特許第5684811号(P5684811)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許56848116−アミノキナゾリン又は3−シアノキノリン誘導体、その製造方法及びその製薬学的用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5684811
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】6−アミノキナゾリン又は3−シアノキノリン誘導体、その製造方法及びその製薬学的用途
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20150226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20150226BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20150226BHJP
   A61K 31/517 20060101ALI20150226BHJP
   C07D 403/12 20060101ALI20150226BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20150226BHJP
   C07F 9/60 20060101ALI20150226BHJP
【FI】
   C07D401/14CSP
   A61P43/00 111
   A61K31/4709
   A61K31/517
   C07D403/12
   A61P35/00
   C07F9/60
【請求項の数】20
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2012-528211(P2012-528211)
(86)(22)【出願日】2010年8月26日
(65)【公表番号】特表2013-504521(P2013-504521A)
(43)【公表日】2013年2月7日
(86)【国際出願番号】CN2010001293
(87)【国際公開番号】WO2011029265
(87)【国際公開日】20110317
【審査請求日】2013年8月9日
(31)【優先権主張番号】200910195823.3
(32)【優先日】2009年9月14日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510166892
【氏名又は名称】ジエンス ヘンルイ メデイシンカンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】JIANGSU HENGRUI MEDICINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】508209602
【氏名又は名称】シャンハイ ヘンルイ ファーマスーティカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100153394
【弁理士】
【氏名又は名称】謝 卓峰
(74)【代理人】
【識別番号】100116311
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 忠行
(72)【発明者】
【氏名】タン・ペンチョ
(72)【発明者】
【氏名】リー・シン
(72)【発明者】
【氏名】ワン・ビン
(72)【発明者】
【氏名】ワン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チェン・リジュン
【審査官】 松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−515005(JP,A)
【文献】 特表2003−530395(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101824029(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される化合物、又はそれらの互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及び混合物、並びにそれらの製薬学的に許容される塩。
【化41】
[式中、
Aは炭素原子及び窒素原子からなる群より選ばれ;
Aが炭素原子である場合、Rは水素原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれ、前記アルコキシル基は、任意にハロゲン原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され、Rはシアノ基であり;
Aが窒素原子である場合、Rは水素原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれ、前記アルコキシル基は、任意にハロゲン原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され、Rは非存在であり;
は下記式で表される遊離基であり;
【化42】
[式中、
Dはアリール基及びヘテロアリール基からなる群より選ばれ、前記アリール基及びヘテロアリール基はそれぞれ独立して、任意にハロゲン原子、アルキル基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され;
Tは、−O(CH)r−であり
Lはアリール基及びヘテロアリール基からなる群より選ばれ、前記アリール基及びヘテロアリール基はそれぞれ独立して、任意にハロゲン原子及びアルキル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され;]
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基及びハロゲン原子からなる群より選ばれ;
Bは、炭素原子であり
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシル基及びヒドロキシル基からなる群より選ばれ;
は水素原子又はアルキル基であり
は、水素原子又はアルキル基であり
rは0、1又は2であり;及び、
nは1、2又は3である。]
【請求項2】
Aが炭素原子であり、Rがアルコキシ基であり、かつRがシアノ基である、請求項1に記載の化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩。
【請求項3】
Aが窒素原子であり、Rが水素原子であり、かつRが非存在である、請求項1に記載の化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩。
【請求項4】
nが2である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩。
【請求項5】
式(II)で表される化合物並びにその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩を含む、請求項1に記載の化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩。
【化43】
[式中、A、n、R 〜R, R及びRは請求項1において定義される。
【請求項6】
Aが炭素原子であり、Rがアルコキシ基であり、かつRがシアノ基である、請求項5に記載の化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩。
【請求項7】
Aが窒素原子であり、Rは水素原子又はアルコキシル基であり、前記アルコキシル基は、任意に1種以上のアルコキシル基よりさらに置換され、
かつRが非存在である、請求項5に記載の化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩。
【請求項8】
nが2である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩。
【請求項9】
化合物が下記の化合物からなる群より選ばれる、請求項1に記載の化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩。
【化45】
【請求項10】
式(IA)で表される化合物。
【化46】
[式中、
Aは炭素原子及び窒素原子からなる群より選ばれ;
Aが炭素原子である場合、Rは水素原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれ、前記アルコキシル基は、任意にハロゲン原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され、Rはシアノ基であり;
Aが窒素原子である場合、Rは水素原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれ、前記アルコキシル基は、任意にハロゲン原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され、Rは非存在であり;
は下記式で表される遊離基であり;
【化47】
[式中、
Dはアリール基及びヘテロアリール基からなる群より選ばれ、前記アリール基及びヘテロアリール基はそれぞれ独立して、任意にハロゲン原子、アルキル基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され;
Tは、−O(CH)r−であり
Lはアリール基及びヘテロアリール基からなる群より選ばれ、前記アリール基及びヘテロアリール基はそれぞれ独立して、任意にハロゲン原子及びアルキル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され;]及び、
rは0、1又は2である。]
【請求項11】
下記のステップを含んでなる、請求項10に記載の式(IA)で表される化合物の製造方法。
【化48】
[式(IA_1)で表される化合物を変換し、式(IA)で表される化合物を得る;A、R、R及びRは、請求項10において定義される。]
【請求項12】
下記のステップを含んでなる、請求項1に記載の式(I)で表される化合物の製造方法。
【化49】
[式(IA)で表される化合物を、式(IB)で表される化合物と反応させ、式(I)で表される化合物を得る;A、B、n及びR〜Rは、請求項1において定義される。]
【請求項13】
下記のステップを含んでなる、請求項5に記載の式(II)で表される化合物の製造方法。
【化50】
[式(IA)で表される化合物を、式(IIB)で表される化合物と反応させ、式(II)で表される化合物を得る;A、n、R〜R、R及びRは、請求項5において定義される。]
【請求項14】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩の治療的有効量、並びに製薬学的に許容される担体を含んでなる医薬組成物。
【請求項15】
請求項1に記載の式(I)で表される化合物、又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩と、製薬学的に許容される担体又は希釈剤とを組み合わせることを含んでなる、請求項14に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項16】
タンパク質キナーゼがEGFR受容体チロシンキナーゼ及びHER-2受容体チロシンキナーゼからなる群より選ばれることを特徴とし、前記タンパク質キナーゼ関連疾患治療のための医薬品製造における、請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)で表される化合物、若しくはその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩の使用、又は請求項14に記載の医薬組成物の使用。
【請求項17】
タンパク質キナーゼがEGFR受容体チロシンキナーゼ及びHER-2受容体チロシンキナーゼからなる群より選ばれることを特徴とし、前記タンパク質キナーゼ関連疾患治療のための医薬品としての使用を目的とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)で表される化合物、その互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩又は請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
EGFR受容体チロシンキナーゼ阻害剤又はHER-2受容体チロシンキナーゼ阻害剤の製造における、請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)で表される化合物、その互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩の使用、又は請求項14に記載の医薬組成物の使用。
【請求項19】
癌が、肺癌、乳癌、扁平上皮癌及び胃癌からなる群より選ばれることを特徴とし、前記癌の治療のための医薬品製造における、請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)で表される化合物、若しくはその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩の使用、又は請求項14に記載の医薬組成物の使用。
【請求項20】
癌治療のための医薬品としての使用を目的とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の式(I)で表される化合物、又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の6−アミノキナゾリン又は3−シアノキノリン誘導体、その製造方法、前記誘導体を含有する医薬組成物、及び治療薬としての、特にタンパク質キナーゼ阻害剤としての前記誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
シグナル伝達は細胞外刺激を細胞内部に中継する基本的な機構である。これらのシグナルは、増殖、分化及びアポトーシスを含む細胞のさまざまな身体的反応を調節している。これらのシグナル伝達過程の多くは、特異的なタンパク質キナーゼやホスファターゼを含む、タンパク質の可逆的なリン酸化過程を利用している。
【0003】
タンパク質キナーゼ(PK)にはタンパク質チロシンキナーゼ(PTK)とセリンスレオニンキナーゼ(STK)の2種類がある。PTKはタンパク質のチロシン残基をリン酸化する。STKはセリン又は/及びスレオニン残基をリン酸化する。チロシンキナーゼは、受容体型(受容体チロシンキナーゼ、RTK)か又は非受容体型(非受容体チロシンキナーゼ)かのいずれかである。現在、ヒトゲノム中で約90種のチロシンキナーゼが同定され、そのうち約60種が受容体型に属し、約30種が非受容体型に属している。
【0004】
受容体チロシンキナーゼ(RTK)ファミリーには下記のものが含まれる:すなわち、(1)EGFR、HER-2、HER-3及びHER-4など、受容体チロシンキナーゼのEGFファミリー;(2)インスリン受容体(IR)、インスリン様増殖因子−1受容体(IGF-IR)及びインスリン関連受容体(IRR)など、受容体チロシンキナーゼのインスリンファミリー;(3)血小板由来増殖因子(PDGF)受容体チロシンキナーゼ、幹細胞因子受容体チロシンキナーゼSCF RTK(一般にc-Kitとして知られる)、fms様チロシンキナーゼ3(Flt3)受容体チロシンキナーゼ及びコロニー刺激因子1受容体(CSF-1R)チロシンキナーゼなど、受容体チロシンキナーゼのクラスIIIファミリーである。その他、肝細胞増殖因子受容体(HGFR)c-Met及び血管内皮増殖因子(VEGFR)はRTKファミリーに属する。これらは細胞増殖及び分化の調節において重要な役割を果たし、増殖因子などのサイトカイン産生に至る細胞シグナルの重要なメディエーターである(Schlessinger and Ullrich, Neuron 1992, 9, 383)。
【0005】
EGFR(ErbB、HER)は、細胞の増殖と成長の調節において重要な役割を果たす。これらのRTKは、細胞外グリコシル化リガンド結合領域、膜貫通領域及び細胞内細胞質触媒領域からなる。受容体チロシンキナーゼの酵素活性は、リガンド介在性ホモ二量体化又はヘテロ二量体化により活性化される。二量体化により、触媒領域において受容体のチロシン残基がリン酸化され、将来の結合部位が生成する。その後に、微小管結合タンパク質キナーゼ(MAPキナーゼ)やホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3キナーゼ)などを含む細胞内シグナル経路の活性化が続く。これらの経路の活性化は、細胞増殖やアポトーシス阻害をもたらすことが示されている。EGFRやHER-2のようなチロシンキナーゼの変異型及び過剰発現型が、乳癌、前立腺癌、非小細胞肺癌、食道癌、卵巣癌及び膵癌などの一般的なヒト癌の多くに存在することが確認されている。発癌と癌増殖において、罹患率とチロシンキナーゼの関連が確認されている。
【0006】
受容体チロシンキナーゼのクラスIIIファミリーとして、c-Kit及びFms様チロシンキナーゼ3(FLT-3)を含む血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)群は、EGFRファミリーと同じ構造と活性化過程を有する。これらは二量体化を介してシグナルを伝達し、その後に細胞増殖、分化、運動性及び血管の増殖における身体的反応を調節する。したがってこのファミリーの構成員は、癌の発生と進行に密接に関係している。たとえばc-Kitの発現パターンは、異なる原発性固形腫瘍の集団において研究されている。c-Kitは、とりわけ小細胞気管支癌、精巣上皮内腫瘍、メラノーマ、副乳房細胞腫、神経芽細胞腫、特に消化管間葉性腫瘍において高発現していることが見いだされた(Weber et al., J. Clin. Oncol. 22 (14S), 9642 (2004) を参照)。消化管間葉性腫瘍の大部分(50〜80%)にはc-Kit遺伝子変異が存在する。変異は、c-Kitを受容体チロシンキナーゼが継続して活性化するようにし、高い細胞分裂速度と、場合によりゲノム不安定性をもたらす。癌はこのようにして誘導される。
【0007】
受容体チロシンキナーゼの他の重要な構成員は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)である。VEGFRは血管新生と密接に関係している。VEGFは関連するシグナル経路を活性化し、VEGFRと結合することにより血管新生を促進する。最近の証拠により、VEGFは内皮細胞の増殖と遊走を誘導し、その後に毛細血管を形成させ、高透過性で未成熟な血管網の形成を促進して癌の増殖を助長することが示されている。血管新生作用に加え、VEGFRとVEGFは、腫瘍細胞に対する生存促進作用により直接的に癌の増殖を促進する可能性がある。VEGFRは、肺癌、乳癌、卵巣癌、膵癌及びメラノーマなど種々の固形悪性腫瘍において高発現していることが観察された。したがって腫瘍の発育は、VEGFRの活性化を阻害することにより抑制することができる。これは癌治療において有益である。
【0008】
RTKの一員として、肝細胞増殖因子(HGF)受容体(c-Met又はHGFR)が多くのヒト癌において発癌、腫瘍浸潤及び転移に関与し、また細胞運動性を亢進することが示された(Ma, P.C. et al. (2003b) Cancer Metastasis Rev, 22, 309−25;Maulik, G. et al. (2002b) Cytokine Growth
Factor Rev, 13, 41−59を参照)。
【0009】
PTKの他の一員として、非受容体チロシンキナーゼ(「NRTK」又は「CTK」と略記される)は細胞質中のタンパク質チロシンキナーゼである。RTKと比較して、CTKは細胞外機能領域と膜貫通領域を欠如している。CTKのチロシンキナーゼ活性化も癌と密接に関係している。CTKのより詳細な説明は、Bolen, 1993, Oncogen 8:2025−2031で得られる。
【0010】
癌の二つの主要な特徴は、細胞周期と増殖の調節に対するゲノム不安定性と制御されないシグナル経路である。ゲノム不安定性は主要な調節タンパク質の生物学的機能を変化又は欠失させ、次にシグナル伝達経路を阻害又は障害し、その異常なシグナル経路は細胞周期進行及びアポトーシスを正常に調節及び制御することができない。一方癌細胞は、遺伝子損傷状態においても、生存し増殖し続けることができる。これらの調節過程を達成するための基礎として、上記のRTK及び細胞質PTK(CTK)は発癌と癌の増殖に密接に関係しており、癌の治療に対する重要な標的となった。
【0011】
抗腫瘍細胞増殖活性を有する新規化合物の合成が期待される。これらの化合物は1種以上のRTK、CTK又はSTKを阻害することが期待され、RTK、CTK又はSTK介在性及び血管新生介在性の細胞過増殖を伴う生理的障害を治療又は改善するのに有用である。
【0012】
今までに、国際公開第2000/18761A1号パンフレット(特許文献1)、同第2003/089439A1号パンフレット(特許文献2)、同第2005/028443A1号パンフレット(特許文献3)、同第2007/055514A1号パンフレット(特許文献4)など、タンパク質キナーゼ阻害剤に関する一連の文献が開示されている。これらはキノリン又はキナゾリン誘導体、その用途及び製造方法を開示する。またHwei-Ru Tsou et al. in J. Med. Chem. 48, 1107−1131 (2005)(非特許文献1)は、タンパク質キナーゼ阻害剤としてキノリン誘導体を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2000/18761A1号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2003/089439A1号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2005/028443A1号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2007/055514A1号パンフレット
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Hwei-RuTsou et al. in J. Med. Chem. 48, 1107−1131 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
癌治療のためのいくつかのタンパク質キナーゼ阻害剤が開示されているが、より優れた治療効果と薬物動態吸収性を有する新規化合物の開発は今なお必要である。本発明者らは継続的な努力を経て、本発明において式(I)で表される新規化合物を提供し、これらの化合物がより優れた能力と機能を有することを見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0016】
先行技術の欠点を克服するため、本発明は、式(I)で表される6−アミノキナゾリン又は3−シアノキノリン誘導体、並びにそれらの互変異性体、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体及び製薬学的に許容される塩、並びにそれらの代謝物、前駆体又はプロドラッグを提供する。
【0017】
【化1】
【0018】
[式中、
Aは炭素原子及び窒素原子からなる群より選ばれ;
Aが炭素原子である場合、Rは水素原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれ、前記アルコキシル基は、任意にハロゲン原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され、Rはシアノ基であり;
Aが窒素原子である場合、Rは水素原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれ、前記アルコキシル基は、任意にハロゲン原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され、Rは非存在であり;
は下記式で表される遊離基であり;
【0019】
【化2】
【0020】
[式中、
Dはアリール基及びヘテロアリール基からなる群より選ばれ、前記アリール基及びヘテロアリール基はそれぞれ独立して、任意にハロゲン原子、アルキル基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され;
Tは、−(CH)r−、−O(CH)r−、−NH(CH)r−及び−S(O)r(CH)r−からなる群より選ばれ;
Lはアリール基及びヘテロアリール基からなる群より選ばれ、前記アリール基及びヘテロアリール基はそれぞれ独立して、任意にハロゲン原子及びアルキル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され;]
【0021】
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲン原子、カルボニル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基及びカルボキシルエステルからなる群より選ばれ;
Bは、炭素原子、酸素原子及びS(O)rからなる群より選ばれ;
Bが炭素原子である場合、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲン原子、カルボニル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基及びカルボキシルエステルからなる群より選ばれ;
Bが酸素原子又はS(O)rである場合、R及びRは非存在であり;
は水素原子及びアルキル基からなる群より選ばれ;
は、水素原子、アルキル基、アリール基、カルボキシ基及びカルボキシルエステルからなる群より選ばれ;
rは0、1又は2であり;及び、
nは1、2、3、4又は5である。]
【0022】
好ましくは、Aが炭素原子であり、Rがアルコキシ基であり、かつRがシアノ基である、式(I)で表される化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩である。
【0023】
好ましくは、Aが窒素原子であり、Rが水素原子であり、かつRが非存在である、式(I)で表される化合物またはその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩である。
【0024】
好ましくは、nが2である、式(I)で表される化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩である。
【0025】
好ましくは、式(I)で表される化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩は、式(II)で表される化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩を含む。
【0026】
【化3】
【0027】
[式中、
Aは炭素原子及び窒素原子からなる群より選ばれ;
Aが炭素原子である場合、Rは水素原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれ、前記アルコキシル基は、任意にハロゲン原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され、Rはシアノ基であり;
Aが窒素原子である場合、Rは水素原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれ、前記アルコキシル基は、任意にハロゲン原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され、Rは非存在であり;
は下記式で表される遊離基であり;
【0028】
【化4】
【0029】
[式中、
Dはアリール基及びヘテロアリール基からなる群より選ばれ、前記アリール基及びヘテロアリール基はそれぞれ独立して、任意にハロゲン原子、アルキル基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され;
Tは、−(CH)r−、−O(CH)r−、−NH(CH)r−及び−S(O)r(CH)r−からなる群より選ばれ;
Lはアリール基及びヘテロアリール基からなる群より選ばれ、前記アリール基及びヘテロアリール基はそれぞれ独立して、任意にハロゲン原子及びアルキル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され;]
【0030】
及びRはそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲン原子、カルボニル基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシ基及びカルボキシルエステルからなる群より選ばれ;
は水素原子及びアルキル基からなる群より選ばれ;
は、水素原子、アルキル基、アリール基、カルボキシ基及びカルボキシルエステルからなる群より選ばれ;
rは0、1又は2であり;及び、
nは1、2、3、4又は5である。]
【0031】
好ましくは、Aが炭素原子であり、Rがアルコキシ基であり、かつRがシアノ基である、式(II)で表される化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩である。
【0032】
好ましくは、Aが窒素原子であり、Rが水素原子であり、かつRが非存在である、式(II)で表される化合物またはその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩である。
【0033】
好ましくは、nが2である、式(II)で表される化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩である。
【0034】
本発明の化合物は下記の化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩を含むが、これらに限定されない。
【0035】
【表1】

【0036】
他の態様において、本発明は、式(I)で表される化合物の合成中間体としての、下記の式(IA)で表される化合物に関する。
【0037】
【化5】
【0038】
[式中、
Aは炭素原子及び窒素原子からなる群より選ばれ;
Aが炭素原子である場合、Rは水素原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれ、前記アルコキシル基は、任意にハロゲン原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され、Rはシアノ基であり;
Aが窒素原子である場合、Rは水素原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれ、前記アルコキシル基は、任意にハロゲン原子及びアルコキシル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され、Rは非存在であり;
は下記式で表される遊離基であり;
【0039】
【化6】
【0040】
[式中、
Dはアリール基及びヘテロアリール基からなる群より選ばれ、前記アリール基及びヘテロアリール基はそれぞれ独立して、任意にハロゲン原子、アルキル基及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され;
Tは、−(CH)r−、−O(CH)r−、−NH(CH)r−及び−S(O)r(CH)r−からなる群より選ばれ;
Lはアリール基及びヘテロアリール基からなる群より選ばれ、前記アリール基及びヘテロアリール基はそれぞれ独立して、任意にハロゲン原子及びアルキル基からなる群より選ばれる1種以上の基によりさらに置換され;]及び、
【0041】
rは0、1又は2である。]
【0042】
他の態様において、本発明は、下記のステップを含んでなる、式(IA)で表される化合物の製造方法に関する。
【0043】
【化7】
【0044】
ここで、式(IA_1)で表される化合物は式(IA)で表される化合物に変換され、A、R、R及びRは、式(IA)において定義される。
【0045】
他の態様において、本発明は、下記のステップを含んでなる、式(I)で表される化合物又はその製薬学的に許容される塩の製造方法に関する。
【0046】
【化8】
【0047】
ここで、式(IA)で表されるリン酸化合物を、式(IB)で表される化合物と反応させ、式(I)で表される化合物を得る;A、B、n及びR〜Rは、式(I)において定義される。
【0048】
他の態様において、本発明は、下記のステップを含んでなる、式(II)で表される化合物又はその製薬学的に許容される塩の製造方法に関する。
【0049】
【化9】
【0050】
ここで、式(IA)で表される化合物を、式(IIB)で表される化合物と反応させ、式(II)で表される化合物を得る;A、n、R〜R、R及びRは、式(II)において定義される。
【0051】
本発明は、VEGFR、EGFR、HER-2、HER-3、HER-4、c-Met若しくはJak3又はこれらの混合物を阻害する受容体チロシンキナーゼ阻害剤としての使用を目的とする、式(I)で表される化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩に関する。
【0052】
本発明は、VEGFR、EGFR、HER-2、HER-3、HER-4、c-Met若しくはJak3又はこれらの混合物からなる群より選ばれる受容体チロシンキナーゼに対する阻害剤の製造における、式(I)で表される化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0053】
本発明は、タンパク質キナーゼ関連疾患治療のための医薬品製造における、式(I)で表される化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩の使用に関し、前記タンパク質キナーゼは、受容体チロシンキナーゼ、非受容体チロシンキナーゼ及びセリンスレオニンキナーゼからなる群より選ばれ;前記受容体チロシンキナーゼは、VEGFR、EGFR、HER-2、HER-3、HER-4、c-Met、Jak3及びこれらの混合物からなる群より選ばれる。
【0054】
さらに他の態様において、本発明は、タンパク質キナーゼ関連疾患治療のための医薬品としての使用を目的とする、式(I)で表される化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩に関し、前記タンパク質キナーゼは、受容体チロシンキナーゼ、非受容体チロシンキナーゼ及びセリンスレオニンキナーゼからなる群より選ばれ;前記受容体チロシンキナーゼは、VEGFR、EGFR、HER-2、HER-3、HER-4、c-Met、Jak3及びこれらの混合物からなる群より選ばれる。
【0055】
さらに他の態様において、本発明は、癌治療のための医薬品製造における、式(I)で表される化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩の使用に関し、前記癌は、肺癌、乳癌、扁平上皮癌及び胃癌からなる群より選ばれる。
【0056】
さらに他の態様において、本発明は、癌治療のための医薬品としての使用を目的とする、式(I)で表される化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0057】
さらに他の態様において、本発明は、式(I)で表される化合物、若しくはその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩、又はこれらのプロドラッグの治療的有効量、及び製薬学的に許容される担体若しくは希釈剤を含んでなる医薬組成物に関する。また本発明は、タンパク質キナーゼ関連疾患治療のための医薬品製造における、前記医薬組成物の使用に関し、前記タンパク質キナーゼは、VEGFR、EGFR、HER-2、HER-3、HER-4、c-Met、Jak3及びこれらの混合物からなる群より選ばれる受容体チロシンキナーゼである。さらに本発明は、癌治療のための医薬品製造における前記医薬組成物の使用に関し、前記癌は、肺癌、乳癌、扁平上皮癌及び胃癌からなる群より選ばれる。
【0058】
他の態様において、本発明は、式(I)で表される化合物、若しくはその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩、又はこれらのプロドラッグを、製薬学的に許容される担体若しくは希釈剤と組み合わせるステップを含んでなる、前記医薬組成物の製造方法に関する。
【0059】
他の態様において、本発明は、タンパク質キナーゼを、式(I)で表される化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩と接触させることを含んでなる、タンパク質キナーゼの触媒活性を調節する方法に関し、前記タンパク質キナーゼは、VEGFR、EGFR、HER-2、HER-3、HER-4、c-Met、Jak3及びこれらの混合物からなる群より選ばれる受容体チロシンキナーゼである。
【0060】
他の態様において、本発明は、式(I)で表される化合物又はその互変異性体、ラセミ体、鏡像異性体、ジアステレオマー及びこれらの混合物、並びにこれらの製薬学的に許容される塩の治療的有効量を、単独又は他剤と併用して、癌治療を必要とする患者に投与することを含んでなる癌の治療方法に関し、併用する前記他剤は、トラスツズマブ、ハーセプチン、セツキシマブ、ラパチニブ、ネラチニブ、レトロゾール、カペシタビン、トポテカン、ドセタキセルなどからなる群より選ばれる抗癌剤である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
特に明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される下記の用語は、以下に記載される意味を持つ。
【0062】
「アルキル基」は、C〜C20の直鎖及び分岐鎖基を含む飽和脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基は、好ましくは1〜12個の炭素原子を有するアルキル基である。代表的なものは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2,3−ジメチルブチル基、n−ヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−メチルヘキシル基、4−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、2,3−ジメチルペンチル基、2,4−ジメチルペンチル基、2,2−ジメチルペンチル基、3,3−ジメチルペンチル基、2−エチルペンチル基、3−エチルペンチル基、n−オクチル基、2,3−ジメチルヘキシル基、2,4−ジメチルヘキシル基、2,5−ジメチルヘキシル基、2,2−ジメチルヘキシル基、3,3−ジメチルヘキシル基、4,4−ジメチルヘキシル基、2−エチルヘキシル基、3−エチルヘキシル基、4−エチルヘキシル基、2−メチル−2−エチルペンチル基、2−メチル−3−エチルペンチル基、n−ノニル基、2−メチル−2−エチルヘキシル基、2−メチル−3−エチルヘキシル基、2,2−ジエチルペンチル基、n−デシル基、3,3−ジエチルヘキシル基、2,2−ジエチルヘキシル基及びこれらの分岐鎖異性体であるが、これらに限定されない。より好ましくは、アルキル基は、1〜6個の炭素原子を有する低級アルキル基である。代表的なものは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1−エチルプロピル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、n−ヘキシル基、1−エチル−2−メチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、2,3−ジメチルブチル基などであるが、これらに限定されない。アルキル基は、置換されたもの又は非置換のものであってもよい。置換されたものである場合、その置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アルキルスルホ基、アルキルアミノ基、ハロゲン原子、チオール基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、複素環アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシル基、複素環アルコキシル基、シクロアルキルチオ基、複素環アルキルチオ基、カルボニル基、カルボキシ基及びカルボン酸エステルからなる群より独立して選ばれる1種以上の基が好ましい。
【0063】
「シクロアルキル基」は、3〜20個の炭素原子を有する飽和及び/又は部分不飽和単環式又は多環式炭化水素基を指す。シクロアルキル基は、好ましくは3〜12個の炭素原子を有するシクロアルキル基である。より好ましくは、シクロアルキル基は、3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基である。単環式シクロアルキル基の代表例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘプチル基、シクロヘプタトリエニル基、シクロオクチル基などを含むが、これらに限定されない。多環式シクロアルキル基は、スピロ環、縮合環及び架橋環を有するシクロアルキル基を含む。
【0064】
「スピロシクロアルキル基」は、1個の共有炭素原子(スピロ原子と呼ばれる)を介して連結された環を有する5〜20員の多環式炭化水素基を指し、1個以上の環は1個以上の二重結合を含んでもよいが、いずれの環も完全に共役したπ電子系を持たない。スピロシクロアルキル基は、好ましくは6〜14員であり、より好ましくは7〜10員である。スピロシクロアルキル基は、共有スピロ原子数に従って、単環式スピロ環、二環式スピロ環及び多環式スピロ環に分けられるが、好ましくは単環式スピロ環又は二環式スピロ環を指す。より好ましくは、スピロシクロアルキル基は、4員/4員、4員/5員、4員/6員、5員/5員又は5員/6員の単環式スピロ環である。スピロシクロアルキル基の代表例は下記の基を含むが、これらに限定されない。
【0065】
【化10】
【0066】
「縮合シクロアルキル基」は、5〜20員の多環式炭化水素基を指し、系中の各環は他の環の炭素原子の隣接ペアを共有し、1個以上の環は1個以上の二重結合を含んでもよいが、いずれの環も完全に共役したπ電子系を持たない。縮合シクロアルキル基は、好ましくは6〜14員であり、より好ましくは7〜10員である。縮合シクロアルキル基は、員環数に従って、縮合二環、三環、四環及び多環に分けられるが、好ましくは縮合二環又は三環を指す。より好ましくは、縮合シクロアルキル基は、5員/5員又は5員/6員の縮合二環である。縮合シクロアルキル基の代表例は下記の基を含むが、これらに限定されない。
【0067】
【化11】
【0068】
「架橋シクロアルキル基」は、5〜20員の多環式炭化水素基を指し、系中のすべての二つの環は二つの非連結の炭素原子を共有する。前記環は、1個以上の二重結合を有することができるが、完全に共役したπ電子系を持たない。架橋シクロアルキル基は、好ましくは6〜14員であり、より好ましくは7〜10員である。架橋シクロアルキル基は、員環数に従って、架橋二環、三環、四環及び多環に分けられるが、好ましくは二環、三環又は四環の架橋シクロアルキル基を指し、より好ましくは二環又は三環の架橋シクロアルキル基を指す。架橋シクロアルキル基の代表例は下記の基を含むが、これらに限定されない。
【0069】
【化12】
【0070】
前記シクロアルキル基は、アリール基、ヘテロアリール基又は複素環アルキル基と縮合することができ、ここで、親構造と結合する環はシクロアルキル基である。架橋シクロアルキル基の代表的なものは、インダニル酢酸基、テトラヒドロナフタレン基、ベンゾシドヘプチル基などであるが、これらに限定されない。前記シクロアルキル基は、置換されたもの又は非置換のものであってもよい。置換されたものである場合、その置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アルキルスルホ基、アルキルアミノ基、ハロゲン原子、チオール基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、複素環アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシル基、複素環アルコキシル基、シクロアルキルチオ基、複素環アルキルチオ基、カルボニル基、カルボキシ基及びカルボン酸エステルからなる群より独立して選ばれる1種以上の基が好ましい。
【0071】
「アリール基」は、6〜14員のすべてが炭素の単環又は縮合多環基(「縮合」環系は、系中の各環が、系中の他の環の炭素原子の隣接ペアを共有することを意味する。)を指し、完全に共役したπ電子系を有する。アリール基は、好ましくはフェニル基及びナフチル基などの6〜10員である。前記アリール基は、ヘテロアリール基、複素環アルキル基又はシクロアルキル基と縮合することができ、ここで、親構造と結合する環はアリール基である。アリール基の代表例は下記の基を含むが、これらに限定されない。
【0072】
【化13】
【0073】
前記アリール基は、置換されたもの又は非置換のものであってもよい。置換されたものである場合、その置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アルキルスルホ基、アルキルアミノ基、ハロゲン原子、チオール基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、複素環アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシル基、複素環アルコキシル基、シクロアルキルチオ基、複素環アルキルチオ基、カルボニル基、カルボキシ基及びカルボン酸エステルからなる群より独立して選ばれる1種以上の基が好ましい。
【0074】
「ヘテロアリール基」は、環原子としてO、S及びNからなる群より選ばれる1〜4個のヘテロ原子を有し、残余の環原子はCである、5〜14員のアリール基を指す。前記環は、好ましくは6〜10員環である。前記ヘテロアリール基は、好ましくは5〜6員環である。ヘテロアリール基の代表的なものは、フラン基、チオフェン基、ピリジン基、ピロール基、N−アルキルピロール基、ピリミジン基、ピラジン基、イミダゾール基、テトラゾリル基などである。前記ヘテロアリール基は、アリール基、複素環アルキル基又はシクロアルキル基と縮合することができ、ここで、親構造と結合する環はヘテロアリール基である。架橋シクロアルキル基の代表例は下記の基を含むが、これらに限定されない。
【0075】
【化14】
【0076】
前記ヘテロアリール基は、置換されたもの又は非置換のものであってもよい。置換されたものである場合、その置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アルキルスルホ基、アルキルアミノ基、ハロゲン原子、チオール基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、複素環アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシル基、複素環アルコキシル基、シクロアルキルチオ基、複素環アルキルチオ基、カルボニル基、カルボキシ基及びカルボン酸エステルからなる群より独立して選ばれる1種以上の基が好ましい。
【0077】
「複素環アルキル基」は、環原子として、N、O及びS(O)n(nは0、1又は2である)からなる群より選ばれる1個以上のヘテロ原子を有し(ただし−O−O−、−O−S−及び−S−S−を除く)、残余の環原子はCである、3〜20員の飽和及び/又は部分不飽和単環又は多環炭化水素基を指す。複素環アルキル基は、好ましくは、1〜4個の前記ヘテロ原子を有する3〜12員環である;より好ましくは3〜10員である。単環式複素環アルキル基の代表例は、ピロリジル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、スルホ−モルホリニル基、ホモピペラジニル基などを含むが、これらに限定されない。多環式複素環アルキル基は、スピロ環、縮合環及び架橋環を有する複素環アルキル基を含む。
【0078】
「スピロ複素環アルキル基」は、1個の共有炭素原子(スピロ原子と呼ばれる)を介して連結された環を有する5〜20員の多環式複素環アルキル基を指し、前記環は、環原子としてN、O及びS(O)p(pは0、1又は2である)からなる群より選ばれる1個以上のヘテロ原子を有し、残余の環原子はCであり、1個以上の環は1個以上の二重結合を含んでもよいが、いずれの環も完全に共役したπ電子系を持たない。スピロ複素環アルキル基は、好ましくは6〜14員であり、より好ましくは7〜10員である。スピロ複素環アルキル基は、共有炭素原子数に従って、単環式スピロ複素環アルキル基、二環式スピロ複素環アルキル基及び多環式スピロ複素環アルキル基に分けられるが、好ましくは単環式スピロ複素環アルキル基又は二環式スピロ複素環アルキル基を指す。より好ましくは、スピロ複素環アルキル基は、4員/4員、4員/5員、4員/6員、5員/5員又は5員/6員の単環式スピロ複素環アルキル基である。スピロ複素環アルキル基の代表例は下記の基を含むが、これらに限定されない。
【0079】
【化15】
【0080】
「縮合複素環アルキル基」は、5〜20員の多環式複素環アルキル基を指し、系中の各環は、他の環の炭素原子の隣接ペアを共有し、1個以上の環は1個以上の二重結合を含んでもよいが、いずれの環も完全に共役したπ電子系を持たず、前記環は、環原子としてN、O及びS(O)p(pは0、1又は2である)からなる群より選ばれる1個以上のヘテロ原子を有し、残余の環原子はCである。縮合複素環アルキル基は、好ましくは6〜14員であり、より好ましくは7〜10員である。縮合複素環アルキル基は、員環数に従って、縮合二環、三環、四環及び多環に分けられるが、好ましくは縮合二環又は三環を指す。より好ましくは、縮合複素環アルキル基は、5員/5員又は5員/6員縮合二環である。縮合複素環アルキル基の代表例は下記の基を含むが、これらに限定されない。
【0081】
【化16】
【0082】
「架橋複素環アルキル基」は、5〜14員の多環式複素環アルキル基を指し、系中のすべての二つの環は二つの非連結の炭素原子を共有し、前記環は1個以上の二重結合を含んでもよいが、完全に共役したπ電子系を持たず、前記環は、環原子としてN、O及びS(O)p(pは0、1又は2である)からなる群より選ばれる1個以上のヘテロ原子を有し、残余の環原子はCである。架橋複素環アルキル基は、好ましくは6〜14員であり、より好ましくは7〜10員である。架橋複素環アルキル基は、員環数に従って架橋二環、三環、四環及び多環に分けられるが、好ましくは二環、三環又は四環の架橋複素環アルキル基を指し、より好ましくは二環又は三環の架橋複素環アルキル基を指す。架橋複素環アルキル基の代表例は下記の基を含むが、これらに限定されない。
【0083】
【化17】
【0084】
前記複素環アルキル基は、アリール基、複素環アルキル基又はシクロアルキル基と縮合することができ、ここで、親構造と結合する環は複素環アルキル基である。複素環アルキル基の代表例は下記の基を含むが、これらに限定されない。
【0085】
【化18】
【0086】
前記複素環アルキル基は、置換されたもの又は非置換のものであってもよい。置換されたものである場合、その置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アルキルスルホ基、アルキルアミノ基、ハロゲン原子、チオール基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、複素環アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシル基、複素環アルコキシル基、シクロアルキルチオ基、複素環シクロアルキルチオ基、カルボニル基、カルボキシ基及びカルボン酸エステルからなる群より独立して選ばれる1種以上の基が好ましい。
【0087】
「アルコキシル基」は、−O−(アルキル)基及び−O−(非置換シクロアルキル)基の両方を指し、アルキル基は上記で定義される。代表例は、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、ブトキシル基、シクロプロポキシル基、シクロブトキシル基、シクロペンチルオキシル基、シクロヘキシルオキシル基などを含むが、これらに限定されない。前記アルコキシル基は、置換されたもの又は非置換のものであってもよい。置換されたものである場合、その置換基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アルキルスルホ基、アルキルアミノ基、ハロゲン原子、チオール基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、複素環アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシル基、複素環アルコキシル基、シクロアルキルチオ基、複素環シクロアルキルチオ基、カルボニル基、カルボキシ基及びカルボン酸エステルからなる群より独立して選ばれる1種以上の基が好ましい。
【0088】
「ヒドロキシル基」は、−OH基を指す。
「ヒドロキシアルキル基」は、−アルキル基−OHを指し、アルキル基は上記で定義された通りである。
「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを指し、好ましくはフルオロ又はクロロである。
「カルボニル基」は、−C(=O)−を指す。
「ニトロ基」は、−NOを指す。
「シアノ基」は、−CNを指す。
「アミノ基」は、−NHを指す。
「カルボキシ基」は、−C(=O)OHを指す。
「カルボン酸エステル」は、−C(=O)O−アルキル基を指す。
【0089】
「任意の」又は「任意に」は、続いて記述される現象又は状況が生じてもよく又は生じなくてもよいことを意味し、またその記述は、その現象又は状況が生じてもよく又は生じなくてもよいことの実例を含むことを意味する。例えば、「複素環基は任意にさらにアルキル基により置換される。」は、アルキル基が存在してもよく又は存在しなくともよいことを意味し、またその記述は、複素環基がアルキル基により置換される状況及び複素環基がアルキル基により置換されない状況を意味する。
【0090】
「医薬組成物」は、本明細書に記載された化合物若しくは生理学的/製薬学的に許容される塩又はこれらのプロドラッグの1種以上と、生理学的/製薬学的に許容される担体及び賦形剤などの他の化学成分との混合物を指す。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることであり、有効成分のより効率的な摂取に役立つ。
【0091】
本発明の化合物の合成方法
本発明の目的を達成するため、本発明は下記の技術的解決法を使用する:
【0092】
本発明によれば、式(I)で表される化合物又はその製薬学的に許容される塩の製造方法は、下記のステップを含んでなる:
【0093】
【化19】
【0094】
式(IA−1)で表される化合物を、縮合剤の存在下でジエチルホスホノ酢酸と反応させ、式(IA)で表される化合物を得る;式(IA)で表される化合物を、ドライアイス浴中でリチウムビス(トリメチルシリル)アミドと反応させ、この反応溶液を室温まで加温し、これを、ウィッティヒ反応を用いて式(IB)で表される化合物と反応させ、式(I)で表される化合物を得る;ここでA、B、n及びR〜Rは、式(I)において定義される。
【0095】
本発明によれば、式(II)で表される化合物又はその製薬学的に許容される塩の製造方法は、下記のステップを含んでなる:
【0096】
【化20】
【0097】
式(IA)で表される化合物を、ドライアイス浴中でリチウムビス(トリメチルシリル)アミドと反応させた後、この反応溶液を室温まで加温し、これを、ウィッティヒ反応を用いて式(IIB)で表される化合物と反応させ、式(II)で表される化合物を得る;ここでA、R〜R及びR〜Rは、式(II)において定義される。
【0098】
具体的実施方法
本発明は、下記の実施例によりさらに記述されるが、本発明の範囲をこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0099】
すべての化合物の構造は、核磁気共鳴(H NMR)及び/又は質量分析(MS)により同定した。HNMRの化学シフトはppm(10-6)として記載した。HNMRは、ブルカー AVANCE-400スペクトロメータにより測定した。
使用した溶媒は、重メタノール(CDOD)、重クロロホルム(CDCl)及び重ジメチルスルホキシド(DMSO−d)であり、内部標準としてテトラメチルシラン(TMS)を使用した。
【0100】
MSは、FINNIGAN
LCQ Ad(ESI)質量分析計(サーモ、モデル:Finnigan LCQ advantage MAX)により測定した。
【0101】
HPLCは、アジレント1200DAD高速液体{こうあつ えきたい}クロマトグラフィースペクトロメータ(Sunfire C18 150×4.6
mm クロマトグラフィーカラム)及びウォーターズ2695-2996高速液体{こうあつ えきたい}クロマトグラフィースペクトロメータ(Gimini C18 150×4.6
mm クロマトグラフィーカラム)により測定した。
【0102】
IC50は、NovoStar ELIASA(酵素結合免疫測定法)(BMG社、ドイツ)により測定した。
【0103】
薄層シリカゲルは、煙台黄海(Yantai Huanghai)HSGF254又は青島(Qingdao)GF254シリカゲルプレートを使用した。TLC(薄層クロマトグラフィー)で使用したプレートの厚さは0.15〜0.2 mmであり、生成物の精製に使用したプレートの厚さは0.4〜0.5 mmであった。
【0104】
カラムクロマトグラフィーには、通常、煙台黄海200〜300メッシュ・シリカゲルを担体として使用した。
アルカリアルミナカラムクロマトグラフィーには、通常、国薬(GuoYao)FCP 200〜300メッシュ・アルカリアルミナを担体として使用した。
【0105】
本発明の出発物質は既知であるか若しくはABCR社、アクロスオーガニックス(Acros Organics)、アルドリッチケミカル(Aldrich Chemical)社、アクセラケムバイオ(Accela ChemBio)社、ダルイファインケミカル(Darui Finechemical)社などから購入し、又は先行技術にある通常の合成方法により合成することができる。
【0106】
特に明記しない限り、下記の反応は窒素雰囲気下又はアルゴン雰囲気下に置いた。
【0107】
「アルゴン雰囲気」又は「窒素雰囲気」の用語は、反応フラスコに約1 Lのアルゴン又は窒素バルーンが装着されていることを指す。
「水素雰囲気」の用語は、反応フラスコに約1 Lの水素バルーンが装着されていることを指す。
【0108】
加圧水素化反応は、パー(Parr)3916EKX水素化スペクトロメータ及びQL-500水素発生器又はHC2-SS水素化スペクトロメータを使用して行った。水素化反応において、反応系は通常は吸引され、水素で満たした。この操作を3回繰り返した。
【0109】
特に明記しない限り、実施例で使用された溶液は水溶液を指す。
特に明記しない限り、反応温度は室温であった。
室温は大部分の周囲反応温度であり、20〜30℃であった。
【0110】
実施例の反応過程は、薄層クロマトグラフィー(TLC)により監視した。展開溶媒系は、ジクロロメタン及びメタノール系、ヘキサン及び酢酸エチル系、石油エーテル及び酢酸エチル系、並びにアセトンからなる。溶媒量の比率は化合物の極性に従って調整された。
【0111】
カラムクロマトグラフィーの溶出系及び薄層クロマトグラフィーの展開溶媒系は、A:ジクロロメタン及びメタノール系、B:ヘキサン及び酢酸エチル系、C:ジクロロメタン及びアセトン系からなる。溶媒量の比率は化合物の極性に従って調整され、ある場合には、トリエチルアミンなどの塩基性剤又は酢酸などの酸性剤も添加した。
【実施例1】
【0112】
(E)−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−3−[(2S)−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド
【0113】
【化21】
【0114】
【化22】
【0115】
ステップ1
(2S)−1−メチルピロリジン−2−カルバルデヒド
塩化オキサリル(1.1 mL、13.02 mmol)を、ドライアイス浴中でジメチルスルホキシド(1.9 mL、26.04 mmol)に溶解した。30分後、[(2S)−1−メチルピロリジン−2−イル]メタノール1a(1
g、8.68 mmol)のジクロロメタン溶液(25 mL)を滴下した。次に、この混合物を−30℃で45分間撹拌した後、トリエチルアミン(6.15 g、60.77 mmol)を滴下した。この混合物を室温まで加温して12時間撹拌した。この混合物に250 mLのジクロロメタンを添加し、飽和炭酸水素ナトリウム(100 mL)、飽和塩化アンモニウム(100 mL)及び飽和食塩水で連続的に洗浄した。合わせた有機抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた残渣を溶出系Aでアルカリアルミナカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物(2S)−1−メチルピロリジン−2−カルバルデヒド1b(308mg、淡黄色液体)を収率31.4%で得た。
【0116】
ステップ2
N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−2−ジエトキシホスホリル−アセトアミド
N,N'−カルボニルジイミダゾール(487 mg、3 mmol)を4 mLのテトラヒドロフランに溶解した。この混合物を油浴中で40℃に加温し、ジエチルホスホノ酢酸(588 mg、3 mmol)のテトラヒドロフラン(4 mL)溶液をこの混合物に滴下し、次のステップのために30分間撹拌した。
6−アミノ−4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−7−エトキシ−キノリン−3−カルボニトリル1c(446 mg、1 mmol、既知の方法により調製した:国際公開第2005/028443号パンフレット)を40℃で4 mLのテトラヒドロフランに溶解した後、上記反応混合物を滴下した。12時間撹拌した後、反応混合物を減圧濃縮し、ジクロロメタン(50 mL×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和食塩水(30 mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた残渣を溶出系Aでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−2−ジエトキシホスホリル−アセトアミド1d(624 mg、淡黄色固体)を収率99.9%で得た。
MS m/z (ESI):624 [M+1]
【0117】
ステップ3
(E)−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−3−[(2S)−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド
N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−2−ジエトキシホスホリル−アセトアミド1d(50 mg、0.08 mmol)を−78℃で2 mLのテトラヒドロフランに溶解した後、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(1 M)のトルエン(80 μL、0.08 mmol)溶液を滴下した。この混合物を45分間撹拌した後、(2S)−1−メチルピロリジン−2−カルバルデヒド1b(20mg、0.17mmol)を添加した。さらに1時間撹拌した後、反応混合物を室温まで加温して12時間撹拌した。この反応混合物に1 mLの水と1 mLのメタノールとを添加した後、有機抽出物をジクロロメタン(50 mL×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和食塩水(30 mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた残渣を溶出系Aでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物(E)−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−3−[(2S)−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド1d(25 mg、黄色固体)を収率53.5%で得た。
MS m/z
(ESI):583 [M+1]
1HNMR
(400 MHz, DMSO-d6):δ 9.63 (s, 2H),
8.95 (s, 1H), 8.60 (d, 1H), 8.48 (s, 1H), 7.89 (t, 1H), 7.59 (d, 1H), 7.37 (m,
3H), 7.27-7.20 (m, 2H), 6.80-6.60 (m, 2H), 5.29 (s, 2H), 4.34 (dd, 2H),
2.33-2.24 (m, 3H), 2.23-2.15 (m, 2H), 1.99-1.88 (m, 3H), 1.80-1.78 (m, 2H),
1.49 (t, 3H)
【実施例2】
【0118】
(E)−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−3−[(2S)−ピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド
【0119】
【化23】
【0120】
【化24】
【0121】
ステップ1
(2S)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチル
[(2S)−ピロリジン−2−イル]メタノール2a(5.06
g、0.05 mmol)及びトリエチルアミン(10.12 g、0.10 mmol)を氷水浴中で100 mLのジクロロメタンに溶解した。この反応混合物にジ−tert−ブチルピロ炭酸(16.37 g、0.08 mmol)を分けて添加し、室温で12時間撹拌した。この反応混合物を減圧濃縮し、酢酸エチル(50 mL×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和食塩水(30 mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して、標記化合物(2S)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチル2b(10 g、淡黄色液体)を収率99.9%で得た。
【0122】
ステップ2
(2S)−2−ホルミルピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチル
塩化オキサリル(3.2 mL、0.04 mol)及びジメチルスルホキシド(4.3 mL、0.06 mol)をドライアイス浴中で100 mLのジクロロメタンに溶解した。30分間撹拌した後、20 mLのジクロロメタン中の(2S)−2−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチル2b(2 g、0.01 mol)溶液を滴下した。この混合物を45分間撹拌し、トリエチルアミン(7.08 g、0.07 mol)を滴下した。0℃でさらに1時間撹拌した後、この反応混合物に500 mLのジクロロメタンを添加した。合わせた有機層を飽和食塩水(100 mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた残渣を溶出系Aでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物(2S)−2−ホルミルピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチル2c(1.10 g、淡黄色液体)を収率55.4%で得た。
【0123】
ステップ3
(2S)−2−[(E)−3−[[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]アミノ]−3−オキソ−プロプ−1−エニル]ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチル
N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−2−ジエトキシホスホリル−アセトアミド1d(156 mg、0.25 mmol)をドライアイス浴中で3 mLのテトラヒドロフランに溶解した後、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(1 M)のトルエン(375 μL、0.38 mmol)溶液を滴下した。この反応混合物を45分間撹拌した後、2 mLのテトラヒドロフラン中の(2S)−2−ホルミルピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチル2c(100 mg、0.50
mmol)溶液を添加した。この反応混合物をさらに1時間撹拌した後、室温まで加温して12時間撹拌した。この反応混合物を減圧濃縮し、得られた残渣を溶出系Aでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物(2S)−2−[(E)−3−[[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]アミノ]−3−オキソ−プロプ−1−エニル]ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチル2d(161 mg、淡黄色固体)を収率96.2%で得た。
MS m/z (ESI):669 [M+1]
【0124】
ステップ4
(E)−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−3−[(2S)−ピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド
(2S)−2−[(E)−3−[[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]アミノ]−3−オキソ−プロプ−1−エニル]ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチル2d(161 mg、0.24 mmol)を25 mLの1,4−ジオキサン中の塩化水素(2 M)溶液に溶解した。12時間撹拌した後、この反応混合物を減圧濃縮し、ジクロロメタン(50 mL×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和食塩水(30 mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた残渣を溶出系Aでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物(E)−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−3−[(2S)−ピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド2(20 mg、黄色固体)を収率14.6%で得た。
MS m/z
(ESI):569.4 [M+1]
1H NMR (400M Hz, DMSO-d6):δ10.01(s, 1H), 9.76 (s, 1H), 9.71 (s, 2H), 9.40 (s, 1H), 8.92 (s, 1H),
8.61(s, 1H), 8.60 (s, 1H), 7.90 (t, 1H), 7.60 (d, 1H), 7.58-7.41 (s, 2H),
7.39-7.38 (m, 2H), 6.95 (dd, 1H), 6.79 (d, 1H), 5.29 (s, 1H), 4.35 (t, 2H),
4.21-4.20 (m, 1H), 3.23-3.22 (m, 3H), 2.21-2.20 (m, 1H), 2.039-1.94 (m,1H),
1.84-1.76 (m, 1H),1.49 (t, 3H)
【実施例3】
【0125】
(E)−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−3−[(2S、4R)−4−ヒドロキシ−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド
【0126】
【化25】
【0127】
【化26】
【0128】
ステップ1
(2S、4R)−4−ヒドロキシ−1−メチルピロリジン−2−カルボン酸メチル
(2S、4R)−4−ヒドロキシピロリジン−2−カルボン酸メチル3a(5.53
g、38 mmol)を氷水浴中で80 mLのメタノールに溶解した後、40%ホルムアルデヒド溶液(31 mL、380
mmol)及びシアノ水素化ホウ素ナトリウム(12 g、190
mmol)を分けて添加した。この反応混合物を0.5時間撹拌した後、室温まで加温し、3時間撹拌した。この混合物を40 mLの水で急冷し、減圧濃縮して、ジクロロメタン(80 mL×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和食塩水(30 mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧濃縮し、標記化合物(2S、4R)−4−ヒドロキシ−1−メチルピロリジン−2−カルボン酸メチ3bの粗生成物を無色油状物として得た。この生成物は次のステップで直接使用した。
【0129】
ステップ2
(2S、4R)−4−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシ−1−メチルピロリジン−2−カルボン酸メチル
(2S、4R)−4−ヒドロキシ−1−メチルピロリジン−2−カルボン酸メチル3b(6
g、37 mmol)を100 mLのジクロロメタンに溶解した後、イミダゾール(7.70 g、113 mmol)及びtert−ブチルジメチルクロロシラン(6.80 g、45 mmol)を連続的に添加した。12時間撹拌した後、反応混合物を100 mLのジクロロメタンで希釈し、水(50 mL)及び飽和食塩水(50 mL)で連続的に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた残渣を溶出系Aでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物(2S、4R)−4−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシ−1−メチルピロリジン−2−カルボン酸メチル3cの粗生成物を無色油状物として得た。この生成物は精製することなく次のステップで直接使用した。
MS m/z (ESI):274 [M+1]
【0130】
ステップ3
[(2S、4R)−4−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシ−1−メチルピロリジン−2−イル]メタノール
(2S、4R)−4−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシ−1−メチルピロリジン−2−カルボン酸メチル3c(2.50 g、9.10mmol)を氷水浴中で50 mLのジクロロメタンに溶解した。水素化ジイソブチルアルミニウム(18 mL、18 mmol)をゆっくりと滴下し、この混合物を6時間撹拌した。この反応混合物を1 mLのメタノールで急冷し、200 mLのジクロロメタンで希釈して、無水硫酸ナトリウムを添加して30分間撹拌した。この反応混合物を濾過し、減圧濃縮して、得られた残渣を溶出系Aでアルカリアルミナカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物[(2S、4R)−4−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシ−1−メチルピロリジン−2−イル]メタノール3d(570 mg、黄色油状物)を収率50.0%で得た。
MS m/z (ESI):246 [M+1]
【0131】
ステップ4
(2S、4R)−4−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシ−1−メチルピロリジン−2−カルバルデヒド
ジメチルスルホキシド(174 μL、2.45 mmol)をドライアイス浴中で20 mLのジクロロメタンに溶解した。系の温度が安定した後、塩化オキサリル(156 μL、1.80 mmol)をゆっくりと滴下した。30分間撹拌した後、2 mLのジクロロメタン中の[(2S、4R)−4−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシ−1−メチルピロリジン−2−イル]メタノール3d(300 mg、1.20mmol)溶液を滴下した。45分間撹拌した後、この反応混合物にトリエチルアミン(510 μL、3.67 mmol)を添加し、次に室温まで加温して1時間撹拌した。この反応混合物を100 mLのジクロロメタンで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム(20 mL)、飽和塩化アンモニウム(20 mL)及び飽和食塩水で連続的に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して、標記化合物(2S、4R)−4−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシ−1−メチルピロリジン−2−カルバルデヒド3e(320 mg、黄色油状物)を粗生成物として得た。この生成物は次のステップで直接使用した。
【0132】
ステップ5
(E)−3−[(2S、4R)−4−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシ−1−メチルピロリジン−2−イル]−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]プロプ−2−エナミド
N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−2−ジエトキシホスホリル−アセトアミド1d(418 mg、0.67 mmol)をドライアイス浴中で2.5 mLのテトラヒドロフランに溶解した後、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(1 M)のトルエン(1mL、1 mmol)溶液を滴下した。この混合物を45分間撹拌した後、2.5 mLのテトラヒドロフラン中の(2S、4R)−4−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシ−1−メチルピロリジン−2−カルバルデヒド 3e(326 mg、1.34mmol)溶液を添加してさらに1時間撹拌し、次に室温まで加温して12時間撹拌した。この反応混合物を減圧濃縮し、得られた残渣を溶出系Aでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物(E)−3−[(2S、4R)−4−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシ−1−メチルピロリジン−2−イル]−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]プロプ−2−エナミド3f(292
mg、黄色固体)を収率61.2%で得た。
MS m/z (ESI):713 [M+1]
【0133】
ステップ6
(E)−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−3−[(2S、4R)−4−ヒドロキシ−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド
(E)−3−[(2S、4R)−4−(tert−ブチル(ジメチル)シリル)オキシ−1−メチルピロリジン−2−イル]−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]プロプ−2−エナミド3f(50 mg、0.07 mmol)及びテトラブチルアンモニウムフルオリド(51 mg、0.21 mmol)を5 mLのテトラヒドロフランに溶解し、この混合物を12時間撹拌した。この混合物に1 mLの水を添加し、減圧濃縮して、ジクロロメタン(50 mL×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和食塩水(30 mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた残渣を溶出系Aでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物(E)−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−3−[(2S、4R)−4−ヒドロキシ−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド3(17mg、黄色固体)を収率40.4%で得た。
MS m/z
(ESI):599.4 [M+1]
1H NMR (400M Hz, DMSO-d6):δ 9.63
(s, 1H), 9.52 (s, 1H), 8.97 (s, 1H), 8.61-8.60 (m, 1H), 8.48 (s, 1H),
7.904-7.862 (m, 1H), 7.60 (d, 1H), 7.41-7.36 (m, 3H), 7.28-7.20 (m, 2H), 6.76
(dd, 1H), 6.61 (d, 1H), 5.29 (s, 2H), 4.82 (s, 1H), 4.35-4.29 (m, 2H), 4.21 (d,
1H), 3.42-3.38 (m, 2H), 3.36-3.33 (m, 3H), 2.93 (d, 1H), 2.41-2.37 (m, 1H),
2.20-2.18 (m, 1H), 1.49 (t, 3H)
【実施例4】
【0134】
(E)−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]キナゾリン−6−イル]−3−[(2S)−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド
【0135】
【化27】
【0136】
【化28】
【0137】
ステップ1
4−クロロ−6−ニトロ−キナゾリン
6−ニトロ−3H−キナゾリン−4−オン4a(18.88g、99.40 mmol)を五塩化リン(31.03 g、149 mmol)に溶解した。この混合物を160℃まで加熱し、3時間撹拌した。この反応混合物に、熱いうちに250 mLのn−ヘキサンを添加し、撹拌して、溶液から大量の固体を沈殿させ、濾過した。濾過ケーキをn−ヘキサンで洗浄し、真空乾燥して、標記化合物4−クロロ−6−ニトロ−キナゾリン4b(18.14 g、黄色固体)を収率87.2%で得た。
【0138】
ステップ2
N−[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]−6−ニトロ−キナゾリン−4−アミン
4−クロロ−6−ニトロ−キナゾリン4b粗生成物(6.06 g、28.90
mmol)を100 mLのイソプロパノールに溶解した後、3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)アニリン4c(7.47 g、31.8
mmol)を添加した。この反応混合物は5時間加熱還流した。この混合物を室温まで冷却し、固形物を沈殿させ、濾過した。濾過ケーキを、酢酸エチル、飽和食塩水(50 mL)及び水(150 mL)で連続的に洗浄し、真空乾燥して、標記化合物N−[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]−6−ニトロ−キナゾリン−4−アミン4d(8.38g、黄色固体)を収率74.8%で得た。
MS m/z (ESI):319 [M+1]
【0139】
ステップ3
N4−[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]キナゾリン−4,6−ジアミン
N−[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]−6−ニトロ−キナゾリン−4−アミン4d(4.07 g、10 mmol)及び濃塩酸(2 mL、24 mmol)を95%エタノール及び水(v/v = 10/3)の溶媒混合物(130 mL)に溶解した後、鉄粉(11.17 g、200 mmol)を添加した。この反応混合物を2時間加熱還流し、熱いうちに濾過し、濾液を減圧濃縮してエタノールを除去した。得られた残渣を水酸化アンモニウムによりpH > 7に調整し、濾過した。濾過ケーキを真空乾燥し、溶出系Aでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物N4−[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]キナゾリン−4,6−ジアミン4e(2.04 g、白色固体)を収率54.1%で得た。
MS m/z (ESI):378 [M+1]
【0140】
ステップ4
N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]キナゾリン−6−イル]−2−ジエトキシホスホリル−アセトアミド
ジエチルホスホノ酢酸(1.04 g、5.30 mmol)を氷水浴中で10 mLのジクロロメタンに溶解した後、塩化オキサリル(1.34 g、10 mmol)及び1滴のN,N−ジメチルホルムアミドを添加した。1時間撹拌した後、混合物を室温まで加温し、さらに1時間撹拌して減圧濃縮し、次のステップで使用するため10 mLのテトラヒドロフランを添加した。
N4−[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]キナゾリン−4,6−ジアミン4e(1 g、2.65 mmol)をN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.03 g、7.94mmol)に溶解した後、上記反応溶液を滴下した。この混合物を室温まで加温して1時間撹拌した。この反応混合物を減圧濃縮し、ジクロロメタン(50 mL×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和食塩水(30 mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた残渣を溶出系Aでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]キナゾリン−6−イル]−2−ジエトキシホスホリル−アセトアミド4f(671 mg、褐色固体)を収率45.7%で得た。
MS m/z (ESI):556 [M+1]
【0141】
ステップ5
(E)−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]キナゾリン−6−イル]−3−[(2S)−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド
N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]キナゾリン−6−イル]−2−ジエトキシホスホリル−アセトアミド4f(277 mg、0.50 mmol)をドライアイス浴中で2.5 mLのテトラヒドロフランに溶解した後、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(1 M)のトルエン(750 μL、0.75 mmol)溶液を滴下した。45分間撹拌した後、反応混合物に(2S)−1−メチルピロリジン−2−カルバルデヒド 1b(113mg、2 mmol)を添加して1時間撹拌し、次に室温まで加温して12時間撹拌した。この反応混合物を減圧濃縮し、得られた残渣を溶出系Aでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物(E)−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]キナゾリン−6−イル]−3−[(2S)−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド4(85 mg、黄色固体)を収率33.0%で得た。
MS m/z
(ESI):515.3 [M+1]
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ 10.47
(s, 1H), 9.82 (s, 1H), 8.79 (s,1H), 8.61 (d, 1H), 8.52 (s, 1H), 8.00 (s, 1H),
7.91-7.89 (m, 2H), 7.78-7.69 (m, 2H), 7.61 (d, 1H), 7.38 (d, 1H), 7.28 (d, 1H),
6.78-6.72 (m, 1H), 6.47 (d, 1H), 5.30 (s, 2H), 3.14-3.00 (m, 2H), 3.001 (s,
1H), 2.31 (m, 4H), 2.10-2.07 (m, 1H), 1.81 (m, 2H), 1.63 (m, 1H)
【実施例5】
【0142】
(E)−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−3−[(2R)−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド
【0143】
【化29】
【0144】
【化30】
【0145】
ステップ1
[(2R)−1−メチルピロリジン−2−イル]メタノール
水素化アルミニウムリチウム(230 mg、6 mmol)及びN−tert−ブトキシカルボニル−L−プロリノール5a(400 mg、2 mmol)を氷水浴中で10 mLのテトラヒドロフランに分けて溶解した。気体の放出が明らかになくなった後、反応混合物を2時間加熱還流した。この反応混合物に氷水浴中で5 mLのメタノールを滴下した後、5 mLの水を添加し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して、標記化合物[(2R)−1−メチルピロリジン−2−イル]メタノール5b(221 mg、無色液体)を収率77.0%で得た。
MS m/z (ESI):116 [M+1]
【0146】
ステップ2
(2R)−1−メチルピロリジン−2−カルバルデヒド
ジメチルスルホキシド(820 μL、11.46 mmol)をドライアイス浴中で5 mLのジクロロメタンに溶解した後、塩化オキサリル(968 mg、7.64 mmol)をゆっくりと滴下した。45分間撹拌した後、この溶液に対し、2 mLのジクロロメタン中の[(2R)−1−メチルピロリジン−2−イル]メタノール5b(220 mg、1.91mmol)溶液を添加した。この反応混合物を45分間撹拌し、トリエチルアミン(1.9 mL、13.37 mmol)を添加した。この反応混合物を10分間撹拌した後、室温まで加温して1時間撹拌した。この反応混合物を、水(20 mL)及び飽和食塩水(10 mL)で連続的に洗浄した。合わせた有機抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた残渣を溶出系Aでアルカリアルミナカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物(2R)−1−メチルピロリジン−2−カルバルデヒド5c(300mg、黄色液体)を得た。これは、精製することなく次のステップで直接使用した。
【0147】
ステップ3
(E)−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−3−[(2R)−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド
N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−2−ジエトキシホスホリル−アセトアミド1d(250 mg、0.40 mmol)をドライアイス浴中で10 mLの乾燥テトラヒドロフランに溶解した後、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(1 M)のトルエン(440μl、0.44mmol)溶液を滴下した。この反応混合物を30分間撹拌し、5mLのテトラヒドロフラン中の(2R)−1−メチルピロリジン−2−カルバルデヒド5c(90 mg、0.80 mmol)溶液を滴下して30分間撹拌し、次に室温まで加温して12時間撹拌した。この反応混合物を減圧濃縮し、得られた残渣を溶出系Aでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物(E)−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−3−[(2R)−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド5(46 mg、黄色固体)を収率19.7%で得た。
MS m/z
(ESI):583.4 [M+1]
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ 9.16
(s, 1H), 8.63 (d, 1H), 8.56 (s, 1H), 8.26 (s, 1H), 7.83-7.80 (dd, 1H),
7.76-7.50 (m, 2H), 7.57-7.56 (m,1H), 7.40 (s, 1H), 7.38(s, 1H), 7.19 (d, 1H),
7.06-7.03 (m, 2H), 6.34-6.31 (d, 1H), 5.35 (s, 2H), 4.39 (m, 2H), 4.27-4.26 (m,
1H), 3.32 (m, 1H), 3.10 (m, 1H), 2.73 (s, 3H), 2.37-2.36 (m, 2H), 2.07-2.01 (m,
2H), 1.64 (t,3H)
【実施例6】
【0148】
(E)−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−3−(1−メチル−2−ピペリジル]プロプ−2−エナミド
【0149】
【化31】
【0150】
【化32】
【0151】
ステップ1
1−メチルピペリジン−2−カルバルデヒド
ジメチルスルホキシド(3.3 mL、46 mmol)をドライアイス浴中で15 mLのジクロロメタンに溶解した後、塩化オキサリル(2.6 mL、31 mmol)をゆっくりと滴下した。45分間撹拌した後、この溶液に対し、5 mLのジクロロメタン中の(1−メチル−2−ピペリジル)メタノール6a(1 g、7.74 mmol)溶液を滴下した。この反応混合物を45分間撹拌した後、トリエチルアミン(7.2 mL、52 mmol)を添加して10分間撹拌し、次に室温まで加温して1時間撹拌した。この反応混合物を、水(20 mL)及び飽和食塩水(20 mL)で連続的に洗浄した。合わせた有機抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた残渣を溶出系Aでアルカリアルミナカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物1−メチルピペリジン−2−カルバルデヒド6b(300 mg、褐色液体)を収率31.0%で得た。これは、精製することなく次のステップで直接使用した。
【0152】
ステップ2
(E)−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−3−(1−メチル−2−ピペリジル]プロプ−2−エナミド
N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−2−ジエトキシホスホリル−アセトアミド1d(300 mg、0.48 mmol)をドライアイス浴中で10 mLのテトラヒドロフランに溶解した後、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(1 M)のトルエン(530μl、0.53mmol)溶液を滴下した。30分間撹拌した後、5 mLのテトラヒドロフラン中の1−メチルピペリジン−2−カルバルデヒド6b(120 mg、0.96 mmol)溶液を滴下した。この反応混合物をさらに30分間撹拌した後、室温まで加温して12時間撹拌した。この反応混合物を減圧濃縮し、得られた残渣を溶出系Aでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物(E)−N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−3−(1−メチル−2−ピペリジル]プロプ−2−エナミド6(14 mg、黄色固体)を収率4.9%で得た。
MS m/z
(ESI):597.3 [M+1]
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ 9.09(s,
1H),
8.63 (d, 1H), 8.51(s, 1H), 7.83-7.79 (m, 2H),
7.58-7.56 (m, 1H), 7.30-7.27 (m, 3H), 7.14-7.12 (m, 2H), 7.04 (d, 1H),
6.69-6.66 (m, 1H), 5.32 (s, 2H), 4.32-4.29 (m, 2H), 4.27-4.24 (m, 2H),
3.60-3.40 (m, 2H), 2.71 (s, 3H), 2.05-1.72 (m, 6H), 1.62 (t, 3H)
【実施例7】
【0153】
(E)−N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)アミノ]−7−エトキシ−キナゾリン−6−イル]−3−[(2S)−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド
【0154】
【化33】
【0155】
【化34】
【0156】
ステップ1
N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)アミノ]−7−エトキシ−キナゾリン−6−イル]−2−ジエトキシホスホリル−アセトアミド
N,N'−カルボニルジイミダゾール(292 mg、1.80 mmol)を4
mLのテトラヒドロフランに溶解した。この混合物を油浴中で50℃に加温し、ここへ3 mLのテトラヒドロフラン中のジエチルホスホノ酢酸(353 mg、1.8 mmol)溶液を滴下し、次のステップのために1.5時間撹拌した。N4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−7−エトキシ−キナゾリン−4,6−ジアミン7e(200 mg、0.60
mmol、既知の方法により調製した:国際公開第2005/028443号パンフレット)を10 mLのテトラヒドロフランに溶解した後、上記反応溶液を50℃で滴下した。40℃で3時間撹拌した後、反応混合物を減圧濃縮し、ジクロロメタン(50 mL×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和食塩水(50 mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた残渣を溶出系Aでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)アミノ]−7−エトキシ−キナゾリン−6−イル]−2−ジエトキシホスホリル−アセトアミド7b(100 mg、淡黄色固体)を収率33.3%で得た。
MS m/z (ESI):511.1 [M+1]
【0157】
ステップ2
(E)−N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)アミノ]−7−エトキシ−キナゾリン−6−イル]−3−[(2S)−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド
N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)アミノ]−7−エトキシ−キナゾリン−6−イル]−2−ジエトキシホスホリル−アセトアミド7b(100 mg、0.20 mmol)を10 mLのテトラヒドロフランに溶解した。この混合物をドライアイス浴中で−78℃に冷却した後、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(1 M)のトルエン(400μl、0.40 mmol)溶液を滴下した。この混合物を45分間撹拌し、(2S)−1−メチルピロリジン−2−カルバルデヒド1b(100mg、0.85 mmol)を添加した。さらに1時間撹拌した後、反応混合物を室温まで加温し、12時間撹拌した。この反応混合物に水(1 mL)及びメタノール(1 mL)を添加し、ジクロロメタン(100 mL×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和食塩水(30 mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた残渣を溶出系Aでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物(E)−N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)アミノ]−7−エトキシ−キナゾリン−6−イル]−3−[(2S)−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド7(60 mg、黄色固体)を収率65.2%で得た。
MS m/z
(ESI):470.2 [M+1]
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ 9.78 (s, 1H), 9.53 (s,
1H), 8.91 (s, 1H), 8.52 (s, 1H), 8.13-8.15 (m, 1H), 7.79-7.81 (m, 1H),
7.39-7.43 (m,1H), 7.26 (s,1H), 6.67-6.69 (m,2H), 4.26-4.31 (m,2H), 4.09-4.10
(m,1H), 3.17-3.15 (m,2H), 3.08-3.04 (m,1H), 2.77-2.79 (m,1H), 2.87-2.82 (m,1H),
2.23 (s,3H), 1.74-1.76 (m,1H), 1.47 (m,3H)
【実施例8】
【0158】
(E)−N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)アミノ]−7−(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−6−イル]−3−[(2R)−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド
【0159】
【化35】
【0160】
【化36】
【0161】
ステップ1
N−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−7−(2−メトキシエトキシ)−6−ニトロ−キナゾリン−4−アミン
2−メトキシエタノール(152 mg、2 mmol)を氷水浴中で30mLのジメチルスルホキシドに溶解した後、60%水素化ナトリウム(80 mg、2
mmol)を添加した。この混合物を40℃まで加温し、2時間撹拌した後、N−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−7−フルオロ−6−ニトロ−キナゾリン−4−アミン8a(336 mg、1 mmol)を添加した。この反応混合物を40℃で4時間撹拌した後、50℃まで加温し、12時間撹拌した。この反応混合物に水(20 mL)を添加し、濾過した。濾過ケーキを水(50 mL)で洗浄し、真空乾燥して、標記化合物N−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−7−(2−メトキシエトキシ)−6−ニトロ−キナゾリン−4−アミン8b(392 mg、黄色固体)を収率100%で得た。これは、次のステップで直接使用した。
MS m/z (ESI):393.0 [M+1]
【0162】
ステップ2
N4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−7−(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4,6−ジアミン
N−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−7−(2−メトキシエトキシ)−6−ニトロ−キナゾリン−4−アミン8b(392 mg、1 mmol)及び鉄粉(392 mg、7 mmol)を20 mLの酢酸に溶解した。この反応混合物を4時間加熱還流し、減圧濃縮した。残渣に100 mLの飽和炭酸水素ナトリウムを添加し、ジクロロメタン(100 mL×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和食塩水(50 mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮して、標記化合物N4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−7−(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4,6−ジアミ8c(200 mg、淡黄色固体)を収率55.2%で得た。
MS m/z (ESI):363.1 [M+1]
【0163】
ステップ3
N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)アミノ]−7−(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−6−イル]−2−ジエトキシホスホリル−アセトアミド
N,N'−カルボニルジイミダゾール(292 mg、1.80 mmol)を4 mLのテトラヒドロフランに溶解した。この混合物を油浴中で50℃に加温し、ここへ3 mLのテトラヒドロフラン中のジエチルホスホノ酢酸(353 mg、1.8 mmol)溶液を滴下し、次のステップのために1.5時間撹拌した。N4−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−7−(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4,6−ジアミン8c(200mg、0.55 mmol)を10 mLのテトラヒドロフランに溶解した後、上記反応溶液を50℃で滴下した。40℃で3時間撹拌した後、反応混合物を減圧濃縮し、ジクロロメタン(50 mL×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和食塩水(50 mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた残渣を溶出系Aでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)アミノ]−7−(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−6−イル]−2−ジエトキシホスホリル−アセトアミド8d(150 mg、淡黄色固体)を収率50.5%で得た。
MS m/z (ESI):541.2 [M+1]
【0164】
ステップ4
(E)−N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)アミノ]−7−(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−6−イル]−3−[(2R)−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド
N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)アミノ]−7−(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−6−イル]−2−ジエトキシホスホリル−アセトアミド8d(200 mg、0.37 mmol)を10 mLのテトラヒドロフランに溶解した。この混合物をドライアイス浴中で−78℃に冷却した。ここへ、アルゴン雰囲気下、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(1 M)のトルエン(740μL、0.74 mmol)溶液を滴下した。30分間撹拌した後、この反応溶液に(2R)−1−メチルピロリジン−2−カルバルデヒド5c(84mg、0.74 mmol)を添加した。この反応混合物をさらに1時間撹拌した後、室温まで加温し、12時間撹拌した。この反応混合物を濃縮して、10 mLの水を添加し、ジクロロメタン(25 mL×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和食塩水(30 mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた残渣を溶出系Aでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物(E)−N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)アミノ]−7−(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−6−イル]−3−[(2R)−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド8(100 mg、黄色固体)を収率54.2%で得た。
MS m/z
(ESI):500.2 [M+1]
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6):δ 9.82 (s, 1H), 9.58 (s,
1H), 8.89 (s, 1H), 8.53 (s, 1H), 8.12-8.13 (m, 1H),7.79-7.81 (m, 1H),7.40-7.44
(m, 1H), 7.32 (s, 1H), 6.57-6.75 (m, 2H), 4.36-4.37 (m, 2H), 3.80-3.81 (m, 2H),
3.35-3.32 (m, 4H), 3.15-3.13 (m, 1H), 2.5(s, 3H), 2.40-2.31 (m, 2H), 2.08 (m,
1H), 1.90-1.81(m, 1H), 1.70-1.64 (m, 1H)
【実施例9】
【0165】
(E)−N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)アミノ]−7−エトキシ−キナゾリン−6−イル]−3−[(2R)−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド
【0166】
【化37】
【0167】
【化38】
【0168】
ステップ1
(E)−N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)アミノ]−7−エトキシ−キナゾリン−6−イル]−3−[(2R)−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド
N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)アミノ]−7−エトキシ−キナゾリン−6−イル]−2−ジエトキシホスホリル−アセトアミド7b(300 mg、0.59mmol)を10 mLのテトラヒドロフランに溶解した。この混合物をドライアイス浴中で−78℃に冷却した。ここへ、アルゴン雰囲気下、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(1 M)のトルエン(1.2mL、1.18 mmol)溶液を滴下した。30分間撹拌した後、(2R)−1−メチルピロリジン−2−カルバルデヒド5c(133mg、1.18 mmol)を添加し、この混合物をさらに1時間撹拌し、次に室温まで加温して12時間撹拌した。この反応混合物を濃縮して、10 mLの水を添加し、ジクロロメタン(25 mL×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を飽和食塩水(30 mL×2)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた残渣を溶出系Aでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、標記化合物(E)−N−[4−[(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)アミノ]−7−エトキシ−キナゾリン−6−イル]−3−[(2R)−1−メチルピロリジン−2−イル]プロプ−2−エナミド9(130 mg、黄色固体)を収率47.3%で得た。
MS m/z
(ESI):470.2 [M+1]
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ 9.79 (s, 1H), 9.53 (s,
1H), 8.93 (s, 1H), 8.53 (s, 1H), 8.12-8.15 (m, 1H), 7.79-7.83 (m, 1H),
7.40-7.45 (m, 1H), 7.27 (s, 1H), 6.67-6.73 (m, 1H), 6.56-6.60 (m, 1H),
4.27-4.32 (m, 2H), 4.09-4.10 (m, 1H), 3.17 (m, 2H), 3.04 (m, 1H), 2.77-2.79 (m,
1H), 2.18-2.16 (m, 1H), 2.21 (s, 3H), 1.74-1.76 (m, 1H), 1.47 (t, 3H)
【実施例10】
【0169】
(E)−N−[4−[[(3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−3−(1−メチルピロリジン−2−イル)プロプ−2−エナミド
【0170】
【化39】
【0171】
【化40】
【0172】
ステップ1
ピロリジン−2−カルボン酸メチル
7 mLの塩化チオニルを氷水浴中で50 mLのメタノールに溶解した後、ピロリジン−2−カルボン酸10a(5 g、43.40mmol)を添加した。この混合物を室温まで加温し、24時間撹拌した。この混合物を減圧濃縮し、ピロリジン−2−カルボン酸メチル10b(10 g、白色固体)を粗生成物として得た。この生成物は精製することなく次のステップで直接使用した。
MS m/z (ESI):130.1 [M+1]
【0173】
ステップ2
1−メチルピロリジン−2−カルボン酸メチル
ピロリジン−2−カルボン酸メチル10b粗生成物(5 g)を100 mLのメタノールに溶解した。この溶液を氷水浴中で0〜5℃に冷却後、13 mLの40%ホルムアルデヒドを添加した。この反応混合物を室温まで加温し、2時間撹拌した後、氷水浴中で0〜5℃に冷却し、次にシアノ水素化ホウ素ナトリウム(5.45g、87.20 mmol)を分けて添加した。この反応混合物を室温まで加温し、24時間撹拌した。この混合物を減圧濃縮して、5 mLの水を添加し、ジクロロメタン(5 mL×3)で抽出した。合わせた有機抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮し、1−メチルピロリジン−2−カルボン酸メチル10c(4.7 g、褐色液体)の粗生成物を収率70.1%で得た。
MS m/z (ESI):144.1 [M+1]
【0174】
ステップ3
(1−メチルピロリジン−2−イル)メタノール
水素化ジイソブチルアルミニウム(60 mL、66 mmol)を、50 mLのジクロロメタン中の1−メチルピロリジン−2−カルボン酸メチル10c(4.7 g、33 mmol)溶液に滴下した。この反応混合物を氷水浴中で6時間撹拌した後、10 mLのメタノールを添加した。この反応混合物を減圧濃縮し、標記化合物(1−メチルピロリジン−2−イル)メタノール10d(1.8 g、褐色液体)を収率47.4%で得た。
【0175】
ステップ4
1−メチルピロリジン−2−カルバルデヒド
ジメチルスルホキシド(2.2 mL、31.20 mmol)をドライアイス−アセトン浴中で20 mLのジクロロメタンに溶解した後、塩化オキサリル(2 mL、23.40 mmol)を添加した。これを−18℃で45分間撹拌した後、(1−メチルピロリジン−2−イル)メタノール10d(1.8 g、15.60 mmol)を添加した。さらに45分間撹拌した後、トリエチルアミン(6.5 mL、46.80 mmol)を添加した。この反応混合物を室温まで加温して1時間撹拌した。この反応混合物を飽和食塩水(50 mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧濃縮した。得られた残渣を得られた残渣を溶出系Aでアルカリアルミナカラムクロマトグラフィーにより精製し、1−メチルピロリジン−2−カルバルデヒド10e(1 g、褐色液体)を収率56.8%で得た。
【0176】
ステップ5
(E)−N−[4−[[(3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−3−(1−メチルピロリジン−2−イル)プロプ−2−エナミド
N−[4−[[3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−2−ジエトキシホスホリル−アセトアミド1d(3 g、4.40 mmol)をドライアイス浴中で30 mLのテトラヒドロフランに溶解した後、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(1 M)のトルエン(9.6 mL、8.80 mmol)溶液を滴下した。この混合物を30分間撹拌した後、ここへ、5 mLのテトラヒドロフラン中の1−メチルピロリジン−2−カルバルデヒド10e(1 g、8.80 mmol)溶液を滴下した。この反応混合物をさらに30分間撹拌した後、室温まで加温して24時間撹拌した。この反応混合物を減圧濃縮し、得られた残渣を得られた残渣を溶出系Aでシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、(E)−N−[4−[[(3−クロロ−4−(2−ピリジルメトキシ)フェニル]アミノ]−3−シアノ−7−エトキシ−6−キノリル]−3−(1−メチルピロリジン−2−イル)プロプ−2−エナミド10(500
mg、黄色固体)を収率20.8%で得た。
MS m/z
(ESI):583.2 [M+1]
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6):δ 11.59
(s, 1H), 11.28 (s, 1H), 9.19 (s,1H), 9.05 (s, 1H), 8.71 (d, 1H), 8.09-8.07 (m,
1H), 7.74-7.68 (m, 3H), 7.56-7.55 (m, 1H), 7.45-7.37 (m, 2H), 7.04-7.00 (m,
1H), 6.88-6.84 (m, 1H), 5.43 (s, 2H), 4.38 (dd, 2H), 4.10 (m, 2H), 3.63-3.60
(m, 1H), 3.13-3.08 (m, 1H), 2.73-2.72 (m, 3H), 2.31-2.29 (m, 1H), 2.08-2.02 (m,
2H), 1.53 (t, 3H)
【試験例】
【0177】
生物アッセイ
試験例1:EGFR細胞増殖阻害アッセイ
下記のインビトロアッセイは、EGFRを高発現しているヒト扁平上皮癌A431細胞に対する、本発明の化合物の増殖阻害活性を測定するものである。
【0178】
下記のインビトロアッセイは、EGFRを高発現している癌細胞に対する、被験化合物の増殖阻害活性を測定するものである。活性はIC50値で示した。アッセイの基本手順は以下に示される:EGFRを高発現している癌細胞A431(生化学・細胞生物学研究所)を選び、96−ウェル細胞培養プレートに適切な濃度(例えば、5000細胞/mL培養液)で播種した。その後、細胞を、二酸化炭素(CO)インキュベーター中で85%培養密度になるまで培養した。次に細胞培養液を、一連の濃度(通常6〜7濃度)の被験化合物を含む新鮮なものと交換した。その後、細胞をインキュベーターに戻し、引き続き培養した。72時間後、被験化合物の細胞増殖阻害活性を、スルホローダミンB(SRB)法により測定した。試験細胞についてのIC50値は、被験化合物の一連の濃度における阻害率データにより算出した。
【0179】
(本発明の化合物の活性)
本発明の化合物の生物活性は、上記のアッセイにより試験した。IC50値を測定し、下記の表に示した。
【0180】
【表2】
【0181】
結論:本発明の化合物は、A431細胞に対して明らかな増殖阻害活性を有した。
【0182】
試験例2:EGFRキナーゼ活性測定
インビトロEGFRキナーゼ活性は、下記のアッセイにより測定した。
【0183】
下記のアッセイは、EGFRキナーゼ活性に対する本発明の化合物の阻害活性を測定することに使用することができる。各化合物の半最大阻害濃度IC50(酵素活性を50%阻害する被験化合物の濃度)は、いくつかの異なる濃度の被験化合物を、特定の酵素及び基質とインキュベートすることにより測定した。このアッセイで使用されるEGFRキナーゼはヒト由来組換えタンパク質(Cell Signaling Technology社、#7908)であり、60 mM HEPES(pH 7.5)、5 mM MgCl2、5 mM MnCl2、3 μM Na3VO4、1.25 M DTT(1000×)及び20μM
ATPを含む緩衝液中で、ペプチド基質及び異なる濃度の被験化合物とともに、25℃で45分間反応させた。EGFRキナーゼ活性は、時間分解蛍光法により測定した。
【0184】
(本発明の化合物の活性)
本発明の化合物の生物活性は、上記のアッセイにより試験した。IC50値を測定し、下記の表に示した:
【0185】
【表3】
【0186】
結論:本発明の化合物は、EGFRキナーゼに対して明らかな増殖阻害活性を示した。
【0187】
薬物動態アッセイ
試験例1:本発明の実施例1及び実施例5の化合物の薬物動態アッセイ
1.要約
本発明の実施例1及び実施例5の化合物をラットに胃内投与し、異なる時点における血漿中薬物濃度を、LC/MS/MS法により測定した。本発明の化合物の薬物動態挙動はラットで研究し、評価した。
【0188】
2.手順
2−1 サンプル
実施例1及び実施例5の化合物
2−2 実験動物
雌雄半々の8匹の健常成熟SDラットは、SINO-BRITSH SIPPR/BK LAB.ANIMAL社から購入した。ライセンス番号:SCXK(Shanghai)2003−0002
2−3 被験化合物の調製
化合物を精秤し、0.5%カルボキシメチルセルロースナトリウムとともに均一にすりつぶし、使用する前に1%ツイーン80に懸濁して、2.5 mg/mLの懸濁液とした。
2−4 投与
雌雄半々の8匹の健常成熟SDラットを一晩絶食させた後、25.0 mg/kgの用量また10 mL/kgの量で胃内投与した。
2−5 サンプル採取
雌雄半々の8匹の健常成熟SDラットを2群に分けた。一晩絶食させた後、ラットに25.0 mg/kgの用量で胃内投与した。血液サンプル(0.2 mL)は、投与前並びに投与後0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、7.0、9.0、12.0、24.0及び30.0時間に眼窩静脈叢から採取し、ヘパリン処理チューブに保存し、3,500 rpmで10分間遠心した。血漿サンプルは分析するまで−20℃で保存した。ラットには投与後2時間で給餌した。
【0189】
3.操作
投与後の種々の時点で得られた50 μLのラット血漿を50 μLの標準系列溶液と混合し、50.0、100、200、500、1000、2000、5000 ng/mLの血漿中濃度を作製した。150 μLのメタノールを添加した後、この混合物を、ボルテックスミキサーを用いて3分間混合し、13,500 rpmで10分間遠心した。上清の10 μLをLC−MS/MSで分析した。主要薬物動態パラメータは、DAS 2.0ソフトウェアにより算出した。
【0190】
4.薬物動態パラメータの結果
本発明の化合物の薬物動態パラメータは下記に示した:
【0191】
【表4】
【0192】
結論:本発明の化合物は薬物動態において優れた吸収性を示し、薬物動態特性は明らかに改善された。
【0193】
ヌードマウスにおけるCalu-3ヒト肺癌異種移植片に対する治療効果
1.要約
ヌードマウスにおけるCalu-3ヒト肺癌異種移植片に対する実施例1の化合物の治療効果を評価した。実施例1の化合物はCalu-3ヒト肺癌の増殖を顕著に抑制し、被験マウスも良好な耐性を示した。
【0194】
2.目的
ヌードマウスにおけるCalu-3ヒト肺癌異種移植片に対する実施例1及び実施例5の化合物の治療効果を評価し、比較した。
【0195】
3.被験薬物
薬物名及び薬物ロット:実施例1及び実施例5の化合物
調製方法:実施例1及び実施例5の化合物は、0.1%ツイーン80を含む蒸留水を用いて、対応する濃度に調製した。
【0196】
4.実験動物
6〜7週齢の雌性BALB/cAヌードマウスはSlaccas Experimental Animal社より購入した。
証明書番号:SCXK 2007−0005。飼育環境:SPFレベル。
【0197】
5.実験手順
ヌードマウスの皮下にCalu-3ヒト肺癌細胞を接種した。腫瘍が150〜250 mm3に生育した後、マウスを無作為に群分けした(d0)。腫瘍体積及び重量は週に2〜3回測定し、記録した。腫瘍体積の計算式は、V = 1/2×a×b2であり、a:腫瘍長、b:腫瘍幅である。
【0198】
6.結果
実施例1の化合物は、Calu-3ヒト肺癌の増殖を顕著に抑制した。低用量(100 mg/kg)の実施例1の化合物は腫瘍体積を2/6で縮小させた。高用量(200 mg/kg)の実施例1の化合物は腫瘍体積を1/6で縮小させ、腫瘍の他の1/6では完全に消退させた。
低用量(100 mg/kg)の実施例5の化合物は腫瘍体積を3/6で縮小させ、高用量(200 mg/kg)の実施例5の化合物は腫瘍体積を4/6で縮小させた。さらにマウスは、本投与手順に従えば、実施例1及び実施例5の化合物に対して良好な耐性を示した。