(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材の表面に撥水性を与える方法であって、基材の表面にコーティング組成物を適用して、前記コーティング組成物の層をその上に形成することを含み、前記コーティング組成物が、
a)0.1重量%〜2重量%の、一般式Rf−(CH2)2−SiCl3(式中、Rfは3〜18個のアルキル炭素原子を有するパーフルオロアルキルラジカル基である)を有する化合物から選択される少なくとも1種のパーフルオロアルキルトリクロロシランと、
b)0.2重量%〜10重量%のパーフルオロポリエーテルカルボン酸と、
c)88重量%〜99.7重量%の少なくとも1種のフッ素化溶媒と
を含む(ただし、上記成分aを2重量%、かつ、上記成分bを0.2重量%含むものを除く)、方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の特徴および利点は、以下の詳細な説明を読むと、当業者であれば、より容易に理解されるであろう。明確にするために、別個の実施形態で上述および後述する本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせで提供されてもよいものと考えられる。反対に、簡潔にするために、単一の実施形態で記載する本発明の様々な特徴は、別個あるいは任意のサブコンビネーションで提供されてもよい。また、単数での参照には、特に別記しない限り、複数も含まれる(例えば、「1つ」は、1つまたは1つ以上を指す)。
【0009】
本明細書で指定した様々な範囲内での数値の使用は、明確に別記しない限り、示した範囲内の最小および最大値の両方の前に「約」という文字がつくものとして、近似で示されている。このように、示した範囲より僅かに上下変動していても、範囲内の値と実質的に同じ結果を得ることができる。また、これらの範囲の開示は、最小値と最大値との間の各値を含む連続した範囲とする。
【0010】
本明細書で用いる
「基材」という用語は、コーティング組成物によりコートされる物品を指す。基材は透明または不透明とすることができる。透明基材は、ガラス、プラスチック等のポリマー材料またはこれらの組み合わせから作製することができる。基材としては、ガラスまたはプラスチック窓、例えば、ビルの内窓または外窓、眼鏡、車両(オートバイを含む)の風防、水上バイクまたは航空機の風防、装置および機器のガラスカバー、例えば、時計、水泳ゴーグル、ヘルメットのカバー、例えば、オートバイのヘルメット、ガラスレンズ、例えば、顕微鏡レンズまたはカメラレンズ、透明分離装置、例えば、ガラス安全スクリーンまたは飛散防止バリア、機器または計器のガラスドアまたは窓、例えば、化学反応フード、生物または薬品フード、インキュベータ、キャビネット、マイクロ波オーブン、トースターオーブンまたは冷蔵庫が例示される。
【0011】
「車両」、「自動車」、「オートモービル」、「自動車両」または「オートモービル車両」という用語は、車両、例えば、車、バン、ミニバン、バス、SUV(スポーツタイプ実用車)、トラック、セミトラック、列車、トラム、トラクタ、オートバイ、トレーラー、ATV(全地形万能車)、軽トラック、重量輸送機、例えば、ブルドーザー、クレーン車、地ならし機、航空機、ボート、船およびその他の輸送形態のことを指す。
【0012】
車両の「風防」という用語は、典型的に、ガラス、強化またはラミネートガラスで作製された車両のフロントガラスを意味する。風防は、車両に固定することができる。風防はまた、車両から除去または取り外し可能とすることもできる。風防は、典型的に、ガラス、ポリマー材料、例えば、プラスチック、またはポリマー材料強化またはラミネートガラスで作製することができる。車の典型的な風防は、間にプラスチックの層がラミネートされた2枚以上のガラスシートを有することができる。車両の他の窓、例えば、サイドウィンドウまたはリアウィンドウも、本発明のコーティング組成物の基材とすることができる。良好な透視性のために、車両の風防は撥水性である必要があり、雨滴、水しぶき、小破片または汚れが風防に張り付かないようにする。
【0013】
風防等の基材の表面は、パーフルオロアルキルアルキルシランまたはパーフルオロアルキルアルキルトリクロロシラン等のフルオロシランで処理して、撥水性とすることができる。トリクロロシラン基は、ガラス基材等の基材の表面のヒドロキシル基と非常に反応性であるため、良好な処理効率が与えられる。
【0014】
水滴(1)が、強親水性固体表面(2A)と接触すると、水滴は表面に広がる。接触角アルファ(α)は、0°であり得る(
図1A)。弱親水性表面(2B)については、接触角は、0°近く〜30°までの範囲となり得る(
図1B)。撥水処理したガラス表面等疎水性固体表面(2Cおよび2D)については、接触角は、90°より大きく、90°〜180°近くまでの範囲となり得る(
図1Cおよび1D)。強疎水性表面(2D)については、水滴は、表面を実際に濡らさずに、表面に単に載っており(
図1D)、ロータス効果と呼ばれる。
【0015】
撥水性処理した表面は、風化または摩耗のために、ひとたび撥水性が失われると、接触角を減じ得る。表面に適用された撥水性の耐久性は、風化または摩耗前後に接触角を測定することにより測定することができる。
【0016】
接触角は、業界で一般的に用いられている液滴法により測定することができる。簡単に述べると、光源の前で、水滴を、測定する表面に配置する。液滴の断面を見て、ゴニオメータを用いて、接触角アルファ(α)を測定する。
【0017】
本発明は、基材にコーティングするコーティング組成物に関する。コーティング組成物は、基材の表面に適用されると、表面に撥水性を与えることができる。コーティング組成物は、
a)一般式Rf−(CH
2)
2−SiCl
3(式中、Rfは3〜18個のアルキル炭素原子を有するパーフルオロアルキルラジカル基である)を有する化合物から選択される少なくとも1種のパーフルオロアルキルトリクロロシランと、
b)パーフルオロポリエーテルカルボン酸と、
c)少なくとも1種のフッ素化溶媒と
を含むことができる。
【0018】
本発明のコーティング組成物は、
a)一般式Rf−(CH
2)
2−SiCl
3(式中、Rfは3〜18個のアルキル炭素原子を有するパーフルオロアルキルラジカル基である)を有する化合物から選択される少なくとも1種のパーフルオロアルキルトリクロロシランと、
b)パーフルオロポリエーテルカルボン酸と、
c)少なくとも1種のフッ素化溶媒と
から本質的になる。
【0019】
パーフルオロアルキルラジカル基は、鎖状または分岐アルキル基とすることができる。鎖状アルキルラジカル基が好ましい。
【0020】
好適なパーフルオロアルキルトリクロロシランとしては、パーフルオロプロピルエチルトリクロロシラン、パーフルオロブチルエチルトリクロロシラン、パーフルオロペンチルエチルトリクロロシラン、パーフルオロヘキシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロヘプチルエチルトリクロロシラン、パーフルオロオクチルエチルトリクロロシラン、パーフルオロノニルエチルトリクロロシラン、パーフルオロデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロウンデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロドデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロトリデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロテトラデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロペンタデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロヘキサデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロヘプタデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロオクタデシルエチルトリクロロシランまたはこれらの組み合わせが例示される。
【0021】
一実施例において、本発明のコーティング組成物は、一般式F(CF
2)
n(式中、nは6〜16の整数である)を有するパーフルオロアルキルラジカル基から選択されるRfを有することができる。この一般式を有する好適なパーフルオロアルキルトリクロロシランとしては、パーフルオロヘキシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロヘプチルエチルトリクロロシラン、パーフルオロオクチルエチルトリクロロシラン、パーフルオロノニルエチルトリクロロシラン、パーフルオロデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロウンデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロドデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロトリデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロテトラデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロペンタデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロヘキサデシルエチルトリクロロシランまたはこれらの組み合わせが例示される。
【0022】
他の実施例において、本発明のコーティング組成物は、
a)パーフルオロヘキシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロオクチルエチルトリクロロシラン、パーフルオロデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロドデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロテトラデシルエチルトリクロロシランおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上のパーフルオロアルキルトリクロロシランと、
b)パーフルオロポリエーテルカルボン酸と、
c)少なくとも1種のフッ素化溶媒と
を含む。
【0023】
さらに他の実施例において、本発明のコーティング組成物は、
a)パーフルオロヘキシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロオクチルエチルトリクロロシラン、パーフルオロデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロドデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロテトラデシルエチルトリクロロシランおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上のパーフルオロアルキルトリクロロシランと、
b)パーフルオロポリエーテルカルボン酸と、
c)少なくとも1種のフッ素化溶媒と
から本質的になる。
【0024】
さらに他の実施例において、本発明のコーティング組成物は、
a)0.1重量%〜10重量%、好ましくは、0.1重量%〜5重量%、さらに好ましくは、0.5重量%〜2重量%のパーセンテージのパーフルオロアルキルトリクロロシランと、
b)0.1重量%〜10重量%、好ましくは、0.1重量%〜5重量%、さらに好ましくは、0.2重量%〜2重量%のパーセンテージのパーフルオロポリエーテルカルボン酸と、
c)80重量%〜99.8重量%のパーセンテージの少なくとも1種のフッ素化溶媒と
から本質的になり、
パーセンテージが全てコーティング組成物の総重量を基準としている。
【0025】
コーティング組成物は、芳香材料または顔料等の追加の成分を、必須でない成分として有することができる。一般的に知られた芳香材料を、コーティング組成物と混合すると、良い匂いとなる。TiO
2顔料等の顔料を添加すると、ビルの窓、車両のサイドウィンドウまたはリアウィンドウ等のガラス窓に色や陰影を与えることができる。
【0026】
パーフルオロアルキルトリクロロシランおよびその誘導体は、良好な撥水性をガラス表面に与えることが知られているが、製造または保管中の微量の水に敏感で、上述した米国特許第5,523,161号明細書等の先行技術に記載されているように、耐候性および耐摩耗性という耐久性に劣る。本出願人は、パーフルオロポリエーテルカルボン酸とフッ素化溶媒の組み合わせを用いることにより、本発明のコーティング組成物は、良好な撥水性および改善された耐久性を与えることを意外にも知見した。この組み合わせにより、本発明のコーティング組成物は、先行技術だと必要とされる加水分解可能なシランを必要としない。本発明のコーティング組成物は、製造が容易であり、貯蔵安定性がある。また、前述した米国特許第5,523,161号明細書に記載されたシリコン層で下塗りする等の事前処理を必要とすることなく、基材に容易に適用される。本出願人はまた、本発明のコーティング組成物で表面を処理することにより、表面の滑水性が改善されて、水滴が、処理表面を容易に滑り落ちることも知見した。改善された滑水性は、滑水角の減少として測定することができる。基材から水滴を流し落とすことができ、車両の風防等の基材の透視性を改善することから、これは重要な特性である。
【0027】
本発明はまた、基材の表面に撥水性を与える方法にも関する。本発明の方法は、基材の表面にコーティング組成物を適用して、コーティング組成物の層をその上に形成することを含み、コーティング組成物が、a)一般式Rf−(CH
2)
2−SiCl
3(式中、Rfは3〜18個のアルキル炭素原子を有するパーフルオロアルキルラジカル基である)を有する化合物から選択される少なくとも1種のパーフルオロアルキルトリクロロシランと、b)パーフルオロポリエーテルカルボン酸と、c)少なくとも1種のフッ素化溶媒とから本質的になる。
【0028】
一実施例において、本発明の方法のコーティング組成物は、一般式F(CF
2)
n(式中、nは6〜16の整数である)を有するパーフルオロアルキルラジカル基から選択されるRfを有することができる。
【0029】
他の実施例において、本発明の方法のコーティング組成物は、
a)パーフルオロヘキシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロオクチルエチルトリクロロシラン、パーフルオロデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロドデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロテトラデシルエチルトリクロロシランおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上のパーフルオロアルキルトリクロロシランと、
b)パーフルオロポリエーテルカルボン酸と、
c)少なくとも1種のフッ素化溶媒と
を含む。
【0030】
さらに他の実施例において、本発明の方法のコーティング組成物は、
a)パーフルオロヘキシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロオクチルエチルトリクロロシラン、パーフルオロデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロドデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロテトラデシルエチルトリクロロシランおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上のパーフルオロアルキルトリクロロシランと、
b)パーフルオロポリエーテルカルボン酸と、
c)少なくとも1種のフッ素化溶媒と
から本質的になる。
【0031】
さらに他の実施例において、本発明の方法のコーティング組成物は、
a)0.1重量%〜10重量%、好ましくは、0.1重量%〜5重量%、さらに好ましくは、0.5重量%〜2重量%のパーセンテージのパーフルオロアルキルトリクロロシランと、
b)0.1重量%〜10重量%、好ましくは、0.1重量%〜5重量%、さらに好ましくは、0.2重量%〜2重量%のパーセンテージのパーフルオロポリエーテルカルボン酸と、
c)80重量%〜99.8重量%のパーセンテージの少なくとも1種のフッ素化溶媒とから本質的になり、
パーセンテージが全てコーティング組成物の総重量を基準としている。
【0032】
たいていの市販のフッ素化溶媒、例えば、フッ素化炭化水素溶媒または過フッ素化有機溶媒、例えば、パーフルオロカーボンまたはこれらの組み合わせが本発明に好適である。市販のフッ素化溶媒としては、3MよりHFE−7200として入手可能なエトキシノナフルオロブタン、同じく3Mより入手可能な全フッ素化液体FC−40等のパーフルオロカーボン溶媒またはこれらの組み合わせを例示することができる。
【0033】
本発明のコーティング組成物は、スポンジで拭くことにより、基材の表面に適用することができる。少量のコーティング組成物は、コートする表面に注ぐまたはスポンジに浸すことができる。スポンジを用いて、表面のコーティング組成物を拭き取ると、その上にコーティング組成物の薄層を形成することができる。過剰量のコーティング組成物は、布片で拭き取ることができる。コートした表面は、必要であれば、数分、空気乾燥することができる。
【0034】
基材は、コーティング組成物の適用前に清浄にする、または研磨することができる。一般的に用いられる、水、洗剤、溶剤またはこれらの組み合わせを用いて、基材を清浄にすることができる。ガラス表面については、ガラス研磨化合物、例えば、酸化セリウムを用いて、表面を研磨することができる。研磨は、手で、または当業者に知られた研磨ツールを用いて行うことができる。研磨した表面は、コーティング組成物の適用前に、さらに清浄にすることができる。
【0035】
コーティング組成物はまた、高温、例えば、35℃〜100℃の範囲で、ガラス基材に適用することもできる。高温によって、コーティング組成物中のシランとガラス基材と間の接合が増大し得る。
【0036】
適切な機器、例えば、蒸発室により、コーティング組成物を基材上で蒸発させて、その上に薄層を形成することもできる。
【実施例】
【0037】
本発明を以下の実施例によりさらに定義する。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものであるが、当然のことながら、例示のためのみに与えられるものである。上記およびこれらの実施例から、当業者であれば、本発明の必須の特徴を確定することができ、その精神および範囲から逸脱することなく、本発明の様々な変更および修正を行って、様々な用途および条件に適合させることができる。
【0038】
試験手順
接触角測定
接触角は、業界で一般的に用いられている液滴法により測定する。簡単に述べると、光源の前で水滴を測定する表面に配置する。液滴の断面を見て、ゴニオメータを用いて、接触角アルファ(α)を測定する。First Ten Ångstroms,Portsmouth,VA,USA(Model:FT Å125)より入手可能な市販のゴニオメータを用いることができる。接触角αの概略図を
図1に示す。
【0039】
滑水角測定
水滴を、試験する基材の表面に、基材を水平に保ちつつ落とす。次に、基材を徐々に傾け、水滴が滑りはじめるときの水平面と基材と間の角度(滑水角)を測定する。滑水角が小さければ小さいほど、水滴は基材の表面から滑り落ち易い。
【0040】
摩耗試験
ガラス研磨化合物を、処理済み撥水表面に適用する。スポンジを用いて、円形または相互横断パターンで、処理表面を繰り返し拭く。予め決めた重量を、研磨中、スポンジの上部に加えることができる。摩耗試験は、手で、または装置を用いて行うことができる。日本の株式会社安田精機製作所より入手可能な市販の装置(型番:No.552、ガードナー式ウォッシャビリティテスター)を用いることができる。
【0041】
風防処理
標準車両ガラス風防を用いた。風防を、スポンジおよび日本、大阪府中央区のソフト99コーポレーションより入手可能なガラコ倍速コンパウンドを用いて研磨した。
【0042】
研磨後、ガラス風防を水で清浄にし、研磨したガラス表面を上向きにして、水平位置で配置した。約1mlのコーティング組成物を、研磨表面に適用した。スポンジを用いて、所望の領域内の表面を溶液で拭き、コートした。約5〜10分後、コートした表面を布片で拭き、過剰量のコーティング組成物を除去した。
【0043】
風防表面を2つの領域に分割した。第1の領域は、比較例のコーティング組成物でコートし、第2の領域は、本発明のコーティング組成物でコートした。両領域を、上述した同じプロセスで処理した。
【0044】
表面処理後、初期接触角を測定した。
【0045】
コートした領域に「試験手順」で記載した摩耗試験を行った。スポンジに加えられた重量は470グラムであった。摩耗試験を相互横断パターンで行った。
【0046】
所定数のストローク後、水接触角を測定し、記録した。
【0047】
比較例のコーティング組成物
比較例1および比較例2は、パーフルオロポリエーテルカルボン酸を、他の比較例コーティング組成物として用いずに、パーフルオロアルキルトリクロロシランの混合物を含むコーティング組成物であった。
【0048】
比較例3および4は、パーフルオロポリエーテルカルボン酸は含むが、上述のパーフルオロアルキルトリクロロシランの混合物のないコーティング組成物であった。
【0049】
比較例1〜4の処方を表1に示す。
【0050】
比較例5は、Soft99より入手可能な、Ultra Glacoという商品名で販売されている市販の製品であった。
【0051】
実施例:コーティング組成物
DuPont,Wilmington DE,USAよりMPD−7653として入手可能なパーフルオロアルキルトリクロロシランの混合物を用いて、本発明のコーティング組成物を処方した。混合物MPD−7653は、メーカーにより指定されたとおり、パーフルオロヘキシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロオクチルエチルトリクロロシラン、パーフルオロデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロドデシルエチルトリクロロシランおよびパーフルオロテトラデシルエチルトリクロロシランを含有している。
【0052】
比較例のコーティング組成物および実施例1〜6を、表1に従った成分を混合することにより調製した。
【0053】
【表1】
【0054】
コーティング特性
比較例のコーティング組成物および実施例1〜6のコーティング組成物を用いて、「風防処理」に記載したガラス風防の処理を行った。接触角および滑水角を測定した。結果を表2に示す。
【0055】
比較例1〜5および実施例1〜6の初期接触角は、適用直後と同様の良好な撥水性を示した。
【0056】
比較例1および2の滑水角は、適用直後、45°を超えていた。実施例1〜6の滑水角は、適用直後、約30°であり、改善された滑水性を示していた。
【0057】
風防の水滴画像を
図2に示す。(A)および(B)は、比較例5のコーティング組成物および実施例2の両方についての摩耗試験前の処理後の風防に形成された水滴を示している。(C)は、良好な撥水性を示す、600摩耗ストローク後の実施例2でコートされた風防に形成された水滴を示している。(D)は、乏しい撥水性を示す、600摩耗ストローク後の比較例5でコートされた風防に広がった水を示している。
【0058】
【表2】
次に、本発明の好ましい態様を示す。
1. a)一般式Rf−(CH2)2−SiCl3(式中、Rfは3〜18個のアルキル炭素原子を有するパーフルオロアルキルラジカル基である)を有する化合物から選択される少なくとも1種のパーフルオロアルキルトリクロロシランと、
b)パーフルオロポリエーテルカルボン酸と、
c)少なくとも1種のフッ素化溶媒と
から本質的になる、基材をコーティングするためのコーティング組成物。
2. a)0.1重量%〜10重量%のパーセンテージのパーフルオロアルキルトリクロロシランと、
b)0.1重量%〜10重量%のパーセンテージのパーフルオロポリエーテルカルボン酸と、
c)80重量%〜99.8重量%のパーセンテージの少なくとも1種のフッ素化溶媒とから本質的になり、
パーセンテージが全て前記コーティング組成物の総重量を基準としている上記1に記載のコーティング組成物。
3. Rfが、一般式F(CF2)n(式中、nは6〜16の整数である)を有するパーフルオロアルキルラジカル基から選択される上記1に記載のコーティング組成物。
4. 前記パーフルオロアルキルトリクロロシランが、パーフルオロヘキシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロオクチルエチルトリクロロシラン、パーフルオロデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロドデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロテトラデシルエチルトリクロロシランおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される上記3に記載のコーティング組成物。
5. 前記基材が、ガラス基材である上記1に記載のコーティング組成物。
6. 前記フッ素化溶剤が、フッ素化炭化水素溶剤、パーフルオロカーボン溶媒またはこれらの組み合わせから選択される上記1に記載のコーティング組成物。
7. 上記1、2、3、4、5または6に記載のコーティング組成物でコートされた基材。
8. 基材の表面に撥水性を与える方法であって、基材の表面にコーティング組成物を適用して、前記コーティング組成物の層をその上に形成することを含み、前記コーティング組成物が、
a)一般式Rf−(CH2)2−SiCl3(式中、Rfは3〜18個のアルキル炭素原子を有するパーフルオロアルキルラジカル基である)を有する化合物から選択される少なくとも1種のパーフルオロアルキルトリクロロシランと、
b)パーフルオロポリエーテルカルボン酸と、
c)少なくとも1種のフッ素化溶媒と
から本質的になる方法。
9. 前記基材が、ガラスである上記8に記載の方法。
10. 前記コーティング組成物が、
a)0.1重量%〜10重量%のパーセンテージのパーフルオロアルキルトリクロロシランと、
b)0.1重量%〜10重量%のパーセンテージのパーフルオロポリエーテルカルボン酸と、
c)80重量%〜99.8重量%のパーセンテージの少なくとも1種のフッ素化溶媒とから本質的になり、
パーセンテージが全て前記コーティング組成物の総重量を基準としている上記8に記載の方法。
11. Rfが、一般式F(CF2)n(式中、nは6〜16の整数である)を有するパーフルオロアルキルラジカル基から選択される上記8に記載の方法。
12. 前記パーフルオロアルキルトリクロロシランが、パーフルオロヘキシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロオクチルエチルトリクロロシラン、パーフルオロデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロドデシルエチルトリクロロシラン、パーフルオロテトラデシルエチルトリクロロシランおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される上記11に記載の方法。
13. 前記コーティング組成物を前記表面に適用する前に、前記表面を研磨することを含む上記8に記載の方法。
14. 上記8、9、10、11、12または13に記載の方法によりコートされた基材。