(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5684227
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】ブルームする傾向が低下した熱可塑性ポリウレタン
(51)【国際特許分類】
C08G 18/42 20060101AFI20150219BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20150219BHJP
B29C 47/00 20060101ALI20150219BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20150219BHJP
B29K 75/00 20060101ALN20150219BHJP
【FI】
C08G18/42 Z
C08J5/00CFF
B29C47/00
B29C45/00
B29K75:00
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-500816(P2012-500816)
(86)(22)【出願日】2010年2月25日
(65)【公表番号】特表2012-520927(P2012-520927A)
(43)【公表日】2012年9月10日
(86)【国際出願番号】US2010025301
(87)【国際公開番号】WO2010107562
(87)【国際公開日】20100923
【審査請求日】2013年2月8日
(31)【優先権主張番号】61/161,162
(32)【優先日】2009年3月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506347528
【氏名又は名称】ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100062409
【弁理士】
【氏名又は名称】安村 高明
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ファーカス, ジュリアス
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブス, チャールズ ピー.
【審査官】
赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−183831(JP,A)
【文献】
特開2005−248097(JP,A)
【文献】
特開平08−337629(JP,A)
【文献】
特開2002−201301(JP,A)
【文献】
特開平09−020863(JP,A)
【文献】
特表2012−503051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 75/00−75/16
C08G 18/00−18/87
C08G 71/00−71/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体、(2)ポリイソシアネート、および(3)グリコール鎖伸長剤の反応生成物から構成される熱可塑性ポリウレタンであって;ここで該ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、1,3−プロピレングリコールおよびジカルボン酸から誘導される反復ユニットから構成され;ここで該ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、500〜10,000ダルトンの範囲内である数平均分子量を有し;そしてここで該熱可塑性ポリウレタンは、該ポリイソシアネートおよび該グリコール鎖伸長剤の反応生成物である硬質セグメントを含み、ここで、該ジカルボン酸は、アジピン酸である、熱可塑性ポリウレタン。
【請求項2】
1,3−プロピレングリコールは、前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体の合成において使用される前記グリコール成分の少なくとも70重量%に相当する、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項3】
1,3−プロピレングリコールは、前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体の合成において使用される前記グリコール成分の少なくとも80重量%に相当する、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項4】
1,3−プロピレングリコールは、前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体の合成において使用される前記グリコール成分の少なくとも90重量%に相当する、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項5】
1,3−プロピレングリコールは、前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体の合成において使用される前記グリコール成分の少なくとも95重量%に相当する、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項6】
前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、ポリ(1,3−プロピレンアジペート)グリコールである、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項7】
グリコール鎖伸長剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、およびヒドロキノン ビス(2−ヒドロキシエチル)エーテルからなる群より選択される、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項8】
ポリイソシアネートは、脂肪族ジイソシアネート、および芳香族ジイソシアネートから選択されるジイソシアネートである、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項9】
前記芳香族ポリイソシアネートは、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)、m−キシレンジイソシアネート、フェニレン−1−4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネート、およびトルエンジイソシアネートからなる群より選択され、そして、前記脂肪族ジイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、デカン−1,10−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、および1,6−ヘキサンジイソシアネートからなる群より選択される、請求項8に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項10】
前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、ポリ(1,3−プロピレンアジペート)グリコールであり、ここで前記グリコール鎖伸長剤は、1,4−ブタンジオールであり、前記ポリイソシアネートは、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)である、請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項11】
前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、1000〜4000ダルトンの範囲内である数平均分子量を有する、請求項10に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも100,000ダルトンの重量平均分子量を有し;ここで前記硬質セグメントは、該熱可塑性ポリウレタンの総重量の10重量%〜40重量%に相当する、請求項11に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項13】
押し出し成形物品を製造するためのプロセスであって、該プロセスは、(a)請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン組成物を、該熱可塑性ポリウレタン組成物の融解点より高い温度へと加熱する工程であって、ここで該熱可塑性ポリウレタン組成物は、(1)ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体、(2)ポリイソシアネート、および(3)グリコール鎖伸長剤の反応生成物である、工程であって;ここで該ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、1,3−プロピレングリコールおよびジカルボン酸から誘導される反復ユニットから構成され、ここで、該ジカルボン酸は、アジピン酸であり;ここで該ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、500〜10,000ダルトンの範囲内である数平均分子量を有し;そしてここで該熱可塑性ポリウレタンは、該ポリイソシアネートおよび該グリコール鎖伸長剤の反応生成物である硬質セグメントを含む、工程;(b)該熱可塑性ポリウレタン組成物を、該押し出し成形物品の所望の形状へと押し出す工程;ならびに(c)該熱可塑性ポリウレタン組成物を、該熱可塑性ポリウレタン組成物の融解点より低い温度へと冷却して、該押し出し成形物品を生成する工程、を包含する、プロセス。
【請求項14】
前記押し出し成形物品は、透明フィルム、または透明チューブである、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
請求項1に記載の熱可塑性ウレタンから構成される、透明フィルム、または透明チューブ。
【請求項16】
アッパーおよびソールを有する靴であって、ここで該ソールは、請求項1〜12のいずれか一項に記載の熱可塑性ウレタンから構成される、靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、低下したブルーミング特性を提供する熱可塑性ポリウレタン(TPU)に関する。これら熱可塑性ポリウレタンは、(1)ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体、(2)ポリイソシアネート、および(3)グリコール鎖伸長剤の反応生成物から構成され;ここで上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、1,3−プロピレングリコールおよびジカルボン酸から誘導される反復ユニットから構成され;ここで上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、500〜10,000ダルトンの範囲内である数平均分子量を有し;そしてここで上記熱可塑性ポリウレタンは、ポリイソシアネートおよび上記グリコール鎖伸長剤の反応生成物である硬質セグメントを含む。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
TPUポリマーは、代表的には、(1)ヒドロキシル末端化ポリエーテルもしくはヒドロキシル末端化ポリエステル、(2)鎖伸長剤、および(3)イソシアネート化合物を反応させることによって作製される。上記3種の反応物のうちの各々について、種々のタイプの化合物が、文献中で開示されている。これら3種の反応物から作製される上記TPUポリマーは、生成物が、上記TPUを融解加工処理する工程、およびそれを種々の形状へと形成して、押し出しおよび成形のようなプロセスによって所望の物品を生成する工程によって作製される種々の分野における使用が見いだされる。
【0003】
TPUは、軟質セグメントおよび硬質セグメントを有するセグメント化ポリマーである。この特徴は、それらの優れた弾性特性の原因である。上記軟質セグメントは、上記ヒドロキシル末端化ポリエーテルもしくはポリエステルから誘導され、上記硬質セグメントは、上記イソシアネートおよび上記鎖伸長剤から誘導される。上記鎖伸長剤は、代表的には、種々のグリコールのうちの1種(例えば、1,4−ブタングリコール)である。
【0004】
特許文献1は、ヒドロキシル末端化ポリエーテル、グリコール鎖伸長剤、およびジイソシアネートから作製されるTPUを開示している。このTPUは、繊維、ゴルフボールコア、RV車(recreational wheels)、および他の用途を作製するために有用であると記載されている。
【0005】
ブルーミングは、熱可塑性ポリウレタンで作製される物品において頻繁に観察される問題である。ブルーミングは、「表面濁り」もしくは「表面曇り」ともいわれるものである。ブルーミングは、ブルームするポリマーで作製された物品の審美的な表面特性を損ない得るので、望ましくない。透明性が望まれる物品においてブルームが生じることは、特に望ましくない。ブルームはまた、上記ブルーミングポリマーで作製された物品が接着剤で他の物品にしっかりと結合される能力を低下させ得るので、望ましくない。ブルーミングは、いくつかの応用においては深刻な問題として長年認識されてきたおり、それを多少なりとも解決するための有効な手段も、長年にわたって模索されてきた。
【0006】
特許文献2は、ブルームがないと報告されている熱可塑性ポリウレタン組成物を開示している。この目的は、上記熱可塑性ポリウレタン組成物中のイソシアネートと反応性であるモノ官能性化合物を含めることによって達成されると報告されている。特許文献3は、ブルームを制御する目的で、少なくとも14個の炭素原子を含むモノ官能性アルコール(例えば、1−テトラデカノール、1−オクタデカノール、もしくは1−ドコサノール)を使用することを具体的に開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,959,059号明細書
【特許文献2】米国特許第5,491,211号明細書
【特許文献3】米国特許第5,491,211号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、ブルームする傾向が大いに低下した熱可塑性ポリウレタンに関する。ポリマーがブルームする傾向を低下させることは、高い透明性が求められる応用において非常に望ましい。なぜなら、ブルーミングは、外観において濁らせるもしくは曇らせるようにブルームするポリマーで作製される物品の原因になるからである。ブルーミングはまた、上記ブルームするポリマーで作製された物品が、接着剤で別の物品にしっかりと結合される能力を低下させ得る。
【0009】
本発明は、(1)ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体、(2)ポリイソシアネート、および(3)グリコール鎖伸長剤の反応生成物から構成される熱可塑性ポリウレタンを開示し;ここで上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、1,3−プロピレングリコールおよびジカルボン酸から誘導される反復ユニットから構成され;ここで上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、500〜10,000ダルトンの範囲内である数平均分子量を有し;そしてここで上記熱可塑性ポリウレタンは、上記ポリイソシアネートおよび上記グリコール鎖伸長剤の反応生成物である硬質セグメントを含む。本発明の熱可塑性ポリウレタン組成物は、ブルームを制御するために、イソシアネートと反応性であるモノ官能性化合物(例えば、少なくとも14個の炭素原子を有するモノ官能性アルキレンアルコール)を必要としない。
【0010】
本発明はさらに、成形物品を製造するためのプロセスを開示し、上記プロセスは、(a)熱可塑性ポリウレタン組成物を、上記熱可塑性ポリウレタン組成物の融解点より高い温度へと加熱する工程であって、ここで上記熱可塑性ポリウレタン組成物は、(1)ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体、(2)ポリイソシアネート、および(3)グリコール鎖伸長剤の反応生成物であり;ここで上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、1,3−プロピレングリコールおよびジカルボン酸から誘導される反復ユニットから構成され;ここで上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、500〜10,000ダルトンの範囲内である数平均分子量を有し;そしてここで上記熱可塑性ポリウレタンは、上記ポリイソシアネートおよび上記グリコール鎖伸長剤の反応生成物である硬質セグメントを含む、工程;(b)上記熱可塑性ポリウレタン組成物を型へと射出する工程;(c)上記型の中の上記熱可塑性ポリウレタン組成物を、上記熱可塑性ポリウレタン組成物の融解点より低い温度へと冷却して、上記成形物品を生成する工程;ならびに(d)上記成形物品を上記型から外す工程、を包含する。
【0011】
本発明はさらに、押し出し成形物品(例えば、繊維、シート、フィルム、チューブおよびホース)を製造するためのプロセスを開示し、上記プロセスは、(a)熱可塑性ポリウレタン組成物を、上記熱可塑性ポリウレタン組成物の融解点より高い温度へと加熱する工程であって、ここで上記熱可塑性ポリウレタン組成物は、(1)ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体、(2)ポリイソシアネート、および(3)グリコール鎖伸長剤の反応生成物であり;ここで上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、1,3−プロピレングリコールおよびジカルボン酸から誘導される反復ユニットから構成され;ここで上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、500〜10,000ダルトンの範囲内である数平均分子量を有し;そしてここで上記熱可塑性ポリウレタンは、上記ポリイソシアネートおよび上記グリコール鎖伸長剤の反応生成物である硬質セグメントを含む、工程;(b)上記熱可塑性ポリウレタン組成物を、上記押し出し成形物品の所望の形状へと押し出す工程;ならびに(c)上記熱可塑性ポリウレタン組成物を、上記熱可塑性ポリウレタン組成物の融解点より低い温度へと冷却して、上記押し出し成形物品を生成する工程、を包含する。このような押し出しプロセスは、植物性油、他の食用液体、および他の有機液体を運搬するための透明なチューブおよびホースを製造することにおいて特に価値がある。上記押し出しプロセスは、プロフィール押し出しプロセスであり得る。
【0012】
本発明の別の実施形態において、上記熱可塑性ポリウレタン組成物は、所望の製造物品へと吹き込み成形され得る。例えば、上記ポリウレタン組成物は、透明なボトルへと吹き込み成形され得る。
【0013】
本発明の別の実施形態において、アッパーおよびソールを有する靴が、開示される。この靴において、上記ソールは、(1)ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体、(2)ポリイソシアネート、および(3)グリコール鎖伸長剤の反応生成物である熱可塑性ポリウレタン組成物から構成され;ここで上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、1,3−プロピレングリコールおよびジカルボン酸から誘導される反復ユニットから構成され;ここで上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、500〜10,000ダルトンの範囲内である数平均分子量を有し;そしてここで上記熱可塑性ポリウレタンは、上記ポリイソシアネートおよび上記グリコール鎖伸長剤の反応生成物である硬質セグメントを含む。
例えば、本発明は、以下を提供する:
(項目1)
(1)ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体、(2)ポリイソシアネート、および(3)グリコール鎖伸長剤の反応生成物から構成される熱可塑性ポリウレタンであって;ここで該ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、1,3−プロピレングリコールおよびジカルボン酸から誘導される反復ユニットから構成され;ここで該ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、500〜10,000ダルトンの範囲内である数平均分子量を有し;そしてここで該熱可塑性ポリウレタンは、該ポリイソシアネートおよび該グリコール鎖伸長剤の反応生成物である硬質セグメントを含む、熱可塑性ポリウレタン。
(項目2)
1,3−プロピレングリコールは、前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体の合成において使用される前記グリコール成分の少なくとも70重量%に相当する、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(項目3)
1,3−プロピレングリコールは、前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体の合成において使用される前記グリコール成分の少なくとも80重量%に相当する、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(項目4)
1,3−プロピレングリコールは、前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体の合成において使用される前記グリコール成分の少なくとも90重量%に相当する、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(項目5)
1,3−プロピレングリコールは、前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体の合成において使用されるグリコール成分の少なくとも95重量%に相当する、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(項目6)
前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体の合成において使用される前記グリコール成分は、本質的に1,3−プロピレングリコールからなる、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(項目7)
前記ジカルボン酸は、式:HOOC(CH2)nCOOHのジカルボン酸であり、ここでnは、2〜10の範囲内の整数を表す、項目2に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(項目8)
前記ジカルボン酸は、式:HOOC(CH2)nCOOHのジカルボン酸であり、ここでnは、4〜8の範囲内の整数を表す、項目3に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(項目9)
前記ジカルボン酸は、アジピン酸である、項目4に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(項目10)
前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、ポリ(1,3−プロピレンアジペート)グリコールである、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(項目11)
グリコール鎖伸長剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、およびヒドロキノン ビス(2−ヒドロキシエチル)エーテルからなる群より選択される、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(項目12)
グリコール鎖伸長剤は、1,4−ブタンジオールである、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(項目13)
グリコール鎖伸長剤は、1,3−プロパンジオールである、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(項目14)
ポリイソシアネートは、ジイソシアネートである、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(項目15)
ポリイソシアネートは、芳香族ジイソシアネートである、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(項目16)
芳香族ポリイソシアネートは、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)、m−キシレンジイソシアネート、フェニレン−1−4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネート、およびトルエンジイソシアネートからなる群より選択される、項目15に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(項目17)
ジイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、デカン−1,10−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、および1,6−ヘキサンジイソシアネートからなる群より選択される脂肪族ジイソシアネートである、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(項目18)
前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、ポリ(1,3−プロピレンアジペート)グリコールであり、ここで前記グリコール鎖伸長剤は、1,4−ブタンジオールであり、前記ポリイソシアネートは、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)である、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(項目19)
前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、1000〜4000ダルトンの範囲内である数平均分子量を有する、項目18に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(項目20)
前記熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも100,000ダルトンの重量平均分子量を有し;ここで前記硬質セグメントは、該熱可塑性ポリウレタンの総重量の10重量%〜40重量%に相当する、項目19に記載の熱可塑性ポリウレタン。
(項目21)
成形物品を製造するためのプロセスであって、該プロセスは、(a)熱可塑性ポリウレタン組成物を、該熱可塑性ポリウレタン組成物の融解点より高い温度へと加熱する工程であって、ここで該熱可塑性ポリウレタン組成物は、項目1に記載の熱可塑性ポリウレタンから構成される、工程;(b)該熱可塑性ポリウレタン組成物を型へと射出する工程;(c)該型中の該熱可塑性ポリウレタン組成物を、該熱可塑性ポリウレタン組成物の融解点より低い温度へと冷却して、該成形物品を生成する工程;ならびに(d)該成形物品を該型から外す工程、を包含する、プロセス。
(項目22)
押し出し成形物品を製造するためのプロセスであって、該プロセスは、(a)熱可塑性ポリウレタン組成物を、該熱可塑性ポリウレタン組成物の融解点より高い温度へと加熱する工程であって、ここで該熱可塑性ポリウレタン組成物は、(1)ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体、(2)ポリイソシアネート、および(3)グリコール鎖伸長剤の反応生成物である、工程であって;ここで該ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、1,3−プロピレングリコールおよびジカルボン酸から誘導される反復ユニットから構成され;ここで該ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、500〜10,000ダルトンの範囲内である数平均分子量を有し;そしてここで該熱可塑性ポリウレタンは、該ポリイソシアネートおよび該グリコール鎖伸長剤の反応生成物である硬質セグメントを含む、工程;(b)該熱可塑性ポリウレタン組成物を、該押し出し成形物品の所望の形状へと押し出す工程;ならびに(c)該熱可塑性ポリウレタン組成物を、該熱可塑性ポリウレタン組成物の融解点より低い温度へと冷却して、該押し出し成形物品を生成する工程、を包含する、プロセス。
(項目23)
前記押し出し成形物品は、透明フィルムである、項目22に記載のプロセス。
(項目24)
前記押し出し成形物品は、透明チューブである、項目22に記載のプロセス。
(項目25)
項目1に記載の熱可塑性ウレタンから構成される、透明フィルム。
(項目26)
項目1に記載の熱可塑性ウレタンから構成される、透明チューブ。
(項目27)
アッパーおよびソールを有する靴であって、ここで該ソールは、項目1に記載の熱可塑性ウレタンから構成される、靴。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な説明)
本発明の熱可塑性ポリウレタンは、(1)ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体、(2)ポリイソシアネート、および(3)グリコール鎖伸長剤の反応生成物である。これら反応物が重合されて、上記熱可塑性ポリウレタンを合成する技術は、従来の装置、触媒、および手順を利用して行われる。しかし、上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体が、1,3−プロピレングリコールおよびジカルボン酸から誘導される反復ユニットから構成されることは重要である。上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体はまた、代表的には、500〜10,000ダルトンの範囲内である数平均分子量を有する。
【0015】
上記熱可塑性ポリウレタンの作製において使用される上記ヒドロキシル末端化中間体は、1,3−プロパングリコールおよびジカルボン酸から誘導される反復ユニットから構成されるヒドロキシル末端化ポリエステル中間体である。上記1,3−プロパングリコールは、上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体の合成において使用される上記グリコール成分のうちの少なくとも70重量%に相当する。代表的には、上記1,3−プロパングリコールは、上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体を合成において使用される上記グリコール成分のうちの少なくとも80重量%に相当し、好ましくは、上記グリコール成分のうちの少なくとも90重量%に相当する。上記1,3−プロパングリコールが、上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体の合成において使用される上記グリコール成分のうちの少なくとも95重量%に相当することは、通常は、より好ましい。
【0016】
上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体の作製において使用される上記ジカルボン酸は、脂肪族、シクロ脂肪族、芳香族、もしくはこれらの組み合わせであり得る。単独で、もしくは混合物で使用され得る適切なジカルボン酸は、一般に、合計4〜15個の炭素原子を有し、それらとしては、以下が挙げられる:コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸など。上記使用されるジカルボン酸は、代表的には、式:HOOC(CH
2)
nCOOHのジカルボン酸であり、ここでnは、2〜10、好ましくは、4〜8、および最も好ましくは、4〜7の範囲内の整数を表す。アジピン酸は、好ましい酸である。上記ジカルボン酸の無水物(例えば、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物など)はまた、エステル交換反応によって上記中間体を合成するために使用され得る。
【0017】
本発明の熱可塑性ポリウレタンの作製において使用される上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、代表的には、上記末端官能基のアッセイによって決定される場合に、約500〜約10,000ダルトン、代表的には、約750〜約4,000ダルトン、望ましくは、約1000〜約3,000ダルトン、最も好ましくは、約1000〜約2,500ダルトンの範囲内である数平均分子量(Mn)を有する。2種以上のヒドロキシル末端化ポリエステル中間体のブレンドは、本発明のTPUを作製するために使用され得る。
【0018】
本発明の熱可塑性ポリウレタンの作製において使用される上記グリコール鎖伸長剤は、エチレングリコール、プロピレングリコールもしくはこれらの混合物のいずれかである。上記グリコール鎖伸長剤はまた、1,4−ブタングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、およびヒドロキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテル(HQEE)を含み得る。上記鎖伸長剤として1,3−プロパンジオールおよび/もしくは1,4−ブタンジオールのみを利用することは非常に好ましい。
【0019】
上記熱可塑性ポリウレタンの合成において使用される上記ポリイソシアネートは、好ましくは、ジイソシアネートである。脂肪族ジイソシアネートが利用されるが、芳香族ジイソシアネートは、非常に好ましい。さらに、架橋を引き起こす多官能性イソシアネート化合物(すなわち、トリイソシアネートなど)の使用は、一般に、避けられ、よって、使用される場合には、使用される量は、一般には、使用される種々のイソシアネートの全ての総モル数に基づいて、4モル%未満、および好ましくは、2モル%未満である。適切なジイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート(例えば、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)(MDI)、2,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)、m−キシリレンジイソシアネート(XDI)、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、フェニレン−1,4−ジイソシアネート(PPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタン−3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、およびトルエンジイソシアネート(TDI))が挙げられる。適切な脂肪族ジイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,6−ジイソシアナト−2,2,4,4−テトラメチルヘキサン(TMDI)、1,3−ビス(イソシアナト−メチル)シクロヘキサン(HXDI)、1,6−ヘキサンジイソシアネート(HDI)、1,10−デカンジイソシアネート、およびtrans−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)が挙げられる。一般に使用されるジイソシアネートは、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)である。上記ジイソシアネートのダイマーおよびトリマーが使用されてもよく、同様に、2種以上のジイソシアネートのブレンドが使用されてもよい。
【0020】
本発明において使用される上記ポリイソシアネートは、イソシアネートで末端キャップされる低分子量ポリマーもしくはオリゴマーの形態にあり得る。例えば、上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、イソシアネート含有化合物と反応して、イソシアネートで末端キャップされた低分子量ポリマーを作り得る。上記TPU分野において、このような材料は、通常、プレポリマーといわれる。このようなプレポリマーは、通常、約500〜約10,000ダルトンの範囲内である数平均分子量(Mn)を有する。
【0021】
上記1種以上のジイソシアネートのモル比は、一般に、上記1種以上のヒドロキシル末端化ポリエステル中間体および上記1種以上の鎖伸長剤の総モル数の約0.95〜約1.05モル/モル、および好ましくは、約0.98〜約1.03モル/モルである。
【0022】
本発明のTPUポリマーを生成するためのプロセスは、従来のTPU製造装置を利用し得る。上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体、上記ジイソシアネート、および上記鎖伸長剤は、上記のように、一般に、一緒に添加され、任意の従来のウレタン反応法に従って反応させられる。好ましくは、本発明のTPU形成成分は、適切なミキサー(例えば、Banburyミキサーとして公知のインターナルミキサー、もしくは好ましくは、押し出し成形機)中で溶融重合される。好ましいプロセスにおいて、上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、上記グリコール鎖伸長剤とブレンドされ、上記押し出し成形機にブレンドとして添加される。上記ジイソシアネートは、上記押し出し成形機に別個に添加される。上記ジイソシアネートの適切な加工処理温度もしくは重合開始温度は、約100℃〜約200℃であり、好ましくは、約100℃〜約150℃である。上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体および上記鎖伸長剤のブレンドの適切な加工処理温度もしくは重合開始温度は、約100℃〜約220℃、および好ましくは、約150℃〜200℃である。上記種々の成分を反応させ、本発明のTPUポリマーを形成させ得るために適切な混合時間は、一般に、約2〜約10分間、および好ましくは、約3〜約5分間である。
【0023】
本発明のTPUを生成するための好ましいプロセスは、ワンショット(one−shot)重合プロセスといわれるプロセスである。その場で一般に起こる上記ワンショット重合プロセスにおいて、3種の成分(すなわち、上記1種以上のヒドロキシル末端化ポリエステル中間体、上記グリコール、および上記ジイソシアネート)の間で同時反応が起こる。上記反応は、一般に、約90℃〜約120℃の温度で開始される。上記反応は発熱反応であるので、上記反応温度は、一般に、約220℃〜250℃へと増大する。エチレングリコールが上記鎖伸長剤として使用される場合には、この発熱反応の温度を最大235℃までに制限して、望ましくない発泡レベルを妨げることが重要である。上記TPUポリマーは、上記反応押し出し成形機を出て、ペレット化される。上記TPUのペレットは、通常、加熱容器中に貯蔵されて、上記反応を継続し、上記TPUペレットを乾燥させる。
【0024】
触媒(例えば、スズカルボキシレートおよび他の金属カルボキシレート、ならびに四級アミン)を利用することは、しばしば望ましい。金属カルボキシレート触媒の例としては、オクタン酸スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、プロピオン酸フェニル水銀、オクタン酸鉛、アセチルアセトナト鉄、アセチルアセトナトマグネシウムなどが挙げられる。四級アミン触媒の例としては、トリエチレンジアミンなどが挙げられる。上記1種以上の触媒の量は、少なく、一般に、形成される上記最終TPUポリマーの重量の約50〜約100重量ppmである。
【0025】
本発明のTPUポリマーの重量平均分子量(Mw)は、約90,000〜約600,000ダルトン、好ましくは、約100,000〜約300,000ダルトン、およびより好ましくは、約120,000〜約250,000ダルトンの範囲に及ぶ。上記TPUポリマーのMwは、ポリスチレン標準物質に対するゲル濾過クロマトグラフィー(GPC)に従って測定される。
【0026】
高分子量TPUポリマーが望ましい場合、これは、架橋を誘導するために、2.0より大きい平均官能基を有する少量の架橋剤を利用することによって達成され得る。使用される架橋剤の量は、好ましくは、鎖伸長剤の総モルのうちの2モル%未満、およびより好ましくは、1モル%未満である。上記好ましいTPUポリマーにおける分子量を増大させるために特に望ましい方法は、上記鎖伸長剤のうちの1モル%未満を、トリメチロールプロパン(TMP)で置き換えることである。
【0027】
上記架橋は、2.0より大きい平均官能基を有する架橋剤を、上記反応混合物中の上記ヒドロキシル末端化中間体、上記イソシアネート化合物、および鎖伸長剤と一緒に添加して、上記TPUポリマーを製造することによって達成される。上記TPUポリマーを作製するために上記反応混合物中で使用される架橋剤の量は、所望の分子量および使用される特定の架橋剤の効率に依存する。上記TPUポリマーの作製において使用される鎖伸長剤の総モルに基づいて、通常は、2.0モル%未満、および好ましくは、1.0モル%未満が使用される。鎖伸長剤の総モルに基づいて、2.0モル%より高い架橋剤のレベルは、溶融プロセスにとっては困難である。従って、使用される架橋剤のレベルは、ヒドロキシル成分の総モルに基づいて、約0.05モル%〜約2.0モル%である。
【0028】
上記架橋剤は、2.0より大きな平均官能基を有しかつ上記TPUポリマーを架橋する能力を有する任意のモノマー材料もしくはオリゴマー材料であり得る。このような材料は、熱硬化性ポリウレタンの分野において周知である。好ましい架橋剤としては、トリメチロールプロパン(TMP)およびペンタエリスリトールが挙げられる。トリメチロールプロパンは、特に望ましい架橋剤であるとして見いだされた。
【0029】
本発明のTPUポリマーは、種々の従来の添加剤もしくは配合剤(compounding agent)(例えば、充填剤、増量剤、顔料、潤滑剤、UV吸収剤など)と混合され得る。しかし、本発明のTPUは、通常、可塑剤を含まない。使用され得る充填剤としては、タルク、シリケート、クレイ、炭酸カルシウムなどが挙げられる。従来の添加剤のレベルは、TPUを配合する分野の当業者に周知であるように、所望の最終用途応用の最終的な特性およびコストに依存する。上記添加剤は、上記TPUを形成する反応の間に添加され得るが、通常は、第2の配合工程において添加される。
【0030】
本発明のTPUポリマーは、少なくとも約170℃、好ましくは、少なくとも約185℃、および最も好ましくは、少なくとも約200℃の高い融解点を有する。本発明のTPUは、代表的には、170℃〜240℃の範囲内である融解点を有し、より代表的には、185℃〜220℃の範囲内である融解点を有する。本発明のTPUは、好ましくは、200℃〜220℃の範囲内である融解点を有する。高い融解点は、他の合成繊維(例えば、ポリエステル)とともに溶融紡糸繊維を使用する応用において重要である。特定の溶融コーティング適用はまた、高融解点TPUが製造プロセス、特に、フッ素化ポリマーの使用を必要とするプロセスに耐えることを必要とする。上記TPUポリマーの融解点は、示差走査熱量測定計(DSC)を使用して、ASTM D−3417−99に従って測定され得る。しかし、非常に軟らかいポリマーの場合では、Kopfler法が、上記TPUの融解点を測定するために使用され得る。
【0031】
本発明のTPUポリマーの硬さは、ASTM D2240に従って測定した場合、極めて軟らかい(ショアA硬度が約20)から比較的硬い(ショアD硬度が約80)までの範囲に及びうる。本発明のTPUポリマーは、代表的には、30〜70の範囲内であるショアA硬度を有し、より代表的には、35〜60の範囲内であるショアA硬度を有する。上記TPUは、可塑剤(例えば、上記TPU組成物中のフタレート可塑剤)を含めることによって、より軟らかくなり得る。しかし、生成品が透明であることが望まれる応用において、透明性を損なう可塑剤の使用を予め排除することに注意が払われるべきである。
【0032】
他の従来の添加剤は、本発明のTPU組成物中に含まれ得る。これら他の従来の添加剤の中には、例えば、抗酸化剤、抗オゾン剤(antiozone agent)、抗加水分解剤、押し出し補助物質(extrusion aid)、UV安定化剤、鎖終結剤(chain terminator)、光安定化剤、着色剤、および難燃剤がある。これら添加剤およびポリウレタン組成物中でのそれらの使用は、一般に、公知である。代表的には、これら添加剤は、望ましい効果を達成する量で使用される。過剰量の添加剤は、所望の限度を超えて、ポリウレタン組成物の他の特性を低下させ得る。
【0033】
抗酸化剤は、代表的には、上記ポリウレタン物品の寿命を通して、上記物品の分解を生じる酸化反応を妨ぐかもしくは終了させる。代表的な抗酸化剤としては、ケトン、アルデヒドおよびアリールアミン、ならびにフェノール化合物が挙げられる。化合物の具体例としては、エチレンビス(オキシエチレン)ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルシナメートおよびテトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシナメート)]メタンが挙げられる。適切な市販の抗酸化剤の例としては、Irganox 1010、Irganox 1098、Irganox 565、およびIrganox 1035(Ciba−Geigy Corp.,Ardsley,N.Y.)が挙げられる。
【0034】
抗オゾン剤は、オゾンによって引き起こされる損傷を妨げ得るかもしくは低下させ得、抗加水分解剤は、水および他の加水分解化合物による損傷を妨げ得るかもしくは低下させ得る。適切な抗オゾン剤の例としては、p−フェニレンジアミン誘導体が挙げられる。抗加水分解剤としては、例えば、Stabaxol PおよびStabaxol P−200(Rhein Chemie,Trenton,N.J.)が挙げられる。
【0035】
押し出し補助物質は、上記押し出し成形機を通る上記ポリウレタンの移動を容易にする。ワックス(例えば、Wax E(Hoechst−Celanese Corp.,Chatham,N.J.)、Acrawax(Lonza Inc.,Fair Lawn,N.J.)および酸化ポリエチレン 629A(Allied−Signal Inc.,Morristown,N.J.))は、適切な押し出し補助物質である。これら押し出し補助物質はまた、離型剤(mold−release agent)として作用し得るか、またはさらなる離型剤が、上記組成物に添加され得る。
【0036】
鎖終結剤は、分子量を制御するために使用される。鎖終結剤の例としては、8個以上の炭素原子を有するモノアルコール化合物が挙げられる。
【0037】
光安定化剤は、可視光線もしくは紫外線に起因するポリマー生成物の分解を妨げるかまたは低下させ得る。適切な光安定化剤の例としては、ベンゾトリアゾール(例えば、Tinuvin P)、およびヒンダードアミン光安定化剤(例えば、Tinuvin 770)が挙げられる。
【0038】
本発明は、例示目的に過ぎず、本発明の範囲もしくは実施されうる様式を限定するとは解釈されるべきでない以下の実施例によって例示される。別段具体的に別なふうに示されなければ、部およびパーセンテージは、重量によって示される。
【実施例】
【0039】
(実施例1および比較実施例2)
この実験において作製されるTPUは、同じ一般的手順を使用して全て作製した。上記使用される手順は、ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体、鎖伸長剤、およびジイソシアネートのブレンドを、別個に約150℃へと加熱し、次いで、上記成分を混合することを包含する。上記反応は、発熱反応であり、約200℃〜250℃の範囲内へと約1〜5分間で温度を増大させた。この期間の間に、粘性の増大によって実証されるように、重合が起こった。実施例1において上記TPUの作製において使用される上記ヒドロキシル末端化中間体は、ポリ(1,3−プロピレンアジペート)グリコールであり、比較実施例2において使用される上記ヒドロキシル末端化中間体は、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)グリコールであった。両方のポリマーの作製において使用される上記鎖伸長剤は、1,4−ブタンジオールであり、両方のポリマーの作製において使用される上記ジイソシアネートは、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)であった。
【0040】
実施例1および比較実施例2の両方において作製される上記熱可塑性ポリウレタンを、シートへと押し出した。上記シートを、約4年間の期間にわたって経年変化させた。実施例1において作製されたシートは、本質的にブルームがなかった。しかし、比較実施例2において作製されるシートは、重度のブルームを示した。事実、ブルームは、上記シートを指先でこすることによって、比較実施例2において作製されたシートから除去された。いずれにしても、この実験は、ブルームが、ポリ(1,3−プロピレンアジペート)グリコールを上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体として利用することによって、本質的に排除されることを示す。
【0041】
(実施例3〜5および比較実施例6〜7)
この一連の実験において作製されるTPUは全て、同じ一般的手順を使用して作製した。使用される手順は、ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体、鎖伸長剤、およびジイソシアネートのブレンドを、別個に約150℃へと加熱し、次いで、上記成分を混合することを包含する。上記反応は、発熱反応であり、約200℃〜250℃の範囲内に約1〜5分間で温度が増大した。その期間の間に、粘性における増大によって実証されるように、重合が起こった。これらTPUの合成において利用される上記ポリオールおよび鎖伸長剤は、表1に同定される。
【0042】
【表1】
1 ASTM D412
2 ASTM D470
BDOA=ポリ(テトラメチレンアジペート)グリコール
PDOA=ポリ(トリメチレンアジペート)グリコール
BDO=1,4−ブタンジオール
PDO=1,3−プロパンジオール。
【0043】
表1から認められ得るように、上記ポリ(トリメチレンアジペート)グリコールから作製したTPUサンプルは、ブルームしなかった。しかし、上記ポリ(テトラメチレンアジペート)グリコールを利用して作製したサンプルは、わずか3ヶ月間経年変化した後に、中程度から重度にブルームすることを示した。
【0044】
特定の代表的実施形態および詳細が、本発明を例示する目的で示されてきたが、種々の変化および改変が、本発明の範囲内から逸脱することなく行われ得ることは、当業者に明らかである。