特許第5684158号(P5684158)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5684158
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】積層型セラミック電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/232 20060101AFI20150219BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20150219BHJP
   H01G 4/252 20060101ALI20150219BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20150219BHJP
【FI】
   H01G4/12 361
   H01G4/30 301B
   H01G1/14 V
   H01F15/10 C
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-5880(P2012-5880)
(22)【出願日】2012年1月16日
(65)【公開番号】特開2012-244150(P2012-244150A)
(43)【公開日】2012年12月10日
【審査請求日】2013年9月4日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0047696
(32)【優先日】2011年5月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(72)【発明者】
【氏名】パク・ミュン・チョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ・ダ・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ビョン・ギュン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジ・ソク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ビュン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】グ・ヒュン・ヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ・キュ・ハ
(72)【発明者】
【氏名】ユン・グン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ナ・ウン・サン
【審査官】 柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−203737(JP,A)
【文献】 特開平06−349313(JP,A)
【文献】 特開2008−130720(JP,A)
【文献】 特開2007−115755(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/099772(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/232
H01F 27/29
H01G 4/252
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック層と内部電極層が交互に積層されて形成された本体と、
前記本体の一面に形成される外部電極とを含み、
前記外部電極は、
前記本体の一面に前記内部電極と接触するように形成され、導電性金属及びaSiO−bB−cAEMOの組成式(モル部でa+b+c=100、aは20から60、bは5から40、cは1から30、AEMはバリウム、カルシウムからなる群から選択されたアルカリ土類金属)で表される第1ガラスフリットを含む第1層と、
前記第1層上に形成され、表面にメッキ層が形成され、導電性金属及びaSiO−bB−cAEMOの組成式(モル部でa+b+c=100、aは5から19、bは10から40、cは5から40、AEMはバリウム、カルシウムからなる群から選択されたアルカリ土類金属)で表される第2ガラスフリットを含む第2層と、
を含み、
前記導電性金属は銅である積層型セラミック電子部品。
【請求項2】
前記第1ガラスフリットは、さらに10モル部以下のAl、30モル部以下のTM及び40モル部以下のAMOからなる群から少なくとも1つ以上(TMはバナジウム、亜鉛からなる群から少なくとも1つ以上選択される遷移金属、x及びyは遷移金属酸化物における遷移金属と酸素の原子比、AMはリチウム、ナトリウム、カリウムからなる群から選択されたアルカリ金属)を含み、
前記第2ガラスフリットは、さらに10モル部以下のAl、10モル部以下のTM及び20モル部以下のAMOからなる群から少なくとも1つ以上(TMはバナジウム、亜鉛からなる群から少なくとも1つ以上選択される遷移金属、x及びyは遷移金属酸化物における前記遷移金属と酸素の原子比、AMはリチウム、ナトリウム、カリウムからなる群から選択されたアルカリ金属)を含む請求項1に記載の積層型セラミック電子部品。
【請求項3】
前記第1層は、前記導電性金属100重量部及び前記第1ガラスフリット5から15重量部を含む導電性ペーストで形成され、
前記第2層は、前記導電性金属100重量部及び前記第2ガラスフリット10から20重量部を含む導電性ペーストで形成された請求項1に記載の積層型セラミック電子部品。
【請求項4】
前記セラミック層は誘電体層である請求項1に記載の積層型セラミック電子部品。
【請求項5】
前記内部電極の材料はニッケルである請求項1に記載の積層型セラミック電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層型セラミック電子部品に関し、より具体的には薄層でありながら、高信頼性(hermetic sealing)を具現することができる積層型セラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
内部電極としてニッケルを用いる最近のMLCC(Multilayered ceramic capacitor)において、外部電極は銅をベースメタルとして用いることが一般的で、これにガラスが添加される形態である。
【0003】
外部電極ペーストにおけるガラスの役割は銅の焼結を促進させるだけでなく、セラミック素体と外部電極との接着剤の役割をし、さらに、銅金属が満たされていない空間をガラスが満たすことで、完全に密封させる役割をする。
【0004】
一般的に、外部電極ペーストには1種または2〜3種の異なるガラスが含まれる。しかし、一般的なガラスの特性上、耐酸性に優れたり、容量接触性が良好なガラスは、軟化点が高くて銅との濡れ性が落ち、銅との濡れ性に優れたガラスは、耐酸性が弱かったり、容量接触性が脆弱であるいう問題点がある。
【0005】
従来の銅の外部電極ペーストは1種または異なる特性を有する2〜3種のガラスが含まれた銅ペーストを塗布し、乾燥及び焼成して外部電極を形成する。このような1回塗布及び焼成の方法によると、銅ペースト内に入っているガラスは内部電極及び外部電極の接着性、外部電極のシーリング(sealing)、銅との濡れ性、耐酸性などの機能を全て満たすことが困難である。
【0006】
即ち、銅ペースト内のガラス成分のうち酸化ケイ素の含量が増加すると、耐酸性は優れるが、銅との濡れ性が低下し、軟化点が高くなってガラスが界面と銅金属の空間を十分に満たすことができないことがある。
【0007】
また、逆の場合、ガラスの銅との濡れ性及び界面移動は十分に行われるが、ガラスの界面移動が速すぎて銅−ニッケル合金がうまく形成されないこともある。
【0008】
ガラスの銅との濡れ性が足らず、電極焼成後のガラスが表面に溶出されることもある。
【0009】
上記のような問題点を解決するために、外部電極ペーストを製造する際、それぞれの問題点を解決する2〜3種のガラスをともに入れてペーストを製造することもある。しかし、各ガラスが所望する機能を適切に行うためには外部電極内で各ガラスが所望する位置に存在しなければならないが、ガラスの高温特性上、実際は各ガラスが所望するところに位置することが困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、薄層でありながら、高信頼性(hermetic sealing)を具現することができる積層型セラミック電子部品を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による実施形態である積層型セラミック電子部品は、セラミック層と内部電極層が交互に積層されて形成された本体と、上記本体の一面に形成される外部電極とを含み、上記外部電極は上記本体の一面に上記内部電極と接触するように形成され、導電性金属及びaSiO−bB−cAEMOの組成式(モル部でa+b+c=100、aは20から60、bは5から40、cは1から30、AEMはバリウム、カルシウムからなる群から選択されたアルカリ土類金属)で表される第1ガラスフリットを含む第1層と、上記第1層上に形成され、表面にメッキ層が形成され、導電性金属及びaSiO−bB−cAEMOの組成式(モル部でa+b+c=100、aは5から19、bは10から40、cは5から40、AEMはバリウム、カルシウムからなる群から選択されたアルカリ土類金属)で表される第2ガラスフリットを含む第2層とを含むことができる。
【0012】
上記第1ガラスフリットはさらに10モル部以下のAl、30モル部以下のTM及び40モル部以下のAMOからなる群から少なくとも1つ以上(TMはバナジウム、亜鉛からなる群から少なくとも1つ以上選択される遷移金属、x及びyは遷移金属酸化物における遷移金属と酸素の原子比、AMはリチウム、ナトリウム、カリウムからなる群から選択されたアルカリ金属)を含み、上記第2ガラスフリットはさらに10モル部以下のAl、10モル部以下のTM及び20モル部以下のAMOからなる群から少なくとも1つ以上(TMはバナジウム、亜鉛からなる群から少なくとも1つ以上選択される遷移金属、x及びyは遷移金属酸化物における上記遷移金属と酸素の原子比、AMはリチウム、ナトリウム、カリウムからなる群から選択されたアルカリ金属)を含むことができる。
【0013】
上記第1層は上記導電性金属100重量部及び上記第1ガラスフリット5から15重量部を含む導電性ペーストで形成され、上記第2層は上記導電性金属100重量部及び上記第2ガラスフリット10から20重量部を含む導電性ペーストで形成されることができる。
【0014】
上記導電性金属は銅であることができる。
【0015】
上記セラミック層は誘電体層であることができる。
【0016】
上記内部電極の材料はニッケルであることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による積層型セラミック電子部品は、内部電極と外部電極間の接着性に優れ、メッキ溶液に対する耐酸性に優れてガラスの溶出を防止することができ、外部との密閉性に優れて耐湿性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態による積層型セラミック電子部品の斜視図(a)及びA−A’線に沿って切開した断面図(b)である。
図2】本発明の一実施形態による積層型セラミック電子部品の外部電極の構造を示す模式図である。
図3】実施例及び比較例に対する絶縁抵抗測定結果を示すグラフである。
図4】本発明の一実施形態による積層型セラミック電子部品の外部電極の断面構造を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0020】
しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0021】
従って、図面における要素の形状及び大きさなどは明確な説明のために誇張されることがあり、図面上に同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0022】
本発明の一実施形態による積層型セラミック電子部品は、セラミック層と内部電極層が交互に積層されて形成された本体と、上記本体の一面に形成される外部電極とを含み、上記外部電極は上記本体の一面に上記内部電極と接触するように形成され、導電性金属及びaSiO−bB−cAEMOの組成式(モル部でa+b+c=100、aは20から60、bは5から40、cは1から30、AEMはバリウム、カルシウムからなる群から選択されたアルカリ土類金属)で表される第1ガラスフリットを含む第1層と、上記第1層上に形成され、表面にメッキ層が形成され、導電性金属及びaSiO−bB−cAEMOの組成式(モル部でa+b+c=100、aは5から19、bは10から40、cは5から40、AEMはバリウム、カルシウムからなる群から選択されたアルカリ土類金属)で表される第2ガラスフリットを含む第2層とを含むことができる。
【0023】
上記第1ガラスフリットは、さらに10モル部以下のAl、30モル部以下のTM及び40モル部以下のAMOからなる群から少なくとも1つ以上(TMはバナジウム、亜鉛からなる群から少なくとも1つ以上選択される遷移金属、x及びyは遷移金属酸化物における遷移金属と酸素の原子比、AMはリチウム、ナトリウム、カリウムからなる群から選択されたアルカリ金属)を含み、上記第2ガラスフリットはさらに10モル部以下のAl、10モル部以下のTM及び20モル部以下のAMOからなる群から少なくとも1つ以上(TMはバナジウム、亜鉛からなる群から少なくとも1つ以上選択される遷移金属、x及びyは遷移金属酸化物における上記遷移金属と酸素の原子比、AMはリチウム、ナトリウム、カリウムからなる群から選択されたアルカリ金属)を含むことができる。
【0024】
以下では、図1を参照して本発明の一実施形態による積層型セラミック電子部品について説明する。積層型セラミック電子部品には積層型セラミックキャパシタ、積層型チップインダクター、チップビーズなどがあり、積層型セラミックキャパシタを例に挙げて説明する。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0025】
図1は本発明の一実施形態による積層型セラミック電子部品の斜視図(a)及びA−A’線に沿って切開した断面図(b)である。
【0026】
図1の(b)を参照すると、積層型セラミックキャパシタには外部電極20が形成されており、上記外部電極20は2層で構成されることができる。
【0027】
即ち、本体10上に形成された第1層21と、上記第1層21上に形成された第2層22とで構成されることができる。
【0028】
外部電極20の内側は内部電極30と接続され、外側にはメッキ層(不図示)が形成されることが一般的である。従って、外部電極は内部電極との接着性に優れ、外側はメッキ液に対する耐性が求められる。
【0029】
一般的に、内部電極30にはニッケルを主材料と使用し、外部電極20には銅を主材料として使用するが、外部電極ペーストにガラスを添加すると、ガラスの流動性に便乗して外部電極20中に存在する銅が内部電極30の方に容易に移動することができる。内部電極30の方に移動した銅は内部電極30を構成する元素であるニッケルと接して焼結過程を経て銅−ニッケル合金を形成することができる。このように銅−ニッケル合金が形成されることにより、外部電極20と内部電極30の間が電気的に連結されることができる。
【0030】
このような特性を具現するために第1層21を形成することができる。
【0031】
また、ガラスの銅との濡れ性が良いと、ガラスが外部電極20内に均一に分散されることができ、この場合、スズメッキ層が容易に形成されることができる。
【0032】
ガラスの銅との濡れ性が良いとは、外部電極20内でガラス同士が凝集したり、分離されておらず、外部電極20全体にわたって均一に分布されており、外部電極20の表面にガラスが溶出されないということを意味する。
【0033】
ガラスの銅との濡れ性が悪いと、ガラスは外部電極20の主材料である銅と均一に混ざることができず、ガラス同士が凝集する傾向を示し、結局、ガラスが外部電極の表面に溶出される。これにより、スズメッキ層(不図示)が形成され難くなることがある。
【0034】
このような特性を具現するために第1層21上に第2層22を形成し、2層構造の外部電極を設計することができる。
【0035】
製品の小型化及び大容量化の傾向によって、外部電極の厚さが薄くなり外部電極焼成後のメッキ工程でメッキ液が電極内部に侵透することによって、チップの信頼性が低下するという問題がある。
【0036】
外部電極内に存在するガラスがメッキ液に対する耐食性に優れないため、メッキ液によってガラスが浸食されながらメッキ液が電極内部に浸透するようになる。よって、外部電極内のガラスのメッキ液に対する耐食性を強化することで、メッキ工程で生じ得るメッキ液の電極内浸透を防ぎ、チップの信頼性を向上させることができる。
【0037】
外部電極の第1層は第1ガラスフリットを含み、第2層は第2ガラスフリットを含むことができる。
【0038】
第1ガラスフリットはaSiO−bB−cAEMOの組成式(モル部でa+b+c=100、aは20から60、bは5から40、cは1から30、AEMはバリウム、カルシウムからなる群から選択されたアルカリ土類金属)で表され、さらに10モル部以下のAl、30モル部以下のTM及び40モル部以下のAMOからなる群から少なくとも1つ以上(TMはバナジウム、亜鉛からなる群から少なくとも1つ以上選択される遷移金属、x及びyは遷移金属酸化物における遷移金属と酸素の原子比、AMはリチウム、ナトリウム、カリウムからなる群から選択されたアルカリ金属)を含むことができる。
【0039】
第2ガラスフリットはaSiO−bB−cAEMOの組成式(モル部でa+b+c=100、aは5から19、bは10から40、cは5から40、AEMはバリウム、カルシウムからなる群から選択されたアルカリ土類金属)で表され、さらに、10モル部以下のAl、10モル部以下のTM及び20モル部以下のAMOからなる群から少なくとも1つ以上(TMはバナジウム、亜鉛からなる群から少なくとも1つ以上選択される遷移金属、x及びyは遷移金属酸化物における上記遷移金属と酸素の原子比、AMはリチウム、ナトリウム、カリウムからなる群から選択されたアルカリ金属)を含むことができる。
【0040】
以下、ガラスフリットの構成成分について説明する。
【0041】
ガラスフリットは、各構成成分が有機的に結合されてその特性を発揮する。
【0042】
従って、単に特定構成成分の含量を比べて、全体ガラスフリットの物性を予測し比較することは好ましくないことに留意すべきである。
【0043】
酸化ケイ素はガラスの網目構造形成酸化物(glass network former)であって、ケイ素原子がその周りを取り囲む4つの酸素原子を介して隣接する4つのケイ素原子と結合する構造を有する。
【0044】
酸化ケイ素はガラスの軟化温度及び耐酸性を決める最大因子として作用し、酸化ケイ素の含量が少ないと、ガラスの網目構造が弱くて軟化温度が低く、耐酸性が弱い。また、酸化ケイ素の含量が多いと、ガラスの網目構造が強くて軟化温度が高く、耐酸性が強い。
【0045】
第1ガラスフリットは酸化ケイ素の含量が20から60モル部であることができ、第2ガラスフリットは酸化ケイ素の含量が5から19モル部であることができる。
【0046】
酸化ケイ素はメッキ液に対する耐食性を向上させる機能をすることができ、酸化ケイ素の含量が少ないと、メッキ液に対する耐食性の向上効果が僅かで、酸化ケイ素の含量が多いと、銅との濡れ性が良くない恐れがある。
【0047】
酸化ホウ素はガラスの網目形成物であって、メッキ液に対する耐食性を向上させることができる。
【0048】
酸化ホウ素は、第1ガラスフリットの場合、5から40モル部であることができ、第2ガラスフリットの場合は10から40モル部であることができる。
【0049】
酸化ホウ素の含量が少ないと、メッキ液に対する耐食性の向上の効果が僅かで、酸化ホウ素の含量が多いと、ガラスフリットと外部電極の構成成分である銅との濡れ性が良くない恐れがある。
【0050】
酸化バリウムは、アルカリ土類金属酸化物のうちガラスの軟化点及び融点を最も大きく低下させることができる成分であり、特にガラスの長化(高温での粘度変化が緩慢な特性)を誘導して高温での作業性を向上させることができる。
【0051】
第1ガラスフリットは酸化バリウムの含量が1から30モル部であることができ、第2ガラスフリットは酸化バリウムの含量が5から40モル部であることができる。
【0052】
酸化バリウムの含量が少ないと、融点及び軟化点が高くなることがあり、酸化バリウムの含量が多いと、ガラスの形成が難しくなったり、化学的耐久性が脆弱となることがある。
【0053】
酸化カルシウムはガラスの製造において最も重要なアルカリ土類金属酸化物であって、ガラス溶融物の粘度に影響を及ぼし、化学的耐水性を向上させ、ガラスの長化(long glass)により、作業温度の範囲を広くすることができる。
【0054】
酸化カルシウムの含量が少ないと粘度が低すぎ、酸化カルシウムの含量が多いと、粘度が高いことがある。
【0055】
本実施形態における上記ガラスフリットは、さらに酸化アルミニウム、遷移金属酸化物、アルカリ金属酸化物を含むことができる。
【0056】
酸化アルミニウムは、ガラスの網目構造内の陽イオンの酸素結合力により、中間酸化物に分類され、特に、ガラスの構造を安定化させる汎用成分として知られている。酸化アルミニウムはガラスの長化、即ち、作業温度の範囲を広くすることができ、化学的耐久性の増加及び結晶化防止の機能を有することができる。
【0057】
第1及び第2ガラスはともに10モル部以下の酸化アルミニウムをさらに含むことができる。
【0058】
酸化アルミニウムの含量が多いと、結晶化する可能性があり、ガラスの形成が難しくなったり、軟化点及び融点の急激に高くなることがある。また、酸化アルミニウムの含量が少ないと、粘度が高くなりすぎることも、化学的耐久性が脆弱となることもある。
【0059】
遷移金属としては亜鉛、バナジウムなどを用いることができ、これらは単独、または2以上を混合して使用することもできる。
【0060】
x、yは遷移金属の酸化数の状態により様々な値を有することができる。
【0061】
第1ガラスフリットは遷移金属酸化物を30モル部以下含むことができ、第2ガラスフリットは遷移金属酸化物を10モル部以下含むことができる。
【0062】
特に、酸化亜鉛はガラスの融点及び軟化温度を低める役割をし、還元剤として作用しニッケルと銅の接触性を向上させる。
【0063】
酸化亜鉛の含量が多いと、ガラスが結晶化し、ガラスの熱的特性が変わることがあり、ガラスの形成が難しくなったり、化学的耐久性が脆弱となることがある。
【0064】
アルカリ金属としてはリチウム、ナトリウム、カリウムなどがあり、これらを単独、または2以上混合して用いることもできる。
【0065】
アルカリ金属酸化物は、第1ガラスフリットの場合、40モル部以下含むことができ、第2ガラスフリットの場合は20モル部以下含むことができる。
【0066】
アルカリ金属酸化物はガラス網目修飾酸化物(glass network−modifier)であって、酸化ケイ素のネットワークを切って溶融度を向上させる融剤(flux)の役割をし、ガラスを製造する際、融剤(flux)として導入されてガラス網目構造内の強い網目結合を切ることで、全体網目構造を弱化させることができる。従って、軟化点や融点などを落とす時には非常に効果的であるが、同時に化学的耐久性を低下させる要因ともなる。
【0067】
アルカリ金属酸化物の含量が少ないと、融剤としての役割を十分に果たすことができず、アルカリ金属酸化物の含量が多いと、化学的耐久性が低下することがある。
【0068】
ガラスフリットは次のように製造することができる。
【0069】
第1または第2ガラスフリットの組成を満たすように原料を秤量して混合する。原料の混合方法は特に制限されない。
【0070】
混合原料を溶融させた後、急冷させてガラスフレーク(flake)を製造する。混合原料の溶融は通常、電気炉で1400〜1450℃で行うことができる。
【0071】
ガラスフレークを乾式粉砕した後湿式粉砕する。乾式粉砕と湿式粉砕を連続して行うと、粉砕時間及び粒度偏差を減らすことができる。
【0072】
ボールミルなどの粉砕を通じてガラスフリットを得ることができる。
【0073】
上記外部電極の第1層は上記導電性金属100重量部及び上記第1ガラスフリット5から15重量部を含む導電性ペーストで形成されることができる。
【0074】
ガラスフリットの含量が5重量部以下ではセラミック本体と外部電極の界面でガラスがなかったり、緻密度が低下することにより、信頼性不良が発生することがあり、15重量部以上ではガラスがセラミック本体と外部電極の界面に移動しすぎて銅−ニッケル接触を妨害し、容量接触性不良が発生することがある。
【0075】
上記外部電極の第2層は上記導電性金属100重量部及び上記第2ガラスフリット10から20重量部を含む導電性ペーストで形成されることができる。
【0076】
ガラス含量が10重量部より少ないと緻密度の低下による信頼性不良が発生することがあり、20重量部より多いと過剰のガラスによりガラスが表面に移動して半田付け不良が発生することがある。
【0077】
上記導電性ペーストは通常のペーストと同様に、バインダーと溶剤を含むことができ、バインダーにはエチルセルロース、ニトロセルロース、アクリル系樹脂などがあり、必要に応じて、分散剤や活性剤などを含むこともできる。
【0078】
上記導電性金属はこれに制限されないが、銅であることができる。
【0079】
上記セラミック層11は誘電体層であることができる。
【0080】
誘電体層はチタン酸バリウム系誘電体材料と有機バインダーを混合した後ドクターブレード法、リップキャスティング法などにより製造することができる。
【0081】
上記内部電極30の材料はニッケルであることができる。
【0082】
内部電極30には銀、パラジウム、白金、銀−パラジウム合金などが適用されることができ、最近では経済性を考慮してニッケル、銅などが適用される。該内部電極を形成する際、一般的にスクリーン印刷方法が適用され、スクリーン印刷方法で内部電極を形成するために内部電極はペーストの形態が適用される。
【0083】
図2は、本発明の一実施形態による積層型セラミック電子部品の外部電極の構造を示す模式図である
【0084】
図2の(a)を参照すると、第1層を積層型セラミックキャパシタの長さ方向に垂直な両面及びこれと隣接する面に延長して形成し、第2層は第1層上に形成し、長さ方向に垂直な両面をカバーするように形成することができる。
【0085】
図2の(b)を参照すると、第1層を長さ方向に垂直な両面に形成し、第2層を長さ方向に垂直な両面及びこれと隣接する面に延長されるように形成することができる。
【0086】
本発明は上記外部電極の構造に限定されず、外部電極が内部電極を完全に密閉できるのであれば、様々に変形して形成することができる。
【0087】
本発明による積層型セラミックキャパシタは次のように製造されることができる。
【0088】
チタン酸バリウムなどを主成分とするセラミック粉末をバインダー、分散剤などとともに有機溶剤に混合し、該混合物をボールミリングなどを通じて均一に分散させたスラリーを製造した後、上記スラリーをドクターブレードなどの方法によりセラミックシートに製造することができる。
【0089】
ニッケルなどの導電性金属をバインダー、分散剤などとともに混合して内部電極用ニッケルペーストを用意し、上記ニッケルペーストで上記セラミックシート上にスクリーン印刷などの方法により内部電極パターンを形成する。
【0090】
内部電極パターンが形成されたセラミックシートを積層、加圧、切断した後外部電極を形成する。外部電極は銅を主成分とするペーストをディッピング方式などにより形成することができる。
【0091】
特に、本実施形態では外部電極を2層、即、第1層及び第2層で形成することができる。
【0092】
第1層と第2層はガラスフリットの組成だけが異なり、残りの事項は同一である。
【実施例】
【0093】
以下では実施例を通じて本発明について説明する。
【0094】
ガラスフリットの出発元素を、表1のような組成を満たすように秤量及び混合した後、分当たり10℃の昇温速度で、1,450℃で溶融させてから、ツインローラー(twin roller)を利用して急冷させることで、ガラスフレーク(flake)を製造した。
【0095】
次に、乾式粉砕及びアルコールを利用した湿式粉砕を行ってガラスフリットを製造した。
【0096】
表1にはガラスフリットの組成を示した。
【0097】
【表1】
【0098】
表2には第1層または第2層の外部電極ペーストをそれぞれ1回塗布して外部電極を形成したものを比較例とし、第1層及び第2層の外部電極ペーストを2回塗布して外部電極を形成したものを実施例としてガラス溶出不良及び接触性不良の発生頻度を示した。
【0099】
【表2】
【0100】
表2の比較例1を参照すると、第1層ペーストを1回塗布して外部電極を形成した場合、ガラス溶出不良は100個中13個発生したが、接触不良は全く発生しなかった。
【0101】
表2の比較例2を参照すると、第2層ペーストを1回塗布して外部電極を形成した場合、ガラス溶出不良は発生しなかったが、接触不良は100個中23個発生した。
【0102】
表2の実施例1を参照すると、第1層ペーストを先に塗布した後、その上に第2層ペーストを塗布して外部電極を形成した場合は、ガラス溶出不良及び接触不良が発生しなかった。
【0103】
これにより、外部電極を第1層及び第2層に分けて形成することで、ガラス溶出及び接触不良を防止することができることが確認できた。
【0104】
図3の(a)及び(b)にそれぞれ実施例及び比較例に対する絶縁抵抗を測定した結果を示した。
【0105】
図3の(a)を参照すると、実施例は時間が経つにつれ絶縁抵抗が多少減少する傾向を示すが、概ね良好な状態である。
【0106】
図3の(b)を参照すると、比較例は絶縁抵抗の減少幅が実施例より多少大きく、a、b、c、dで示されているように急に絶縁抵抗が減少することがある。これは絶縁破壊による製品不良に該当する。
【0107】
図4には実施例により製造された外部電極の断面写真である。「ア」部分は第2層、「イ」部分は第1層、「ウ」部分は本体である。
【0108】
図4を参照すると、外部電極にガラスが均一に分布されており、本体との境界部分にはセラミックとガラスの反応層が形成されていることが確認できる。
【0109】
即ち、外部電極にガラスが均一に分布されているため、ガラス溶出の問題が生じず、セラミックとガラスの反応層が形成されているため、内部電極と外部電極の接着力も優れると類推できる。
【0110】
本発明は上述した実施形態及び添付の図面により限定されず、添付の請求の範囲により確定される。従って、請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な形態の置換、変更及び変形が可能であるということは当技術分野で通常の知識を有する者には自明であり、これも請求の範囲に記載した技術的思想に属する。
【符号の説明】
【0111】
10 本体
11 セラミック層
20 外部電極
21 第1層
22 第2層
30 内部電極
ア 第2層
イ 外部電極
ウ 本体
図1
図2
図3
図4