(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0015】
図1から
図4には、本発明の一実施形態に係るシリンダ弁1が示されている。このシリンダ弁1は、管路を流れる液体の流量調整操作が可能である。また、このシリンダ弁1は、操作によって閉弁し得ないが、下流側の圧力が所定値以上になることによって自動的に閉弁する。ここでは、
図1から
図4のそれぞれにおいて、図中の左側が液体流れの上流側(一次側)と称され、右側を下流側(二次側)と称される。また、ここでは、シリンダ弁1の中心軸方向を「軸方向」と呼ぶ。上記液体は、水、湯、水や湯に各種液剤が予め混合されている混合水等であってもよい。
【0016】
主に
図2及び
図3を参照すれば明らかなように、このシリンダ弁1は、互いに連結されて一個のケース2を構成する入口側ケース3及び出口側ケース4を備えている。このケース2の内部には、流量調整用の弁体(以下、流調弁体という)5、流調弁体5の回動を案内する流調弁ガイド6、減圧弁部材7及び逆止弁体8が装着されている。上記流調弁体5及び流調弁ガイド6から流量調整弁(以下、流調弁という)9が構成されている。流調弁体5の操作用ダイアル98を回転操作することにより、流量調整がなされる。このシリンダ弁1は配管100に装着される。この配管100は、主配管101と、この主配管101に直行して接続された給水管102と、主配管101に直行して接続された大気連通管103とを含んでいる。大気連通管103は実質的に大気に開放されている。上記シリンダ弁1は、主配管101に対して、その給水管102接続部側の端部開口104から装入されている。主配管101とシリンダ弁1とは、主配管101の軸回りの回転を防止するために、ケース2(入口側ケース3)に形成された突片44を利用した回転防止機構を備えても良い。ケース2の外周面には、上記配管100の内周面との間を液密にシールするために、シール部材としてOリング93、94が装着されている。このOリング93、94の配置については後述される。
【0017】
主配管101の大気連通管103より下流側において、大径部から小径部へ縮径する段差部101Sが設けられている。この段差部101Sは、出口側ケース4の下流側端と当接することにより、出口側ケース4の軸方向の位置決め作用、ひいてはシリンダ弁1の軸方向の位置決め作用を奏しうる。この位置決め作用のための構成は、上記段差部101Sに限定されない。例えば、主配管101の内側の少なくとも一部に、係止用の突起が形成されてもよい。要するに、出口側ケース4の下流側端と当接することによって位置決めしうる構成であればよい。
【0018】
図5も併せて参照すれば明らかなように、上記流調弁ガイド6は、上流側に位置する略円筒状の第一大径部12と、下流側に位置する略円筒状の第一小径部(ニップル部)13とを、軸方向に並ぶように有している。第一大径部12と第一小径部13とは一体に形成されている。第一大径部12の上流側端、及び、第一小径部13の下流側端は、ともに開口されている。第一大径部12と第一小径部13との間には、下流側に向けて内径及び外径が漸減するレデューサ部16が形成されている。第一小径部13は第一小径内部空間14を有している。
【0019】
第一大径部12は、その外側に第一外側面17を有し、内側に第一大径内部空間18を区画する円筒状の第一内周面19を有している。上記第一小径内部空間14と第一大径内部空間18とは、連通して第一内部空間を構成している。第一大径部12には、第一大径内部空間18と外部とを連通する、すなわち、第一外側面17と第一内周面19とを連通する流路としての第一孔20が複数個形成されている。第一孔20の、第一外側面17側の開口が第一外開口21を構成し、第一内周面19側の開口が第一内開口22を構成している。この第一外開口21の軸方向位置は、後述する入口側ケース3の第三内開口42の軸方向位置と略一致している。第一内開口22の軸方向位置は、後述する流調弁体5の第二外開口31の軸方向位置と略一致している。
【0020】
第一大径部12の第一外側面17に、周方向に延びる第一溝23が形成されている。この第一溝23は、軸方向において、上記第一外開口21及び後述する入口側ケース3の第三内開口42を含む範囲に形成されている。換言すれば、第一溝23の底部に第一外開口21が形成されている。この第一溝23は流路を構成している。上記給水管102から流入した液体は、この第一溝23を通ることにより、容易に複数個の第一孔20それぞれに至ることができる。
【0021】
図6も併せて参照すれば明らかなように、流調弁体5は、回転操作用の摘み部24と、略円筒状の第二小径部29と、略円筒状の第二大径部25とを、軸方向に並ぶように有している。摘み部24と第二小径部29と第二大径部25とは一体に形成されている。第二大径部25は、外側に円筒状の第二外周面26を有し、内側に第二内部空間27を区画する第二内側面28を有している。第二小径部29の上流側端は摘み部24の基端部によって閉止されている。第二大径部25の下流側端は開口されている。第二大径部25には、第二内部空間27と外部とを連通する、すなわち、第二外周面26と第二内側面28とを連通する流路としての第二孔30が複数個形成されている。第二孔30の、第二外周面26側の開口が第二外開口31を構成している。この第二外開口31の軸方向位置は、前述の第一孔20の第一内開口22の軸方向位置と略一致している。
【0022】
流調弁体5は、その第二大径部25が、流調弁ガイド6の第一大径内部空間18に、その上流側の開口から装入されている。第二大径部25は、第一大径部12に対して、同軸状且つ軸回りに回転可能にされている。本実施形態では、流調弁ガイド6が入口側ケース3に固定された状態にあり、流調弁体5が回転操作されるように構成されているが、かかる構成には限定されない。流調弁体5が固定され、流調弁ガイド6が流調弁体5に対して回転させられるように構成されてもよい。流調弁体5は、後述するCリング97により、入口側ケース3に対する軸方向の位置決めがなされている。
【0023】
図7も併せて参照されて、以下、この流調弁9の構成及びその流量調整機能について説明される。
図7には、液体の流れが矢印Fによって示されている。流調弁体5の摘み部24は、第一大径部12から外部に突出している。摘み部24は、流調弁体5をその中心軸回りに回転操作するための部分である。前述した操作用ダイアル98は、この摘み部24に取り付けられている。流調弁体5が、流調弁ガイド6に対して、軸回りに相対回転することにより、上記第一孔20と第2孔30との連通度合いが変化させられる。これにより、両孔20、30を流れる液体の流量が調整されうる。すなわち、流調弁体5の第二外開口31と、流調弁ガイド6の第一内開口22との重なり合う面積が変化させられることにより、流路面積が調整されうる。流調弁ガイド6の第一孔20、及び、入口側ケース3の後述する第三孔40の位置は変位しない。
図7(a)は、第一内開口22と第二外開口31とが完全に重なり合った状態(全開状態)を示す。
図7(b)は、この両開口22、31の一部同士が重なり合った状態(中間開度状態)を示す。
図7(c)は、両開口22、31が全く重なっていない状態(最小開度状態)を示す。このように、流調弁ガイド6に流調弁体5が軸回りに相対回転可能に装入されて一体化したものが流調弁9を構成する。第一孔20と第2孔30とが、流調弁9の流量調整部を構成する。
【0024】
上記第一孔20及び第二孔30それぞれの個数は、一個でもよいが、周方向に複数個形成されるのが好ましい。液体の圧力による流調弁体5及び流調弁ガイド6の相互間の半径方向押圧力のバランスが得られやすいからである。かかる観点からは、孔20、30は、周方向に等間隔をおいて配置されるのが好ましい。なお、個数が多すぎると、製造コストの上昇を招く可能性があり、また、流調弁体5の回転操作による調整角度範囲が狭くなるので、個数は2個とするのが良い。
図7に示されるように、本実施形態のように2個の場合は、流量調整のための流調弁体5の最大の回転操作角度αは90°とされている。
図7では、この最大の回転操作角度αは、回転操作開始位置を流調弁9の最大開度位置SPとして示されている。この最大回転操作角度αは、後述する流調弁体5と入口側ケース3との、相互の周方向の係止機構(操作角度限定機構)により、物理的に規定されている。
【0025】
上記第一孔20及び第2孔30の平面視形状、少なくとも第一内開口22及び第二外開口31の平面視形状は、限定はなく、長方形を含む多角形、長円形等であってもよい。本実施形態では、
図5(b)及び
図6(b)に示されるように、概ね長方形が採用されている。また、流調弁9の流量調整部の最大開口面積、すなわち、第一内開口22と第二外開口31とが完全に重なり合ったとき(
図7(a))の流路面積は、このシリンダ弁1内の流路のうちの最小の面積(絞り部)となるようにされている。すなわち、後述する入口側ケース3の第三孔40の面積、流調弁ガイド6の第一小径部13の第一小径内部空間14の流路面積、後述する減圧弁部材7の窓部69の流路面積より小さくされている。これは、流調弁9の流量調整部の最大開口面積が、シリンダ弁1内の流路のうちの最小ではない場合、流量調整部の大流量側の調整ができなくなるからである。
【0026】
図2及び
図7に示されるように、流調弁ガイド6の第一内周面19と、流調弁体5の第二外周面26との間には、液体が流通しうる隙間11が形成されている。これは、流調弁9が、いかなる流量調整位置にあっても、流路が確保されて全閉とはならず、流量をゼロとすることができないようにするためである。すなわち、第一内開口22と第二外開口31とが重なり合わないときでも、この隙間11により、少なくとも第一内開口22と第二外開口31とを連通する周方向の流路が形成される。上記主配管101に、このシリンダ弁1と、開閉弁等の止水具とが共に接続されている水栓器具を考える。この水栓器具では、シリンダ弁1が止水機能を有していないため、止水操作が行われうるのは下流の止水具である。従って、この水栓器具は、2箇所の操作部において止水が可能な前述の従来の水栓器具のような使い勝手が悪いものとはならない。なお、止水具をシリンダ弁1の上流側に設置し、この止水具によって止水操作を行っても良い。しかし、シリンダ弁1の下流側に止水具を設置し、この止水具によって止水操作を行うのが好ましい。
【0027】
上記隙間11は、0.05mm以上0.30mm以下であるのが好ましい。隙間11が0.05mm未満であれば、流調弁9が上記第一内開口22と第二外開口31とが重なり合わない位置に調節された場合、この隙間11における大きな圧力損失により、隙間11が流路とはなり得ず、止水してしまう可能性がある。従って、隙間11は、0.08mm以上であるのがさらに好ましく、0.10mm以上であるのが特に好ましい。一方、隙間11が0.30mmより大きければ、流路面積が大きくなり、最小流量値を所望の程度まで小さくすることが困難になる。すなわち、流調弁9の性能である流量調整範囲が狭くなってしまう。従って、隙間11は、0.20mm以下であるのがさらに好ましく、0.15mm以下であるのが特に好ましい。本実施形態では、隙間11が0.12mmとされている。
【0028】
上記隙間11を確保するために、第一内周面19の内径と、第二外周面26の外径との差が、0.10mm以上0.60mm以下であるのが好ましい。この直径差が0.10mm未満であれば、前述した0.05mmという最小限の隙間11が確保できない可能性がある。従って、直径差は、0.16mm以上であるのがさらに好ましく、0.20mm以上であるのが特に好ましい。一方、直径差が0.60mmより大きければ、上記隙間11の流路面積が大きくなり、最小流量値を所望の程度まで小さくすることが困難になる。すなわち、流調弁9の性能である流量調整範囲が狭くなってしまう。従って、直径差は、0.40mm以下であるのがさらに好ましく、0.30mm以下であるのが特に好ましい。本実施形態では、直径差が0.24mmとされている。後述するように、第一内周面19と第二外周面26との間にはOリング91が装着されている。このOリング91の存在により、流調弁ガイド6と流調弁体5との相対的偏心が抑制され、隙間11の変動が抑制される。すなわち、第一内周面19と第二外周面26との間に、全周にわたって隙間11が確保される。
【0029】
本実施形態では、第一内周面19の内径と第二外周面26の外径との差により、上記隙間11が構成されている。しかし、かかる構成には限定されない。例えば、第一内周面19及び第二外周面26の少なくとも一方に、周方向に延びる図示しない溝が形成されてもよい。この溝の軸方向位置は、上記第一内開口22及び第二外開口31と略一致する。この溝が、上記隙間に代わって微少流路を構成する。この溝によれば、流路の深さが変動するおそれがない。このように、流調弁9は全閉されずに最小流路を確保しうるので、前述の従来技術におけるような止水状態による流調弁体5及び流調弁ガイド6に対する過大な負荷が回避される。
【0030】
上記溝の深さは、前述の隙間11と同じく、0.05mm以上0.30mm以下であるのが好ましい。溝深さが0.05mm未満であれば、流調弁9が上記第一内開口22と第二外開口31とが重なり合わない位置に調節された場合、この隙間11における大きな圧力損失により、隙間11が流路とはなり得ず、止水してしまう可能性がある。従って、溝深さは、0.08mm以上であるのがさらに好ましく、0.10mm以上であるのが特に好ましい。一方、溝深さが0.30mmより大きければ、流路面積が大きくなり、最小流量値を所望の程度まで小さくすることが困難になる。すなわち、流調弁9の性能である流量調整範囲が狭くなってしまう。従って、溝深さは、0.20mm以下であるのがさらに好ましく、0.15mm以下であるのが特に好ましい。
【0031】
前述したように、この流調弁9は、全閉、すなわち流量をゼロとすることができないように構成されている。この流調弁9は、流調弁ガイド6の第一内開口22と、流調弁体5の第二外開口31とは、流量を最小に設定したときでも、両開口がわずかに重なり合うように構成されてもよい。しかし、かかる構成の場合、最小流量設定時における流量が小さくならず、流量調整性が低下する。そこで、この流調弁9は、最小流量設定時に、第一内開口22と第二外開口31とが重なり合わないように構成されている。なお、上記両開口22、31の重なり合わない幅(角度)が小さいと、繰り返し使用による流調弁体5及び流調弁ガイド6の摩耗等が生じるおそれがある。この場合、回転方向の相互位置関係が変化したとき、上記開口22、31同士が部分的に重なってしまう可能性がある。かかる事態を回避するために、上記両開口22、31が重なり合わない角度β(
図7(c))は、1°以上が好ましく、5°以上がさらに好ましく、7°以上が特に好ましい。一方、この重なり合わない角度βが大きすぎると、前述の隙間11による流路が長くなってしまう。その結果、大きな圧損によってこの隙間11が流路となり得ず、止水してしまう可能性がある。従って、両開口22、31が重なり合わない角度βは、20°以下が好ましく、15°以下がさらに好ましく、10°以下が特に好ましい。
図7(c)に示されるように、本実施形態での重なり合わない角度βは、10°とされている。
【0032】
上記第二大径部25の第二外周面26に形成されたOリング溝91aには、流調弁ガイド6の第一内周面19との間(上記隙間11)を液密にシールするために、シール部材としてOリング91が装着されている。Oリング91は第二外周面26の周方向に延びている。すなわち、軸方向には延びていない。流調弁体5と流調弁ガイド6との相対回転によっても、Oリング91は、第一内開口22と干渉することがない。さらに、上記隙間11における第一内開口22及び第二外開口31の軸方向範囲内には、いかなるシール部材も存在していない。従って、従来技術におけるような、シール部材等の損傷、回転操作荷重の増大等の心配はない。このOリング91の軸方向位置は、上記第二外開口31及び第一内開口22より摘み部24寄りの位置である。このOリング91は、流調弁ガイド6の第一大径内部空間18の液体が、第一内周面19と第二外周面26との間を、摘み部24側に向けて通過して、外部に漏出することを防止するためのものである。
【0033】
流調弁体5における第二孔30より反摘み部24側(下流側)の部分には、シール部材は設けられていない。第二大径部25の外部の液体は、第一内周面19と第二外周面26との間を第二大径部25の反摘み部24側に向けて通過して、流調弁ガイド6の第一小径内部空間14に流入しうる。これは、本シリンダ弁1が、流調弁体5の流量調整時に、第一内開口22と第二外開口31とが重なり合わないときであっても、後述するように、第一内開口22と第二外開口31との間はわずかな流路が形成されるように構成されているためである。従って、第二孔30より下流側には、第一内周面19と第二外周面26との間のシールは不要である。
【0034】
図8も併せて参照すれば明らかなように、ケース2の約半分を構成する入口側ケース3は、それぞれが略円筒状を呈した、上流側の第三小径部33と下流側の第三大径部34とを有している。第三小径部33の上流側端、及び、第三大径部34の下流側端は、ともに開口されている。第三大径部34の上流側端には、半径方向外方に向けて、前述した回転防止用の突片44が形成されている。第三小径部33は、内側に円筒状の第三小径内周面35を有している。第三大径部34は、外側に円筒状の第三大径外周面36を有し、内側に第三内部空間37を区画する第三大径内周面38を有している。入口側ケース3の下流側端の開口から、流調弁9が上流側に向けて装入されている。第三小径部33から、流調弁体5の摘み部24側部分が外部に突出させられている。第二小径部29の、第三小径部33より外側の部分に、周方向のCリング用溝32が形成されている。この溝32に、抜け止め防止用のCリング97が嵌着されている。このCリング97の外径は、第三小径部33の内径より大きい。従って、Cリング97が第三小径部33の上流側端に当接することにより、流調弁体5が入口側ケース3の内部に向けて移動してしまうことが防止される。第三小径部33の内径は、流調弁体5の第二小径部29の外周よりわずかに大きく、第二大径部25の外径よりは小さい。第三小径部33の内周側には、第二小径部29が相対回転自在に貫入している。第三大径部34には、流調弁ガイド6の第一大径部12が装入されている。
【0035】
図2、
図6及び
図8に示されるように、上記第二小径部29及び第三小径部33には、流量調整のための流調弁体5の最大回転操作角度を規定するための機構が設けられている。この操作角度限定機構は、互いに係止しうる第二小径部29の係止突起51と第三小径部33のストッパ部52とから構成されている。係止突起51は、第二小径部29の外周面上に、半径方向外方に向けて突設されている(
図6)。ストッパ部52は、第三小径内周面35に、上記係止突起51用の摺動凹部53の両端それぞれに形成されている(
図8(d))。本実施形態では、前述のとおり、最大回転操作角度は90°である。この摺動凹部53は、第三小径内周面35が、周方向に90°に上記係止突起51の幅に相当する角度を加えた角度の部分円環状部分が切除されて形成されている。この切除された部分である摺動凹部53に、係止突起51が進入した状態にある。この状態で、流調弁体5が回転させられると、係止突起51が摺動凹部53を摺動する。係止突起51が摺動凹部53の始端又は終端であるストッパ部52に当接し、回転が静止させられる。
【0036】
この入口側ケース3と流調弁ガイド6とは、互いに周方向に係止されいるため、相対回転することができない。具体的な構成は以下のとおりである。
図2、
図3及び
図5に示されるように、流調弁ガイド6の第一外側面17の下流側端には、半径方向外方に突出する円環状の鍔部56が形成されている(
図2、
図3、
図5)。この鍔部56には、周方向に間隔をおいて複数個の係合凹所57が形成されている。一方、入口側ケース3の第三大径内周面38の下流側端には、周方向に間隔をおいて、半径方向内方へ突出する複数個の係合凸部58が形成されている(
図2、
図8(d))。第三大径部34に流調弁ガイド6の第一大径部12が装入されるとき、この各係合凸部58が、対応する係合凹所57にそれぞれ係合する。その結果、入口側ケース3と流調弁ガイド6とが、相対回転不能となる。
【0037】
流調弁9がケース2内に装入された状態で、流調弁体5の第二大径部25の上流側端と、入口側ケース3の第三小径部33の下流側端との当接により、流調弁体5の軸方向の位置決めがなされうる。なお、上記第二大径部25の下流側端と、流調弁ガイド6のレデューサ部16の上流側端との当接によっても、流調弁体5の軸方向の位置決めは可能である。しかし、2箇所の当接によって位置決めしようとすると、操作荷重が増大するので操作性が悪くなる。従って、流調弁体5の第二大径部25の上流側端と、入口側ケース3の第三小径部33の下流側端との当接のみによって位置決めを行うのが好ましい。このために、第二大径部25の下流側端と、流調弁ガイド6のレデューサ部16の上流側端とは、離間させておくのがよい。また、流調弁9がケース2内に装入された状態で、流調弁ガイド6の第一大径部12の上流側端と、入口側ケース3の第三小径部33の下流側端との当接により、及び/又は、流調弁ガイド6の鍔部56と、入口側ケース3の第三大径部34の下流側端との当接により、流調弁ガイド6のケース2に対する、軸方向上流側の位置決めがなされうる。さらに、上記鍔部56と、後述する出口側ケース4の第四本体部45の上流側端との当接により、流調弁ガイド6のケース2に対する、軸方向下流側の位置決めがなされうる。
【0038】
第三大径部34の下流側端には、係止フレーム39が形成されている。係止フレーム39は、入口側ケース3の中心軸を挟んだ対向位置2箇所に形成されている。この係止フレーム39は、出口側ケース4との連結のためのものである。この係止フレーム39は、後述する出口側ケース4の係止部46と係脱可能に構成されている。係止フレーム39は、
図8(b)から明らかなように、入口側ケース3を半径方向内方に見たとき、出口側ケース4に向けて突出したコ字状の門形を呈している。係止フレーム39の中央部には係止用の中央開口39aが形成されている。この中央開口39aに、後述する係止部46の係止爪46aが係止しうる。このような係止機構はスナップフィットと呼ばれる。
【0039】
第三大径部34には、第三内部空間37と外部とを連通する、すなわち、第三大径外周面36と第三大径内周面38とを連通する、流路としての第三孔40が形成されている。なお、本実施形態では、第三孔40と前述の突片44との周方向の位置は異なっている。しかし、
図2では、理解容易のために、これら両者40、44の周方向の位置を一致させて示している。第三孔40の、第三大径外周面36側の開口が第三外開口41を構成し、第三大径内周面38側の開口は第三内開口42を構成している。この第三内開口42の軸方向位置は、前述の第一孔20の第一外開口21の軸方向位置と略一致している。また、第三内開口42の周方向位置も、第一孔20の第一外開口21の周方向位置と略一致している。第三孔40の個数は、一個でもよいが、周方向に複数個形成されるのが好ましい。入口側ケース3の周方向における、流体の圧力による半径方向の力のバランスが得られやすいからである。かかる観点からは、第三孔40は周方向に等間隔をおいて配置されるのが好ましい。
【0040】
第三大径部34の第三大径外周面36に、周方向に延びる第三溝43が形成されている。この第三溝43は、軸方向において、上記第三外開口41及び給水配管102の内部流路を含む範囲に形成されている。換言すれば、第三溝43の底部に第三外開口41が形成されている。また、この第三溝43は、周方向においても、給水配管102の内部流路の位置と略一致していても良い。この第三溝43は流路を構成している。上記給水管102から流入した液体は、この第三溝43を通ることにより、容易に複数個の第三孔40それぞれに至ることができる。
【0041】
上記流調弁ガイド6の第一外側面17に形成されたOリング溝92aには、入口側ケース3の第三大径内周面38との間を液密にシールするために、シール部材としてのOリング92が装着されている。このOリング92の軸方向位置は、上記第一溝23及び入口側ケース3の第三内開口42の軸方向両側の各位置である。このOリング92は、第一大径部12の外部の液体が、第三大径内周面38と第一外側面17との間を、流調弁ガイド6の小径部側に向けて通過し、及び、第三小径内周面35と流調弁体5の第二小径部29の外周面との間を、流調弁体5の摘み部24側に向けて通過し、外部に漏出することを防止するためのものである。
【0042】
入口側ケース3の第三大径外周面36に形成されたOリング溝93aには、前述したOリング93が装着されている。このOリング93の軸方向位置は、上記第三溝23及び給水配管102の内部流路の軸方向両側の各位置である。このOリング93は、給水配管102から供給される液体が、第三大径外周面36と主配管101の内周面との間を通過して外部に漏出することを防止するためのものである。
【0043】
図1から
図4に示されるように、上記出口側ケース4は、略円筒状を呈した第四本体部45と、この第四本体部45の上流側端に形成された係止部46とを有している。係止部46は、出口側ケース4の中心軸を挟んた対向位置2箇所に形成されている。第四本体部45は、その外側に第四外周面47を有し、内側に第四内部空間48を区画する円筒状の第四内周面49を有している。出口側ケース4(第四本体部45)の上流側端及び下流側端はともに開口されている。
【0044】
係止部46は、入口側ケース3との連結のためのものである。係止部46は、前述した入口側ケース3の係止フレーム39と係脱可能に構成されている。係止部46は、
図1から
図3に示されるように、出口側ケース4の第四外周面47に形成された、半径方向外方に突出する係止爪46aと、係止爪46aの周囲の係止溝46bとを有している。係止フレーム39と係止部46とが対向した状態で、入口側ケース3と出口側ケース4とが軸方向に当接されると、上記係止爪46aが係止フレーム39の中央開口39aに入り込み、係止フレーム39は係止爪46aを乗り越えて係止溝46bに嵌り込んで係止する。これにより、入口側ケース3と出口側ケース4とが連結される。この連結により、入口側ケース3と出口側ケース4との離間及び相対回転は不能となる。
【0045】
図1、
図3及び
図4に示されるように、入口側ケース3の下流側端には、周方向に間隔をおいて、下流側に突出する係合突片54が形成されている。一方出口側ケース4の上流側端には、周方向に間隔をおいて、下流側に向けて切り欠かれた係合凹所55が形成されている。係合突片54と係合凹所55とが対向した状態で、入口側ケース3と出口側ケース4とが軸方向に当接されると、係合突片54と係合凹所55とが係合する。その結果、入口側ケース3と出口側ケース4との相対回転は不能になる。
【0046】
第四本体部45には、第四内部空間48と外部の大気とを連通する、大気開放用の第四孔50が形成されている。すなわち、この第四孔50は、第四外周面47と第四内周面49とを連通している。この第四孔50の軸方向の位置は、前述の大気連通間103の内部流路に概ね対応する位置である。この第四孔50は、第四内部空間48を大気開放スペース60とするためのものである。
【0047】
上記第四本体部45の第四外周面47のOリング溝94aには、前述の主配管101の内周面との間のシールのために、前述したOリング94が装着されている。このOリング94の軸方向位置は、上記第四孔50より下流側の位置である。このOリング94は、主配管101内の下流側の液体が、第四外周面47と主配管101の内周面との間を通過して、大気開放スペース60である第四内部空間48内に漏出することを防止するためのものである。
図2及び
図3に示されるように、出口側ケース4の第四内部空間48には、前述の流調弁ガイド6の第一小径部13及びレデューサ部16が突出しており、さらに、減圧弁部材7及び逆止弁体8が収容されている。減圧弁部材7は、第四内部空間48内を軸方向に移動可能にされている。
【0048】
図9も併せて参照すれば明らかなように、減圧弁部材7は、有底の略二重円筒状を呈している。すなわち、減圧弁部材7は、外筒部61と、外筒部61と同軸状に形成された内筒部62とを有している。外筒部61と内筒部62とは、その下流側端部において底部63によって接続されている。この外筒部61と内筒部62との間の第五外側空間65は、後述するコイルバネ64の収容スペースを構成している。
【0049】
図2に示されるように、内筒部62は、第五内部空間66を区画する第五内周面67を有している。上記第五内部空間66には、その上流側端から流調弁ガイド6の第一小径部13が進入している。
図9も併せて参照すれば明らかなように、第五内部空間66の下流側端である底部には、中央部にボス部68が形成されている。このボス部68の周囲には、第五内部空間66とその下流側外部とを連通する複数個の窓部69が形成されている。前述の給水管102からシリンダ弁1に流入した液体は、第三孔40、第一孔20、第二孔30、第二内部空間27、第一小径内部空間14、第五内部空間66及びこの窓部69を通過して主配管101の下流側に流出する。このうち、第二内部空間27、第一小径内部空間14、及び、第五内部空間66が、シリンダ弁1の軸方向に延びる中央流路を構成する。上記ボス部68の貫通孔68aには、上記逆止弁体8が装着されている。この逆止弁体8のシート面8aは上流側を向き、上記第一小径部13の下流側端である他方のシート面13aに対向している。減圧弁部材7が上流側に移動して、一方のシート面8aが他方のシート面13aに着座することにより、このシリンダ弁1は自動的に閉弁する。逆止弁体8は、流調弁ガイド6のシート面13aに効果的に着座するために、ボス部68に対して、360°全方向にわずかに揺動可能(ピボッタブル)に取り付けられてもよい。
【0050】
第五外側空間65には、コイルバネ64の一部分が収容される。このコイルバネ64は、流調弁ガイド6の第一大径部12の下流側端の外面12aと、上記減圧弁部材7の底部63とをバネ座として、圧縮された状態で収容される。減圧弁部材7は、このコイルバネ64によって下流方向に付勢されている。すなわち、減圧弁部材7は、開弁方向に付勢されている。上記出口側ケース4の下流側端には、半径方向に内方に突出する円環状のフランジ部71が形成されている。減圧弁部材7は、その下流側端がこのフランジ部71に当接するため、出口側ケース4の第四内部空間48から外部に抜け落ちる心配がない。上記コイルバネ64が収容されているスペースは、前述の大気開放用の第四孔50及び大気連通管103を通して、大気と連通している。この大気開放スペース60は、流調弁ガイド6の第一小径部13及びレデューサ部16の外周面、減圧弁部材7の第五外側空間65、及び、主配管101の内周面によって区画されている。
【0051】
上記外筒部61の第五外周面70のパッキン用溝95aには、出口側ケース4の第四内周面49との間を液密にシールするために、シール部材としてのVパッキン95が装着されている。このVパッキン95は、減圧弁部材7の下流側の液体が、第五外周面70と第四内周面49との間を通過して、第四内部空間48等の大気開放スペース60に漏出することを防止するためのものである。また、上記流調弁ガイド6の第一小径部13の第一小径外周面15のパッキン用溝96aには、減圧弁部材7の第五内周面67との間を液密にシールするために、シール部材としてのVパッキン96が装着されている。このVパッキン96は、上記第一小径部13の下流側の液体が、第一小径外周面15と第五内周面67との間を通過して、第四内部空間48等の大気開放スペース60に漏出することを防止するためのものである。なお、これらのシール部材としては、摺動時の高い追随性によってシール性が向上したリップ構造を備えるリップパッキンが好ましい。リップパッキンのうちでは、特に、断面がU字状を呈するUパッキン、断面がY字状を呈するYパッキン、及び/又は、断面がV字状を呈する上記Vパッキンが好ましい。
【0052】
以下に、本シリンダ弁1の各部品の材料について説明される。入口側ケース3及び出口側ケース4の材料として、金属及び合成樹脂が採用されうる。コスト低減の観点から合成樹脂が好ましい。合成樹脂の中では、生産性の観点から熱可塑性樹脂がさらに好ましい。入口側ケース3及び出口側ケース4は、互いに係止フレーム39と係止部46とによって連結されるため、剛性確保の観点から、熱可塑性樹脂の中でもPPS(ポリフェニレンサルファイド)、POM(ポリアセタール)、硝子繊維入りのABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂等を用いるのが良い。本実施形態では、いずれのケース3、4にもPOMが採用されている。
【0053】
流調弁体5の材料としても、金属及び合成樹脂が採用されうる。コスト低減の観点から合成樹脂が好ましい。合成樹脂の中では、生産性の観点から熱可塑性樹脂がさらに好ましい。流調弁体5は、操作用ダイアル98が固定される部分であるため、剛性の確保が必要である。かかる観点から、熱可塑性樹脂の中でもPPS、POM、硝子繊維入りABS樹脂等を用いるのが良い。本実施形態では硝子繊維入りのABS樹脂が採用されている。
【0054】
流調弁ガイド6の材料としても、金属及び合成樹脂が採用されうる。コスト低減の観点から合成樹脂が好ましい。合成樹脂の中では、生産性の観点から熱可塑性樹脂がさらに好ましい。熱可塑性樹脂の中でも、剛性確保、コスト低減等の観点から、ABS樹脂を用いるのが良い。本実施形態では、ABS樹脂が採用されている。
【0055】
減圧弁部材7及び逆止弁体8の材料としても、金属及び合成樹脂が採用されうる。減圧弁部材7の作動が、自重の影響を受けにくいように、金属より軽く成形できる合成樹脂が好ましい。合成樹脂の中では、生産性の観点から熱可塑性樹脂がさらに好ましい。熱可塑性樹脂の中でも、剛性確保、コスト低減等の観点から、ABS樹脂を用いるのが良い。本実施形態では、ABS樹脂が採用されている。
【0056】
Oリング91、92、93、94及びVパッキン95、96の材料としては、加硫ゴム、ソフトセグメントとハードセグメントとからなる熱可塑性エラストマー等が採用されうる。これらの中では、圧縮による永久歪の少なさ及び耐久性確保の観点から、加硫ゴムが好ましい。これらOリング等は接液部となるため、機材ゴムとして耐塩素性に優れたEPDMがさらに好ましい。
【0057】
コイルバネ64の材料としては、金属及び合成樹脂が採用されうる。剛性確保の観点から、金属が好ましい。特に、耐食性及び耐久性の観点からステンレス鋼が好ましい。
【0058】
図2及び
図10が参照されつつ、以下に、減圧弁部材7及び逆止弁体8の、減圧機能、圧力調整機能及び逆止機能について説明される。減圧弁部材7を開弁する力は、上流側圧力(1次圧)P1による力F11に、上記コイルバネ64のバネ力F12を加えたものである。バネ力F12は減圧弁部材7が閉弁方向に移動するに伴って増大する。一方、減圧弁部材7を閉弁する力は、下流側圧力(2次圧)P2による力F2である。減圧弁部材7の1次圧P1の受圧面積は、
図2に示されるように、第五内周面67によって画される範囲から窓部69を除いた部分S1である。一方、減圧弁部材7の2次圧P2の受圧面積は、第五外周面70によって区画される内側の範囲から窓部69を除いた部分S2である。F11=P1×S1、及び、F2=P2×S2と表される。
【0059】
給水管102から、第三孔40、第一孔20及び第二孔30を通って、流調弁9内に流入した液体は、第一小径内部空間14及び窓部69を通過して主配管101の下流側に流出する。上記第一小径部13の流路面積及び窓部69の流路面積は比較的大きいため、
図10(a)に示される減圧弁部材7の全開時においては、窓部69における液体の圧力損失は小さい。すなわち、減圧弁部材7の上流側(第五内部空間)の圧力P1と、下流側(主配管101内)の圧力P2との差は殆ど無い。P1はP2に略等しい。この全開時とは、減圧弁部材7が出口側ケース4のフランジ部71に当接している状態である。液体の圧力P1、P2が低いときは、バネ力(F12)>流体力の差(F2−F11)であるから、開弁力(F11+F12)>閉弁力(F2)となる。しかし、流入する液体の圧力が上昇すると、流体力の差(F2−F11)>バネ力(F12)となるため、閉弁力(F2)>開弁力(F11+F12)となり、減圧弁部材7が上流側へ移動し始める。すなわち、減圧弁部材7が閉弁し始める(
図10(b))。その結果、逆止弁体8のシート面8aが流調弁ガイド6のシート面13aに接近し、これらの間の流路が狭くなる。この流路を通過する液体の圧力損失が増大し、2次圧P2が低下する。これが、減圧弁部材7の減圧機能である。
【0060】
しかし、2次圧P2が低下すると、閉弁力(F2=P2×S22)が小さくなり、減圧弁部材7は閉弁動作を停止する。このようにして、シリンダ弁1の1次圧が上昇しても、2次圧は所定の圧力以上には上昇しない。この所定の圧力は、上記コイルバネ64のバネ定数の選定、及び/又は、上記1次圧P1の受圧面積S1と2次圧P2の受圧面積S2との比率の変更によって調整されうる。この所定の圧力は設定圧力といえる。この調整により、シリンダ弁1の下流側の液体圧の上昇を制限することが可能となる。これは、減圧弁部材7の圧力調整機能である。
【0061】
このシリンダ弁1が設置された主配管101の下流側に、吐止水機能を有する図示しない弁が接続されている場合、上記減圧弁部材7の逆止機能が発揮される。上記弁としては、ニードル弁、スライド弁、ソレノイド式ストップ弁、スプリング式ストップ弁、ボール弁等の開閉弁、及び、ダイアフラム式制御弁等が選択される。ここでは、単に「開閉弁」と呼ぶ。また、一つの配管にシリンダ弁1とこの開閉弁とが接続されたものを「水栓器具」と呼ぶ。給水管102から液体が供給されているときに開閉弁が閉止されると、液体の流れが停止するとともに、シリンダ弁1及び主配管101の内部の液体の圧力が上昇する。1次圧P1と2次圧P2とは同一になる。減圧弁部材7は閉弁を開始する(
図10(b))。液体の流れは停止しているので、減圧弁部材7の弁開度が減少しても2次圧P2は低下しない。そして、液体の圧力が所定の圧力である場合、上記逆止弁体8のシート面8aが、流調弁ガイド6の第一小径部13のシート面13aに着座して、減圧弁部材7が全閉する(
図10(c))。上記所定の圧力は、上記コイルバネ64のバネ定数の選定、及び/又は、上記1次圧P1の受圧面積S1と2次圧P2の受圧面積S2との比率の変更によって調整されうる。この所定の圧力は設定圧力と言える。これが、減圧弁部材7の逆止機能である。
【0062】
この逆止機能が発揮されることにより、シリンダ弁1の下流側の圧力上昇が防止される。その結果、シリンダ弁1の下流側に接続された開閉弁、及び/又は、開閉弁と配管との接続部に、高圧が負荷することによって発生する損傷、機能障害、漏水等の問題を回避しうる。
【0063】
図11には、上記した水栓器具の一例である湯水混合栓81が示されている。湯水混合栓81は、湯と水の混合割合の調節、及び、この混合液体の吐出量の調整を行うことが可能である。湯水混合栓81は、例えば、キッチン、洗面台、浴室等において使用される。この湯水混合栓81は、温度調整弁82、流量調整弁83、カラン用吐止水弁84及びシャワー用吐止水弁85を備えている。温度調整弁82と流量調整弁83との間、並びに、流量調整弁83とカラン用吐止水弁84及びシャワー用吐止水弁85との間は、配管105によって接続されている。温度調整弁82には、冷水源86から給水管106が接続され、温水源87から給湯管107が接続されている。冷水源86及び温水源87からの湯水は、温度調整弁82から流量調整弁83へと流れ、カラン用吐止水弁84及び/又はシャワー用吐止水弁85から吐出される。
【0064】
上記温度調整弁82のダイアル82aの操作により、湯と水との混合割合が変化する。このダイアル82aの操作により、水の温度調整が可能である。上記流量調整弁83としては、前述したシリンダ弁1が採用されている。その構造及び機能は前述したとおりである。すなわち、この流量調整弁83は、操作によるいかなる調整位置においても流路が確保されており、止水することがない。しかし、この流量調整弁83は、内圧に応じて自動的に閉弁する逆止機能を有している。上記カラン用吐止水弁84及びシャワー用吐止水弁85としては、前述したニードル弁、スライド弁、スプリング式ストップ弁、ボール弁等の開閉弁、及び、ダイアフラム式制御弁等が採用されうる。カラン用吐止水弁84及びシャワー用吐止水弁85に対し、例えば、一方の開弁中には他方の開弁が不能とされる機構も採用可能である。このような湯水混合栓81にあっても、上記流量調整弁83(シリンダ弁1)の機能により、流量調整弁83の下流側の圧力上昇が防止され、カラン用吐止水弁84、シャワー用吐止水弁85、及び、これら84、85と配管105との接続部等の損傷、機能障害、漏水等の問題が回避されうる。
【0065】
本願には、請求項(独立形式請求項を含む)に係る発明とは異なる他の発明も記載されている。本願の請求項及び実施形態に記載されたそれぞれの形態、部材、構成及びそれらの組み合わせは、それぞれが有する作用効果に基づく発明として認識される。
【0066】
上記各実施形態で示されたそれぞれの形態、部材、構成等は、これら実施形態の全ての形態、部材又は構成をそなえなくても、個々に、本願請求項に係る発明をはじめとした、本願記載の全発明に適用されうる。