(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
中心導体と、この中心導体を被覆した絶縁体と、この絶縁体の外側を覆う外部導体とが同軸構造となされ、前記外部導体に漏洩電磁界形成用の複数のスロット部が形成され、前記外部導体が外被で覆われた漏洩同軸ケーブルと、
前記漏洩同軸ケーブルを収納し、この漏洩同軸ケーブルとともに自由に曲げられ、曲げられた状態を維持する移動可能なケースとを備え、
前記ケースは、10%以上の曲げ歪を与えることで塑性変形歪を生ずる材料により形成されている
ことを特徴とする漏洩同軸ケーブル装置。
中心導体と、この中心導体を被覆した絶縁体と、この絶縁体の外側を覆う外部導体とが同軸構造となされ、前記外部導体に漏洩電磁界形成用の複数のスロット部が形成され、前記外部導体が外被で覆われた漏洩同軸ケーブルと、
前記漏洩同軸ケーブルを収納し、この漏洩同軸ケーブルとともに自由に曲げられ、曲げられた状態を維持する移動可能なケースとを備え、
前記ケースには、少なくとも1本の塑性変形歪を生ずる金属線が内装されている
ことを特徴とする漏洩同軸ケーブル装置。
【背景技術】
【0002】
漏洩同軸ケーブル(以下、「LCX」という。)は、
図11に示すように、中心導体102、絶縁体103、外部導体104及び外被(シース)105を備えて同軸状に構成され、従来より、新幹線沿いに布設されて列車と地上との無線連絡のために使用されたり、あるいは、地下鉄構内や地下街に布設されて地上との消防無線や警察無線の連絡用に、使用されている。このようなLCXにおいては、同軸内部の電磁エネルギーを外部に漏洩させるために、外部導体104上に周期的なスロット部101が設けられている。
【0003】
すなわち、LCXの外部導体104には、ケーブル軸に対して一定周期毎に、一周期当たり複数の長孔状のスロット部101が設けられている。各スロット部101は、ケーブル軸に対していくらかの角度を持って傾斜されている。なお、各スロット部101間の間隔が使用周波数の半波長と一致したり、その半波長の整数倍となったときには、共振状態となる。この周波数を共振周波数と呼ぶ。
【0004】
このようなLCXは、工場出荷時においては、ドラムに巻かれていることが多い。また、短い場合には、ドラムを使用せず、束状に巻かれていることもある。このようなLCXを使用するときには、ドラムから外し、または、束から取り出すと、曲がり癖がついており、直線状にすることは容易ではない。
【0005】
そこで、LCXは、
図12及び
図13に示すように、会議室などのテーブル116上に布設する際には、ケーブル専用の固定治具106により、設置場所に固定されて使用されている。なお、LCX1の布設状態は、
図12に示すように、テーブル116が角形テーブルであっても、
図13に示すように、テーブル116が丸形テーブルであっても、同様である。LCXは、一般に、収納されること無く使用されるので、延線時に、使用場所に合わせて直線状、あるいは、直線状及び曲線状とされて、
図14に示すように、固定治具106及び取付けボルト107により固定して使用されていた。
【0006】
LCX1の終端には終端器114が取付けられ、始端にはコネクタ110が取付けられる。コネクタ110には、アプローチケーブル112を介して、図示しない無線LAN回線より、無線LAN信号が入力される。LCX1は、入力された無線LAN信号を、各スロット部101より、外部に漏洩させる。このようにLCX1が布設されたテーブル116上においては、移動体(通信装置)118とLCX1との間の無線LAN信号の送受信を行うことができる。
【0007】
特許文献1には、ケーブル専用の支持具が記載されている。また、特許文献2、特許文献3及び特許文献4には、LCXの外被の形状を、布設場所に固定できる特殊な構造にすることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、前述のような固定治具106、または、特許文献1に記載された支持具を用いてLCXを固定する場合には、複数箇所において固定治具、または、支持具を使用しなければならず、固定作業に伴う人件費等が工事コストを上昇させている。また、一旦布設したLCXは、固定治具、または、支持具により強固に固定されてしまうので、移動する際や、老朽化や外傷のために交換する際の工事費は高額なものとなっている。
【0010】
また、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に記載されたLCXにおいては、外被を特殊な形状に加工しなければならないため、LCXの製造コストの上昇が招来される。
【0011】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであり、その目的は、製造コストを上昇させることなく、また、施設、移動及び交換等の際の工事費用を低廉に抑えることができる漏洩同軸ケーブル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置は、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0013】
〔構成1〕
中心導体と中心導体を被覆した絶縁体と絶縁体の外側を覆う外部導体とが同軸構造となされ外部導体に漏洩電磁界形成用の複数のスロット部が形成され外部導体が外被で覆われたLCXと、LCXを収納し漏洩同軸ケーブルとともに自由に曲げられ、曲げられた状態を維持する移動可能なケースとを備えたことを特徴とするものである。
【0014】
〔構成2〕
構成1を有する漏洩同軸ケーブル装置において、ケースは、筒状体であることを特徴とするものである。
【0015】
〔構成3〕
構成1、または、構成2を有する漏洩同軸ケーブル装置において、ケースは、10%以上の曲げ歪を与えることで塑性変形歪を生ずる材料により形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
〔構成4〕
構成1、または、構成2を有する漏洩同軸ケーブル装置において、ケースには、少なくとも1本の塑性変形歪を生ずる金属線が内装されていることを特徴とするものである。
【0017】
〔構成5〕
構成1、または、構成2を有する漏洩同軸ケーブル装置において、ケースは、長さ方向に複数のケース断片に分割されており、各ケース断片同士が、屈曲可能なヒンジによって連結されていることを特徴とするものである。
【0018】
〔構成6〕
構成1乃至構成5のいずれか一を有する漏洩同軸ケーブル装置において、ケースは、誘電体からなることを特徴とするものである。
【0019】
〔構成7〕
構成1乃至構成6のいずれか一を有する漏洩同軸ケーブル装置において、LCXは、片端に、外部通信機器と接続されるためのリード用ケーブルが接続されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
構成1を有する本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置においては、LCXと、このLCXを収納しLCXとともに自由に曲げられ、曲げられた状態を維持する移動可能なケースとを備えているので、無線通信環境がないエリアにもこの漏洩同軸ケーブル装置を持っていって置くだけで無線通信環境を構築することができる。また、ケースは、LCXとともに自由に曲げられ、曲げられた状態を維持するので、ケースに所望の形状になるように曲げを加えれば、その形状が維持され、ケースの内部のLCXもケースに沿った形状とすることができる。
【0021】
構成2を有する本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置においては、ケースは、筒状体であり、製造が容易である。
【0022】
構成3を有する本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置においては、ケースは、10%以上の曲げ歪を与えることで塑性変形歪を生ずる材料により形成されているので、自由に曲げられ、曲げられた状態を維持する。
【0023】
構成4を有する本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置においては、ケースには、少なくとも1本の塑性変形歪を生ずる金属線が内装されているので、自由に曲げられ、曲げられた状態を維持する。また、2本の金属線を対向する位置に配置すれば、これら金属線を含む平面を曲げ平面に指定することができ、曲げ方向を一定にすることができる。
【0024】
構成5を有する本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置においては、ケースは、長さ方向に複数のケース断片に分割されており、各ケース断片同士が、屈曲可能なヒンジによって連結されているので、弱い力によってケースを所望の形状とすることができる。
【0025】
構成6を有する本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置においては、ケースは、誘電体からなるので、LCXとケース外部空間との間の電磁波の授受が阻害されることがない。
【0026】
構成7を有する本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置においては、漏洩同軸ケーブルは、片端に外部通信機器と接続されるためのリード用ケーブルが接続されているので、LCXと外部通信機器との接続が容易に行える。
【0027】
すなわち、本発明は、製造コストを上昇させることなく、また、施設、移動及び交換等の際の工事費用を低廉に抑えることができる漏洩同軸ケーブル装置を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置の構成を示す縦断面図である。
【
図2】本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置の構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置のケースの応カ対歪特性を示すグラフである。
【
図4】本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置の使用状態を示す平面図である。
【
図5】本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置の構成を横断面図である。
【
図6】本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置の構成の他の例を示す縦断面図である。
【
図7】本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置の構成のさらに他の例を示す横断面図である。
【
図8】本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置のケースを分割した構成を示す側面図である。
【
図9】漏洩同軸ケーブル装置の結合損失を測定する測定系を示す斜視図である。
【
図10】本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置の結合損失を示すグラフである。
【
図12】従来のLCXの布設状態(角形テーブル上)を示す斜視図である。
【
図13】従来のLCXの布設状態(丸形テーブル上)を示す斜視図である。
【
図14】従来のLCXの固定治具の形状を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0030】
図1は、本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置の構成を示す縦断面図である。
【0031】
本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置は、
図1に示すように、LCX1と、このLCX1を収納するケース2とを備えて構成される。LCX1は、中心導体と、この中心導体を被覆した絶縁体と、この絶縁体の外側を覆う外部導体とが同軸構造となされ、外部導体が外被(シース)により覆われて構成されている。
【0032】
LCX1の終端には終端器114が取付けられ、始端にはコネクタ110が取付けられている。コネクタ110には、アプローチケーブル112を介して、図示しない無線LAN回線より、無線LAN信号が入力される。
【0033】
図2は、本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置の構成を示す斜視図である。
【0034】
ケース2は、
図2中の(a)に示すように、断面が円形、または、矩形などの筒状体とすることができる。また、ケース2は、
図2中の(b)に示すように、LCX1とともに自由に曲げられ、曲げられた状態を維持するようになっている。このケース2は、LCX1からの電磁放射を良好とするためには、誘電体からなることが好ましい。
【0035】
ケース2は、10%以上の曲げ歪を与えることで塑性変形歪を生ずる材料により形成することによって、曲げられた状態を維持するようにできる。このような材料としては、例えば、硬質ポリエチレンなどを使用することができる。
【0036】
図3は、本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置のケースの応カ対歪特性を示すグラフである。
【0037】
ケース2を、硬質ポリエチレンにより、内径12mm、外径22mm、厚さ5mmの円筒状に形成した場合の応カ対歪特性を調査した。すなわち、
図3に示すように、このケース2に10%以上の歪を与えれば、ケースは塑性変形し、曲げられた形状を維持することがわかる。曲げ歪εは、次式で与えられる。ただし、aはケース2の半径、Rは曲げ半径である。
ε=(a/R)×100(%)
【0038】
したがって、ケース2の半径aが11mmである場合に10%の歪を発生させるには、曲げ半径Rは、次式で算出される。
R=a/ε=11/0.1=110mm
【0039】
すなわち、曲げ半径Rが110mm未満となるように曲げれば、ケース2に塑性変形を発生させることができる。
【0040】
図4は、本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置の使用状態を示す平面図である。
【0041】
このようにしてケース2に塑性変形を生じさせることにより、ケース2は、例えば、
図4に示すように、所定の4箇所において屈曲した矩形状として使用することができる。
【0042】
図5は、本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置の構成を横断面図である。
【0043】
また、
図5に示すように、ケース2の断面形状を正方形の角型とすると、平面部において設置面に接触させることができ、安定した設置が可能となる。ケース2の断面形状は、例えば、内側幅10mm、外側幅20mm、厚さ5mmの角型である。
【0044】
図6は、本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置の構成の他の例を示す縦断面図である。
【0045】
なお、このような筒状のケース2は、曲げを与えた際に曲がり部分は偏平してしまい、美観上好ましくない。そこで、
図6中の(a)に示すように、ケース2の側壁部を波状に屈曲した形状として蛇腹状としたところ、曲がり部分が筒状に保たれ、美観上も問題がない。また、
図6中の(b)に示すように、ケース2の側壁部を角張った波状(三角波状)に屈曲した形状としてもよい。このようにケース2の側壁部を屈曲した形状とすることは、ケース2の全体について行ってもよいし、ケース2の一部、すなわち、曲げる箇所のみや曲げる方向のみについて行ってもよい。
【0046】
図7は、本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置の構成のさらに他の例を示す横断面図である。
【0047】
ケース2は、使用者の好みにより、柔らかい弾性率の高い材質、例えば、ゴムなどから形成することもできる。この場合には、曲げを与えてもケースを塑性変形させて曲げた状態を維持させることが困難となる。この場合には、
図7に示すように、ケース2には、少なくとも1本の塑性変形歪を生ずる金属線4を内装させるとよい。
【0048】
図7中の(a)に示すように、ケース2をなす材料の内部に、塑性変形しやすい金属線4を内装させる。例えば、太さ2mmの軟銅線を内装させることにより、ケース2を曲げると、軟銅線の塑性変形により、ケース2を好みの形状に維持させることができる。また、
図7中の(b)に示すように、ケース2をなす材料の内部に、ケース2の中心軸を介して対向するように複数の金属線4,4を内装させることにより、形状の維持をより強固とすることができる。なお、ケース2の中心軸を介して対向するように複数の金属線4,4を内装させると、曲げ方向が金属線4,4を含む面内に限定され、ケース2のうねりを抑えることができる。
【0049】
図8は、本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置のケースを分割した構成を示す側面図である。
【0050】
また、ケース2は、
図8に示すように、長さ方向に複数のケース断片2aに分割し、各ケース断片2a同士を屈曲可能なヒンジ6によって連結して構成してもよい。ヒンジ6は、各ケース断片2aの両端部近傍に突設され、隣接するヒンジ6に対して、回転軸8によって回転可能に連結されている。
このケース2においては、
図8中の(a)に示すように、各ケース断片2aが直線状に配列する状態と、
図8中の(b)に示すように、ヒンジ6の部分を屈曲させることにより、各ケース断片2a同士が屈曲した線状に配列する状態とに、変化させることができる。
【0051】
ケース2を、0.5m毎にケース断片2aに分割し、各ケース断片2aをヒンジ6によって連結させたところ、所定のヒンジ6の部分でLCX1を屈曲させることにより、例えば、
図4に示すように、所定の4箇所において屈曲した矩形状として使用することができる。ヒンジ6によって各ケース断片2aを連結させることにより、塑性変形を与えるような強いカを加えて曲げる動作は不要となり、弱い力でLCX1を任意の形状とすることができる。
【0052】
この漏洩同軸ケーブル装置において、LCX1は、ケース2に収納されることにより、たとえ曲がり癖が付いていても、ケース2の形状にあった直線状態や、曲線状態に保持される。例えば、ケース2が直線状であれば、LCX1は直線状になり、ケース2が屈曲した形状であれば、LCX1は屈曲した形状になる。したがって、専用の固定治具を使うことなく、LCX1を所為の形状とすることができる。また、LCX1の外被も、固定のために特殊な形状にする必要がない。
【0053】
ケース2は、LCX1を直線状態や曲線状態に保持するに十分な剛性を有し、容易には変形しないようになっている。ケース2の材質は、電磁波を反射する金属体ではなく、合成樹脂材料など、誘電体材料とすることが望ましい。ケース2を誘電体材料から形成することにより、LCX1とケース2の外部空間との電磁波の授受が阻害されることがない。ケース2を合成樹脂材料から形成する場合、例えば、押出成型法や射出成型法によって、容易にケース2を形成することができる。
【0054】
この漏洩同軸ケーブル装置は、使用場所に固定せずに使用することができる。したがって、所望の場所に持ち運んで使用することができる。無線通信環境がないエリアでも、この漏洩同軸ケーブル装置を持っていって置くだけで、無線通信環境を構築することができる。
【0055】
また、ケース2を誘電体材料から形成することにより、使用場所が金属の上であっても、また、付近に金属部材が存在する場合であっても、LCX1と金属との間をケース2が離隔するので、LCX1の送受信性能が劣化しない。
【0056】
なお、ケース2には、片端に、外部に向けた接続用コネクタを設けてもよい。この接続用コネクタは、LCX1の片端に取り付けられた接続ケーブルを介して、LCX1と電気的に接続される。あるいは、接続用コネクタにLCX1のコネクタを直接接続してもよい。
【実施例】
【0057】
本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置を作成して、送受信特性(結合損失)を測定した。
【0058】
LCX1は、シースの外径を7mmとし、長さを約6mとした。終端には終端器114を接続し、始端にはコネクタ110を接続し、外部のアクセスポイントと接続するアプローチケーブル112を接続した。ケース2は、
図5に示すように、内径12mm、外径22mm、厚さ5mmの角柱状の筒状とした。ケース2をなす材質は、硬質ポリエチレンとした。
【0059】
図9は、漏洩同軸ケーブル装置の結合損失を測定する測定系を示す斜視図である。
【0060】
漏洩同軸ケーブル装置は、
図4に示すように、アプローチケーブル112側の始端(A部)から1m(B部)、3m(C部)及び4m(D部)の3隅を90度内側に曲げて、所定の4箇所において屈曲した矩形状とした。終端(E部)には、終端器114を接続した。これを、
図9に示すように、角型テーブル116の上に設置した。漏洩同軸ケーブル装置のおける位置は、アプローチケーブル112との接続部をA部、そこから1m離れた箇所をB部、A部から3m離れた箇所をC部、A部から4m離れた箇所をD部、端末をE部とする。
【0061】
LCX1に、発信器9から2.4GHzの試験信号を電力Pin(W)で入力した。LCX1の上方1.5mの位置で、半波長標準ダイポールアンテナTを、LCX1のA部、B部、C部、D部、E部の順に移動させ、そのときのアンテナ出力Pout(W)を受信器10で測定した。受信する偏波は、LCX1に対して垂直方向の偏波とした。Pin及びPoutから、LCX1の放射性能を表す結合損失Lcを測定した。結合損失Lcとは、LCX1ヘの入力電力Pinと、LCX1の外部に配置した半波長標準ダイポールアンテナTからの出力電力Poutとの比であり、Lc=−10log(Pout/Pin)(dB)で計算できる。すなわち、結合損失Lcは、LCXからの電磁波の放射効率を示す。逆に、受信する場合は受信効率となり、数値は同じである。
【0062】
図10は、本発明に係る漏洩同軸ケーブル装置の結合損失を示すグラフである。
【0063】
ここで使用したLCX1は、結合損失が70dBとなるように設計してある。
図10に示すように、結合損失Lcは、幅5dB程度の変動はあるものの、平均値は70dBであり、LCX1が問題なく機能していることがわかった。また、ケース2による遮蔽などの悪影響もなかった。なお、LCX1の曲がり部分B部、C部及びD部における結合損失の落ち込みは、LCX1の放射指向性が20度ほど入射側に傾いているからである。
【0064】
図6、
図7及び
図8に示した各形状のケース2について、前述と同様のLCX1を収納して漏洩同軸ケーブル装置を構成し、
図9に示した測定系で測定したところ、すべて設計値どおりの結合損失70dBが得られ、問題がないことが確認された。