(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5684911
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】クラウドロボットシステムおよびその実現方法
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20150226BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-525127(P2013-525127)
(86)(22)【出願日】2011年8月11日
(65)【公表番号】特表2013-536095(P2013-536095A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】CN2011078246
(87)【国際公開番号】WO2012025014
(87)【国際公開日】20120301
【審査請求日】2013年4月3日
(31)【優先権主張番号】201010270839.9
(32)【優先日】2010年8月24日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513045437
【氏名又は名称】中国科学院深▲しん▼先進技術研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】朱 定 局
【審査官】
佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−243475(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/102970(WO,A1)
【文献】
特開2008−146149(JP,A)
【文献】
特開2007−237300(JP,A)
【文献】
特開2004−306242(JP,A)
【文献】
特開2004−309523(JP,A)
【文献】
再公表特許第2005/086051(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラウド・コンピューティング・プラットフォームおよび少なくとも一台のロボットを含むクラウドロボットシステムであって、
前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは、
前記システムにおける少なくとも一台の前記ロボットにより送信される、当該ロボットに関するデータ、ステータスおよびリクエストを含む作業情報を受信し、
前記データおよび前記ステータスの作業情報を処理して前記ロボットに処理結果を返信し、前記リクエストに応じて対応するロボットに制御命令を送信し、
前記ロボットは、
自身の前記作業情報を前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームに送信し、
前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームにより処理された前記作業情報の処理結果を受信し、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームにより送信される前記制御命令に応じて自身の動作を行い、
前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは、一台の前記ロボットと対応する少なくとも一つのクラウドブレインモジュールを含み、
前記クラウドブレインモジュールは、対応する一台のみの前記ロボットの知識ベース、推論エンジン、ニューラル・ネット、データおよび経験を記憶し、対応する前記ロボットより送信されてきたデータ、ステータスおよびリクエストを処理し、処理結果をダイナミックに当該ロボットに返信し、
前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは、一つの前記クラウドブレインモジュールと対応する少なくとも一つのソーシャルモジュールをさらに含み、
前記ソーシャルモジュールは、異なる前記ロボットに対応する前記クラウドブレインモジュール間の通信を実現させ、ロボット群の情報を解析し、ロボット間の協同、連動を実現し、
前記ロボットは、前記ソーシャルモジュールを通じて、前記ロボット群に加入または前記ロボット群から脱退し、
前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは、ロボットサービスプロバイダーのために前記クラウドブレインモジュールと前記ソーシャルモジュールとを備える前記クラウドロボットシステムを生成するシステム生成モジュールをさらに含み、
前記システム生成モジュールは、新規加入のロボットのために、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームにおいて、当該新規加入のロボットと対応するクラウドブレインモジュールをクローンし、新規加入のロボット群のために、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームにおいて、当該新規加入のロボット群と対応するソーシャルモジュールをクローンする、
ことを特徴とするクラウドロボットシステム。
【請求項2】
前記ロボットは、第一通信モジュールを含み、
前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは、第二通信モジュールを含み、
前記ロボットと前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームとは、前記第一通信モジュールおよび前記第二通信モジュールを通じて有線または無線の通信方式により相互に通信し、
同一のクラウド・コンピューティング・プラットフォーム下における全てのロボットは、当該クラウド・コンピューティング・プラットフォームにより相互に通信する、
ことを特徴とする請求項1に記載のクラウドロボットシステム。
【請求項3】
前記ロボットは、
前記ロボット自身におけるリクエストを処理するローカルブレインモジュールと、
前記データを収集するセンサーと、
前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームから返信された処理結果に応じてロボットの行動およびステータスを制御し、前記センサーにより収集されたデータおよびロボット自身のステータスおよびサービスのリクエストをダイナミックに前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームに送信するロボットモニターモジュールと、をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のクラウドロボットシステム。
【請求項4】
前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは、スーパーコンピュータ、コンピュータクラスター、ネットワークを通じて相互に接続される分散型コンピュータのいずれかである、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のクラウドロボットシステム。
【請求項5】
前記クラウドブレインモジュールは、並列分散処理の方式により前記ロボットより送信されてきたデータ、ステータスおよびリクエストを処理する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のクラウドロボットシステム。
【請求項6】
前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームの計算能力および記憶容量は拡張でき、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは前記ロボットの必要に応じて、計算および記憶するためのリソースを割り付ける、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のクラウドロボットシステム。
【請求項7】
クラウドロボットの実現方法であって、
ロボットが通信モジュールを通じてクラウド・コンピューティング・プラットフォームにアクセスするステップと、
前記ロボットが、センサーにより受け取ったデータ、自身のステータスおよびリクエストの作業情報を前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームへ送信するステップと、
前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームが、前記ロボットより送信されてきたデータ、ステータスおよびリスエストを処理し、処理結果をダイナミックに前記ロボットへ返信し、さらにロボット群の情報を解析するステップと、
前記ロボットは、返信された処理結果に応じて、前記ロボットの行動およびステータスを制御し、具体的には、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームによる前記作業情報に対する処理結果を受け取り、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームにより送信された制御命令に応じて自身を動作し、前記ロボットは前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームとの相互通信により、ロボット間の協同、連動を実現するステップと、を含み、
前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは、一台の前記ロボットと対応する少なくとも一つのクラウドブレインモジュールを含み、前記クラウドブレインモジュールは、対応する一台のみのロボットの知識ベース、推論エンジン、ニューラル・ネット、データおよび経験を記憶し、対応する前記ロボットより送信されてきたデータ、ステータスおよびリクエストを処理し、処理結果をダイナミックに当該ロボットに返信し、
前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは、ソーシャルモジュールにより、異なる前記ロボットに対応する前記クラウドブレインモジュール間の迅速な通信を実現させ、ロボット群の情報を解析し、ロボット間の協同、連動を実現し、前記ロボットは、前記ソーシャルモジュールを通じて、前記ロボット群に加入または前記ロボット群から脱退し、
前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは、ロボットサービスプロバイダーのために前記クラウドブレインモジュールと前記ソーシャルモジュールとを備える前記クラウドロボットのシステムを生成するシステム生成モジュールにより、新規加入のロボットのために、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームにおいて、当該新規加入のロボットと対応するクラウドブレインモジュールをクローンし、新規加入のロボット群のために、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームにおいて、当該新規加入のロボット群と対応するソーシャルモジュールをクローンする、
ことを特徴とするクラウドロボットの実現方法。
【請求項8】
前記ロボットは、第一通信モジュールを含み、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは、第二通信モジュールを含み、
前記ロボットが通信モジュールを通じてクラウド・コンピューティング・プラットフォームにアクセスするステップは、
前記ロボットと前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームとは、前記第一通信モジュールおよび前記第二通信モジュールを通じて有線または無線の通信方式により相互に通信し、同一のクラウド・コンピューティング・プラットフォームにおける全てのロボットは、当該クラウド・コンピューティング・プラットフォームにより相互に通信する、
ことを特徴とする請求項7に記載のクラウドロボットの実現方法。
【請求項9】
前記ロボットは、ローカルブレインモジュールによりロボット自身におけるリクエストを処理する、
ことを特徴とする請求項7または8に記載のクラウドロボットの実現方法。
【請求項10】
前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは、スーパーコンピュータ、コンピュータクラスター、ネットワークを通じて相互に接続される分散型コンピュータのいずれかである、
ことを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載のクラウドロボットの実現方法。
【請求項11】
前記クラウドブレインモジュールは、並列分散処理の方式により前記ロボットより送信されてきたデータ、ステータスおよびリクエストを処理する、
ことを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載のクラウドロボットの実現方法。
【請求項12】
前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームの計算能力および記憶容量は拡張でき、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは前記ロボットの必要に応じて、計算および記憶するためのリソースを割り付ける、
ことを特徴とする請求項7〜11のいずれか一項に記載のクラウドロボットの実現方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報技術分野に関し、特にクラウドロボットシステムおよびその実現方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存のロボットは、ロボット自身に実装したチップをローカルの頭脳としているが、次のような問題がある。
【0003】
1)既存のロボットの頭脳がロボット自身に実装したチップであるため、空間的制限およびチップの処理能力の制限を受け、ロボットの計算能力および記憶容量は限られている。
【0004】
2)ロボットが計算をしようがするまいが、または、計算が複雑であるか単純であるかに関係なく、ロボットが計算および記憶するために消費するリソースは変わらない。
【0005】
3)ロボット間の相互通信は、異なるロボット間におけるピア・ツー・ピア(P2P)方式の通信である。M台のロボット間において複雑な通信をする場合、M*(M−1)/2個の通信回線数が必要であるため、管理が難しく混乱しやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、既存のロボットには、計算能力および記憶容量が低く、複雑な通信時において管理が難しいなどという問題がある。このため、既存の技術をさらに改良、発展させた新しい技術に対する要請がある。
【0007】
本発明は、上記要請に応えるためになされたものであり、クラウド・コンピューティング・プラットフォームを利用して、計算、記憶、協同するロボット(以下、「クラウドロボット」と称する)システムおよびその実現方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明に係るクラウドロボットシステムは、クラウド・コンピューティング・プラットフォームおよび少なくとも一台のロボットを含む。前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは、前記システムにおける少なくとも一台の前記ロボットにより送信される、当該ロボットに関するデータ、ステータスおよびリクエストを含む作業情報を受信する。前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは、前記データおよび前記ステータスの作業情報を処理して前記ロボットに処理結果を返信し、前記リクエストに応じて対応するロボットに制御命令を送信する。前記ロボットは、自身の前記作業情報を前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームに送信し、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームにより処理された前記作業情報の処理結果を受信する。前記ロボットは、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームにより送信される前記制御命令に応じて自身の動作を行う。
【0009】
前記クラウドロボットシステムにおいて、前記ロボットは、第一通信モジュールを含み、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは、第二通信モジュールを含む。前記ロボットと前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームとは、前記第一通信モジュールおよび前記第二通信モジュールを通じて有線または無線の通信方式により相互に通信する。同一のクラウド・コンピューティング・プラットフォームの下における全てのロボットは、当該クラウド・コンピューティング・プラットフォームにより相互に通信する。
【0010】
前記クラウドロボットシステムにおいて、前記ロボットは、ローカルブレインモジュール、センサーおよびロボットモニターモジュールを含む。
【0011】
前記ローカルブレインモジュールは、前記ロボット自身における一部低負荷、低レベルのリクエストを処理する。前記センサーは、前記データを収集する。
【0012】
前記ロボットモニターモジュールは、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームから返信された処理結果に応じてロボットの行動およびステータスを制御する。前記ロボットモニターモジュールは、前記センサーにより収集されたデータおよびロボット自身のステータスおよびサービスのリクエストをダイナミックに前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームに送信する。
【0013】
前記クラウドロボットシステムにおいて、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは、一台の前記ロボットと対応する少なくとも一つのクラウドブレインモジュールを含む。
【0014】
前記クラウドブレインモジュールは、
対応する一台のみの前記ロボットの知識ベース、推論エンジン、ニューラル・ネット、データおよび経験を記憶する。前記クラウドブレインモジュールは、
対応する前記ロボットより送信されてきたデータ、ステータスおよびリクエストを処理し、処理結果をダイナミックに
当該ロボットに返信する。
【0015】
前記クラウドロボットシステムにおいて、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは、一つの前記クラウドブレインモジュールと対応する少なくとも一つのソーシャルモジュールをさらに含む。
【0016】
前記ソーシャルモジュールは、異なる前記ロボットに対応する前記クラウドブレインモジュール間の通信を実現させ、ロボット群の情報を解析し、ロボット間の協同、連動を実現する。前記ロボットは、前記ソーシャルモジュールを通じて、前記ロボット群に加入または前記ロボット群から脱退する。
【0017】
前記クラウドロボットシステムにおいて、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは、システム生成モジュールをさらに含む。
【0018】
前記システム生成モジュールは、新規加入のロボットのために、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームにおいて、当該新規加入のロボットと対応するクラウドブレインモジュールをクローンする。前記システム生成モジュールは、新規加入のロボット群のために、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームにおいて、当該新規加入のロボット群と対応するソーシャルモジュールをクローンする。
【0019】
前記クラウドロボットシステムにおいて、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは、スーパーコンピュータ、コンピュータクラスター、ネットワークを通じて相互に接続される分散型コンピュータのいずれかである。
【0020】
前記クラウドロボットシステムにおいて、前記クラウドブレインモジュールは、並列分散処理の方式により前記ロボットより送信されてきたデータ、ステータスおよびリクエストを処理する。
【0021】
前記クラウドロボットシステムにおいて、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームの計算能力および記憶容量は無限に拡張できる。前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームは前記ロボットの必要に応じて、計算および記憶するためのリソースを割り付ける。
【0022】
上記の目的を達成するための本発明に係るクラウドロボットの実現方法は、次のようなステップを含む。
【0023】
ロボットが通信モジュールを通じてクラウド・コンピューティング・プラットフォームにアクセスするステップを含む。
【0024】
前記ロボットが、センサーにより受け取ったデータ、自身のステータスおよびリクエストの作業情報をダイナミックに更新して、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームへ送信するステップを含む。
【0025】
前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームが、前記ロボットより送信されてきたデータ、ステータスおよびリスエストを処理し、処理結果を前記ロボットへ返信し、さらにロボット群の情報を解析するステップを含む。
【0026】
前記ロボットは、返信された処理結果に応じて、前記ロボットの行動およびステータスを制御し、前記クラウド・コンピューティング・プラットフォームとの相互通信により、ロボット間の協同、連動を実現するステップを含む。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るクラウドロボットシステムおよびその実現方法によれば、既存のロボットの頭脳をクラウド・コンピューティング・プラットフォームに設けるため、ロボットの計算能力および記憶容量を無限に拡張でき、計算能力と記憶容量の向上が図れる。
【0028】
また、必要に応じてそれぞれのロボットの頭脳の役割を割り付けるため、ロボットの頭脳のコストを削減できる。
【0029】
さらに、クラウド・コンピューティング・プラットフォームにより通信ルートを簡略化し、集約して通信できるため、通信量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】クラウドロボットシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】クラウドロボットシステムの実現方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付した図面を参照して、本発明の目的、技術的手段、効果がより分かりやすくなるように、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明に係るクラウドロボットシステムの構成を示すブロック図である。クラウドロボットシステムは、クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8を利用して、計算、記憶、協同するロボットである。
【0033】
図に示すように、クラウドロボットシステムは、クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8および少なくとも一台のロボット1を含む。クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8は、システムにおける少なくとも一台のロボット1により送信される、当該ロボット1に関するデータ、ステータスおよびリクエストを含む作業情報を受信する。クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8は、データおよびステータスの作業情報を処理してロボット1に処理結果を返信し、作業情報のリクエストに応じて対応するロボットに制御命令を送信する。ロボット1は、自身の作業情報をクラウド・コンピューティング・プラットフォーム8に送信する。ロボット1は、クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8により処理された作業情報の処理結果を受信する。ロボット1は、また、クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8により送信される制御命令に応じて自身の動作を行う。
【0034】
クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8は、ロボット1を制御する中枢である。ロボット1とクラウド・コンピューティング・プラットフォーム8とは、互いに分離されている。ロボット1は、第一通信モジュール5を含み、クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8は第二通信モジュール7を含む。ロボット1とクラウド・コンピューティング・プラットフォーム8とは、第一通信モジュール5および第二通信モジュール7を通じて有線または無線の通信6方式により相互に通信する。ロボット1が処理しようとする計算タスクおよび記憶タスクは、有線または無線の通信6方式によりクラウド・コンピューティング・プラットフォーム8に転送される。そして、クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8により処理された処理結果は、ロボット1に返信される。クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8は、同時に複数のロボット1にサービスを提供することができ、まるで一つの頭脳集団が多くの人にサービスを提供するようである。同一のクラウド・コンピューティング・プラットフォーム8における全てのロボット1は、当該クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8により相互に通信する。
【0035】
ロボット1は、ローカルブレインモジュール2、ロボットモニターモジュール3、第一通信モジュール5およびセンサー4を含む。ローカルブレインモジュール2は、ロボット1自身における一部低負荷、低レベルのリクエストを処理する。ロボットモニターモジュール3は、クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8から返信された処理結果に応じてロボット1の行動およびステータスを制御する。ロボットモニターモジュール3は、また、センサー4により収集されたデータおよびロボット1自身のステータスおよびサービスのリクエストをダイナミックにクラウド・コンピューティング・プラットフォーム8に送信する。第一通信モジュール5は、クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8の第二通信モジュール7との有線または無線の通信6に使用される。
【0036】
クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8は、少なくとも一つのクラウドブレインモジュール9を含み、一つのクラウドブレインモジュール9は一台のロボット1と対応する。クラウドブレインモジュール9は、ロボット1の知識ベース、推論エンジン、ニューラル・ネット、データおよび経験を記憶する。クラウドブレインモジュール9は、ロボット1より送信されてきたデータ、ステータスおよびリクエストを処理し、処理結果をダイナミックにロボット1に返信する。クラウドブレインモジュール9は、並列分散処理の方式によりロボット1より送信されてきたデータ、ステータスおよびリクエストを処理する。データは、たとえば、ビジョン・センサーのデータ、温度センサーのデータ、聴覚センサーのデータ、味覚センサーのデータ、故障データ、障碍データなどを含む。
【0037】
クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8は、少なくとも一つのソーシャルモジュール10をさらに含み、一つのソーシャルモジュール10は、一つのクラウドブレインモジュール9と対応する。ソーシャルモジュール10は、異なるロボット1に対応するクラウドブレインモジュール9間の迅速な通信を実現させ、ロボット群の情報を解析し、ロボット1間の協同、連動を実現する。ロボット1は、ソーシャルモジュールを通じて、ロボット群に加入またはロボット群から脱退できる。
【0038】
クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8は、システム生成モジュール11をさらに含む。システム生成モジュール11は、ロボットサービスプロバイダーのために上記各モジュールを備えるクラウドロボットシステムを生成する。システム生成モジュール11は、たとえば、新規加入のロボット1のために、クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8において、当該新規加入のロボット1と対応するクラウドブレインモジュール9をクローン(複製)する。また、新規加入のロボット群のために、クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8において、当該新規加入のロボット群と対応するソーシャルモジュール10をクローンする。
【0039】
クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8の計算能力および記憶容量は無限に拡張できる。クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8は、ロボット1の必要に応じて、計算および記憶するためのリソースを割り付ける。
【0040】
クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8を頭脳として使用するロボット1を、クラウドロボットと称する。クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8は、スーパーコンピュータであってよく、または、コンピュータクラスター、ネットワークを通じて相互に接続される分散型コンピュータ、任意の形式の計算および記憶するためのリソースの集合であってよい。クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8とロボット1との間は、有線または無線6により通信する。
【0041】
クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8により、ロボット1自身の限られた計算能力および記憶容量は、クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8の無限の計算能力および記憶容量に変わる。
【0042】
ロボット1が処理しようとする計算タスクおよび記憶タスクをクラウド・コンピューティング・プラットフォーム8に転送して処理し、処理結果はロボット1に返信される。ロボット1間の相互通信は、それぞれのロボット1とクラウド・コンピューティング・プラットフォーム8との相互通信により達成される。
【0043】
図2は、クラウドロボットの実現方法を示すフローチャートである。
【0044】
図に示すように、クラウドロボットの実現方法は、次のステップを含む。
【0045】
ロボット1は通信モジュール5を通じてクラウド・コンピューティング・プラットフォーム8にアクセスする(S100)。
【0046】
ロボット1は、センサー4により受け取ったデータ、自身のステータスおよびリクエストをダイナミックに更新して、クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8へ送信する(S200)。
【0047】
クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8は、ロボット1より送信されてきたデータ、ステータスおよびリスエストを処理し、処理結果をダイナミックにロボット1へ返信する。クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8は、さらにロボット群の情報を解析する(S300)。
【0048】
ロボット1は、返信された処理結果に応じて、ロボット1の行動およびステータスを制御する。ロボット1は、また、クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8との相互通信により、ロボット1間の協同、連動を実現する(S400)。
【0049】
ロボット1は、解析されたロボット群の情報に応じて、クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8において相互通信し、ロボット1間の協同、連動を実現する。
【0050】
クラウドロボットの特別優れたスーパー頭脳は、ロボット1自身に存在せず、クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8のクラウドブレインモジュール9に存在する。スーパー頭脳には、ロボット1の知識ベース、推論エンジン、ニューラル・ネット、データおよび経験が記憶されている。ロボットモニターモジュール3は、センサー4を通じて受け取ったデータをダイナミックに更新して、クラウドブレインモジュール9に転送する。クラウドブレインモジュール9は、演算した結果および制御をロボットモニターモジュール3へ返信して、ロボット1の行動およびステータスに影響を与える。クラウドブレインは伝統のロボットより、処理能力が遥かに優れており、処理速度も遥かに速い。ソーシャルモジュール10により、異なるロボット1の頭脳が全てクラウドの中に存在するため、相互通信はより速くて広く、千軍萬馬を指揮するロボットのように、ロボット社会を形成する。上記システムのサービスは、システム生成モジュール11により、サービスを提供するプロバイダーのために生成できる。
【0051】
クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8の計算および記憶するための能力が必要に応じて無限に拡張できるため、クラウドロボットの計算および記憶能力は、通常のロボットより優れている。なお、計算および記憶するために消費されるリソースは完全にロボットの客観的な必要に応じるため、クラウドロボットは他のロボットよりコストを低減できる。クラウドロボットはクラウド・コンピューティング・プラットフォーム8と通信するのみで、通信トポロジーがシンプルであるため、クラウドロボット間の通信は効率が高く、コストが低い。さらに、クラウド・コンピューティング・プラットフォーム8は集約して通信できるため、通信量を低減できる。
【0052】
本発明に係る方法は、ロボット以外のその他の装置にも応用できる。
【0053】
本発明に係る方法におけるクラウド・コンピューティング・プラットフォーム8は、その他のネットワーク・コンピューティング・プラットフォーム、または、リモートサーバーであってもよい。
【0054】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態にのみ限定されない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 ロボット、
2 ローカルブレインモジュール、
3 ロボットモニターモジュール、
4 センサー、
5 第一通信モジュール、
6 有線または無線通信、
7 第二通信モジュール、
8 クラウド・コンピューティング・プラットフォーム、
9 クラウドブレインモジュール、
10 ソーシャルモジュール、
11 システム生成モジュール。