(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記太陽電池封止膜に含まれる前記シラン化合物の量が、前記エチレン・α−オレフィン共重合体100重量部に対して0.1〜3.0重量部である、請求項2に記載の太陽電池封止膜の保存用または運搬用の包装体。
前記シラン変性樹脂が、前記エチレン・α−オレフィン共重合体100重量部に対して、重合性シラン化合物0.1〜5重量部をグラフト変性させた変性体である、請求項2に記載の太陽電池封止膜の保存用または運搬用の包装体。
前記太陽電池封止膜に含まれる珪素原子(Si)の割合が、前記太陽電池封止膜の重量を基準として300〜4000ppmである、請求項1に記載の太陽電池封止膜の保存用または運搬用の包装体。
前記調湿剤が、シリカゲル、塩化カルシウム、および塩化マグネシウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項11に記載の太陽電池封止膜の保存用または運搬用の包装体。
表面側透明保護部材と、請求項1に記載の包装体から取り出した第1の太陽電池用封止膜と、太陽電池セルと、請求項1に記載の包装体から取り出した第2の太陽電池用封止膜と、裏面側保護部材と、をこの順に積層して積層体を形成する第1の工程と、
前記第1の工程で得られた前記積層体を貼り合わせて一体化する第2の工程と、
を含む太陽電池モジュールの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の包装体は、シラン化合物および/またはシラン変性樹脂を含む太陽電池封止膜と、前記太陽電池封止膜を包装する包装袋と、を含んでなるものであり、前記包装体の内部の絶対湿度が1〜15g/m
3である、太陽電池封止膜の保存用または運搬用の包装体である。また、本発明は、前記包装体を用いた保存・運搬方法、および前記包装体を用いた太陽電池封止膜を用いた太陽電池モジュールに係るものである。以下、本発明の上記要件について、太陽電池封止膜、太陽電池封止膜の包装体、太陽電池モジュールの製造方法について詳細に説明する。
【0031】
また、以下の説明では、「〜」を使用して数値範囲を規定するが、本発明の「〜」は、境界値を含む。例えば、「10〜100」とは、10以上100以下である。
【0032】
1.太陽電池封止膜
太陽電池封止膜は、主たる構成成分となる樹脂と、接着性付与剤と、必要に応じて配合される各種添加剤と、を含むものである。なお、接着性付与剤は、シラン変性剤で変性させたシラン変性樹脂であってもよい。また、接着性付与剤としてシラン変性樹脂を用いた場合は、このシラン変性樹脂自体を主たる構成成分となる樹脂として用いることができる。
【0033】
主たる構成成分となる樹脂の例としては、エチレン単独重合体や、エチレンと少なくとも1種のエチレン以外の共重合成分との共重合体(以下、「エチレン共重合体」または「エチレン系重合体」ともいう)が挙げられる。エチレン共重合体は、エチレンと共重合成分とのランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよいが、好ましくはランダム共重合体である。エチレン共重合体における共重合成分の例には、炭素原子数が3〜20のα−オレフィン、環状オレフィン、酢酸ビニル等が含まれる。
【0034】
炭素原子数が3〜20のα−オレフィンの例には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが含まれる。
【0035】
環状オレフィンの例には、ノルボルネン誘導体、トリシクロ−3−デセン誘導体、トリシクロ−3−ウンデセン誘導体、テトラシクロ−3−ドデセン誘導体、ペンタシクロ−4−ペンタデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカジエン誘導体、ペンタシクロ−3−ペンタデセン誘導体、ペンタシクロ−4−ヘキサデセン誘導体、ペンタシクロ−3−ヘキサデセン誘導体、ヘキサシクロ−4−ヘプタデセン誘導体、ヘプタシクロ−5−エイコセン誘導体、ヘプタシクロ−4−エイコセン誘導体、ヘプタシクロ−5−ヘンエイコセン誘導体、オクタシクロ−5−ドコセン誘導体、ノナシクロ−5−ペンタコセン誘導体、ノナシクロ−6−ヘキサコセン誘導体、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン誘導体、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン誘導体、炭素数3〜20のシクロアルキレン誘導体などが含まれる。中でも、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン誘導体およびヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン誘導体が好ましく、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンが特に好ましい。
【0036】
エチレン共重合体における共重合成分(α−オレフィン、環状オレフィンおよび酢酸ビニル)は、1種類単独で用いられてもよく、2種類以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0037】
酢酸ビニルとエチレンとの共重合体(エチレン・酢酸ビニル共重合体)は、透明性、柔軟性、接着性および耐久性が高く、各種添加剤との相溶性に優れる点などから好適に用いられる。しかし、上記エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)を用いる場合には、十分な耐熱性を付与するために過酸化物を添加し、太陽電池モジュールを作製する際に加熱し架橋反応を進めることで硬化させる必要がある。この架橋処理には時間を要するため太陽電池モジュールの製造効率が悪くなる傾向がある。また上記の加熱時に、酢酸ビニル成分が分解することで酢酸ガスなどが発生し、太陽電池セル中の電極などを劣化させるおそれがある。
【0038】
一方、エチレン・α−オレフィン共重合体やエチレン・環状オレフィン共重合体は耐熱性に優れるため、太陽電池封止膜に過酸化物を添加し、太陽電池モジュール作製時に加熱硬化反応をする必要はない。よって上記のEVAを用いた場合に比べて、太陽電池モジュールの製造効率に優れ、かつ分解ガスの発生による太陽電池セルの劣化の可能性は低い。しかしエチレン・α−オレフィン共重合体やエチレン・環状オレフィン共重合体は極性基を有さない、または有していても数が少ないため、ガラスなど主に無機化合物で構成される透明前面基板等の表面との親和性が低く、接着力がEVAに比べて劣る場合が多い。
【0039】
よってエチレン・α−オレフィン共重合体やエチレン・環状オレフィン共重合体を太陽電池封止膜の主たる構成成分となる樹脂として用いる場合は、後述する接着性付与剤を添加することが好ましい。特にシラン変性樹脂を添加するか、または主たる構成成分となる樹脂自体をシラン変性してシラン変性樹脂とするのが好ましい。
【0040】
太陽電池封止膜の主たる構成成分となる樹脂としては、下記a)〜e)の要件を全て満たすエチレン・α−オレフィン共重合体を用いることが好ましい。以下、それぞれの要件について説明する。
a)密度が900〜940kg/m
3である。
b)示差走査熱量測定(DSC)に基づく融解ピーク温度が90〜125℃である。
c)JIS K−6721に準拠し、190℃、2.16kg荷重にて測定されるメルトフローレート(MFR2)が0.1〜100g/10分である。
d)Mw/Mnの値が1.2〜3.5である。
e)金属残渣が50ppm以下である。
【0041】
(要件a))
エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は900〜940kg/m
3であり、好ましくは900〜935kg/m
3、さらに好ましくは900〜930kg/m
3、より好ましくは900〜925kg/m
3、特に好ましくは905〜925kg/m
3、最も好ましくは905〜923kg/m
3である。エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が900kg/m
3未満であると、太陽電池封止膜の耐熱性が低下する傾向にある。このため、太陽電池モジュールを傾けた状態で発電した場合、ガラスや電極が徐々に滑ってしまいガラスが滑り落ちてしまうことがある。一方、エチレン・α−オレフィン共重合体の密度が940kg/m
3超であると、太陽電池封止膜の柔軟性が低下し、太陽電池モジュールをラミネートする際に結晶セルの割れや銀電極の剥離が生ずることがある。また、ラミネート成形時の温度を高くする必要性が生ずる場合がある。
【0042】
エチレン・α−オレフィン共重合体の密度は、α−オレフィン等の共重合成分の割合に依存する。共重合成分の割合が少ないほど、得られるエチレン・α−オレフィン共重合体の密度は高くなる。一方、共重合成分の割合が多いほど、得られるエチレン・α−オレフィン共重合体の密度は低くなる。また、エチレン・α−オレフィン共重合体中の共重合成分の割合は、重合系内における共重合成分とエチレンとの組成比(共重合成分/エチレン)により決定されることが知られている(例えばWalter Kaminsky,Makromol.Chem.193,p.606(1992))。このため、「共重合成分/エチレン」の比の値を増減させることで、得られるエチレン・α−オレフィン共重合体の密度を増減させることが可能である。
【0043】
(要件b))
示差走査熱量測定(DSC)に基づくエチレン・α−オレフィン共重合体の融解ピーク温度は90〜125℃であり、好ましくは90〜120℃、さらに好ましくは90〜115℃である。エチレン・α−オレフィン共重合体の融解ピーク温度が90℃未満であると、太陽電池封止膜の耐熱性が低下する傾向にある。このため、太陽電池モジュールを傾けた状態で発電した場合、ガラスや電極が徐々に滑ってしまいガラスが滑り落ちてしまうことがある。一方、エチレン・α−オレフィン共重合体の融解ピーク温度が125℃超であると、太陽電池封止膜の柔軟性が低下し、太陽電池モジュールをラミネートする際に結晶セルの割れや銀電極の剥離が生ずることがある。また、ラミネート成形時の温度を高くする必要性が生ずる場合がある。
【0044】
エチレン・α−オレフィン共重合体の融解ピーク温度も、密度と同様にα−オレフィン等の共重合成分の割合に依存する。共重合成分の割合が少ないほど、得られるエチレン・α−オレフィン共重合体の融解ピーク温度は高くなる。一方、共重合成分の割合が多いほど、得られるエチレン・α−オレフィン共重合体の融解ピーク温度は低くなる。また、エチレン・α−オレフィン共重合体中の共重合成分の割合は、重合系内における共重合成分とエチレンとの組成比(共重合成分/エチレン)により決定されることが知られている(例えばWalter Kaminsky,Makromol.Chem.193,p.606(1992))。このため、「共重合成分/エチレン」の比の値を増減させることで、得られるエチレン・α−オレフィン共重合体の融解ピーク温度を変化させることが可能である。
【0045】
(要件c))
JIS K−6721に準拠し、190℃、2.16kg荷重にて測定されるエチレン・α−オレフィン共重合体のメルトフローレ−ト(MFR2)は、0.1〜100g/10分であり、好ましくは0.5〜50g/10分、さらに好ましくは0.5〜20g/10分である。エチレン・α−オレフィン共重合体のMFR2が0.1g/10分未満であると流動性が低下し、押出成形時の生産性が低下する。一方、エチレン・α−オレフィン共重合体のMFR2が100g/10分超であると流動性が高すぎるため、シート成形が困難である。また、得られる太陽電池封止膜の引張強度等の機械物性が低下する。
【0046】
MFR2は、エチレン・α−オレフィン共重合体の分子量に依存する。具体的には、MFR2の値が小さいほど分子量は大きく、MFR2の値が大きいほど分子量は小さくなる傾向にある。また、エチレン・α−オレフィン共重合体等のエチレン共重合体の分子量は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素(H
2)/エチレン)により左右されることが知られている(例えば、Kazuo Soga、KODANSHA“CATALYTIC OLEFIN POLYMERIZATION”、376頁(1990年))。このため、重合系における「水素(H
2)/エチレン」の比の値を適宜増減させることで、所望とするMFR2のエチレン・α−オレフィン共重合体を製造することができる。
【0047】
(要件d))
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される、エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は1.2〜3.5であり、好ましくは1.2〜3.2、さらに好ましくは1.2〜2.8である。エチレン・α−オレフィン共重合体のMw/Mnが1.2未満であると、リビングポリマーとなり、製造しようとするエチレン・α−オレフィン共重合体の単位重量当りの触媒量が増大して製造コストが高くなり、工業的に不利である。一方、エチレン・α−オレフィン共重合体のMw/Mnが3.5超であると、得られる太陽電池封止膜の衝撃強度が低下する傾向にある。また、エチレン・α−オレフィン共重合体がべたついてしまい、ブロッキングにより太陽電池封止膜(シート)が剥離し難くなる。
【0048】
エチレン・α−オレフィン共重合体のMw/Mnは、一般に組成分布に左右される。例えば、バッチ式スラリー重合の場合、共重合成分の転化率を低く保つとMw/Mnは小さくなる。一方、共重合成分の転化率を高くするとMw/Mnは大きくなる。また、重合時間を短くすることで共重合成分の転化率が低くなり、重合触媒の活性種の変質が抑制され、組成分布が狭くなり、Mw/Mnが小さくなる傾向にある。一方、重合時間を長くすることで共重合成分の転化率が高くなり、重合触媒の活性種の変質が発生し、組成分布が広くなり、Mw/Mnが大きくなる傾向にある。
【0049】
さらに、連続の気相または溶液重合では、平均滞留時間を短くすることで、重合触媒の活性種の変質が抑制され、組成分布が狭くなり、Mw/Mnが小さくなる傾向にある。一方、平均滞留時間を長くすることで、重合触媒の活性種の変質が発生し、組成分布が広くなり、Mw/Mnが大きくなる傾向にある。
【0050】
(要件e))
エチレン・α−オレフィン共重合体中の金属残渣は50重量ppm以下であり、好ましくは0.1〜45重量ppm、さらに好ましくは0.1〜40重量ppmである。エチレン・α−オレフィン共重合体中の金属残渣が0.1重量ppm未満であると、重合触媒の脱灰操作が必須となることがある。このため、プラント固定費、用役費等が高くなり、製品コストが高くなる場合がある。さらに、脱灰処理に用いる酸あるいはアルカリも多量必要となるため、得られるエチレン・α−オレフィン共重合体に酸やアルカリが残存する可能性が高くなる。このため、残存した酸やアルカリの影響で電極等が腐食してしまう可能性がある。一方、エチレン・α−オレフィン共重合体中の金属残渣が50重量ppm超であると、金属残渣の影響で体積固有抵抗および絶縁破壊抵抗が低下する。
【0051】
エチレン・α−オレフィン共重合体中の金属残渣は、重合触媒(例えば、メタロセン化合物)の重合活性に依存する。重合活性の高い重合触媒を用いた場合には、モノマーに対する重合触媒の量を減らすことができるので、得られるエチレン・α−オレフィン共重合体中の金属残渣を低減することができる。このため、重合活性の高い重合触媒を用いることが、金属残渣の少ないエチレン・α−オレフィン共重合体を得るための好適な手法の一つであるといえる。また、重合触媒の最適重合温度で重合すること、重合圧力をできる限り高くすること、あるいは重合触媒当たりのモノマー濃度を高くすること等も、重合触媒の重合活性を上げ、得られるエチレン・α−オレフィン共重合体中の金属残渣を低減する好適な手法である。
【0052】
また、重合触媒として有機アルミニウムオキシ化合物、メタロセン化合物と反応してイオン対を形成する化合物、または有機アルミニウム化合物を用いる場合には、これらの重合触媒の添加量をできる限り低減することも、得られるエチレン・α−オレフィン共重合体中の金属残渣を低減する好適な手法である。その他、様々な手法を用いて重合活性を向上させることも金属残渣を低減する好適な手法となりうる。なお、酸、アルカリ、またはアセト酢酸メチル等のキレート化剤を使用して脱灰処理することで金属残渣を低減させる手法もある。しかしながら、エチレン・α−オレフィン共重合体中に酸、アルカリ、またはキレート化剤が残留した場合には、薄膜電極の腐食が促進される場合がある。このため、このような脱灰処理によって金属残渣を低減する手法は好適であるとはいえない。
【0053】
エチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレン系の重合体を合成可能な従来公知の触媒成分を用いた重合反応によって製造することができる。触媒成分としては、チーグラ・ナッタ触媒、メタロセン化合物等が挙げられる。これらの中で、重合活性を示す単位遷移金属当たりの重合活性が高いメタロセン化合物が、脱灰処理を施すことなく金属残渣が少ないエチレン・α−オレフィン共重合体を得ることができるため好ましい。メタロセン化合物としては、例えば、特開2006−077261号公報、特開2008−231265号公報、および特開2005−314680号公報等に記載のメタロセン化合物を用いることができる。なお、これらの特許文献に記載のメタロセン化合物とは異なる構造のメタロセン化合物を使用してもよい。また、2種以上のメタロセン化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
(I)従来公知のメタロセン化合物と、(II)(II−1)有機アルミニウムオキシ化合物、(II−2)前記メタロセン化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物、および(II−3)有機アルミニウム化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物(助触媒ともいう)と、からなるオレフィン重合用触媒の存在下、各種のモノマーを重合反応系に供給することにより、エチレン・α−オレフィン共重合体を製造することができる。
【0055】
なお、(II−1)有機アルミニウムオキシ化合物、(II−2)前記メタロセン化合物(I)と反応してイオン対を形成する化合物、および(II−3)有機アルミニウム化合物としても、例えば特開2006−077261号公報、特開2008−231265号公報、および特開2005−314680号公報等に記載のメタロセン化合物を用いることができる。なお、これらの特許文献に記載のメタロセン化合物とは異なる構造のメタロセン化合物を使用してもよい。これらのメタロセン化合物は、個別に重合反応系に投入してもよいし、予め相互に接触させたものを重合反応系に投入してもよい。さらに、例えば特開2005−314680号公報等に記載の微粒子状無機酸化物担体にメタロセン化合物を担持しておき、その状態で使用してもよい。
【0056】
重合は、従来公知の気相重合法;スラリー重合法、溶液重合法などの液相重合法のいずれでも行うことができる。好ましくは高活性で金属残渣が少なくなる気相重合法またはスラリー重合法により行われる。スラリー重合および溶液重合は、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素あるいはこれらの混合物などの不活性炭化水素媒体下で行われる。これらの不活性炭化水素溶媒のうちでは、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素が好ましい。なお、前記の重合方法で得られるエチレン・α−オレフィン共重合体については、従来公知の脱灰処理を行い、触媒成分および微粒子無機酸化物担体を除去してもよい。
【0057】
エチレン・α−オレフィン共重合体やエチレン・環状オレフィン共重合体を太陽電池封止膜の主たる構成成分となる樹脂として用いる場合、後述するシラン化合物などの接着性付与剤を添加することが好ましい。また、接着性付与剤とともにラジカル重合性不飽和化合物を接着力補助成分として添加し、グラフト重合法などの公知の方法で重合させて、上記の透明前面基板等と共重合体との接着力を改善することが好ましい。なお、ラジカル重合性不飽和化合物としては、水素結合性の官能基などの極性基を有するものが好ましい。
【0058】
接着力補助成分であるラジカル重合性不飽和化合物としては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸あるいはその誘導体、ビニルエステル化合物、塩化ビニル、カルボジイミド化合物などが挙げられる。中でも不飽和カルボン酸あるいはその誘導体が特に好ましい。具体的な化合物としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸[商標](エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸)などの不飽和カルボン酸;およびその誘導体などが挙げられる。なお、「誘導体」としては、例えば酸ハライド、アミド、イミド、無水物、エステルなどが挙げられる。
【0059】
かかる誘導体の具体例としては、例えば塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、2−メチルマレイン酸無水物、2−クロロマレイン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、4−メチル−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレート、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどが挙げられる。
【0060】
これらの不飽和カルボン酸およびその誘導体は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。これらの中では、不飽和ジカルボン酸またはその無水物が好適であり、特にマレイン酸、ナジック酸またはこれらの酸無水物が好ましく用いられる。
【0061】
上記接着力補助成分の配合量は、上記エチレン・α−オレフィン共重合体やエチレン・環状オレフィン共重合体100重量部に対して通常0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜4重量部である。接着力補助成分の配合量が上記範囲にあると、太陽電池封止膜の接着力を十分に改善しながら、前記封止膜の透明性、柔軟性等に悪影響を与えないため好ましい。
【0062】
本発明に用いられる太陽電池封止膜は、太陽電池封止膜の太陽電池セルや保護部材に対する接着性を向上させるため、接着性付与剤を含む。
【0063】
接着性付与剤としては、主たる構成成分となる樹脂に添加するシラン化合物でもよいし、主たる構成成分となる樹脂にエチレン性不飽和シラン化合物等の重合性シラン化合物をグラフト重合させたシラン変性樹脂でもよい。またシラン化合物とシラン変性樹脂の両方を用いてもよい。
【0064】
シラン化合物およびシラン変性樹脂は、ケイ素原子に結合するアルコキシ基やハロゲン基などの反応基を有しているものが好適に用いられる。これは後述する太陽電池モジュール内で太陽電池封止膜が接する部材等の表面と上記反応基が反応し、化学的結合または水素結合などの物理的結合を形成するため、太陽電池封止膜と部材等との接着性が大きく向上すると考えられるからである。なお、太陽電池封止膜が接する部材としては、シリコンなどにより構成される太陽電池セル、ガラスなどの無機物により構成される表面保護部材等がある。シラン化合物またはシラン変性樹脂が有する上記反応基の活性が高く、反応基の数が多いほど接着性が向上する。但し、反応基の活性が高すぎると、太陽電池封止膜の保存および運搬時に接着性付与剤が反応してしまい、前記封止膜を用いて太陽電池モジュールを製造する際に、接着性を付与することができなくなる恐れがある。
【0065】
接着性付与剤として用いられるシラン化合物は、シランカップリング剤であることが好ましい。シランカップリング剤の具体例としては、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス−(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エトキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、およびN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。中でも、接着性付与剤の安定性という観点からは、アルコキシシラン類が好適に用いられる。アルコキシシラン類は、常温かつpHが中性の領域では、比較的安定に存在するからである。一方で、太陽電池モジュールを作製する際には、その安定性から太陽電池封止膜の接着力が発現しにくいという問題がある。
【0066】
これらのシラン化合物の配合量は、主たる構成成分となる樹脂100重量部に対して、0.1〜3.0重量部であることが好ましく、0.2〜1.5重量部であることがより好ましい。
【0067】
またシラン変性樹脂は、公知の方法によって製造することができる。シラン変性樹脂の製造方法は特に制限されないが、例えば、主たる構成成分となる樹脂と重合性シラン化合物とを、有機過酸化物を用いてグラフト重合することにより製造することが好ましい。主たる構成成分となる樹脂を主鎖とし、重合性シラン化合物を側鎖としてグラフト重合することで、接着力に寄与する重合性シラン化合物におけるアルコキシル基などの反応基の自由度が高くなり、より効率的に太陽電池モジュール内の表面保護部材などの表面との接着性が向上するからである。
【0068】
上記の重合性シラン化合物としては、従来公知のものが用いることができ、特に制限はない。重合性シラン化合物としては、エチレン性不飽和シラン化合物を用いることができる。エチレン性不飽和シラン化合物の具体例としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシシラン)、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0069】
上記の重合性シラン化合物による変性量は、主たる構成成分となる樹脂100重量部に対して通常0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜4重量部である。重合性シラン化合物による変性量が上記範囲にあると、特にエチレン共重合体の接着性を十分に改善しながら、エチレン共重合体の透明性、柔軟性等に悪影響を与えないためである。
【0070】
太陽電池封止膜に含まれる珪素原子(Si)の割合は、太陽電池封止膜の重量を基準として300〜4000ppmであることが好ましく、400〜3000ppmであることがより好ましい。珪素原子(Si)の割合が上記の範囲内であると、所定条件に調湿された包装体内に入れた状態で保存または運搬されることで、太陽電池封止膜の接着性が十分に向上することとなる。なお、太陽電池封止膜に含まれる珪素原子(Si)の割合は、例えば太陽電池封止膜を湿式分解した後、純水にて定容し、ICP発光分析装置(島津製作所社製、ICPS−8100)にて珪素原子(Si)(単位:mg/l)を定量することにより測定することができる。
【0071】
本発明に用いられる太陽電池封止膜は、架橋助剤等の各種添加剤を含んでもよい。
【0072】
また、太陽電池封止膜には、接着性付与剤の反応性を高めるために反応促進剤を添加してもよい。但し、保存および運搬時の安定性を維持するためには、太陽電池封止膜は反応促進剤を実質的に含まない方が好ましい。また上記反応促進剤が、太陽電池封止膜の耐候性や絶縁性を低下させ、太陽電池モジュールの発電効率を低下させる恐れもあるからである。上記の反応促進剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されないが、具体的には、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテート、ジオクチル錫ジラウレートといったシラノール縮合触媒が挙げられる。また「実質的に含まない」とは、太陽電池封止膜を構成する全樹脂100重量部に対して、0.05重量部以下である場合をいい、0.03重量部以下であることが好ましく、0重量部であることが最も好ましい。
【0073】
太陽電池封止膜には、架橋剤を含有させることができる。架橋剤は、主たる構成成分となる樹脂を架橋させることにより、太陽電池封止膜の耐熱性および耐候性を向上させうる。このような架橋剤としては、一般に、100℃以上でラジカルを発生する有機過酸化物が好ましい。特に配合時の安定性を考慮すると、架橋剤としては半減期10時間の分解温度が70℃以上である有機過酸化物がより好ましい。
【0074】
このような有機過酸化物の例には、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、3−ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエートおよびベンゾイルパーオキサイドなどが含まれる。
【0075】
架橋剤の含有量は、主たる構成成分となる樹脂としてエチレン・α−オレフィン共重合体を用いた場合、このエチレン・α−オレフィン共重合体100重量部に対して、0.1〜3.0重量部であることが好ましく、0.2〜2.0重量部であることがより好ましい。
【0076】
架橋助剤は、エチレン・α−オレフィン共重合体などの主たる構成成分となる樹脂の架橋反応性を高めて、太陽電池封止膜の耐久性を向上させうる。架橋助剤の例には、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルイソシアネートなどの3官能の架橋助剤のほか、トリメチロールプロパントリアクリレートなどが含まれる。
【0077】
その他の添加剤の例には、着色剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、変色防止剤、耐熱安定剤、紫外線(耐候)安定剤、光安定剤などが含まれる。
【0078】
着色剤の例には、金属酸化物および金属粉などの無機顔料;アゾ系、フタロシアニン系、アゾ系、および酸性または塩基性染料系レーキなどの有機顔料が含まれる。
【0079】
紫外線吸収剤の例には、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルフォベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系;2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系;フェニルサルシレートおよびp−t−ブチルフェニルサルシレートなどのヒンダートアミン系などが含まれる。
【0080】
老化防止剤の例には、アミン系、フェノール系、ビスフェニル系およびヒンダートアミン系が含まれる。老化防止剤のより具体的な例には、ジ−t−ブチル−p−クレゾールおよびビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペラジル)セバケートなどが含まれる。紫外線(耐候)安定剤の例には、ジブチルヒドロキシトルエンなどが含まれる。また、エチレン・α−オレフィン共重合体などの主たる構成成分となる樹脂の安定性を向上させる上で、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p−ベンゾキノンおよびメチルハイドロキノンなどが含まれてもよい。
【0081】
このような太陽電池封止膜は、前述した成分を含む樹脂組成物を、T−ダイ押出成形機を用いて溶融混練して溶融樹脂シートとして押出した後、冷却固化する方法(溶融押出法);または溶融樹脂を複数のローラで挟んでフィルム状に圧延して成形する方法(カレンダー法)などにより得ることができる。太陽電池封止膜の厚みは、例えば100〜2000μm程度である。
【0082】
太陽電池封止膜は、加熱硬化工程におけるクッション性を向上させるため、並びに保存および運搬工程におけるブロッキングを抑制するために、その表面にエンボス加工が施されていてもよい。
【0083】
2.太陽電池封止膜の包装体
本発明の包装体は、シラン化合物および/またはシラン変性樹脂を含む太陽電池封止膜と、前記太陽電池封止膜を包装する包装袋と、を含んでなるものであり、前記包装体の内部の絶対湿度が1〜15g/m
3である。
【0084】
太陽電池封止膜は、ロール状または所定のサイズに切り出されてシート状に積層された後、包装袋で包装され、内部を所定の湿度に調整した包装体として保存または運搬される。包装体内部の湿度を適度に保つことで、太陽電池封止膜に含まれる接着性付与剤の反応を抑制することができる。また、太陽電池モジュールを作製する際に太陽電池封止膜に十分な接着力を発現させることができる。包装体は、密閉性を高める等の観点から粘着テープで封止されていてもよい。
【0085】
包装袋は、架橋剤や添加剤の揮発を抑制し、また包装体内部の湿度や前記内部に含まれる水分量を好適なものに維持するために、高いガスバリア性および水蒸気バリア性を有することが好ましい。このため、包装袋の水蒸気透過率は1g/(24hr・m
2)以下であることが好ましく、0.1g/(24hr・m
2)以下であることがより好ましい。透湿度は、JIS Z 0208に準拠して、温度40℃、相対湿度90%RHで測定されうる。
【0086】
包装袋は、ガスバリア性および水蒸気バリア性が良好である点などから、ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。ポリオレフィン樹脂は、単独重合体であってもよいし、複数の共重合体成分の共重合体であってもよい。ポリオレフィン樹脂の例には、ポリエチレン樹脂(高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンを含む)、ポリプロピレン樹脂、エチレン・α−オレフィン共重合体樹脂などが含まれる。
【0087】
また包装袋は、ポリオレフィン樹脂以外の他の樹脂を含んでもよい。他の樹脂の例には、ポリエステルなどが含まれる。
【0088】
また包装袋は、ガスバリア性および水蒸気バリア性を向上させるため、ポリオレフィン樹脂を含む樹脂層とアルミニウムシートとの積層シートによって形成されていることが好ましい。この場合、アルミニウムシートが腐食するのを防ぐため、アルミニウムシートの端部は樹脂層内に封入され、外部に露出していないことが好ましい。
【0089】
包装袋に含まれるポリオレフィン樹脂は、ヒートシール性を有することが好ましい。ポリオレフィン樹脂のヒートシール温度(溶融温度)は、保存または運搬中に溶融し難い点、およびヒートシールが容易である点から、80〜160℃であることが好ましい。ポリオレフィン樹脂は、良好なガスバリア性とヒートシール性とを有する点から、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどがより好ましい。
【0090】
包装袋の厚みは、シートの強度、取り扱い性、およびガスバリア性などを考慮して、50〜200μmであることが好ましい。
【0091】
太陽電池封止膜を梱包した包装袋は、さらに粘着テープで封止されてもよい。粘着テープは、基材フィルムと、粘着層とを含む。
【0092】
粘着テープの粘着層は、粘着樹脂と、粘着性付与剤とを含む。粘着樹脂の例には、公知のアクリル系、ゴム系、シリコン系の粘着樹脂などが含まれる。
【0093】
アクリル系およびゴム系の粘着樹脂は、主剤となる重合体を架橋剤で架橋させたものである。粘着樹脂に含まれるゴム系重合体の例には、イソブチレン重合体等が含まれる。粘着樹脂に含まれるアクリル系共重合体の例には、n−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、エチルアクリレート等に由来する反復単位を含むアクリル系共重合体などが含まれる。アクリル系共重合体における共重合成分は、分子中に2重結合を有する成分、具体的には酢酸ビニル、アクリルニトリル、スチレンなどである。
【0094】
粘着テープは、例えば、主剤となる粘着樹脂、粘着性付与剤、および必要に応じて粘度を調整するための溶剤を混合することにより塗布液を得た後;該塗布液を、紙やプラスチック等の基材上に塗布・乾燥することにより得ることができる。
【0095】
粘着層の厚みは、例えば5〜50μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。粘着層が薄すぎると所望の粘着性が得られ難く、粘着層が厚すぎると粘着力が強すぎ、包装体内の太陽電池封止膜を取り出しにくくなるからである。
【0096】
包装体の内部の絶対湿度は1〜15g/m
3であり、3〜8g/m
3であることがより好ましい。包装体内の絶対湿度が上記の範囲内であると、太陽電池封止膜に含まれるシラン化合物および/またはシラン変性樹脂(接着性付与剤)の反応基が水分によって適度に活性化される。このため、太陽電池封止膜の保存中または運搬中における前記反応基の過剰な反応を抑制することができるとともに、太陽電池封止膜の接着力を十分に発揮させることができる。更には、太陽電池モジュールを作製する際に、太陽電池封止膜が良好な接着性を発現することとなる。包装体内部の絶対湿度が低すぎると、上記反応基が十分に活性化されないため、接着力が発揮しにくくなる。一方、包装体内部の絶対湿度が高すぎると、反応基が過剰に活性化してしまうため、太陽電池封止膜の接着力が低下する。反応基がアルコキシシリル基であるとともに、包装体内部の絶対湿度が高すぎる場合には、アルコキシシリル基が安定なシロキサン結合に変換されるため、太陽電池封止膜の接着力が低下することになる。
【0097】
以上のことから、本発明の包装体は、特にエチレン・α−オレフィン共重合体またはエチレン・α−オレフィン共重合体の一部分もしくは全体をシラン変性したシラン変性樹脂について、よりその効果を発揮する。これは上述したように、太陽電池封止膜の主たる構成成分としてエチレン・α−オレフィン共重合体を用いた場合には、EVAを用いた場合に比べて接着力が低くなるので、不足する接着力を補うべくシラン化合物やシラン変性樹脂などの接着性付与剤を多く添加する必要があるからである。
【0098】
包装体内部の絶対湿度は、以下に示す方法等によって調整することができる。例えば、乾燥雰囲気下においた太陽電池封止膜と、あらかじめ所望の湿度雰囲気下調湿された十分な量の調湿材とを、乾燥雰囲気下で包装袋に封入する。これにより、必要な量の水分が調湿材から生じて包装体内に供給されることとなるので、包装体内の絶対湿度を所望とする範囲内に調整することができる。
【0099】
包装体内部の絶対湿度は、公知の方法によって測定することができる。特に限定されないが、例えばハンディデジタル温湿度計「TRH−CH」(神栄テクノロジー社製)を包装体内部に差し込むことによって、包装体内部の絶対湿度を測定することができる。
【0100】
包装体内には、太陽電池封止膜とともに、包装体内部の湿度を調整するため調湿剤を入れることが好ましい。調湿剤は、上記太陽電池封止膜に含まれる架橋剤などの添加剤と反応しないものが好ましく、具体的には、B型シリカゲル、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。
【0101】
上記調湿剤は、包装体内部の湿度を好適な範囲に保つために、包装体内に入れる前に、予め所定の温度および湿度下で保持する等、水分量を調整しておくことが好ましい。例えば、温度15〜30℃、好ましくは20〜25℃、相対湿度10〜45%RH、好ましくは15〜35%RHの条件下で、24時間以上、好ましくは48時間以上保持する等することによって水分量が調整された調湿剤を使用することが好ましい。
【0102】
また包装体内に入れる調湿剤の量は、包装体内部空間の大きさ、包装体に入れる太陽電池封止膜の量、太陽電池封止膜に含まれる添加剤や接着性付与剤の量に応じて適宜、調整される。
【0103】
包装体は公知の任意の方法で作製することができ、作製方法は特に限定されない。包装体の作製方法の例には、太陽電池封止膜の積層体を包装袋で梱包した後、包装袋の開口部をヒートシールまたは粘着テープで固定する方法;ボトムシールした袋状の包装袋に太陽電池封止膜の積層体を入れた後、開口部をヒートシールまたは粘着テープで封止する方法などが含まれる。
【0104】
図1は、本発明の包装体の作製方法の一例を示す模式図である。
図1(A)に示されるように、まずボトムシールした袋状の包装袋12を用意し、これに太陽電池封止膜14を入れる。次いで、
図1(B)に示されるように、包装袋12の開口部12Aを、太陽電池封止膜とできるだけ重ならないように折り曲げる。その後、
図1(C)に示されるように、折り曲げた部分を粘着テープ16で封止することにより、包装体10を得ることができる。粘着テープは、太陽電池封止膜14の端部と、包装袋12とが重なっている部位の上に位置するように貼り付ける。
【0105】
得られた包装体は、暗所に置かれて運搬または保存されることが好ましい。暗所とは、30℃以下、好ましくは25℃以下の直射日光の当たらない所であることが好ましい。包装体は、断熱性を高める観点などから、さらにダンボール等の梱包容器内に梱包されて保存または運搬されることが好ましい。また、包装体を暗所において50時間以上、好ましくは100時間以上保存または運搬される。50時間以上保存等されることで、包装体内部の水分によって太陽電池封止膜の接着力を高い水準に維持することができる。
【0106】
3.太陽電池モジュール
保存および運搬された太陽電池封止膜は、太陽電池モジュールにおける太陽電池セルの封止部材(封止層)として好ましく用いられる。太陽電池セルの種類には、シリコン系(例えば結晶シリコン系、薄膜シリコン系)、化合物系(例えば、CIGS系)、有機系(例えば、色素増感系)などが含まれる。太陽電池セルがシリコン系である例で、以下説明する。
【0107】
(1)結晶シリコン系の太陽電池モジュール
図2は、太陽電池モジュールの構成の一例を示す断面図である。
図2に示されるように、太陽電池モジュール20は、インターコネクタ29により電気的に接続された複数の結晶シリコン系の太陽電池セル22と、それを挟持する、対向して配置された一対の表面側透明保護部材24と裏面側保護部材26とを有している。これらの保護部材と複数の太陽電池セル22との間には、封止層28が充填されている。封止層28は、太陽電池封止膜を貼り合わせて得られるものであり、太陽電池セル22の受光面および裏面に形成された電極と接している。電極とは、太陽電池セル22の受光面および裏面にそれぞれ形成された集電部材であり、後述する集電線、タブ付用母線、および裏面電極層などを含む。
【0108】
図3は、太陽電池セルの受光面と裏面の構成の一例を示す平面図である。
図3(A)に示されるように、太陽電池セルの受光面22Aには、ライン状に多数形成された集電線32と、集電線32から電荷を収集するとともに、インターコネクタ29(
図2参照)と接続されるタブ付用母線(バスバー)34Aと、が形成されている。
【0109】
図3(B)に示されるように、太陽電池セルの裏面22Bには、全面に導電層(裏面電極)36が形成され、その上に導電層36から電荷を収集するとともに、インターコネクタ29(
図2参照)と接続されるタブ付用母線(バスバー)34Bが形成されている。
【0110】
集電線32の線幅は、例えば0.1mm程度であり;タブ付用母線34Aの線幅は、例えば2〜3mm程度であり;タブ付用母線34Bの線幅は、例えば5〜7mm程度である。集電線32、タブ付用母線34Aおよびタブ付用母線34Bの厚みは、例えば20〜50μm程度である。
【0111】
集電線32、タブ付用母線34Aおよびタブ付用母線34Bは、導電性が高い金属を含むことが好ましい。このような導電性の高い金属の例には、金、銀、銅などが含まれるが、導電性や耐腐食性が高い点などから、銀や銀化合物、銀を含有する合金などが好ましい。
【0112】
導電層36は、導電性の高い金属だけでなく、受光面で受けた光を反射させて太陽電池セルの光電変換効率を向上させるという観点などから、光反射性の高い成分、例えばアルミニウムを含むことが好ましい。
【0113】
集電線32、タブ付用母線34A、タブ付用母線34Bおよび導電層36は、太陽電池セルの受光面22Aまたは裏面22Bに、前記導電性の高い金属を含む導電材塗料を、例えばスクリーン印刷により50μmの塗膜厚さに塗布した後、乾燥し、必要に応じて例えば600〜700℃で焼き付けすることにより形成される。
【0114】
表面側透明保護部材24は、太陽電池セル22の受光面側に配置されることから、透明である必要がある(
図2参照)。表面側透明保護部材24の例には、透明ガラス板や透明樹脂フィルムなどが含まれる。一方、裏面側保護部材26は透明である必要はなく、その材質は特に限定されない。裏面側保護部材26の例にはガラス基板やプラスチックフィルム等が含まれるが、耐久性や透明性の観点からガラス基板が好適に用いられている。
【0115】
太陽電池モジュール20は、任意の製造方法で得ることができる。太陽電池モジュール20は、例えば、裏面側保護部材26、太陽電池封止膜、複数の太陽電池セル22、太陽電池封止膜および表面側透明保護部材24をこの順に積層した積層体を得る工程;該積層体を、ラミネーター等により加圧し貼り合わせ、同時に必要に応じて加熱して一体化する工程;前記工程の後、さらに必要に応じて積層体を加熱処理し、前記封止膜を架橋反応させて硬化する工程により得ることができる。
【0116】
加熱加圧条件は、太陽電池封止膜の種類にもよるが、例えば130℃、真空下3分、加圧下4分とすることができる。加熱処理条件は、主に太陽電池封止膜を架橋させる目的から、例えば150℃、40分とすることができる。
【0117】
(2)薄膜シリコン系(アモルファスシリコン系)の太陽電池モジュール
薄膜シリコン系の太陽電池モジュールは、1)表面側透明保護部材(ガラス基板)/薄膜太陽電池セル/封止層/裏面側保護部材をこの順に積層したもの;2)表面側透明保護部材/封止層/薄膜太陽電池セル/封止層/裏面側保護部材をこの順に積層したもの等でありうる。表面側透明保護部材、裏面側保護部材および封止層は、前述の「(1)結晶シリコン系の太陽電池モジュール」の場合と同様である。
【0118】
1)の態様における薄膜太陽電池セルは、例えば、透明電極層/pin型シリコン層/裏面電極層をこの順に含む。透明電極層の例には、In
2O
3、SnO
2、ZnO、Cd
2SnO
4、ITO(In
2O
3にSnを添加したもの)等の半導体系酸化物が含まれる。裏面電極層は、例えば銀薄膜層を含む。各層は、プラズマCVD(ケミカル・ベ−パ・デポジション)法やスパッタ法により形成される。
【0119】
封止層は、裏面電極層(例えば銀薄膜層)と接するように配置される。透明電極層は、表面側透明保護部材上に形成されるので、表面側保護部材と透明電極層との間に封止層は配置されないことが多い。
【0120】
2)の態様における薄膜太陽電池セルは、例えば、透明電極層/pin型シリコン層/金属箔、または耐熱性高分子フィルム上に配置された金属薄膜層(例えば、銀薄膜層)、をこの順に含む。金属箔の例には、ステンレススチール箔等が含まれる。耐熱性高分子フィルムの例には、ポリイミドフィルム等が含まれる。
【0121】
透明電極層およびpin型シリコン層は、前述と同様、CVD法やスパッタ法により形成される。つまり、pin型シリコン層は、金属箔、または耐熱性高分子フィルム上に配置された金属薄膜層に形成され;さらに透明電極層は、pin型シリコン層に形成される。また、耐熱性高分子フィルム上に配置される金属薄膜層もCVD法やスパッタ法により形成されうる。
【0122】
この場合、封止層は、透明電極層と表面側保護部材との間;および金属箔または耐熱性高分子フィルムと裏面側保護部材との間にそれぞれ配置される。
【0123】
このように、太陽電池封止膜から得られる封止層は、太陽電池セルの集電線、タブ付用母線および導電層などの電極と接している。
【0124】
また2)の態様における薄膜太陽電池セルは、シリコン層が1)の態様における結晶シリコン系の太陽電池セルに比べて薄いため、太陽電池モジュール製造時の加圧や前記モジュール稼動時の外部からの衝撃により破損しにくい。このため、結晶シリコン系の太陽電池モジュールに用いられるものよりも薄膜太陽電池モジュールに用いる太陽電池封止膜の柔軟性は低くてもよい。一方、上記薄膜太陽電池セルの電極は上述のように金属薄膜層であるため、腐食により劣化した場合、発電効率が著しく低下する恐れがある。よってEVAよりも柔軟性に劣るが分解ガスの発生源となる架橋剤を必ずしも必要としないエチレン・α−オレフィン共重合体が、太陽電池封止膜の主たる構成成分として、2)の態様における薄膜太陽電池モジュール用の太陽電池封止膜としてより好適に用いられる。
【実施例】
【0125】
1.各種物性値等の測定方法
(1)密度
メルトフローレート(MFR2)測定後のストランドを1時間かけて室温まで徐冷した後、密度勾配管法により密度(kg/cm
3)を測定した。
【0126】
(2)融解ピーク温度
パーキンエルマー社製の「DSC7」を使用し、試料5mg程度を専用アルミパンに詰め、(i)0℃から200℃までを320℃/minで昇温、(ii)200℃で5分間保持、(iii)200℃から0℃までを10℃/minで降温、(iv)0℃でさらに5分間保持、(v)10℃/minで昇温する際の吸熱曲線を測定した。測定した吸熱曲線における溶融ピークのピーク頂点を「融解ピーク温度(℃)」とした。なお、複数の溶融ピークが検出された場合には、最も高温側で検出されるピークのピーク頂点を「融解ピーク温度(℃)」とした。
【0127】
(3)MFR2
JIS K−6721に準拠し、190℃、2.16kg荷重にてMFR2(g/10分)を測定した。
【0128】
(4)分子量分布(Mw/Mn)
Waters社製のゲル浸透クロマトグラフ「Alliance GPC−2000型」を使用して分子量分布(Mw/Mn)を測定した。なお、測定条件を以下に示す。
分離カラム:東ソー社製の「TSKgel GNH6−HT」2本および「TSKgel GNH6−HTL」2本
カラムサイズ:直径7.5mm、長さ300mm
カラム温度:140℃
移動相:o−ジクロロベンゼン(和光純薬工業社製)(但し、酸化防止剤としてBHT(武田薬品社製)0.025重量%を含む)
流速:1.0ml/分
試料濃度:15mg/10ml
試料注入量:500μl
検出器:示差屈折計
標準ポリスチレン:Mw<1000、Mw>4×10
6 ・・・東ソー社製
1000≦Mw≦4×10
6 ・・・プレッシャーケミカル社製
【0129】
(5)金属残渣
エチレン系重合体を湿式分解後、純水にて定容し、ICP発光分析装置(島津製作所社製、「ICPS−8100」)を使用してアルミニウム、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、およびマグネシウムを定量化した。これらの金属元素の合計量を「金属残渣(ppm)」とした。
【0130】
(6)包装体内の水分量
先ず、包装体内部の温度および相対湿度から、湿り空気線図を用いて算出した絶対湿度(g/cm
3)に、包装体内部の空間体積(cm
3)を乗じることにより算出した。
【0131】
2.合成例
(合成例1)エチレン系重合体(A)
1.固体触媒成分の調製
特開平9−328520号公報に記載の方法にて、メタロセン化合物であるジメチルシリレンビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを含有する固体触媒成分を調製した。得られた固体触媒成分1g当りのジルコニウム含有量は2.3mgであった。
【0132】
2.予備重合触媒の調製
特開平9−328520号公報に記載の方法にて、上記で得られた固体触媒成分4gと、1−ヘキセンと、エチレンとを使用し、3gのポリエチレンが予備重合された予備重合触媒を得た。得られた予備重合触媒1g当りのジルコニウム含有量は2.2mgであった。
【0133】
3.重合
充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブに、脱水精製したヘキサンを800ml装入した。系内をエチレンと水素の混合ガス(水素含有割合:0.7mol%)で置換した。系内を60℃とし、トリイソブチルアルミニウム1.5mmol、1−ヘキセン200ml、および上記の予備重合触媒を、ジルコニウム原子換算で0.015mgを添加した。
【0134】
その後、エチレンと水素の混合ガス(水素含有割合:0.7mol%)を導入し、全圧を3MPaGとして重合を開始した。その後、混合ガスのみを補給し、全圧を3MPaGに保ち、70℃で1.5時間重合を行った。重合終了後、生成した固形分を濾過して80℃で1晩乾燥し、エチレン系重合体(A)を101g得た。得られたエチレン系重合体(A)の密度、MFR2、Mw/Mn、および金属残渣の測定結果を表1に示す。
【0135】
上記重合を繰り返し行った。得られたエチレン系重合体(A)をサーモ・プラスチック社製の単軸押出機(スクリュー径:20mmφ、L/D=28)を使用し、ダイス温度=190℃の条件で押し出すことによりエチレン系重合体(A)のペレット(エチレン系重合体(A)P)を得た。
【0136】
(合成例2)エチレン系重合体(B)
エチレンと水素の混合ガスの水素含有割合を0.5mol%、ヘキサンの量を870ml、1−ヘキセンの量を230mlに代えたこと以外は、上記合成例1における「3.重合」と同様の操作によりエチレン系重合体(B)を130g得た。得られたエチレン系重合体(B)の密度、MFR2、Mw/Mn、および金属残渣の測定結果を表1に示す。また、同様の重合を繰り返し行い、得られたエチレン系重合体(B)単軸押出機を使用して押し出すことによりエチレン系重合体(B)のペレット(エチレン系重合体(B)P)を得た。
【0137】
(合成例3)エチレン系重合体(B)変性体(1)
エチレン系重合体(B)50重量部、エチレン系重合体(B)P50重量部、ラジカル重合性不飽和化合物として無水マレイン酸1.3重量部、および有機過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.1重量部をドライブレンドした。その後、サーモ・プラスチック社製の単軸押出機(スクリュー径:20mmφ、L/D=28)にて、ダイス温度=210℃の条件で押し出すことによりエチレン系重合体(B)変性体(1)のペレット(エチレン系重合体(B)変性体(1)P)を得た。
【0138】
【表1】
【0139】
3.包装体の製造および保管
(実施例1)
(1)シラン変性とシート成形
エチレン系重合体(A)P90重量部と、エチレン系重合体(B)P10重量部とを予めドライブレンドした。得られたブレンド物に、エチレン性不飽和シラン化合物としてγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを0.5重量部、有機過酸化物として2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンを0.05重量部、紫外線吸収剤として2−ヒドロキシ−4−ノルマル−オクチルオキシベンゾフェノンを0.4重量部、ラジカル捕捉剤としてビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートを0.1重量部、および耐熱安定剤としてトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト0.1重量部を添加してドライブレンドし、エチレン系重合体のブレンド物を得た。
【0140】
コートハンガー式T型ダイス(リップ形状:270mm×0.8mm)を装着したサーモ・プラスチック社製の単軸押出機(スクリュー径:20mmφ、L/D=28)を使用し、ダイス温度:210℃、ロール温度:30℃、巻き取り速度:1.0m/minの条件で上述のエチレン系重合体のブレンド物をシート成形した。これにより、エチレン性不飽和シラン化合物で変性した変性体(シラン変性樹脂)を含有する樹脂組成物からなる、厚み500μmのシート状の太陽電池封止膜を得た。なお、太陽電池封止膜表面にはシボ加工(130μm×130μm×深さ60μmのダイヤ格子状)を施した。なお、ICP発光分析装置を使用し、得られた太陽電池封止膜中のSi量を金属残渣の測定方法と同様の方法にて測定したところ420ppmであった。
【0141】
(2)保管
長さ2000cm×幅60cmに裁断した太陽電池封止膜を直径7.6cmの紙管に巻きつけて積層ロール体を得た。得られた積層ロール体と、調湿剤として23℃で相対湿度25%RHの環境下で40時間放置したB型シリカゲル100gとを、相対湿度25%RHの雰囲気中、厚さ80μmの防湿袋(ポリエチレンテレフタラートフィルム12μm、ポリエチレンフィルム15μm、アルミニウムシート7μm、ポリエチレンフィルム15μm、および直鎖状低密度ポリエチレンフィルム30μmをこの順番で積層した積層シートからなる包装袋(エーディーワイ社製の「Aタイプアルミ防湿袋」、水蒸気透過率:0.38g/(24hr・m
2))に入れた。包装袋の開口部を折り曲げた後(
図1の(A)および(B)を参照)、包装袋の折り曲げ部を180℃で1秒間加熱してヒートシールにより封止し、包装体を得た(
図1の(C)を参照)。得られた包装体内部の絶対湿度は5.2g/cm
3であり、相対湿度は25RH%であった。また、包装体内の太陽電池封止膜の体積は5.4Lであり、太陽電池封止膜以外の空間の体積は13.9Lであった。この包装体を23℃、相対湿度40%RHの環境下で100時間保管した。
【0142】
(実施例2)
包装体内部の絶対湿度を7.3g/cm
3(相対湿度:35%RH)としたこと、および調湿剤として23℃で相対湿度35%RHの環境下で40時間放置したB型シリカゲル100gを用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして包装体を得た。また、保管時間を1000時間としたこと以外は前述の実施例1と同様の条件で包装体を保管した。
【0143】
(実施例3)
包装体内部の絶対湿度を2.9g/cm
3(相対湿度:15%RH)としたこと、および調湿剤として23℃で相対湿度15%RHの環境下で40時間放置したB型シリカゲル100gを用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして包装体を得た。また、前述の実施例1と同様の条件で包装体を保管した。
【0144】
(比較例1)
包装体内部の絶対湿度を0.0g/cm
3(相対湿度:<2.5%RH)としたこと、および調湿剤として酸化カルシウム100gを用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして包装体を得た。また、前述の実施例1と同様の条件で包装体を保管した。
【0145】
(比較例2)
前述の比較例1と同様にして包装体を得た。また、保管時間を1000時間としたこと以外は前述の実施例1と同様の条件で包装体を保管した。
【0146】
(比較例3)
包装体内部の絶対湿度を17.3g/cm
3(相対湿度:60%RH)としたこと、および調湿剤として23℃で相対湿度60%RHの環境下で40時間放置したB型シリカゲル100gを用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして包装体を得た。また、前述の実施例1と同様の条件で包装体を保管した。
【0147】
(実施例4)
エチレン系重合体(B)P80重量部と、エチレン系重合体(B)変性体(1)P20重量部と、を予めドライブレンドして得られたブレンド物を用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして包装体を得た。また、前述の実施例1と同様の条件で包装体を保管した。
【0148】
(実施例5)
包装体内部の絶対湿度を7.3g/cm
3(相対湿度:35%RH)としたこと、および調湿剤として23℃で相対湿度35%RHの環境下で40時間放置したB型シリカゲル100gを用いたこと以外は、前述の実施例4と同様にして包装体を得た。また、保存時間を1000時間としたこと以外は前述の実施例4と同様の条件で包装体を保管した。
【0149】
(比較例4)
包装体内部の絶対湿度を0.0g/cm
3(相対湿度:<2.5%RH)としたこと、および調湿剤として酸化カルシウム100gを用いたこと以外は、前述の実施例4と同様にして包装体を得た。また、前述の実施例4と同様の条件で包装体を保管した。
【0150】
(比較例5)
前述の比較例4と同様にして包装体を得た。また、保管時間を1000時間としたこと以外は前述の実施例4と同様の条件で包装体を保管した。
【0151】
(比較例6)
包装体内部の絶対湿度を17.3g/cm
3(相対湿度:60%RH)としたこと、および調湿剤として23℃で相対湿度60%RHの環境下で40時間放置したB型シリカゲル100gを用いたこと以外は、前述の実施例4と同様にして包装体を得た。また、前述の実施例4と同様の条件で包装体を保管した。
【0152】
4.太陽電池封止膜の評価(ピール評価)
実施例1〜5および比較例1〜6で得られた保管後の包装体から取り出した太陽電池封止膜のピール強度(初期および耐湿熱500時間後)を測定した。なお、ピール強度の測定方法を以下に示す。また、ピール強度の測定結果を表2および3に示す。
【0153】
(1)ピール強度(初期)
透明ガラス板と厚さ0.5mmの太陽電池封止膜とを積層し、真空ラミネーター内に配置したホットプレート(150℃に温度調整済)上に載せた。2分間真空減圧した後、6分間加熱して、透明ガラス板/太陽電池封止膜の積層体を得た。得られた積層体を15mm幅に切り出し、太陽電池封止膜のピール強度(初期)を測定した。なお、ピール強度は、インストロン社製の引張試験機「Instron1123」を使用し、180度ピールにてスパン間30mm、引張速度30mm/分、23℃で3回測定し、平均値を採用した。
【0154】
(2)ピール強度(耐湿熱500時間後)
JIS C8917に準拠し、スガ試験機社製のキセノンウェザーメーター「XL75特殊仕様」を使用し、試験槽内温度85℃、湿度85%の条件下で、上記「(1)ピール強度(初期)」で得た積層体の促進試験を500時間行った。促進試験後の積層体を用いて、上記「(1)ピール強度(初期)」と同様の操作によりピール強度(耐湿熱500時間後)を測定した。
【0155】
【表2】
【0156】
【表3】
【0157】
表2および表3に示すように、実施例1〜5の包装体から取り出した太陽電池封止膜のピール強度(初期)は、比較例1〜6の包装体から取り出した太陽電池封止膜のピール強度(初期)に比して十分に高いものであった。
【0158】
また、実施例1〜5、比較例1、2、4、5の包装体から取り出した太陽電池封止膜のピール強度(耐湿熱500時間後)は十分に高いものであった。なお、比較例1、2、4、5の包装体から取り出した太陽電池封止膜のピール強度(耐湿熱500時間後)が高かった理由としては、以下のように考えることができる。即ち、比較例1、2、4、5の包装体内部は乾燥状態であったため、包装体から取り出した直後は、主に接着力に寄与する接着性付与剤などの反応が進まずに接着力が不十分であった。しかし、耐湿熱500時間後には接着性付与剤などが反応して背着力を発揮する構造へと変化したため、接着力が向上したものと推測される。
【0159】
なお、比較例3および6の包装体から取り出した太陽電池封止膜は、そのピール強度を測定すべく透明ガラス基板から剥離する際に破断した。これは、保管時の包装体内部の湿度が高過ぎたため、太陽電池封止膜が硬くなってしまい柔軟性が損なわれたためであると考えられる。
【0160】
本出願は、2009年6月5日出願の出願番号JP2009−136608に基づく優先権を主張する。当該出願明細書に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。