようにして求めた。
【0098】
ジアステレオマー塩中のカルボン酸の光学純度(%ee)は、対応するカルボン酸へ誘導後、求めた。カルボン酸、メチルエステル体およびエチルエステル体の光学純度(%ee)は、GCに付して測定した。
光学純度分析条件;検出器:FID、カラム:J&W Cyclodex(登録商標)、30m×0.25mm、試料気化室温度:250℃、カラム温度:90℃、検出部温度:250℃、キャリアーガス:ヘリウム、流速1ml/min]
【実施例】
【0099】
(実施例1)(S)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸・(R)−α−フェニルエチルアミン塩
3−シクロヘキセン−1−カルボン酸(1.0kg)を4.8%含水アセトン(7.5L)に溶解し、50℃にて(R)−α−フェニルエチルアミン(624.3g)を4.8%含水アセトンに溶解した溶液(500ml)を徐々に加え、そのままの温度にて4時間攪拌した。懸濁液を35℃まで冷却し、そのままの温度にて16時間攪拌後、更に10℃にて3時間攪拌した。懸濁液を減圧濾過に附し、標題化合物を白色結晶として837.1g得た。その光学純度は、63%deであった。続いて、得られた塩700gへ4.8%含水アセトン(5.6L)を加え、加熱還流下、5時間、30℃にて13時間攪拌後、氷冷下、3時間攪拌した。その懸濁液を減圧濾過に附し、標題化合物を白色結晶として519.4g得た。その光学純度は、81%deであった。さらに、得られた塩500gへ4.8%含水アセトン(4.0L)を加え、加熱還流下、5時間、30℃にて13時間攪拌後、10℃にて、3時間攪拌した。その懸濁液を減圧濾過に附し、標題化合物を白色結晶として398.5g得た。その光学純度は、91%deであった。最後に、得られた塩300gへ4.8%含水アセトン(2.4L)を加え、加熱還流下、5時間、30℃にて13時間攪拌後、10℃にて、3時間攪拌した。その懸濁液を減圧濾過に附し、標題化合物を白色結晶として240.0g得た。その光学純度は、97%deであった。
1H−NMR(D2O)δ:1.50−1.63(1H,m)、1.66(3H,d,J=6.9hz)、1.86−1.95(1H,m)、1.98−2.25(4H,m)、2.32−2.43(1H,m)、4.56(1H,q,J=6.9Hz)、5.70−5.80(2H,m)、7.40−7.55(5H,m)
元素分析:C15H21N1O2として
理論値(%)C;72.84,H;8.56,N;5.66
実測値(%)C;72.88,H;8.58,N;5.72

(実施例2)(S)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸・(R)−α−フェニルエチルアミン塩
3−シクロヘキセン−1−カルボン酸(30g)を3%含水酢酸エチル(150ml)に溶解し、55℃にて(R)−α−フェニルエチルアミン(23.0g)を3%含水酢酸エチルに溶解した溶液(30ml)を徐々に加え、そのままの温度にて6時間攪拌した。懸濁液を25℃にて5時間、更に−10℃にて2時間30分間攪拌した。懸濁液を減圧濾過に附し、標題化合物を白色結晶として32.9g得た。その光学純度は、49%deであった。続いて、得られた塩32.7gへ3%含水酢酸エチル(196ml)を加え、55℃にて3時間攪拌後、25℃にて5時間、更に−10℃にて2時間30分間攪拌した。その懸濁液を減圧濾過に附し、標題化合物を白色結晶として24.7g得た。その光学純度は、78%deであった。さらに、得られた塩24.6gへ3%含水酢酸エチル(148ml)を加え、55℃にて3時間攪拌後、25℃にて5時間、更に−10℃にて2時間30分間攪拌した。その懸濁液を減圧濾過に附し、標題化合物を白色結晶として20.3g得た。その光学純度は、95%deであった。
各種スペクトルデータは、実施例1と一致した。
【0100】

(参考例1)(S)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸・(R)−α−フェニルエチルアミン塩
3−シクロヘキセン−1−カルボン酸(10.0g)をアセトン(70ml)に溶解し、50℃にて(R)−α−フェニルエチルアミン(6.2g)のアセトン溶液(10ml)を徐々に加え、そのままの温度にて4時間攪拌した。懸濁液を30℃まで冷却し、そのままの温度にて16時間攪拌後、更に10℃にて3時間攪拌した。懸濁液を減圧濾過に附し、標題化合物を白色結晶として9.5g得た。その光学純度は、45%deであった。
各種スペクトルデータは、実施例1と一致した。
【0101】

(参考例2)(S)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸・(R)−α−フェニルエチルアミン塩
3−シクロヘキセン−1−カルボン酸(10.0g)を酢酸エチル(50ml)に溶解し、50℃にて(R)−α−フェニルエチルアミン(6.2g)の酢酸エチル溶液(10ml)を徐々に加え、そのままの温度にて4時間攪拌した。懸濁液を30℃まで冷却し、そのままの温度にて16時間攪拌後、更に10℃にて3時間攪拌した。懸濁液を減圧濾過に附し、標題化合物を白色結晶として9.8g得た。その光学純度は、40%deであった。
各種スペクトルデータは、実施例1と一致した。
【0102】

(実施例3)(S)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸
(S)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸・(R)−α−フェニルエチルアミン塩(1.0g,97%de)にメチルt−ブチルエーテル(20ml)、1規定塩酸溶液をpH1になるまで加え、室温にて1時間攪拌した。有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、溶媒を留去し、標題化合物を無色油状物として504mg得た。
1H−NMR(CDCl3)δ: 1.64−1.75(1H,m)、1.99−2.20(3H,m)、2.24−2.30(2H,m)、2.56−2.63(1H,m)、5.63−5.70(2H,m)

(実施例4)メチル(R)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシレート
(R)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸(1.0g,97%de)をメタノール(10ml)に溶解し、室温にて5規定塩酸水溶液(1ml)を加えた。反応液を6時間加熱還流した後、溶媒を留去した。得られた残渣へメチルt−ブチルエーテルを加えた後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液および水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル−ノルマルヘキサン=1:1)に附し、標題化合物を無色油状物として1.08g得た。その光学純度は97%eeであった。
1H−NMR(CDCl3)δ: 1.60−1.77(1H,m)、1.95−2.13(3H,m)、2.23−2.29(2H,m)、2.50−2.62(1H,m)、3.70(3H,s)、5.64−5.71(2H,m)

(実施例5)エチル(R)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシレート
(R)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸(1.0g,97%de)をエタノール(10ml)に溶解し、室温にて5規定塩酸水溶液(1ml)を加えた。反応液を6時間加熱還流した後、溶媒を留去した。得られた残渣へメチルt−ブチルエーテルを加えた後、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム溶液および水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル−ノルマルヘキサン=1:1)に附し、標題化合物を無色油状物として1.13g得た。その光学純度は97%eeであった。
1H−NMR(CDCl3)δ: 1.26(3H,t,J=7.2Hz)、1.62−1.75(1H,m)、1.95−2.15(3H,m)、2.21−2.30(2H,m)、2.49−2.59(1H,m)、4.14(2H,q,J=7.2Hz)、5.64−5.72(2H,m)

(実施例6)メチル−3−シクロヘキセン−1−カルボキシレート
メチル(R)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシレート(1.0g,97%ee)をN,N−ジメチルホルムアミド(10ml)に溶解し、室温にて1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(1.1ml)を加え、120℃にて18時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、10%クエン酸水溶液を滴下後、シクロペンチルメチルエーテルにて抽出し、有機層を水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル−ノルマルヘキサン=1:1)に附し、標題化合物を無色油状物として0.91g得た。その光学純度は0%eeであった。H−NMRスペクトルデータは、実施例4と一致した。
【0103】

(実施例7)エチル−3−シクロヘキセン−1−カルボキシレート
エチル(R)−3−シクロヘキセン−1−カルボキシレート(1.0g,97%ee)をN,N−ジメチルホルムアミド(10ml)に溶解し、室温にて1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(1.0ml)を加え、120℃にて18時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、10%クエン酸水溶液を滴下後、シクロペンチルメチルエーテルにて抽出し、有機層を水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル−ノルマルヘキサン=1:1)に附し、標題化合物を無色油状物として0.89g得た。その光学純度は0%eeであった。H−NMRスペクトルデータは、実施例5と一致した。
【0104】

(実施例8)3−シクロヘキセン−1−カルボン酸
メチル−3−シクロヘキセン−1−カルボキシレート(1.0g)をメタノール(10ml)に溶解し、室温にて5N水酸化ナトリウム水溶液(5ml)を加え、そのままの温度にて16時間攪拌した。反応液へ塩酸を加えた後、シクロペンチルメチルエーテルにて抽出し、有機層を水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール=3:1)に附し、標題化合物を無色油状物として855mg得た。H−NMRスペクトルデータは、実施例3と一致した。
【0105】

(実施例9)3−シクロヘキセン−1−カルボン酸
エチル−3−シクロヘキセン−1−カルボキシレート(1.0g)をエタノール(10ml)に溶解し、室温にて5N水酸化ナトリウム水溶液(5ml)を加え、そのままの温度にて16時間攪拌した。反応液へ塩酸を加えた後、シクロペンチルメチルエーテルにて抽出し、有機層を水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール=3:1)に附し、標題化合物を無色油状物として800mg得た。H−NMRスペクトルデータは、実施例3と一致した。
【0106】

(実施例10)3−シクロヘキセン−1−カルボン酸
(R)−3−シクロヘキセン−1−カルボン酸(1.0g,97%ee)をN,N−ジメチルホルムアミド(10ml)に溶解し、室温にて60%水素化ナトリウム(634mg)を加え、120℃にて18時間攪拌した。反応液を室温まで冷却後、10%クエン酸水溶液を滴下後、シクロペンチルメチルエーテルにて抽出し、有機層を水にて洗浄後、無水硫酸マグネシウムにて乾燥した。溶媒留去後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム−メタノール=3:1)に附し、標題化合物を無色油状物として892mg得た。その光学純度は0%eeであった。H−NMRスペクトルデータは、実施例3と一致した。