【実施例】
【0037】
本発明は、ここで、添付の図面および以下の限定されない実施例を参照して、より詳細に記載されるであろう。
【0038】
実施例1
Ni
1Mo
0.5W
0.5O
4組成物を、米国特許出願公開第2007/0090023号明細書に記載される手順にしたがって調製した。Ni
1Mo
0.5W
0.5O
4のペレットを、約1〜2グラムをリンドバーグ(Lindberg)加熱炉内に置かれた石英ボートに移すことによって硫化した。加熱炉を、約15分間、約10vol%のH
2Sを含む水素流(約200cm
3/分)を用いてパージした。ペレットを、同じ約10vol%のH
2S流(残りはH
2)(約200cm
3/分)の下に、周囲温度(約20〜25℃)から約400℃へ約45分間で加熱し、約400℃で約2時間保持した。ペレットを、その後冷却し、周囲温度で約30分間、約10vol%のH
2S流(残りはH
2)(約200cm
3/分)の下に保持した。加熱炉を、約30分間、窒素流(約300cm
3/分)を用いてパージした。最後に、ペレットを、終夜、約1vol%のO
2流(残りはHe)(約50cm
3/分)中で不動態化し、次いで加熱炉から取出した。
【0039】
不動態化された硫化Ni
1Mo
0.5W
0.5ペレット4〜5個を、メノウ乳鉢および乳棒を用いて、微粉(厚さ<約100nmの断片)に粉砕した。微粉を、標準200メッシュの穴あき炭素被覆TEMグリッド上に振りまき、Philips CM200F(商標)装置の明視野TEM画像方式により、加速電圧凡そ200kVで検査した。結果を、
図1(a)〜(b)に示す。デジタル画像を、Gatan CCD(商標)カメラおよびGatanのDigital Micrograph(商標)ソフトウェア(バージョン2.5)を用いて、物質の無作為に選択された領域から集めた。300を超えるMoS
2/WS
2結晶に対するスタック高さを、手作業で計数し、そのデータを、
図2に示される棒グラフにプロットした。
図2から、MoS
2/WS
2粒子の平均スタック高さは、粒子当り約4.6層であったことがわかることができる。バルク触媒内部の一般的な特徴を、触媒の特に薄い領域から集められたエネルギー分散型分光分析(EDS)データを用いて特定した(例えば、
図1(b)を参照されたい)。
【0040】
実施例2
新規Ni
1Mo
0.5W
0.5O
4組成物の硫化を含む一連の時間−温度−転化の実験を行った。再度、新規酸化物のペレットを、米国特許出願公開第2007/0090023号明細書にしたがって調製した。全ての場合に、酸化物のペレットを、上記されるTEM検査用に調製した。酸化物試料中の無作為に選択された領域を画像化し、TEMグリッド上のそれらの位置を、Gatan CCD(商標)カメラおよびGatanのDigital Micrograph(商標)ソフトウェア(バージョン2.5)を用いてマップ化した。全てのTEMグリッドを、約10vol%のH
2S流(残りはH
2)(約20cm
3/分)中約2℃/分で、それらを加熱することによって硫化した。硫化時間および温度を、それぞれの場合に変動させて、Ni
xSおよびMoS
2/WS
2粒子の発現が、より良好に評価された。各硫化実験の詳細を以下に記載する。
【0041】
第一の実験では、新規酸化物のTEMグリッドを、反応器に密閉した。反応器を、周囲温度で、窒素流(約50cm
3/分)を用いて約30分間パージし、次いで、さらに約30分間、約10vol%のH
2S流(残りはH
2)(約20cm
3/分)を用いてパージした。グリッドを、次いで、約10vol%のH
2S流(残りはH
2)(約20cm
3/分)中約2℃/分で、約200℃へ加熱し、約10vol%のH
2S流(残りはH
2)(約20cm
3/分)中約200℃で、約8時間保持した。グリッドを、次いで、約10vol%のH
2S流(残りはH
2)(約20cm
3/分)下に、周囲温度へ冷却して戻した。反応器を、その後、終夜(約8〜16時間)、窒素流(約50cm
3/分)を用いてパージした。グリッドを、反応器から取出し、TEMに移し、先にマップ化されているその領域を、上記のように再検査した。
図3(a)は、新規酸化物のTEMであり、
図3(b)は、単に約200℃で、約8時間硫化した後の物質のTEMである。
図3(b)は、砕屑Ni
xS粒子が、硫化プロセスにおいて、核形成し、非常に早く成長したことを表す。しかし、この段階では、MoS
2/WS
2の構造は、まだ全く観察されなかった。したがって、グリッドを、硫化反応器に置き戻し、再度、約10vol%のH
2S流(残りはH
2)(約20cm
3/分)中約2℃/分で、約375℃へ加熱し、約10vol%のH
2S流(残りはH
2)(約20cm
3/分)中約375℃で、約4時間超保持した。グリッドを、次いで、約10vol%のH
2S流(残りはH
2)(約20cm
3/分)下に、周囲温度へ冷却した。反応器を、その後、終夜、窒素流(約50cm
3/分)下にパージした。グリッドを、次いで、反応器から取出し、TEMに移し、先にマップ化されているその領域を、再度、上記のように再検査した。結果を、
図3(c)に示す。これは、その後の約4時間の硫化処理(約375℃)が、実質的に完全に発現されたNi
xSおよびMoS
2/WS
2粒子をもたらしたことを示す。
【0042】
第二の硫化実験を、新規酸化物の異なるTEMグリッドについて行なって、約300℃での約10vol%のH
2S(残りはH
2)中に処理後約1時間のみ存在する、Ni
xSおよびMoS
2/WS
2相の程度が決定された。したがって、新規酸化物のTEMグリッドを、再度、硫化反応器中に密閉し、反応器を、上記のように周囲温度でパージした。グリッドを、次いで、約10vol%のH
2S流(残りはH
2)(約20cm
3/分)中約2℃/分で、約300℃へ加熱し、約10vol%のH
2S流(残りはH
2)(約20cm
3/分)中約300℃で、約1時間保持した。グリッドを、次いで、周囲温度へ冷却し、反応器を、上記のように終夜パージした。グリッドを、反応器から取出し、TEMに移した。試料の領域全般を検査し、上記のように画像化した。
図4は、その実験結果を示す。これは、実質的に完全に形成された砕屑Ni
xS粒子が構造内に存在することを表す(
図4(a))。
図4(b)は、いくつかのMoS
2/WS
2粒子の早期の発現を示し、
図4(c)は、モリブデン酸化物の粒子を示す。モリブデン酸化物の粒子は、非常に小さな割合(<約1%)の物質を示し、約300℃で約1時間後に、存在する場合でも最小の硫化を示す。これらのデータは、実質的に完全なMoS
2/WS
2粒子が発現するためには、より高い温度またはより多くの時間のいずれかが必要であることを表す。
【0043】
したがって、新規酸化物の他のグリッドを含む第三の実験を、行った。先に記載されるように、グリッドを、硫化装置中に密閉し、装置を、周囲温度でパージした。グリッドを、次いで、約10vol%のH
2S流(残りはH
2)(約20cm
3/分)中約2℃/分で、約300℃へ加熱し、約10vol%のH
2S流(残りはH
2)(約20cm
3/分)中約300℃で、約5時間保持した。グリッドを、次いで、周囲温度へ冷却し、反応器を、上記のようにパージした。グリッドを、反応器から取出し、TEMに移し、先にマップ化されている領域を、上記のように再検査した。結果を、
図5(a)および5(b)に示す。
図5(a)は、新規酸化物のTEMであり、
図5(b)は、約10vol%のH
2S流(残りはH
2)中約300℃で約5時間後のTEMであり、実質的に完全に形成された砕屑Ni
xS粒子の存在を示す。
図5(b)はまた、いくつかのMoS
2/WS
2粒子の早期の発現を示すが、完全に形成されたMoS
2/WS
2構造は、依然として全く観察されなかった。その後、グリッドを、硫化装置に置き戻し、先に記載されるように、周囲温度でパージした後、グリッドを、次いで、約10vol%のH
2S流(残りはH
2)(約20cm
3/分)中約2℃/分で、約400℃へ加熱し、約10vol%のH
2S流(残りはH
2)(約20cm
3/分)中約400℃で、さらに約1時間保持した。グリッドを、次いで、周囲温度へ冷却し、反応器を、上記のようにパージした。グリッドを、反応器から取出し、TEMに移し、先にマップ化されている領域を、再度、上記のように再検査した。結果を、
図5(c)に示す。この顕微鏡写真のMoS
2/WS
2粒子は、約400℃で約1時間の硫化処理の後には、実質的に完全に発現されたと思われる(
図5(b)および5(c)を比較されたい)。したがって、これらの硫化ベースの時間−温度−転化の実験から、Ni
xS粒子は、MoS
2/WS
2粒子が発現する前に、形成されることが明らかである。
【0044】
実施例3
再度、前記の手順を用いて、Ni
1Mo
0.5W
0.5O
4を調製し、約10vol%のH
2S流(残りはH
2)(約20cm
3/分)中で、約400℃へ約2時間硫化した。硫化された物質を、上記のようにTEM用に調製し、TEMで検査した。従来のTEM観察は、一貫して、Ni
xS粒子に隣接する湾曲したMoS
2/WS
2粒子、および触媒のNi
xS−希薄領域における比較的真っすぐな(湾曲していない)MoS
2/WS
2粒子を表した(
図6を参照されたい)。Ni
xS粒子と、MoS
2/WS
2粒子の湾曲との間の関係を、TEM傾斜実験(TEM tilting experiment)によって確認した。
図7は、Ni
xS−希薄流域に形成された典型的な直線状MoS
2/WS
2粒子の組織を表す。二つの相互貫入するMoS
2/WS
2構造により、さらに、これらの粒子が比較的真っすぐな(湾曲してない)構造として触媒のNi
xS−希薄領域に成長する傾向が確認された。
図8は、Ni
xS粒子に隣接して発現する湾曲したMoS
2/WS
2粒子の組織を示す。理論によって縛られることなく、MoS
2/WS
2の湾曲は、Ni
xS表面における水素の溢出がMoS
2/WS
2粒子の核形成および成長を導く際に、生じると考えられる。最後に、
図9は、触媒のNi
xS−希薄領域における高度結晶性のモリブデン酸化物の粒子と関連する硫化メカニズムを明らかにするのに役立つTEM顕微鏡写真を示す。これらの状況においては、硫化は、モリブデン酸化物粒子の外側表面での転化から始まり、内部へ進行すると思われる。これは、その親となる酸化物の粒子に一般に類似する硫化物粒子の組織をもたらした(
図9(a)〜(c)を参照されたい)。したがって、再度、比較的真っすぐな(湾曲していない)MoS
2構造が形成する。類似の結果は、タングステン酸化物結晶の硫化において観察された(
図10(a)〜(c)を参照されたい)。
【0045】
実施例4
近似式 Ni
0.25Mo
0.5W
0.5O
4を有する低ニッケル組成物を、米国特許出願公開第2007/0090023号明細書に記載される手順にしたがって調製し、前記のように硫化した。この物質を、上記のようにTEM用に調製し、それで検査した。従来TEM観察は、再度、非常に多くの直線状のMoS
2/WS
2領域を、触媒のNi
xS−希薄流域に表し(
図11を参照されたい)、一方湾曲したMoS
2/WS
2領域は、Ni
xS構造に隣接して観察された(
図12を参照されたい)。これにより、再度、Ni
xS粒子の存在と、その結果のMoS
2/WS
2粒子の組織との間の提唱された関係が確認される。
【0046】
本発明は、特定の実施形態を引用して、記載および例示されているものの、当業者には、本発明が本明細書に必ずしも例示されない変形に対しても役立つことが、理解されるであろう。この理由から、次いで、本発明の真の範囲を決定する目的に対しては、添付の請求項のみが、参照されるべきである。
本発明のいくつかの態様を、以下記載する。
1.水素処理触媒の製造方法であって、
(a)元素周期律表の第6族から選択される少なくとも一種の第一の金属の酸化物を含む粒子状金属酸化物組成物を、元素周期律表の第8〜10族から選択される少なくとも一種の第二の金属の硫化物の粒子と混合して、粒子状触媒前駆体を製造する工程、及び
(b)粒子状触媒前駆体の成分を、第二の金属の硫化物と関連する欠陥部位を有する層状金属硫化物に、少なくとも部分的に転化するために十分な条件下で、粒子状触媒前駆体を硫化する工程
を含む、方法。
2.前記少なくとも一種の第一の金属は、モリブデン及び/又はタングステンである、上記1に記載の方法。
3.前記粒子状金属酸化物組成物は、第6族金属の酸化物45wt%〜70wt%、好ましくは約55wt%〜約60wt%を含む、上記1又は2に記載の方法。
4.前記粒子状金属酸化物組成物は、更に、元素周期律表の第8〜10族から選択される少なくとも一種のさらなる金属の酸化物を含む、上記1〜3のいずれかに記載の方法。
5.前記少なくとも一種のさらなる金属は、コバルト及び/又はニッケルである、上記4に記載の方法。
6.前記粒子状金属酸化物組成物は、約45wt%以下の第8〜10族金属の酸化物を含む、上記4又は5に記載の方法。
7.前記粒子状金属酸化物組成物は、第一の金属酸化物の素材源をプロトン性液体に含む反応混合物を形成し、前記反応混合物を水熱条件下に加熱して、粒子状金属酸化物組成物を形成することによって製造する、上記1〜6のいずれかに記載の方法。
8.前記少なくとも一種の第二の金属の硫化物は、ニッケル硫化物及び/又はコバルト硫化物である、上記1〜7のいずれかに記載の方法。
9.前記粒子状触媒前駆体は、前記第二の金属の硫化物約15wt%〜約35wt%、好ましくは約20wt%〜約25wt%を含む、上記4〜8のいずれかに記載の方法。
10.前記硫化は、粒子状触媒前駆体を、硫化水素の存在下に、温度約350℃〜約425℃、好ましくは約375℃〜約400℃で、約1時間〜約6時間、好ましくは約2時間〜約4時間加熱することによって行なわれる、上記1〜9のいずれかに記載の方法。
11.上記1〜10のいずれかに記載の方法によって製造される、水素処理触媒組成物。
12.上記11に記載の触媒組成物の存在下で、炭化水素供給原料を水素処理するために十分な条件下で、炭化水素供給原料を水素と接触させる工程を含む、炭化水素供給原料の水素処理方法。
13.炭化水素含有供給原料を水素処理する方法であって、
(a)水素処理触媒を、請求項1〜10のいずれかに記載の方法に基づいて製造する工程、及び
(b)水素処理触媒の存在下で、炭化水素供給原料を水素処理するために十分な条件下で、炭化水素含有供給原料を水素と接触させる工程
を含む、方法。