(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単位時間当たりの前記圧力上昇値は、前記切替弁を切り換えて前記セルからの排気あるいは圧力維持を開始した時からの時間により求められることを特徴とする請求項1又は2に記載のマットレス。
セルと、前記セルの内圧を検出する圧力センサと、前記セルの空気量を調整するために接続されたポンプと、前記ポンプから前記セルに対して連通される連通路と、前記セルと前記ポンプとの間の連通路上に介装され、少なくとも前記セルと前記ポンプとを連通される状態と、前記セルを大気圧に開放される状態とに切り替え可能な切替弁と、を有するマットレスに用いられる切替弁故障検知方法において、
前記圧力センサの値より、前記セルの内圧における単位時間当たりの圧力上昇値を求め、該圧力上昇値が故障閾値を比較して、前記切替弁の故障を検知することを特徴とする切替弁故障検知方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポンプはエアを供給し続けており、切替弁の開閉により、セル内のエアやポンプからのエアを大気に開放したり、ポンプからのエアをセルに供給したりして、給排気を制御する。
しかしながら、切替弁が故障して排気時に切り替え動作が行えなかった場合、セルに空気が供給され続けて異常膨張する可能性がある。異常膨張を圧力センサで検出することは可能だが、圧力値のみの故障検知の場合、セルの塑性変形により、圧力値自体が大幅に上昇しないが、セルの膨張は続くことがある。従って、異常膨張の圧力閾値を定めて検出しようとしても、異常膨張がある程度進まないと検出ができず、患者が異常体位となる可能性がある。
また、切替弁内部にポジションセンサを有して、弁の開閉確認が可能な切替弁を使用すれば、弁の故障検知が可能とはなるが、非常に高価である。
【0006】
本発明は、斯かる実情に鑑み、セルへの圧力検知に用いている圧力センサを利用して、早めに切替弁の故障を検出できるマットレス及びその切替弁故障検知方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、セルと、前記セルの内圧を検出する圧力センサと、前記セルの空気量を調整するために接続されたポンプと、前記ポンプから前記セルに対して連通される連通路と、前記セルと前記ポンプとの間の連通路上に介装され、少なくとも前記セルと前記ポンプとを連通される状態と、前記セルを大気圧に開放される状態とに切り替え可能な切替弁と、前記圧力センサの値より、前記セルの内圧における単位時間当たりの圧力上昇値を求め、該圧力上昇値が故障閾値を比較して、前記切替弁の故障を検知する故障検知部と、を備えることを特徴とするマットレスである。
【0008】
また、本発明は、前記故障検知部が前記切替弁に故障ありと判定した場合には、前記ポンプを停止するポンプ制御部を更に備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記圧力上昇値が前記切替弁を切り換えて前記セルからの排気あるいは圧力維持を開始した時からの時間と、その間の圧力上昇変化により求められることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、セルと、前記セルの内圧を検出する圧力センサと、前記セルの空気量を調整するために接続されたポンプと、前記ポンプから前記セルに対して連通される連通路と、前記セルと前記ポンプとの間の連通路上に介装され、少なくとも前記セルと前記ポンプとを連通される状態と、前記セルを大気圧に開放される状態とに切り替え可能な切替弁と、を有するマットレスに用いられる切替弁故障検知方法において、
前記圧力センサの値より、前記セルの内圧における単位時間当たりの圧力上昇値を求め、該圧力上昇値が故障閾値を比較して、前記切替弁の故障を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セルの内圧を測定する圧力センサを使用して、単位時間当たりのセルの内圧上昇を測定することにより、異常膨張前に切替弁の故障を検知することができる。また、セル内圧を測定する圧力センサを用いて、特別のセンサを新たに備える必要もないため、安価でコンパクトな構造で切替弁の故障が検知できるという優れた効果を奏し得る。
また、切替弁の故障を検出して、ポンプを停止するので、異常膨張を未然に防ぐことができる。
また、単位時間当たりの前記圧力上昇値が前記切替弁を切り換えてセルからの排気あるいは圧力維持を開始した時からの時間により求められるので、直ちに切替弁の故障を検知することができ、異常膨張を未然に防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0014】
[1.全体構成図]
[1.1 装置概略]
まず、本発明を適用したベッド装置全体の構成について
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、本実施形態におけるベッド装置1の概略を説明するための図である。
図2は、ベッド装置1を足側正面(
図1の制御部40側)から表した図である。
【0015】
ベッド装置1は、ベース30の上に、マット本体10が載置されている。ここで、マット本体10は、複数のセル14が長手方向に連続して配置され構成されている。そして、トップカバーとボトムカバーにより構成されているカバー12により覆われることによりマット本体10が構成されている。
【0016】
また、ベッド装置1は、ローリング部20を有して構成されている。ローリング部20は、サイドセル22と、ローリングセル24とを有しており、患者の体位を変換するために用いられる。
【0017】
ここで、ベッド装置1は、患者の足側が
図1のF方向(制御部40側)、頭側が
図1のH方向となるように利用される。したがって、患者の右側が
図1のR方向、左側が
図1のL方向となる。
【0018】
また、サイドセル22は、右側にあるサイドセル22Rと、左側にあるサイドセル22Lとから構成されている。また、ローリングセル24は、右側にあるローリングセル24Rと、左側にあるローリングセル24Lとから構成されている。
【0019】
そして、各セル(セル14、サイドセル22、ローリングセル24)には、制御部40から送風チューブ42が接続されている。また、制御部40には、ポンプ50から送風チューブ44が接続されている。更に、制御部40と、ポンプ50とは、制御ケーブル52で接続されており、各種制御信号がやり取りされる。また、ポンプ50は、外部から制御ケーブル54が接続されており、ポンプを駆動させるための電源ケーブル56が接続されている。
【0020】
各セル14は複数の組となった系統に別れて連通路として共通の送風チューブ42に接続されている。送風チューブ42は、送風チューブ接続コネクタを介して切替弁に接続されており、切替弁は送風チューブを介してポンプ50と接続されている。そして、ポンプ50及び切替弁の動作により各セルの給排気が行われる。この切替弁は、電磁弁を使用するものとするが、回転バルブ方式のものでもよい。
【0021】
この各セル14の給排気動作と同様にサイドセル22及びローリングセル24も送風チューブ42が接続され、送風チューブ42を介して切替弁に接続されている。そして、切替弁は送風チューブ44を介してポンプ50に接続されており、給排気が行われる。
【0022】
なお、連通路である送風チューブ42、ポンプ50から一本出力されて各セルに分岐して入力される構成であっても良いし、ポンプ50から複数本出力されることとしても良い。すなわち、各セルを連通させる動作を行う場合に、各セルの圧力値が同一となるような構成であれば良い。
【0023】
[1.2 各セル構成の説明]
続いて、各セル(セル14、サイドセル22及びローリングセル24)の構成について、
図3を用いて説明する。
図3に示すように、サイドセル22は系統Sとして、ローリングセルは系統R(ローリングセルLは系統R(L)、ローリングセルRは系統R(R))としてそれぞれ切替弁を介してポンプ50に接続されている。
【0024】
また、各セルは、系統A〜系統Gに別れてポンプ50に接続されている。例えば、セル14Aは、系統Aとして送風チューブ42Aに接続されている。送風チューブ42Aにより、系統Aに属するセル14Aは、一律に給排気がされることとなる。
【0025】
[1.3 切替弁の動作]
続いて、切替弁の動作について、
図4から
図6を用いて説明する。なお、切替弁の動作としては、説明の都合3つのセル系統が接続されている場合を一例として説明する。
【0026】
図には、セル系統1(14a)、セル系統2(14b)、セル系統3(14c)が示されている。各セル系統には、ポンプ50から、連通路として送風チューブが接続されており、セル内に空気(エア)を給排気可能である。
【0027】
また、各セル系統には、切替弁が接続されている。切替弁は、例えばプランジャにより構成されている弁体を有しており、ポンプ側に接続される切替弁(弁体)と、セル系統のエアを大気に開放するための切替弁(弁体)とを有している。具体的には、セル系統1(14a)には、ポンプに接続される切替弁60aと、大気圧に開放するための切替弁62aとが接続されている。また、セル系統2(14b)には、ポンプに接続される切替弁60bと、大気圧に開放するための切替弁62bとが、セル系統3(14c)には、ポンプに接続される切替弁60cと、大気圧に開放するための切替弁62cとがそれぞれ接続されている。
【0028】
この各セル系統に接続される切替弁は、それぞれ切替弁を有する構成としても良いし、一つの切替弁で構成されていても良い。すなわち、一つの切替弁において、弁体の開閉状態により、ポンプ側に接続されて給排気できる状態と、大気圧に排気出来る状態と、セルを密閉する状態とを切り替えるように動作しても良い。
【0029】
更に、切替弁とセル系統の間には、圧力センサが接続されている。セル系統1(14a)には圧力センサ150aが、セル系統2(14b)には圧力センサ150bが、セル系統3(14c)には圧力センサ150cがそれぞれ接続されている。この圧力センサは、接続されているセル(系統)の内圧を検出することが出来る。
【0030】
また、ポンプ50には、切替弁64が設けられている。従って、例えば切替弁64を開けてポンプを駆動し、切替弁60a〜切替弁60cを開けることにより、セル系統1〜3に給気ができる。また、切替弁60a〜切替弁60cを閉じ、切替弁62a〜62cを開けば、セル系統1〜3から排気ができる。これら切替弁の開閉を個別に制御することにより、セル系統1〜3の給排気を個別に制御できる。
【0031】
ここで、本実施形態の動作について、図を用いて説明する。まず、
図4は、総ての切替弁が閉じている状態である。このとき、各セル系統の圧力は、それぞれ独自の圧力となっている。この状態から、ポンプ50を駆動して切替弁を開閉し制御してセル系統1〜3の給排気を個別に制御する例が
図5,6である。
【0032】
図5では、切替弁60a,60b,62c,64が開放され、切替弁62a,62b,60cが閉じられて、セル系統1,2に給気が行われ、セル系統3は排気される。
【0033】
次に、
図6では、切替弁60b,60c,64が開放され、切替弁60a,62a,62b,62cが閉じられて、セル系統2、3に給気が行われ、セル系統1はそのままの状態である。
このときに切替弁60aが、故障して開放されたままの場合は、給気が行われるままとなり、セル系統1が異常膨張を起こすことになる。本発明は、セル系統1の異常膨張を圧力センサ150aにより検出してポンプを停止させるものである。
【0034】
図4から
図6は、説明の都合上セル系統を3つとして、切替弁60aの故障を例に取りセル系統1の異常膨張について説明したが、1つ以上のセルにおける切替弁の故障検知にも用いることができるものである。
【0035】
[2.機能構成]
続いて、ベッド装置1の機能構成について
図7を用いて説明する。ベッド装置1は、
図7に示すように、CPU100に、状態検出部110と、記憶部120と、圧力センサ150と、ポンプ制御部160とが接続されている。
【0036】
CPU(Central Process Unit)100は、ベッド装置1の全体を制御するための機能部である。CPU100は、記憶部120に記憶されている各種プログラムを読み出して実行することにより各種機能を実現している。
【0037】
状態検出部110は、ベッド装置1における各種状態を検出するための機能部である。例えば、圧力センサの状態を検出したり、アクチュエータの動作信号を検出したりすることによって状態を検出する。ここで、検出される状態としては、例えばベッドの背上げ角度や、足下げ角度であったり、患者の体重であったり、患者の在床状態であったりと、種々の状態を検出することが可能である。また、圧力センサ150の検出値からセルの内圧における単位時間当たりの圧力上昇値を求め、該圧力上昇値が故障閾値を比較して、前記切替弁の故障を検知する故障検知部の機能も果たす。
【0038】
記憶部120は、ベッド装置1の動作に必要な各種プログラムや、各種データが記憶されている機能部である。記憶部120は、例えば、半導体メモリや、HDD(Hard Disk Drive)等により構成されている。
【0039】
また、記憶部120には、設定テーブル122が記憶されている。設定テーブルは、ベッド装置1における各セル(セル14、サイドセル22及びローリングセル24)の規定内圧値や切替弁の故障検知のための故障閾値などが記憶されているテーブルである。
【0040】
圧力センサ150は、各セルの圧力を検出するための機能部であり、圧力センサ等により構成されている。圧力センサ150は、送風チューブ接続コネクタを介して各切替弁(セルの系統毎)に接続されている。圧力センサ150により、各セルの圧力が検出される。
【0041】
ポンプ制御部160は、ポンプ50を制御させるための機能部である。ポンプ50を動作、停止させることにより、給気・排気制御が実現可能となる。
【0042】
切替弁制御部170は、セルの系統毎に接続されている切替弁及びポンプ50に接続されている切替弁を制御する機能部である。切替弁を制御することにより、ポンプ50の動作と併せて給気が行えたり、排気が行えたりする。また、各セルの空気を保持する制御を行う。
【0043】
操作表示部180は、利用者(例えば、患者や、被介護者、介護スタッフ等)がベッド装置1に対して操作を指示したりするための入力部や、ベッド装置1の状態を利用者に報知するための機能部である。例えば、タッチパネルを有する液晶画面で構成されていたり、ハードウェアキーで構成されていたりする。
【0044】
[3.処理の流れ]
続いて処理の流れについて図を用いて説明する。
図8は、本実施形態において、圧力センサにより切替弁の故障を検知し、セルの異常膨張を防止する処理である。ここでの処理では、ポンプ制御部160の指示によりポンプ50は稼働中であり、切替弁制御部170の指示による切替弁の開閉により、セルから排気あるいはセルの状態維持の場合を想定している。
【0045】
まず、切替弁制御部170の指示により、切替弁が開閉動作を行い、セルの強制排気あるいは状態維持を開始する(ステップS11)。各セル系統に接続する圧力センサ150により内圧が測定されており、状態検出部110が切替弁の開閉制御開始から単位時間当たりの圧力上昇を算出して故障閾値以上となるかを判定している(ステップS12)。圧力センサの測定時間は、切替弁の切替動作を行ってから1〜5秒程度であり、そのときのセルの内圧上昇分から単位時間当たりの圧力上昇値を算出する。故障閾値は望ましくは1kPa以上に設定する。これらの値は、個々のセルのサイズや材質、ポンプの能力により異なるので、予め設定しておき、記憶部120の設定テーブル122に記憶しておく。
【0046】
圧力センサ150の値が、単位時間当たりの圧力上昇値が故障閾値未満の場合は(ステップS12;No)、切替弁に異常はないものとして、セルの内圧が設定テーブル122に記憶されている規定値に達するまで動作を継続する(ステップS13)。
故障閾値以上になった場合は(ステップS12;Yes)、切替弁が故障したものと判断し、ポンプ制御部160がポンプ50を直ちに停止する(ステップS14)。
【0047】
このように、セル内圧の単位時間当たりの圧力上昇値により切替弁の故障を検知することにより、セルが異常膨張を起こすまえに切替弁の故障を検知することができる。切替弁のどの故障箇所までの特定はできなくとも、直ちにポンプを停止するので、セルの異常膨張を防止できる。また、単位時間当たりの前記圧力上昇値が前記切替弁を切り換えてセルからの排気あるいは圧力維持を開始した時からの時間により求められるので、直ちに切替弁の故障を検知することができる。こうしてセルの異常膨張を未然に防ぐことができる。
【0048】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も特許請求の範囲に含まれる。
例えば、上述の実施形態においては、エアセルが複数に分割形成されている例(中心に近いセルが上側と下側とに分割形成されている例)について説明したが、単純に一つのセルで形成されていても良い。