(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5683282
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】水封式水中電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/132 20060101AFI20150219BHJP
F16C 17/04 20060101ALI20150219BHJP
F16C 33/16 20060101ALI20150219BHJP
F16C 37/00 20060101ALI20150219BHJP
H02K 5/167 20060101ALI20150219BHJP
【FI】
H02K5/132
F16C17/04 Z
F16C33/16
F16C37/00 A
H02K5/167 B
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-1603(P2011-1603)
(22)【出願日】2011年1月7日
(65)【公開番号】特開2012-147514(P2012-147514A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2013年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100100310
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 学
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】長島 佑介
(72)【発明者】
【氏名】瀬立 良美
(72)【発明者】
【氏名】安部 健
【審査官】
今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−034859(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/132
F16C 17/04
F16C 33/16
F16C 37/00
H02K 5/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水が封入された空間内に、回転軸に発生するスラスト荷重を受ける軸受部を有する水封式水中電動機において、
前記軸受部が、
前記回転軸の端部と接続され、該回転軸の回転に伴って回転する第1フレームと、
前記第1フレームを挟んで前記回転軸とは反対側に固定して設けられた第1摺動部材と、
該第1摺動部材と対向して配置され、該第1摺動部材と共に摺動部を形成する第2摺動部材が設けられた第2フレームとを有するものであり、
前記第1フレームが、内部に封入された水を前記第1フレームの外周側に導く羽根部材を有するものであり、
前記羽根部材で導かれた水が、前記摺動部へと供給される水封式水中電動機
【請求項2】
請求項1記載の水封式水中電動機において、前記羽根部材は、複数枚のフィンであることを特徴とする水封式水中電動機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水封式水中電動機において、前記羽根部材は前記回転軸の回転中心から放射状に延伸するフィンであることを特徴とする水封式水中電動機。
【請求項4】
請求項2又は3記載の水封式水中電動機において、前記フィンの外周端部は、前記第1フレームの外周から突出していることを特徴とする水封式水中電動機。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の水封式水中電動機において、
前記第2フレームは、該第2フレームの外周側の空間と、前記摺動部の内周側の空間との間を連通する形状であることを特徴とする水封式水中電動機。
【請求項6】
請求項5記載の水封式水中電動機において、
前記第2摺動部材及び前記第2フレームの前記回転軸の中心軸から最遠部までの距離が、前記フィンの前記中心軸から外周端部までの距離よりも小さく、
前記第2摺動部材及び前記第2フレームが、前記第1フレームの下方投影面内に収められた外径を有することを特徴とする水封式水中電動機。
【請求項7】
水が封入された空間内に、回転軸に発生するスラスト荷重を受ける軸受部を有する水封式水中電動機において、
前記軸受部が、
前記回転軸の端部と接続され、該回転軸の回転に伴って回転する第1フレームと、
前記第1フレームを挟んで前記回転軸とは反対側に固定して設けられた第1摺動部材と、
該第1摺動部材と対向して配置され、該第1摺動部材と共に摺動部を形成する第2摺動部材が設けられた第2フレームとを有するものであり、
前記第1フレームが、内部に封入された水を前記第1フレームの外周側に導く羽根部材を有するものであり、
前記第1フレームの回転に伴って下方へ水流を発生させて、前記摺動部へ水を供給することを特徴とする水封式水中電動機。
【請求項8】
請求項7記載の水封式水中電動機において、前記第1フレームの回転に伴って前記摺動部から遠心方向に水を排出するとともに、前記水流により下方へ導かれた水を、前記摺動部の内径側から前記摺動部へと供給することを特徴とする水封式水中電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水封式水中電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来水封式水中電動機に有する軸受の摺動面の潤滑性を必要とするスラスト軸受は、潤滑油を使用せず水を潤滑剤として使用するものである。潤滑油を考慮した場合において、特許文献1記載のように、補給される潤滑油を固定パッドと摺動部材との間に動圧を発生させ、潤滑油を強制潤滑させて油膜を形成するようにしたものも示されている。
【0003】
また特許文献2記載のように両面に互に反対方向のスパイラル溝を設け、片面もしくは両面の中心部に凹部を設けたセラミックス円板と、片面もしくは両面にセラミックス円板の凹部に対向する凹部を有する平板の円板とをセラミックス円板と平板の円板との両凹部にわたって小球を収容して合せ、且つセラミックス円板と平板の円板、小球とセラミックス円板及び平板の円板間に高粘性潤滑剤を介在したスラスト軸受とした例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−271106号公報
【特許文献2】特開昭62−20912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1、2は、スラスト軸受の摺動部分への潤滑油の供給や、潤滑油の消費に関する構成が開示されている。水封式水中電動機においても、摺動部分には潤滑が必要であるが、特許文献1、2はいずれも潤滑油の使用を前提としており、水潤滑による例を考慮したものではなかった。
【0006】
水潤滑によって摺動部分を潤滑する水封式水中電動機にあっては、水自体が油等に比べて液の粘度が低く、摺動面の潤滑膜が極端に薄い為、水膜による潤滑剤部分と軸受材料の固体接触部が混在した境界潤滑となっている。そのため水中軸受の材料としては、カーボンなどの自己潤滑性の優れたものが一般に用いられ高い摺動性が求められている。
【0007】
スラスト軸受は水封式水中電動機の中でも信頼性が必要となる機械要素部品であり、構造は水潤滑方式が用いられている。上記の如く水潤滑は、油等に比べ液の粘度が低く、摺動面の潤滑膜が極端に薄い為、片側が回転しているスラスト軸受は摺動部の内部水が常にスラスト軸受に流下されている必要がある。したがって、軸受周囲において水の潤滑性を確保することが必要である。これを実現する方法として、例えば、軸受摺動部に強制的な流動性を与え、水の循環効率を上げることが有効である。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、軸受周囲において水の潤滑性を確保して長寿命化を図った水封式水中電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の構成の一例は、
水が封入された空間内に、回転軸に発生するスラスト荷重を受け
る軸受
部を有する水封式水中電動機において、
前記軸受部が、前記回転軸の端部と接続され、該回転軸の回転に伴って回転する第1フレームと、前記
第1フレームを挟んで前記回転軸とは反対側に固定して設けられ
た第1摺動部材と、
該第1摺動部材と対向して配置され、該第1摺動部材と共に摺動部を形成する第2摺動部材が設けられた第2フレームとを有するものであり、前記
第1フレームが、内部に封入され
た水を前記
第1フレームの外周側に導く羽根部材を
有するものであり、前記羽根部材で導かれた水が
、前記摺動部へと供給されるものである。
【0010】
上記の本発明の構成において、より好適な具体的態様は下記の通りである。
(1)前記羽根部材は、複数枚のフィンであること。
(2)前記羽根部材は前記回転軸の回転中心から放射状に延伸するフィンであること。
(3)前記フィンの外周端部は、前記スラスト軸受の外周から突出していること。
(4)前記
第2摺動部材を前記摺動部の反対側から支持する
第2フレームが、外周側の空間と前記摺動部の内周側の空間との間を連通する形状であること。
(5)前記
第2摺動部材及び前記
第2フレームの前記回転軸の中心軸から最遠部までの距離が、前記フィンの前記中心軸から外周端部までの距離よりも小さく、前記
第2摺動部材及び前記
第2フレームが、前記
第1フレームの下方投影面内に収められたこと。
【0011】
本発明の他の態様の水封式水中電動機は、
水が封入された空間内に、回転軸に発生するスラスト荷重を受け
る軸受
部を有する水封式水中電動機において、
前記軸受部が、前記回転軸の端部と接続され、該回転軸の回転に伴って回転する第1フレームと、前記
第1フレームを挟んで前記回転軸とは反対側に固定して設けられ
た第1摺動部材と、
該第1摺動部材と対向して配置され、該第1摺動部材と共に摺動部を形成する第2摺動部材が設けられた第2フレームとを有するものであり、前記
第1フレームが、内部に封入され
た水を前記
第1フレームの外周側に導く羽根部材を
有するものであり、前記
第1フレームの回転
に伴って下方へ水流を発生させて
、前記摺動部へ水を供給することである。
【0012】
この態様においては、前記回転軸の回転に伴って前記摺動部から遠心方向に水を排出するとともに、前記水流により下方へ導かれた水を内径側から前記摺動部へと供給することが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軸受周囲において水の潤滑性を確保し、長寿命化を図った水封式水中電動機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は本発明の一実施例による水封式水中電動機の断面構造図である。
【
図3】
図3はスラスト軸受付近の水の流れを示す図である
【
図5】
図5はメタルフレームの外観図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施形態の水封式水中電動機は、内部に封入されている水に強制的な流体を発生させ、摺動部に位置するスラスト軸受フレームに羽根形状のフィンを設けるものであり、これによって水の潤滑性を確保する。すなわち、スラスト軸受フレームにフィンを設けることで水封式水中電動機内部の軸受摺動性を確保し、軸受全体に水が流下することにより、スラスト軸受部に冷却効果を与え、軸受の長期寿命化を実現することができる。
【0016】
具体的構成は後述するが、スラスト軸受を挟んで回転軸とは反対側に設けられるパッドメタルとスラスト軸受との摺動部における潤滑を確保するための構造である。パッドメタルは固定されているため、回転軸とともに回転するスラスト軸受との間で摺動部が形成される。この摺動部に充填された水を供給することにより、潤滑性を高めるものである。
【0017】
以下、図面を用いながら、本実施形態の具体例を説明する。
【0018】
図1〜5は、本発明による水封式水中電動機の一実施形態を示す図である。
【0019】
図1に本発明の一実施例の断面構造図を、
図2にスラスト軸受付近の詳細図をそれぞれ示す。
図1に示すように、回転子2を囲んで固定子が配置され、固定子コイル1に流れる電流で生ずる回転磁界によって回転子2が回転する。
図1において、固定子コイル1をステンレス外被フレーム3と内筒キャン(保護円筒)4によって缶詰状に密封し、コイルが直接水に接しない構造とする。上記でも説明した様に、モータ内にはあらかじめ水が封入され、ポンプを運転することにより発生するスラスト荷重を受けるためのスラスト軸受にはすべり軸受を採用し、モータ内の水で摺動部分を潤滑する方式を採用している。本実施の形態ではこのスラスト軸受フレーム5に羽根部材としてのフィン13が設けられている。
【0020】
電動機の下方には、下部エンドブラケット9とエンドカバー10とを備えている。下部エンドブラケット9は、電動機の回転軸の下方端部において、回転軸とは固定されずに周方向に支持している。エンドカバー10は、下部エンドブラケット9を下方から支持し、後述するエンドプレート11が載置される構成となっている。本実施形態では、回転軸をラジアル側から支持する軸受を固定するための下部エンドブラケット9と、回転軸をスラスト側から支持するスラスト軸受を固定するためのエンドカバー10とがそれぞれ設けられており、下部エンドブラケット9とエンドカバー10とは別体の分割された構成としている。
【0021】
図1に示す通り、最下部に設置されるエンドカバー10において、電動機の回転軸の延長線上には、一部が球面加工されたエンドプレート11が固定されている。
図2に示す通り、エンドプレート11は、図中の上面が球面加工されており、この球面加工部に対向する部材との接触が点接触となることが意図されている。
【0022】
而して、エンドプレート11の球面加工部に、平面加工された金属製のメタルフレーム8が載置され、エンドプレート11とメタルフレーム8とは互いに点接触となるように当接した構成としている。メタルフレーム8の具体的形状については後述する。また、メタルフレーム8には扇形のパッドメタル7が点接触で載置される。
【0023】
このように、最下部のエンドカバー10に固定されるエンドプレート11、エンドプレート11に点接触するメタルフレーム8、メタルフレーム8と点接触するパッドメタル7とを備えることで、アンバランス荷重に対して追従性を持たせることができる。
【0024】
一方、回転子2に固定される電動機回転軸側には、軸端部を支持するスラスト軸受を有し、このスラスト軸受の一部をなすスラスト軸受フレーム5の下部には円板状でカーボン素材のカーボンディスク6が取り付けられている。したがって、スラスト軸受フレーム5のカーボン側表面、すなわち、カーボンディスク6が、パッドメタル7と対向する配置となる。
【0025】
上述のようにスラスト軸受フレーム5及びこれに取り付けられるカーボンディスク6は、回転子2の回転に伴って回転する一方で、パッドメタル7以下は固定されているため、互いに対向するカーボンディスク6表面とパッドメタル7の上表面が摺動面となる。スラスト軸受が回転子2に固定された状態では、互いに対向するカーボンディスク6の表面とパッドメタル7の表面との間で水膜を形成する。
【0026】
このため、電動機の運転時にはスラスト軸受フレーム5及びカーボンディスク6が回転することで、カーボンディスク6の表面(パッドメタル7との対向面)がパッドメタル7と境界潤滑によって摺動を保つ構造となる。このとき、電動機の高速回転の影響を受け、接触面の水膜は回転体の遠心方向に水流を発生させる。
【0027】
図に示すように、本実施形態では、スラスト軸受フレーム5の回転子2側にフィン13が設けられている。このフィン13は摺動部の近傍における水循環を目的として設けられたものであり、後述するように、水潤滑を促す作用が意図されている。
【0028】
具体的には、電動機の下部方向に潤滑材となる水の流量を強制的に増加させる構造にする。電動機内部の水はフィン13の回転を受け、電動機最下部へ水流が発生し、スラスト軸受の摺動面より遠心方向に作用している水流をフィン13から下方向に誘導する。これにより、従来のスラスト軸受の構造に対し、メタルフレーム8の隙間を経由して摺動面となるパッドメタル7とカーボンディスク6とが対向する部分へ水潤滑に必要とする水が増加して随時供給される構造となる。(詳細後述)
当該構造の二次的な効果として、水封式水中電動機内部の水がスラスト軸受周囲をより効率的に流下して循環する為、スラスト軸受の温度上昇を抑制する効果が得られる。カーボン材質のカーボンディスク6は高温下において磨耗、劣化の原因となる為、スラスト軸受の温度上昇抑制はカーボンディスク6の長寿命化に繋がる。
【0029】
図3は
図2に示したスラスト軸受付近内部水の流れを示す図である。内部水が循環している流路が示されていることがわかる。回転子2に固定されているスラスト軸受は回転子と共に回転することで、パッドメタル7と摺動する構造となる。電動機内部に存在する水の流れを説明すると、運転時において摺動面から遠心方向に水流Q1が発生する。したがって、摺動面中心側は水圧低下の状態となる。ここで生ずる圧力差が本実施形態における水の循環の一因となっている。すなわち、摺動面中心側の水圧低下が、摺動部の下方向から水を導き、摺動面へ水を供給していく経路を構成することとなり、水が循環する仕組みとなっている。
【0030】
既述のように、水封式水中電動機運転時に回転子2側に取付けたスラスト軸受フレーム5にはフィン13が設けられている。回転子2が回転することによって、電動機最下部の方向に水流Q2を強制的に発生させる。フィン13が水流を起こすことで、電動機下部に水が流動し水流Q2のように電動機下部から摺動部の水圧低下の位置までメタルフレーム8の隙間から摺動面中心へと水が強制的に供給される。このとき摺動部への流量が増加することで遠心方向に作用する流量が増加し流路断面積が大きくなる。つまり摺動面の膜厚が大きくなり摺動性の効果が得られる。
【0031】
なお、本実施形態の水封式水中電動機は、電動機内に水が充填されており、外部からの水の供給によるのではなく、内部水の循環によって水流Q1、Q2が生ずる。したがって、この水流Q1、Q2以外にも水流は生ずるものとなっている。例えば、カーボンディスク6とパッドメタル7との摺動面の外周側の空間、すなわち、水流Q1と水流Q2とが交差する部分では、水流Q1の一部はスラスト軸受フレーム5が存在する上方側へと戻る流れも発生しており、一種の攪拌状態となっている。
図3では摺動部の水膜形成に支配的となる流れを矢印を用いて図示したものであり、他の水流は図示を省略している。
【0032】
当該効果を得るための構成及び配置についてさらに説明を加える。
図1〜3に示すように、回転子2より下方の電動機下部には、回転子2の回転に伴って回転するスラスト軸受(スラスト軸受フレーム5、カーボンディスク6を含む)が設けられており、スラスト軸受との間で摺動面を形成するパッドメタル7を介して、さらに下方に金属メタルフレーム8が位置している。この金属メタルフレーム8は下面が平面加工されており、一部が球面加工されたエンドプレート11と点接触する構成となっている。また、エンドプレート11は電動機の筐体の一部を構成するエンドカバーに固定されている。
【0033】
このような構成及び配置において、運転時に
図3に示すQ1、Q2の水流を生じせしめるために、スラスト軸受フレーム5に設けられるフィン13は、その外周端部が断面円形のスラスト軸受フレーム5の円周よりも外側に突出するものとしている。この構成によって、フィン13が設けられるスラスト軸受フレーム5の上面から電動機下部へと水を導いて、水流Q2を生じやすくしている。
【0034】
スラスト軸受のフィン13は内部において、水封式水中電動機中心軸からスタッドボルト12までの距離bに対し、水封式水中電動機中心軸からフィン13先端部までの距離aとしたとき、スラスト軸受フレーム5に設けたフィン13とスタッドボルトが接触する為、スラスト軸受フレーム5の幅はa<bでなければならない。またスラスト軸受フレーム5のフィン13高さ寸法cにおいては、
図2に示すように、スラスト軸受フレーム5のフィン13上部位置から摺動面までの距離dとしたとき、フィン13の高さはc<dであれば構わない。
【0035】
また、スラスト軸受フレーム5より下方に位置する各部材(カーボンディスク6、パッドメタル7、金属メタルフレーム8、エンドプレート11)の中心軸から最遠部までの距離は、少なくともフィン13の外周端部までの距離aよりも小さいものを使用することが好適であり、大きくともスラスト軸受フレーム5の円周部分の下方投影面下に収められることが望ましい。特に、カーボンディスク6、パッドメタル7及び金属メタルフレーム8の外周側の空間、すなわち、これら各部材とこれら各部材を覆うエンドカバー11との間の空間、は水の循環経路となるため、これら各部材が水流の妨げとならないような構成・配置としている。
【0036】
図4にスラスト軸受の詳細図を示す。
図4左図は上面図であり、
図4右図の上半分は側面図、下半分は中央の断面図である。スラスト軸受はカーボン材質のカーボンディスク6、をスラスト軸受フレーム5に取付け回転子軸端に嵌込み構成される。既に述べたように、このスラスト軸受フレーム5に強制的に流体を発生させる為のフィン13を設けた構造にする。
図4はスラスト軸受フレーム5に4枚のフィン13を設けた構造となる。スラスト軸受フレーム5のフィン13は1枚でも構わないが、複数枚にしても構わない。図に示すようにフィン13の外周端部がスラスト軸受フレーム5の外周から突出した構成が好適である。
【0037】
図5にメタルフレーム8の形状のパターン一例を示す。既に述べたように、メタルフレーム8は、パッドメタル7を下側から(パッドメタル7の上側がカーボンディスク6との摺動部となるため、この摺動部とは反対側から)支持するものであり、パッドメタル7を固定させる取付け穴を設けた部分を突起させた形状となり、メタルフレーム8とパッドメタル7およびカーボンディスク6との間に隙間を有する構造となる。上記
図3で図示されたスラスト軸受フレームフィン13より発生する水流Q2はメタルフレーム8下部まで流動し、摺動部に向かって水が流動する。このとき摺動部方向に流れる水をメタルフレーム8が流動を妨げない構造で無ければならない。
【0038】
具体的には、フィン13による水流Q2の経路となる部分の下流側(金属メタルフレーム8の外周側)と、カーボンディスク6とパッドフレーム7との摺動面中心の内周側との間が連通していなければならない。例えば、
図5に示すように、3つの突起が立設し、これら突起の間が空間を構成する金属メタルフレーム8であれば、これらの突起間が流路となり、水を摺動部に供給することができる(
図3において、摺動部へと向かう上向きの矢印参照)。
【0039】
上述の特許文献1及び特許文献2は、摺動面の表面処理、加工処理が難しく完成までの時間やコストに課題がある。本実施形態は下方向に水を流動させる構造のフィン13をスラスト軸受フレーム5に設けることで、潤滑している水膜量を増加させ摺動性を向上させることが可能であり、製作時間とコストに関しても容易で表面加工の必要性が無いことが特徴である。
【0040】
なお、本実施形態では、特にスラスト軸受摺動性向上に期待できる水封式水中電動機の構成を実施の形態例として示したが、他の製品でも摺動性向上に必要がある電動機については同様に適用し、同様な効果が得られるものである。
【0041】
スラスト軸受の冷却効果についても、他の製品と同様な要求のある電動機については同様に適用し、同様な効果を得られることは言うまでもない。
【0042】
また、本実施形態は水封式水中電動機を対象とし、潤滑材として水を想定した例を説明しているが、同様の構成を用いることによって同様の循環作用が生ずるものであれば、水に限られず、例えば、流動性の高い潤滑油等も採用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…固定子、2…回転子、3…ステンレス外被フレーム、4…内筒キャン(保護円筒)、5…スラスト軸受フレーム、6…カーボンディスク、7…パッドメタル、8…メタルフレーム、9…エンドブラケット、10…エンドカバー、11…エンドプレート、12…スタッドボルト、13…スラスト軸受フレームフィン、Q1…摺動面に発生する水の流体方向、Q2…フィンから摺動部中心に発生する水の流体方向、a…電動機中心軸からフィン先端部までの距離、b…電動機中心軸からスタッドボルトまでの距離、c…スラスト軸受フレームのフィン高さ、d…スラスト軸受フレームフィン上部位置から摺動面までの距離。