特許第5684384号(P5684384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5684384
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月11日
(54)【発明の名称】迷走神経を刺激するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/05 20060101AFI20150219BHJP
【FI】
   A61N1/05
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-520811(P2013-520811)
(86)(22)【出願日】2011年7月19日
(65)【公表番号】特表2013-532516(P2013-532516A)
(43)【公表日】2013年8月19日
(86)【国際出願番号】US2011044542
(87)【国際公開番号】WO2012012432
(87)【国際公開日】20120126
【審査請求日】2013年4月17日
(31)【優先権主張番号】61/365,483
(32)【優先日】2010年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505003528
【氏名又は名称】カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】トックマン、ブルース エイ.
(72)【発明者】
【氏名】インカピエ オルドネス、フアン ヘ.
(72)【発明者】
【氏名】リウ、リリー
【審査官】 堀川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−519960(JP,A)
【文献】 特表2005−521448(JP,A)
【文献】 特表2010−516405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の頚動脈鞘内に位置する該患者の迷走神経の選択領域を、該迷走神経に隣接する位置から刺激するためのシステムであって、
頚動脈鞘内の迷走神経の選択領域に隣接する位置に配備されるようになされた第1の神経刺激リード線であって、パルス発生器に接続されるようになされた基端部から先端部を有する先端側部分へと伸びるリード線本体と、該リード線本体内を基端部から先端部へ向かって伸びる少なくとも1つの導体と、該少なくとも1つの導体に作動可能なように接続され、かつ、先端側部分に位置する、少なくとも1つの電極であって、迷走神経へ電気パルスを送達するようになされた少なくとも1つの電極と、を含んでなる第1の神経刺激リード線;
頚動脈鞘の外側の刺激部位に配備されるようになされた第2の神経刺激リード線であって、パルス発生器に接続されるようになされた基端部から、先端部を有する先端側部分であって頚動脈鞘の外側表面に巻き付きかつ接触するように構成された先端側部分へと伸びる、リード線本体と、該リード線本体内を基端部から先端部へ向かって伸びる少なくとも1つの導体と、少なくとも1つの電極であって、先端側部分に位置する該少なくとも1つの導体に作動可能なように接続されて該先端側部分が頚動脈鞘の外側表面に接触しているときは該少なくとも1つの電極が迷走神経に向かう方向に配向せしめられるようになっている電極と、を含んでなる第2の神経刺激リード線;ならびに、
第1および第2の神経刺激リード線に位置する1つ以上の電極によって形成される電極アレイに対して電気刺激を選択的に適用するための信号を送受信するようになされたパルス発生器、を含んでなり、電極アレイに適用された電気刺激が、特定の内科的、精神医学的または神経学的な障害を治療するために、望ましい迷走神経の選択領域内およびその周辺で電極間に刺激電流密度フィールドを誘導することを容易にし、さらに、電極アレイにおける電極の様々な組合せが、迷走神経の選択領域内およびその周辺の刺激電流密度フィールドを変化させるために選択される、システム。
【請求項2】
第2の神経刺激リード線の先端側部分は予め形成されたスパイラル状物を含んでなり、該スパイラル状物は、第2の神経刺激リード線が移植されたときに、頚動脈鞘の外側表面に螺旋状に巻き付けられて前記少なくとも1つの電極が迷走神経に向かうように配向されかつ頚動脈鞘と接触して配置されるように構成されており、前記少なくとも1つの電極は頚動脈鞘を通して迷走神経へ電気パルスを送達するようになされている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
第1の神経刺激リード線は頚動脈鞘を通って伸びる内頚静脈の内側に配備されるようになされている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記電極は複数であり、第1の神経刺激リード線の先端側部分は、該複数の電極のうち少なくとも1つを迷走神経に向かう方向に配向するように、かつ、内頚静脈内のリード線の先端側部分を刺激部位において安定化および固定するように構成された、予め形成された形状を含んでなる、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
第1の神経刺激リード線は頚動脈鞘内において内頚静脈の外側に配備されるようになされている、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経束内の神経のある領域を刺激するためのシステムおよび方法に関する。より具体的には、本発明は、頚動脈鞘内の迷走神経のある領域を刺激するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な内科的、精神医学的、および神経学的な障害を治療およびコントロールするための神経刺激の使用は、とりわけ心臓状態、癲癇、肥満、および呼吸障害の治療のためなど、過去数十年間にわたって大幅な発展をみた。例えば、神経刺激を用いた自律神経バランスの変調は、可能であることが示されており、また、心筋梗塞(MI)後のさらなるリモデリングおよび致命的な不整脈の発症しやすさから心筋層を保護するなどの積極的な臨床的有益性を有することが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、神経束内の神経の選択領域を刺激するために使用することができる神経刺激リード線を備えたシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
実施例1は、患者の頚動脈鞘内に位置する迷走神経の選択領域を、該迷走神経に隣接する位置から刺激するためのシステムであって、該システムは、頚動脈鞘内の迷走神経の選択領域に隣接する位置に配備されるようになされた第1の神経刺激リード線であって、パルス発生器に接続されるようになされた基端部から先端部を有する先端側部分へと伸びるリード線本体と、該リード線本体内を基端部から先端部へ向かって伸びる少なくとも1つの導体と、該少なくとも1つの導体に作動可能なように接続され、かつ、先端側部分に位置する、少なくとも1つの電極であって、迷走神経へ電気パルスを送達するようになされた少なくとも1つの電極と、を備えている第1のリード線;頚動脈鞘の外側の刺激部位に配備されるようになされた第2の神経刺激リード線であって、パルス発生器に接続されるようになされた基端部から、先端部を有する先端側部分であって頚動脈鞘の外側表面に巻き付きかつ接触するように構成された先端側部分へと伸びる、リード線本体と、該リード線本体内を基端部から先端部へ向かって伸びる導体と、少なくとも1つの電極であって、先端側部分に位置する該少なくとも1つの導体に作動可能なように接続されて、先端側部分が頚動脈鞘の外側表面に接触しているときは該少なくとも1つの電極が迷走神経に向かう方向に配向せしめられるようになっている電極と、を備えている第2のリード線;ならびに、第1および第2のリード線のうち少なくともいずれか一方に位置する1つ以上の電極に電気刺激を選択的に適用するための信号を送受信するようになされたパルス発生器、を備えている。
【0005】
実施例2においては、実施例1によるシステムであって、第2の神経刺激リード線の先端側部分は予め形成されたスパイラル状物を含んでなり、該スパイラル状物は、第2のリード線が移植されたときに、頚動脈鞘の外側表面に螺旋状に巻き付けられて、少なくとも1つの電極が迷走神経に向かうように配向されかつ頚動脈鞘と接触して配置されるように構成されており、該少なくとも1つの電極は頚動脈鞘を通して迷走神経へ電気パルスを送達するようになされている。
【0006】
実施例3においては、実施例1〜2のうちいずれか1つによるシステムであって、第2の神経刺激リード線の先端側部分は、内側表面を有する弾性カフおよび該弾性カフの内側表面に位置する少なくとも1つの電気接点を備えたカフ電極を含んでなり、該カフ電極は、頚動脈鞘の外側表面に巻き付けられて、少なくとも1つの電気接点が迷走神経に向かって配向されて頚動脈鞘と接触するように配置されるように構成されており、該少なくとも1つの電気接点は頚動脈鞘を通して迷走神経へ電気パルスを送達するようになされている。
【0007】
実施例4においては、実施例1〜3のうちいずれか1つによるシステムであって、第1の神経刺激リード線の先端側部分は、複数の電極のうち少なくとも1つを迷走神経に向かう方向に配向するように、かつ、頚動脈鞘内のリード線の先端側部分を刺激部位において安定化および固定するように構成された、予め形成された形状を含んでなる。
【0008】
実施例5は、患者の頚動脈鞘内に位置する該患者の迷走神経の選択領域を、該迷走神経に隣接する位置から刺激するためのシステムであって、該システムは、頚動脈鞘内に位置する迷走神経の選択領域に隣接する該患者の内頚静脈の領域内の位置に配備されるようになされた第1の神経刺激リード線であって、パルス発生器に接続されるようになされた基端部から先端部を有する先端側部分へと伸びるリード線本体と、該リード線本体内を基端部から先端部へ向かって伸びる少なくとも1つの導体と、該少なくとも1つの導体に作動可能なように接続され、かつ、先端側部分に位置する、少なくとも1つの電極であって、迷走神経へ電気パルスを送達するようになされた少なくとも1つの電極と、を備えている第1のリード線;頚動脈鞘の外側の刺激部位に配備されるようになされた第2の神経刺激リード線であって、パルス発生器に接続されるようになされた基端部から、先端部を有する先端側部分であって頚動脈鞘の外側表面に巻き付いて該表面に接触するように構成された先端側部分へと伸びるリード線本体と、該リード線本体内を基端部から先端部へ向かって伸びる導体と、少なくとも1つの電極であって、先端側部分に位置する該少なくとも1つの導体に作動可能なように接続されて、先端側部分が頚動脈鞘の外側表面に接触しているときに該少なくとも1つの電極が迷走神経および内頚静脈内に位置する第1の神経刺激リード線に向かう方向に配向せしめられるようになっている電極と、を備えている第2のリード線;ならびに、第1および第2のリード線のうち少なくともいずれか一方に位置する1つ以上の電極に電気刺激を選択的に適用するための信号を送受信するようになされたパルス発生器、を備えている。
【0009】
実施例6においては、実施例5によるシステムであって、第2の神経刺激リード線の先端側部分は予め形成されたスパイラル状物を含んでなり、該スパイラル状物は、第2のリード線が移植されたときに、頚動脈鞘の外側表面に螺旋状に巻き付けられて、少なくとも1つの電極が迷走神経に向かうように配向されかつ頚動脈鞘と接触して配置されるように構成されており、該少なくとも1つの電極は頚動脈鞘を通して迷走神経へ経血管的に電気パルスを送達するようになされている。
【0010】
実施例7においては、実施例5〜6のうちいずれか1つによるシステムであって、第2の神経刺激リード線の先端側部分は、内側表面を有する弾性カフおよび該弾性カフの内側表面に位置する少なくとも1つの電気接点を備えたカフ電極を含んでなり、該カフ電極は、頚動脈鞘の外側表面に巻き付けられて、少なくとも1つの電気接点が迷走神経に向かうように配向されかつ頚動脈鞘と接触して配置されるように構成されており、該少なくとも1つの電気接点は頚動脈鞘を通して迷走神経へ経血管的に電気パルスを送達するようになされている。
【0011】
実施例8においては、実施例5〜7のうちいずれか1つによるシステムであって、第1の神経刺激リード線の先端側部分は、複数の電極のうち少なくとも1つを迷走神経に向かう方向に配向するように、かつ、頚動脈鞘内のリード線の先端側部分を刺激部位において安定化および固定するように構成された、予め形成された形状を含んでなる。
【0012】
実施例9は、頚動脈鞘内に位置する患者の迷走神経の一部分を刺激する方法であって、頚動脈鞘内において迷走神経に隣接する位置に第1の神経刺激リード線を移植するステップであって、該第1のリード線は、パルス発生器に接続されるようになされた基端部から先端部を有する先端側部分へと伸びるリード線本体と、該リード線本体内を基端部から先端部へ向かって伸びる少なくとも1つの導体と、先端側部分に位置する該少なくとも1つの導体に作動可能なように接続され、かつ、迷走神経へ電気パルスを送達するようになされた少なくとも1つの電極とを備えている、ステップ;頚動脈鞘の外側において迷走神経および第1の神経刺激リード線に隣接する場所に第2の神経刺激リード線を位置付けするステップであって、該第2の神経刺激リード線は、パルス発生器に接続されるようになされた基端部から先端部を有する先端側部分へと伸び、かつ、頚動脈鞘の外側表面に接触するように構成されたリード線本体と、先端側部分に位置する少なくとも1つの電極であって、先端側部分が頚動脈鞘の外側表面と接触しているときは該少なくとも1つの電極が迷走神経および内頚静脈内に位置する第1の神経刺激リード線に向かう方向に配向せしめられるようになっている電極とを備えている、ステップ;迷走神経を刺激するために電極ベクトルを選択するステップ;ならびに、迷走神経に電気刺激パルスを送達するステップ、を含む方法である。
【0013】
実施例10においては、実施例9による方法であって、頚動脈鞘内において迷走神経に隣接する位置に第1の神経刺激リード線を移植するステップは、内頚静脈内の位置に第1の神経刺激リード線を移植することを含んでなる。
【0014】
実施例11においては、実施例9〜10のうちいずれか1つによる方法は、第1および第2の神経刺激リード線の先端側部分に位置する2つ以上の電極の間の1つ以上の電極ベクトルを、所定の刺激閾値に対して評価するステップをさらに含む。
【0015】
実施例12においては、実施例9〜11のうちいずれか1つによる方法であって、頚動脈鞘の外側において第2の神経刺激リード線を位置付けするステップは、少なくとも1つの電極が迷走神経および第1の神経刺激リード線に向かって配向されるように、かつ、頚動脈鞘の外側表面に接触するように、先端側部分を該外側鞘の外周に巻き付けることをさらに含んでなる。
【0016】
実施例13においては、実施例9〜12のうちいずれか1つによる方法であって、第2の神経刺激リード線の先端側部分は、少なくとも1つの電極が設置された予め形成されたスパイラル状物を含んでなり、頚動脈鞘の外側において第2の神経刺激リード線を位置付けするステップは、少なくとも1つの電極が迷走神経および第1の神経刺激リード線に向かって配向されるように、かつ、頚動脈鞘の外側表面に接触するように、先端側部分の予め形成されたスパイラル状物を頚動脈鞘の外周に螺旋状に巻き付けることをさらに含んでなる。
【0017】
実施例14においては、実施例9〜13のうちいずれか1つによる方法であって、第2の神経刺激リード線の先端側部分は、カフであって該カフの内側表面に位置する少なくとも1つの電極を備えたカフをさらに含んでなり、頚動脈鞘の外側において第2の神経刺激リード線を位置付けするステップは、少なくとも1つの電極が迷走神経および第1の神経刺激リード線に向かって配向されるように、かつ、頚動脈鞘の外側表面に接触するように、カフを頚動脈鞘の外周に係合させることをさらに含んでなる。
【0018】
実施例15においては、実施例9〜14のうちいずれか1つによる方法であって、第1の医療用電気リード線の先端側部分は、拡張可能なステント様構造物および該拡張可能なステント様構造物の外側表面に位置する少なくとも1つの電極を含んでなり、頚動脈鞘内において迷走神経に隣接する位置に第1の神経刺激リード線を移植するステップは:第1の神経刺激リード線を、拡張可能なステント様構造物を含む先端側部分が迷走神経に隣接するように、内頚静脈内の血管内の位置に送達することと;拡張可能なステント様構造物の外側表面に位置する少なくとも1つの電極を迷走神経に向かう方向に配向せしめることと;拡張可能なステント様構造物を内頚静脈の壁と接触かつ係合するように拡張させて、該血管内でリード線を固定かつ安定化することと、を含んでなる。
【0019】
実施例16においては、実施例9〜15のうちいずれか1つによる方法であって、頚動脈鞘内に第1の神経刺激リード線を移植するステップは、第1の神経刺激リード線を、先端側部分が迷走神経に隣接するように、かつ、少なくとも1つの電極が迷走神経に向かう方向に配向されるように、内頚静脈内の血管内の位置に送達することを含んでなる。
【0020】
実施例17においては、実施例9〜16のうちいずれか1つによる方法であって、頚動脈鞘内に第1の神経刺激リード線を移植するステップは、第1の神経刺激リード線の先端側部分を、迷走神経と内頚静脈との間で迷走神経に隣接する位置に移植することを含んでなる。
【0021】
実施例18は、頚動脈鞘内に位置する患者の迷走神経の一部分を刺激する方法であって、頚動脈鞘内に位置する患者の内頚静脈内において迷走神経に隣接する位置に第1の神経刺激リード線を移植するステップであって、該第1のリード線は、パルス発生器に接続されるようになされた基端部から先端部へと伸びるリード線本体と、該リード線本体内を基端部から先端部へ向かって先端側方向に伸びる1つ以上の導体と、リード線本体の先端部に接続され、かつ、1つ以上の電極に作動可能なように接続された、迷走神経へ電気パルスを送達するようになされた拡張可能な電極とを備えている、ステップ;頚動脈鞘の外側において迷走神経および第1の神経刺激リード線に隣接する場所に第2の神経刺激リード線を位置付けするステップであって、該第2の神経刺激リード線は、パルス発生器に接続されるようになされた基端部から先端部を有する先端側部分へと伸び、かつ、頚動脈鞘の外側表面に接触するように構成されたリード線本体と、先端側部分に位置する少なくとも1つの電極とを備えている、ステップ;迷走神経を刺激するために電極ベクトルを選択するステップ、ならびに;迷走神経を刺激するステップ、を含んでいる。
【0022】
実施例19においては、実施例18による方法は、第1および第2の神経刺激リード線の先端側部分に位置する2以上の電極の間の1つ以上の電極ベクトルを、所定の刺激閾値に対して評価するステップをさらに含む。
【0023】
実施例20においては、実施例18〜19のうちいずれか1つによる方法であって、頚動脈鞘の外側において第2の神経刺激リード線を位置付けするステップは、少なくとも1つの電極が迷走神経および第1の神経刺激リード線に向かって配向されるように、かつ、頚動脈鞘の外側表面に接触するように、先端側部分を該外側鞘の外周に巻き付けることをさらに含んでなる。
【0024】
実施例21においては、実施例18〜20のうちいずれか1つによる方法であって、第2の神経刺激リード線の先端側部分は、少なくとも1つの電極が設置された予め形成されたスパイラル状物を含んでなり、頚動脈鞘の外側において第2の神経刺激リード線を位置付けするステップは、少なくとも1つの電極が迷走神経および第1の神経刺激リード線に向かって配向されるように、かつ、頚動脈鞘の外側表面に接触するように、先端側部分の予め形成されたスパイラル状物を頚動脈鞘の外周に螺旋状に巻き付けることをさらに含んでなる。
【0025】
実施例22においては、実施例18〜21のうちいずれか1つによる方法であって、第2の神経刺激リード線の先端側部分は、カフであって該カフの内側表面に位置する少なくとも1つの電極を備えたカフをさらに含んでなり、頚動脈鞘の外側において第2の神経刺激リード線を位置付けするステップは、少なくとも1つの電極が迷走神経および第1の神経刺激リード線に向かって配向されるように、かつ、頚動脈鞘の外側表面に接触するように、カフを頚動脈鞘の外周に沿って位置付けすることをさらに含んでなる。
【0026】
実施例23においては、実施例18〜22のうちいずれか1つによる方法は、拡張可能な電極を送達に適した虚脱形態から拡張形態へと移行させるステップをさらに含み、拡張形態においては、拡張可能な電極は内頚静脈の壁に接触かつ係合して該血管内でリード線を固定かつ安定化する。
【0027】
実施例24は、頚動脈鞘内に位置する患者の迷走神経の一部分を刺激する方法であって、該方法は、頚動脈鞘において迷走神経に隣接する位置に神経刺激リード線を位置付けするステップであって、該リード線は、パルス発生器に接続されるようになされた基端部から先端部を有する先端側部分へと伸びるリード線本体と、該リード線本体内を基端部から先端部へ向かって伸びる少なくとも1つの導体と、先端側部分に位置する該少なくとも1つの導体に作動可能なように接続され、かつ、迷走神経に電気パルスを送達するようになされた複数の電極とを備えている、ステップ;該複数の電極のうち少なくとも1つを迷走神経へ向かう方向に配向するステップ;迷走神経を刺激するために電極の組合せを選択するステップ;ならびに、迷走神経に電気刺激パルスを送達するステップ、を含む。
【0028】
実施例25においては、実施例24による方法であって、神経刺激リード線は迷走神経に隣接する内頚静脈内の位置に移植される。
実施例26においては、実施例24〜25による方法であって、神経刺激リード線は迷走神経と内頚静脈との間の頚動脈鞘内の位置に移植される。
【0029】
実施例27においては、実施例24〜26による方法は、神経刺激リード線の先端側部分に位置する2以上の電極の間の1つ以上の電極ベクトルを、所定の刺激閾値に対して評価するステップをさらに含む。
【0030】
実施例28は、患者の頚動脈鞘内にある該患者の迷走神経の選択領域を、該迷走神経に隣接する位置から刺激するためのシステムであって、該システムは、頚動脈鞘内の迷走神経の選択領域に隣接する位置に配備されるようになされた神経刺激リード線であって、パルス発生器に接続されるようになされた基端部から先端部を備えた先端側部分へと伸びるリード線本体と、該リード線本体内を基端部から先端部に向かって伸びる複数の導体と、複数の電極であって、先端側部分に設置され、かつ、各電極が個々に位置指定可能であるように1対1方式で複数の導体に作動可能なように接続され、少なくとも1つの電極は迷走神経に電気パルスを送達するようになされた、電極と、を含んでいるリード線;ならびに、第1および第2のリード線のうち少なくともいずれか一方に位置する1つ以上の電極に電気刺激を選択的に適用するための信号を送受信するようになされたパルス発生器、を備えている。
【0031】
多数の実施形態が開示されるが、当業者には、本発明の実例となる実施形態を示しかつ説明する以下の詳細な説明から、本発明のさらに別の実施形態が明白となるであろう。従って、図面および詳細な説明は当然例示としてみなされるべきであり、限定的なものとみなされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態による、頚動脈鞘内に位置する患者の迷走神経のある領域を刺激するためのシステムを示す概略図。
図2A】迷走神経の選択領域に隣接して位置付けされた、本発明のいくつかの実施形態による図1に示された2つの神経刺激リード線の先端側部分を示す概略図。
図2B】迷走神経の選択領域に隣接して位置付けされた、本発明のいくつかの実施形態による図1に示された2つの神経刺激リード線の先端側部分を示す概略図。
図2C】迷走神経の選択領域に隣接して位置付けされた、本発明のいくつかの実施形態による図1に示された2つの神経刺激リード線の先端側部分を示す概略図。
図3A】迷走神経のある領域に隣接して位置付けされた、本発明の他の実施形態による図1に示された2つの神経刺激リード線の先端側部分を示す概略図。
図3B】迷走神経のある領域に隣接して位置付けされた、本発明の他の実施形態による図1に示された2つの神経刺激リード線の先端側部分を示す概略図。
図3C】迷走神経のある領域に隣接して位置付けされた、本発明の他の実施形態による図1に示された2つの神経刺激リード線の先端側部分を示す概略図。
図4】本発明の様々な実施形態によって得られうる様々な電極ベクトルの組合せを示す概略図。
図5】本発明の実施形態による、頚動脈鞘内に位置する患者の迷走神経の一部分を刺激する方法のブロック図。
図6】本発明の実施形態による、頚動脈鞘内に位置する患者の迷走神経のある領域を刺激するためのシステムを示す概略図。
図7A】迷走神経の選択領域に隣接して位置付けされた、本発明のいくつかの実施形態による図6に示された2つの神経刺激リード線の先端側部分を示す概略図。
図7B】迷走神経の選択領域に隣接して位置付けされた、本発明のいくつかの実施形態による図6に示された2つの神経刺激リード線の先端側部分を示す概略図。
図7C】迷走神経の選択領域に隣接して位置付けされた、本発明のいくつかの実施形態による図6に示された2つの神経刺激リード線の先端側部分を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明には様々な改変形態および代替形態の可能性があるが、特定の実施形態が例として図面に示されており、かつ、以下に詳細に説明される。しかしながら、本発明を記載の特定の実施形態に限定することが目的ではない。それどころか、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内にあるすべての改変形態、等価物、および代替形態を包含するように意図される。
【0034】
詳細な説明
様々な実施形態による本明細書中に記載された神経刺激システムおよび方法は、自律神経バランスの変調により、内科的、精神医学的、または神経学的な障害のような様々な障害を治療およびコントロールするために、効果的かつ効率的に使用されうる。複数の電極担持リード線(例えば2以上)であってその一部分が対象とする神経幹に隣接して位置付けされるリード線を使用して、多様な電極ベクトルの組合せが、刺激閾値を低くかつ有害な副作用を最小として該神経幹の1つ以上の選択部分を十分に刺激するためのシステムに利用可能である。
【0035】
図1は、頚動脈鞘10の内側に位置する患者の迷走神経6のある領域を刺激するためのシステム2を示す。頚動脈鞘10は、総頚動脈(図示せず)、内頚静脈(IJV)14、および迷走神経6を包んでいる、多層の筋膜を備えている。システム2は、第1の神経刺激リード線18、第2の神経刺激リード線22、および、例えばパルス発生器のような移植式医療用デバイス(IMD)26を備えている。様々な実施形態によれば、第1の神経刺激リード線18は頚動脈鞘10の内側に位置し、第2の神経刺激リード線22は頚動脈鞘10の外側に位置する。図示された実施形態では、第1の神経刺激リード線18はIJV14の内側に配置されている。
【0036】
IMD26は神経刺激パルスを送達するようになされ、特に、神経刺激回路28を備えている。神経刺激回路は、第1および第2の神経刺激リード線18,22のうち少なくともいずれかを介して迷走神経に電気刺激を選択的に付与するための信号を送受信するようになされている。いくつかの実施形態では、神経刺激回路28は、IMD26が作動する基になる命令を格納するためのプログラム可能メモリ、感知された生理学的なデータまたはフィードバックを処理するためのプロセッサ回路、およびいくつかの実施形態では、何らかの適用された治療法(例えば刺激パルス)の有効性を表し得る、結果として生じた生理学的フィードバックを受信する、治療漸増/調整(therapy titration/adjustment)回路を備えている。IMD26(図1)によって生成された電気刺激は、第1および第2の神経刺激リード線18,22を介して迷走神経6の選択領域に送達されうる。
【0037】
第1および第2の神経刺激リード線18,22は、それぞれの基端部30,34においてIMD26に接続される。リード線本体38,42各々の基端部30,34は、コネクタ(図示せず)を介してIMD26に作動可能なように接続されるように構成される。第1および第2の神経刺激リード線18,22は、各リード線の基端部30,34から先端部50,54へと伸びる長尺状で絶縁性のリード線本体38,42をそれぞれ備えている。各々のリード線本体38,42は可撓性であり、いくつかの実施形態では円形断面を有しうる。別例として、他の実施形態では、リード線本体38,42(またはその一部分)は非円形(例えば楕円形)の断面形状を有しうる。いくつかの実施形態では、リード線本体38,42は複数のルーメンを備えることができる。例えば、リード線本体38,42は、導体を収容するため、または、リード線18,22のうち少なくともいずれか一方の送達もしくは移植のうち少なくともいずれかのためのガイドワイヤもしくはスタイレットのようなガイド用要素を収容するために各々構成された、1以上のルーメンを備えることができる。
【0038】
様々な実施形態によれば、各々の神経刺激リード線18,22は、それぞれのリード線本体38,42の基端部30,34から先端部50,54に向かってそれぞれのリード線本体38,42の内部を伸びる、個別のワイヤ、コイル、またはケーブルなど複数の導体を備えることができる。該導体は、シリコーン、ポリウレタン、エチレンテトラフルオロエチレン、または他の生物学的適合性を有する絶縁性ポリマーのような絶縁体を用いて、絶縁かつ/または適所でモールド成形されうる。1つの典型的な実施形態では、導体は径方向等距離(co−radial)の設計を有する。この実施形態では、個々の導体はそれぞれ別々に絶縁され、次いで平行に巻回されて単一のコイルを形成する。別の典型的な実施形態では、導体は同軸(co−axial)の構成を有する。さらに別の実施形態では、導体のうち1つ以上は、各々がリード線本体38,42の前述のルーメンのうちの1つを通して送られる撚り線ケーブルである。一般に、リード線は、例えばコイル導体とケーブル導体との組合せのような、導体の種類の任意の組合せを含むことができる。
【0039】
本発明のさらなる実施形態によれば、各導体は、個々の電極に、例えば電極60に1対1方式で接続されるようになされて、各電極60が個々に位置指定可能となりうるようになっている。加えて、神経刺激リード線18,22の各電極60は、電流が例えば適用されたときに正(+)または負(−)の極性を有して特定の刺激フィールドを作出するように、IMD26によってプログラムされうる。したがって、プログラムされた陽極電極および陰極電極の様々なベクトルの組合せを使用して、近隣の他の構造物(例えば筋肉、他の神経など)を刺激することなく迷走神経6の選択領域を刺激するための様々な電流密度フィールド波形を送達することができる。
【0040】
本発明の様々な実施形態によれば、図2A〜2Cおよび3A〜3Cに例証されるように、第1および第2の神経刺激リード線18,22各々の先端側部分64,68は、頚動脈鞘10の内側にある迷走神経6のある領域に隣接して位置付けされる。多くの実施形態では、先端側部分64,68各々には、多重電極(例えば電極60)が設置されている。多重電極を備えた実施形態では、電極は1つ以上の双極電極対を形成することができる。いくつかの実施形態では、電極は、当分野で一般に知られているようなリング電極または部分的にリング型の電極であってよい。他の実施形態では、電極は、ステント電極、カフ電極またはシース電極であってよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、図2Aに示されるように、第1の神経刺激リード線18の先端側部分64は頚動脈鞘10の内側で迷走神経6に隣接して位置している。一実施形態では、提示されたように、第1の神経刺激リード線18は頚動脈鞘内においてIJV14と迷走神経6との間の位置にあってもよい。リード線18の先端側部分64は、頚動脈鞘10の内側にある迷走神経6の選択領域に隣接する場所まで皮下を通して進められうる。先端側部分64は、リード線の先端側部分64のずれを防止するために、縫合材または他の固定手段を使用して所望の位置に固定可能である。
【0042】
他の実施形態では、図2Bに示されるように、第1の神経刺激リード線18の先端側部分64は、IJV14内側の迷走神経6の選択領域に隣接する位置にあってもよい。先端側部分64は、IJV14の内側の部位に血管内送達されうる。リード線18の先端側部分64に位置する電極60は、迷走神経6の選択領域を刺激するために、IJV14の血管壁72を横切って第2のリード線上の電極に電気パルスを経血管的に送達するようになされている。
【0043】
第1の神経刺激リード線18の先端側部分64は様々な技術によってIJV14の内側で安定化かつ固定されうる。いくつかの実施形態では、第1の神経刺激リード線18の先端側部分64は、IJV14の内側で該先端側部分を安定化かつ固定するために、IJV14の血管壁72に接触して該血管壁に横方向または半径方向の力を加えるようになされた、予め形成されたバイアス部76を備えることができる。予め形成されたバイアス部76は、リード線18の先端側部分64に位置する任意の電極60を迷走神経6に向かう方向に配向するために使用することができる。いくつかの実施形態では、予め形成されたバイアス部76は、送達に適した虚脱形態から、予め形成されたバイアス部分がIJV14の血管壁72と接触かつ係合してIJV14の中で先端側部分64を固定かつ安定化する拡張形態へと、移行するようになされている。予め形成されたバイアス部76は、スパイラル形状、S字曲線、正弦曲線などのうちいずれか1つを備えることができる。一実施形態では、図2Bに示されるように、予め形成されたバイアス部76はスパイラル形状を有する。他の実施形態では、より一層詳しく以下に記述されるように、先端側部分64はIJV14の中で先端側部分64を固定かつ安定化するためのステント様部材を備えることができる。
【0044】
図2Aおよび2Bに示されるように、様々な実施形態に従って、第2の神経刺激リード線22の先端側部分68は、頚動脈鞘10の外側の、迷走神経6の選択領域および頚動脈鞘10内に位置する第1の神経刺激リード線18の先端側部分64に隣接して設置される。第2の神経刺激リード線22の先端側部分68はさらに1つ以上の電極60を備え、頚動脈鞘10の外周80に巻き付けられるように構成される。先端側部分68は、その上に設置された1つ以上の電極60が頚動脈鞘10の内部にある迷走神経6に向かう方向に配向されるように、頚動脈鞘10の外周80に巻き付けられる。いくつかの実施形態では、先端側部分68は、1つ以上の電極60が迷走神経6に向かうように配向され、かつ、頚動脈鞘10の外側表面84に接触するように、頚動脈鞘10の外周80に巻き付けられる。1つ以上の電極60は、頚動脈鞘10の壁88を横切って頚動脈鞘内にある迷走神経6に電気パルスを送達するようになされる。
【0045】
いくつかの実施形態では、先端側部分68は、移植されたときに先端側部分68が頚動脈鞘10の外側表面84に巻き付きかつ係合するように、弾性的に付勢された予め形成されたスパイラル形状を有することができる。一実施形態では、予め形成されたスパイラル状物の内径は頚動脈鞘10の外径よりわずかに小さく、先端側部分68が頚動脈鞘10の外周80の周上に配置されたときに弾性付勢が先端側部分68を頚動脈鞘10に係合せしめて、頚動脈鞘10の周囲でリード線22の先端側部分68を固定かつ安定化し、結果として電極が頚動脈鞘の外側表面84と接触して配置されるようになっている。他の実施形態では、縫合材が任意選択で使用されて、該縫合材のみで、または上記に議論された予め形成された弾性的に付勢された形状と組み合わせて、リード線22の先端側部分68を頚動脈鞘10の外周に沿って適所に固定することもできる。他の実施形態では、先端側部分68は、以下に一層詳細に記載されるように、頚動脈鞘10の外側表面84に巻き付きかつ係合するようになされたカフ電極またはシース電極を備えることができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、図2Cに示されるように、第2の神経刺激リード線22は頚動脈鞘10の内側に配置されてもよい。図中の実施形態では、第2の神経刺激リード線22はIJV14の内側に配置されている。いくつかの実施形態では、第2の神経刺激リード線22は頚動脈鞘10の内側であるがIJV14の外側に配置されてもよい。第1の神経刺激リード線18および第2の神経刺激リード線22は、迷走神経6が第1の神経刺激リード線18と第2の神経刺激リード線22との間を伸びるように、互いに対して位置付けされてもよい。第1の神経刺激リード線18および第2の神経刺激リード線22に設置された電極60は、迷走神経6の選択領域を刺激するために両リード線の間に電気パルスを送達するようになされる。
【0047】
本発明の他の実施形態では、図3A〜3Cに示されるように、第1の神経刺激リード線18の先端側部分64はステント様部材90を備えている。ステント様部材90は、送達に適した虚脱形態から拡張形態へと移行するようになされている。ステント様部材90を備えた第1のリード線18の先端側部分64は、虚脱形態で、IJV14の内側の、迷走神経6の選択領域に隣接する位置に血管内送達されうる。その後、ステント様部材90は、その虚脱形態から、IJV14の壁72と接触かつ係合する拡張形態へと移行せしめられる。拡張形態では、ステント様部材90はIJV14の壁72に接触かつ係合して、リード線18の先端側部分64をIJV14の内側において迷走神経6の選択領域に隣接する位置に固定かつ安定化する。
【0048】
一実施形態では、図3Aに示されるように、1つ以上の電極60がステント様部材90の外側表面92に設置される。ステント様部材90は、その外側表面92に設置された電極60のうち少なくとも1つが迷走神経6に向かう方向に配向されるように、移植処置の際に回転せしめられてもよい。
【0049】
さらに別の実施形態では、図3Bおよび3Cに示されるように、ステント様部材90は、IJV14の壁72を横切って迷走神経6に電気パルスを経血管的に送達するようになされたステント電極であってよい。さらなる実施形態では、ステント電極90は、迷走神経6の他の区域および周囲の解剖学的構造物を望ましくない刺激から保護するために、選択的に絶縁されてもよい。1つの実施形態では、例えば、ステント電極90は内側表面が絶縁されてもよい。別の実施形態では、ステント電極90は、ステント電極90の1つ以上の領域を使用して迷走神経6を電気刺激することができるように、リード線18の内側を伸びる2以上の導体に作動可能なように接続されてもよい。
【0050】
他の実施形態では、図3Bに示されるように、第2の神経刺激リード線22の先端側部分68はカフ電極94を備えてもよい。カフ電極94は、刺激されるべき迷走神経6の選択領域、および頚動脈鞘10の内側にあるステント様電極90に隣接するように、頚動脈鞘10の周囲に位置付けされる。カフ電極94は弾性材料から形成され、その内側表面98に設置された1つ以上の電気接点96を有する。神経カフ電極94は、該電極が頚動脈鞘10の外側表面84に巻き付きかつ係合し、その結果として該カフ94の内側表面に設置された1つ以上の電極が頚動脈鞘10の外側表面84と接触して配置されるように、十分な弾力性を有する。リード線22の内側を伸びる1つ以上の導体は、1つ以上の電気接点96を介して頚動脈鞘10の壁88を横切って迷走神経6に電気パルスを経血管的に送達するために、神経カフ電極94に接続される。いくつかの実施形態では、IJV14の内側に位置するステント様電極90は負極性を有し、かつ、神経カフ電極94はリターン電極として作用しつつ正極性を有することができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、図示されるように、第1および第2の神経刺激リード線18,22は、カフ電極94がステント様部材90に対して軸方向に隣接するように位置付けされる。いくつかの実施形態では、第1および第2の神経刺激リード線18,22は、第1の神経刺激リード線18の1つ以上の電極と第2の神経刺激リード線22の1つ以上の電極との間に縦方向のベクトルを提供するために、カフ電極94がステント様電極90より頭方または尾方に並ぶように位置付けされる。
【0052】
さらに別の実施形態では、図3Cに示されるように、第2の神経刺激リード線22の先端側部分68はシース電極102を備えることができる。シース電極102は、該電極が、刺激されるべき迷走神経6の選択領域および頚動脈鞘10の内側に位置するステント様電極90に隣接するように、頚動脈鞘10の周囲に位置付けされる。上述のカフ電極94と同様に、シース電極102は弾性材料から形成され、その内側表面108に設置された1つ以上の電気接点104を有する。シース電極102は、該電極が頚動脈鞘10の外側表面84に巻き付きかつ係合するように、十分な弾力性を有する。リード線22の内側を伸びる1つ以上の導体は、1つ以上の電気接点104を介して頚動脈鞘10の壁88を横切って迷走神経6に電気パルスを経血管的に送達するために、シース電極102に接続される。しかしながら、カフ電極94とは異なり、シース電極102は頚動脈鞘10の内側にあるステント電極90の長さmよりも長い、長さ方向軸xに沿う方向の全長lを有する。いくつかの実施形態では、シース電極102は、縦方向のベクトルを提供するために、該シース電極の基端部110および先端部112が頚動脈鞘10の内側に位置するステント様電極90の基端部116および先端部120を越えて伸びるように、頚動脈鞘10の外周80の周上に配置される。1つの実施形態では、例えば、シース電極は約5mm〜約25mmの範囲の全長を有しうる。いくつかの実施形態では、IJV14の内側に位置するステント電極90は負極性を有し、かつ、シース電極102はリターン電極として作用しつつ正極性を有することができる。
【0053】
一実施形態では、シース電極102は、頚動脈鞘10と接触するようになされる場合は該シース電極102の内側表面に接続された長い帯状電極を備えている。長い帯状電極は長さが約3mm〜約10mmの範囲であってよく、かつ、神経を捕捉するためにリターン電極としてより大きな半径を提供してもよい。長い帯状電極はさらに、ペーシング閾値を低下させる可能性もある。
【0054】
図2A〜2Cおよび3A〜3Cにおいて概論的に例証されるように、IMD26(図1)によって生成された電気刺激は、上述の神経刺激リード線18,22の先端側部分64,68の様々な実施形態の任意の組合せを使用して、迷走神経6の選択領域に送達されうる。リード線18,22の各々はそれぞれの先端側部分64,68に設置された1つ以上の電極60,90,94,102のうち少なくともいずれかを備えて、迷走神経6の選択領域の周辺で電極アレイ(リード線間およびリード線内の電極構成を含む)を形成する。迷走神経6の選択領域の周辺に位置付けされた電極アレイ、ならびにより具体的には第1および第2の神経刺激リード線18,22によって提供される数多くの電極ベクトルの組合せ(図4)は、特定の内科的、精神医学的、または神経学的な障害を効果的かつ効率的に治療するために電極間に必要または望ましい刺激電流密度フィールドを誘導することを容易にする。電極60,90,94,102の様々な組合せが、迷走神経6の選択領域内およびその周辺の電流密度フィールドの形状を変化させるために使用される。適切な刺激パラメータ(IMD26(図1)それ自体により、または外部プログラマを経て医師もしくは他の介護者により決定される)およびアレイ内での適切な電極位置選定を使用することにより、神経刺激システム2(図1)は、所望の治療効果をもたらす活動電位を迷走神経6の選択領域において引き起こすことができる。加えて、低い刺激閾値と刺激の副作用の最小化とをもたらす刺激電流密度フィールドが2つ以上の電極60,90,94,102の間に誘導されうる(すなわち電極ベクトル)。
【0055】
図4は、本発明の様々な実施形態によって詳細に上述されるような、頚動脈鞘10の内側にある患者の迷走神経6の選択領域に隣接して配置されたときに、2つのリード線18,22の先端側部分64,68によって生成されうる様々な電極ベクトルの組合せを示す。刺激電流を送達するために選択される電極60,90,94,102の極性および位置、ならびに刺激電流のパラメータ(例えば振幅、周波数、バースト周波数、負荷サイクル、またはパルス幅など)は、1以上の感知された生理学的応答の状況、低い刺激閾値を望む志向、刺激が治療するはずの特定の病気、または刺激の副作用を最小化もしくは緩和することを望む志向に基づくことができる。加えて、数多くの電極ベクトルの組合せは、数多い中でも特に、1つの生理学的フィードバック応答もしくは該応答の組合せ、最小程度の刺激の副作用、または低い刺激閾値パラメータ、の許容可能なバランスを最適化するかまたは提供する1つ以上の電極の組合せを、医師またはIMD26が回帰的に選択することを容易にすることができる。
【0056】
図5は、2つの神経刺激リード線18,22を使用して頚動脈鞘10の内側に位置する患者の迷走神経6の選択領域を刺激する方法200を概説するブロック図である。様々な実施形態によれば、方法200は、第1の神経刺激リード線18を、該リード線の先端側部分64が迷走神経6の選択領域に隣接して(または近接して)位置付けされるように、頚動脈鞘10の内側に移植するステップを含む(ブロック204a,204b)。1つの実施形態では、1つ以上の電極60を備えた第1の神経刺激リード線18の先端側部分64は、頚動脈鞘10の内側にあるIJV14の内側の、迷走神経6の選択領域に隣接する位置に移植される(ブロック204a)。別の実施形態では、1つ以上の電極60が設置されている第1の神経刺激リード線18の先端側部分64は、頚動脈鞘10の内側の、迷走神経6の選択領域に隣接する位置に移植される(ブロック204b)。第1の神経刺激リード線18は、外科的切開、内視法、またはX線透視もしくは他の標準的な視覚化技術の下での経血管送達技法など様々な技術を使用して、頚動脈鞘10の内側に移植可能である。
【0057】
図5に概説された方法200はさらに、第2の神経刺激リード線を、頚動脈鞘10の外側において迷走神経6の選択領域および第1の神経刺激リード線18に隣接する位置に位置付けするステップを含む(ブロック208)。より具体的には、1つ以上の電極60を備えた第2の神経刺激リード線22の先端側部分68は、頚動脈鞘の外側において頚動脈鞘10の内側に位置する第1の神経刺激リード線18の先端側部分64および迷走神経6に隣接する位置に、またはIJV14の中に、位置付けされる。いくつかの実施形態では、上記に一層詳細に記載されているように、先端側部分68は、先端側部分68が頚動脈鞘に接触しているときに少なくとも1つの電極60が迷走神経6および第1の神経刺激リード線18の先端側部分64に向かう方向に配向されるように、頚動脈鞘の外側表面に係合するように構成される。例えば、いくつかの実施形態では、第2の神経刺激リード線22の先端側部分68は、頚動脈鞘に螺旋状に巻き付けられてもよい。
【0058】
2つのリード線および該リード線それぞれの先端側部分64,68が迷走神経6の選択領域に隣接して位置付けされてしまえば、第1および第2の神経刺激リード線18,22の先端側部分に位置する2組以上の電極間に確立された1つ以上の電極ベクトルが、迷走神経の刺激について評価される(ブロック212)。電極ベクトルは、該ベクトルが迷走神経を刺激し、かつ、所望の応答を生じる能力について、予め規定された刺激閾値に対して評価される。その後、迷走神経6を刺激するための電極ベクトルが評価ステップの間に生成されたデータを使用して選択され、次いで迷走神経6が刺激される(ブロック216および220)。
【0059】
本発明のさらに別の実施形態では、図6に示されるような単一リード線のシステム300を使用して、迷走神経6の領域を刺激することができる。様々な実施形態によれば、システム300は、基端部120においてコネクタ(図示せず)を介してIMD126に接続された神経刺激リード線118を備えている。神経刺激リード線118は、様々な実施形態によって上記に議論された、リード線18,22と同じ特徴のうち多数または全てを有することができる。
【0060】
本発明の様々な実施形態によれば、図7A〜7Cに例証されるように、リード線118の先端側部分164は、頚動脈鞘10の内側に位置する迷走神経6の領域に隣接して位置付けされうる。多くの実施形態では、先端側部分164は、該部分に設置された多重電極(例えば電極160)を備えることができる。多重電極を備えた実施形態では、電極は1以上の双極電極対を形成することができる。いくつかの実施形態では、当分野で一般に知られているように、電極はリング電極または部分的にリング型の電極であってよい。他の実施形態では、電極はステント電極、カフ電極またはシース電極であってよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、図7Aに示されるように、神経刺激リード線118の先端側部分164は、頚動脈鞘10の内側においてIJV14と迷走神経6との間の位置に設置されうる。1つの実施形態では、リード線118の先端側部分164は、頚動脈鞘10の内側に位置する迷走神経6の選択領域に隣接する場所まで皮下を通して進められうる。先端側部分164は、リード線の先端側部分164のずれを防止するために、縫合材または他の固定手段を使用して所望の位置に固定可能である。さらに別の実施形態では、リード線118の先端側部分164は、迷走神経6の周囲に配置されるようになされた神経カフ(図示せず)を備えることもできる。
【0062】
他の実施形態では、図7Bに示されるように、神経刺激リード線118の先端側部分164は、IJV14の内側において迷走神経6の選択領域に隣接する位置に設置されることもできる。先端側部分164は、IJV14の内側の部位に血管内送達されうる。リード線118の先端側部分164に位置する電極160は、迷走神経6の選択領域を刺激するためにIJV14の血管壁72を横切って電気パルスを経血管的に送達するようになされている。
【0063】
神経刺激リード線118の先端側部分164は様々な技術によってIJV14の内側に安定化かつ固定されうる。いくつかの実施形態では、神経刺激リード線118の先端側部分164は、IJV14の内側に先端側部分を安定化かつ固定するために、IJV14の血管壁72に接触して横方向または半径方向の力を加えるようになされた、予め形成されたバイアス部176を備えることができる。予め形成されたバイアス部176は、リード線118の先端側部分164に設置された任意の電極160を迷走神経6に向かう方向に配向するために使用することができる。いくつかの実施形態では、予め形成されたバイアス部176は、送達に適した虚脱形態から、予め形成されたバイアス部分がIJV14の血管壁72と接触かつ係合してIJV14の中で先端側部分164を固定かつ安定化する拡張形態へと、移行するようになされている。予め形成されたバイアス部176は、スパイラル形状、S字曲線、正弦曲線などのうちいずれか1つを備えることができる。一実施形態では、図7Bに示されるように、予め形成されたバイアス部176はスパイラル形状を有している。他の実施形態では、図3Aに関して詳細に上述されるように、先端側部分164はIJV14の中に先端側部分64を固定かつ安定化するためのステント様部材を備えてもよい。
【0064】
他の実施形態では、リード線118の先端側部分164は、頚動脈鞘10の外側において迷走神経6の選択領域に隣接して設置されうる。1つの実施形態では、リード線118の先端側部分164は、頚動脈鞘10の外周表面80に螺旋状に巻き付けられるように構成される。先端側部分164は、その上に設置された1つ以上の電極160が頚動脈鞘10の内側に位置する迷走神経6に向かう方向に配向されるように、頚動脈鞘10の外周80に巻き付けられる。いくつかの実施形態では、先端側部分164は、1つ以上の電極160が迷走神経6に向かって配向され、かつ、頚動脈鞘10の外側表面84に接触するように、頚動脈鞘10の外周80に巻き付けられる。1つ以上の電極160は、頚動脈鞘10の壁88を横切って該頚動脈鞘の内側に位置する迷走神経6に電気パルスを経血管的に送達するようになされる。
【0065】
いくつかの実施形態では、先端側部分164は、移植されたときに先端側部分164が頚動脈鞘10の外側表面84に巻き付き、係合しかつ圧縮力を加えるように、弾性的に付勢された予め形成されたスパイラル形状を有することができる。一実施形態では、予め形成されたスパイラル状物の内径は頚動脈鞘10の外径よりわずかに小さく、その結果、先端側部分164が頚動脈鞘10の外周80の周上に配置されたときに弾性付勢が先端側部分164を頚動脈鞘10に係合せしめて、頚動脈鞘10の周囲でリード線118の先端側部分164を固定かつ安定化するようになっている。他の実施形態では、縫合材が任意選択で使用されて、該縫合材のみで、または上記に議論された予め形成された弾性的に付勢された形状と組み合わせて、リード線118の先端側部分164を頚動脈鞘10の外周に沿って適所に固定することもできる。他の実施形態では、先端側部分164は、図3Bおよび3Cに関して一層詳細に上述されたように、頚動脈鞘10の外側表面84に巻き付きかつ係合するようになされたカフ電極またはシース電極を備えることもできる。
【0066】
先端側部分164が迷走神経6の領域に隣接する位置に位置付けかつ固定されれば、IMD126(図6)によって生成された電気刺激は、リード線内電極アレイを形成するリード線118の先端側部分164に位置する電極の任意の組合せを使用して、迷走神経6の選択領域に送達されうる。
【0067】
議論された典型的な実施形態に対し、本発明の範囲から逸脱することなく様々な改変および追加を加えることができる。例えば、上述の実施形態は特定の特徴を表しているが、本発明の範囲には、様々な組み合わせの特徴を有する実施形態および記載された特徴を必ずしも全て含んでいない実施形態も含まれる。従って、本発明の範囲は、特許請求の範囲の範囲内にあるそのような全ての代替形態、改変形態および変更形態を、それらの等価物全てとともに包含するように意図されている。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図6
図7A
図7B
図7C
図5