特許第5684164号(P5684164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5684164
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20150219BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20150219BHJP
【FI】
   E02F9/00 Z
   F01N3/08 B
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-24231(P2012-24231)
(22)【出願日】2012年2月7日
(65)【公開番号】特開2013-160005(P2013-160005A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年5月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 祐貴
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−236208(JP,A)
【文献】 特開2011−011618(JP,A)
【文献】 特開2005−306108(JP,A)
【文献】 特開平08−268093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
F01N 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームフートピンを幅方向に通すための穴を備えるブーム支持ブラケットを旋回フレームの前部に備えると共に、液体還元剤が貯留される液体還元剤用タンクを備える建設機械において、
前記液体還元剤用タンクは、燃料タンクの前方に配置され、且つ、前記旋回フレームの右前部に配置された前面、右側面、前記ブームフートピンを幅方向に通すための穴より低い位置にある上面を含む少なくとも3面からなる工具箱の後方の近傍に配置されると共に、前記ブーム支持ブラケットに対して幅方向で外側に配置され、且つ、前記ブーム支持ブラケットの穴よりも後方に前記液体還元剤用タンクの前側の側面が位置するように配置され、
前記液体還元剤用タンクの前側の側面には、前記液体還元剤用タンク内に液体還元剤を補給するためのフィラーであって、前記液体還元剤用タンクの前側の側面から前方に延在するフィラーが前記工具箱の上面より上方に脱着可能に取り付けられることを特徴とする、建設機械。
【請求項2】
前記フィラーは、建設機械の側面視で、前記ブーム支持ブラケットの穴とオーバーラップする態様で、前後方向に延在する、請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記フィラーは、ネジ式で、前記液体還元剤用タンクの前側の側面の取り付け部に取り付けられる、請求項1又は2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記フィラーは、前記液体還元剤用タンク側とは逆の端部にキャップを含み、
前記キャップは、前記フィラーと同じ取り付け部に対して、ネジ式又は嵌め込み式で取り付け可能である、請求項3に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体還元剤が貯留される液体還元剤用タンクを備える建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディーゼルエンジンを搭載した油圧ショベル等の建設機械では、高次の排ガス規制に対応すべく、ディーゼルエンジンの排気系に排ガス処理装置が設置され、ディーゼルエンジンからの排ガスは、排気管の下流側に設けたNOx還元触媒を通って大気中に放出される。
【0003】
従来、此種排ガス処理装置としては、尿素水溶液(液体還元剤)を用いた尿素選択還元型のNOx処理装置が多く採択され、尿素水溶液は金属製の液体還元剤用タンクに貯留されている。また、液体還元剤用タンクは液体還元剤供給パイプにより排気管に接続され、液体還元剤供給ポンプにより液体還元剤用タンク内の尿素水溶液を排気管に供給できるように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−20936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、液体還元剤用タンクを上部旋回体に設置する場合、ブーム支持ブラケットの側方の空間が利用される場合がある。即ち、空間的制約や、補給のしやすさの観点から、建設機械右前部の工具箱付近に配置される場合がある。しかしながら、かかる位置に液体還元剤用タンクを設置する場合、整備等のためのブームフートピンの抜き差し作業の際、液体還元剤用タンク自体を取り外す必要が生じうる。特に、液体還元剤用タンクの前側の側面にフィラーを備える構成では、フィラーがブームフートピンの抜き差し作業の邪魔となるので、液体還元剤用タンク自体を取り外す必要が生じる。これにより、作業工数が増えるという問題が生じる。
【0006】
そこで、本発明は、液体還元剤用タンク自体を取り外す必要なく、ブームフートピンの抜き差し作業を可能とする建設機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一局面によれば、ブームフートピンを幅方向に通すための穴を備えるブーム支持ブラケットを旋回フレームの前部に備えると共に、液体還元剤が貯留される液体還元剤用タンクを備える建設機械において、
前記液体還元剤用タンクは、燃料タンクの前方に配置され、且つ、前記旋回フレームの右前部に配置された前面、右側面、前記ブームフートピンを幅方向に通すための穴より低い位置にある上面を含む少なくとも3面からなる工具箱の後方の近傍に配置されると共に、前記ブーム支持ブラケットに対して幅方向で外側に配置され、且つ、前記ブーム支持ブラケットの穴よりも後方に前記液体還元剤用タンクの前側の側面が位置するように配置され、
前記液体還元剤用タンクの前側の側面には、前記液体還元剤用タンク内に液体還元剤を補給するためのフィラーであって、前記液体還元剤用タンクの前側の側面から前方に延在するフィラーが前記工具箱の上面より上方に脱着可能に取り付けられることを特徴とする、建設機械が提供される。

【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液体還元剤用タンク自体を取り外す必要なく、ブームフートピンの抜き差し作業を可能とする建設機械が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】建設機械の一例として油圧ショベルを示す側面図である。
図2】上部旋回体の後部を上面視で概略的に示す平面図である。
図3】液体還元剤用タンク70の設置状態を概略的に示す斜視図である。
図4】フィラー80とブームフートピン90との位置関係の一例を概略的に示す図である。
図5】フィラー80の好ましい構造の一例を示す図である。
図6図5に示したフィラー80の機能の説明図である。
図7】その他の実施例によるフィラー801,802を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0011】
図1は、建設機械の一例として油圧ショベルを示す側面図である。
【0012】
図1に示すように、下部走行体1上には上部旋回体2が旋回可能に装架され、上部旋回体2の前方一側部にキャブ3が設けられている。また、上部旋回体2の前方中央部にブーム4が俯仰可能に枢着され、該ブーム4の先端部にはアーム5が上下回動可能に連結されているとともに、該アーム5の先端部にバケット6が上下回動可能に取り付けられている。尚、掘削アタッチメントは、ブレーカや破砕機等のような他のアタッチメントであってもよい。
【0013】
図2は、上部旋回体の後部を上面視で概略的に示す平面図である。
【0014】
図2に示すように、上部旋回体2の後部にはエンジンルーム7が形成され、該エンジンルーム7内にはディーゼルエンジン8が設置されている。また、ディーゼルエンジン8の前方側(図2における手前側)には冷却ファン12が設けられているとともに、該冷却ファン12の前方にはラジエータ等を含む熱交換機ユニット13が設置されている。
【0015】
更に、ディーゼルエンジン8には排気管9が接続され、該排気管9の下流側には、高次の排ガス規制に対応すべく、排ガス処理装置10が設置されている。排ガス処理装置10としては、尿素水溶液(液体還元剤)を用いた尿素選択還元型のNOx処理装置が採択されている。
【0016】
図3は、液体還元剤用タンク70の設置状態を概略的に示す斜視図である。
【0017】
図3に示すように、前記上部旋回体2の旋回フレーム14の前部には左右一対のブーム取り付け用のブーム支持ブラケット17L,17Rが立設されている。ブーム支持ブラケット17L,17Rは、ブームフートピン90(図3には図示せず、図4参照)を通すための穴172L,172Rをそれぞれ備える。ブームフートピン90は、穴172L,172Rに幅方向Wに通され、ブーム4を回転可能に保持する。
【0018】
ブーム支持ブラケット17Lの外側であって、後方には燃料タンク18及びサンプタンク19が直列に配置されている。また、燃料タンク18の前側には、液体還元剤用タンク70が配置される。従って、図示の例では、前から液体還元剤用タンク70、燃料タンク18及びサンプタンク19が順に隣接して配置されている。尚、燃料タンク18及びサンプタンク19の順序は任意である。燃料タンク18及びサンプタンク19は、幅方向に横並びに配置されてもよい。液体還元剤用タンク70内には尿素水溶液が貯留されている。更に、液体還元剤用タンク70は液体還元剤供給パイプ(図示せず)を介して、排ガス処理装置10に接続されている。液体還元剤用タンク70は、前側の側面70Aがブーム支持ブラケット17L,17Rの穴172L,172Rよりも後方に位置するように配置される。
【0019】
液体還元剤用タンク70の前側の側面70Aには、液体還元剤を補給するためのフィラー80が取り付けられる。尚、フィラー80は、好ましくは、図3に示すように、液体還元剤用タンク70の上面レベルよりも下方に取り付けられる。これは、凍結時の膨張を考慮して、補給される際に液体還元剤用タンク70内の液体還元剤の最高水位を制限するためである。
【0020】
フィラー80は、建設機械の前後方向に延在する。即ち、フィラー80は、補給のための作業性の観点から、液体還元剤用タンク70の前側の側面70Aから、所定の長さを有する。フィラー80は、液体還元剤用タンク70と同様に樹脂で形成されてもよいし、他の材料で形成されてもよい。
【0021】
フィラー80は、液体還元剤用タンク70の前側の側面70Aに脱着可能に取り付けられる。脱着可能な取り付け態様は、任意であるが、典型的には、ネジ式の結合である。その他、スライド式や嵌め込み式等の結合であってもよい。
【0022】
図4は、フィラー80とブームフートピン90との位置関係の一例を概略的に示す図であり、図4(A)は、側面図であり、図4(B)は、上面図である。図4においては、理解しやすいように、液体還元剤用タンク70、フィラー80及びブームフートピン90についてはハッチングが付されている。
【0023】
図4に示す例では、フィラー80は、図4(A)に示すように、建設機械の側面視で、ブーム支持ブラケット17L,17Rの穴172L,172Rとオーバーラップする態様で、前後方向に延在する。即ち、フィラー80は、側面視で、ブームフートピン90とオーバーラップする態様で、前後方向に延在する。従って、図4(B)に示すように、アタッチメントの交換や整備等のために、ブームフートピン90を抜き差しする際、フィラー80が障害となる。即ち、図4(B)には、ブームフートピン90を抜く方向がZにより指示されているが、この方向Zでブームフートピン90を抜いたり、又は、方向Zとは逆方向にブームフートピン90を差したりする際、フィラー80が、かかるブームフートピン90の抜き差し作業の邪魔となる。
【0024】
ところで、仮にフィラー80が液体還元剤用タンク70と一体に形成されている場合(例えばフィラー80が液体還元剤用タンク70と一体に樹脂成形されている場合)、ブームフートピン90の抜き差し作業時には、液体還元剤用タンク70全体を取り外す必要が生じ、作業工数が多くなるという問題が生じる。
【0025】
これに対して、本実施例によれば、フィラー80は、液体還元剤用タンク70の前側の側面70Aに脱着可能に取り付けられる。従って、ブームフートピン90の抜き差し作業時には、フィラー80を取り外すことにより、フィラー80がブームフートピン90の抜き差し作業の障害となるのを防止することができる。これにより、ブームフートピン90の抜き差し作業の作業性が向上する。また、液体還元剤用タンク70全体を取り外す必要がなく、作業工数を少なくすることができる。
【0026】
図5は、フィラー80の好ましい構造の一例を示す図である。
【0027】
フィラー80は、一ピースで構成されてもよいが、好ましくは、図5に示すように、本体部82と、キャップ84とを含む。
【0028】
本体部82は、中空の円筒体であり、液体還元剤用タンク70側の端部に雄ネジ部82Aが形成される。また、本体部82は、液体還元剤用タンク70側とは逆側の端部(即ちキャップ84側の端部)に雌ネジ部82Bが形成される。雌ネジ部82Bは、中空の内周面に形成される。雄ネジ部82Aは、上述の如く、液体還元剤用タンク70の前側の側面70Aに形成される取り付け部(雌ネジ部)72(図6参照)に螺着される。
【0029】
キャップ84は、中実の円筒体であり、本体部82側の端部に雄ネジ部84Aが形成される。キャップ84の雄ネジ部84Aは、本体部82の雌ネジ部82Bに螺着される。また、キャップ84の雄ネジ部84Aは、液体還元剤用タンク70の前側の側面70Aに形成される取り付け部72(図6参照)にも螺着可能である。即ち、キャップ84の雄ネジ部84Aは、本体部82の雄ネジ部82Aと同様の構成(外径やピッチ等)を有する。尚、キャップ84は、端部に拡径部84Bを有する。尚、拡径部84Bの長さ(建設機械前後方向の長さ)は、本体部82の長さよりも有意に短い。
【0030】
尚、当然ながら、本体部82及びキャップ84における雌ネジ部と雄ネジ部の関係は逆であってもよい。また、螺着方式に限らず、嵌め込み式等の結合方法を用いてもよい。
【0031】
図6は、図5に示したフィラー80の機能の説明図であり、側面視(図4(A)と同一の視)で液体還元剤用タンク70及びフィラー80を模式的に示す図である。
【0032】
図6(A)は、フィラー80が液体還元剤用タンク70に取り付けられた状態を示す。図6(A)に示す状態からフィラー80を取り外すと、図6(B)に示す状態となる。図6(B)に示す状態では、液体還元剤用タンク70の取り付け部72は、液体還元剤用タンク70の内部が外部に連通した状態(開口状態)となる。従って、ブームフートピン90の抜き差し作業時に、塵や埃等の異物が液体還元剤用タンク70内に入る虞がある。このため、ブームフートピン90の抜き差し作業時には、図6(C)に示すように、液体還元剤用タンク70の取り付け部72にキャップ84が取り付けられる。これにより、ブームフートピン90の抜き差し作業時に、異物が液体還元剤用タンク70内に入るのを適切に防止することができる。尚、キャップ84の長さ(特に拡径部84Bの長さ)は、本体部82よりも有意に短いので、キャップ84がブームフートピン90の抜き差し作業の障害となることはない。
【0033】
図7は、その他の実施例によるフィラー801,802を示す図であり、側面視(図4(A)と同一の視)で液体還元剤用タンク70及びフィラー801,802を模式的に示す図である。
【0034】
図7(A)に示す例では、フィラー801は、2段式のフィラーである。即ち、フィラー801は、2部材を長手方向で連結して長尺に構成される。フィラー801は、図6に示したようなキャップ84を取り外し可能に含む構造であってもよい。図7(B)に示す例では、フィラー802は、上方に曲げられたフィラーである。フィラー802は、図6に示したようなキャップ84を取り外し可能に含む構造であってもよい。このようにフィラーの構成(形状や長さ等)は、補給の作業性等を考慮して任意であってよい。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0036】
例えば、上述した実施例では、フィラー80は、図4(A)に示すように、建設機械の側面視で、ブーム支持ブラケット17L,17Rの穴172L,172Rとオーバーラップする態様で、前後方向に延在しているが、かかる構成は必ずしも必須ではない。これは、フィラー80がブーム支持ブラケット17L,17Rの穴172L,172Rとオーバーラップしなくても、ブームフートピン90の抜き差し作業には比較的大きいスペースが必要であり、フィラー80が邪魔になる場合があるためである。従って、フィラー80が液体還元剤用タンク70の前側の側面70Aに取り付けられる構成であれば、フィラー80を取り外し可能であることによる上述の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 下部走行体
2 上部旋回体
3 キャブ
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 エンジンルーム
8 ディーゼルエンジン
9 排気管
10 排ガス処理装置
12 冷却ファン
13 熱交換機ユニット
14 旋回フレーム
17L,17R ブーム支持ブラケット
172L,172R 穴
18 燃料タンク
19 サンプタンク
70 液体還元剤用タンク
70A 側面
72 取り付け部
80,801,802 フィラー
82 本体部
82A 雄ネジ部
82B 雌ネジ部
84 キャップ
84B 雄ネジ部
90 ブームフートピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7