【実施例】
【0051】
[材料と方法]
[模範的なセットアップ]
この実験で使用されている分光計を基にしたドップラーFD−DOCTシステムは、841nmの中心波長と49nmのバンド幅との超発光ダイオードを有している。測定された軸方向分解能(axial resolution)は、空中で7.5μmであった。組織の屈折率を考慮すると、この分解能は、組織内では、5.6μmになるだろう。横方向分解能(transverse resolution)は、目の光回折によって制限されるように、約20μmであった。光源からの光が、標準マイケルソン干渉計の参照アームに入るソース・パワーの80%と、サンプル・アームに入るソース・パワーの20%を有する80/20のカップラーを通して伝わる。前記サンプル・アームは、カスタムOCT走査光学系に適合された標準のスリットランプ生体顕微鏡のベースを有している。角膜に入射するパワーは、500μWであり、これは、拡大ビーム露光に対する米国規格協会の制限を十分下回っている。ファイバカップラーとコンポジット信号との参照光及びサンプル・アーム光との干渉は、カスタム分光計によって検出される。この分光計は、1024画素のライン走査カメラを有している。このカメラからのデータが、カメラリンクインターフェイスを介してハイエンドPCに送られる。測定されたSN比は、ゼロ経路長差の場所から200μmのところで、107dBであった。2つの連続したAライン間の時間間隔τは、56μs(50μsの積分時間と、6μsのデータ送信時間とを有する)である。決定可能な最大ドップラーシフトは、位相接続(phase unwrapping)を用いないで8.9Khzであり、2.8mm/sの、眼球内の最大速度成分(n=1.33)を与えた。測定された決定可能な最小速度は、位相ノイズのために16.3μm/sであった。
【0052】
[イメージのサンプリングと処理]
FD―OCTプローブビームは、
図4aに示されているように、半径r
1及びr
2で、視神経頭の周りの網膜に、繰り返し走査された。各円でサンプリングされた3000のAラインがあった。Aラインの3つごとの位相差が、ドップラー周波数シフトを得るために算出された。この結果、各フレームが、1000の垂直なラインから構成されていた。ドップラーFD−OCTイメージングのためのフレーム速度は、リアルタイム表示に対して、毎秒4.2フレームであった。約2秒の全記録時間に対しての各流量測定のためにサンプリングされた、4対(計8つ)のドップラー・FD−OCTイメージがあった。
【0053】
前記サンプリングされたドップラーFD−OCTイメージは、データ処理のために保存された。半径r
1でサンプリングされたドップラーイメージは、4つあった。その他の4つのイメージは、半径r
2でサンプリングされた。半径r
1でサンプリングされたこれら4つのドップラーイメージでの、1つの網膜血管の座標が、(θ
1,D
1)として平均化された。これに対して、他の4つのドップラーイメージでの同様の血管の座標が、半径r
2でサンプリングされ、(θ
2,D
2)として平均化された。平均座標(θ
1,D
1)と(θ
2,D
2)とは、式(3)、(7)とに基づいて角αとβとを算出するために用いられる。前記節点Nから網膜面までの距離hは、18mmとなるように選択された。前記8つのドップラーイメージ中の、1つの血管の速度プロファイルが、算出された。これら8つの流量プロファイルでのピーク速度が、最大値に規格化され、流量パルスを示すように時間に対して、プロットされた。この曲線は、式(6)で、パルスタームkとして、積分された。解析された8つの流量プロファイルの、最大流速度プロファイルは、網膜血流(F)を算出するように、A
Pとして、式(6)に導入された。いくつかの小静脈に対しては、ドップラー流量信号が、心臓拡張期(心周期のうち最も血流量の少ない時)に正確に読み取るためには、小さすぎた。このため、互いに隣接する小静脈のパルス係数が、流量算出のために、代わりに使用された。
【0054】
[サンプリング密度の影響]
ドップラーOCTでは、連続した軸方向走査間の位相差が、ドップラー周波数シフトを決定するように算出される。好ましくは、この位相差は、同じ位置で比較されるべきである。しかし、網膜OCTシステムに対しては、プローブビームが網膜を横切って連続して走査し、連続した軸方向走査相互間にわずかな変位が生じる。サンプリングの位置が(ビームの直径に対して)相互に十分に近くなかったら、位相の非相関が、測定されるドップラーシフトを減じるだろう[13]。流量測定でのサンプリング・ステップの影響を評価するために、発明者達は、二重走査面方法(dual scanning plane method)を用いて、異なるサンプリング・ステップでの血管V
s(
図4a参照)に対する体積流量を測定した[15]。走査長が、1mmであった。各サンプリング・ステップでの流量が、3回測定され、平均化された。この結果は、
図5に示されており、この図で、横軸がサンプリング・ステップであり、縦軸が測定された血液の体積流量を表している。測定された血流量がサンプリング・ステップの増加に伴って減少しているのが判る。この減少は、約1.4μmのサンプリング・ステップのところから、著しく生じている。従って、隣接した軸方向走査間の位相の非相関の影響を防ぐためには、前記サンプリング・ステップは、1.4μmより短くする必要がある。このFDドップラーOCTシステムでは、発明者達は、4.2Hzでのリアルタイム表示のために、3000の軸線のサンプリング密度を選択した。1.9mmの走査半径(円の長さ11.93mm)では、サンプリング・ステップは、約4.0μmであった。
図5からは、4.0μmステップと0.7μmステップとでそれぞれ測定された流量の間の比が、0.683であることが分かる。隣接する軸線間の前記位相の非相関は、主に、網膜上のビーム・スポットの寸法に関係し[13]、これがシステムの係数であるため、発明者達は、固定のサンプリング・ステップに対して測定された流量の結果を訂正するように、
図5の曲線を利用することができる。
【0055】
[結果]
体内の網膜血流測定は、第1の対象物の右目に対して実施された。グリーン・クロスの固視標が、走査位置を導き、そして、対象物の目の動きを減じるために、用いられた。
図6は、r
1=1.7mm、r
2=1.9mmの円形走査プロトコルを用いた発明者達の実験で記録されたドップラーFD−OCTイメージを示している。これらイメージで見ることができる主な血管内の血流は、視神経頭の周りに分布していた。
【0056】
動脈は、比較的流速が速いため、極端な位相接続と信号のフェージングを引き起こすので、発明者達は、動脈よりも静脈分枝の網膜血流を測定することを選んだ。視神経頭の周りに分布した他の静脈の中からの静脈分枝の特定は、プローブビームと血管との間で算出された角度と、記録されたドップラー周波数シフトとに基づいて行われた。式(1)に従えば、同じ血管中で種々の方向に生じる流れが、後方散乱ビームに種々の周波数シフトを生じさせるだろう。この流れがプローブの方向から離れるように動く時、cosα>0であり、散乱された光は、負の周波数シフトを有するだろう。これに対して、流れがプローブビームの方向を向いている時、cosα<0であり、散乱された光は、正の周波数シフトを有するだろう。かくして、算出された角度と周波数シフトの
正負の符号とから、血管中の流れの方向が決定され得る。動脈は、神経頭から網膜周辺への流れ方向を有し、静脈は、周囲にある網膜から神経頭への流れ方向を有するので、流れ方向が分かると、視神経円板の周りに分布している動脈から静脈を区別する手助けとなり得る。
【0057】
ドップラー情報は、人間の網膜の動きとOCTシステムの走査ノイズとからのモーション・アーチファクトを有している。バックグラウンドの動きにより生じるドップラーノイズが、このシステムの位相不安定性より大きいので、これが修正されなければ、測定結果に影響を及ぼすだろう。ドップラーイメージ(
図6参照)の横方向で、ドップラー信号が、異なる時間でそれぞれサンプリングされる。ある部分は暗く、またある部品は明るい。従って、種々の水平な位置でのバックグラウンドの動きの信号は、相互関係を示さない。動きの影響が考慮され、局部領域で修正される。
【0058】
(
図6の白窓内に拡大された)血管V
4を検討して、各軸線に対して、内側の網膜の境界と血管の境界との間のドップラー信号が、平均化された。この値が、局部的な組織運動によって生じるドップラー信号である。この運動値は、血流によって引き起こされた実際の信号を得るために、全軸線でのドップラー信号から減じられるであろう。
図7は、バックグラウンドの除去の前後での1つの軸線のドップラー信号を示している。ドップラー信号の位置は、
図6で、破線で表されている。平均の組織の運動速度は、−0.89mm/sである。
図7で、実線の曲線が、本来の信号を示している。鎖線の曲線は、バックグラウンドを除去した後のドップラー信号を示している。運動信号を減じた後は、バックグラウンドの速度は0に近づいたことが判る。そして、血管の境界をサーチする必要なく体積流量を得るために、血管の領域付近で、積分が行われ得る。
【0059】
第1の血管V
1は、
図6に示されているように、中心で正の位相接続を有する負の周波数シフトを有していた。位相接続の後、流量プロファイルA(θ、D)が得られた。2つの連続したドップラーOCTイメージ内の測定された位置は、(θ
1=37.60,D
1=307.1μm)と(θ
2=37.80,D
2=255.3μm)とであった。前記血管のベクトルは、P
1P
2(−154,−128,−71.34)として算出された。式(3)からは、前記走査ビームと血管との間の角度が、cosα=0.24、α=76.10と算出された。この信号は、負の周波数シフトを有し、cosα>0であるので、V
1での流れ方向は、P
2からP
1に動く必要がある。我々の走査パターンでは、P
2が外側の円錐形上にあるのに対し、P
1は、神経頭に近い内側の円錐形上にある。かくして、この流れは、視神経円板の方に向き、血管V
1は、静脈である。連続した走査によって、ドップラー信号の8つのフレームが記録された。
図6に示されている前記血管V
1の中心部での流速が、解析された。
図8は、血管V
1の規格化された流速をプロットしている。パルス係数は、
図8に示された曲線に基づいて、k=0.695と算出された。cosαの値を用いて算出されたV
1のピークの流速は、17.0mm/sであった。式(7)から、角度βは、cosβ=−0.97と算出された。これらのパラメータを用いて、血管V
1中の体積流量が、3.01μl/minと算出された。不十分なサンプリング密度(
図5)による位相の非相関の影響を考慮すると、実際の体積流量は、4.41μl/minであった。
【0060】
視神経頭の周りの主な血管の各々の流れ方向が、同様にして解析され、そして、主な小静脈が特定され、
図6に示されているようにV
1乃至V
7とラベル付けされた。各小静脈の血流量が算出され、表1に示された。これら流量の和は、網膜からの全静脈の流量を決定し、これは53.87μl/minであった。プローブビームと血管との間での、測定された走査角は、同様に、表1に示されている。
【0061】
この実験では、7つの測定が実施され、測定ごとに、全静脈の流量が算出された。全流量の平均は、52.90μl/minであった。標準偏差が2.75μl/minであり、このことは、平均的な流量の約5.2%である。各小静脈に対する平均的な流量と標準偏差とは、表2に示されている。1つの血管における変化の流量係数は、全流量より大きいことが判る。これは、全網膜血流が安定傾向にあるが、網膜内の流量分布が、不規則的に変動することを意味している。この結果は、高速サンプリングDCSP方法が、サンプリングの時間が長くかかるために各網膜血管の個々の連続したイメージングによる検出が難しい網膜内の流量分布の力学的特性を、測定するための効果を有していることを示している。
【0062】
この方法の信頼性をテストするために、もう1つの対象物が測定された。この対象物の左目は、6回走査された。各走査は、8つのドップラーFD−OCTフレームが得られる2秒間のうちに終了した。走査半径は、r
1=1.8mmとr
2=2.0mmとであった。同様のデータ解析によって、ドップラーイメージから特定された5つの主な小静脈があった。6組のサンプルデータの解析によると、平均流量が、45.23μl/minであった。全流量の標準偏差は、3.18μl/minであり、これは、第2の対象物の平均流量の7.0%であった。両対象物の平均流量は、7.67μl/min差の、49.07μl/minであった。
【0063】
[議論]
この例は、速いデータ収集時間が利用される場合に、全網膜血液流量が決定され得る、ということを示している。また、動的な網膜流量分布が、検出され得る。この測定は、特定の処理が全流量を正常な水準に戻すならば、例外的な網膜血液流量を検出し、且つ、決定するために、用いられ得る。発明者達は、中心の網膜静脈の主な分枝を、これらの寸法と速度とがドップラーFD−OCTの動的範囲内にあるので、対象にした。Rivaと同僚達とによって示されているように、全ての静脈の流量の体積が、網膜中の動脈の流量の体積と一致するので[18]、全ての静脈の流量の測定だけで、全網膜血流量を測るのに十分である。測定された平均全静脈流量が、2つの対象物に関しては、約52.9μl/min及び45.23μl/minであり、この流量は、レーザードップラー速度測定[18]によって報告された34±6.3μl/minの全静脈流量と同等であった。
【0064】
この特定の実施形態には、いくつかの制限があった。網膜血管をとらえるために必要な高いサンプリング密度が掛けられるので、多数の軸走査が、各円で必要となる。このことは、ドップラーFD−OCTのフレームレートを減じる。4.2Hzのフレームレートは、かろうじて、心周期の間の流速における変化(
図8)を探知するのに足りる速さである。この理論に縛られたくはないが、発明者達は、比較的高いフレームレートが測定の精度を向上させると信じている。第2に、4.0μmの横方向のサンプリング間隔(3000の軸方向のサンプリングラインに対して1.9mmの走査直径)は、隣接する軸線相互の位相の非相関を防ぐのには十分ではない。測定された修正係数は、体積網膜流量を算出するために用いられなければならなかった。同時に、65μmより小さい直径の小静脈は、横方向のサンプリング密度が少ないために考慮に入れられなかった。さらに、もっと細かいサンプリング間隔が、位相の非相関の影響を取り除き、血流量の測定の精度を高めることが可能であった。第3に、ドップラー速度は、心臓収縮期の間にいくつかの動脈において起きるOCT信号のフェージングのために、読み取ることができなかった。発明者達は、これは、速度に係る干渉フリンジ流出(velocity-related interferometric fringe washout)、即ち、反射物が50μsの分光計の積分時間内に4分の1の波長だけ移動する場合、干渉信号のピークと谷とが平均的な線に落ち着くこと、によるものだと信じている。第4に、高い流速で、ドップラー位相シフトは、「位相接続」を生じさせるように、πを超えることができる。発明者達の位相接続アルゴリズムは、位相接続の1ピリオドまで解析することができるのみである。1ピリオド以上の位相接続を生じさせるように高い流量は、非常に複雑なために、コンピュータソフトウェアが信頼性良く解析できない。かくして、高度なピリオドの位相接続を避けることが、データ処理に対して望ましい。最後に、データ・サンプリング中の目の動きは、網膜血管の位置及び角度の測定の精度に、悪影響を与える。これは、わずかな位置の変位が流量測定に大きな影響を与え得る場合に、OCTビームにほぼ直交する血管にとって特に重大となる。
【0065】
上記制限のすべてが、イメージングの速度が速くなることによって、減じられ得る。前記分光計の有効な積分時間を減じることにより、流速の検出可能な範囲を広くすることができる。より速い速度が、時間のより細かいサンプリング(各心周期内でのより多くの時間ポイントがサンプリングされる)と、空間のより細かいサンプリング(各血管内でより多くのポイントがサンプリングされる)とに対して、可能となる。FD−OCTシステムの核となるライン・カメラの速度の連続した改良によって、これら制限は、全時間にわたって重要ではなくなるだろうということが、期待されている。
【0066】
発明者達の準備作業で、網膜血流量測定は、各網膜血管を個々に連続してイメージングすることによって実施された。しかしながら、データ・サンプリングに時間がかかり、全網膜血流の臨床測定は不可能であった。本発明では、高速データ・サンプリング(2秒以内)が、全網膜血管をとらえるDCSP方法によって、有効となった。
【0067】
本発明は、好ましくは、網膜血流を測定する既存の技術[19−24]に類似している。蛍光眼底血管造影法[21,22]は、網膜の血行動態の可視化を可能とするが、体積血流量を測定しない。パルス接眼レンズ血流量計(POBF、Paradigm Inc.)[19]が、眼圧と目の体積とに関係する強膜硬性を推量する。コヒーレンス流量測定技術[21]が、マイクロメータで眼底の動きを決定するために、角膜と網膜との両方によって部分的に反射されたレーザ光によって形成された干渉パターンを検出する。この動きは、脈絡膜血流の代用物として使用される。キャノン(登録商標)(Canon U.S.A Inc.)とハイデルベルク(登録商標)(Heidelberg engineering, GMBH, Heidelberg Germany)とによる2つの形式のレーザ・ドップラー流量計(LDF)が、売り出されている。キャノンの流量計(CF)は、絶対単位で体積流量を測定するために開発された[23,24]。しかしながら、この精度は、血管を横切る速度分布と精密な血管の寸法との情報の不足により、制限される。流速体積計算は、最大ドップラーシフトと真の平均血流速度との間の仮の関係を必要とする。更に、CFは、各血管を横切る走査の慎重な位置づけを必要とする。このため、全網膜血流量を測定することは、面倒で困難なプロセスである。ハイデルベルクの網膜流量計(HRT)[25]は、同様に、LDFの原理に基づいている。HRTは、ドップラー効果によって血流から誘導されたビート信号を検出するように、眼底を繰り返し走査するプローブビームを利用する。このHRTは、小さい領域全体にわたって、網膜毛細血管床の流量を測定する。従って、目の全体の健康状態を反映する全網膜血流量の測定は、不可能である。更に、血流量は任意の単位で測定され、この結果は、流れに無関係な組織の反射特性によって、悪影響を受け得る[26]。既存の方法のほとんどは、仮定パラメータを使用するために、任意の単位で網膜血流量を測定する。これらパラメータは、測定される目、人間、領域ごとに異なり得る。かくして、任意の測定単位を用いて動的な比較を行うのは難しい。絶対的な物理単位を用いた全網膜血流量の直接測定は、網膜において異常に高まったかん流、あるいは、減じられたかん流を検出するために望ましい。
【0068】
本発明の実施形態に係る方法は、流れベクトルを引き出すためのプローブビームに対する血管の角度を測定するために、使用され得る。これらは、解剖学もしくは流量パラメータにおける想定に頼ることなく、血管の断面の流れプロファイルを積分することによって、絶対的な流量測定を生じさせる。流量パルスは、心周期全体にわたって平均化された。報告された血流量の測定のための技術のほとんどでは、データ・サンプリングは、多くの時間を要する。模範的なDCSPの実施形態では、2秒以内にサンプリングされるデータを用いて、全網膜血流量が、算出され得る。これによって、診療所の撮影者と対象物との座っている時間が、大いに減じられるだろう。また、動的な網膜血流量分布が、検出され得る。これは、高速走査パターンを用いて、全眼底流量を高速に得る方法の、最初の説明であるだろう。体積流量単位で測定された種々の結果は、異なる対象物のために、比較され得る。
【0069】
全網膜血流量の測定は、多くの眼疾患の治療のために重要である。米国における失明の主な原因[27−29]、例えば、糖尿病性網膜症や加齢性黄斑変性症が、血管異常に関係している。中心網膜静脈閉塞と分枝網膜静脈閉塞とは、同様に、網膜血流量の減少を特徴とする網膜疾患である。緑内障は、失明のもう1つの主な原因であり、主として高眼圧に関係している。しかし、網膜及び視神経中の血行不良も、同様に、緑内障を進行させる危険因子と考えられている[30−34]。ドップラーOCTを用いた全血流量の正確な測定は、病態生理学の理解を促し、網膜血流量を改善する治療を発展させ、最終的に、網膜及び視神経疾患の診断を向上させるだろう。
【0070】
[結論]
要約すると、ドップラー・フーリエ・ドメインOCTを用いた網膜血流の生体内の測定は、この例により、示されている。二重円形走査パターンは、真の流速が測定されるように、血流と走査ビームとの間の角度を決定するために、開発された。流れ方向に基づいて、小静脈が、動脈から区別され得る。視神経頭の周りにある各小静脈の体積流量が、サンプリングされた心周期で積分された。2つの対象物で測定された血流量は、7.67μl/min差で、52.9μl/min及び45.23μl/minであった。本発明は、速くて、再現性があり、血管の寸法もしくは流れプロファイルのいかなる仮定にも依存しない、全網膜血流を測定する方法を提供する。
【0071】
本発明は、特定の模範的な実施形態及び例の観点で説明されているが、個々に開示されている実施形態は、説明に役立たせる目的のみを有し、添付の請求項に示されている本発明の精神と範囲とから逸れることなく、種々の修正及び変更が、当業者によってなされ得ることが、理解されるだろう。
【0072】
第1の対象物の網膜静脈に対する血管の直径、走査角、並びに、体積流量
【表1】
【0073】
すべての測定された静脈に対する再現性
【表2】
【0074】
[参考]
下記の参考文献が、ここに引用されている。各参考文献の開示は、すべて信頼されており、ここでは参考によって、取り入れられている。
【0075】
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