(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フェライトは、前記導波管の内壁面と該フェライトとの間に前記熱伝導部材を配置し、該導波管に真空引きを施しながら加熱処理を行うことにより、該導波管の内壁面に熱伝導部材を介して接着されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の導波管型非可逆素子。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、導波管回路に用いられる導波管型非可逆素子であるフェライト移相器が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載されたフェライト移相器100は、
図4に示すように、上面111a、下面111b及び両側の側面111cで形成される略角筒状の矩形導波管111を有し、その長手方向両端には他の矩形導波管と連結する際の連結部分となる鍔状のフランジ111dが形成されている。また、矩形導波管111の外周の略中央には電流が流されるコイル112が略螺旋状に巻回されている。また、矩形導波管111の対向する広面にそれぞれ相当する上面111a及び下面111bの各内壁面には、フェライト113が設けられている。なお、上面111a側のフェライト113と下面11b側のフェライト113とは、対向するようにして前記内壁面に配設されている。
【0004】
上記のフェライト移相器100により導波管回路を構成する場合には、矩形導波管111の前後に他の矩形導波管を配置し、その両端のフランジ111d・111dを介して他の矩形導波管と連結する。そして、前記導波管回路を使用する際には、前記導波管回路により矩形導波管111内に高周波を伝搬すると共に、矩形導波管111の外周に巻回されているコイル112に電流を流して磁界を発生させ、或いはコイル112に流れる電流を変化させて磁界を変化させることにより、フェライト113の磁気特性を変化させて高周波の導波管内波長を変化させ、伝搬する高周波の位相を変化させるようになっている。
【0005】
ところで、大電力(例えば、ピーク電力が45MW程度の高周波)を伝送する導波管回路(粒子加速器等の導波管回路)に用いられる導波管型非可逆素子においては、導波管内に、六フッ化硫黄ガス(SF
6)を封入し、耐電力性を高め放電を抑えている。
また、前記導波管型非可逆素子は、前記大電力を伝送する場合に、フェライトの電力損失により発生する高熱により、フェライトの磁気特性が変動したり、フェライトの熱歪みによる破損が生じたりするという課題を有している。この課題を解消させる手法として、導波管内の内壁面とフェライトの接合面との間に熱伝導グリースを塗布して熱抵抗を下げ、フェライトの冷却効果を高めることが行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した大電力を伝送する導波管回路に用いられる導波管型非可逆素子は、以下に示す技術的課題を有している。
具体的には、六フッ化硫黄ガス(SF
6)は、地球温暖化係数が二酸化炭素(C0
2)の「23900倍」もある地球温暖化防止排出抑制対象ガスであり、その使用量を削減することが社会的な課題になっている。そのため、大電力を伝送する導波管回路に用いられる導波管型非可逆素子においても、導波管内に、六フッ化硫黄ガス(SF
6)が封入されていないものの開発が求められているが、現在のところ、六フッ化硫黄ガス(SF
6)を封入せずに耐電力性を高めた実用に耐える導波管型非可逆素子の構成は知られていない。
【0008】
なお、導波管型非可逆素子の導波管内を超高真空状態(10
-6〜10
-10Pa)にすることで、耐電力性を高めることも考えられるが、現状において、導波管内を超高真空状態にした導波管型非可逆素子の例はない。これは、超高真空状態のなかでフェライトを使用した場合、フェライトからのアウトガスにより、超高真空状態を維持できないと懸念されていることによる。また、超高真空中においてフェライトを効果的に冷却する手段が知られていないことによる。例えば、上述した熱伝導グリースは、超高真空中下でアウトガスが多く発生するため、超高真空中下における冷却手段として用いることはできない。
【0009】
本発明は、上記技術的課題に鑑みてなされたものであり、六フッ化硫黄ガス(SF
6)を使用することなく、大電力を伝送する導波管回路に用いることができる導波管型非可逆素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術的課題を解決するためになされた本発明は、電力を伝送する導波管回路に用いられる導波管型非可逆素子であって、両端が貫通した中空筒状の導波管と、
前記導波管の内壁面
に接着されたフェライトと、前記導波管の外部であって且つ前記フェライトを挟む位置に対向して配置され該導波管の内部に強磁場を発生させる一対のマグネットとを備え、前記導波管は、その内部
を超高真空状態に
して耐電力性が高められており、前記フェライトにガーネット系フェライトが用いられ、前記超高真空状態が維持されるようになっていることを特徴としている。
また、
電力を伝送する導波管回路に用いられる導波管型非可逆素子であって、両端が貫通した中空筒状の導波管と、前記導波管の内壁面に接着されたフェライトと、前記導波管の外部であって且つ前記フェライトを挟む位置に対向して配置され該導波管の内部に強磁場を発生させる一対のマグネットとを備え、前記導波管は、その内部
を超高真空状態に
して耐電力性が高められており、前記導波管の内壁面と前記フェライトとの間に金属系の熱伝導部材が配置され、前記フェライトにガーネット系フェライトが用いられ、前記超高真空状態が維持されるようになっており、前記フェライトで発生した熱が前記熱伝導部材を介して前記導波管に伝熱して放熱されるようになっていることを特徴としている。
【0011】
このように、本発明の導波管型非可逆素子は、導波管の内部(管内)が超高真空状態になっているため高い耐電力性が得られる。また、本発明では、超高真空中におけるアウトガスの発生量が微少である金属系の熱伝導部材により、導波管にフェライトを接着しているため、超高真空状態を維持しながらフェライトを効果的に冷却することができる。その結果、本発明の導波管型非可逆素子は、大電力(例えば、ピーク電力が45MW程度の高周波)を伝送する導波管回路に用いることができる。すなわち、本発明によれば、六フッ化硫黄ガス(SF
6)を使用することなく、大電力を伝送する導波管回路に用いることができる、耐電力性の高い導波管型非可逆素子を提供することができる。
【0012】
なお、上記のように、フェライトが取り付けられた導波管内を超高真空状態にする構成を採用したのは、本願の発明者らが、超高真空状態にした導波管型非可逆素子において、フェライトを使用できることを見出したためである。具体的には、本願の発明者らが、六フッ化硫黄ガス(SF
6)を封入した導波管型非可逆素子で用いられるガーネット系フェライトの超高真空状態におけるガス放出量を測定したところ、その放出量が、真空仕様の導波管の素材として一般的に用いられるステンレス鋼(SUS304)の超高真空状態におけるガス放出量の34倍程度であり、超高真空中においてフェライトを使用しても問題がないことを見出したためである。
【0013】
また、前記熱伝導部材は、加熱により軟化する金属であることが望ましい。なお、前記金属には、例えば、真空ハンダ、鉛、錫、インジウム等を用いることができる。
この構成により、導波管の内壁面とフェライトとの間に熱伝導部材を配置してフェライトを押さえながら導波管を加熱して当該熱伝導部材を融解させることにより、導波管の内壁面とフェライトとの間に熱伝導部材を隙間無く充満させ、熱伝導部材の熱伝導性を向上させることができる。
【0014】
また、前記フェライトは、複数の板状フェライト片が並設され構成されていることが望ましい。
このように、フェライトを複数の板状フェライト片により構成することで、フェライトが1枚の板材で構成されている場合に比べ、熱歪みが軽減され、その結果、フェライトの破損を防ぐことができる。
【0015】
また、前記フェライトは、前記導波管の内壁面と該フェライトとの間に前記熱伝導部材を配置し、該導波管に真空引きを施しながら加熱処理を行うことにより、該導波管の内壁面に熱伝導部材を介して接着されていることが望ましい。
上記のように構成することにより、熱伝導部材の脱泡、脱ガスを促し、融解した熱伝導部材の隙間への浸透性や、導波管とフェライトとの接触性を高めることができる。
【0016】
また、前記フェライトの表面には、TiNコーティングが施されていることが望ましい。
このように、二次電子放出係数が低く、化学的に安定なTiN(窒化チタン)をフェライトの表面に真空蒸着法等によりコーティングすることにより、フェライトの表面からの二次電子の放出を抑え、マルチパクタリングの発生を抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、六フッ化硫黄ガス(SF
6)を使用することなく、大電力を伝送する導波管回路に用いることができる導波管型非可逆素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の導波管型非可逆素子について
図1及び
図2に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態の導波管型非可逆素子である単向管の断面を示した模式図である。また、
図2は、
図1に示す単向管の導波管とフェライトとの接続構造を示した概念図である。なお、本実地形態は、導波管型非可逆素子が、大電力(例えば、ピーク電力が45MW程度の高周波)を伝送する導波管回路を構成する単向管に適用された場合を例にしている。
【0020】
先ず、本実施形態の単向管Wの構造を説明する。
図1に示すように、本実施形態の単向管(導波管型非可逆素子)Wは、両端が貫通した中空筒状の導波管10と、導波管10の内壁面(内筒面)に、金属系の熱伝導部材である真空ハンダ40(
図2参照)を介して接着されたフェライト20と、導波管10の外部であって且つフェライト20を挟む位置に対向して配置された一対のマグネット30a、30bとを備えている。そして、一対のマグネット30a、30bにより、導波管10の内部(管内)に強磁場が発生するようになっている。また、導波管10の上面10aには、冷却水を流す水管60が取り付けられ、フェライト20を冷却するようになっている。なお、本実施形態の説明では、金属系の熱伝導部材として、真空ハンダ40を示しているが、特にこれに限定されるものではない。金属系の熱伝導部材は、加熱により軟化する金属であればよく、真空ハンダ40の代わりに、例えば、鉛、錫、インジウム等を用いることができる。以下、単向管Wの各構成を具体的に説明していく。
【0021】
導波管10は、上面10a、下面10b及び両側の側面10cで形成された中空の略角筒状になされており、その長手方向両端に、他の導波管と連結する際の連結部分となる鍔状のフランジ10dが形成されている。また、導波管10は、その内部が超高真空状態(10
-6〜10
-10Pa)になっており、これにより耐電力性を高め、大電力の高周波が印可されても使用できるようになっている。
【0022】
このように、導波管10の管内を超高真空状態にする構成を採用したのは、本願の発明者らが、超高真空状態においてフェライト20を使用できることを見出したことによる。すなわち、本願の発明者らが、六フッ化硫黄ガス(SF
6)を封入した導波管型非可逆素子で用いられるガーネット系フェライトの真空中でのアウトガス量を真空放置法により測定したところ、超高真空中においてフェライト20を使用しても問題がないことを見出したことによる。
【0023】
上記の測定では、ステンレス鋼(SUS304)製のチャンバー(内表面積が0.28m
2、体積が8.3×10
―3m
3)の内部を真空引き後(10
−10Pa台まで排気した後)、バルブ封止をした。そして、フェライトの有無による真空度の速度変化からフェライトのアウトガス量を測定した。なお、フェライトは、「Φ50mm、厚さ3.5mm」の円柱状のものを用いた。また、前記したバルブ封止後「10
−3Pa」台に達するまでの時間(一時間弱程度)を測定した。そして、測定の結果、フェライトの単位面積当たりのアウトガス量は、真空仕様の導波管の素材として一般的に用いられるステンレス鋼(SUS304)の真空中でのアウトガス量の34倍程度であり(且つ使用されるフェライト20の表面積が小さいため)、超高真空中においてフェライト20を使用しても超高真空状態が維持されることを確認した。
【0024】
また、導波管10の上面10aの内壁面(内筒面)には、略矩形状に凹んだ凹部10a1(
図2参照)が形成されており、当該凹部10a1に、真空ハンダ40を介して、矩形平板状のフェライト20(1枚のフェライト20)が取り付けられている。このフェライト20は、一方側の広面を取付面とし、押さえ金具50により、前記取付面が、導波管10の上面10aの凹部10a1に押し付けられ、真空ハンダ40により接着されている。
【0025】
なお、本実施形態では、上面10aの内壁面に形成された凹部10a1にフェライト20が取り付けられているが、特にこれに限定されるものではない。上面10aの内壁面に凹部10a1が形成されていない導波管10であっても、本実施形態を適用することができる。この場合、フェライト20は、上面10aの略平坦状になされた内壁面の所定位置に、真空ハンダ40により接着される。
【0026】
また、フェライト20は、その長手方向を高周波の伝搬方向等となる導波管10の長手方向と揃えて配置されている。なお、フェライト20の素材は、適用可能な範囲で適宜であるが、例えば、ガーネット系フェライトとすると好適である。
【0027】
上記のように、真空ハンダ40を介してフェライト20を取り付けるようにしたのは、真空ハンダ40が、高真空中下においてアウトガスの発生量が微少(僅か)であるためである。そして、この構成により、フェライト20で発生した熱が真空ハンダ40を介して導波管10に伝熱して放熱される。すなわち、本実施形態によれば、超高真空状態を維持しながらフェライト20を効果的に冷却することができる。
【0028】
なお、本願発明者らは、本実施形態の真空ハンダ40の熱伝導率と、「導波管内の内壁面とフェライトの接合面との間に熱伝導グリースを塗布した単向管(従来技術の単向管)」の熱伝導グリースの熱伝導率との比較を行った。比較の結果、真空ハンダ40の熱伝導率は、熱伝導グリースの熱伝導率よりも高いことが確認された(熱伝導グリースの熱伝導率を「1」とすると、真空ハンダ40の熱伝導率は「9.3」であった)。
すなわち、本実施形態によれば、「導波管内の内壁面とフェライトの接合面との間に熱伝導グリースを塗布した単向管(従来技術の単向管)」に比べ、より効果的にフェライト20を冷却することができる。
【0029】
また、マグネット30aは、導波管10の上面10a外側であって、フェライト20が設けられた位置の一方側(
図1に示す上方側)に、フェライト20の一方側の広面(前記取付面)と対向するように配置されている(水管60の上方に配置されている)。このマグネット30aは、導波管10の上面10aに取り付けられた支持部材71に支持されている。また、マグネット30bは、導波管10の下面10b外側であって、フェライト20が設けられた位置の他方側(
図1に示す下方側)に、フェライト20の他方側の広面と対向するように配置されている。このマグネット30bは、導波管10の下面10bに取り付けられた支持部材72に支持されている。
【0030】
なお、マグネット30aをS型磁石(又はN型磁石)で構成する場合には、マグネット30bをN型磁石(又はS型磁石)で構成する。上記の構成により、一対のマグネット30a、30bが、フェライト20の広面を挟んで対向して配置され、導波管10の内部(管内)に磁界を生じさせる。これにより、導波管10の内壁面に取り付けられたフェライト20を非可逆動作させることができる。なお、マグネット30a、30bの具体的な構成について特に限定されるものではないが、永久磁石又は電磁石或いは永久磁石と電磁石のハイブリッドで構成される。また、永久磁石の材質には、例えば、ネオジウム磁石、サマリウムコバルト磁石等が用いられる。
【0031】
また、水管60は、導波管10の上面10aのフェライト20が取り付けられている位置に対応させ、且つ当該上面10aの外壁面に当接させて取り付けられている。また、水管60は、その一端部に、冷却水を送り出すポンプ(図示せず)に接続された流入用水管(図示せず)が接続され、その他端部に排水用水管(図示せず)が接続されている。これにより、水管60の管内に、前記冷却水が流れるようになっている。
【0032】
上記のように、導波管10の外壁面に水管60を設置して、水管60に冷却水を流し、導波管10を水冷することにより、フェライト20の電力損失により発生する高熱を効率よく冷却でき、フェライト20の磁気特性の変動や熱歪みによる破損を防止することができる。その結果、本実施形態によれば、より大電力の高周波を印可することができる。
【0033】
また、上記の単向管Wにより導波管回路を構成する場合、例えば、単向管Wを構成する導波管10の前後に他の導波管を配置し、両端のフランジ10d・10dを介して他の導波管と連結する。そして、前記移相器Wは、マグネット30a、30bにより発生させた強磁場によりフェライト20の磁気特性を調整することにより、導波管10の内部を伝搬する高周波の位相を変化させるようになっている。
【0034】
次に、本実施形態の単向管Wの製造工程を説明する。なお、以下では、本実施形態の製造工程のうち、特徴がある工程を説明し、周知技術と同じ工程の説明は省略する。
【0035】
最初に、導波管10の内壁面に、フェライト20を取り付ける工程(フェライト取付工程)を説明する。
具体的には、先ず、導波管10の外側に電熱線(図示せず)を巻き付ける。次に、導波管10の上面10aの内壁面に形成された凹部10a1(
図2参照)と、フェライト20の前記取付面との間に、真空ハンダ40を配置し、押さえ金具50でフェライト20を押さえながら前記電熱線により導波管を加熱する。そして、導波管10の温度が真空ハンダ40の融点を超えると、真空ハンダ40が融解し、導波管10の内壁面の凹部10a1と押さえ金具50とが接合されると共に、融解した真空ハンダ40が、導波管1の内壁面とフェライト20との間に充満し導波管10の内壁面とフェライト20との間の隙間がなくなる。これにより、真空ハンダ40の熱伝導性が向上する。
【0036】
また、前記フェライト取付工程では、上述した電熱線により導波管10を加熱する方法に代えて、以下のように行ってもよい。
具体的には、導波管10の上面10aの内壁面に形成された凹部10a1(
図2参照)と、フェライト20の前記取付面との間に、真空ハンダ40を配置し、押さえ金具50でフェライト20を押さえる。そして、真空炉等を用いて、導波管10に真空引きを施しつつ加熱処理を行い、導波管10の内壁面に、フェライト20を取り付ける。この方法によれば、真空ハンダ40の脱泡、脱ガスを促し、融解した真空ハンダ40の隙間への浸透性、及び導波管10とフェライト20との接触性を高めることができる。
【0037】
また、前記フェライト取付工程の前処理として、フェライト20の表面を研磨・洗浄しておくことが望ましい。このようにするのは、本願発明者らの研究により、フェライト20の表面が10μm程度の凹凸構造になっていることが確認され(フェライト20の表面を走査型顕微鏡で観察することにより確認した)、フェライト20の表面積が、機械的寸法よりも大きく、表面状態、保管条件等によりガス吸着、放出量が大きく変わることを見出したことによる。そして、フェライト20の表面を研磨・洗浄しておくことにより、融解した真空ハンダ40の隙間への浸透性の向上を図ることができると共に、真空中に曝される面(フェライト20の面)の表面積を減少させ、フェライト20の表面におけるガスの吸着・放出の量を減少させることができる。
【0038】
さらに、フェライト20は、その表面にTiN(窒化チタン)コーティングが施されていることが望ましい。このように構成するのは、フェライト20の表面に、二次電子放出係数が低く且つ化学的に安定なTiN(窒化チタン)を真空蒸着法等によりコーティングすることにより、フェライト20の表面からの二次電子の放出を抑え、マルチパクタリングの発生を抑えるためである。
なお、マルチパクタリングとは、電磁場の強度、フェライトとの距離及び高周波の周波数に依存する共鳴放電現象である。具体的には、磁場中に配置されたフェライト20に高周波が印可すると、1個の電子の衝突により、フェライト20の表面より1個以上の二次電子が放出される。そして、前記衝突が起こるたびに電子の数が増加し、一定の量を超えると高周波放電が発生する現象(マルチパクタリング)が起こる。
【0039】
次に、導波管10の内部を超高真空状態にする工程を説明する。
具体的には、導波管10の内部を真空排気するときには、導波管10の外側に設置した水管60に温水を流し、フェライト20にベーキング処理を施す。さらに、印加電力の投入するときには、充分に時間をかけて電力を徐々に上昇させる高周波エージングを行う。上記の構成により、フェライト20の脱ガス処理が行われ、導波管10の内部を超高真空状態にすることができる。
【0040】
以上、説明したように、本実施形態によれば、六フッ化硫黄ガス(SF
6)を使用することなく、大電力を伝送する導波管回路に使用できる単向管Wを提供することができる。なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変更が可能である。
【0041】
上述した実施形態では、矩形平板状の1枚のフェライト20を用いていたが特にこれに限定されるものではない。例えば、
図3に示すように、略平板状のフェライト20を複数のフェライト片に分割して、その複数のフェライト片を隙間を開けて並設した構成にしてもよい。
【0042】
具体的には、
図3(a)に示すように、細長短冊状のフェライト片200aを相互間に僅かな隙間201aを開けて列状に複数並設して、全体として長方形で略平板状のフェライト20aを構成するようにしてもよい。
また、
図3(b)に示すように、短冊状のフェライト片200bを相互間に僅かな隙間201bを開けて行列状に複数並設して、全体として長方形で略平板状のフェライト20bを構成するようにしてもよい。
また、
図3(c)に示すように、矩形平板状のフェライト片200cを相互間に僅かな隙間201cを開けて行列状に複数並設して、全体として長方形で略平板状のフェライト20cを構成するようにしてもよい。
【0043】
上記のように、フェライト20を複数のフェライト片に分割して配置することにより、フェライトが1枚のフェライトで構成されている場合に比べ、分割して配置されたフェライト20a〜20c(フェライト片200a、200b、200c)の熱歪みが軽減され、その結果、フェライト20a〜20cの破損を防ぐことができる。
【0044】
また、上述した実施形態では、導波管型非可逆素子が単向管Wに適用された場合を例にしているが、あくまでもこれは一例に過ぎない。本発明の導波管型非可逆素子の構成は、単向管Wだけでなく、移相器やサーキュレータにも適用されるものである。