特許第5683408号(P5683408)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5683408
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】車両駆動用モータを有する自動車
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/04 20060101AFI20150219BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20150219BHJP
   H02G 3/14 20060101ALI20150219BHJP
【FI】
   B60R16/04 A
   B60L11/18 A
   H02G3/14
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-174376(P2011-174376)
(22)【出願日】2011年8月9日
(65)【公開番号】特開2013-35466(P2013-35466A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2013年8月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北見 明朗
(72)【発明者】
【氏名】上地 辰之
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−315216(JP,A)
【文献】 特開2010−269658(JP,A)
【文献】 特開2000−152470(JP,A)
【文献】 特開2008−207618(JP,A)
【文献】 特開平11−011237(JP,A)
【文献】 特開平07−084673(JP,A)
【文献】 特開2008−074304(JP,A)
【文献】 特開2005−028911(JP,A)
【文献】 特開平11−263179(JP,A)
【文献】 特開2005−143200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/04
B60L 11/18
H02G 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両駆動用モータを制御するコントローラと、
コントローラを介して車両駆動用モータに電力を供給するメインバッテリと、
メインバッテリからコントローラまでの電力供給経路に挿入されているノーマルオープンのリレーと、
リレーへ電力を供給するサブバッテリと、
サブバッテリからリレーまでの電力供給経路に挿入されているインターロック回路と、
を備えており、
コントローラに、メインバッテリからの電力供給線を結線するための入力端子、又は、モータへの電力供給線を結線するための出力端子が設けられているとともに、その入力端子又は出力端子を覆う端子カバーが取り付けられており、
サブバッテリが、端子カバーの取り外しを妨げるように、コントローラに隣接して配置されおり、
サブバッテリの出力端子の結線を取り外すとインターロック回路が作動し、サブバッテリからリレーへの電力供給が遮断されてリレーが開放され、メインバッテリからコントローラへの電力供給が遮断されることを特徴とする自動車。
【請求項2】
サブバッテリは、端子カバーを固定する締結部材を覆うように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車。
【請求項3】
端子カバーを覆うプロテクタを備えており、サブバッテリは、プロテクタの取り外しを妨げるように、コントローラに隣接して配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自動車。
【請求項4】
コントローラは、ドライブトレインに固定されており、サブバッテリは、自動車のフレームに固定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の自動車。
【請求項5】
ドライブトレインの一方の側にサブバッテリが配置されており、ドライブトレインの反対側にエンジンが配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両駆動用モータ(走行用モータ)を有する自動車に関する。本発明は特に、ハイブリッド車を含む電気自動車に関する。なお、本明細書における「自動車」には、燃料電池車も含まれる。
【背景技術】
【0002】
電気自動車の車両駆動用モータは、通常100V以上の高電圧で駆動される。車両駆動用モータへ電力を供給するメインバッテリの出力も100V以上の高電圧である。メインバッテリの電力は、車両駆動用モータを制御するコントローラへ送られ、コントローラ内でDCからACへ変換され、そして、モータへ供給される。コントローラは通常、自動車のコンパートメント(フロントコンパートメント/エンジンコンパートメント)に搭載される。なお、モータへ駆動電力を供給するとともにモータを制御するコントローラはパワーコントロールユニット(PCU)と呼ばれることがある。本明細書では、特に断らない限り、車両駆動用モータを単純に「モータ」と称し、モータへ駆動電力を供給するとともにモータを制御するコントローラを単純に「コントローラ」と称する。
【0003】
自動車のメンテナンスの際、コントローラをコンパートメントから取り出すことがある。コントローラを取り出すには、まず、メインバッテリから電力供給を受けるための入力端子、又は、モータへ電力を供給するための出力端子に連結されているパワーケーブルを外す必要がある。モータを駆動するための通常100V以上の電圧(電力)を本明細書では高電圧(高電圧電力)と称し、高電圧電力線を結線するための入力端子/出力端子を高電圧端子と称する。高電圧端子は、安全のために通常は端子カバーで覆われている。通常、コントローラを取り外す際にはコントローラへの高電圧電力の供給は遮断されているはずであるが、作業者の安全をより一層確保するため、端子カバーには、インターロックが備えられていることが好ましい。ここでの「インターロック」は、端子カバーを外すとメインバッテリからコントローラへの電力供給経路が遮断されるスイッチを意味する。なお、一般的には、「インターロック」とは、作業者や装置の安全を図る仕掛けであり、予め定められた条件が成立しない間は装置を無能力化する(disable)仕掛けを意味する。本明細書でのインターロックは、端子カバーが外されると、メインバッテリからコントローラへの高電圧電力供給経路が遮断される仕掛けである。特許文献1にそのようなインターロックの一例が開示されている。特許文献1には、端子カバーの開放に連動して作動するインターロックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−143200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術もそうであるが、一般に、カバー(端子カバー)が取り外されると電源供給経路が遮断されるインターロックは、カバーの取り外しによって物理的に接点が開くスイッチを含む。そのようなスイッチはカバーそのものに備えられることが多い。例えば、そのようなスイッチの一つの態様は、カバー内側に金属板が取り付けられており、カバーを装置に取り付けるとその金属板が装置側に設けられた2つの接点を連結し(2つの接点間が導通し)、カバーを取り外すと2つの接点が開放される構成を備える。また、そのようなスイッチの別の態様では、カバー裏側にピンが設けてあり、カバーを取り付けるとピンが装置側に取り付けられたスイッチを押圧してスイッチが閉じ(導通し)、カバーを取り外すとピンが除かれ、スイッチが開放される構成を備える。いずれの場合でも、カバーにインターロックの一部を備える必要がある。即ち、端子カバーにインターロックの一部を組み込む必要がある。本明細書が開示する技術は、自動車の電気系の構造の特徴を生かし、コントローラの端子カバーにインターロックの一部を設ける必要なく、簡単な構造で実現できるインターロックを備えた自動車を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する自動車の一実施形態は、車両駆動用モータを制御するコントローラと、コントローラを介して車両駆動用モータに電力を供給するメインバッテリと、メインバッテリからコントローラまでの電力供給経路に挿入されているノーマルオープンのリレーと、リレーへ電力を供給するサブバッテリと、サブバッテリからリレーまでの電力供給経路に挿入されているインターロック回路とを備える。ノーマルオープンのリレーとは、電気回路の技術分野でよく知られているように、電力が供給されている間は接点が閉じ、電力供給が遮断すると接点が開くスイッチである。「リレーへ電力を供給する」とは、より正確には、リレーの接点を閉じるための素子(電磁コイル)に電力を供給する、という意味である。コントローラには、メインバッテリからの電力供給ケーブルを結線するための入力端子、及び/又は、モータへの電力供給ケーブルを結線するための出力端子が設けられているとともに、入力端子又は出力端子を覆う端子カバーが取り付けられている。そして、サブバッテリが、作業者による端子カバーの取り外しを妨げるように、コントローラに隣接して配置されている。以下、上記リレーをシステムメインリレーと称する。なお、「サブバッテリ」という用語は、モータへ電力を供給するメインバッテリと区別するための用語であり、補機バッテリ、アクセサリバッテリ、あるいは、Auxiliary Batteryと呼ばれることもある。
【0007】
上記の自動車では、コントローラをエンジンコンパートメントから外すためにはまず、サブバッテリを取り外さねばならない。サブバッテリを取り外すと、すなわち、サブバッテリの出力端子の結線を外すと、インターロック回路が作動し、サブバッテリからシステムメインリレーへの電力供給が遮断されてシステムメインリレーが開放され、システムメインリレーがメインバッテリからコントローラへの電力供給経路を遮断する。こうして、コントローラへの高電圧電力の供給経路が確実に遮断される。即ち、上記の自動車では、コントローラに対するサブバッテリのレイアウトそのものがインターロックを構成する。上記の自動車は、端子カバーにインターロックを設けることを要しない。また、サブバッテリのレイアウトがインターロックを構成するので、インターロックの機構そのものを簡単に実現できる。
【0008】
サブバッテリは、端子カバーの全体を覆うように配置されてもよいし、端子カバーの一部を覆うように配置されてもよい。サブバッテリは、端子カバーを固定する締結部材を覆うように配置されていることが特に好ましい。サブバッテリをそのように配置すれば、端子カバーを外すためには必ずサブバッテリを外さねばならないということを保障することができる。なお、締結部材とは、典型的にはボルト又はナットでよいが、これに限られない。例えばスナップフィット式のリテーナやフックであってもよい。
【0009】
本明細書が開示する技術は、サブバッテリが端子カバーを直接に覆っている態様に限られない。モータを制御するコントローラは重要な部品であるから、衝撃から保護するプロテクタ(金属板)がコントローラに取り付けられていることもある。本明細書が開示する自動車の他の態様では、コントローラを衝撃から保護するプロテクタが、本端子カバーを覆うように取り付けられており、サブバッテリは、そのプロテクタの取り外しを妨げるように、コントローラに隣接して配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例の自動車のフロントコンパートメント内のデバイスレイアウトを示す(斜視図)。
図2】実施例の自動車のフロントコンパートメント内のデバイスレイアウトを示す(平面図)。
図3】端子カバーを外したコントローラの斜視図である。
図4】コントローラとサブバッテリのレイアウトを示す(平面図)。
図5】コントローラとサブバッテリのレイアウトを示す(正面図)。
図6】コントローラとサブバッテリのレイアウトを示す(側面図)。
図7】インターロックの回路図を示す。
図8】第2実施例におけるコントローラとサブバッテリのレイアウトを示す(平面図)。
図9】第2実施例におけるコントローラとサブバッテリのレイアウトを示す(正面図)。
図10】第2実施例におけるコントローラとサブバッテリのレイアウトを示す(側面図)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施例)図面を参照して第1実施例の自動車を説明する。第1実施例の車両100は、エンジン8とモータ19(車両駆動用モータ)を備えるハイブリッド車である。エンジン8とモータ19は、フロントコンパートメント5内に搭載される。図1にフロントコンパートメント内部の斜視図を示し、図2にフロントコンパートメント内の平面図を示す。なお、図に示されている座標は、X軸が車両の前方に対応し、Y軸が車両の横方向に対応し、Z軸が車両の上方(鉛直上方)に対応する。他の図においても同様である。
【0012】
フロントコンパートメント5内に搭載される主要なデバイスは、エンジン8、モータ19とトランスミッション20とデフを含むドライブトレイン6、サブバッテリ2、ラジエータ9、モータ19を制御するコントローラ4(パワーコントロールユニットとも呼ばれる)である。その他、符号92はリレーボックスを示し、符号94はエアコンのコンプレッサを示す。エンジン8とドライブトレイン6は、車両のフレームを構成するサイドフレーム12(サイドメンバ)に固定されている。ラジエータ9はフレームの一部を構成するフロントフレーム14(フロントバンパリインフォースメント)に固定されている。車両のボディ90も、サイドフレーム12とフロントフレーム14に支持される。また、サブバッテリ2は、スペーサ13を介してサイドフレーム12に固定される。サブバッテリ2は、ベルト32で固定される。図では、サブバッテリ2の出力端子2a、2bと他のデバイスとの結線を省略している。サブバッテリ2の負極端子2aは、グランドとしてボディ90(フレーム12、14)に接続される。なお、図2の符号16は、モータ19へ供給する電力の出力端子を覆う端子カバーである。
【0013】
良く知られているように、ハイブリッド車は、状況に応じてエンジン8とモータ19を切り換えて用いる。大トルクが必要な場合はエンジン8とモータ19を同時に用いる。ドライブトレイン6内部のトランスミッション20が、エンジン8の出力とモータ19の出力を切り換えたり、あるいは両者を加えてデフに伝達する。ドライブトレイン6は、パワートレイン、あるいは、トランスアクスルと呼ばれることもある。ドライブトレイン6の詳細な構造については説明を省略する。モータ19は、ブレーキ時の減速エネルギ(回生エネルギ)を電気エネルギに変換するジェネレータも兼用する。
【0014】
モータ19を駆動するための高電圧電力を供給するバッテリを、サブバッテリ2と区別するために本実施例ではメインバッテリと称する。サブバッテリ2は、電気回路、ヘッドライト、ルームライト、パワウインドウ用モータ、ワイパ用モータなどを駆動する低電圧電力を供給する電源である。メインバッテリは通常50V以上であり、サブバッテリは通常50V未満である。メインバッテリの出力電圧は100V〜300V程度であることが多く、サブバッテリ2の出力電圧は、12Vあるいは24Vであることが多い。サブバッテリ2には、電極に鉛を用いた鉛蓄電池が用いられることが多い。他方、メインバッテリは、ニッケルカドミウム電池、リチウムイオン電池であることが多い。メインバッテリとして燃料電池を用いることも鋭意研究されている。サブバッテリ2はフロントコンパートメント5内に配置されるが、メインバッテリは、フロントコンパートメント5ではなく、リアコンパートメント(ラゲッジルーム)、あるいは、後部座席の下部に配置される。
【0015】
コントローラ4は、モータ19を制御する。コントローラ4は、メインバッテリから電力(直流電圧)の供給を受け、バッテリ電圧をモータ駆動に適した電圧へ変換した後、交流へ変換し、モータ19へ供給する。即ちコントローラ4内には、直流電圧の大きさを変換するDCDCコンバータと、直流を交流に変換するインバータが組み込まれている。前述したように、メインバッテリの出力電圧は100V〜300Vであり、DCDCコンバータは、その電圧を400V〜600Vへ昇圧する。DCDCコンバータやインバータは、サブバッテリの出力と比較して高電圧(50V以上)を扱う。コントローラ4は、ドライブトレイン6の上に固定される。
【0016】
上記のとおり、コントローラ4は高電圧電力を扱う。一方、車両のメンテナンスのときなどにはコントローラ4を車両100から取り外すことがある。作業者がコントローラ4を扱う際、メインバッテリからの高電圧電力の供給経路が確実に遮断されているように、なんらかの安全回路、すなわちインターロックが必要とされる。車両100では、サブバッテリ2をフロントコンパートメント5から取り外さないと、コントローラ4の出力端子(モータ19への電力供給ケーブルを結線するための出力端子)にアクセスできないようにサブバッテリ2が配置されている。そして、車両100では、サブバッテリ2を取り外すことが(正確には、サブバッテリ2の出力端子の結線を取り外すことが)、インターロック作動のトリガとなる。次に、コントローラ4とサブバッテリ2のレイアウト、及び、出力端子を覆う端子カバー16とサブバッテリ2の位置関係について説明する。なお、サブバッテリ2の負極端子2a(グランド)は車両100のサイドフレーム12(フロントフレーム14)に繋がれており、正側の端子2bはコントローラ4を含む種々のデバイスに接続されているが、図6を除き、その結線の図示は省略していることに留意されたい。
【0017】
図3は、コントローラ4の斜視図(端子カバー16を外した状態)を示す。図4図5図6はそれぞれ、コントローラ4とサブバッテリ2のレイアウトの平面図(Z軸方向から見た図)、正面図(X軸方向から見た図)、側面図(Y軸方向から見た図)を示している。図3に示すように、コントローラ4の側面に出力端子28が設けられている、出力端子28は、モータ19へ駆動電力を供給するためのケーブルを繋ぐ端子である。詳しくは、出力端子28は、コントローラ4内部のインバータの出力端子に相当する。3個の出力端子28はそれぞれ交流のU相、V相、W相に相当する。3個の出力端子28の夫々にケーブルが繋がれており、ケーブルの他端はモータに繋がれている。出力端子28を覆う端子カバー16は、4本のボルト31a、31bによってコントローラ4の側面に固定される。別言すれば、コントローラ4の側面に出力端子28が設けられており、その出力端子28を覆うように端子カバー16がコントローラ4に取り付けられる。なお、符号31aは、端子カバー16の前側を留める2本のボルトを示し、符号31bは端子カバー16の後ろ側を留める2本のボルトを示す。
【0018】
図4図6に示すように、サブバッテリ2は、コントローラ4に隣接して配置されている。より詳しくは、サブバッテリ2は、端子カバー16の一部を覆うように配置される。図6に示すように、サブバッテリ2は、端子カバー16の後ろ側を留めるボルト31bは覆っていないが、端子カバー16の前側を留めるボルト31aを覆っている。サブバッテリ2とコントローラ4との間のスペースSp(サブバッテリ2と端子カバー16との間のスペースSp)は、作業者がボルト31aを取り外すことができない程に狭い。即ち、サブバッテリ2を取り外さないと端子カバー16を外せない構造となっている。別言すれば、サブバッテリ2は、コントローラ4に隣接して、端子カバー16の取り外しを妨げる位置に設置される。さらに別言すれば、サブバッテリ2は、作業者が端子カバー16を締結するボルト31aを外すことができないようにボルト31aを覆って配置されている。逆にいえば、端子カバー16を外すのに先立って、サブバッテリ2をフロントコンパートメント5内から取り外す必要がある。
【0019】
なお、図1図6から理解されるように、ドライブトレイン6の一方の側(図2においてドライブトレイン6の右側)にサブバッテリ2が配置されており、ドライブトレイン6の反対側(図2においてドライブトレイン6の左側)にエンジン8が配置されている。エンジン8とは反対側にサブバッテリ2を配置することによって、サブバッテリ2の取り外し作業の効率化が図れる。
【0020】
サブバッテリ2を取り外すには、その出力端子2a、2bの結線を取り外す必要がある。車両100では、サブバッテリ2の出力端子2a、2b(の少なくとも一方)を取り外すと、メインバッテリからコントローラ4への高電圧電力の供給経路が遮断される。次に、そのインターロックシステムを説明する。
【0021】
図7に、メインバッテリ15からコントローラ4への高電圧電力供給経路をカットするインターロックシステム21の回路図を示す。インターロックシステム21は、メインバッテリ15からコントローラ4への電力供給経路に挿入されたメインリレー26と、インターロック回路22で構成される。ここで、具体的には、メインリレー26は、メインバッテリ15とコントローラ4をつなぐパワーケーブル31aの途中に挿入されている。メインリレー26は、正極側のパワーケーブル31aの途中に挿入される。負極側のパワーケーブル31bは常にメインバッテリ15とコントローラ4を繋いでいるとともに、グランドにも繋がっている。メインリレー26は、パワーケーブル31aとメインバッテリ出力端子の間に挿入されてもよい。インターロック回路22を構成する基板は、実際にはコントローラ4に組み込まれている。
【0022】
メインリレー26は、電力が供給されている間は(接点を閉じる電磁コイルに電力が供給されている間は)、2個の接点26a、26bの間を導通し(2個の接点を閉じ)、電力の供給が途絶えると2個の接点間を開放するいわゆるノーマルオープンタイプである。インターロック回路22は、3個のスイッチトランジスタTr1、Tr2、及びTr3のいずれかがOFFとなると、メインリレー26が開放されるように構成されている。インターロック回路22には、サブバッテリ2から電圧(12V)供給される。12Vの電源電圧ラインVaccは、スイッチ29を介してスイッチトランジスタTr1、Tr2、Tr3のソースに電圧を印加するとともに、3個のサブリレー23、24、25を直列に介してメインリレー26にも電源電圧を供給する。スイッチ29は、イグニッションキーと連動するスイッチであり、車両のユーザがイグニッションをONにすると、スイッチ29も導通する。3個のサブリレー23、24、25もノーマルオープンタイプのリレーであり、それぞれのサブリレーへの電力は、スイッチトランジスタTr1、Tr2、Tr3のドレイン(D1、D2、D3)を通じてサブバッテリ2から供給される。3個のサブリレー23、24、25が閉じている間は、メインリレー26に電力が供給され、2個の接点26a、26bの間が閉じ、メインバッテリ15からコントローラ4へ電力が供給される。いずれかのサブリレーが開放されると、メインリレー26への電力供給が途絶え、メインバッテリ15からコントローラ4への電力供給経路が遮断される。
【0023】
それぞれのスイッチトランジスタの動作を説明する。スイッチトランジスタTr1とその周辺は、サブバッテリ2からの電力の供給が途絶えるとOFFするように組まれている。スイッチトランジスタTr1のゲートG1は、電圧を調整する抵抗を介してサブバッテリ2の電源電圧ラインAccに繋がっている。サブバッテリ2から電力が供給されている間は、スイッチトランジスタTr1がONし、そのドレインD1の電圧は電源電圧Vaccに等しくなる。ドレインD1を通じてサブリレー23に電力が供給され、サブリレー23はその接点間を閉じる(サブリレー23の2個の接点間が導通する)。電源電圧Vaccが途絶えると、ゲート1の電圧が低下し、スイッチトランジスタTr1がOFFする。そうすると、ドレインD1の電圧はグランド電位となり、サブリレー23への電力供給も途絶える。このとき、サブリレー23の2個の接点間は開放され、メインリレー26への電力供給が途絶える。その結果、メインリレー26は2個の接点26a、26bの間を開放し、メインバッテリ15とコントローラ4の間の電力供給経路が遮断する。
【0024】
スイッチトランジスタTr2とその周辺は、他のデバイスが出力するキープアライブ信号2がLOW電位(グランド電位)に落ちるとOFFするように組まれている。他のデバイス/回路が出力するキープアライブ信号1は、スイッチトランジスタTr2のゲートG2に繋がっている。キープアライブ信号1は、例えば、モータの異常を検知するモータ異常検知回路(不図示)が出力する。モータ異常検知回路は、モータの異常を検出していない間は、キープアライブ信号1を、スイッチトランジスタTr2をONにする所定の電圧(例えば5V)の電圧に保持する。モータの異常を検知すると、モータ異常検知回路は、キープアライブ信号1の電圧をグランドレベルに落とす。スイッチトランジスタTr2がONの間は、ドレインD2が電源電圧Vaccに維持され、サブリレー24は2接点間を閉じている。スイッチトランジスタTr2がOFFすると、ドレインD2の電位がグランドレベルに低下し、サブリレー24がその2接点間を開放する。その結果、メインリレー26は2個の接点26a、26bの間を開放し、メインバッテリ15とコントローラ4の間の電力供給経路が遮断される。
【0025】
スイッチトランジスタTr3とその周辺の回路も、スイッチトランジスタTr2の周辺と同じである。即ち、キープアライブ信号2が所定の電位を維持している間は、サブリレー25(メインリレー26)の2接点間が閉じ、メインバッテリ15からコントローラ4への電力供給経路が確保される。キープアライブ信号2の電位がグランドレベルに落ちると、サブリレー25(メインリレー26)の2接点間が開き、メインバッテリ15からコントローラ4への電力供給経路が遮断される。キープアライブ信号2は、例えば、エンジンの異常をモニタするエンジン異常検知回路から出力される。
【0026】
以上のとおり、インターロックシステム21は、サブバッテリ2からの電源供給が途絶えたとき、あるいは、モータ/エンジンの異常が検知されたときに、メインバッテリ15からコントローラ4までの電力供給経路を遮断する。本実施例のインターロックシステム21では、スイッチトランジスタTr1とその周辺の機能、即ち、サブバッテリ2からインターロック回路22への電力供給が遮断されるとメインバッテリ15からコントローラ4への電力供給経路が遮断される点に特徴がある。キープアライブ信号1、2は、連動してメインリレー26を開放させたい他のデバイスからの信号であってもよい。
【0027】
メインリレー26は、メインバッテリ15とコントローラ4のそれぞれの正極側を繋ぐパワーケーブル31aの途中に挿入されている。メインバッテリ15とコントローラ4のそれぞれの負極側を繋ぐパワーケーブル31bはグランドにも繋がっている。コントローラ4は常にグランドレベルと繋がっているので、メインリレー26が開放されたときコントローラ4の電位はグランドレベルに維持され、作業者の安全が図られる。
【0028】
図7のコントローラ4の下方の図について説明する。コントローラ4にはモータ19への電力供給ケーブルを結線するための3個の出力端子28が備えられている。3個の出力端子28は交流3相の各線U、V、Wに対応している。出力端子28は端子カバー16によって覆われている。
【0029】
以上説明したとおり、車両100は、サブバッテリ2を取り外さなければ高電圧端子28を覆う端子カバー16を取り外すことができないレイアウト(サブバッテリ2とコントローラ4のレイアウト)を有している。さらに、車両100は、サブバッテリ2の結線が外されると、メインバッテリ15からコントローラ4への電力供給経路を遮断するインターロックシステムを備えている。上記説明にて理解されるように、このインターロックシステムは、極めて簡単な構造で実現される。また、このインターロックシステムは、スイッチ等の素子/構造を端子カバーに設けることを要しない。
【0030】
(第2実施例)図8〜10に、第2実施例の車両200における、コントローラ4とサブバッテリ2のレイアウトを示す。図8はレイアウトの平面図であり、図9はレイアウトの正面図であり、図10はレイアウトの側面図である。車両200は、車両が衝突したときなどにコントローラ4が受ける衝撃を緩和するプロテクタ41を備える点が第1実施例の車両100と異なる。コントローラ4の構造(出力端子28や端子カバー16の位置)、及び、コントローラ4とサブバッテリ2のレイアウト、インターロックシステムのコンフィグレーションは、第1実施例の車両100のものと同一である。すなわち、車両200も車両100と同様に、サブバッテリ2の出力端子の結線が取り外されると、メインバッテリからコントローラ4への電力供給経路が遮断される。車両200のインターロックシステムなどは車両100と同じであるから説明は省略する。以下、図8から図10では、図を理解しやすくするため、端子カバー16の内側の部品(出力端子28)の図示は省略している。
【0031】
プロテクタ41は、金属板でできており、端子カバー16を含むコントローラ4の角部を覆っている。図9図10に示されているように、プロテクタ41は2本のボルト42によってドライブトレイン6に固定されている。プロテクタ41とサブバッテリ2の間のスペースSpは狭く、サブバッテリ2を取り外さないと、少なくとも前側のボルト42を外すことはできない。車両200では、サブバッテリ2を外さないとプロテクタ41を外すことができず、プロテクタ41を外さないと端子カバー16を外すことができない。別言すれば、サブバッテリ2は、プロテクタ41の取り外しを妨げるようにレイアウトされ、プロテクタ41は端子カバー16の取り外しを妨げるようにレイアウトされている。
【0032】
以上、本発明の好適な実施例を説明した。実施例に関する留意点を述べる。本明細書が開示する技術は、コントローラに設けられた入力端子であり、メインバッテリからの電力供給ケーブルを結線するための入力端子を覆う端子カバーに対して適用することも好適である。即ち、サブバッテリが、コントローラの入力端子を覆う端子カバーの取り外しを妨げる位置に取り付けられていてもよい。
【0033】
実施例では、端子カバーを固定する締結手段はボルトであった。締結手段は、ボルトのほか、スナップ式のリテーナやクリップ、あるいはベルトであってもよい。例えば端子カバーが樹脂で作られており、端子カバーの端部にツメが形成されており、そのツメがコントローラ4の溝に嵌合する態様であってもよい。その場合、サブバッテリは、端子カバーのツメを隠すように配置される。
【0034】
図7は、インターロック回路の一例であり、これに限られるものではない。最も単純には、サブバッテリの出力端子がメインリレーの電磁コイルに直接に接続されているだけでもよい。ただし、少なくとも、イグニッションスイッチに連動するスイッチを介して、サブバッテリの出力端子がメインリレーの電磁コイルに接続されていることが好ましい。そのような態様であっても、サブバッテリの出力端子の結線が取り外されればメインリレーがメインバッテリとコントローラとの間の接続を開放する。すなわち、サブバッテリを外すとコントローラへの高電圧電力の供給経路が遮断される。
【0035】
メインバッテリの出力電圧がインバータ入力電圧に適している場合、コントローラ4は、DCDCコンバータを含まなくともよい。また、コントローラ4には、インバータのスイッチング半導体(パワー半導体)あるいはそのモジュールを制御する制御基板が含まれていてもよい。
【0036】
本明細書が開示する技術は、ハイブリッド車だけでなく、燃料電池車を含むピュア電気自動車に適用することも好適である。
【0037】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0038】
2:サブバッテリ
4:コントローラ
5:フロントコンパートメント
6:ドライブトレイン
8:エンジン
12:サイドフレーム
13:スペーサ
14:フロントフレーム
16:端子カバー
19:モータ
20:トランスミッション
21:インターロックシステム
22:インターロック回路
23、24、25:サブリレー
26:メインリレー
28:出力端子
31、42:ボルト
41:プロテクタ
100、200:車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10