(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した一実施形態である発光ダイオード用エピタキシャルウェーハについて、これを用いた発光ダイオードチップとともに図面を用いて詳細に説明する。
なお、本実施形態は、上下に電流を流す一般的な素子構造とした。また、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0014】
<発光ダイオード用エピタキシャルウェーハ>
図1は、本発明を適用した一実施形態である発光ダイオード用エピタキシャルウェーハの構造を説明するための断面模式図である。
図1に示すように、本実施形態の発光ダイオード用エピタキシャルウェーハ10(以下、「エピウェーハ10」という)は、GaAs基板1と、GaAs基板1上に設けられたpn接合型の発光部2と、発光部2上に設けられた歪調整層3と、を少なくとも備えて概略構成されている。
【0015】
具体的には、エピウェーハ10は、GaAs基板1の表面上に、GaAsからなる緩衝層4、下部クラッド層5、発光部2、上部クラッド層6、及び歪調整層3が順次積層された素子構造を有する。
なお、本実施形態では、以下の説明において、緩衝層4、下部クラッド層5、発光部2、上部クラッド層6、及び歪調整層3が積層された素子構造をエピタキシャル成長層という場合がある。
【0016】
上記素子構造には、公知の機能層を適時加えることができる。例えば、オーミック(Ohmic)電極の接触抵抗を下げるためのコンタクト層、素子駆動電流を発光部の全般に平面的に拡散させるための電流拡散層、逆に素子駆動電流の通流する領域を制限するための電流阻止層や電流狭窄層など公知の層構造を設けることができる。また、GaAs基板1の上方には、反射層(DBR層)など、公知の層構造を設けてもよい。
【0017】
GaAs基板1は、公知の製法で作製された市販品の単結晶基板を使用できる。GaAs基板1のエピタキシャル成長させる表面は、平滑であることが望ましい。GaAs基板1の表面の面方位は、エピ成長しやすい、(100)面及び(100)面から、±20°以内にオフした範囲が品質の安定性の観点からのぞましい。さらに、GaAs基板1の面方位の範囲が、(100)方向から(0−1−1)方向に15°オフ±5°であることがより好ましい。
【0018】
GaAs基板1の転位密度は、エピタキシャル成長層の結晶性を良くするために低い方が望ましい。具体的には、例えば、10,000個cm
−2以下、望ましくは、1,000個cm
−2以下であることが好適である。
【0019】
GaAs基板1の導電型は、n型であってもp型であっても良い。GaAs基板1のキャリア濃度は、所望の電気伝導度と素子構造に基づき、適宜選択することができる。例えば、GaAs基板1がシリコンドープのn型である場合には、キャリア濃度が1×10
17〜5×10
18cm
−3の範囲であることが好ましい。これに対して、GaAs基板1が亜鉛をドープしたp型の場合には、キャリア濃度2×10
18〜5×10
19cm
−3の範囲であることが好ましい。
【0020】
GaAs基板1の厚さは、基板のサイズに応じて適切な範囲がある。GaAs基板1の厚さが適切な範囲よりも薄いと、エピウェーハ10の製造プロセス中に割れて、収率が低下してしまうおそれがある。
一方、GaAs基板1の厚さが適切な範囲よりも厚いと材料コストが増加することになる。このため、GaAs基板1の基板サイズが大きい場合、例えば、直径75mmの場合には、ハンドリング時の割れを防止するために250〜500μmの厚さが望ましい。
同様に、GaAs基板1の基板サイズが直径50mmの場合は、200〜400μmの厚さが望ましく、直径100mmの場合は、350〜600μmの厚さが望ましい。
なお、本実施形態では、GaAs基板1の直径は、生産性の点から75mm以上であることが好ましい。
【0021】
このように、GaAs基板1の基板サイズに応じて基板の厚さを厚くすることにより、後述する歪発光層7に起因するエピウェーハ10の反りを低減することができる。これにより、エピタキシャル成長中の温度分布が均一となることため、エピウェーハ10面内の波長分布を小さくすることができる。なお、GaAs基板1の形状は、特に円形に限定されず、矩形等であっても問題ない。
【0022】
発光部2は、
図1に示すように、下部クラッド層5及び上部クラッド層6と共にダブルヘテロ構造を構成している。また、発光部2は、エピウェーハ10を用いて発光ダイオード(LED)を作製した際に発光波長を制御するため、井戸構造を構成することが好ましい。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態である発光ダイオード用エピタキシャルウェーハの発光部を示す断面模式図である。
図2を参照するに、発光部2は、歪発光層7(「井戸層」、或いは「ウェル(well)層」ともいう)と、バリア層8(「障壁層」ともいう)とが交互に積層された積層構造体とされており、その両端には歪発光層7が配置されている。
【0024】
発光部2の層厚は、0.05〜2μmの範囲であることが好ましい。また、発光部2の導電型は特に限定されるものではなく、アンドープ、p型及びn型のいずれも選択することができる。発光効率を高めるには、結晶性が良好なアンドープ、或いは3×10
17cm
−3未満のキャリア濃度とすることが望ましい。
【0025】
歪発光層7の組成式は、(Al
XGa
1−X)
YIn
1−YP(0≦X≦0.1、0.35≦Y≦0.46)とされている。
【0026】
歪発光層7の層厚(単層の厚さ)が約8nm未満の薄膜である場合、井戸構造の量子効果により発光波長が短くなり、所望とする655nm以上の波長が得られなくなる。
従って、歪発光層7の層厚は、層厚の変動を加味して量子効果の発現しない8nm以上であることが望ましい。また、歪発光層7の層厚の制御の容易さを考慮すれば、10nm以上の厚さが好適である。
【0027】
バリア層8の組成式は、(Al
XGa
1−X)
YIn
1−YP(0.3≦X≦0.7、0.51≦Y≦0.54)とされている。
このように、発光部2の構成を、歪発光層7と、バリア層8とを交互に積層した積層構造とし、かつバリア層8の組成式を(Al
XGa
1−X)
YIn
1−YP(0.3≦X≦0.7、0.51≦Y≦0.54)にすることにより、バリア層8に歪発光層7とは逆の歪み(引張り歪み)を形成することが可能となる。
これにより、歪発光層7のY組成を0.37付近まで小さくすることが可能となるので、歪発光層の7ピーク発光波長を655nm以上にすることができる。
【0028】
また、バリア層8に歪発光層7とは逆の歪み(引張り歪み)を形成することで、バリア層8により、歪発光層7の歪みを緩和することが可能となる。
これにより、歪発光層7の内部における結晶欠陥の発生が抑制されるため、エピウェーハ10(発光ダイオード用エピタキシャルウェーハ)に製造されるLEDの信頼性を向上できる。
【0029】
バリア層8の層厚(単層の厚さ)は、歪発光層7の層厚(単層の厚さ)よりも厚いことが好ましい。これにより、歪発光層7の発光効率を高くすることができる。
また、バリア層8の厚さは、35〜50nmの範囲内で設定されている。つまり、バリア層8は、一般的なバリア層の厚さよりも厚くなるように構成されている。
このように、また、発光部2の構成を、歪発光層7と、バリア層8とを交互に積層した積層構造とし、かつバリア層8の組成式を(Al
XGa
1−X)
YIn
1−YP(0.3≦X≦0.7、0.51≦Y≦0.54)にすると共に、バリア層8の厚さを35〜50nmの範囲内で設定することにより、バリア層8により、さらに歪発光層7の歪を緩和することが可能となるため、歪発光層7のY組成の値を0.35付近まで小さくすることが可能となる。
【0030】
これにより、歪発光層7のピーク発光波長を655〜685nmにすることができると共に、歪発光層7の内部における結晶欠陥の発生がさらに抑制されるため、エピウェーハ10(発光ダイオード用エピタキシャルウェーハ)に製造されるLEDの信頼性をさらに向上できる。
【0031】
また、バリア層8の層厚が、50nmを超えると発光波長の波長に近くなり、光の干渉、やブラッグ反射等の光学的な影響がでる。したがって、バリア層8は、50nm以下の層厚とすることが好ましく、40nm以下の層厚がより好ましい。上述したように、歪発光層7の層厚が薄く、バリア層8の層厚が厚いほうが、歪発光層7の歪をバリア層8によって吸収する効果が得られると共に、歪発光層7に結晶欠陥が発生しにくいという効果が得られる。
【0032】
なお、一般的には、歪発光層7の層厚が30nmを超えると、歪量が大きくなりすぎるため、結晶欠陥や表面の異常が発生しやすくなるが、本実施の形態では、バリア層8に歪発光層7とは逆の歪み(引張り歪み)を形成し、またバリア層8の厚さを厚く(35〜50nmの範囲内で設定)しているため、歪発光層7の層厚を8〜38nmの範囲にすることができる。
【0033】
歪発光層7とバリア層8との多層構造において、歪発光層7とバリア層8とを交互に積層する対の数は特に限定されるものではないが、8対以上40対以下であることが好ましい。すなわち、発光部2には、歪発光層7が8〜40層含まれていることが好ましい。
ここで、発光部2の発光効率が好適な範囲としては、歪発光層7が8層以上であることが好ましい。一方、歪発光層7及びバリア層8は、キャリア濃度が低いため、多くの対にすると順方向電圧(VF)が、増大してしまう。このため、40対以下であることが好ましく、30対以下であることがより好ましい。
【0034】
また、歪発光層7が有する歪は、エピタキシャル成長基板と発光部2との格子定数が異なるため、発光部2中に発生するストレスである。このため、歪発光層7とバリア層8とを交互に積層する対の数、すなわち、発光部2に含まれる歪発光層7の層の数が前記範囲を超えると、発光部2が歪に耐えきれずに結晶欠陥が発生し、表面状態の悪化や発光効率低下などの問題が発生する。
【0035】
図3は、本発明の一実施形態である発光ダイオードを示す平面図であり、
図4は、
図3に示す発光ダイオードのA−A’線に沿った断面模式図である。
図3及び
図4を参照するに、歪発光層7は、上下に電流を流す素子構造(発光ダイオード20)とした場合に、そのピーク発光波長が655〜685nmの範囲とすることが好ましく、660〜670nmの範囲とすることがより好ましい。上記範囲の発光波長は、植物育成(光合成)用の光源に適した発光波長の1つであり、光合成に対して反応効率が高いために望ましい。
【0036】
一方、700nm以上の長波長領域の光を利用すると、植物の育成を抑制する反応が起こる為、長波長域の光量は少ない方が望ましい。従って、効率的に植物育成する為には、光合成反応に対して最適な655〜675nmの波長領域の光が強く、700nm以上の超波長領域の光を含まない赤色光源が最も好ましい。
【0037】
また、歪発光層7の発光波長700nmにおける発光強度が、上記ピーク発光波長における発光強度の10%未満であることが好ましい。このような特性の歪発光層7を有するエピウェーハ10を用いて作製された発光ダイオードは、植物育成の光合成の促進に使用する照明として好適に用いることができる。また、歪発光層7の構成は、上記特性を充足するように組成、層厚、層数を選択することができる。
【0038】
歪調整層3は、
図1に示すように、上部クラッド層6を介して発光部2上に設けられている。また、歪調整層3は、発光部2(歪発光層7)からの発光波長に対して透明である。さらに、歪調整層3は、上記GaAs基板1の格子定数よりも小さい格子定数を有している。
【0039】
歪調整層3としては、(Al
XGa
1−X)
YIn
1−YP(0≦X≦1、0.6≦Y≦1)の組成を有する材料を適用することができる。上記Xは、エピウェーハ10の素子構造にもよるが、Al濃度が低い材料が化学的に安定であることから、0.5以下であることが好ましく、0であることがより好ましい。
また、上記Yの下限値は、0.6以上であることが好ましい。ここで、発光部2(歪発光層7)の有する歪が同じ場合を比較すると、上記Yの値が小さいほうが歪調整層3の歪調整効果が小さくなる。このため、歪調整層3の層厚を厚くする必要が生じ、歪調整層3の成膜時の成長時間とコストが上昇してしまうため、上記Yの値は0.6以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。
【0040】
また、歪調整層3としては、発光波長に対して透明であり、Al
XGa
1−XAs
1−YP
Y(0≦X≦1、0.6≦Y≦1)の組成を有するIII−V属半導体材料も好適に用いることができる。
上記組成を有する歪調整層3では、Yの値によって格子定数が変化する。上記Yの値が大きい方が、格子定数が小さくなる。また、発光波長に対する透明度は、上記X及びYの値の双方に関連する為、透明な材料となるようにX及びYの値を選択すれば良い。
【0041】
さらに、歪調整層3として、GaP層を用いることができる。このGaPは、組成の調整が不要であると共に歪調整効果が大きいため、生産性及び安定性の面からも歪調整層3の材料として最も適している。
【0042】
歪調整層3は、エピタキシャル成長基板であるGaAs基板1の格子定数よりも小さい格子定数を有しているため、歪発光層7が包含する歪量のばらつきを緩和する機能を備えている。
このため、歪調整層3を設けることにより、発光波長などの特性の均一化、クラック発生等の結晶欠陥の発生防止の効果がある。ここで、歪調整層3の層厚は、0.5〜20μmの範囲であることが好ましく、3〜15μmの範囲であることがより好ましい。
歪調整層3の層厚が0.5μm未満であると、歪発光層7の歪量のばらつきを緩和するのに十分ではなく、層厚が20μmを超えると、成長時間が長くコストが増大するために好ましくない。
【0043】
また、歪調整層3の組成を制御することにより、薄いGaAs基板1を用いた場合でもエピウェーハ10の反りを低減することができるため、面内波長分布の小さいエピウェーハ10の作製が可能である。
また、同じ厚さの基板では、GaAs基板1のサイズが大きくなる程エピウェーハ10の反りは大きくなる。しかしながら、歪調整層3の組成を制御することにより、例えば、直径75mm以上の大口径のGaAs基板1を使用した場合であっても、エピウェーハ10の反りを低減させることができる。
【0044】
さらに、例えば、高輝度化を実現するために機能性基板とエピウェーハ10との接合を行なう素子構造の場合にも、エピウェーハ10の反りが大きい場合は割れなどの問題が生じるため、エピウェーハ10の反りを小さくすることが望ましい。
エピウェーハ10の反り量は、例えば、直径75mm以上のGaAs基板1を使用した場合において、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましい。
【0045】
なお、基板サイズが大きいほど、反りが大きくなる傾向がある。例えば、基板サイズが75mmの場合は、歪調整層及び歪発光層の組成、基板の厚さにより変動するが、反りは約50〜150μmの範囲となる。また、基板サイズが100mmの場合は、歪調整層及び歪発光層の組成、基板の厚さにより変動するが、反りは約80〜200μmの範囲となる。
【0046】
緩衝層4は、
図1に示すように、GaAs基板1上に設けられている。緩衝層4は、エピタキシャル成長に用いる基板の結晶欠陥や格子歪の伝搬を緩和する機能を有している。
このため、基板の品質やエピタキシャル成長条件を選択すれば、緩衝層4は、必ずしも必要ではない。また、緩衝層4の材質は、エピタキシャル成長させる基板と同じ材質とすることが好ましい。
【0047】
したがって、本実施形態では、緩衝層4の材質として、GaAs基板1と同じくGaAsを用いることが好ましい。また、緩衝層4には、欠陥の伝搬を低減するためにGaAs基板1と異なる材質からなる多層膜を用いることもできる。
緩衝層4の厚さは、0.1μm以上とすることが好ましく、0.2μm以上とすることがより好ましい。
【0048】
下部クラッド層5及び上部クラッド層6は、
図1に示すように、発光部2の下面及び上面にそれぞれ設けられている。
具体的には、発光部2の下面側(GaAs基板1側)に下部クラッド層5が設けられ、発光部2の上面側(歪調整層3側)に上部クラッド層6が設けられている。そして、下部クラッド層5及び上部クラッド層6によって、発光部2を下面及び上面から挟み込んだ構造となっている。
【0049】
下部クラッド層5及び上部クラッド層6の材質としては、緩衝層4と格子整合し、且つ歪発光層7よりもバンドギャップの大きい材質が好ましく、バリア層8よりもバンドギャップが大きい材質がより好ましい。
上記材質としては、例えば、Al
XGa
1−XAsの組成を有する化合物や、(Al
XGa
1−X)
YIn
1−YP(0≦X≦1,0<Y≦1)の組成を有する化合物が挙げられる。Al
XGa
1−XAsの組成を有する場合、上記Xの値は、下限値が0.5以上であることが好ましく、0.6以上であることがより好ましい。
また、(Al
XGa
1−X)
YIn
1−YP(0≦X≦1,0<Y≦1)組成を有する場合、上記Xの値は、下限値が0.3以上であることが好ましく、0.5以上であることがより好ましい。また、上記Yの値は、0.49〜0.52の範囲が好ましく、0.49〜0.51の範囲がより好ましい。
【0050】
下部クラッド層5と上部クラッド層6とは、極性が異なる。また、下部クラッド層5及び上部クラッド層6のキャリア濃度及び厚さは、公知の好適な範囲を用いることができ、発光部2の発光効率が高まるように条件を最適化することが好ましい。
また、下部クラッド層5及び上部クラッド層6の組成を制御することによっても、エピウェーハ10の反りを低減させることができる。
【0051】
具体的に、下部クラッド層5としては、例えば、Siをドープしたn型の(Al
XGa
1−X)
YIn
1−YP(0.3≦X≦1,0.48<Y≦0.52)からなる半導体材料を用いることが望ましい。また、キャリア濃度は1×10
17〜1×10
18cm
−3の範囲が好ましく、層厚は0.5〜2μmの範囲が好ましい。
なお、下部クラッド層5の極性はGaAs基板1と同じ極性(n型)であるが、エピウェーハ10を、GaAs基板1を除去する構造のLEDに適用する場合には、この限りでない。
【0052】
一方、上部クラッド層6としては、例えば、Mgをドープしたp型の(Al
XGa
1−X)
YIn
1−YP(0.3≦X≦1,0.48<Y≦0.52)からなる半導体材料を用いることが望ましい。
また、キャリア濃度は2×10
17〜2×10
18cm
−3の範囲が好ましく、上部クラッド層6の層厚は0.5〜5μmの範囲が好ましい。なお、上部クラッド層6(及び歪調整層3)の極性は、素子構造を考慮して選択することができる。
例えば、
図3及び
図4に示すように、エピウェーハ10を上下に電流を流す素子構造の発光ダイオード20に適用する場合、上部クラッド層6(及び歪調整層3)の極性は、GaAs基板1と異なる極性(p型)とする。
【0053】
また、下部クラッド層5と発光部2との間、発光部2と上部クラッド層6との間及び上部クラッド層6と歪調整層3との間に、両層間におけるバンド(band)不連続性を緩やかに変化させるための中間層を設けても良い。この場合、各中間層は、上記両層の中間の禁止帯幅を有する半導体材料からそれぞれ構成することが好ましい。
【0054】
<エピタキシャルウェーハの製造方法>
次に、本実施形態の発光ダイオード用エピタキシャルウェーハ10(エピウェーハ10
)の製造方法について説明する。
【0055】
本実施形態のエピウェーハ10は、GaAs基板1上に、緩衝層4、下部クラッド層5、発光部2、上部クラッド層6、及び歪調整層3よりなるエピタキシャル成長層を順次エピタキシャル成長させて積層する。
【0056】
本実施形態では、分子線エピタキシャル法(MBE)や減圧有機金属化学気相堆積法(MOCVD法)等の公知の成長方法を適用することができる。なかでも、量産性に優れるMOCVD法を適用することが望ましい。具体的には、成長に使用するGaAs基板1は、成長前に洗浄工程や熱処理等の前処理を実施して、表面の汚染や自然酸化膜を除去することが望ましい。
【0057】
上記エピタキシャル成長層を構成する各層は、直径50〜150mmのGaAs基板1をMOCVD装置内に8枚以上セットし、同時にエピタキシャル成長させて積層することができる。また、MOCVD装置としては、自公転型、高速回転型等の市販の大型装置を適用することができる。
【0058】
上記エピタキシャル成長層の各層をエピタキシャル成長する際、V族構成元素の原料としては、ホスフィン(PH
3)、アルシン(AsH
3)等を用いることができる。また、各層の成長温度としては、歪調整層3としてp型GaP層を用いる場合は、720〜770℃を適用することができ、その他の各層では600〜700℃を適用することができる。さらに、各層のキャリア濃度及び層厚、温度条件は、適宜選択することができる。
【0059】
また、Mgのドーピング原料としては、例えば、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(bis−(C
5H
5)
2Mg)等を用いることができる。また、Siのドーピング原料としては、例えば、ジシラン(Si
2H
6)等を用いることができる。
【0060】
このようにして製造したエピウェーハ10は、歪発光層7を有するにもかかわらず結晶欠陥が少ない良好な表面状態が得られる。また、エピウェーハ10は、素子構造に対応して研磨などの表面加工を施しても良い。また、GaAs基板1の裏面を削って、厚さを調整しても良い。
【0061】
<植物育成用の発光ダイオード>
本実施形態の発光ダイオード用エピタキシャルウェーハ10(エピウェーハ10)を素子とした場合について説明する。
図3及び
図4に示すように、発光ダイオード20は、エピウェーハ10を用いて上下に電流を流す素子構造を有している。
具体的には、発光ダイオード20は、歪調整層3の上面及びGaAs基板1の下面に、所望の形状に加工されたオーミック電極9A,9Bが設けられている。このオーミック電極9A,9Bとしては、公知の電極材料を用いることができる。例えば、オーミック電極9A,9Bがn型電極の場合、AuGe等、p型電極には、AuBe等を用いることができる。
【0062】
発光ダイオード20は、エピウェーハ10の上面及び下面にオーミック電極9A,9Bを形成し、ダイシング法により所望のサイズのチップに裁断した後、破砕層をエッチング除去することによって製造することができる。
【0063】
図5は、本発明の一実施形態である発光ダイオードの発光スペクトルを示す図である。
図5に示すように、発光ダイオード20の発光スペクトルは、ピーク発光波長が655〜675nmの範囲である。また、発光波長700nmにおける発光強度が、ピーク発光波長における発光強度の10%未満となる。したがって、エピウェーハ10を用いて作製した発光ダイオード20は、植物育成の光合成の促進に使用する照明として好適に用いることができる。
【0064】
本実施形態のエピウェーハ10によれば、発光部2の構成を、歪発光層7と、バリア層8とを交互に積層した積層構造とし、かつバリア層8の組成式を(Al
XGa
1−X)
YIn
1−YP(0.3≦X≦0.7、0.51≦Y≦0.54)にすることにより、バリア層8に歪発光層7とは逆の歪み(引張り歪み)を形成することが可能となる。
これにより、歪発光層7のY組成を0.37付近まで小さくすることが可能となるので、歪発光層の7ピーク発光波長を655nm以上にすることができる。
【0065】
また、バリア層8に歪発光層7とは逆の歪み(引張り歪み)を形成することで、バリア層8により、歪発光層7の歪みを緩和することが可能となる。
これにより、歪発光層7の内部における結晶欠陥の発生が抑制されるため、エピウェーハ10(発光ダイオード用エピタキシャルウェーハ)に製造されるLEDの信頼性を向上させることができる。
【0066】
また、発光部2の構成を、歪発光層7と、バリア層8とを交互に積層した積層構造とし、かつバリア層8の組成式を(Al
XGa
1−X)
YIn
1−YP(0.3≦X≦0.7、0.51≦Y≦0.54)にすると共に、バリア層8の厚さを35〜50nmの範囲内で設定することにより、バリア層8により、さらに歪発光層7の歪を緩和することが可能となるため、歪発光層7のY組成の値を0.35まで小さくすることが可能となる。
これにより、歪発光層7のピーク発光波長を655〜685nmにすることができると共に、歪発光層7の内部における結晶欠陥の発生がさらに抑制されるため、エピウェーハ10(発光ダイオード用エピタキシャルウェーハ)に製造されるLEDの信頼性をさらに向上させることができる。
【0067】
さらに、本実施形態のエピウェーハ10には、発光部2上に歪調整層3が設けられている。この歪調整層3は、発光波長に対して透明であるため、このエピウェーハ10を用いて発光ダイオード20を作製した際に、発光部2からの発光を吸収することがない。さらに、この歪調整層3は、GaAs基板1の格子定数よりも小さい格子定数を有しているため、このエピウェーハ10全体の反りの発生を低減することができる。これにより、歪発光層7への欠陥の発生を抑制できる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の効果を、実施例を用いて具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
本実施例では、本発明に係る発光ダイオード用エピタキシャルウェーハを用いて発光ダイオードを作製した例を具体的に説明する。また、本実施例で作製した発光ダイオードは、AlGaInP発光部を有する赤色発光ダイオードである。本実施例では、GaAs基板上にGaPからなる歪調整層を含むエピタキシャル成長層を成長させたエピウェーハを作製した。そして、特性評価のために発光ダイオードチップを作製し、ウェーハ面内及びウェーハ間のバラツキを評価した。
【0070】
(実施例1)
実施例1の発光ダイオードは、先ず、Siをドープしたn型のGaAs単結晶からなる半導体基板上に、エピタキシャル成長層を順次積層してエピタキシャルウェーハを作製した。n型のGaAs基板は、(100)面から(0−1−1)方向に15°傾けた面を成長面とし、キャリア濃度を2×10
18cm
−3とした。
エピタキシャル成長層として、n型のGaAs基板上に、Siをドープしたn型のGaAsからなる緩衝層と、Siをドープしたn型の(Al
0.5Ga
0.5)
0.5In
0.5Pからなる低抵抗層と、Siをドープしたn型のAl
0.5In
0.5Pからなる下部クラッド層と、歪発光層であるアンドープのGa
0.42In
0.58P、及びバリア層であるアンドープの(Al
0.53Ga
0.47)
0.51In
0.49Pが交互に積層された発光部と、Mgをドープしたp型のAl
0.5In
0.5Pからなる上部クラッド層と、薄膜の中間層である(Al
0.6Ga
0.4)
0.5In
0.5Pと、歪調整層であるMgドープしたp型GaPと、を順次形成した。
また、歪発光層の単層の厚さを10nm、歪発光層の層数を21層、バリア層の厚さを45nm、バリア層の層数を20層とした。
【0071】
実施例1では、減圧有機金属化学気相堆積装置法(MOCVD装置)を用い、直径76mm、厚さ350μmのGaAs基板18枚を同時に成長させて、エピタキシャルウェーハを形成した。
Mgのドーピング原料としては、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(bis−(C
5H
5)
2Mg)を使用した。また、Siのドーピング原料としては、ジシラン(Si
2H
6)を使用した。また、V族構成元素の原料としては、ホスフィン(PH
3)、アルシン(AsH
3)を使用した。また、各層の成長温度としては、p型GaPよりなる歪調整層は、770℃で成長させ、その他の各層では680℃で成長させた。
【0072】
GaAsからなる緩衝層は、キャリア濃度を約2×10
18cm
−3、層厚を約0.5μmとした。低抵抗層は、キャリア濃度を約3×10
18cm
−3、層厚を約3μmとした。下部クラッド層は、キャリア濃度を約2×10
18cm
−3、層厚を約0.5μmとした。歪発光層は、アンドープで層厚が約10nmのGa
0.42In
0.58Pとし、バリア層はアンドープで層厚が約45nmの(Al
0.53Ga
0.47)
0.51In
0.49Pとした。また、歪発光層とバリア層とを交互に20対積層した。上部クラッド層は、キャリア濃度を約8×10
17cm
−3、層厚を約0.5μmとした。中間層は、キャリア濃度を約8×10
17cm
−3、層厚を約0.05μmとした。GaPよりなる歪調整層は、キャリア濃度を約3×10
18cm
−3、層厚を約9μmとした。
【0073】
次いで、エピウェーハの厚さを250μmにするため、GaAs基板を削って厚さを調整した。
次に、真空蒸着法により、エピタキシャル成長層を構成するGaPよりなる歪調整層の表面に、厚さ0.2μmのAuBe膜と、厚さ1μmのAu膜とを順次成膜した。その後、一般的なフォトリソグラフィー技術により形成されたマスクを介したエッチングにより、AuBe膜及びAu膜をパターニングすることで、直径100μmの円形のp型オーミック電極を形成した。その後、上記マスクを除去した。
【0074】
次に、真空蒸着法により、GaAs基板の裏面に、0.5μmのAuGe/Ni合金積層膜と、1μmのAu膜とを順次積層し、その後、AuGe/Ni合金積層膜及びAu膜をパターニングすることで、n形オーミック電極を形成した。
その後、450℃で10分間熱処理を行って合金化させることで、p型及びn型オーミック電極を低抵抗化した。
【0075】
次に、ダイシングソーを用いて、350μm間隔でGaAs基板を切断し、チップ化した。ダイシングによる破砕層及び汚れを硫酸・過酸化水素混合液でエッチング除去することで、実施例1の発光ダイオードを作製した。
【0076】
上記作製した実施例1の発光ダイオードチップを均等にサンプリングし、マウント基板上に実装した発光ダイオードランプを各ウェーハ17個×18枚=306個を組み立てた。
【0077】
実施例1の発光ダイオードについて、表面欠陥の有無、平均波長の数値、ピーク発光波長の基板面内のばらつき、及び通電試験前後の出力比について評価した。これらの結果を表1に示す。なお、表1には、後述する実施例2〜16、及び比較例1〜6の評価結果も示す。
表面欠陥の有無については、GaAs基板を切断する前に評価した。また、表面欠陥は集光灯による目視及び光学顕微鏡で検査した。通電試験は、発光ダイオードに100mAの電流を20時間通電する前後において、それぞれ輝度を測定し、その後、通電後の輝度を通電前の輝度で割り算し、割り算した値に100を掛けた値(これが通電試験前後の出力比(%))で数値化した。
また、上記ピーク発光波長の基板面内のばらつきは、3nm以内であればよく、また、通電試験前後の出力比は、90%以上であればよい。また、ピーク発光波長の基板面内のばらつきは、3nm以下であればよく、出力は、3mW以上であればよい。
【0078】
表1に示すように、実施例1の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が660.8nmで、表面欠陥が無く、基板面内のピーク発光波長のばらつき(最大−最小)が2.4nmと小さく、出力が3.9mWで、かつ通電試験前後の出力比が100%という良好な結果が得られた。
【0079】
(実施例2)
実施例2の発光ダイオードは、実施例1の発光ダイオードに設けられた歪発光層の替わりに、歪発光層としてアンドープのGa
0.36In
0.64Pを形成した以外は、実施例1の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、実施例1の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が681.5nmで、表面欠陥が無く、基板面内のピーク発光波長のばらつきが2.6nmと小さく、出力が3.5mWで、かつ通電試験前後の出力比が98%という良好な結果が得られた。
【0080】
(実施例3)
実施例3の発光ダイオードは、実施例1の発光ダイオードに設けられた歪発光層の替わりに、歪発光層としてアンドープのGa
0.35In
0.65Pを形成すると共に、実施例1の発光ダイオードに設けられたバリア層の替わりにアンドープの(Al
0.53Ga
0.47)
0.54In
0.46Pを形成した以外は、実施例1の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、実施例3の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が685.3nmで、表面欠陥が無く、基板面内のピーク発光波長のばらつきが2.5nmと小さく、出力が3.1mWで、かつ通電試験前後の出力比が98%という良好な結果が得られた。
【0081】
(実施例4)
実施例4の発光ダイオードは、実施例1の発光ダイオードに設けられたバリア層の替わりに、厚さ30nmのアンドープのGa
0.51In
0.49Pを形成した以外は、実施例1の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、実施例4の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が660.7nmで、表面欠陥が無く、基板面内のピーク発光波長のばらつきが2.2nmと小さく、出力が3.6mWで、かつ通電試験前後の出力比が92%という良好な結果が得られた。
【0082】
(実施例5)
実施例5の発光ダイオードは、実施例4の発光ダイオードに設けられた歪発光層の替わりに、歪発光層としてアンドープのGa
0.39In
0.61Pを形成した以外は、実施例4の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、実施例5の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が670.1nmで、表面欠陥が無く、基板面内のピーク発光波長のばらつきが2.7nmと小さく、出力が3.8mWで、かつ通電試験前後の出力比が91%という良好な結果が得られた。
【0083】
(実施例6)
実施例6の発光ダイオードは、実施例4の発光ダイオードに設けられた歪発光層の替わりに、歪発光層としてアンドープのGa
0.37In
0.63Pを形成すると共に、実施例4の発光ダイオードに設けられたバリア層の替わりにアンドープの(Al
0.53Ga
0.47)
0.54In
0.46Pを形成した以外は、実施例4の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、実施例6の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が678.0nmで、表面欠陥が無く、基板面内のピーク発光波長のばらつきが2.7nmと小さく、出力が3.3mWで、かつ通電試験前後の出力比が98%という良好な結果が得られた。
【0084】
(実施例7)
実施例7の発光ダイオードは、実施例1の発光ダイオードに設けられた歪発光層の替わりに、歪発光層として厚さ17nmのアンドープのGa
0.44In
0.56Pを23層形成すると共に、実施例1の発光ダイオードに設けられたバリア層の厚さを38nm、バリア層の積層数を22にした以外は、実施例1の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、実施例7の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が661.0nmで、表面欠陥が無く、基板面内のピーク発光波長のばらつきが2nmと小さく、出力が4mWで、かつ通電試験前後の出力比が98%という良好な結果が得られた。
【0085】
(実施例8)
実施例8の発光ダイオードは、実施例7の発光ダイオードに設けられた歪発光層の替わりに、歪発光層としてアンドープのGa
0.4In
0.6Pを形成した以外は、実施例7の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、実施例8の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が673.5nmで、表面欠陥が無く、基板面内のピーク発光波長のばらつきが2.1nmと小さく、出力が3.8mWで、かつ通電試験前後の出力比が97%という良好な結果が得られた。
【0086】
(実施例9)
実施例9の発光ダイオードは、実施例8の発光ダイオードに設けられた歪発光層の替わりに、歪発光層としてアンドープのGa
0.38In
0.62Pを形成すると共に、実施例8の発光ダイオードに設けられたバリア層の厚さ(単層の厚さ)を50nmに形成した以外は、実施例8の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、実施例9の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が680.3nmで、表面欠陥が無く、基板面内のピーク発光波長のばらつきが2.3nmと小さく、出力が3.4mWで、かつ通電試験前後の出力比が97%という良好な結果が得られた。
【0087】
(実施例10)
実施例10の発光ダイオードは、実施例7の発光ダイオードに設けられたバリア層の厚さ(単層の厚さ)を35nmに形成した以外は、実施例7の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、実施例10の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が661.2nmで、表面欠陥が無く、基板面内のピーク発光波長のばらつきが2nmと小さく、出力が3.9mWで、かつ通電試験前後の出力比が98%という良好な結果が得られた。
【0088】
(実施例11)
実施例11の発光ダイオードは、実施例10の発光ダイオードに設けられたバリア層の厚さ(単層の厚さ)を19nmに形成した以外は、実施例10の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、実施例11の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が660.7nmで、表面欠陥が無く、基板面内のピーク発光波長のばらつきが2.1nmと小さく、出力が3.9mWで、かつ通電試験前後の出力比が90%という良好な結果が得られた。
【0089】
(実施例12)
実施例12の発光ダイオードは、実施例11の発光ダイオードに設けられた歪発光層の替わりにアンドープのGa
0.42In
0.58Pを形成した以外は、実施例11の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、実施例12の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が666.3nmで、表面欠陥が無く、基板面内のピーク発光波長のばらつきが2.1nmと小さく、出力が3.8mWで、かつ通電試験前後の出力比が90%という良好な結果が得られた。
【0090】
(実施例13)
実施例13の発光ダイオードは、実施例4の発光ダイオードに設けられた歪発光層の替わりに、厚さ25nmのアンドープのGa
0.45In
0.55Pを形成した以外は、実施例4の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、実施例13の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が655.8nmで、表面欠陥が無く、基板面内のピーク発光波長のばらつきが2.2nmと小さく、出力が3.9mWで、かつ通電試験前後の出力比が98%という良好な結果が得られた。
【0091】
(実施例14)
実施例14の発光ダイオードは、実施例13の発光ダイオードに設けられた歪発光層の厚さを30nmにすると共に、バリア層の厚さを50nmにした以外は、実施例13の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、実施例14の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が665.0nmで、表面欠陥が無く、基板面内のピーク発光波長のばらつきが2.2nmと小さく、出力が3.9mWで、かつ通電試験前後の出力比が97%という良好な結果が得られた。
【0092】
(実施例15)
実施例15の発光ダイオードは、実施例14の発光ダイオードに設けられた歪発光層の厚さを38nmにした以外は、実施例14の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、実施例15の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が671.5nmで、表面欠陥が無く、基板面内のピーク発光波長のばらつきが2nmと小さく、出力が3.8mWで、かつ通電試験前後の出力比が97%という良好な結果が得られた。
【0093】
(実施例16)
実施例16の発光ダイオードは、実施例9の発光ダイオードに設けられた歪発光層の替わりに、(Al
0.1Ga
0.9)
0.38In
0.62Pを形成した以外は、実施例9の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、実施例16の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が660.5nmで、表面欠陥が無く、基板面内のピーク発光波長のばらつきが2.4nmと小さく、出力が3.6mWで、かつ通電試験前後の出力比が97%という良好な結果が得られた。
【0094】
(比較例1)
比較例1の発光ダイオードは、実施例9の発光ダイオードに設けられたバリア層の厚さを55nmにした以外は、実施例9の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、比較例1の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が679.8nmで、表面欠陥が無く、基板面内のピーク発光波長のばらつきが2.4nmと小さく、かつ通電試験前後の出力比が95%という結果が得られた。
しかしながら、出力は、3.0mWよりも低い2.2mWであった。これは、バリア層の厚さが35〜50nmの範囲を超えていたため(言い換えれば、バリア層の厚さが厚すぎたため)であると考えられる。
【0095】
(比較例2)
比較例2の発光ダイオードは、実施例3の発光ダイオードに設けられたバリア層の替わりに、アンドープの(Al
0.53Ga
0.47)
0.5In
0.5P(バリア層にほとんど歪が入らない組成)を形成した以外は、実施例3の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、比較例2の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が685nmで、表面欠陥が存在し、基板面内のピーク発光波長のばらつきが3.6nmと大きく、出力が1.5mWと低く、かつ通電試験前後の出力比が78%という低い結果が得られた。
言い換えれば、表面欠陥検査、基板面内のピーク発光波長のばらつき、出力、及び通電試験前後の出力比において、悪い結果が得られた。これは、バリア層の組成式(Al
XGa
1−X)
YIn
1−YPのYが0.51≦Y≦0.54の範囲外であったため(具体的には、バリア層にほとんど歪が入っていないため)であると考えられる。
【0096】
(比較例3)
比較例3の発光ダイオードは、比較例2の発光ダイオードに設けられた歪発光層の替わりに、アンドープのGa
0.34In
0.66Pを形成すると共に、比較例2の発光ダイオードに設けられたバリア層の替わりに、アンドープの(Al
0.53Ga
0.47)
0.55In
0.45Pを形成した以外は、比較例2の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、比較例3の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が688.5nmで、表面欠陥が存在し、基板面内のピーク発光波長のばらつきが3.8nmと大きく、出力が1.4mWと低く、かつ通電試験前後の出力比が81%という低い結果が得られた。
言い換えれば、表面欠陥検査、基板面内のピーク発光波長のばらつき、出力、及び通電試験前後の出力比において、悪い結果が得られた。これは、これは、バリア層の組成式(Al
XGa
1−X)
YIn
1−YPのYが0.51≦Y≦0.54の範囲外であったためであると考えられる。
【0097】
(比較例4)
比較例4の発光ダイオードは、実施例6の発光ダイオードに設けられたバリア層の替わりに、アンドープの(Al
0.53Ga
0.47)
0.5In
0.5P(バリア層にほとんど歪が入らない組成)を形成した以外は、実施例6の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、比較例4の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が677.7nmで、表面欠陥が存在し、基板面内のピーク発光波長のばらつきが3.9nmと大きく、出力が1.3mWと低く、かつ通電試験前後の出力比が75%という低い結果が得られた。
言い換えれば、表面欠陥検査、基板面内のピーク発光波長のばらつき、出力、及び通電試験前後の出力比において、悪い結果が得られた。これは、これは、バリア層の組成式(Al
XGa
1−X)
YIn
1−YPのYが0.51≦Y≦0.54の範囲外であったためであると考えられる。
【0098】
(比較例5)
比較例5の発光ダイオードは、実施例16の発光ダイオードに設けられた歪発光層の替わりに、アンドープのGa
0.41In
0.59Pを形成すると共に、実施例16の発光ダイオードに設けられたバリア層の替わりに、厚さが19nmのアンドープの(Al
0.53Ga
0.47)
0.5In
0.5Pを形成した以外は、実施例16の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、比較例5の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が669.8nmで、表面欠陥が存在し、基板面内のピーク発光波長のばらつきが3.3nmと大きく、出力が1.3mWと低く、かつ通電試験前後の出力比が70%という低い結果が得られた。
言い換えれば、表面欠陥検査、基板面内のピーク発光波長のばらつき、出力、及び通電試験前後の出力比において、悪い結果が得られた。これは、これは、バリア層の組成式(Al
XGa
1−X)
YIn
1−YPのYが0.51≦Y≦0.54の範囲外であったためであると考えられる。
【0099】
(比較例6)
比較例6の発光ダイオードは、実施例15の発光ダイオードに設けられた歪発光層の厚さを40nmにすると共に、実施例15の発光ダイオードに設けられたバリア層の替わりに、アンドープの(Al
0.53Ga
0.47)
0.5In
0.5Pを形成した以外は、実施例15の発光ダイオードと同様に形成した。
表1に示すように、比較例6の発光ダイオードの場合、ピーク発光波長が672.2nmで、表面欠陥が存在し、基板面内のピーク発光波長のばらつきが3.1nmと大きく、出力が1.1mWと低く、かつ通電試験前後の出力比が72%という低い結果が得られた。
言い換えれば、表面欠陥検査、基板面内のピーク発光波長のばらつき、出力、及び通電試験前後の出力比において、悪い結果が得られた。これは、これは、バリア層の組成式(Al
XGa
1−X)
YIn
1−YPのYが0.51≦Y≦0.54の範囲外であったためであると考えられる。
【0100】
以上、上記実施例1〜16、及び比較例1〜6の評価結果から、発光部の構成を、歪発光層と、バリア層とを交互に積層した積層構造とし、かつバリア層の組成式を(Al
0.53Ga
0.47)
YIn
1−YP(0.51≦Y≦0.54)にすることで、655.8〜685.3nmというピーク発光波長を実現できることが確認できた。
【0101】
また、発光部の構成を、歪発光層と、バリア層とを交互に積層した積層構造とし、かつバリア層の組成式を(Al
0.53Ga
0.47)
YIn
1−YP(0.51≦Y≦0.54)にすると共に、バリア層8の厚さを35〜50nmの範囲内で設定することにより、歪発光層のピーク発光波長を660.5〜685.3nmにすることができると共に、エピウェーハ(発光ダイオード用エピタキシャルウェーハ)に製造されるLEDの信頼性を向上できることが確認できた。
【0102】
【表1】