(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5683927
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】杭圧入工法及び地中障害物寄せ部材
(51)【国際特許分類】
E02D 7/20 20060101AFI20150219BHJP
E02D 9/00 20060101ALI20150219BHJP
E02D 13/00 20060101ALI20150219BHJP
E02D 13/08 20060101ALI20150219BHJP
【FI】
E02D7/20
E02D9/00
E02D13/00
E02D13/08
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-274357(P2010-274357)
(22)【出願日】2010年12月9日
(65)【公開番号】特開2012-122265(P2012-122265A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2013年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
(72)【発明者】
【氏名】田内 宏明
(72)【発明者】
【氏名】米田 泰裕
【審査官】
富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−159471(JP,A)
【文献】
特開2003−328358(JP,A)
【文献】
特開昭55−085731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/20
E02D 9/00
E02D 13/00
E02D 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に連設された既設杭の上に沿って移動する杭圧入機により保持された管状の杭を回転させながら下降させて、前記既設杭に並設して地中にその杭を圧入する、杭圧入機を用いた杭圧入工法であって、
多角柱形状部の先端に多角錘形状部を有する地中障害物寄せ部材を杭掴み装置で前記管状の杭の先端に連結し、
前記地中障害物寄せ部材を、地中障害物に対し回転させながら押し込んで、先端の多角錘形状部及び続く多角柱形状部により地中障害物を周囲に寄せて杭の入る空間を形成するとともに、連続してその空間に前記管状の杭を圧入することを特徴とする杭圧入工法。
【請求項2】
前記地中障害物寄せ部材の内部に、前記多角錘形状部の先端から突出して地中障害物を破砕するブレーカーを組み込み、
地中障害物に対し前記ブレーカーの駆動により地中障害物を割りながら、且つ前記地中障害物寄せ部材を回転させて押し込むことを特徴とする請求項1に記載の杭圧入工法。
【請求項3】
前記多角錘形状部の周囲に突出する羽根を設け、
前記多角錘形状部により周囲に寄せられる地中障害物の隙間に前記羽根を差し込んで、
当該羽根の回転により地中障害物を周囲に寄せることを特徴とする請求項1または2に記載の杭圧入工法。
【請求項4】
多角柱形状部の先端に多角錘形状部を備える地中障害物寄せ部材であって、
管状の杭の先端に連結する杭掴み装置を備えることを特徴とする地中障害物寄せ部材。
【請求項5】
前記多角錘形状部の先端から突出して地中障害物を破砕するブレーカーが内部に組み込まれていることを特徴とする請求項4に記載の地中障害物寄せ部材。
【請求項6】
前記多角錘形状部の周囲に突出する羽根を備えることを特徴とする請求項4または5に記載の地中障害物寄せ部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石等の地中障害物を寄せて杭を圧入する工法と、その工法に用いる地中障害物寄せ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば砕石、玉石等の単粒体で形成された地層への杭の施工は、石を取ってから杭圧入機で杭を圧入する方式と、オーガ装置を備えた杭圧入機を用いて、石をオーガで削りながら杭を圧入する方式(例えば特許文献1参照)と、カッター装置を備えた杭圧入機を用いて、石をカッターで削りながら杭を圧入する方式(例えば特許文献2参照)とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−299143号公報
【特許文献2】特開2001−152453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、杭の圧入に際して石を取る方式は、付帯作業が多く、工期が長くなり、また、大きく取り除かないと崩れるため、無駄な作業が多い問題があった。
【0005】
また、石を削りながら杭を圧入する方式は、石が硬ければ硬いほど削るのに時間や消耗品が多く必要となる問題があった。
【0006】
本発明の課題は、石等の地中障害物の大小や硬さに関わらず、効率的に地中障害物を寄せて杭の圧入を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
地盤に連設された既設杭の上に沿って移動する杭圧入機により保持された管状の杭を回転させながら下降させて、前記既設杭に並設して地中にその杭を圧入する、杭圧入機を用いた杭圧入工法であって、多角柱形状部の先端に多角錘形状部を有する
地中障害物寄せ部材を杭掴み装置で前記管状の杭の先端に連結し、前記地中障害物寄せ部材を、地中障害物に対し
回転させながら押し込んで、先端の多角錘形状部及び続く多角柱形状部により地中障害物を周囲に寄せて杭の入る空間を形成する
とともに、連続してその空間に
前記管状の杭を圧入することを特徴とする。
【0009】
請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の杭圧入工法であって、前記地中障害物寄せ部材の内部に、前記多角錘形状部の先端から突出して地中障害物を破砕するブレーカーを組み込み、地中障害物に対し前記ブレーカーの駆動により地中障害物を割りながら、且つ前記地中障害物寄せ部材を
回転させて押し込むことを特徴とする。
【0010】
請求項
3に記載の発明は、請求項
1または2に記載の杭圧入工法であって、前記多角錘形状部の周囲に突出する羽根を設け、前記多角錘形状部により周囲に寄せられる地中障害物の隙間に前記羽根を差し込んで、当該羽根の回転により地中障害物を周囲に寄せることを特徴とする。
【0011】
請求項
4に記載の発明は、多角柱形状部の先端に多角錘形状部を備える地中障害物寄せ部材
であって、管状の杭の先端に連結する杭掴み装置を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項
5に記載の発明は、請求項
4に記載の地中障害物寄せ部材であって、前記多角錘形状部の先端から突出して地中障害物を破砕するブレーカーが内部に組み込まれていることを特徴とする。
【0014】
請求項
6に記載の発明は、請求項
4または5に記載の地中障害物寄せ部材であって、前記多角錘形状部の周囲に突出する羽根を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、地中障害物の大小や硬さに関わらず、効率的に地中障害物を寄せて杭を圧入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を適用した一実施形態を示すもので、杭圧入直前の地中障害物寄せを示した縦断面図である。
【
図2】
図1の地中障害物寄せ部材を拡大して示した斜視図である。
【
図3】
図1の地中障害物寄せ部材による作用を示すもので、三角錘形状部の差し込み時を示した図(a)と、地中障害物が周りに寄せられる作用を示した図(b)と、三角柱形状部により地中障害物が寄せられて杭が入る空間を形成した状態を示した図(c)である。
【
図5】
図4の地中障害物寄せ部材の側面図(a)と、その羽根による作用を示した図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は本発明を適用した一実施形態として杭圧入直前の地中障害物寄せを示したもので、1は杭圧入機、2は鋼管杭、3は地中障害物寄せ部材である。
【0018】
図示のように、杭圧入機1により垂直に保持された鋼管杭2の下端には、地中障害物寄せ部材3が接続して一体化されている。
【0019】
地中障害物寄せ部材3は鋼製で、
図2に拡大して示したように、下端の三角錘形状部4の上に三角柱形状部5が形成された構成のものである。
【0020】
この地中障害物寄せ部材3は、例えば
図4に示すような杭掴み装置6を備え、この杭掴み装置6介して鋼管杭2の下端内部に連結される。なお、杭掴み装置6は、油圧シリンダーの駆動により拡開動作する掴み爪を張って鋼管杭2の内周面に固定される。
【0021】
杭圧入に際しては、
図1に示したように、既に打設した鋼管杭2の上に沿って移動する杭圧入機1により垂直に保持された鋼管杭2の下端の地中障害物寄せ部材3から地中障害物に挿入する。このとき、杭圧入機1により回転動作または揺動動作される鋼管杭2と一体に地中障害物寄せ部材3も、
図2に矢印で示すように、回転動作または揺動動作しながら下降する。
【0022】
図3は地中障害物寄せ部材3による作用を示すもので、
図3(a)に示すように、地中障害物寄せ部材3の下端の三角錘形状部4が地中障害物の石の隙間に押し込まれて、その三角錘形状部4の回転動作または揺動動作により石が周囲に寄せられる。
【0023】
そして、三角錘形状部4の下降に伴って、
図3(b)に示すように、石がさらに周囲に寄せられていく。
【0024】
その後、三角錘形状部4に続いて三角柱形状部5が地中障害物に差し込まれて、
図3(c)に示したように、鋼管杭2が挿入される空間が形成される。
従って、地中障害物寄せ部材3に続いて鋼管杭2が地中障害物にスムーズに圧入される。
【0025】
以上、実施形態の地中障害物寄せ部材3を用いれば、石の大小や硬さに関わらず、先端の多角錘形状部4及び続く多角柱形状部5によって、効率的に石を寄せて杭を圧入することができる。
【0026】
なお、以上の実施形態においては、三角柱形状部及び三角錐形状部としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、四角形等、多角形状であればよい。
【0027】
(実施形態2)
図4は実施形態2を示すもので、前述した実施形態1と同様、2は鋼管杭、3は地中障害物寄せ部材、4は多角錘形状部、5は多角柱形状部、6は杭掴み装置であって、7はブレーカー、8は羽根である。
【0028】
すなわち、実施形態2は、実施形態1と同様の地中障害物寄せ部材3において、図示のように、多角錘形状部4の先端から突出して石を破砕するブレーカー7を内部に組み込んでいる。
【0029】
さらに、
図5(a)にも示すように、多角錘形状部4の周囲に突出する羽根8を一体化して形成している。
【0030】
このように、地中障害物寄せ部材3の内部に、多角錘形状部3の先端から突出して石を破砕するブレーカー7を組み込むことで、図示したように、ブレーカー7の駆動によって、石を割りながら地中障害物寄せ部材3を押し込むことができる。
【0031】
また、多角錘形状部3の周囲に突出する羽根8を設けることで、
図5(b)に矢印で示すように、多角錘形状部3により周囲に寄せられる石の隙間に羽根8を差し込んで、石の排除効率を上げることができる。
【0032】
なお、以上の実施形態において、対象を石としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、他にコンクリート片等のあらゆる地中障害物に適用できる。
また、杭掴み装置の構成や羽根の形状等は任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0033】
1 杭圧入機
2 鋼管杭
3 地中障害物寄せ部材
4 多角錘形状部
5 多角柱形状部
6 杭掴み装置
7 ブレーカー
8 羽根