(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記砥石部の中心軸方向における一方の端面及び他方の端面のそれぞれの、中心軸から外側に向かう方向である径方向における長さが、3〜7mmである請求項1〜3のいずれかに記載のハニカム構造体の研削方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0020】
本実施形態のハニカム構造体の研削方法は、
図1〜
図8に示されるように、以下の通りである。つまり、本実施形態のハニカム構造体の研削方法は、円板状の研削加工部材1を用いてハニカムセグメント接合体11の外周部を研削加工するハニカム構造体の研削方法である。
【0021】
更に具体的には、本実施形態のハニカム構造体の研削方法において、研削加工部材1は、円板状の円板部2と円板部2の外周に配設されたリング状の砥石部3とを備えるものである。研削加工部材1の中心軸とハニカムセグメント接合体11の中心軸とを平行にした状態で、ハニカムセグメント接合体11を、中心軸を中心にして回転させるとともに、研削加工部材1を中心軸を中心にして回転させる。そして、上記回転をさせながら、ハニカムセグメント接合体11の外周部分を、研削加工部材1の砥石部3で研削して、
柱状のハニカム基材42とリング状凸部43とを備えたハニカム構造体41を作製する。研削加工部材1の砥石部3は、外周面4、第1の砥石テーパー面5及び第2の砥石テーパー面6を有する。外周面4は、中心軸に平行に形成された面である。第1の砥石テーパー面5は、中心軸方向における一方の端部に先端の外径が小さくなるようにテーパー状に形成された面である。そして、第2の砥石テーパー面6は、中心軸方向における他方の端部に先端の外径が小さくなるようにテーパー状に形成された面である。ハニカムセグメント接合体11は、複数のセラミックハニカムセグメント12の側面13同士が接合されて形成された被研削体である。
【0022】
本実施形態のハニカム構造体の研削方法は、第1研削領域形成工程、第2研削領域形成工程及び中央研削面形成工程を有するものである。尚、「研削途中のハニカムセグメント接合体」も、「ハニカムセグメント接合体」と称する。そして、全ての研削工程(第1研削領域形成工程、第2研削領域形成工程及び中央研削面形成工程)が終了した後に得られたものを、「ハニカム構造体」と称する。
【0023】
第1研削領域形成工程は、研削加工部材1の砥石部3で、一方の端部である第1端部14と他方の端部である第2端部15とを有するハニカムセグメント接合体11の、外周部分の第1端部14側の一部を研削する工程である。そして、第1研削領域形成工程は、上記研削により、ハニカム基材42の第1研削領域21及びリング状凸部43の第1テーパー部22を形成する工程である。第2研削領域形成工程は、研削加工部材1の砥石部3で、ハニカムセグメント接合体11の外周部分の研削されていない領域である未研削領域25の、第2端部15側の一部を研削する工程である。そして、上記研削により、ハニカム基材42の第2研削領域23及びリング状凸部43の第2テーパー部24を形成する工程である。中央研削面形成工程は、研削加工部材1の砥石部3で、ハニカムセグメント接合体11の「外周部分の研削されずに残っている領域」である残存未研削領域26を研削して、リング状凸部43の中央研削面33を形成する工程である。
【0024】
そして、上記第1研削領域形成工程においては、砥石部3の外周面4によって第1研削領域21を形成する。更に、砥石部3の第1の砥石テーパー面5によって、「第2端部15側の「研削されていない領域」である未研削領域25」と「第1研削領域21」との間に、第1端部14に向かって細くなる第1テーパー部22を形成する。そして、上記第2研削領域形成工程においては、砥石部3の外周面4によって第2研削領域23を形成する。更に、砥石部3の第2の砥石テーパー面6によって、「研削されずに残る「残存未研削領域26」」と「第2研削領域23」との間に、第2端部15に向かって細くなる第2テーパー部24を形成する。そして、上記中央研削面形成工程において形成される中央研削面33は、第1テーパー部22のテーパー面である第1テーパー面31及び第2テーパー部24のテーパー面である第2テーパー面32に接する面である。尚、第1の砥石テーパー面5は、砥石部3における、「中心軸方向aにおける一方の端部に、先端の外径が小さくなるようにテーパー状に形成された面」である。また、第2の砥石テーパー面6は、砥石部3における、「中心軸方向aにおける他方の端部に、先端の外径が小さくなるようにテーパー状に形成された面」である。ここで、本実施形態のハニカム構造体の研削方法においては、「研削加工部材1の中心軸」、「円板部2の中心軸」及び「砥石部の中心軸」は、共通であり、いずれも「中心軸方向a」に延びる軸であることが好ましい。
【0025】
上記のように、ハニカムセグメント接合体11に、第1研削領域21及び第1テーパー部22を形成したところで、第1研削領域形成工程が終了する。そして、ハニカムセグメント接合体11に、第2研削領域23及び第2テーパー部24を形成したところで、第2研削領域形成工程が終了する。そして、ハニカムセグメント接合体11に、中央研削面33を形成してハニカム構造体41を得たところで、中央研削面形成工程が終了する。
【0026】
ハニカム構造体41のハニカム基材42は、複数のセラミックハニカムセグメント12の側面13同士が接合されて形成されたものである。ハニカム構造体41のリング状凸部43は、ハニカム基材42の外周を取り囲むとともにハニカム基材42の外周から外側に向かって鍔状に突出し、第1テーパー面31、第2テーパー面32及び中央研削面33を有するものである。
【0027】
ここで、
図1は、本発明のハニカム構造体の研削方法の一実施形態において用いられる研削加工部材1を模式的に示す正面図である。
図2は、本発明のハニカム構造体の研削方法の一実施形態において用いられる研削加工部材1を模式的に示す側面図である。
図3は、本発明のハニカム構造体の研削方法の一実施形態において用いられる研削加工部材を構成する砥石部の断面を示す模式図である。
図3は、研削加工部材の砥石部を、中心軸を含む平面で切断して得られる2つの断面のうちの一方である。
図4は、本発明のハニカム構造体の研削方法の一実施形態において、研削加工されるハニカムセグメント接合体11を模式的に示す斜視図である。
図5は、本発明のハニカム構造体の研削方法の一実施形態における第1研削領域形成工程を示す模式図である。
図6は、本発明のハニカム構造体の研削方法の一実施形態における第2研削領域形成工程を示す模式図である。
図7は、本発明のハニカム構造体の研削方法の一実施形態における中央研削面形成工程を示す模式図である。
図8は、本発明のハニカム構造体の研削方法の一実施形態において作製されるハニカム構造体41を模式的に示す斜視図である。
【0028】
本実施形態のハニカム構造体の研削方法は、上記のように、「研削加工部材1」(
図1〜
図3参照)を用いて、ハニカムセグメント接合体11(
図4参照)の外周部分を研削して、リング状凸部43(
図8参照)を有するハニカム構造体41を作製する方法である。
【0029】
このように、本実施形態のハニカム構造体の研削方法は、研削加工部材1の第1の砥石テーパー面5によって、「第1の砥石テーパー面5に対して相補的な形状」の第1テーパー部22を形成する。これにより、第1テーパー部22の形状が、「第1の砥石テーパー面5の形状が転写された形状」になる。そのため、第1テーパー部22の面の輪郭度を向上させることができる。更に、研削加工部材1による研削の際、研削加工部材1の中心軸とハニカムセグメント接合体11の中心軸とを平行にした状態で、ハニカムセグメント接合体11の中心軸に平行に、研削加工部材1を移動させることが好ましい。これにより、より短時間で第1テーパー部22を形成することができる。また、第2テーパー部24についても、第2の砥石テーパー面6によって、同様にして形成されるため、加工面の輪郭度を良くすることができるとともに、短時間で加工を行うことができる。更に、第1研削領域21、第2研削領域23及び中央研削面33は、研削加工部材1の外周面4によって形成されるため、輪郭度を向上させることができるとともに、短時間で研削加工を行うことができる。ここで、本明細書において、「加工面」とは、研削加工部材によって研削されて形成された面(研削面)のことを意味する。また、面の「輪郭度」とは、当該「面」の形状に関しての、設計値からのずれ量の、最大値と最小値との差のことである。そして、面の「輪郭度」は、ダイヤルメーター、3次元測定機、2次元レーザー測長機等を用いて、ハニカム構造体(ハニカムセグメント接合体)の断面の輪郭を測定し、設計値と測定値とのずれ量を算出し、得られたずれ量から計算した値である。「輪郭度」は、0.2mm未満の場合、良好である(良い)ということができる。また、「輪郭度」は、0.2mm以上の場合、不良である(悪い)ということができる。尚、「輪郭度」のことを、「面の輪郭度」と称することがある。
【0030】
また、本実施形態のハニカム構造体の研削方法は、研削加工部材1の第1の砥石テーパー面5によって第1テーパー部22を形成する。そして、第2の砥石テーパー面6によって第2テーパー部24を形成し、外周面4によって第1研削領域21、第2研削領域23及び中央研削面33を形成する。このように、本実施形態のハニカム構造体の研削方法は、1つの研削加工部材1の各面(第1の砥石テーパー面5、第2の砥石テーパー面6及び外周面4)によって、得られるハニカム構造体の各面が形成される。そのため、本発明のハニカム構造体の研削方法は、1つの研削加工部材1のみを用いてハニカムセグメント接合体11を研削して、所望のハニカム構造体41を得ることができる。
【0031】
(1)研削加工部材:
本実施形態のハニカム構造体の研削方法において用いられる研削加工部材1は、
図1〜
図3に示されるように、円板状の円板部2と、円板部2の外周に配設されたリング状の砥石部3とを備えるものである。
【0032】
砥石部3は、「外周面4、第1の砥石テーパー面5及び第2の砥石テーパー面6」を有するものである。外周面4は、中心軸に平行に形成された、外周部分に形成された面である。外周面4の形状は、円筒形の外周面の形状と同じ形状である。「外周面4が、中心軸(研削加工部材の中心軸)に平行に形成されている」とは、研削加工部材の「中心軸を含む断面」において、中心軸と外周面4とが平行であることを意味する。このように、「外周面4と中心軸とが平行」であると、研削加工部材1の中心軸とハニカムセグメント接合体11の中心軸とを平行にして、ハニカムセグメント接合体を研削することにより、「面の輪郭度」を向上することができる。更に、研削加工部材1をハニカムセグメント接合体11の中心軸に平行に移動させると、より、研削加工時間を短くできる。更に具体的には、研削加工部材1でハニカムセグメント接合体11を研削する際に、研削加工部材1及びハニカムセグメント接合体11の両方の中心軸を通る断面において、研削加工部材1の外周面4の全体がハニカムセグメント接合体11に接触した状態となる。そして、研削加工部材1の外周面4と、ハニカムセグメント接合体11における研削された面とは、平行になる。そのため、研削加工部材1の外周面4とハニカムセグメント接合体11との接触幅が、外周面4の幅である「外周幅Wc」となる。このように、研削加工部材1の幅広の外周面4の全体がハニカムセグメント接合体11に接触した状態となるため、研削加工部材1の移動速度を速くしても、ハニカムセグメント接合体11における研削された面は、輪郭度が良くなる。そのため、本実施形態のハニカム構造体の研削方法は、研削加工時間を短くできるとともに、得られたハニカム構造体の「研削によって形成された面(加工面)」の輪郭度を向上することができる。
【0033】
砥石部3の外周面4の、中心軸方向aにおける長さ(砥石部3の外周面4の幅)である「外周幅Wc」は、9〜15mmが好ましく、10〜14mmが更に好ましく、11〜13mmが特に好ましい。9mmより短いと、第1研削領域21等の「面の輪郭度」を良くするために、研削加工部材1の移動速度を遅くする必要が生じることがある。また、研削加工部材1の移動速度を遅くしない場合には、らせん状の削り残しが発生することがある。15mmより長いと、研削加工部材1の質量が大きくなり、回転時に振動(回転中心(中心軸)の「ぶれ」)が生じることがある。
【0034】
砥石部3は、テーパー幅Wbが8〜10mmであることが好ましく、8.4〜9.6mmであることが更に好ましく、8.8〜9.2mmであることが特に好ましい。8mmより短いと、第1の砥石テーパー面等が小さくなり、所望の第1テーパー面等を形成しにくくなることがある。10mmより長いと、外周幅Wcが短くなり、研削加工時間が長くなるとともに、得られたハニカム構造体の「研削によって形成された面」の輪郭度が悪化することがある。テーパー幅Wbは、第1の砥石テーパー面及び第2の砥石テーパー面の、中心軸方向aにおける長さである。第1の砥石テーパー面5のテーパー幅Wbと、第2の砥石テーパー面6のテーパー幅Wbとは、異なる大きさであってもよいが、同じ大きさであることが好ましい。
【0035】
砥石部3の中心軸方向aにおける長さである砥石幅Waは、25〜35mmであることが好ましく、28〜32mmであることが更に好ましく、29〜31mmであることが特に好ましい。砥石幅Waが25mmより短いと、テーパー幅Wbや外周幅Wcを短くする必要が生じることがある。砥石幅Waが35mmより長いと、研削加工部材1の質量が大きくなり、回転時に振動(回転中心(中心軸)の「ぶれ」)が生じることがある。
【0036】
砥石部3の中心軸方向における一方の端面(砥石部の一方の端面7)及び他方の端面(砥石部の他方の端面8)のそれぞれの、「中心軸から外側に向かう方向である径方向」における長さ(砥石端面径方向長さd)が、3〜7mmであることが好ましい。更に、砥石端面径方向長さdは、4〜6mmであることが更に好ましく、4.5〜5.5mmであることが特に好ましい。3mmより短いと、研削加工部材の寿命が短くなることがある。7mmより長いと、研削加工部材(砥石部)の剛性が低下し、所望の形状のハニカム構造体を形成し難くなることがある。砥石部の一方の端面7の砥石端面径方向長さdと、砥石部の他方の端面8の砥石端面径方向長さdとは、異なる長さであってもよいが、同じ長さであることが好ましい。
【0037】
砥石部3の材質は、ハニカムセグメント接合体11を構成するセラミックハニカムセグメント12及びセラミックハニカムセグメント12同士を接合する接合部16を研削できるものであれば特に限定されない。砥石部3の材質としては、具体的には、ダイヤモンド砥粒をメタルボンドにて固定した(固めた)もの等を挙げることができる。
【0038】
研削加工部材1の中心軸に直交する断面における、直径は、300〜400mmが好ましく、320〜380mmが更に好ましく、340〜360mmが特に好ましい。300mmより小さいと、砥石部3のテーパー幅Wb及び砥石端面径方向長さdを、所望の長さにすることが困難になることがあり、また加工速度を確保するため砥石回転速度を高速化する必要があり、装置の大型化につながることがある。400mmより大きいと、研削加工部材1を回転、移動させる装置を大型化させる必要が生じることがある。
【0039】
研削加工部材1を装着して(取り付けて)使用する装置としては、特に限定されず、研削加工部材1を「中心軸を中心にして」回転させるとともに、研削加工部材1を移動させることが可能な装置であればよい。研削加工部材1を、中心軸方向に移動できる装置であれば、更に好ましい。
【0040】
研削加工部材1を構成する円板部2は、円板状の部材である。円板部2の形状には、円板形状において中央部が凹んだ形状、円板形状において所定の位置に孔が形成された形状等も含まれる。また、「外周に位置するリムと中央に位置するハブとが、スポークで繋がれた構造の、ホイール」のような形状等も含まれる。研削加工部材1は、円板部2の外周に砥石部3が配設されている。円板部2の厚さは、砥石部3の砥石幅Waと同じであることが好ましい。円板部2の材質は、特に限定されないが、炭素鋼等が好ましい。研削加工部材1は、円板部2の中心軸部分を、研削加工部材1を装着す装置の回転軸に取り付けて使用することが好ましい。
【0041】
(2)ハニカムセグメント接合体:
本実施形態のハニカム構造体の研削方法における被研削体であるハニカムセグメント接合体11は、複数のセラミックハニカムセグメント12の側面13同士が接合されて形成されたものである。セラミックハニカムセグメント12同士は、接合部16によって接合されている。
【0042】
セラミックハニカムセグメント12は、一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するものである。そして、セラミックハニカムセグメント12は、一方の端面の所定のセルの開口部と他方の端面の残余のセルの開口部とに、目封止部が形成されている。また、上記所定のセルと残余のセルとは交互に配置されており、セラミックハニカムセグメント12の両端面に市松模様が形成されている。尚、セラミックハニカムセグメントは、目封止部を有さないものであってもよい。
【0043】
セラミックハニカムセグメント12を構成する材料は、珪素−炭化珪素複合材料、炭化珪素、珪素が好ましい。ここで、珪素−炭化珪素複合材料は、「炭化珪素粒子が、金属珪素によって、炭化珪素粒子間に気孔が形成された状態で結合された」構造を有する材料である。
【0044】
セラミックハニカムセグメント12の気孔率(%)は、特に限定されないが、30〜80%であることが好ましく、40〜65%であることが更に好ましい。気孔率をこのような範囲とすることにより、強度を維持しながら圧力損失を小さくすることができる。気孔率が30%未満であると、圧力損失が上昇することがある。気孔率が80%を超えると、強度が低下することがある。気孔率は、アルキメデス法により測定した値である。
【0045】
セラミックハニカムセグメント12の平均細孔径(μm)は、5〜50μmであることが好ましく、7〜35μmであることが更に好ましい。平均細孔径をこのような範囲とすることにより、粒子状物質(パティキュレートマター:PM)を効果的に捕集することができる。平均細孔径が5μm未満であると、粒子状物質により目詰まりを起こしやすくなることがある。平均細孔径が50μmを超えると、作製されるハニカム構造体をディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)として使用した場合、粒子状物質がハニカム構造体に捕集されずに通過することがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0046】
セラミックハニカムセグメント12を構成する材料が珪素−炭化珪素複合材料である場合、炭化珪素粒子の平均粒子径は、5〜100μmであることが好ましい。このような平均粒径とすることにより、セラミックハニカムセグメント12の気孔率及び平均細孔径を、上記のような範囲に制御しやすくなる。平均粒子径が5μmより小さいと、平均細孔径が小さくなり過ぎることがある。平均粒子径が100μmより大きいと、気孔率が小さくなり過ぎることがある。炭化珪素の平均粒径は、JIS R 1629に準拠して測定した値である。
【0047】
セラミックハニカムセグメント12の隔壁の厚さは、特に限定されないが、50〜2000μmであることが好ましい。隔壁の厚さが50μmより薄いと、作製されるハニカム構造体の強度が低下することがある。隔壁の厚さが2000μmより厚いと、作製されるハニカム構造体の圧力損失が大きくなることがある。
【0048】
セラミックハニカムセグメント12のセル密度(セル/cm
2)は、特に限定されないが、0.9〜311セル/cm
2であることが好ましく、7.8〜62セル/cm
2であることが更に好ましい。セル密度が0.9セル/cm
2より小さいと、作製されるハニカム構造体をDPFとして使用した場合、フィルタとしての有効面積が小さくなることがある。セル密度が311セル/cm
2より大きいと、作製されるハニカム構造体をDPFとして使用した場合、圧力損失が大きくなることがある。
【0049】
セラミックハニカムセグメント12のセル形状としては、特に制限はなく、例えば、三角形、四角形、六角形、八角形、円形、又はこれらの組合せを挙げることができる。尚、セラミックハニカムセグメント12のセル形状は、セラミックハニカムセグメント12の中心軸方向(セルが延びる方向)に対して垂直な断面におけるセル形状である。
【0050】
セラミックハニカムセグメント12同士を接合させる接合部16の材質としては、セラミックス粉にセラミックスファイバー等の無機繊維、有機及び/又は無機のバインダ、並びに水等の分散媒を添加したもの等を挙げることができる。セラミックス粉としては、シリカ、アルミナ、ムライト、コージェライト等の粉を挙げることができる。
【0051】
本実施形態のハニカム構造体の研削方法においては、
図4に示されるように、ハニカムセグメント接合体11の形状は、中心軸方向に直交する断面の形状が八角形の筒状(柱状)である。本実施形態のハニカム構造体の研削方法においては、ハニカムセグメント接合体11の形状は、中心軸方向に直交する断面の形状が八角形の筒状(柱状)であることが好ましいが、これに限定されるものではない。例えば、ハニカムセグメント接合体11は、「中心軸方向に直交する断面の形状が、円形又は多角形である」筒状(柱状)であることが好ましい。ハニカムセグメント接合体11の中心軸方向に直交する断面の形状としては、四角形、六角形又は八角形が更に好ましい。本実施形態のハニカム構造体の研削方法は、このような、中心軸方向に直交する断面の形状が多角形のハニカムセグメント接合体11であっても、1つの研削加工部材を用いて研削加工を行い、ハニカム構造体を得ることができる。
【0052】
(3)ハニカム構造体の研削方法:
以下、本実施形態のハニカム構造体の研削方法について、工程毎に更に詳細に説明する。
【0053】
(3−1)第1研削領域形成工程;
第1研削領域形成工程においては、
図5に示されるように、研削加工部材1を、「ハニカムセグメント接合体11の第1端部14から第2端部15に向けて(移動方向)」、移動させる。本実施形態のハニカム構造体の研削方法においては、「中心軸に直交する断面」の形状が円形のハニカム構造体を作製するため、研削加工部材1を、ハニカムセグメント接合体11の中心軸に平行に移動させている。
図5の紙面左側の研削状態Aは、研削加工部材1によって、ハニカムセグメント接合体11の第1端部14を、研削し始めた状態を示している。
図5の紙面右側の研削状態Bは、研削加工部材1によって、ハニカムセグメント接合体11に、第1研削領域21及び第1テーパー部22を形成した状態を示している。
図5において、ハニカムセグメント接合体11は、回転装置の回転部材51によって両端面から挟まれている。このとき、回転部材51の回転軸と、ハニカムセグメント接合体11の中心軸とが同一の軸となるようする。そして、ハニカムセグメント接合体11は、回転部材51の回転駆動によって、中心軸を中心にして回転する。
図5において、研削加工部材の横に描かれている「白抜きの矢印」は、研削加工部材が移動する方向を示している。また、他の図面においても、同様に、研削加工部材の横に描かれている「白抜きの矢印」は、研削加工部材が移動する方向を示している。
【0054】
研削加工部材1の移動速度は、200〜400mm/分が好ましく、240〜360mm/分が更に好ましく、280〜320mm/分が特に好ましい。400mm/分より速いと、第1研削領域21及び第1テーパー部22の面の輪郭度が悪化することがある。200mm/分より遅いと、研削時間が長くなりすぎることがある。尚、第2研削領域形成工程及び中央研削面形成工程における研削加工部材1の移動速度も、上記範囲が好ましい。
【0055】
研削加工部材1を、ハニカムセグメント接合体11の第1端部14から第2端部15に向けて移動させる際には、ハニカムセグメント接合体を、中心軸を中心にして回転させるとともに、研削加工部材を中心軸を中心にして回転させながら移動させる。ハニカムセグメント接合体11を、中心軸を中心にして回転させる際の回転速度は、特に限定されないが、100〜200rpmが好ましく、120〜180rpmが更に好ましく、140〜160rpmが特に好ましい。回転速度が100rpmより遅いと、第1研削領域21及び第1テーパー部22の面の輪郭度が悪化することがある。回転速度が200rpmより速いと、回転させる装置の負荷が大きくなり、大掛かりな装置を必要とすることがある。また、研削加工部材を中心軸を中心にして回転させる際の回転速度は、特に限定されないが、2000〜6000rpmが好ましく、3000〜5000rpmが更に好ましく、3500〜4500rpmが特に好ましい。回転速度が2000rpmより遅いと、第1研削領域21及び第1テーパー部22の面の輪郭度が悪化することがある。回転速度が6000rpmより速いと、回転させる装置の負荷が大きくなり、大掛かりな装置を必要とすることがある。尚、第2研削領域形成工程及び中央研削面形成工程における、ハニカムセグメント接合体11の回転速度も、上記範囲が好ましい。更に、第2研削領域形成工程及び中央研削面形成工程における、研削加工部材1の回転速度も、上記範囲が好ましい。
【0056】
そして、研削加工部材1の砥石部3で、ハニカムセグメント接合体11の外周部分の第1端部14側の一部を研削する際に、砥石部3の外周面4によって第1研削領域21を形成する。そして、それととともに砥石部3の第1の砥石テーパー面5によって第1テーパー部22を形成する。このように、研削加工部材1の砥石部3の面(外周面4及び第1の砥石テーパー面5)によって、ハニカムセグメント接合体11を研削するため、研削された部分の「面の輪郭度」を良くすることが可能となる。研削加工部材1の砥石部3の第1の砥石テーパー面5のテーパーの角度は、ハニカムセグメント接合体11(ハニカム構造体41)の第1テーパー部22のテーパーの角度と同じになる。
【0057】
第1研削領域形成工程は、上記のように、ハニカムセグメント接合体11に、第1研削領域21及び第1テーパー部22を形成する工程である。
【0058】
ハニカムセグメント接合体11に、第1研削領域21及び第1テーパー部22を形成した後に、研削加工部材1を、ハニカムセグメント接合体11から離して、ハニカムセグメント接合体11の第2端部15まで移動させることが好ましい。そして、その後に、第2研削領域形成工程を行うことが好ましい。
【0059】
本実施形態のハニカム構造体の研削方法は、研削加工部材1の第1の砥石テーパー面5で第1テーパー部22を形成し、研削加工部材1の第2の砥石テーパー面6で第2テーパー部24を形成する。そのため、第1研削領域形成工程から第2研削領域形成工程に移行する際に、研削加工部材の向き(第1の砥石テーパー面5及び第2の砥石テーパー面6が向く方向)を変える必要がない。
【0060】
(3−2)第2研削領域形成工程;
第2研削領域形成工程においては、
図6に示されるように、研削加工部材1を、「ハニカムセグメント接合体11の第2端部15から第1端部14に向けて」移動させる。本実施形態のハニカム構造体の研削方法においては、「中心軸に直交する断面」の形状が円形のハニカム構造体を作製するため、研削加工部材1を、ハニカムセグメント接合体11の中心軸に平行に移動させている。
図6の紙面左側の研削状態Cは、研削加工部材1によって、ハニカムセグメント接合体11の第2端部15を、研削し始めた状態を示している。
図6の紙面右側の研削状態Dは、研削加工部材1によって、ハニカムセグメント接合体11に、第2研削領域23及び第2テーパー部24を形成した状態を示している。
図6において、ハニカムセグメント接合体11は、回転装置の回転部材51によって両端面から挟まれている。このとき、回転部材51の回転軸と、ハニカムセグメント接合体11の中心軸とが同一の軸となるようする。そして、ハニカムセグメント接合体11は、回転部材51の回転駆動によって、中心軸を中心にして回転する。
【0061】
第2研削領域形成工程においては、
図6に示されるように、研削加工部材1の砥石部3で、「ハニカムセグメント接合体11の未研削領域25の、第2端部15側の一部」を研削する。これにより、砥石部
3の外周面4によって第2研削領域23を形成するとともに、砥石部3の第2の砥石テーパー面6によって、「研削されずに残る残存未研削領域26と第2研削領域23との間」に第2端部15に向かって細くなる第2テーパー部24を形成する。このように、研削加工部材1の砥石部3の面(外周面4及び第2の砥石テーパー面6)によって、ハニカムセグメント接合体11を研削するため、研削された部分の「面の輪郭度」を良くすることが可能となる。研削加工部材1の砥石部3の第2の砥石テーパー面6のテーパーの角度は、ハニカムセグメント接合体11(ハニカム構造体41)の第2テーパー部24のテーパーの角度と同じになる。
【0062】
第2研削領域形成工程は、上記のように、ハニカムセグメント接合体11に、第2研削領域23及び第2テーパー部24を形成する工程である。
【0063】
ハニカムセグメント接合体11に、第2研削領域23及び第2テーパー部24を形成した後に、研削加工部材1を、ハニカムセグメント接合体11から離して、ハニカムセグメント接合体11の残存未研削領域26の一方の端部まで移動させることが好ましい。ハニカムセグメント接合体11の残存未研削領域26の一方の端部は、セルの延びる方向における端部である。そして、その後に、中央研削面形成工程を行うことが好ましい。
【0064】
(3−3)中央研削面形成工程;
中央研削面形成工程においては、
図7に示されるように、研削加工部材1を移動させて、研削加工部材1の砥石部3で、「ハニカムセグメント接合体11の外周部分の残存未研削領域26」を研削する。本実施形態のハニカム構造体の研削方法においては、「中心軸に直交する断面」の形状が円形のハニカム構造体を作製するため、研削加工部材1を、ハニカムセグメント接合体11の中心軸に平行に移動させている。
図7の紙面左側の研削状態Eは、研削加工部材1によって、ハニカムセグメント接合体11の残存未研削領域26を、研削し始めた状態を示している。
図7の紙面右側の研削状態Fは、研削加工部材1によって、ハニカムセグメント接合体11に、中央研削面33を形成した状態を示している。
図7において、ハニカムセグメント接合体11は、回転装置の回転部材51によって両端面から挟まれている。このとき、回転部材51の回転軸と、ハニカムセグメント接合体11の中心軸とが同一の軸となるようする。そして、ハニカムセグメント接合体11は、回転部材51の回転駆動によって、中心軸を中心にして回転する。
【0065】
中央研削面形成工程においては、研削加工部材1の砥石部3の外周面4によって、ハニカムセグメント接合体11の中央研削面33が形成される。このように、研削加工部材1の面(外周面4)によって、中央研削面33が形成されるため、中央研削面33の輪郭度を良くすることができる。
【0066】
中央研削面形成工程は、上記のように、ハニカムセグメント接合体11に、中央研削面33を形成する工程である。
【0067】
ハニカムセグメント接合体11に、中央研削面33を形成することにより、円
柱状のハニカム基材42とリング状凸部43とを備えたハニカム構造体41を得ることができる。
【0068】
(4)ハニカム構造体:
本実施形態のハニカム構造体の研削方法によって得られたハニカム構造体は、
図8に示されるように、円
柱状のハニカム基材42とリング状凸部43とを備えるものである。
図8に示されるハニカム構造体41においては、セラミックハニカムセグメント12のセル及び隔壁は省略されている。尚、本発明のハニカム構造体の研削方法は、「中心軸に直交する断面の形状が楕円形」のハニカム構造体を、作製する方法であってもよい。この場合、リング状凸部の「中心軸に直交する」断面の形状も、楕円形であることが好ましい。また、上記のように、ハニカム基材及びリング状凸部の「中心軸に直交する」断面の形状が楕円形のハニカム構造体を作製する場合には、以下のように、研削加工部材とハニカムセグメント接合体を操作することが好ましい。すなわち、ハニカムセグメント接合体を回転させながら、その回転の位相(半周が一周期)に応じて研削加工部材を押し付ける距離(ハニカムセグメント接合体の中心軸と研削加工部材との距離)を変化させることで楕円形状を得ることができる。このとき、研削加工部材は、ハニカムセグメント接合体の中心軸との距離を周期的に変化させることになる。ハニカム基材及びリング状凸部の「中心軸に直交する」断面の形状が楕円形のハニカム構造体を作製する場合には、第1研削領域形成工程、第2研削領域形成工程及び中央研削面形成工程のそれぞれにおいて、上記操作を行うことが好ましい。すなわち、第1研削領域形成工程においては、研削加工部材1を、ハニカムセグメント接合体11の第1端部14から第2端部15に向けて移動させながら、ハニカムセグメント接合体の中心軸と研削加工部材との距離を変化させることが好ましい。また、第2研削領域形成工程においては、研削加工部材1を、ハニカムセグメント接合体11の第2端部15から第1端部14に向けて移動させながら、ハニカムセグメント接合体の中心軸と研削加工部材との距離を変化させることが好ましい。また、中央研削面形成工程においては、研削加工部材1を、ハニカムセグメント接合体11の中心軸に平行に移動させながら、ハニカムセグメント接合体の中心軸と研削加工部材との距離を変化させることが好ましい。
【0069】
ハニカム基材42は、複数のセラミックハニカムセグメント12の側面同士が接合されて形成されたものである。セラミックハニカムセグメント12同士は、接合部16によって接合されている。リング状凸部43は、ハニカム基材42の外周を取り囲むとともにハニカム基材42の外周から外側に向かって鍔状に突出した部分である。そして、リング状凸部43は、「第1テーパー面31、第2テーパー面32及び中央研削面33」によって、囲まれた部分である。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
まず、ハニカムセグメント接合体を作製した。具体的には、まず、SiC粉末80質量部と、金属Si粉末20質量部とを混合してセラミック原料とした。得られたセラミック原料に、造孔材、バインダ、界面活性剤、及び水を加えて、可塑性の坏土を作製した。造孔材としては澱粉を用いた。また、バインダとしては、メチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロースを用いた。界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウムを用いた。セラミック原料100質量部に対して、造孔材5質量部、メチルセルロース3質量部、ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース3質量部、界面活性剤1質量部、水32質量部とした。得られた坏土を、ハニカム構造体成形用口金を用いて押出成形し、マイクロ波及び熱風で乾燥してハニカム乾燥体を得た。
【0072】
次に、得られたハニカム乾燥体について、大気雰囲気にて約400℃で脱脂した。その後、脱脂したハニカム乾燥体を、アルゴン不活性雰囲気にて約1450℃で焼成して、SiC結晶粒子をSiで結合させて、セラミックハニカムセグメントを得た。
【0073】
得られたセラミックハニカムセグメントは、セルの延びる方向に直交する断面が一辺30mmの正四角形であり、セルの延びる方向における長さが150mmであった。また、セラミックハニカムセグメントは、セル密度が300セル/cm
2であり、隔壁厚さが300μmであった。
【0074】
上記方法で、セラミックハニカムセグメントを12個作製した。そして、そのなかの4個のセラミックハニカムセグメントのそれぞれについて、セルの延びる方向に直交する断面が二等辺三角形のセラミックハニカムセグメントが2つ得られるように、二等分した。
【0075】
得られた16個のセラミックハニカムセグメントについて、それぞれの側面同士を接合材で接合し、乾燥させて、
図4に示されるような、中心軸に直交する断面の形状が八角形の、ハニカムセグメント接合体11を得た。接合材としては、アルミナ粉にシリカファイバー、有機バインダ及び水を添加したものを用いた。
【0076】
次に、ハニカムセグメント接合体を、研削加工部材を用いて研削してハニカム構造体を得た。具体的には、以下のとおりである。
【0077】
まず、第1研削領域形成工程を行った(
図5を参照)。具体的には、研削加工部材1の中心軸と、ハニカムセグメント接合体11の中心軸とを平行にした状態で、研削加工部材1を、ハニカムセグメント接合体11の第1端部14から第2端部15に向けて、ハニカムセグメント接合体11の中心軸に平行に移動させた。
【0078】
研削加工部材1を、ハニカムセグメント接合体11の第1端部14から第2端部15に向けて移動させる際には、ハニカムセグメント接合体を、中心軸を中心にして回転させるとともに、研削加工部材を中心軸を中心にして回転させながら移動させた。尚、ハニカムセグメント接合体11の第1端部14は、ハニカムセグメント接合体11の一方の端部であり、ハニカムセグメント接合体11の第2端部15は、ハニカムセグメント接合体11の他方の端部である。そして、上記のように、研削加工部材1を、ハニカムセグメント接合体11の第1端部14から第2端部15に向けて移動させて、研削加工部材1の砥石部3で、ハニカムセグメント接合体11の外周部分の第1端部14側の一部を研削した。そして、研削加工部材1の砥石部3で、ハニカムセグメント接合体11の外周部分の第1端部14側の一部を研削する際に、砥石部3の外周面4によって第1研削領域21を形成した。そして、それとともに砥石部3の第1の砥石テーパー面5によって第1テーパー部22を形成した。
【0079】
次に、第2研削領域形成工程を行った(
図6を参照)。研削加工部材1を、ハニカムセグメント接合体11の第2端部15から第1端部14に向けてハニカムセグメント接合体11の中心軸に平行に移動させた。これにより、研削加工部材1の砥石部3で、「ハニカムセグメント接合体11の未研削領域25の、第2端部15側の一部」を研削した。これにより、砥石部
3の外周面4によって第2研削領域23を形成するとともに、砥石部3の第2の砥石テーパー面6によって、「研削されずに残る残存未研削領域26と第2研削領域23との間」に第2端部15に向かって細くなる第2テーパー部24を形成した。研削加工部材1の砥石部3で、「ハニカムセグメント接合体11の未研削領域25の、第2端部15側の一部」を研削する際には、研削加工部材1の中心軸と、ハニカムセグメント接合体11の中心軸とを平行にした状態とした。更に、研削加工部材1を、ハニカムセグメント接合体11の第2端部15から第1端部14に向けて移動させる際には、ハニカムセグメント接合体を、中心軸を中心にして回転させた。そして、それとともに、研削加工部材を、中心軸を中心にして回転させながら移動させた。このとき、研削加工部材1の中心軸と、ハニカムセグメント接合体11の中心軸とが、平行な状態となるようにした。
【0080】
次に、中央研削面形成工程を行った。研削加工部材1を、ハニカムセグメント接合体11の中心軸に平行に移動させて、「研削加工部材1の砥石部3で、ハニカムセグメント接合体11の外周部分の残存未研削領域26を研削した。研削加工部材1を、ハニカムセグメント接合体11の中心軸に平行に移動させる際には、ハニカムセグメント接合体11を、中心軸を中心にして回転させるとともに、研削加工部材1を中心軸を中心にして回転させながら移動させた。このとき、研削加工部材1の中心軸と、ハニカムセグメント接合体11の中心軸とが、平行な状態となるようにした。これにより、「第1テーパー部22のテーパー面である第1テーパー面31、及び第2テーパー部24のテーパー面である第2テーパー面32」に直接接する中央研削面33を形成した。そして、これにより、
図8に示されるような、円
柱状のハニカム基材42とリング状凸部43とを備えたハニカム構造体41を作製した。
【0081】
研削加工部材1は、
図1〜3に示されるように、円板状の円板部2と円板部2の外周に配設されたリング状の砥石部3とを備えるものとした。更に、研削加工部材1は、砥石部3が、「外周面4、第1の砥石テーパー面5及び第2の砥石テーパー面6」を有するものとした。外周面4は、中心軸(研削加工部材1の中心軸)に平行に形成された、外周部分に形成された面であった。また、第1の砥石テーパー面5は、砥石部3における、「中心軸方向aにおける一方の端部に先端の外径が小さくなるようにテーパー状に形成された面」であった。また、第2の砥石テーパー面6は、砥石部3における、「中心軸方向aにおける他方の端部に先端の外径が小さくなるようにテーパー状に形成された面」であった。
【0082】
第1研削領域形成工程、第2研削領域形成工程及び中央研削面形成工程において、研削加工部材の回転数は6600rpmであった。また、ハニカムセグメント接合体の回転数は200rpmであった。また、ハニカムセグメント接合体を研削する際の、研削加工部材の移動速度(送り速度(平坦部))は、250mm/分とした。尚、表1において、「送り速度(平坦部)」は、第1研削領域、第2研削領域及び中央研削面(ハニカムセグメント接合体の中心軸に平行な面)を形成する際の、研削加工部材の移動速度を意味する。また、第1研削領域形成工程、第2研削領域形成工程及び中央研削面形成工程の「合計時間」は、45秒であった。また、研削加工部材の、砥石幅Waは30mmであり、テーパー幅Wbは10mmであり、外周幅Wcは10mmであった。また、研削加工部材の、砥石端面径方向長さ(砥石径方向長さ)dは、3mmであった。
【0083】
得られたハニカム構造体41は、複数のセラミックハニカムセグメント12の側面同士が、接合部16によって接合された構造である。リング状凸部43は、ハニカム基材42の外周を取り囲むとともにハニカム基材42の外周から外側に向かって鍔状に突出し、「第1テーパー面31、第2テーパー面32及び中央研削面33」を有するものである。ハニカム基材42の「中心軸に直交する断面」の形状は、円形であった。また、リング状凸部43の「中心軸に直交する断面」における中央研削面33の形状は、円形であった。
【0084】
また、得られたハニカム構造体は、セルの延びる方向(中心軸方向)における長さが150mmであり、両端面の直径が120mmであった。また、ハニカム構造体の、「セルの延びる方向に直交するとともに、リング状凸部の中央研削面を切断する」断面の直径が、130mmであった。また、リング状凸部の中央研削面の、「セルの延びる方向」における長さが30mmであった。また、リング状凸部は、ハニカム基材の「セルの延びる方向における中央部」に形成した。また、リング状凸部の厚さ(径方向における長さ)は5mmであった。
【0085】
得られたハニカム構造体について、以下に示す方法で研削面(研削によって形成された面であって、ハニカム基材の側面(リング状凸部を除く部分))の「輪郭度」の評価を行った。結果を表1に示す。また、以下に示す方法で「砥石寿命試験」を行った。
【0086】
(面の輪郭度)
ダイヤルゲージ(ミツトヨ社製、商品名:2046S)を用いて測定した。具体的には、ハニカム構造体の片方の端部からリング状凸部の付け根部分まで、ダイヤルゲージのプローブを、中心軸方向に平行にハニカム基材の側面に沿って走査させた。リング状凸部の付け根部分は、リング状凸部とハニカム基材の側面との境界部分のことである。ハニカム構造体の端部での測定値を基準値として当該「端部」においての読取り値を0に設定し、測定後に測定値の最大値から最小値を差し引く事で輪郭度(mm)を求めた。
【0087】
(砥石寿命試験)
同一の研削加工部材を用いて、「ハニカムセグメント接合体を研削してハニカム構造体を作製する操作」を1000回繰り返して、1000個のハニカム構造体を作製する。1000個のハニカム構造体を作製した後の研削加工部材の状態を観察する。砥石端面径方向長さdが1mm以上確保できていれば「長寿命」であるとする。砥石端面径方向長さdが1mm未満であれば「短寿命」とする。磨耗により砥石端面径方向長さdが0mmとなった場合は、砥石端面径方向長さdが1mm未満に含まれる。
【0088】
【表1】
【0089】
(実施例2〜9)
研削加工部材でハニカムセグメント接合体を研削する際の条件を、表1に示されるように変化させた以外は実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。得られたハニカム構造体について、上記方法で「面の輪郭度」の評価を行った。結果を表1に示す。
【0090】
(比較例1)
研削加工部材を、テーパーが形成されていないものに変更し、ハニカム構造体(ハニカムセグメント接合体)の第1テーパー面及び第2テーパー面を、研削加工部材を斜めに移動させながら形成した以外は実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。ここで、「研削加工部材を斜めに移動させる」とは、研削加工部材を、ハニカムセグメント接合体の中心軸に対して平行ではない方向に、移動させることを意味する。つまり、「研削加工部材を斜めに移動させる」とは、「研削加工部材の移動方向が、ハニカムセグメント接合体の中心軸方向に対して、斜め方向(作製するテーパー形状に沿った方向)になる」ように研削加工部材を移動させることを意味する。研削加工部材としては、砥石幅Wa(外周幅W
c)が20mm、砥石端面径方向長さdが5mmの円柱状の砥石を用いた。また、第1テーパー面及び第2テーパー面を形成する際には、研削加工部材を、「ハニカムセグメント接合体の中心軸」の延びる方向とは異なる方向に移動させ(斜めに移動させ)、研削加工部材の角部で第1テーパー面及び第2テーパー面を形成した。
【0091】
研削加工部材を斜めに移動させて第1テーパー面及び第2テーパー面を形成する際の、研削加工部材の移動速度(送り速度(テーパー部))は、20mm/分とした。尚、研削加工部材を斜めに移動させる際の「送り速度(テーパー部)」は、研削加工部材の移動方向(送り方向)における速度である。また、第1研削領域形成工程、第2研削領域形成工程及び中央研削面形成工程の「合計時間」は、95秒であった。
【0092】
得られたハニカム構造体について、上記方法で「面の輪郭度」の評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
表1より、実施例1〜4においては、得られたハニカム構造体の「面の輪郭度」が良好であり、良好な研削結果が得られた。また、実施例1においては、「砥石寿命試験」においても、「長寿命」という結果が得られた。
【0094】
また、表1より、実施例5においては、砥石幅Waが短いため、得られたハニカム構造体の「面の輪郭度」が若干低下し、研削面に「らせん状」の削り残しが若干発生した。実施例6においては、テーパー幅Wbが小さいため、第1の砥石テーパー面及び第2の砥石テーパー面が、若干小さくなった。それにより、
図9に示されるように、得られたハニカム構造体45のテーパー面を形成すべきであった箇所の一部に、小さな段状の削り残し44が形成された。段状の削り残し44は、テーパー状ではなく、ハニカム構造体45の端面に平行な面を有する形状であった。また、ハニカム構造体の研削面の「輪郭度」も若干低下した。ここで、
図9は、実施例6において作製されたハニカム構造体45を模式的に示す側面図である。
【0095】
また、表1より、実施例7においては、テーパー幅Wbが大きく、外周幅Wcが小さいため、得られたハニカム構造体の「面の輪郭度」が若干低下し、研削面に「らせん状」の削り残しが若干発生した。実施例8においては、砥石端面径方向長さdが若干長いため、研削加工部材の剛性が若干低下し、安定した研削をし難くなり、得られたハニカム構造体の「面の輪郭度」が若干低下した。実施例9においては、砥石幅Waが若干大きいため、研削加工部材の質量が若干大きくなり、研削加工部材の回転中の振動が若干増大し、得られたハニカム構造体の「面の輪郭度」が若干低下した。
【0096】
また、表1より、比較例1においては、研削加工部材を斜めに移動させながら第1テーパー面及び第2テーパー面を形成したため、研削加工部材の移動速度が遅くなり、「合計時間」が長くなった。また、得られたハニカム構造体の第1テーパー面及び第2テーパー面の「面の輪郭度」も悪くなった。