特許第5684209号(P5684209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5684209
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】バスドラム用リフター及びバスドラム
(51)【国際特許分類】
   G10D 13/02 20060101AFI20150219BHJP
   G10G 5/00 20060101ALI20150219BHJP
【FI】
   G10D13/02 B
   G10G5/00
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-215833(P2012-215833)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-71196(P2014-71196A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2014年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000195018
【氏名又は名称】星野楽器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 尚樹
【審査官】 大野 弘
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02563346(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0174732(US,A1)
【文献】 特開2006−047976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10G 5/00
G10D 13/00
G10D 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスドラムの打面ヘッド付近とペダル装置とに接続され、前記バスドラムの打面ヘッド付近をリフトアップするバスドラム用リフターであって、
前記バスドラムに接続されるドラム接続部材と、
前記バスドラムをリフトアップするリフトアップ部を含むペダル接続部材と、
前記ペダル接続部材と前記ドラム接続部材とを回動可能に連結する軸とを備え、
前記ペダル接続部材は、前記軸を中心に、前記バスドラムのシェル近傍である収納位置と、前記リフトアップ部により前記バスドラムをリフトアップする使用位置との間で回動可能であり、
前記シェルの開口端には、前記打面ヘッドと共にフープが装着され、
前記軸は、前記シェル近傍であって前記打面ヘッド近傍に配置されると共に、前記シェルの軸線方向において前記フープと重なる位置に配置されていることを特徴とするバスドラム用リフター。
【請求項2】
請求項記載のバスドラム用リフターにおいて、
前記ペダル接続部材を前記使用位置に配置した状態で、前記ペダル接続部材の端面を、前記ペダル装置に面する前記フープの端面と同一面上に配置可能としたことを特徴とするバスドラム用リフター。
【請求項3】
請求項1又は2記載のバスドラム用リフターにおいて、
前記ペダル接続部材は、前記ペダル装置に接続されるペダル接続部と、前記リフトアップ部に対して前記ペダル接続部と反対側に突出部とを備えていることを特徴とするバスドラム用リフター。
【請求項4】
請求項記載のバスドラム用リフターにおいて、
前記突出部には、切欠が設けられ、前記ペダル接続部材を収納位置に配置したときに前記ドラム接続部材の一部が前記切欠内に配置されることを特徴とするバスドラム用リフター。
【請求項5】
請求項1〜のうちいずれか一項に記載のバスドラム用リフターにおいて、
前記リフトアップ部と前記ドラム接続部材との連結部には、前記ペダル接続部材が使用位置を越えて回動することを規制する回動規制手段が設けられ、
前記回動規制手段は、前記ドラム接続部材に前記リフトアップ部を当接させることで、前記ペダル接続部材の回動を規制することを特徴とするバスドラム用リフター。
【請求項6】
請求項1〜のうちいずれか一項に記載のバスドラム用リフターにおいて、
前記ドラム接続部材は、前記バスドラムに固定されるベースと、前記リフトアップ部に連結されると共に前記ベースを前後方向へ移動可能に支持するリテーナとを備え、前記ベースに対し前記リテーナを移動させることで、前記バスドラムに対する前記ペダル装置の位置が変更可能であることを特徴とするバスドラム用リフター。
【請求項7】
請求項記載のバスドラム用リフターにおいて、
前記リテーナは、前記ベースに対して着脱可能であることを特徴とするバスドラム用リフター。
【請求項8】
バスドラムの打面ヘッド付近をリフトアップするバスドラム用リフターを備えたバスドラムであって、前記バスドラム用リフターは前記バスドラムの打面ヘッド付近とペダル装置とに接続されて使用されるバスドラムであって、前記バスドラム用リフターは、
前記バスドラムに接続されるドラム接続部材と、
前記バスドラムをリフトアップするリフトアップ部を含むペダル接続部材と、
前記ペダル接続部材のリフトアップ部と前記ドラム接続部材とを回動可能に連結する軸とを備え、
前記ペダル接続部材は、前記軸を中心に、前記バスドラムのシェル近傍である収納位置と、前記リフトアップ部により前記バスドラムをリフトアップする使用位置との間で回動可能であり、
前記シェルの開口端には、前記打面ヘッドと共にフープが装着され、
前記軸は、前記シェル近傍であって前記打面ヘッド近傍に配置されると共に、前記シェルの軸線方向において前記フープと重なる位置に配置されていることを特徴とするバスドラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスドラムの打面ヘッド付近をリフトアップするために用いられるバスドラム用リフター、及びバスドラム用リフターを備えたバスドラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、小口径バスドラムは、打面ヘッドの中心をビータが叩打するように、バスドラムの打面ヘッド付近をリフトアップして演奏される。この場合、バスドラムの打面ヘッド付近をリフトアップするための器具として、バスドラム用リフターが使用される。バスドラム用リフターの具体例として、例えば、特許文献1,2に開示されるようなものが提案されている。
【0003】
特許文献1に開示のバスドラム用リフター100は、図8に示すように、バスドラムのシェルSに接続されるリテーナ101と、ペダル装置Pに接続されるベース102と、リテーナ101及びベース102を回動可能に連結するシャフト103とを備えている。この文献に開示のバスドラム用リフター100は、ベース102を床面F上に配置すると共にベース102の先端をペダル装置Pに接続して使用される。一方、バスドラム用リフター100の非使用時には、図8の二点鎖線で示すように、バスドラム用リフター100からペダル装置Pを取り外した後、ベース102をシャフト103の軸線周りに回動させて、シェルS近傍の収納位置に配置する。
【0004】
また、特許文献2に開示のバスドラム用リフター110は、図9に示すように、シェルSに接続されるヒンジ111と、ヒンジ111の金属片に固定される脚112と、脚112の下端に設けられるベース113とを備えている。この文献に開示のバスドラム用リフター110は、脚112をヒンジ軸111aの軸線周りに回動させることにより、図9の二点鎖線で示す使用時の形態と、図9の実線で示す非使用時の形態とを取り得る。
【0005】
特許文献1,2に開示のバスドラム用リフター100,110は、ベース102や脚112を収納位置に配置することで、コンパクトに折り畳まれる。バスドラム用リフター100,110は折り畳まれた状態で、バスドラムに取り付けられたまま保管されたり、持ち運ばれたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−047976号公報
【特許文献2】米国特許第2563346号明細書
【発明の概要】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2に開示のバスドラム用リフター100,110には、以下のような問題がある。特許文献1に開示のバスドラム用リフター100の場合、リテーナ101は、シェルSの外周面に固定される載置部101aと、載置部101aの両側部のそれぞれから下方に突出する一対の接続部101bとを備えている。シャフト103は、両接続部101bの下端付近に取り付けられている。このため、図8の二点鎖線で示すように、ベース102が収納位置に配置されても、ベース102は接続部101の下端付近を中心に回動するだけであり、バスドラム用リフター100の上下方向の寸法はそれほど小さくならない。よって、バスドラム用リフター100をコンパクトに折り畳むことができない。
【0008】
また、特許文献2に開示のバスドラム用リフター110の場合、ヒンジ軸111aは、打面ヘッドDHから後方に離れて配置されている。上記構成によれば、脚112を使用位置に配置したときのベース113の前後方向の寸法は、ペダル装置Pとの連結位置及びヒンジ軸111a間の距離dに基づいて長めに設定されている。このため、図9の実線で示すように、脚112が収納位置に配置されても、ベース113の寸法が長いために、バスドラム用リフター110の上下方向の寸法はそれほど小さくならない。よって、特許文献1に開示の構成と同様に、バスドラム用リフター110をコンパクトに折り畳むことができない。
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、コンパクトに折り畳むことのできるバスドラム用リフター及びバスドラム用リフターを備えたバスドラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、バスドラムの打面ヘッド付近とペダル装置とに接続され、バスドラムの打面ヘッド付近をリフトアップするバスドラム用リフターであって、バスドラムに接続されるドラム接続部材と、バスドラムをリフトアップするリフトアップ部を含むペダル接続部材と、ペダル接続部材とドラム接続部材とを回動可能に連結する軸とを備え、ペダル接続部材は、軸を中心に、バスドラムのシェル近傍である収納位置と、リフトアップ部によりバスドラムをリフトアップする使用位置との間で回動可能であり、シェルの開口端には、打面ヘッドと共にフープが装着され、軸は、シェル近傍であって打面ヘッド近傍に配置されると共に、シェルの軸線方向においてフープと重なる位置に配置されていることを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、ペダル接続部材が軸周りに回動すると共に、ペダル接続部材の回動中心がバスドラムのシェル近傍であって打面ヘッド近傍に配置されている。この場合、ペダル接続部材がバスドラムのシェル近傍を中心に回動することにより、バスドラム用リフターを、その上下方向の寸法を小さくしてコンパクトに折り畳むことができる。また、ペダル接続部材の回動中心を打面ヘッド近傍に配置することにより、ペダル接続部材を使用位置に配置したときの前後方向の寸法を小さくすることもできる。これにより、ペダル接続部材を収納位置に配置したときの上下方向の寸法が小さく抑えられる。また、この構成によれば、軸をシェルの軸線方向においてフープと重なる位置に配置することにより、ペダル接続部の回動中心を打面ヘッド近傍に配置することができる。これにより、ペダル接続部材を使用位置に配置したときの前後方向の寸法を、より小さくすることができる。よって、バスドラム用リフターが折り畳まれたときの上下方向の寸法を、より小さくすることができる。
【0014】
請求項に記載の発明は、請求項記載の発明において、ペダル接続部材を使用位置に配置した状態で、ペダル接続部材の端面を、ペダル装置に面するフープの端面と同一面上に配置可能としたことを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、ペダル接続部材の端面をフープの端面と同一面上に配置することにより、ペダル接続部材を使用位置に配置したときの前後方向の寸法を、より一層小さくすることができる。よって、バスドラム用リフターが折り畳まれたときの上下方向の寸法を、より一層小さくすることができる。
【0016】
請求項に記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、ペダル接続部材は、ペダル装置に接続されるペダル接続部と、リフトアップ部に対してペダル接続部と反対側に突出部とを備えていることを要旨とする。
【0017】
この構成によれば、例えば、ペダル接続部材にペダル装置を接続する場合、突出部が床面に当接されるため、バスドラム用リフターを倒れ難くすることができる。これにより、ペダル接続部材を使用位置に保持し易くなるため、バスドラム用リフターにペダル装置を接続するための作業が容易に行える。
【0018】
請求項に記載の発明は、請求項記載の発明において、突出部には、切欠が設けられ、ペダル接続部材を収納位置に配置したときにドラム接続部材の一部が切欠内に配置されることを要旨とする。
【0019】
この構成によれば、ペダル接続部材を収納位置に配置したとき、ドラム接続部材の一部を突出部の切欠内に配置することができる。これにより、ペダル接続部材とドラム接続部材とを干渉させることなく、バスドラム用リフターを、より一層コンパクトに折り畳むことができる。
【0020】
請求項に記載の発明は、請求項1〜のうちいずれか一項に記載の発明において、リフトアップ部とドラム接続部材との連結部には、ペダル接続部材が使用位置を越えて回動することを規制する回動規制手段が設けられ、回動規制手段は、ドラム接続部材にリフトアップ部を当接させることで、ペダル接続部材の回動を規制することを要旨とする。
【0021】
この構成によれば、例えば、バスドラムを演奏する場合、ドラム接続部材の端面にリフトアップ部が当接されてペダル接続部材の回動が規制されることで、バスドラム用リフターを倒れ難くすることができる。これにより、バスドラム用リフターによってリフトアップされたバスドラムの姿勢を安定化させることができる。
【0022】
請求項に記載の発明は、請求項1〜のうちいずれか一項に記載の発明において、ドラム接続部材は、バスドラムに固定されるベースと、リフトアップ部に連結されると共にベースを前後方向へ移動可能に支持するリテーナとを備え、ベースに対しリテーナを移動させることで、バスドラムに対するペダル装置の位置が変更可能であることを要旨とする。
【0023】
この構成によれば、演奏者は、ベースに対しリテーナを移動させることで、バスドラムに対するペダル装置の位置を変更することができる。よって、バスドラムのサイズや演奏者の好みに応じて、バスドラムに対するペダル装置の位置を自由に調節することができる。
【0024】
請求項に記載の発明は、請求項に記載の発明において、リテーナは、ベースに対して着脱可能であることを要旨とする。
この構成によれば、リテーナをペダル接続部材と共にベースから取り外すことができる。これにより、バスドラムの打面ヘッド付近をリフトアップしないで、バスドラムのフープ等にペダル装置を連結することもできる。よって、バスドラムのサイズや演奏者の好みに応じて、バスドラム用リフターの使い方のバリエーションを広げることができる。
【0027】
請求項に記載の発明は、バスドラムの打面ヘッド付近をリフトアップするバスドラム用リフターを備えたバスドラムであって、バスドラム用リフターはバスドラムの打面ヘッド付近とペダル装置とに接続されて使用されるバスドラムであって、バスドラム用リフターは、バスドラムに接続されるドラム接続部材と、バスドラムをリフトアップするリフトアップ部を含むペダル接続部材と、ペダル接続部材のリフトアップ部とドラム接続部材とを回動可能に連結する軸とを備え、ペダル接続部材は、軸を中心に、バスドラムのシェル近傍である収納位置と、リフトアップ部によりバスドラムをリフトアップする使用位置との間で回動可能であり、シェルの開口端には、打面ヘッドと共にフープが装着され、軸は、シェル近傍であって打面ヘッド近傍に配置されると共に、シェルの軸線方向においてフープと重なる位置に配置されていることを要旨とする。
【0028】
この構成によれば、請求項1に記載の発明と同等の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、コンパクトに折り畳むことのできるバスドラム用リフター及びバスドラム用リフターを備えたバスドラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係るバスドラム用リフターを用いてバスドラムをリフトアップした状態を示す側面図。
図2】バスドラム用リフターの斜視図。
図3】バスドラム用リフターの分解斜視図。
図4】バスドラム用リフターのペダル接続部材とペダル装置との接続部分を拡大して示す部分側面図。
図5】ペダル接続部材の切欠内にドラム接続装置の一部が配置された状態を示す部分正面図。
図6】別例のバスドラム用リフターを示す斜視図。
図7】別例のバスドラム用リフターを示す斜視図。
図8】従来のバスドラム用リフターを用いてバスドラムをリフトアップした状態を示す部分側面図。
図9】従来のバスドラム用リフターであって非使用時の形態を示す部分側面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係るバスドラム用リフターを具体化した一実施形態について、図1図5を参照して説明する。尚、バスドラム用リフターを説明するに際し、縦方向及び横方向を、図2に示すようにそれぞれ定義する。
【0032】
図1に示すように、バスドラム10は、円筒状のシェル11と、シェル11の両開口端を塞ぐ一対のドラムヘッドと、シェル11の開口端に対しドラムヘッドと共に装着される一対のフープ12と、シェル11の外周面に取着された一対のスパイク付脚13及びバスドラム用リフター20とを備えている。スパイク付脚13は、一対のドラムヘッドのうちのフロントヘッド14付近に配置されている。バスドラム用リフター20は、一対のドラムヘッドのうちの打面ヘッド15付近に配置されている。バスドラム10は、通常のバスドラムよりも口径の小さい小口径のバスドラムである。バスドラム10は、フロントヘッド14付近をスパイク付脚13によりリフトアップし、打面ヘッド15付近をバスドラム用リフター20によりリフトアップした状態で、床面F上に設置されている。バスドラム用リフター20は、バスドラム10及びペダル装置Pに接続された状態で使用される。
【0033】
バスドラム用リフター20は、ペダル接続部材22、ドラム接続部材23、及び軸としての長ねじ25を備えている。ペダル接続部材22は、ペダル装置Pのクランプにより挟持されて、ペダル装置Pの前部に接続される。ドラム接続部材23は、シェル11の外周面に対して下方から接続される。長ねじ25は、ペダル接続部材22とドラム接続部材23とを回動可能に連結するための軸として機能する。
【0034】
図2及び図3に示すように、ペダル接続部材22は、バスドラム10をリフトアップするリフトアップ部26と、ペダル装置Pに接続されるペダル接続部27と、床面Fに当接される突出部28とを備えている。ペダル接続部材22は、金属製の板材を所定の形状に打ち抜いた後、中央部分を残りの部分に対して直角に折り曲げることにより形成されている。
【0035】
リフトアップ部26の両側端のそれぞれには、ドラム接続部材23に連結される連結片29が一つずつ設けられている。各連結片29は、リフトアップ部26の両側端を直角に折り曲げて形成されている。各連結片29の中央には、長ねじ25が挿通される孔29aが形成されている。ペダル接続部27には、横方向に延びる凸部27aが形成されている。凸部27aは、ペダル装置Pのクランプにより挟持される際に平板状のペダル接続部27を補強する。また、凸部27aを含むペダル接続部27の厚さは、打面ヘッド15付近をリフトアップしないときクランプにより把持されるフープ12と同じ厚さに設定されている。
【0036】
突出部28は、ペダル接続部27の両側縁から突出する部分からなる。突出部28は、リフトアップ部26に対してペダル接続部27と反対側に突出している。突出部28には、リフトアップ部26よりも少し幅の広い長方形状の切欠28aが形成されている。切欠28aは、金属製の板材の中央部分を直角に折り曲げることで残りの部分に形成された凹部からなる。
【0037】
ドラム接続部材23は、複数の部品を組み付けて構成されている。即ち、ドラム接続部材23は、リフトアップ部26に連結されるリテーナ30と、リテーナ30上に配置されるベース33と、バックプレート34及びナットプレート35とから構成されている。リテーナ30は、縦方向に延びると共に、略U字状の断面を有している。リテーナ30の両側端のそれぞれには、ペダル接続部材22に連結される連結片31が一つずつ設けられている。各連結片31の中央には、長ねじ25が挿通される孔31aが形成されている。リテーナ30の中央には、縦方向に沿って延びる長孔30aが形成されている。
【0038】
リテーナ30上には、ベース33が、長孔30aに沿って摺動可能に支持されている。ベース33は、横方向に延びると共に、略U字状の断面を有している。ベース33は、リテーナ30の上面に配置される中央部と、シェル11に固定される一対の固定部37とを備えている。中央部は、リテーナ30の長孔30aと対応する位置に一対の挿通孔36aを有している。各固定部37には、ゴム製の緩衝カバー43が、固定部37のシェル11に対向する面を覆うように取り付けられている。固定部37及び緩衝カバー43の各中央には、挿通孔37a,43aがそれぞれ形成されている。
【0039】
図3及び図5に示すように、バックプレート34は、横方向に延びると共に、シェル11の内周面に沿って湾曲している。バックプレート34は、固定部37の挿通孔37aと対応する位置に一対の挿通孔34aを有している。バックプレート34は、緩衝カバー43との間にシェル11を挟持するようにしてシェル11の内周面に配置される。バスドラム用リフター20をシェル11に固定するため、一対の固定ネジ38が、シェル11の外側から、ベース33、緩衝カバー43及びバックプレート34の各挿通孔37a,43a,34aに挿通される。両固定ネジ38の先端にナット39が締め付けられることで、バスドラム用リフター20がシェル11に固定される。
【0040】
ナットプレート35は、縦方向に延びる長方形状に形成されている。ナットプレート35は、ベース33の挿通孔36aと対応する位置に一対のネジ孔35aを有している。両ネジ孔35aには、一対のボルト40が、リテーナ30の裏面側から螺着されている。即ち、ボルト40は、リテーナ30の長孔30a及びベース33の挿通孔を通過してネジ孔35aに螺着されている。ネジ孔35aに螺着されたボルト40を緩めることで、ベース33がリテーナ30の長孔30aに沿って摺動可能となる。この場合、バスドラム10に固定されたベース33に対しリテーナ30を摺動させることで、バスドラム10に対するペダル装置Pの位置が変更される。一方、ネジ孔35aに螺着されたボルト40を締め付けることで、ベース33がリテーナ30の長孔30aに固定されて、バスドラム10に対するペダル装置Pの位置が固定される。
【0041】
長ねじ25は、リテーナ30の両連結片31をリフトアップ部26の両連結片29間に配置した状態で、両連結片31,29の孔31a,29aを貫通するように配置されている。長ねじ25の先端には、六角ナット41が螺着されている。また、連結片29と連結片31との間には、樹脂製のフランジ付カラー42がそれぞれ一つずつ装着されている。長ねじ25は、六角ナット41に対し一定のトルクで締め付けられている。これにより、両連結片29,31間でフランジ付カラー42が押し潰されて、ドラム接続部材23に対するペダル接続部材22の連結トルクが所定の大きさに維持されている。尚、長ねじ25の締付トルク、即ちペダル接続部材22の連結トルクは、ドラム接続部材23に対してペダル接続部材22が勝手に開かずかつ使用者が無理なくペダル接続部材22を回動操作できる大きさに設定されている。
【0042】
図1に示すように、バスドラム用リフター20をバスドラム10に接続した状態で、ペダル接続部材22は、バスドラム10のシェル11近傍である収納位置と、リフトアップ部26によりバスドラム10をリフトアップする使用位置との間を回動可能である。図2及び図3に示すように、リフトアップ部26とドラム接続部材23との連結部には、ペダル接続部材22が使用位置を越えて回動することを規制する回動規制手段45が設けられている。回動規制手段45は、リテーナ30の端面30bにリフトアップ部26の裏面26aを当接させることでペダル接続部材22の回動を規制する。即ち、回動規制手段45は、ペダル接続部材22がドラム接続部材23に対して略直角に開いた状態よりも更に開くことを規制する。
【0043】
また、リテーナ30は、ベース33に対して着脱可能である。具体的には、両ボルト40をナットプレート35から抜き出すことで、リテーナ30がペダル接続部材22と共にベース33から取り外される。これとは逆に、両ボルト40をナットプレート35のネジ孔35aに締め付けることで、リテーナ30がペダル接続部材22と共にベース33に取り付けられる。
【0044】
上述したように、長ねじ25の軸線は、ペダル接続部材22がドラム接続部材23に対し回動するときの回動中心に一致する。本実施形態によれば、バスドラム用リフター20をコンパクトに折り畳むことができるように、ペダル接続部材22の回動中心、即ち、長ねじ25の位置が以下のように設定されている。
【0045】
図4に示すように、長ねじ25は、シェル11近傍であって打面ヘッド15近傍に配置されている。長ねじ25は、シェル11の軸線方向においてフープ12と重なる位置に配置されている。また、ペダル接続部材22を使用位置に配置した状態で、ペダル接続部材22の端面22aは、ペダル装置Pに面するフープ12の端面12aと同一面上に配置可能となっている。
【0046】
ペダル接続部材22の端面22aをフープ12の端面12aと同一面上に配置可能とするため、リテーナ30の裏面には、マークが刻印されている。マークは、長孔30aと直交する線分からなり、一対のボルト40に対応して2箇所設けられている。バスドラム用リフター20をペダル装置Pに接続する際、まず、両ボルト40を対応するマークに一致させてから、ネジ孔35aに締め付ける。これにより、ベース33に対して、リテーナ30が初期位置に固定される。この状態でペダル接続部材22を使用位置に配置してペダル装置Pに接続すれば、ペダル接続部材22の端面22aが、フープ12の端面12aと同一面上に配置される。尚、ネジ孔35aに螺着されたボルト40を緩めることで、ベース33に対してリテーナ30が摺動可能となり、ペダル装置Pの前後方向の位置が変更可能となる。
【0047】
次に、上記のバスドラム用リフター20の作用を説明する。
図1に示すように、バスドラム用リフター20は、ペダル接続部材22を長ねじ25の軸線周りに回動させることにより、二点鎖線で示す非使用時の形態と、実線で示す使用時の形態とを取り得る。バスドラム用リフター20の使用時には、まず、ドラム接続部材23に対してペダル接続部材22を開く。そして、ペダル接続部材22を使用位置に固定し、バスドラム用リフター20にペダル装置Pを接続する。一方、バスドラム用リフター20の非使用時には、まず、バスドラム用リフター20からペダル装置Pを取り外す。次に、ドラム接続部材23に対してペダル接続部材22を閉じる。そして、ペダル接続部材22を収納位置に固定する。こうして、バスドラム用リフター20は、バスドラムに取り付けられたまま折り畳まれて保管されたり、持ち運ばれたりする。
【0048】
この場合、図4に示すように、ペダル接続部材22がシェル11近傍を中心に回動するため、バスドラム用リフター20を、その上下方向の寸法hを小さくしてコンパクトに折り畳むことができる。また、ペダル接続部材22の回動中心を打面ヘッド15近傍に配置したため、ペダル接続部材22を使用位置に配置したときの前後方向の寸法dを小さくすることもできる。この場合、ペダル接続部材22を収納位置に配置したときの上下方向の寸法hが小さく抑えられる。これにより、バスドラム用リフター20が折り畳まれたときの上下方向の寸法hを更に小さくすることができる。また、この場合、図5に示すように、ペダル接続部材22を収納位置に配置したときには、ドラム接続部材23を構成するリテーナ30の全体が、ペダル接続部材22の切欠28a内に配置される。これにより、ペダル接続部材22とドラム接続部材23とを干渉させることなく、バスドラム用リフター20を、より一層コンパクトに折り畳むことができる。
【0049】
従って、本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)長ねじ25は、シェル11近傍であって打面ヘッド15近傍に配置されている。この構成によれば、ペダル接続部材22が、シェル11近傍を中心に回動する。これにより、バスドラム用リフター20を、その上下方向の寸法hを小さくしてコンパクトに折り畳むことができる。また、ペダル接続部材22の回動中心を打面ヘッド15近傍に配置することにより、ペダル接続部材22を使用位置に配置したときの前後方向の寸法dを小さくすることもできる。この場合、ペダル接続部材22を収納位置に配置したときの上下方向の寸法hが小さく抑えられる。これにより、バスドラム用リフター20が折り畳まれたときの上下方向の寸法hを更に小さくすることができる。
【0050】
(2)長ねじ25は、シェル11の軸線方向においてフープ12と重なる位置に配置されている。この構成によれば、ペダル接続部27の回動中心を打面ヘッド15近傍に配置することができる。これにより、ペダル接続部材22を使用位置に配置したときの前後方向の寸法dを、より小さくすることができる。よって、バスドラム用リフター20が折り畳まれたときの上下方向の寸法hを、より小さくすることができる。
【0051】
(3)ペダル接続部材22を使用位置に配置した状態で、ペダル接続部材22の端面22aは、ペダル装置Pに面するフープ12の端面12aと同一面上に配置可能となっている。この構成によれば、ペダル接続部材22を使用位置に配置したときの前後方向の寸法dを、より一層小さくすることができる。よって、バスドラム用リフター20が折り畳まれたときの上下方向の寸法hを、より一層小さくすることができる。
【0052】
また、ペダル接続部材22の端面22aがフープ12の端面12aと同一面上に配置されることで、打面ヘッド15付近をリフトアップしないときもリフトアップするときも、ペダル装置Pの前後方向の位置が同じになる。これにより、打面ヘッド15付近をリフトアップしないときもリフトアップするときも、打面ヘッド15を叩打するときのビータの角度を同じにすることができる。このため、演奏者は、大口径のバスドラムのときと同じ感覚で、小口径のバスドラム10を演奏することができる。
【0053】
(4)ペダル接続部材22は、床面Fに当接される突出部28を備えている。突出部28は、リフトアップ部26に対してペダル接続部27と反対側に突出している。この構成によれば、例えば、ペダル接続部材22にペダル装置Pを接続する場合、突出部28が床面Fに当接されることによって、バスドラム用リフター20を倒れ難くすることができる。これにより、ペダル接続部材22を使用位置に保持し易くなるため、バスドラム用リフター20にペダル装置Pを接続するための作業が容易に行える。
【0054】
(5)突出部28には、リフトアップ部26よりも少し幅の広い長方形状の切欠28aが形成されている。この構成によれば、ペダル接続部材22を収納位置に配置したとき、ドラム接続部材23を構成するリテーナ30の全体を切欠28a内に配置することができる。これにより、ペダル接続部材22とドラム接続部材23とを干渉させることなく、バスドラム用リフター20を、より一層コンパクトに折り畳むことができる。
【0055】
(6)リフトアップ部26とドラム接続部材23との連結部には、ペダル接続部材22が使用位置を越えて回動することを規制する回動規制手段45が設けられている。この構成によれば、例えば、バスドラム10を演奏する場合、リテーナ30の端面30bにリフトアップ部26の裏面26aを当接させることで、ペダル接続部材22の回動を規制することができる。これより、バスドラム用リフター20が倒れ難くなるため、バスドラム用リフター20によってリフトアップされたバスドラム10の姿勢を安定化させることができる。
【0056】
(7)ドラム接続部材23は、リフトアップ部26に連結されるリテーナ30と、リテーナ30上に配置されるベース33を備えている。リテーナ30上には、ベース33が、長孔30aに沿って摺動可能に支持されている。この構成によれば、演奏者は、ベース33に対しリテーナ30を摺動させることで、バスドラム10に対するペダル装置Pの位置を変更することができる。よって、バスドラム10のサイズや演奏者の好みに応じて、バスドラム10に対するペダル装置Pの位置を自由に調節することができる。
【0057】
(8)リテーナ30は、ベース33に対し着脱可能に組み付けられている。この構成によれば、リテーナ30を、ペダル接続部材22と共にベース33から取り外すことができる。これにより、バスドラム10の打面ヘッド15付近をリフトアップしないで、バスドラム10のフープ12等にペダル装置Pを連結することもできる。よって、バスドラム10のサイズや演奏者の好みに応じて、バスドラム用リフター20の使い方のバリエーションを広げることができる。
【0058】
なお、本実施形態は、以下のように変更してもよい。
・本実施形態において、長ねじ25の軸線周りにペダル接続部材22を回動させて折り畳むようにしたバスドラム用リフター20を説明したが、これ以外に、図6に示すようなバスドラム用リフター60を採用してもよい。図6に示すように、バスドラム用リフター60は、リフター本体61と、リフター本体61上にベース62と、ナット付プレート63及び緩衝プレート64とを備えている。リフター本体61は、図1に示すバスドラム用リフター20を構成するペダル接続部材22とリテーナ30とを一体形成したものである。図6に示すバスドラム用リフター60は、バスドラム10の打面ヘッド15付近をリフトアップする量が小さい場合に適している。
【0059】
・本実施形態において、リテーナ30の両連結片31をリフトアップ部26の両連結片29間に配置した状態で、長ねじ25を両連結片31,29の孔29a,31aに貫通させたが、リテーナ30の両連結片31とリフトアップ部26の両連結片29との位置関係を逆にしてもよい。即ち、図7に示すように、リフトアップ部76の両連結片79をリテーナ70の両連結片71間に配置した状態で、長ねじ25を両連結片79,71の各孔に貫通させてもよい。この場合、リテーナ70の裏面にリフトアップ部76の端面76aを当接させることで、ペダル接続部材72の回動を規制するようにしてもよい。
【0060】
・本実施形態において、長ねじ25を、シェル11の軸線方向においてフープ12と重なる位置に配置したが、シェル11近傍であって打面ヘッド15近傍であれば、フープ12から前方又は後方に離れた位置に配置してもよい。
【0061】
・本実施形態において、ペダル接続部材22の端面22aを、ペダル装置Pに面するフープ12の端面12aと同一面上に配置したが、フープ12の端面12aから前方又は後方に離れた位置に配置してもよい。
【0062】
・本実施形態において、ペダル接続部材22から突出部28を省略してもよい。
・本実施形態において、突出部28から切欠28aを省略してもよい。
・本実施形態において、ベース33をリテーナ30の長孔30aに沿って摺動させるようにしたが、長孔30aに代えて、複数の取付孔をリテーナ30に形成してもよい。例えば、複数の取付孔を、リテーナ30の長手方向に沿って等間隔に配置してもよい。この構成によれば、演奏者は、ベース33に対するリテーナ30の取付位置を変更することで、バスドラム10に対するペダル装置Pの位置を段階的に調節することができる。
【0063】
・本実施形態において、ベース33をリテーナ30上に固定してもよい。つまり、バスドラム10に対するペダル装置Pの位置を調節するための機能を、バスドラム用リフター20から省略してもよい。
【0064】
・本実施形態において、リテーナ30をベース33に対し着脱可能とするための機能を、バスドラム用リフター20から省略してもよい。
・本実施形態において、ペダル接続部材22とドラム接続部材23とを回動可能に連結するための軸として機能するのであれば、長ねじ25に代えて、ネジ未加工品としての軸を用いてもよい。
【符号の説明】
【0065】
P…ペダル装置、10…バスドラム、11…シェル、12…フープ、12a…端面、15…打面ヘッド、20…バスドラム用リフター、22…ペダル接続部材、23…ドラム接続部材、25…長ねじ(軸)、26…リフトアップ部、27…ペダル接続部、28…突出部、28a…切欠、30…リテーナ、33…ベース、45…回動規制手段。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9