(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながらより詳細に説明する。なお、以下の各実施形態では、工場等に設置された大型ボイラーが備える気密容器の内部点検口(マンホール)に設けられたガスケット座を補修する事例により本発明を具体化している。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、上記気密容器の内部点検口の構成を示す図である。当該気密容器100は加圧蒸気の蓄積に使用される。そのため、内部点検口101の蓋102は内開きになっており、加圧蒸気によって蓋102が気密容器100の外側へ向けて開くことがない構造になっている。なお、特に限定されないが、気密容器100は、水平方向に軸心を有する直径(内径)1500mm程度、長さ6000mm程度の円筒型容器であり、その一端に直径(内径)400mm程度の内部点検口101が設けられている。
【0019】
本実施形態では、気密容器100側、すなわち、内部点検口101の周縁部に設けられたガスケット座の補修について説明する。
【0020】
図2は、本実施形態におけるガスケット座面の補修器具を示す斜視図である。
図2に示すように、内部点検口101は気密容器100の壁面に設けられており、蓋102は、気密容器100の壁面に設けられた支持部材104に支持された開閉アーム103に、内部点検口101に対して開閉可能となる状態で支持されている。なお、
図2では、ガスケット座面の補修器具10を補修対象である内部点検口101側のガスケット座面111に装着した状態を示している。また、
図3は、
図2に示す補修器具10を気密容器100の内側から見た図であり、
図4は、
図2に示す補修器具10を気密容器100の外側から見た図である。また、
図5は、
図4に示すA−A線における断面図である。
【0021】
図2〜
図5に示すように、本実施形態の補修器具10は、補修対象のガスケット座面111を備える気密容器100に固定される軸受け部1を備える。軸受け部1は、補修対象ガスケット座面111を含む面の中心を通り、ガスケット座面111を含む面に垂直な軸心(ガスケット座面111の中心軸)周りに回転する回転軸3を支持する。特に限定されないが、軸受け部1は、気密容器100に固定された外輪に対して内輪61が回転する玉軸受やコロ軸受を備える。この構成では、回転軸3は内輪61に固定される。
【0022】
この例では、軸受け部1は、3本の固定用爪2を内部点検口101の内側面に当接させることで気密容器100に固定される(
図2〜
図4参照)。各固定用爪2は、軸受け部1の、軸方向の一端面に設けられたスクロールチャック11のラックピース12にそれぞれ固定されている。公知のように、スクロールチャック11は渦巻き条歯にラックピース12が噛合した構造を有し、当該渦巻き条歯を回転させることで、各ラックピース12を等距離だけ同時に、スクロールチャック11表面の半径方向へ移動させることができる。なお、スクロールチャック11の中心は、軸受け部1の回転軸心上に配置されている。この構成によれば、各ラックピース12に同一長の固定用爪2を装着してスクロールチャック11を開放方向(半径方向の外側へ向かう方向)に操作し、各固定用爪2を内部点検口101の内側面に当接させると、軸受け部1の回転軸心は、補修対象ガスケット座のほぼ中心に配置される。なお、固定用爪2はラックピース12に対して着脱可能に固定されている。この構成では、内部点検口101の内径に応じた長さの固定用爪2を選択して、各ラックピース12に取り付けることで、軸受け部1固定のためのスクロールチャックの操作量を少なくすることができる。
【0023】
回転軸3には、アーム部材4が、補修対象ガスケット座面111と対向する状態で着脱可能に連結される。本実施形態では、アーム部材4は、補修対象ガスケット座の直径よりやや長い棒材からなり、その中央部が回転軸3に連結される。本実施形態では、アーム部材を角材としているが、その断面形状は任意に選択することができる。
【0024】
当該アーム部材4の両端には、研磨加工部材である定盤51が補修対象ガスケット座面111と対向する状態で支持されている。なお、定盤51は、補修対象ガスケット座面111との対向面にサンドペーパやコンパウンド等の研磨部材を備えている。
【0025】
本実施形態では、アーム部材4が、回転軸3の軸方向に移動可能な状態で回転軸3に連結されている。そして、アーム部材4が付勢部材であるコイルばね6により、ガスケット座面111に向けて付勢されている。また、本実施形態では、アーム部材4と回転軸3とが、オルダム継手機構を備える連結部7を介して連結されている。
【0026】
図6は、連結部の構造を示す分解図である。
図5および
図6に示すように、連結部7は、アーム側継手71と、回転軸3に連結された回転軸側継手72と、センタープレート73により構成されるオルダム継手機構を備える。
【0027】
アーム側継手71、回転軸側継手72、センタープレート73は、それぞれ、同径の略円盤状の部材からなり、それぞれの中央には、回転軸3が挿入される挿入孔74、75、76が設けられている。なお、アーム側継手71の挿入孔74の内径およびセンタープレート73の挿入孔76の内径は、後述の摺動動作が可能となるように回転軸側継手72の挿入孔75の内径よりも大きくなっている。また、回転軸側継手72の挿入孔75の内径は、回転軸3の外径とほぼ同一(挿入孔75の内径がわずかに大きい)である。
【0028】
アーム側継手71は、アーム部材4にボルト締結により固定されている。なお、
図6では、ボルト締結用の貫通孔の図示を省略している。回転軸側継手72は、回転軸3の軸方向に沿って形成された長穴31(
図5参照)と、回転軸側継手72を直径方向に貫通する貫通孔83とを貫通するピン84により、回転軸3から離脱することなく回転軸3に沿って移動可能に連結されている。この構成では、回転軸側継手72は、回転軸3の回転に伴って回転する。
【0029】
センタープレート73の回転軸側継手72と対向する面には、挿入孔76を挟んで直径方向に延びる一対のガイドキー78が設けられている。回転軸側継手72のセンタープレート73と対向する面には、挿入孔75を挟んで直径方向に延びるガイド溝82が設けられており、ガイドキー78は、ガイド溝82に対し、その延在方向に摺動可能な状態で嵌合する。また、センタープレート73のアーム側継手71と対向する面には、挿入孔74を挟んで、ガイドキー78と直交する直径方向に延びる一対のガイドキー77が設けられている。アーム側継手71のセンタープレート73と対向する面には、挿入孔74を挟んで直径方向に延びるガイド溝81が設けられており、ガイドキー77は、ガイド溝81に対し、その延在方向に摺動可能な状態で嵌合する。
【0030】
特に限定されないが、本実施形態では、
図5に示すように、アーム部材4に、回転軸3と同軸の円筒状ケーシング80が設けられている。ケーシング80は、オルダム継手機構の直径よりも大きな直径(内径)を有し、オルダム継手機構は当該ケーシング80内に収容される。
【0031】
また、
図5に示すように、回転軸3の両端部には、ねじ部32、33が形成されている。アーム部材4側端部のねじ部32に螺合されるナット34は、回転軸3を軸芯として回転軸側継手72の一端面に当接する状態で装着されたコイルばね6の他端に当接するばね座35を支持する。したがって、ナット34をより軸受け部1側に配置すると、より大きな付勢力がアーム部材4を介して定盤51に付与される。
【0032】
一方、軸受け部1側端部のねじ部33に螺合されるナット36は、コイルばね6の付勢力による回転軸3の抜けを防止するストッパ部材37を支持する。ここでは、回転軸3を軸芯として軸受け部1の一端面に当接する状態で装着される管状部材をストッパ部材37として使用している。なお、ストッパ部材37は軸受け部1が備える軸受の内輪61に当接しており、回転軸3とともに回転する。このため、ナット36の締め付けにより、回転軸3の回転が阻害されることはない。なお、ナット36をネジ部33に締め付けることにより回転軸3は軸受け部1が備える軸受の内輪61に固定されることになる。
【0033】
なお、ストッパ部材37は、回転軸3が挿入される貫通孔を有し、内部点検口101の気密容器100外側外縁に当接する状態で内部点検口101に配置される支持部材に当接する構成を採用してもよい。当該支持部材として、例えば、
図7に示すような、内部点検口101の直径方向に配置された棒材50を採用することができる。この構成では、コイルばね6の付勢力が固定用爪2に作用することを避けることができ、コイルばね6の付勢力が大きい場合であっても、固定用爪2が内部点検口101の内側面から離脱することがない。この構成においても、棒材50の貫通孔と回転軸3との間に回転軸受けを介在させ、回転軸受けの内輪61にストッパ部材37が当接する構成とすることが好ましい。これにより、ナット36の締め付けによって、回転軸3の回転が阻害されることはない。
【0034】
以上のような構成を有する補修器具10では、例えば、エアモータ等の携帯型の回転駆動装置を回転軸3の軸受け部1側端部に設けられた回転駆動装置接続部38(
図5参照)に接続し、回転軸3を回転させる。特に限定されないが、例えば、150rpmの回転数で回転軸3を回転させることができる。当該回転軸3の回転に伴い、定盤51がガスケット座に沿ってガスケット座面111上を回転する。その結果、ガスケット座面111が研磨され、ガスケット座面111を平坦な状態に修復することができる。特に、上記実施形態では、アーム部材4と回転軸3とがオルダム継手機構を介して連結されているため、アーム側継手71の回転軸心が回転軸側継手72の回転軸心とずれる状態を実現することができる。すなわち、この構成によれば、定盤51は、ガスケット座面111に、真円状の軌跡ではなく、作業者が手作業で行うような複雑な軌跡を描くことができる。その結果、作業者の技量にかかわらず、ガスケット座面111を平坦に仕上げることができる。また、アーム部材4に適度な付勢力を付与する付勢部材(コイルばね6)と、オルダム継手機構とを備える上記構成では、ガスケット座面111に対する回転軸3の傾きや、ガスケット座面111に対する回転軸3の偏心を吸収することができる。そのため、補修器具10の装着作業が極めて容易になる。
【0035】
ここで、上記補修器具10を取り付ける手順の一例を説明する。まず、内部点検口101の内側面に固定用爪2を当接させることにより、軸受け部1が内部点検口101に固定される。次いで、軸受け部1に回転軸3が設置される。このとき、回転軸3は、補修対象のガスケット座面111を含む面に対して垂直になる状態(ガスケット座面111の中心軸と同軸の状態)で設置される。なお、回転軸3が軸受け部1に装着された状態で、軸受け部1を内部点検口101に固定してもよい。
【0036】
続いて、定盤51を備えるアーム部材4を、固定用爪2の間から気密容器100内に搬入し、定盤51がガスケット座面111と対向する状態でアーム部材4が回転軸3に連結される。このとき、回転軸3は、未だ固定されていないため、軸受け部1に対して挿抜可能な状態になっている。そのため、回転軸3を作業しやすい位置に配置することで、回転軸3へのアーム部材4の連結を比較的容易に実施することができる。
【0037】
回転軸3へのアーム部材4の連結が完了すると、ストッパ部材37、ナット36を装着した後、コイルばね6、ばね座35を装着してナット34の締め付け量を調節することにより、アーム部材4に対するコイルばね6による付勢力が調整される。
【0038】
以上説明したように、この補修器具10は、気密容器100の外部から内部点検口101に取り付けることができる。このため、作業者は気密容器内部に入った状態で作業を行う必要がなく、作業者の安全性を確保することもできる。また、回転駆動装置接続部38に接続された回転駆動装置を遠隔操作することもできるため、例えば、原子力発電所の放射能管理区位置等、作業者の作業時間が制限される状況下であっても施工可能である。
【0039】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、アーム部材4に支持される研磨加工部材が定盤51である事例について説明した。しかしながら、補修対象ガスケット座面111の損傷が激しい、すなわち、腐食等がガスケット座の表面から深くにまで達している場合には、定盤51のみによる補修では、膨大な作業時間が必要になってしまう。そこで、本実施形態では、このような状況に好適なガスケット座面の補修器具について説明する。
【0040】
図8は、本実施形態におけるガスケット座面の補修器具を示す断面図である。
図8に示すように、本実施形態の補修器具20は、第1の実施形態の補修器具10と同様に、軸受け部1、固定用爪2、回転軸3、アーム部材4を備える。なお、以下では、第1の実施形態の補修器具10と異なる構成についてのみ説明する。また、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する部位には同一の参照符号を付している。
【0041】
本実施形態では、アーム部材4に研磨加工部材である切削刃物52(バイト等)が、補修対象ガスケット座面111と対向する状態で支持されている。ここでは、切削刃物はアーム部材4の一端に工具支持部41を介して取り付けられている。
【0042】
工具支持部41は、切削刃物52を、ガスケット座面111の半径方向および回転軸3の軸方向に移動させる移動機構(図示せず)を備えている。本実施形態では、工具支持部41がこのような移動機構を備えるため、アーム部材4は回転軸3に固定されており、付勢部材によるアーム部材4への付勢はなされていない。また、アーム部材4と回転軸3とは、オルダム継手機構を介することなく連結されている。また、本実施形態では、回転軸3が軸受け部1から離脱することがないように、回転軸3は任意の手法により、軸受け部1が備える軸受の内輪61に固定される。
【0043】
特に限定されないが、アーム部材4と回転軸3との連結には、例えば、以下の構成を採用することができる。回転軸3は、その外周のアーム部材4が装着される部分に、回転軸3の軸心と平行に回転軸3の先端からキー状の凹凸87を備える。また、アーム部材4は、回転軸3が挿入される部分に、貫通孔を有するボス部材85を備える。ボス部材85の貫通孔内面には、回転軸3外周の凹凸87に嵌合する凹凸が設けられており、アーム部材4は、回転軸3の軸心に沿う方向に摺動可能かつ回転軸3の回転トルクを伝達可能に回転軸3に支持される。
図8の例では、貫通ピン等により回転軸3の先端部に着脱可能に固定され、回転軸3に対してアーム部材4(ボス部材85)を摺動可能に支持するとともに、任意の位置で固定する摺動部材86を配置している。この構成では、回転軸3外周に凹凸87が形成された範囲内において、任意の位置にアーム部材4を固定することができる。なお、上記キー状の凹凸87は、回転軸3外周の全周に設けてもよく、また、その一部のみに設けてもよい。
【0044】
また、回転軸3の軸受け部1に対する固定の一例として、例えば、以下の構成を採用することができる。この構成では、回転軸3は、軸受け部1が備える軸受けの内輪61に対して固定される部位に軸径が他部に比べて大きい拡径部62を備え、当該拡径部62の両端にねじ部63、64を備える。ここで、拡径部62の軸心方向の長さは、内輪61の軸心方向の長さと一致している。回転軸3の固定は、ねじ部63、64に螺合するナット65、66を締め付けることで実現される。なお、ナット65、66はロックナットであることが好ましい。
【0045】
以上のような構成を有する補修器具20は、例えば、エアモータ等の携帯型の回転駆動装置を回転軸3の軸受け部1側端部に設けられた回転駆動装置接続部38に接続して回転軸3を回転させる。この場合の回転数は、第1の実施形態に比べて小さくてもよい。例えば、40〜100rpmの回転数で回転軸3を回転させることができる。また、当該回転中、切削刃物は、工具支持部41によりガスケット座面111の半径方法に移動され、切削の進行に伴って、工具支持部41によりガスケット座面111方向に移動される。当該回転軸3の回転および切削刃物52の移動に伴い、切削刃物52がガスケット座に沿ってガスケット座面111上の全面を切削する。
【0046】
この構成では、第1の実施形態の補修器具10に比べてより高速に、ガスケット座面111を平坦化することができる。なお、本実施形態の補修器具20により平坦化されたガスケット座面111は、第1の実施形態の補修器具10により、より平坦に研磨されることが好ましい。
【0047】
以下、補修器具20を取り付ける手順の一例を説明する。まず、内部点検口101の内側面に固定用爪2を当接させることにより、軸受け部1が内部点検口101に固定される。次いで、軸受け部1に、気密容器100の外側から回転軸3が挿入される。このとき、回転軸3は、補修対象のガスケット座面111を含む面に対して垂直になる状態(ガスケット座面111の中心軸と同軸の状態)で設置され、回転軸3のねじ部63とナット65とが螺合される。なお、回転軸3が軸受け部1に装着された状態で、軸受け部1を内部点検口101に固定してもよい。
【0048】
続いて、切削刃物52を備えるアーム部材4を、固定用爪2の間から気密容器100内に搬入し、切削刃物52とガスケット座面111とが対向する状態で、摺動部材86を介してアーム部材4が回転軸3に連結される。
【0049】
回転軸3へのアーム部材4の連結が完了すると、ナット66を装着し、ナット65、66を締め付けることにより、回転軸3が内輪61に固定される。
【0050】
このように、補修器具20は、気密容器100の外部から内部点検口101に取り付けることができる。このため、作業者は気密容器内部に入った状態で作業を行う必要がなく、作業者の安全性を確保することもできる。また、回転駆動装置接続部38に接続された回転駆動装置を遠隔操作することもできるため、例えば、原子力発電所の放射能管理区位置等、作業者の作業時間が制限される状況下であっても施工可能である。
【0051】
なお、上述のように補修器具20の回転軸3の回転速度は、第1の実施形態の補修器具10の回転軸3の回転速度より小さくすることができる。このような回転速度の調整は、回転駆動装置の回転数を減速機等により低下させればよい。このような減速機は、例えば、軸受け部1に設けることができる。
【0052】
図9は、本実施形態の変形例を示す図である。この構成では、軸受け部1に支持される回転軸9が減速機構8に接続され、アーム部材4を支持する回転軸3が当該減速機構8に接続される。減速機構8は、例えば、遊星歯車機構により実現することができる。この構成においても、上述のように、少なくとも回転軸3がガスケット座面111の中心軸と同軸の状態で軸受け部1に支持されていればよいが、内部点検口101への軸受け部1の固定を容易にするため、
図9に示すように、回転軸9と回転軸3が同軸で配置される構成を採用することが好ましい。
【0053】
以上説明したように、この補修器具20では、ガスケット座面111の損傷が激しい場合に、より短時間で、ガスケット座面111を平坦に仕上げることができる。
【0054】
(第3の実施形態)
第1および第2の実施形態では、内部点検口101側に設けられたガスケット座の補修について説明したが、本実施形態では、蓋102側に設けられたガスケット座の補修について説明する。
【0055】
図10は、蓋102に取り付けられた本実施形態の補修器具を、内部点検口101と接合する蓋102の面側から見た図である。また、
図11は、蓋102に取り付けられた本実施形態の補修器具を示す断面図である。なお、
図11は、
図10に示すB−B線における断面図である。
【0056】
図10、11に示すように、本実施形態の補修器具30は、第1の実施形態の補修器具10と同様に、軸受け部1、回転軸3、アーム部材4を備える。なお、以下では、第1の実施形態の補修器具10と異なる構成についてのみ説明する。また、第1の実施形態と同様の作用効果を奏する部位には同一の参照符号を付している。
【0057】
本実施形態では、軸受け部1が、蓋102の内部点検口101と接合する面側の中央部に設けられた突部113(
図2参照)に固定される。突部113は、蓋102を閉じたときに、蓋102が開放することがないように、気密容器100の外側から蓋102を固定するために使用される。例えば、内部点検口101の気密容器100外側外縁に当接する状態で内部点検口101の直径方向に配置された棒材と突部113とを、突部113が備える凹部に嵌合するTボルト等を用いて締め付けることで、蓋102を固定することができる。
【0058】
第1の実施形態と同様に、軸受け部1は、補修対象ガスケット座面112を含む面の中心を通り、ガスケット座面112を含む面に垂直な軸心(ガスケット座面112の中心軸)周りに回転する回転軸3を支持する。
【0059】
この例では、軸受け部1は、固定治具21を、突部113が備える凹部に嵌合するTボルト22およびナット23を用いて突部113に固定することで蓋102に固定される。特に限定されないが、固定治具21は、
図2において、蓋102の突部113を収容可能な、左右方向が開放された断面コ字型の部材であり、当該固定治具21に軸受け部1が固定されている。
【0060】
回転軸3には、アーム部材4が、補修対象ガスケット座面112と対向する状態で着脱可能に連結される。アーム部材4は、補修対象ガスケット座の直径よりやや長い棒材からなる。アーム部材4の両端には定盤支持具42が固定され、当該定盤支持具42の先端に研磨加工部材である定盤51が、補修対象ガスケット座面112と対向する状態で支持されている。定盤支持具42は、回転軸3の軸方向に沿って配置される棒材であり、定盤51のガスケット座面112側端部からアーム部材4の軸受け部1側端部までの距離H1が、ガスケット座面112から軸受け部1のアーム部材4側端部までの距離H2より大きくなる長さを有している。
【0061】
アーム部材4は、第1の実施形態と同様に、連結部7を介して、回転軸3の軸方向に移動可能な状態で回転軸3に連結されており、アーム部材4が付勢部材であるコイルばね6により、ガスケット座面112に向けて付勢されている。
【0062】
また、回転軸3のアーム部材4側端部には、ねじ部32が形成されている。アーム部材4側端部のねじ部32に螺合されるナット34は、回転軸3を軸芯として回転軸側継手72の一端面に当接する状態で装着されたコイルばね6の他端に当接するばね座35を支持する。
【0063】
以上のような構成を有する補修器具30は、例えば、エアモータ等の携帯型の回転駆動装置を回転軸3のアーム部材4側端部に設けられた回転駆動装置接続部39に接続して回転軸3を回転させる。特に限定されないが、例えば、150rpmの回転数で回転軸3を回転させることができる。当該回転軸3の回転に伴い、定盤51がガスケット座に沿ってガスケット座面112上を回転する。その結果、ガスケット座面112が研磨され、第1の実施形態と同様に、作業者の技量にかかわらず、ガスケット座面112を平坦な状態に修復することができる。
【0064】
また、この補修器具30は、気密容器100の外部から蓋102に取り付けることも可能である。このため、作業者は気密容器内部に入った状態で長時間の作業を行う必要がなく、作業者の安全性を確保することもできる。また、回転駆動装置接続部39に接続された回転駆動装置を遠隔操作することもできるため、例えば、原子力発電所の放射能管理区位置等、作業者の作業時間が制限される状況下であっても施工可能である。
【0065】
(第4の実施形態)
第3の実施形態では、アーム部材4に支持される研磨加工部材が定盤51である事例について説明した。しかしながら、補修対象ガスケット座面112の損傷が激しい場合には、定盤51のみによる補修では、膨大な作業時間が必要になる。そこで、本実施形態では、このような状況に好適なガスケット座面の補修器具について説明する。
【0066】
図12は、本実施形態におけるガスケット座面の補修器具を示す断面図である。
図12に示すように、本実施形態の補修器具40は、第3の実施形態の補修器具20と同様に、軸受け部1、回転軸3、アーム部材4を備える。なお、以下では、第3の実施形態の補修器具30と異なる構成についてのみ説明する。また、第3の実施形態と同様の作用効果を奏する部位には同一の参照符号を付している。
【0067】
本実施形態では、アーム部材4に研磨加工部材である切削刃物52(バイト等)が、補修対象ガスケット座面112と対向する状態で支持されている。ここでは、切削刃物はアーム部材4の一端に工具支持部41を介して取り付けられている。
【0068】
第2の実施形態で説明したように、工具支持部41は、切削刃物52を、ガスケット座面112の半径方向および回転軸3の軸方向に移動させる移動機構を備えている。本実施形態では、工具支持部41がこのような移動機構を備えるため、アーム部材4は回転軸3に固定されている。また、アーム部材4と回転軸3とは、オルダム継手機構を介することなく連結されている。特に限定されないが、アーム部材4と回転軸3との連結には、第2の実施形態において説明した、回転軸3外周のキー状の凹凸87、当該凹凸87に嵌合する凹凸を内面に備えるアーム部材4のボス部材85、回転軸3に対してアーム部材4(ボス部材85)を摺動可能に支持するとともに、任意の位置で固定する摺動部材86を採用することができる。
【0069】
以上のような構成を有する補修器具40は、例えば、エアモータ等の携帯型の回転駆動装置を回転軸3のアーム部材4側端部に設けられた回転駆動装置接続部に接続して回転軸3を回転させる。この場合の回転数は、第2の実施形態と同様に、例えば、40〜100rpmとすることができる。また、当該回転中、切削刃物は、工具支持部41によりガスケット座面112の半径方法に移動され、切削の進行に伴って、工具支持部41によりガスケット座面112方向に移動される。当該回転軸3の回転および切削刃物52の移動に伴い、切削刃物52がガスケット座に沿ってガスケット座面112上の全面を切削する。
【0070】
この構成では、第3の実施形態の補修器具30に比べてより高速に、ガスケット座面112を平坦化することができる。なお、本実施形態の補修器具40により平坦化されたガスケット座面112は、第3の実施形態の補修器具30により、より平坦に研磨されることが好ましい。
【0071】
以上のように、本発明によれば、圧力容器やタンク等の既設物が備える、分解が困難なガスケット座であっても、その座面を容易に修復することができる。
【0072】
なお、上述した実施形態は本発明の技術的範囲を制限するものではなく、既に記載したもの以外でも、本発明の範囲内で種々の変形や応用が可能である。例えば、上記実施形態では、アーム部材4として、回転軸3から外方に延びるアームの本数が2本である事例について説明したが、内部点検口101から気密容器100内部にアーム部材4を搬入できる限り、アーム部材が有するアームの本数は任意である。同様に、固定用爪の本数等も任意である。
【0073】
また、上記実施形態では、補修対象のガスケット座面と対向する位置に、アーム部材をガスケット座面に付勢する付勢部材を配置したが、当該付勢部材による付勢力は、気密容器100の外部から、回転軸3を引き抜く方向に作用する付勢力を付与する構成であってもよい。例えば、
図5において、ストッパ部材の位置にコイルばねを配置してもよい。また、上記実施形態では、付勢部材としてコイルばねを採用したが、板ばね等、他の任意の付勢部材を使用することができる。