(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、
図1〜3を用いて本実施形態の基本構成を説明する。なお、本実施形態では、本人確認のための生体情報として指静脈情報を用いる例を説明する。
【0014】
A.ATMの構成
図1は、ATM101の構成を示すブロック図である。ATM101は、利用者の指静脈画像を読み取る、生体情報読取装置である指静脈リーダ102と、利用者への取引案内を表示する第一の表示部であるディスプレイ(液晶ディスプレイ等)103と、取引を行うために操作入力を受け付けるタッチパネル(入力部)104と、挿入されたカード(ICカード、磁気ストライプカード等)を処理するカード取扱い機構105と、紙幣入出金等の紙幣を処理する紙幣入出金機構106と、明細票の印字処理を行う明細票印字機構107と、通帳の印字処理を行う通帳印字機構108と、利用者がATMを使用するために接近してきたことを検知する利用者検知センサ109と、ATMを使用中の利用者の顔画像を撮影する顔カメラ110と、視覚障害者及び視力が低下した高齢者に対する音声案内用のハンドセット111と、ATM101全体の動作を制御する主制御部112とから構成される。
【0015】
主制御部112は、各処理を制御するCPU113と、各処理を実行するためのプログラムや取引情報等の各種データを取引成立まで一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)などのメモリ114と、後述する勘定系サーバ及び情報系サーバとデータを送受信するための通信部115と、取引成立後に、利用者との取引情報等を逐次記憶するHDD(Hard Disk Drive)などの記憶部116と、及び電源117とを備える。利用者の取引情報は、電子ジャーナル(e−JNL)データ118として記憶部116に記憶される。
【0016】
また、ATM101の上部には、表示画面をATMの正面方向に向けた第二の表示部であるとしての2nd.ディスプレイ119と、利用者検知センサ109による検知範囲よりも広い範囲で利用者を検知可能な(すなわち、利用者がキャッシュコーナー等に入場したことを検知可能な)利用者検知カメラ120とを備える。2nd.ディスプレイ119は、ATM101を利用するために待機している利用者に対して、各種情報(金融機関等の商品案内、ATMの稼動状況、利用可能なATMへの誘導等)を表示するために用いられる。また、利用者検知カメラ120は、ATM101の利用状況に関係なく、キャッシュコーナー等に入場した利用者を検知可能である。
【0017】
なお、ATM101は、身体機能が低下した利用者に対して優先的に使用させる優先ATMとすることを前提として説明するが、運用状況により、身体機能が低下していない利用者に対して使用させ、一般的なバリアフリーATMとしても良い。また、生体情報の認証は指静脈リーダ102で行っているが、生体情報は指静脈に限定したものではなく、掌静脈や指紋、虹彩、顔画像といった他の生体情報でも良い。
【0018】
B.e−JNLデータの詳細
図2は、e−JNL118の詳細を示す図である。e−JNLデータは、基本情報、取引操作情報、及び連絡情報の3種類から構成されている。特に、取引操作情報と連絡情報を設けることにより、ATM101の利用者の操作をATM101で監視することを可能としている。なお、身体機能が低下した利用者及びその可能性がある利用者については上記3種類の情報を記録し、その他の利用者については、基本情報のみを記録する構成としても良い。
【0019】
B−1.基本情報
基本情報は、[1]取引時刻(例:2010年10月10日10時10分10秒)、[2]取引科目(例:入金取引)、[3]顔カメラ11の撮影画像、[4]カード取扱い機構105で読み取られた利用者の口座番号から構成される。
【0020】
B−2.取引操作情報
取引操作情報は、[a]取引全体の所要時間、[b1]〜[b4]生体認証失敗時のエラーコード(NG1〜NG4)、[c]暗証番号や金額入力時の訂正キー押下回数、[d]ハンドセット111のオフフック回数、[e]利用者検知カメラ120による撮影画像、[f1〜f2]本人確認として、生体認証を行わずに本人確認資料や暗証番号のみを用いた場合、[g]入力した暗証番号の相違(失念)により、勘定系サーバから拒否された場合、[h]取消操作(取消キー押下)回数、[i]取引処理の各操作で設定されている許容時間から超過して、タイムアウトとなった回数、[j]ATM101から放出された現金、カード等の媒体の取り忘れの有無から構成される。取引操作情報に記録される取引操作は、特定利用者の身体機能が低下した可能性が異なるため、係員の監視の必要性に応じて、「無」「小」「中」「大」の4段階にランク分けされている。なお、ランク「大」には、利用者の身体機能が低下した可能性にかかわらず、係員の監視の必要性が高い取引操作を含むものとする。
【0021】
ランク「無」に該当する取引操作は、[b1]生体認証失敗、[b2]生体認証リトライ失敗(1回目)、[b3]生体認証リトライ失敗(2回目)の3種類である。これらは生体認証時の指の置き方や指の汚れ等により、他の取引操作より発生しやすい物である。したがって、上記[b1]〜[b3]が発生したとしても、係員の監視を必要としない。
【0022】
一方、ランク「小」「中」「大」に該当する取引操作は、係員の監視を必要とする物である。しかし、発生頻度に応じて係員の監視を必要とする回数が異なる。以下、詳細に説明する。
【0023】
ランク「小」に該当する取引操作は、[b4]生体認証リトライ失敗(3回目)、[c]暗証番号や金額入力時の訂正キー押下回数の2種類である。[b4]の場合、[b1]〜[b3]と同様に生体認証の失敗に関する物であるが、生体認証に連続して4回失敗しているため、特定利用者の操作に起因する可能性が高くなる。
【0024】
[c]の場合、暗証番号や金額の入力時に訂正キーを押下することは、身体機能が低下していない利用者でも起こり得る。しかし、訂正キーを頻繁に押下する場合は、特定利用者の身体能力が低下している可能性がある。
【0025】
従って、上記[b4]及び[c]の取引操作は、係員の監視を必要とする物である。しかし、後述するランク「中」「大」に該当する取引操作と比較して、特定利用者の身体機能が低下した可能性が低いため、ランク「小」とした。なお、[c]において係員の監視を必要とする回数として、3取引連続して訂正キーを押下した場合、又は直近10取引のうち5取引で訂正キーを押下した場合としている。
【0026】
ランク「中」に該当する取引操作は、[d]ハンドセット111が持ち上げられた回数(オフフック回数)のみである。ハンドセット111は、障害者及び視力が低下した高齢者に対して音声案内を提供するために用いられている。そのため、ハンドセット111を使用するために持ち上げることは、特定利用者の身体能力が低下した可能性を示唆している。しかし、後述するランク「大」に該当する取引操作と比較して、特定利用者の身体機能が低下した可能性が低いため、ランク「中」とした。なお、[d]において係員の監視を必要とする回数として、2取引連続してハンドセットが持ち上げられた場合、又は直近10取引のうち3取引でハンドセットが持ち上げられた場合としている。
【0027】
ランク「大」に該当する取引操作は、[e]顔カメラ110が撮影した顔画像と利用者検知カメラ120が撮影した人物画像とから、利用者本人でなく代理人であると判断された場合、[f1]本人確認に生体認証を行わずに、本人確認資料(免許証、住民基本台帳カード、パスポート等)を用いた場合、[f2]本人確認に生体認証を行わずに、暗証番号による認証のみを用いた場合、[g]入力した暗証番号の相違(失念)により、勘定系サーバ(上位)から拒否された場合、[h]取消操作(取消キー)の押下、[i]取引処理の各操作で設定されている許容時間から超過して、タイムアウトとなること、[j]ATM101から放出された現金、カード等の媒体の取り忘れることの7種類である。
【0028】
上記の取引操作のうち、[e]の場合、利用者本人がATMを利用できない事情があり、代理人が代わりに利用している可能性が高い。また、[f]〜[j]は、利用者の身体機能が低下しているか否かは不明であるが、係員の監視の必要性が高い。なお、[e]〜[j]の操作が1回でも発生した場合は、係員の監視を必要としている。
【0029】
なお、上記の取引操作情報において、係員の監視を必要とする取引操作は一例であり、特定利用者毎に係員の監視を必要とする取引操作を変更したり、係員の監視を必要とするまでの回数を変更したりすることは可能である。例えば、高齢者の認知症の進行を監視することに特化する場合、係員の監視を必要とする取引操作を[c]暗証番号や金額入力時の訂正キー押下回数、[g]入力した暗証番号の相違(失念)により、勘定系サーバから拒否された場合、[h]取消操作(取消キー)の押下、[i]取引処理の各操作で設定されている許容時間から超過して、タイムアウトとなること、[j]ATM101から放出された現金、カード等の媒体の取り忘れること、の5種類に限定して運用することが可能である。
【0030】
B−3.連絡情報
連絡情報は、[k]取引操作情報に変化が生じ、利用者を監視対象とするフラグ(監視対象フラグ)、及び[l]利用者の身体機能が低下したことを示すフラグ(身体機能低下フラグ)から構成される。
【0031】
[k]監視対象フラグは、通常の取引の場合は「オフ」とされているが、取引操作が係員の監視が必要となる回数に達した場合に「オン」とされる。[k]監視対象フラグが「オン」となった場合、当該特定利用者が次回ATMを用いる際に、係員の監視(立ち会い、遠隔監視等)を必要とする。
【0032】
[l]身体機能低下フラグは、通常は「オフ」とされているが、係員の監視の結果、利用者の身体機能が低下したことが確実である場合に「オン」とされる。フラグの「オン」「オフ」の切り替えは係員の入力によって行われる。
【0033】
C.自動取引システム
図3は、ATM101を含む自動取引システムの概略図である。ATM101は、その正面上部に、カード201を持参する利用者202の顔画像を撮影する顔カメラ110を備え、ATM101の操作面の右側に指静脈リーダ102、左側にハンドセット111を備えている。ATM101は、金融機関のネットワーク200を介してセンタに設置された勘定系サーバ203及び情報系サーバ204と接続されている。
【0034】
勘定系サーバ203は、利用者との口座取引及び入出金管理に特化したデータベースであり、当該勘定系サーバ203とATM101との間で通信が行われることにより、取引処理を可能としている。また、情報系サーバ204には、各ATMからデータ転送されてきた利用者202の取引情報を集中管理するe−JNL集中管理システム205、CRM(Customer Relationship Management)連携を可能とするための利用者情報管理システム206、及び各ATMの運用状況を監視する運用監視システム207とを備えている。
【0035】
利用者202に対して、e−JNL118には、利用者検知カメラ120が撮影した人物画像と顔カメラ110が撮影した顔画像とを、取引毎に記憶しているので、検索して参照する画像が多くなる結果、顔認証精度も高くなり、経時変化にも自動的に対応できる。したがって、口座名義人である利用者202本人ではなく、代理人がATMを用いている場合(
図2[e]参照)、ATM101の主制御部112は、容易に判定可能である。また、e−JNL118には、詳細な取引操作情報802が関連付けて記録され、監視可能な状態であるため、通常のATMに比べてセキュリティが充分に確保されており、利用者202が安心して取引操作できる。
【0036】
各ATM101内に記憶されたe−JNL118は、利用者202の取引終了の都度、情報系サーバ204へ転送され、集中管理するe−JNL集中管理システム205にも記憶される。
【0037】
次に、ATM101における具体的な処理について説明する。以下、一例として、引出取引を行う場合について説明する。
【0038】
D.引出取引の処理フロー
図4は、引出取引を行う場合を示したフローチャートである。最初に、主制御部112は、
図5に示すような案内画面(ATM101が優先ATMである旨を表示する画面)500を2nd.ディスプレイ119に表示する。なお、利用者202が係員に操作を支援してもらいたい場合、画面内の係員呼出しキー501を押下することにより、係員を呼び出すことが可能である。利用者検知カメラ120で、キャッシュコーナー等に入場した利用者を検知した場合(S401:YES)、身体機能が低下した利用者(取引弱者)であるか、又は挙動や容姿から、身体機能が低下した可能性の有る利用者であるか判定する(S402)。
【0039】
身体機能が低下した利用者(取引弱者)及び身体機能が低下した可能性の有る利用者でないと判断した場合(S402:NO)、身体機能が通常(健常)であると判定し、当該利用者がATM101を用いる場合に、取引操作情報を記憶部116のe−JNL118には記録しない(S403)。以下、身体機能が通常(健常)である者の場合(取引操作情報を記憶部116のe−JNL118に記録しない場合)に関する説明は省略する。
【0040】
一方、身体機能が低下した利用者(取引弱者)又は身体機能が低下した可能性の有る利用者であると判断した場合(S402:YES)、主制御部112は、ATM101の利用者(先にATM101を利用している利用者)の取引が終了したか確認する(S404)。先にATM101を利用している利用者の取引終了後(S404:YES)、ATM101への誘導画面を2nd.ディスプレイ119に表示する(S405)。また、図示しないスピーカにより、ATM101に音声誘導する。なお、利用者検知カメラ120で身体機能が低下した利用者(取引弱者)又は身体機能が低下した可能性の有る利用者であると判断した場合、図示しないディスプレイやアラームにより、係員に通報しても良い。
【0041】
利用者202がATM101に接近したことを、利用者検知センサ109で検知した後に、主制御部112は、
図6に示すような「見守りモード」移行の案内画面600をディスプレイ103に表示する。案内画面500には、(1)利用者202が、身体機能が低下した者(取引弱者)又は身体機能が低下した可能性の有る利用者と推定されること、(2)利用者202が安心して取引を実行できるように、取引操作情報をデータ蓄積しながら、機能の衰えを見守る対象者として登録する「見守りモード」に移行することをディスプレイ103に表示し、利用者202に「見守りモード」への移行の可否を選択させる(S406)。利用者202により、「見守りモード」に移行しないキー602が選択された場合(S406:NO)、以降の取引操作情報はe−JNL118に記憶しない(S407)。
【0042】
一方、利用者202により、「見守りモード」に移行するキー601が選択された場合(S406:YES)、当該利用者202を身体機能が低下した利用者(取引弱者)又は身体機能が低下した可能性の有る利用者としてe―JNL118に登録する。その後、既にe−JNL118に登録されている利用者と同様に、利用者検知センサ109が利用者の接近を検知した時に撮影した利用者検知カメラ120の人物画像を、e−JNL118に記憶する(S408)。また、主制御部112は、
図7に示すような取引選択の案内画面700をディスプレイ103に表示する。
【0043】
利用者202により、案内画面700から「引出し」が選択された後(S409)、カード取扱い機構105にカード201が挿入されると(S410)、図示しないICチップリードライト部により、搭載されたICチップから口座情報データが読み取られる。また、カード201がカード取扱い機構105に挿入されたことを検知後、主制御部112は顔カメラ110に利用者202の顔画像を撮影させ、e−JNL118に利用者202の顔画像を記憶する(S411)。
【0044】
主制御部112は、認証対象の指を指静脈リーダ102にセットさせる案内画面をディスプレイ103に表示する。案内画面を確認した利用者202により、指が指静脈リーダ102に置かれたことを検知すると(S412)、指静脈リーダ102は、指静脈画像の読み取り、認証処理を実施する(S413)。主制御部112は、指静脈リーダ102に対して、登録された生体情報と読み取られた生体特徴との一致度が所定値(例:80%)以上であるか確認する(S414)。一致度が所定値未満である場合(S414:NO)、認証処理を開始してから5秒経過したか確認する(S415)。5秒を経過していない場合(S415:NO)、S413に戻り、再度認証処理を行う。
【0045】
S414及びS415において、登録された生体情報と読み取られた生体特徴との一致度が所定値以上となった場合、生体認証に成功したと判断し、引出し限度額を最大限緩和された「通常取引」を行う。一方、S414及びS415において、登録された生体情報と読み取られた生体特徴との一致度が所定値未満であり(S414:NO)、かつ認証処理を開始してから5秒経過した場合(S415:YES)、初回の認証失敗としてエラーコードNG1をe−JNL118に記憶した後、生体認証のリトライを行う。リトライの許容回数は3回とし(S416)、主制御部112は、指を指静脈リーダ102から一旦離すように案内画面をディスプレイ103に表示し、利用者202の指が指静脈リーダ102から離れたのを検知した後(S417)、利用者202の指を再度指静脈リーダ102にセットされるのを検知し(S412)、認証処理を再度実行する。
【0046】
図8は、上記412〜S417における生体認証の認証成功/失敗について示したフローチャートである。生体認証のリトライは、3回まで許容しての認証成功率が99.999%(99.9%、99%、95%)の場合、1回の試行での認証成功率は94%(82%、68%、53%)と、6%(18%、32%、47%)の利用者がリトライとなる。このとき、1回当たりの生体認証時間を5.0秒とすると、生体認証時間の期待値は5.3秒(6.1秒、7.0秒、8.0秒)となり、取引操作の所要時間が長くなる。
【0047】
主制御部112は、登録された生体情報と読み取られた生体特徴との一致度が所定値以上となるまで、S412以降の処理を繰り返す。また、主制御部112は、生体認証に失敗する毎に、e−JNL118に対応するエラーコードを記録する。S416でリトライ3回目でも認証成功しなかった場合(S416:YES)、生体認証が失敗した旨をディスプレイ103に表示した後(S418)、引出し限度額を制限した「制限取引」への移行の可否を利用者202に選択させる画面を表示する(S419)。利用者202により、「制限取引」に移行しない旨が選択された場合(S419:NO)、取引の取り消し処理を行なう(S420)。
【0048】
一方、「制限取引」に移行する旨が選択された場合(S419:YES)、別の本人認証を行うため、主制御部112は、利用者202が生体情報の登録時に提示した運転免許証やパスポート等の本人確認資料を持っているか確認する画面(図示せず)をディスプレイ103に表示する。本人確認資料201bを持参していない場合(S421:NO)、引出し限度額が低額である「制限取引1」に移行する(S422)。一方、利用者202が本人確認資料を持参している場合(S421:YES)、主制御部112は、本人確認資料を非接触ICリーダ(図示せず)にかざすように案内する。
【0049】
主制御部112は、非接触ICリーダにより、本人確認資料のICチップから区分や個人識別番号を読み出して(S423)、カード201内のICチップに記録されている本人確認資料の区分や個人識別番号等の情報と一致しているか比較・照合する(S424)。本人確認資料のICチップが読み取れない場合、区分や個人識別番号を手入力しても良い。比較・照合の結果、区分や個人識別番号が一致しない場合(S424:NO)、引出し限度額が低額である「制限取引1」に移行する(S422)。一方、区分や個人識別番号が一致する場合(S424:YES)、「通常取引」より引出し限度額を制限しているが、「制限取引1」よりも引出し限度額を緩和した「制限取引2」に移行する(S425)。
【0050】
図9は、取引種別901と引出し限度額902との対応関係を示したものであり、主制御部112のメモリ114にテーブル900として記録されている。「通常取引」(ICカード+生体認証)の場合、引出し限度額を高額(100万円/日)としている。
【0051】
一方、「制限取引1」及び「制限取引2」は、「通常取引」よりもセキュリティ性の低い本人認証を行うため、引出し限度額を「通常取引」より低額としている。「制限取引1」は、ICカードによる利用者の認証のみ実施したものであり、引出し限度額を低額(3万円/日)にしている。また、「制限取引2」は、ICカードによる利用者の認証に加え、本人確認資料による認証を実施したものであり、「制限取引1」よりセキュリティ性の高い本人認証を行っている。そのため、引出し限度額を中程度(30万円/日)にしている。
【0052】
なお、「制限取引」として引出し限度額を制限する他に、取引種別を制限(例:出金取引を制限)したり、一日の取引回数を制限しても良い。
【0053】
その後、主制御部112は、以下の通り取引処理を行う。すなわち、主制御部112は、暗証番号の入力操作の受付(S426)、引出し金額の入力操作の受付(S427)及び確認操作の受付(S428)の完了後、勘定系サーバ203と交信して、暗証番号・引出し金額の照会を行う(S429)。暗証番号・引出し金額に問題無ければ、出金処理を行い(S430)、カード201を返却して(S431)、後述する取引操作情報のグラフを表示した後(S432)、処理を終了する。
【0054】
E.係員による利用者の監視
e−JNL118の連絡情報803[k]監視対象フラグが「オン」となった場合、図示しないディスプレイやアラームにより、係員に対する通報が行われる。通報を受けた係員は、利用者202の身体機能を確認し、当該利用者202の了解を得た上で、係員操作スイッチ(図示せず)を押下する。係員操作スイッチが押下されると、2nd.ディスプレイ119に
図10に示すような、係員操作画面1000が表示される。
【0055】
係員操作画面1000には、「電子ジャーナルデータ関連」キー1001、生体認証を支援するための「生体認証支援キー」1002、振込取引での情報入力を支援するための「振込み入力支援」キー1003、視覚障害者の取引操作を支援したり・取引代行したりするための「視覚障害者支援」キー1004、及び取引操作画面の切り替え時間を長くしたり・操作タイムアウトとならないように制限時間を解除するための「ゆっくり操作化」キー1005の5種類の入力キーが表示される。また、上記以外に、金融商品の紹介他の係員操作・入力キーを追加して表示しても良い。
【0056】
係員は、e−JNL118に記録された利用者のデータを確認するために、電子ジャーナルデータ関連キー1001を選択し、e−JNL118を検索する。このとき、取引操作情報に変化が発生したかを、e−JNL118に記録された利用者のデータを検索しながら確認する。
【0057】
例えば、生体認証処理でリトライ[b1〜b4]が散発している場合、利用者202の取引終了後、係員は、
図10の生体認証支援キー1002を押下する。生体認証支援キー1002が押下されると、
図11に示すような、生体情報の再登録の案内画面1100がディスプレイ103に表示される。次に、
図12に示すような、指静脈読み取り時の注意事項画面1200がディスプレイ103に表示される。係員は、利用者202に立ち会いながら、指静脈リーダ102を用いた当該利用者202の生体情報の読み取りを支援し、カード取り扱い機構105を介してカード201のICチップに生体情報を再登録することにより、認証成功率を向上させることも可能である。
【0058】
e−JNL118に記録された利用者202のデータを確認した結果、利用者202の身体機能に支障が有ると係員が判断した場合、[l]身体機能低下フラグを「オフ」から「オン」に切り替える。また、カード取扱い機構105は、カード201のICチップに支障有りフラグを書込む。支障有りフラグがICチップに書き込まれたことにより、次回以降の取引から、カード取扱い機構105にカード201が挿入されると係員に通報され、利用者の操作支援や取引代行を可能とする。
【0059】
なお、ディスプレイ103には、利用者202向けの取引操作画面が継続して表示されるが、2nd.ディスプレイ119を搭載していない場合は、ディスプレイ103に係員操作画面1000を表示させるために、利用者202向けの取引操作画面に割込みして表示、又は利用者202向けの取引操作画面の表示を中止させる。
【0060】
F.利用者に対する取引操作情報の表示
図4のS432において、e−JNL118に蓄積されている取引操作情報を利用者202に対して表示させるか否かをするかを選択させる。利用者202により、当該取引操作情報を表示する旨が選択された場合、ディスプレイ103に、
図13に示すようなグラフ1300を表示する。なお、当該グラフは、利用者202固有のデータであるため、2nd.ディスプレイ119に表示させることは望ましくないが、周りに他の利用者がいないような場合等セキュリティ的に問題が無い場合には、係員の確認用として2nd.ディスプレイ119に表示させても良い。
【0061】
グラフ1300には、e−JNL118の[a]取引全体の所要時間の履歴を、取引操作毎に分けて表示される。理解力が低下したり、反応速度が遅くなる高齢者の場合、誤操作や勘違いすることも多くなるため、取引全体の所要時間は長くなる傾向にある。そこで、e−JNL118に記録された各種取引操作情報[b1]〜[j]が発生している場合は、その旨あるいは変化が生じた取引操作情報の種別をグラフ1300に付加させることで、利用者202に対して、身体機能の傾向を意識させることが可能となる。
【0062】
なお、グラフ1300に表示させる変化が生じた取引操作情報の種別については、事前に利用者202が選択した種別に限定しても良い。また、
図13に示すグラフ1300の代わりに、e−JNL118の[a]取引全体の所要時間を表形式として、ディスプレイ103に表示させても良い。また、グラフ1300の表示頻度を10取引に1回としたり、月に1回等定期的に表示させるようにしても良い。また、e−JNL118に蓄積されている取引操作情報を利用者202に対して表示させるか否かをするかを選択させる代わりに、取引操作情報に変化が発生した場合にグラフ1300を表示させるようにしても良い。
【0063】
F.関係者(家族、介護者等)に対する注意喚起
利用者202の関係者(家族、介護者)等の情報が登録されている場合、情報系サーバ204のe−JNL集中管理システム205では、該当口座のe−JNL118の[k]監視対象フラグが「オン」となった場合、身体機能が低下した可能性が発生したとして、登録された関係者がATMで取引を行う際に、主制御部112は、
図14に示すような、利用者202の取引操作情報に変化が有る旨の案内画面1400をディスプレイ103に表示させる。この際、関係者に注意喚起を行う取引操作を事前に限定することが可能である。
【0064】
案内画面1400を確認した関係者は、「該当の電子ジャーナルデータのみ表示」キー1401、又は「続けて過去分を含めたグラフも表示」キー1402のいずれかを選択することが可能である。該当のe−JNL118のデータのみ表示する場合は、
図2の該当するe−JNL118をディスプレイ103に表示させ、続けて過去分を含める場合は、e−JNL集中管理システム205から蓄積データを受信し、
図13に示すようなグラフ1300をディスプレイ103に表示させる。
【0065】
また、ディスプレイ103への表示の代わりに、関係者の携帯電話等に、該当口座のe−JNL118の取引操作情報の内、変化が有った部分のみを転送しても良い。また、関係者に無用な心配を掛けないように、係員が利用者202の取引操作情報や身体機能を確認した上で、連絡するようにしても良い。取引が行なわれた都度、取引操作情報を全て転送するのではないため、利用者202のプライバシーは確保される。この結果、関係者が利用者202の生活状況や、身体機能の低下を自然な形で見守ることや、確認することが可能である。
【0066】
なお、利用者202及びその関係者に対して、ATM101のディスプレイ103に表示するe−JNL118には、勘定系データである利用者202の口座番号他の基本情報は一切含まれていないため、不審者に盗み見されても安全である。
【0067】
また、口座名義人である利用者202本人ではなく、不審者がATMを用いている場合も、
図2[e]に示した情報が変更されるため、係員や関係者が早期に確認することで、被害を抑えることが可能である。また、見守り登録は、本人ではなく、離れて暮らす家族から利用者202を、金融機関に登録申請することも可能である。
【0068】
なお、利用者202に対する指示手段として、ディスプレイ103、2nd.ディスプレイ119、及び図示しないスピーカを介した音声ガイダンスを用いているが、生体認証機能を備えたコンピュータや、ディスプレイが搭載された生体認証装置を用いて利用者202に対する指示を行っても良い。したがって、本発明は、ATMに限定したものではなく、一般の情報処理装置及び自動機にも適用できる。
【0069】
また、見守り対象は、高齢者以外に、身体機能が徐々に低下する障害者、妊婦などでも良い。