特許第5683904号(P5683904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5683904
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】DPFの制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/00 20060101AFI20150219BHJP
   F01N 3/023 20060101ALI20150219BHJP
   B01D 46/42 20060101ALN20150219BHJP
【FI】
   F02D29/00 BZAB
   F01N3/02 321K
   F01N3/02 321Z
   !B01D46/42 B
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-247104(P2010-247104)
(22)【出願日】2010年11月4日
(65)【公開番号】特開2012-97679(P2012-97679A)
(43)【公開日】2012年5月24日
【審査請求日】2013年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(72)【発明者】
【氏名】石原 敬樹
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−174769(JP,A)
【文献】 特開2010−121466(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00 − 29/06
F01N 3/02
E02F 3/28 − 3/413
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの排気ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタと、堆積した粒子状物質を除去して前記フィルタを再生する再生手段と、を有するDPFの制御装置であって、
前記フィルタに堆積した前記粒子状物質の堆積量を検出する堆積量検出手段と、
前記エンジンによって回転される油圧ポンプから供給される圧油で駆動される作業機と、
前記堆積量を複数の堆積レベルに区分するとともに前記作業機の状態を複数の作業状態レベルに区分し、前記フィルタの再生を許容する条件として検出された堆積レベルに対応した前記作業状態レベルを設定する制御手段と、
を備え
前記制御手段は、前記作業機の実作業開始前の準備状態に応じて前記作業状態レベルを設定することを特徴とするDPFの制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記堆積レベルの上昇につれてDPFの再生を行う前記作業機の状態を制限するように、前記作業機の状態を複数の作業状態レベルに区分することを特徴とする請求項1に記載のDPFの制御装置。
【請求項3】
前記作業機としてクレーンを備える場合に、
前記制御手段は、前記クレーンの作業内容の中から特定の作業内容を前記作業状態レベルとして設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のDPFの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DPFの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンを搭載するクレーンなどの作業車には、排気ガスに含まれる粒子状物質であるPM(Particulate matter)の量を低減するために、排気経路の途中にDPF(Diesel Particulate filter)を設置することが一般的である。
【0003】
このDPFに内蔵されたフィルタは、セラミック等によって多孔質のハニカム構造を形成しており、フィルタを通過するPMを多孔質の隔壁によって捕集することで、排気ガス中のPMの量を低減する。
【0004】
したがって、PMが蓄積されてくると多孔質の隔壁が目詰まりを起こし、排気抵抗が増加するようになる。そこで、多孔質の隔壁で捕集したPMを燃焼させることで除去する再生手段を備えるDPFが普及するようになってきた。
【0005】
再生手段は、ディーゼルエンジンの燃料噴射装置によって圧縮上死点付近のメイン噴射より遅いタイミングでポスト噴射を行うことで、フィルタの触媒上で燃料を酸化反応させ、反応熱によってPMを燃焼させる。
【0006】
ところが、この種の再生手段をクレーンなどの作業車に適用する場合、作業機の動力源としてもディーゼルエンジンを使用するため、再生手段によって自動的に再生が実行されるとディーゼルエンジンの回転数が急変して作業が不安定になるという問題があった。
【0007】
そこで、例えば、特許文献1には、DPFと制御装置とを備え、PTOが作動状態にある条件下で制御装置から再生制御指令が出力されないように構成された排気浄化装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−150417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、この特許文献1の排気浄化装置は、作業機が実際にどのような状態であるかを考慮せずに、PTOが作動状態にあることのみでDPF再生を禁止するものであった。このため、実際には作業に支障がない場合であっても、作業を継続しつつDPFを再生することができないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、作業に支障が少ない場合には作業を継続しつつDPFを再生することができるDPFの制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明のDPFの制御装置は、エンジンからの排気ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタと、堆積した粒子状物質を除去して前記フィルタを再生する再生手段と、を有するDPFの制御装置であって、前記フィルタに堆積した前記粒子状物質の堆積量を検出する堆積量検出手段と、前記エンジンによって回転される油圧ポンプから供給される圧油で駆動される作業機と、前記堆積量を複数の堆積レベルに区分するとともに前記作業機の状態を複数の作業状態レベルに区分し、前記フィルタの再生を許容する条件として検出された堆積レベルに対応した前記作業状態レベルを設定する制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明のDPFの制御装置は、堆積量検出手段と、作業機と、堆積量を複数の堆積レベルに区分するとともに作業機の状態を複数の作業状態レベルに区分し、フィルタの再生を許容する条件として検出された堆積レベルに対応した作業状態レベルを設定する制御手段と、を備えている。
【0013】
このため、PMの堆積量と作業機の状態の両方を考慮してDPFの再生の許否を判定することで、作業に支障が少ない場合には作業を継続しつつDPFを再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ラフテレーンクレーンの全体構成を説明する側面図である。
図2】実施例のDPFの構成を説明する説明図である。
図3】実施例のDPFの制御装置の制御系の構成を説明するブロック図である。
図4】実施例のDPFの制御装置の制御内容を説明するグラフである。
図5】作業状態レベルごとの作業機の状態を説明する表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例】
【0016】
(ラフテレーンクレーンの構成)
まず、図1の側面図を用いて本実施例のDPFの制御装置2を備えるラフテレーンクレーン1の全体構成を説明する。本実施例のラフテレーンクレーン1は、図1に示すように、走行機能を有する車両の本体部分となるキャリア10と、キャリア10の四隅に配置されたアウトリガ11,・・・と、キャリア10に水平旋回自在に取り付けられた旋回台12と、旋回台12に立設されたブラケット13に取り付けられたブーム14と、ブーム14を起伏させる起伏シリンダ15と、ブーム14先端からワイヤ16を介して吊下げられるフック17と、操作レバーなどが配置されたキャビン18と、を備えている。
【0017】
ここで、旋回台12、ブーム14、ウインチ(不図示)などの作業機は、後述する図2に示すように、ディーゼルエンジン41の回転動力を取り出すPTO(Power Take Off)46によって回転する油圧ポンプ47が発生する油圧によって駆動される。このため、ディーゼルエンジン41の回転数の変化に伴って、これらの作業機の動作速度も変化することになる。
【0018】
(DPFの制御装置の構成)
次に、図2を用いて本実施例のDPFの制御装置2の構成を説明する。本実施例のDPFの制御装置2は、DPFの基本的構成として、ディーゼルエンジン41からの排気ガス中の粒子状物質を捕集するフィルタ31と、フィルタ31に堆積した粒子状物質を除去してフィルタ31を再生する再生手段32(図3も参照)と、を有している。
【0019】
フィルタ31は、セラミック等によって多孔質のハニカム構造に形成されており、マフラ43内を通過するPMを多孔質の隔壁によって捕集することで、排気ガス中のPMの量を低減する。
【0020】
加えて、排気経路の途中にはフィルタ31の上流側に、酸化触媒(不図示)が配置されているため、酸化されやすい一酸化炭素、炭化水素、粒子状物質等が酸化(燃焼)して除去される。
【0021】
また、再生手段32は、フィルタ31を使用しながら再生できる連続再生方式のもので、上述の酸化触媒と、酸化触媒の温度を上昇させるポスト噴射を行う燃料噴射装置50と、燃料噴射装置50にポスト噴射を命令するコントローラ20の燃料噴射制御部27と、キャビン18内に配置されて作業者が手動で操作する再生ボタン54と、によって構成される(図3参照)。
【0022】
さらに、キャビン18内には、再生ボタン54の他にも、フィルタ31に堆積したPMが所定量に達すると点滅して再生を促す警告ランプ53が配置されている。
【0023】
そして、本実施例のDPFの制御装置2は、フィルタ31及び再生手段32に加えて、フィルタ31に堆積した粒子状物質(PM)の堆積量を検出する堆積量検出手段としての圧力センサ33a,33bと、ディーゼルエンジン41によって回転される油圧ポンプ47から供給される圧油で駆動される作業機と、堆積量を複数の堆積レベルLaに区分するとともに作業機の状態を複数の作業状態レベルLwに区分し、フィルタ31の再生を許容する条件として堆積レベルLaに対応した作業状態レベルLwを設定する制御手段としてのコントローラ20と、を備えている。
【0024】
堆積量検出手段としての2つの圧力センサ33a,33bは、排気経路においてそれぞれマフラ43の上流側の入口パイプ44と下流側の出口パイプ45の圧力を計測する。計測された圧力値はコントローラ20に伝送される。
【0025】
また、作業機は、ディーゼルエンジン41の回転動力を取り出すPTO(Power Take Off)46によって回転する油圧ポンプ47が発生する油圧によって駆動される。作業機としては、具体的には、旋回台12、ブーム14、ウインチ(不図示)などがある。
【0026】
さらに、制御手段としてのコントローラ20は、汎用のマイクロコンピュータであり、ディーゼルエンジン41を制御するエンジンコントローラ(ECU)としての機能の他に、堆積量及び作業の状態に基づいてDPF再生の可否を判断する制御手段としての機能を備えている。
【0027】
(制御ブロックの構成)
次に、制御手段としてのコントローラ20において実行される再生制御の内容を制御ブロックに分けて説明する。
【0028】
本実施例のコントローラ20は、図3に示すように、マフラ43前後の圧力差に基づいて堆積量を演算する堆積量演算部21、演算された堆積量に基づいて堆積レベルLaを判定する堆積レベル判定部22、堆積レベルLa及び作業状態レベルLwを記憶する記憶部23、演算された作業状態に基づいて作業状態レベルLwを判定する作業状態レベル判定部25、堆積レベルLa及び作業状態レベルLwに基づいて再生手段32によるDPF3の再生の可否を判定する再生可否判定部26、燃料噴射装置50に燃料噴射の量及びタイミングを命令する燃料噴射制御部27、などを備えている。そして、コントローラ20には、ラフテレーンクレーン1の転倒を防止する安全装置24が接続されている。
【0029】
堆積量演算部21は、マフラ43の上流側の圧力センサ33aでの圧力値とマフラ43の下流側の圧力センサ33bでの圧力値との圧力差に基づいて、フィルタ31へのPMの堆積量を間接的に演算する。すなわち、PMの堆積量が少なければ圧力差は小さくなり、PMの堆積量が多ければ圧力差は大きくなるという関係から、実験データに基づいて両者の関係を表す近似式を作成しておくことで、圧力差に基づいてPMの堆積量を演算することができる。この他、堆積量演算部21は、ディーゼルエンジン41の負荷状態に関連するPMの発生量を積算してPMの堆積量を求めることもできる。
【0030】
堆積レベル判定部22は、演算されたPMの堆積量を、記憶部23に記憶された堆積レベルLaの表と照合し、PMの堆積量がいずれの堆積レベルLaに属するかを判定する。
【0031】
この堆積レベルLaの表では、図5に示すように、PMの堆積量を少ないほうから堆積レベル1、堆積レベル2、堆積レベル3、堆積レベル4の4つの段階に区分している。
【0032】
安全装置24は、作業半径や転倒の安全率を計算する前提として、作業機の状態を演算しているため、本実施例のコントローラ20も安全装置24における演算結果を用いる。すなわち、安全装置24は、操作レバー61〜64、状態選択スイッチ65、ブーム格納スイッチ66、ESPブーム格納スイッチ67、フック水平移動スイッチ68、に基づいて、実際の作業機の状態を演算する。
【0033】
例えば、ブーム格納スイッチ66、ESPブーム格納スイッチ67、フック水平移動スイッチ68がONにされれば、それぞれブーム格納状態、ESP格納状態、フック水平移動状態であると認識する。一方、旋回操作レバー61、起伏操作レバー62、伸縮操作レバー63、ウインチ操作レバー64が操作されれば、その時点でのブーム14の姿勢やフック17の上下動を演算する。
【0034】
作業状態レベル判定部25は、演算された作業機の状態を、記憶部23に記憶された作業状態レベルLwの表と照合し、作業機の状態がいずれの作業状態レベルLwに属するかを判定する。
【0035】
この作業状態レベルLwの表は、図5に示すように、作業機の状態を、実作業開始前の準備状態及びクレーンの作業内容に応じて分類している。具体的には、作業状態レベル1ではPTO46がONでないこと(OFFであること)が条件となり、作業状態レベル2では安全装置の設定が吊上性能を確定していないことが条件となり、作業状態レベル3では操作レバー61〜64が操作されていないことが条件となり、作業状態レベル4では操作レバー61〜64が操作されていることを前提として特定の作業内容をしていることが条件となる。
【0036】
作業レベル4の特定の作業内容としては、荷を吊っていない状態では、ブーム自動格納作業、ESP(多段伸縮ブームの1本シリンダによる駆動方式)ブーム自動格納作業、単一の作業、又は、フック水平移動作業があり、荷を吊っている状態では、地切後のウインチ巻上作業、又は、速度規制した作業がある。
【0037】
再生可否判定部26は、堆積レベル判定部22で判定された堆積レベルLaと、作業状態レベル判定部25で判定された作業状態レベルLwと、に基づいて、DPF3の再生の可否を判定する。すなわち、再生可否判定部26は、判定時の実際の作業機の状態が、判定時の堆積レベルLaに相当する作業状態レベルLwに属すればDPF3の再生を許容し、属さなければDPFの再生を許容しない。
【0038】
燃料噴射制御部27は、再生可否判定部26での判定結果と、再生ボタン54から受信するON/OFF信号と、に基づいて、燃料噴射装置50に対してポスト噴射を命令する。すなわち、再生を許容しない場合にはポスト噴射を命令せず、再生を許容する場合にはポスト噴射を命令する。
【0039】
(作用)
次に、本実施例のDPFの制御装置2の作用について説明する。以下では、DPFの制御装置2の作用を、DPF3の再生作用、DPF3の再生禁止作用、堆積レベル1、堆積レベル2、堆積レベル3、堆積レベル4、DPFの再生と作業の継続との調和、の7つに分けて説明する。
【0040】
(DPFの再生作用)
まず、DPF3の再生作用について説明する。本実施例のコントローラ20は、再生ボタン54が押されると、作業機の状態が、その時点の堆積レベルLaに対応する作業状態レベルLwに属していればDPF3の再生を許容する。すなわち、フィルタ31は再生手段32によって再生される。
【0041】
(DPFの再生禁止作用)
次に、DPF3の再生禁止作用について説明する。本実施例のコントローラ20は、再生ボタン54が押されても、作業機の状態が、その時点の堆積レベルLaに対応する作業状態レベルLwに属していなければDPF3の再生を禁止する。すなわち、フィルタ31は再生手段32によって再生されない。
【0042】
(堆積レベル1)
つづいて、堆積レベル1でのDPFの制御装置2の作用について説明する。本実施例のコントローラ20は、PMの堆積量が堆積レベル1の範囲に属している場合、PTO46がONでなければ(OFFであれば)、DPF3を再生する。一方、PTO46がONであれば、DPF3を再生しない。
【0043】
要するに、PMの堆積量が堆積レベル1の範囲では、フィルタ31の容量に余裕がある状態のため、PTO46がONのときにはDPF3の再生よりも当座の作業の継続を優先する。
【0044】
(堆積レベル2)
つづいて、堆積レベル2でのDPFの制御装置2の作用について説明する。本実施例のコントローラ20は、PMの堆積量が堆積レベル2の範囲に属している場合、安全装置24が吊上性能を確定していなければ、DPF3を再生する。一方、安全装置24が吊上性能を確定していれば、DPF3を再生しない。
【0045】
具体的には、安全装置24が吊上性能を確定しておらず、すなわちアウトリガ11,・・・が接地途中の場合や、ワイヤ掛数が未設定の場合、ジブ取付状態やブーム状態が未設定の場合等には、DPF3を再生する。
【0046】
要するに、PMの堆積量が堆積レベル2の範囲では、フィルタ31の容量に余裕がやや少ない状態のため、安全装置24が吊上性能を確定して準備が完了していれば当座の作業の継続を優先する一方、安全装置24が吊上性能を確定しておらず準備が完了していなければ当座の作業の継続よりもDPF3の故障防止を優先してDPF3を再生し、長期的な作業の継続を維持する。
【0047】
(堆積レベル3)
つづいて、堆積レベル3での作用について説明する。本実施例のコントローラ20は、PMの堆積量が堆積レベル3の範囲に属している場合、操作レバー61〜64が操作されていなければ、DPF3を再生する。一方、操作レバー61〜64が操作されていれば、DPF3を再生しない。
【0048】
要するに、PMの堆積量が堆積レベル3の範囲では、フィルタ31の容量に余裕が少ない状態のため、準備が完了していても、操作中であれば当座の作業の継続を優先する一方、操作中でなければ当座の作業の継続よりもDPF3の故障防止を優先して長期的な作業の継続を維持する。
【0049】
(堆積レベル4)
つづいて、堆積レベル4での作用について説明する。本実施例のコントローラ20は、PMの堆積量が堆積レベル4の範囲に属している場合、荷を吊っていない状態と荷を吊っている状態とに分けて、作業機の状態が特定の作業内容に該当すれば、DPF3を再生する。一方、作業機の状態が特定の作業内容に該当しなければ、DPF3を再生しない。
【0050】
具体的にいうと、荷を吊っていない状態では、ブーム自動格納作業、ESPブーム自動格納作業、単一の作業、又は、フック水平移動作業等の、DPF3の再生によりエンジン回転数が変化しても作業に支障をきたさない場合にDPF3を再生する。他方、荷を吊っている状態では、地切後のウインチ巻上作業、又は、速度規制した作業等の場合にDPF3を再生する。
【0051】
要するに、PMの堆積量が堆積レベル4の範囲では、フィルタ31の容量にほとんど余裕がないため、準備が完了してすでに操作中であっても、アイドル回転数が変化しても支障の少ない単純な作業やコントローラ20による自動操作であれば当座の作業の継続を優先する一方、上記のような作業でなければ当座の作業の継続よりもDPF3の故障を防止して長期的な作業の継続を維持する。
【0052】
なお、PMの堆積量が堆積レベル4の範囲を超えた場合には、ディーゼルエンジン41を停止したうえで、警告ランプ53によってDPF3をすぐに再生するように促す。
【0053】
(DPFの再生と作業の継続との調和)
以上説明したように、本実施例のDPFの制御装置2は、制御手段としてのコントローラ20が、フィルタ31の再生を許容する条件として堆積レベルLaに対応した作業状態レベルLwを設定することで、DPFの再生と作業の継続とを調和させることができる。
【0054】
すなわち、コントローラ20は、PMの堆積量と作業機の状態の両方を考慮してDPF3の再生の許否を判定することで、作業に支障が少ない場合には作業を継続しつつDPF3を再生するように再生手段32を制御する。
【0055】
さらに、PMの堆積量が少ない場合には作業の継続を優先する一方で、PMの堆積量が多い場合にはDPF3の再生を優先することで、DPF3の再生と作業の継続を調和させることができる。
【0056】
(効果)
次に、本実施例のDPFの制御装置2の有する効果を列挙して説明する。
【0057】
(1)このように、本実施例のDPFの制御装置2は、エンジンとしてのディーゼルエンジン41からの排気ガス中の粒子状物質PMを捕集するフィルタ31と、堆積した粒子状物質PMを除去してフィルタ31を再生する再生手段32と、を有するDPFの制御装置2である。
【0058】
そして、このDPFの制御装置2は、フィルタ31に堆積した粒子状物質PMの堆積量を検出する堆積量検出手段としての圧力センサ33a,33bと、ディーゼルエンジン41によって回転される油圧ポンプ47から供給される圧油で駆動される作業機と、堆積量を複数の堆積レベルLaに区分するとともに作業機の状態を複数の作業状態レベルLwに区分し、フィルタ31の再生を許容する条件として検出された堆積レベルLaに対応した作業状態レベルLwを設定する制御手段としてのコントローラ20と、を備えている。
【0059】
このため、PMの堆積量と作業機の状態の両方を考慮してDPF3の再生の許否を判定することで、作業に支障が少ない場合には作業を継続しつつDPF3を再生することができる。
【0060】
(2)また、制御手段としてのコントローラ20は、堆積レベルLaの上昇につれてDPF3の再生を行う作業機の状態を制限するように、作業機の状態を複数の作業状態レベルLwに区分することで、DPF3の再生と作業の継続とを調和させることができる。
【0061】
つまり、PMの堆積量が少ない場合には作業の継続を優先する一方、PMの堆積量が多い場合にはDPF3の再生を優先することで、DPF3の再生と作業の継続を無理なく両立させることができる。
【0062】
逆に言うと、PMの堆積量が少ない場合にはフィルタ31の容量に余裕があるためDPF3を再生せず、PMの堆積量が多い場合にはフィルタ31の容量に余裕がないためDPF3を再生することになる。
【0063】
(3)さらに、制御手段としてのコントローラ20は、作業機の実作業開始前の準備状態に応じて作業状態レベルLwを設定することで、PMの堆積量が比較的少ない場合には作業の継続を優先することができる。
【0064】
例えば、PTO46がONでないことを作業状態レベル1に設定することで、作業者に作業を開始する意思がない場合には、PMの堆積量が少なくてもDPF3の再生を許容する。
【0065】
加えて、安全装置24において吊上性能が確定していないことを作業状態レベル2に設定することで、実際に作業可能になる直前まではDPF3を再生できるようになる。
【0066】
(4)そして、作業機としてクレーンを備える場合に、制御手段としてのコントローラ20は、クレーンの作業内容の中から特定の作業内容を作業状態レベルLwとして設定することで、PMの堆積量が比較的多い場合にはDPF3の再生を優先することができる。
【0067】
例えば、特定の作業内容として、アイドル回転数が変化しても支障の少ない単純な作業を選択すれば、DPF3を再生しながら当該作業を継続することができる。
【0068】
さらに、操作レバー61〜64が操作されていないことを作業状態レベル3に設定することで、実際に操作されていなければ特に支障もなく、DPF3を再生できる。
【0069】
この場合、当該堆積レベルLaより低い堆積レベルLaに、作業機の実作業開始前の準備状態に応じた作業状態レベルLwを対応させておけば、作業状態レベルLwを実際の作業の準備と同じ順除に設定できる。
【0070】
(5)また、制御手段としてのコントローラ20は、クレーンによって荷を吊っていない状態では、ブーム自動格納作業、ESPブーム自動格納作業、単一の作業、又は、フック水平移動作業等を作業状態レベルLwとして設定する。
【0071】
このため、PMの堆積量が比較的多い場合には、アイドル回転数が変化しても支障の少ない単純な作業であれば、作業中であってもそのまま継続し、作業しながらDPF3を再生できる。
【0072】
(6)さらに、制御手段としてのコントローラ20は、クレーンによって荷を吊っている状態では、地切後のウインチ巻上作業、又は、速度規制した作業等を作業状態レベルLwとして設定する。
【0073】
このため、PMの堆積量が比較的多い場合には、アイドル回転数が変化しても支障の少ない単純な作業であれば、作業中であってもそのまま継続し、作業しながらDPF3を再生できる。
【0074】
以上、図面を参照して、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0075】
例えば、前記実施例では、DPFの制御装置2を搭載するラフテレーンクレーンについて説明したが、これに限定されるものではなく、オールテレーンクレーン、カーゴクレーンなどの移動式クレーンや、高所作業車などにも本発明を適用できる。
【0076】
また、前記実施例では、堆積レベルLa及び作業状態レベルLwを4段階に区分する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、2段階以上に区分する場合であれば本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0077】
1 ラフテレーンクレーン
2 DPFの制御装置
20 コントローラ(制御手段)
3 DPF
31 フィルタ
32 再生手段
33a,33b 圧力センサ(堆積量検出手段)
41 ディーゼルエンジン(エンジン)
43 マフラ
46 PTO
47 油圧ポンプ
50 燃料噴射装置
54 再生ボタン
61 旋回操作レバー
62 起伏操作レバー
63 伸縮操作レバー
64 ウインチ操作レバー
65 状態選択スイッチ
66 ブーム格納スイッチ
67 ESPブーム格納スイッチ
68 フック水平移動スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5