【実施例】
【0029】
次に、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0030】
図2Aは、静磁場磁石31により静磁場が形成されている空間、すなわち撮像領域(FOV:Field Of View)33を示す。撮像領域33の上方に傾斜磁場コイル9aが設けられ、さらに傾斜磁場コイル9aの上方には、静磁場磁石31が設けられている。なお、ここで示す傾斜磁場コイル9aは、Y軸傾斜磁場コイル一対の一方のみを図示している。また、当該コイルは、閉回路(C)32を構成している。
【0031】
撮像領域33の位置を表すために、X,Y,Z軸が図に示すように与えられている。それぞれの2軸で決定される平面に平行する面を基準面(アキシャル面、サジタル面、コロナル面など)とし、X,Y,Z軸の原点を記号Oで示し、原点Oから距離rだけ離れたオブリーク断面34上の位置をPとする。
【0032】
ここで、オブリーク断面34は、上記基準面から所定の傾斜、例えばX軸とZ軸で決定される平面に対して、ψ(プシー)なる角度で傾いてなる平面であり、さらに、X軸とY軸で決定される平面に対しても、φ(ファイ)なる角度で傾いてなる平面である。本実施例では、当該平面で被検体の断面を撮像する場合を想定して以下に説明する。
【0033】
なお、ψ(プシー)がゼロ、あるいはφ(ファイ)がゼロなる平面、あるいはいずれもがゼロの場合でも、本実施例は適用できることは言うまでもない。
【0034】
この時の位置Pにおける磁束密度を以下に求める。
Bio−Savartの法則により、
図2Aで示す閉回路(C)32に電流Iが流れている場合、原点Oから距離rだけ離れた位置Pにおける磁束密度B(r)は、
【0035】
【数2】
【0036】
で表される。ここで、dsは閉回路(C)32上の微小領域(線分)を、μは透磁率を、ベクトルsは原点Oを始点とし、微小領域dsを終点とするベクトルを、それぞれ示す。
また、式(1)の積分は閉回路(C)32に沿って線積分を行うことを示す。なお、微小領域dsから、位置Pまでの距離は、r−sのベクトルで表記される。
【0037】
ところで、MR撮像は、シーケンサ4からの制御により、SE(Spin Echo)法やFE(Field Echo)法などの撮像法のパルスシーケンスに従って実行される。シーケンサ4から出力されるデジタルの生データをk空間として、k空間データベースが形成される。
取得されたk空間データに対して二次元又は三次元のフーリエ変換処理あるいは、最大値投影処理などの画像再構成処理を施して、非線形な実際のZ軸傾斜磁場における再構成画像領域(FOV)を生成する。
【0038】
図2Bは、
図2Aに示す撮像領域33の原点Oから撮像領域33の外側端に向かって形成されるZ軸傾斜磁場の仮想の磁場強度分布と実際の磁場強度分布を示す。
【0039】
仮想の磁場強度分布は、原点Oから線形性を維持して撮像領域33の外側端まで伸びている。
一方、実際の磁場強度分布は、原点Oから一定の領域まで線形性を維持して伸びているが、ある領域から線形性が維持できずに、磁場強度分布は非線形性を示すようになる。なお、図に示す非線形性は、一例を示すに過ぎない。その非線形の特性は、扱うMRI装置により異なる。
【0040】
いま、再構成FOVが狭い範囲の場合、すなわち、図中で示す再構成FOV(1)の場合には、再構成FOV(1)の右端における仮想および実際の磁場強度は、それぞれZ
V(1)とZ
R(1)であり、磁場強度の差が殆ど見られない。
【0041】
一方、再構成FOVが広い範囲の場合、すなわち、図中で示す再構成FOV(2)の場合には、再構成FOV(2)の右端における仮想および実際の磁場強度は、それぞれZ
V(2)とZ
R(2)であり、磁場強度の差が顕著に現れている。
【0042】
従って、この傾斜磁場の実際の強度分布が非線形であるために、上記位置Pにおける磁場強度は、線形性を有する仮想の磁場強度分布からずれて歪みを生じている。
【0043】
次に、上記式(1)を用いて、その歪の量を求めることにする。
上記位置Pでの傾斜磁場の歪み量は、傾斜磁場強度Grを用いて、以下の式で求められる。
【0044】
【数3】
【0045】
rの座標を、静止座標系の座標表示を(x,y,z)とし、その座標rで表す位置Pにおける傾斜磁場強度のx成分、y成分、z成分を、それぞれGx、Gy、Gzとすると、上式は
【0046】
【数4】
【0047】
と各軸成分に分解できる。
【0048】
実際には、上述したように、基準面に対して傾斜している場合、すなわち撮像断面は静止座標系に垂直または平行ではない場合が多い(オブリークしている場合)。
【0049】
以下、オブリークしている場合の計算方法を以下に述べる。オブリークしていない場合は、後述の単位ベクトルの1成分を0にすればよい。
【0050】
図3に示した撮像画像に対する横ベクトルと、縦ベクトルの単位ベクトルをそれぞれ、R(r
x、r
y、r
z)、C(c
x、c
y、c
y)と表すことにする。横方向の傾斜磁場の歪み量δRを、縦方向の傾斜磁場の歪み量δCとすると、それぞれの傾斜磁場の歪み量は単位ベクトルとオブリークしていない場合の傾斜磁場の歪み量(基準値)は、式(3)を用いて、
【0051】
【数5】
【0052】
と表される。以上より、画像上の全ての点において、画像の横方向と、縦方向に、それぞれδRとδCだけ、画素を移動することでオブリークした画像の歪みを補正する。
【0053】
上記説明は、位置Pにおける磁場強度の算出方法と、その位置Pにおける傾斜磁場の歪み量の算出に関するが、オブリーク断面34の全体に亘って、同様の手法を繰り返して行うことにより、オブリーク断面34全面での磁場強度分布が求まる。求めた全面での磁場強度分布と仮想の磁場強度分布から全面での傾斜磁場の歪み量を算出することができる。本補正方法により、オブリーク断面34における撮像画像のぼけやアーチファクトなどの不具合を低減した撮像画像を得ることができる。
【0054】
傾斜磁場の歪み量の計算は、画像再構成が終了するより以前、撮像断面が決定した段階で実行できるので、位置情報が決定した段階で傾斜磁場の歪み量を計算し、画像を取得してから傾斜磁場の歪み量に応じた歪み補正を実行するように2段階に分けることができる。
【0055】
図2Bに示すように、傾斜磁場の歪み量は磁場中心(ここでは、原点Oを磁場中心としている)から離れるほど大きくなる。そこで、撮像断面の中で最も磁場中心から離れた位置の傾斜磁場の歪み量を最初に計算し、傾斜磁場の歪み量が許容範囲以下であったら、傾斜磁場の歪み量の計算及び歪み補正を実行しないことも可能である。
【0056】
次に処理の流れを、
図4を用いて説明する。
撮像断面が決定した後、撮像断面を特定するパラメータを取得する(ステップ401)。
ステップ401で取得した撮像断面の中で、磁場中心から最も離れた(再構成FOV領域の外側端)撮像断面領域を抽出し、式(2)、式(3)により、撮像断面領域上の各位置での傾斜磁場の歪み量を算出する(ステップ402)。
ステップ402で算出した傾斜磁場の歪み量の最大値、あるいは平均値のどちらかが基準値を超えた場合、ステップ404を実行し、超えていない場合は、次の新たな撮像断面が決定されるまで待機する(ステップ403)。
ステップ404では、ステップ402と同じ計算式を用いて、残りの算出していない断面についての傾斜磁場の歪み量を算出する。ステップ401で取得した撮像断面パラメータを用いて、オブリークの単位ベクトルを算出する(ステップ405)。
ステップ401からステップ405は、撮像断面が決定された直後から実行可能である。各撮像断面の画像の再構成処理が終了した後、ステップ404とステップ405で算出した値を使用して、画像に対して歪み補正処理を行う(ステップ406)。
【0057】
上述したように、本実施例によれば、オブリークした画像の歪みを補正することができる。従来のように、事前に特定の位置における補正データテーブルを用意し、対応する画像の位置座標がない場合は、近傍の値を用いる方法、あるいは、適宜に補間法で求める方法に比べ、本補正は、高精度な傾斜磁場の歪み量補正を行うことができる。特に、オブリークした画像の傾斜磁場の歪み量の補正に有効である。その理由は、上述したとおりである。