(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5684987
(24)【登録日】2015年1月23日
(45)【発行日】2015年3月18日
(54)【発明の名称】スイッチングレギュレータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20150226BHJP
【FI】
H02M3/155 B
H02M3/155 P
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-13612(P2010-13612)
(22)【出願日】2010年1月25日
(65)【公開番号】特開2011-152023(P2011-152023A)
(43)【公開日】2011年8月4日
【審査請求日】2012年11月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】出口 充康
【審査官】
松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−166428(JP,A)
【文献】
特開平08−186980(JP,A)
【文献】
特開2009−088587(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/059705(WO,A1)
【文献】
特開2009−131062(JP,A)
【文献】
特開2009−130972(JP,A)
【文献】
特開2007−259515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチングレギュレータの出力電圧が所定の電圧よりも低い時に、スタートアップ用スイッチング信号を出力する第1の発振回路と、
前記スイッチングレギュレータの起動時において、緩やかに上昇する基準電圧を出力する基準電圧回路と、
前記基準電圧と前記スイッチングレギュレータの出力電圧に基づく帰還電圧とを比較する演算増幅器と、
スイッチング信号を出力する第2の発振回路と、
前記演算増幅器の出力信号と前記スイッチング信号を比較するPWMコンパレータと、
前記スイッチングレギュレータの出力電圧によって、前記スタートアップ用スイッチング信号と前記PWMコンパレータの出力信号とを切替えて出力し、前記スイッチングレギュレータの出力電圧を制御する切替え回路と、
を備えたソフトスタート機能を有するスイッチングレギュレータであって、
前記出力電圧が前記所定の電圧を超える時に、前記基準電圧値が前記帰還電圧値と等しくなるように制御する制御回路を備えたことを特徴とするスイッチングレギュレータ。
【請求項2】
前記制御回路は、前記演算増幅器の入力端子間に接続されるゲイン1倍のアンプで構成される、ことを特徴とする請求項1記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項3】
前記制御回路は、ソースフォロアー回路で構成される、ことを特徴とした請求項1記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項4】
前記ソースフォロアー回路は、デプレッション型トランジスタを用いることを特徴とした請求項3記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項5】
前記制御回路は、前記演算増幅器を含んだ増幅回路で構成される、ことを特徴とした請求項1記載のスイッチングレギュレータ。
【請求項6】
前記制御回路は、前記スイッチングレギュレータの出力電圧を電源とする、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか記載のスイッチングレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチングレギュレータに関し、より詳しくはスイッチングレギュレータのソフトスタート機能に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、携帯音楽プレーヤー、デジタルカメラ、PDAなど電池で駆動される機器は近年ますますの普及をみている。これらの機器の中には、コスト面や外出時の電源確保の容易性などから、乾電池などを電源とするものも多い。さらに中でもランニングコストの低減や、環境意識の高まりなどから乾電池1本での動作を要求する機器もある。乾電池の終止電圧は一般に0.9V程度とされるため、これらの機器は0.9V〜1.5V程度の電圧を3Vや5Vなどの電圧に、スイッチングレギュレータを用いて昇圧し、機器の電源として供給する事となる。
【0003】
しかしながら、0.9V〜1.5Vの低電圧でスイッチングレギュレータを安定的に動作させる事は非常に困難である。そこで、スイッチングレギュレータを方形波発振器のパルス(数10KHz〜数百KHz)で昇圧動作させ、出力にある程度高い電圧(1.5V〜2.0V)を出力した後に、この電圧をスイッチングレギュレータの電源とする技術が用いられている。
【0004】
図4は、従来のスイッチングレギュレータを示す回路図である。
従来のスイッチングレギュレータは、スイッチングレギュレータ制御回路1と周辺回路で構成されている。直流電圧源34は、スイッチングレギュレータ制御回路1の電源であり、乾電池1本を想定し電圧範囲を0.9V〜1.5Vとする。方形波発振器18は方形波パルスclkを出力する発振回路である。出力端子VOUTの電圧は、スイッチングレギュレータ制御回路1の電源にもなっている。電圧検出回路17は、出力端子VOUTの電圧を監視する。出力端子VOUTの電圧がスレッショルド電圧VTHよりも低ければ、電圧検出回路17の検出信号VpgはLとなる。方形波発振器18は、電圧検出回路17の検出信号VpgがLのとき動作状態となる。マルチプレクサ回路19は、電圧検出回路17の検出信号VpgがLのとき方形波パルスclkを出力し、電圧検出回路17の検出信号VpgがHのときPWMコンパレータ16の信号Vpwmを出力する。バッファ回路20は、パワートランジスタ30を駆動する。
【0005】
スイッチングレギュレータ制御回路1が昇圧動作を開始する前、出力端子VOUTの電圧は直流電圧源34の電圧VINからダイオード32の順方向電圧Vfを引いた電圧となる。スレッショルド電圧VTHは、1.5Vに設定されたものとする。すなわち、電圧VINが1.5V以下の時、出力端子VOUTの出力電圧は1.5V以下になるから、電圧検出回路17の検出信号VpgはLとなる。よって、マルチプレクサ回路19は方形波発振器18の方形波パルスclkを出力する。パワートランジスタ30は、方形波パルスclkで駆動され、スイッチングレギュレータは昇圧動作を開始する。この期間を、スタートアップ期間T1と称する。
【0006】
スタートアップ期間T1において、検出信号VpgはLであり、ソフトスタート回路12の出力VREF_SSを0Vに固定する為、スイッチングレギュレータ制御回路1は負帰還制御を行なわず、方形波パルスclkによる昇圧動作を行なう。
【0007】
方形波パルスclkによる昇圧動作によって、出力端子VOUTの出力電圧がスレッショルド電圧VTHを超えると、電圧検出回路17の検出信号VpgはHとなり、方形波発振器18は動作を停止する。マルチプレクサ回路19は、PWMコンパレータ16の信号Vpwmを出力する。
【0008】
電圧検出回路17の検出信号VpgがHになると、ソフトスタート回路12が動作を開始し、ソフトスタート期間T2となる。
【0009】
図5は、従来のソフトスタート回路12の一例を示す回路図である。
ソフトスタート回路12は、以下のように動作をしてソフトスタート用の基準電圧VREF_SSを出力する。定電流源113がコンデンサ107を充電し、コンデンサ107の電圧は徐々に上昇する。コンデンサ107の電圧は、N型MOSトランジスタ105のゲートを制御する。よって、基準電圧源13の出力する基準電圧VREFは、N型MOSトランジスタ105から徐々に上昇するソフトスタート用の基準電圧VREF_SSとして出力される。
【0010】
上述のような構成のスイッチングレギュレータの課題を、図を参照して説明する。
図6は、
図4のスイッチングレギュレータの動作説明のための図である。
【0011】
スタートアップ期間T1からソフトスタート期間T2に切り替わると、方形波発振器18は動作を停止し、ソフトスタート回路12は動作を開始する。出力端子VOUTの電圧は、スタートアップ期間T1に昇圧されているので、帰還電圧FBも相当の電圧である。しかし、基準電圧VREF_SSは、図からわかるように、0Vから徐々に上昇している。ここで、演算増幅器14は、帰還電圧FBと基準電圧VREF_SSの大小関係を等しく保つように、PWMコンパレータ16に電圧Verroutを出力する。帰還電圧FBが基準電圧VREF_SSに対して大きいので、演算増幅器14の出力する電圧Verroutは、ランプ波発振回路15のランプパルスVrampの電圧波形よりも大きい。従って、PWMコンパレータ16はスイッチングパルスを出力しないので、スイッチングレギュレータは昇圧動作を行わない。よって、出力端子VOUTの出力電圧は、負荷などによる放電により次第に低下する(期間TA)。電圧検出回路17は、検出電圧にヒステリシスを持っており、ある程度の電圧低下では検出状態を解除しないように設計されている。ここで、負荷が大きいと、出力端子VOUTの電圧低下が、このヒステリシスを超えてしまい、電圧検出回路17が検出状態を解除してしまうことがある。この場合、再びスタートアップ期間T1に動作モードが戻り、方形波パルスclkによる昇圧動作を開始する。そして、負荷に変化が無ければ、スタートアップ期間T1と期間TAを繰り返してしまう事となる。
【0012】
上記課題を解決するために、
図7に示す回路のスイッチングレギュレータが開示されている(特許文献1参照)。方形波発振器18は、コンパレータ21によって制御される。コンパレータ21は、反転端子に入力される帰還電圧FBが、非反転端子に入力されるソフトスタート用のスロープ電圧V_SSよりも低いときにHレベルを出力し、方形波発振器18を動作させる。コンデンサCssは、起動開始と同時に定電流源22によって充電が開始される。従って、スロープ電圧V_SSは、起動と同時に電圧が上昇する。演算増幅器14は反転入力端子が2つあり、一方に基準電圧Vrefが入力され、他方にスロープ電圧V_SSが入力されている。二つの反転入力端子は、入力される電圧が低い方の端子のみ機能するように設計されている。すなわち、スロープ電圧V_SSが上昇を続け、基準電圧Vrefに到達するまではスロープ電圧V_SSが有効となる。そして、スロープ電圧V_SSが基準電圧Vrefを超えると基準電圧Vrefが有効となる。
【0013】
スイッチングレギュレータが起動されると、スロープ電圧V_SSは徐々に上昇する。スロープ電圧V_SSが帰還電圧FBを超えると、方形波発振器18が動作を開始する。そして、スイッチングレギュレータは方形波パルスclkによる昇圧動作を行なう。また、スロープ電圧V_SSが帰還電圧FBより低くなると、方形波発振器18は動作を停止する。すなわち、一種の周波数変調制御であり、スロープ電圧V_SSの立ち上がりに追従して、出力端子VOUTの電圧は上昇する。
【0014】
従って、出力端子VOUTがスレッショルド電圧VTHを超え、電圧検出回路17の検出信号VpgはHとなったとき、帰還電圧FBとスロープ電圧V_SSは近い電圧となっているので、
図6のような期間TAに相当するタイムラグが無く、円滑にスタートアップから通常制御への移行を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2004−166428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、
図7のスイッチングレギュレータでは、定電流源22がコンデンサCssを充電してスロープ電圧V_SSを作っているので、電源電圧が低いときは、スロープ電圧V_SSの制御が非常に困難である。定電流源22に供給される電源電圧が1Vを下回るような場合に、その定電流特性を維持する事は難しく、コンデンサCssに対する充電電流が大きく低下する。この低下の割合は、出力端子VOUTの出力電圧が高く安定的にソフトスタート回路12が動作している時に比べて、1/10〜1/100以下になる事も有り得る。この場合、スロープ電圧V_SSの立ち上がりの傾きは電流の減少率に等しく減少し、10倍〜100倍以上の時間を要する。すなわち、スイッチングレギュレータの起動時間が大幅に延び、このスイッチングレギュレータを搭載した機器の、電源スイッチ投入から、実際に使用が可能になるまでの時間が長くなるという課題がある。
【0017】
本発明は上記課題を解決するためになされ、電源電圧に依存せず、スタートアップ状態から通常制御への動作状態の移行を円滑に行うことが可能なスイッチングレギュレータ回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のスイッチングレギュレータは、上記課題を解決するために、スイッチングレギュレータの出力電圧が所定の電圧よりも低い時に、スタートアップ用スイッチング信号を出力する第1の発振回路と、スイッチングレギュレータの起動時において緩やかに上昇する基準電圧を出力する基準電圧回路と、基準電圧とスイッチングレギュレータの出力電圧に基づく帰還電圧とを比較する演算増幅器と、スイッチング信号を出力する第2の発振回路と、演算増幅器の出力信号とスイッチング信号を比較するPWMコンパレータと、スイッチングレギュレータの出力電圧によってスタートアップ用スイッチング信号とPWMコンパレータの出力信号とを切替えて出力する切替え回路と、を備えたソフトスタート機能を有するスイッチングレギュレータであって、出力電圧が所定の電圧を超える時に基準電圧値が帰還電圧値と等しくなる、または高くなる、ように制御する制御回路を備えたスイッチングレギュレータ回路を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明のスイッチングレギュレータによれば、電源電圧に依存せず、スタートアップ状態から通常制御への動作状態の移行を円滑に行うことが可能なスイッチングレギュレータ回路を提供する。
【0020】
また、ソフトスタート時間が極端に長くなることが無いので、本発明のスイッチングレギュレータを搭載した機器は、電源スイッチをオンしてから使用可能になるまでの時間を短縮する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本実施形態のソフトスタート機能を有するスイッチングレギュレータの回路図である。
【
図2】
図1のスイッチングレギュレータの動作説明のための図である。
【
図3】本実施形態のソフトスタートブロックの一例を示す回路図である。
【
図4】従来のスイッチングレギュレータの回路図である。
【
図5】従来のソフトスタート回路の一例を示す回路図である。
【
図6】
図4のスイッチングレギュレータの動作説明のための図である。
【
図7】従来のスイッチングレギュレータの第二の構成図である。
【
図8】
図7のスイッチングレギュレータの動作説明のための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態のスイッチングレギュレータを、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態のソフトスタート機能を有したスイッチングレギュレータである。
【0023】
本実施形態のスイッチングレギュレータは、スイッチングレギュレータ制御回路1と周辺回路で構成されている。直流電圧源34は、スイッチングレギュレータ制御回路1の電源であり、乾電池1本を想定し電圧範囲を0.9V〜1.5Vとする。直流電圧源34とGNDの間にコイル33とスイッチングトランジスタ30が接続されている。コイル33とパワートランジスタ30の接続点は、ダイオード32を介して出力端子VOUTに接続されている。出力端子VOUTには、出力コンデンサ31と、帰還回路である抵抗35及び抵抗36が接続されている。スイッチングレギュレータ制御回路1は、直流電圧源34と第1電源端子VINを接続し、出力端子VOUTと第2電源端子VOUTを接続し、パワートランジスタ30のベースと出力端子EXTを接続し、帰還回路の出力端子と帰還電圧端子FBを接続する。帰還回路は、スイッチングレギュレータ制御回路1に内蔵されても良い。
【0024】
スイッチングレギュレータ制御回路1は、アンプ11と、ソフトスタート回路12と、基準電圧源13と、演算増幅器14と、ランプ波形発信器15と、PWMコンパレータ16と、電圧検出回路17と、方形波発振器18と、マルチプレクサ回路19と、バッファ回路20と、を備える。アンプ11とソフトスタート回路12は、ソフトスタートブロック10を構成する。
【0025】
第1電源端子VINの電圧は、方形波発振器18の電源になっている。第2電源端子VOUTの電圧は、スイッチングレギュレータの出力電圧であり、方形波発振器18を除く回路の電源にもなっている。帰還電圧端子FBは、帰還回路の出力が接続されている。
【0026】
電圧検出回路17は、第2電源端子VOUTの電圧を監視する。電圧検出回路17の検出信号Vpgは、第2電源端子VOUTの電圧がスレッショルド電圧VTHよりも低ければLとなり、高ければHとなる。
【0027】
方形波発振器18は、スタートアップ用スイッチング信号である方形波パルスclkを出力するスタートアップ用発振回路である。方形波発振器18は、電圧検出回路17の検出信号VpgがLとのきに方形波パルスclkを出力する。方形波発振器18は、発振周波数は製造バラツキや温度特性や電源電圧特性などで数10KHz〜数100KHzの範囲でばらついても、昇圧動作には問題無いことから、0.9Vといった非常に低い電源電圧で動作が可能な回路で構成することが出来る。
【0028】
演算増幅器14は、入力される帰還電圧端子FBの電圧とソフトスタート回路12が出力する基準電圧VREF_SSとを比較して、電圧Verroutを出力する。
【0029】
アンプ11は、演算増幅器14の入力端子間に接続される。アンプ11は、ゲイン1倍のアンプであり、電圧検出回路17の検出信号VpgがLのときに、演算増幅器14の入力端子の電圧が等しくなるように動作する制御回路である。
【0030】
ランプ波発振回路15は、スイッチング信号であるランプパルスVrampを出力する発振回路である。ランプ波発振回路15のランプパルスVrampは、三角波やノコギリ波などのある一定の傾きを持った発振波形となっている。
【0031】
PWMコンパレータ16は、演算増幅器14の電圧Verroutとランプ波発振回路15のランプパルスVrampとを比較し、信号Vpwmを出力する。
【0032】
マルチプレクサ回路19は、方形波発振器18の出力信号である方形波パルスclkと、PWMコンパレータ16の信号Vpwmと、いずれか一方を選択して出力する切替え回路である。マルチプレクサ回路19は、電圧検出回路17の検出信号VpgがLの場合は方形波パルスclkを出力し、検出信号VpgがHの場合は信号Vpwmを出力する。
【0033】
バッファ回路20は、マルチプレクサ回路19の出力する信号に基づいて、スイッチングレギュレータのスイッチング素子であるパワートランジスタ30を駆動する。
【0034】
上述のように構成されたスイッチングレギュレータの動作について、図面を元に説明する。
図2は、
図1のスイッチングレギュレータの動作を示す図である。
【0035】
スイッチングレギュレータが昇圧動作を開始する前は、パワートランジスタ30がオフしているので、出力端子VOUTの電圧は直流電圧源34の電圧VINからダイオード32の順方向電圧Vfを減じた電圧である。ショットキーバリアダイオードの場合は、順方向電圧Vfは0.2V〜0.3Vである。マルチプレクサ回路19やバッファ回路20などのデジタル回路は、電圧VINが0.9Vで出力端子VOUTが更に0.2V〜0.3V低い状態においても動作は可能である。
【0036】
先ず、起動時Tsにおいてスイッチングレギュレータが起動されたときの動作を説明する。
【0037】
ここで、電圧検出回路17のスレッショルド電圧VTHは1.5Vに設定されている。すなわち、電圧VINが0.9V〜1.5Vの範囲にある時、電圧検出回路17の検出信号VpgはLとなる。従って、方形波発振器18は動作を開始し方形波パルスclk信号を出力する。また、マルチプレクサ回路19は方形波発振器18の出力を選択する。
【0038】
よって、マルチプレクサ回路19は方形波発振器18の方形波パルスclkを出力する。出力端子EXTに出力された方形波パルスclkによって、パワートランジスタ30が駆動され、スイッチングレギュレータが昇圧動作を開始する。
【0039】
スイッチングレギュレータが方形波パルスclk信号によって昇圧動作を行なう期間をスタートアップ期間T1と称する。スタートアップ期間T1において、本スイッチングレギュレータは負帰還制御を行なっておらず、出力端子VOUTの出力電圧がスレッショルド電圧VTHを超えるまでの間において方形波パルスclkによる昇圧動作を行なう。
【0040】
また、同時にソフトスタートブロック10を構成するソフトスタート回路12とアンプ11も動作を開始する。アンプ11は、起動時Tsから帰還電圧FBに近似する電圧を基準電圧VREF_SSへ出力するように動作状態が設定される。しかしながら、起動時Ts直後では出力端子VOUTの出力電圧が非常に低いためアンプ11は正常に動作する事が出来ない。よって、基準電圧VREF_SSと帰還電圧FBの電位差は大きい。
【0041】
演算増幅器14は、演算増幅器であり、帰還回路を構成する場合、その反転入力と非反転入力の電位差が0Vとなるように帰還制御を行う。すなわち、演算増幅器14は、基準電圧VREF_SSが帰還電圧FBより高ければ電圧Verroutを低くし、基準電圧VREF_SSが帰還電圧FBより低ければ電圧Verroutを高くする。すなわち、ソフトスタート期間T2となり、演算増幅器14の帰還制御が始まる時点において、演算増幅器14の反転入力と非反転入力の電位差がほぼ等しい電位にあれば、大きな変動を伴う帰還制御を行う必要が無く、安定的にスタートアップ期間T1からソフトスタート期間T2へ移行する事ができる。
【0042】
図3は、本実施形態のソフトスタートブロック10の一例を示す回路図である。
ソフトスタートブロック10は、アンプ11とソフトスタート回路12を備えている。アンプ11は、トランジスタ100〜104と定電流源112からなる差動増幅回路と、トランジスタ105及び110とインバータ111からなる切り替え回路とを備える。ソフトスタート回路12は、定電流源113、114及び115と、直流電圧源108と、コンデンサ107と、トランジスタ105及び110とを備えている。差動増幅回路は、入力であるトランジスタ101と102に帰還電圧FBとソフトスタート回路12の出力である基準電圧VREF_SSが入力される。また、検出信号Vpgが入力されるトランジスタ100によって動作と停止が制御される。さらに、検出信号Vpgがインバータ111を介して入力されるトランジスタ110と105によって、差動増幅回路の出力と定電流源113の出力とが切替えて出力される。図示しない起動回路から起動信号ENがトランジスタ106のゲートに入力されることによって、コンデンサ107は充放電が制御される。トランジスタ109は、ゲート端子をコンデンサ107の電圧SS_CAPによって制御される。
【0043】
ソフトスタート回路12は、ソフトスタート用の基準電圧VREF_SSを出力する。アンプ11は、検出信号VpgがHとなり昇圧状態が切り替わった時に、基準電圧VREF_SS電圧が帰還電圧FBとほぼ等しくなるように制御する。
【0044】
起動時Tsに検出信号VpgがLであるから、トランジスタ100が導通状態となり、差動増幅回路が動作を開始する。また、トランジスタ105は導通状態となり、トランジスタ110は非導通状態となるので、差動増幅回路の出力ノードはトランジスタ105を介してトランジスタ109のゲートに接続される。この時、差動増幅回路とトランジスタ109と定電流源114及び115とは、演算増幅器を構成する。演算増幅器は、トランジスタ109のソースが出力、トランジスタ102のゲートが反転入力、トランジスタ101の入力が非反転入力として機能する。従って、演算増幅器はボルテージフォロアー回路を構成し、帰還電圧FBに等しい電圧を出力端子に出力する。すなわち、基準電圧VREF_SSは帰還電圧FBに等しい電圧となる。
【0045】
上述のような昇圧動作によって出力端子VOUTの出力電圧が電圧検出回路17のスレッショルド電圧VTHを超えると、期間T2となる。電圧検出回路17の検出信号VpgがHになると、トランジスタ100、105は非導通となり、差動増幅回路はその動作を停止する。トランジスタ110が導通状態となるので、定電流源113はコンデンサ107の充電を開始する。従って、ノードSS_CAPの電圧がゆっくり上昇を開始する。この時、定電流源114及び115は電流を流し続けるので、トランジスタ109はソースフォロアー回路として動作して、ノードSS_CAPの電圧からトランジスタ109の電圧Vgs分下がった電圧を基準電圧VREF_SSとして出力する。以上の事から、基準電圧VREF_SSは期間T1において帰還電圧FBに準ずる電圧に到達し、期間T2に入ると直ちに、ノードSS_CAPの充電波形に依存した形状で上昇を開始する。トランジスタ109は,ドレインに直流電圧源108が接続されている為、基準電圧VREF_SSが直流電圧源108の電圧VREFまで上昇すると、それ以上は上昇する事が出来ない。従って、電圧VREFを安定電位として、ソフトスタート期間T2は終了する。
【0046】
そして、スタートアップ期間T1において、検出信号VpgがHとなると、方形波発振器18は動作を停止し、マルチプレクサ回路19は信号Vpwmを出力する。すなわち、スイッチングレギュレータは通常のPWM制御で昇圧動作を行う。
【0047】
以上説明したように、本発明のスイッチングレギュレータは、スタートアップ期間T1からソフトスタート期間T2へ切り替わる時に、ソフトスタート用の基準電圧VREF_SSが帰還電圧FBと等しくなっている。従って、スタートアップ期間T1からソフトスタート期間T2への移行が安定的に行われる。
【0048】
なお、本発明のスイッチングレギュレータはスタートアップ期間T1からソフトスタート期間T2へ切り替わる時に、ソフトスタート用の基準電圧VREF_SSが帰還電圧FBと等しくなる構成として説明したが、基準電圧VREF_SSが帰還電圧FBより高くなるような構成でも良い。例えば、アンプ11の増幅率を1以上に設定する、すなわちアンプ11を非反転増幅回路とし、帰還電圧FBを所望の倍率で増幅しても良い。このように構成すると、アンプ11のオフセット電圧など性能バラツキに対して余裕を持つことが出来て、スタートアップ期間T1からソフトスタート期間T2への移行が安定的に行われる。
【0049】
また、アンプ11を、入力に帰還電圧VFBを接続し、出力にVREF_SSを接続したソースフォロアー回路で構成しても良い。しかしながら、ソースフォロアー回路の増幅率は一般に1以下であり、概ねソースフォロアー回路に用いるMOSトランジスタの閾値電圧を入力電圧から差し引いた値が出力電圧となる。従って、デプレッション型トランジスタなど、閾値電圧が低いトランジスタを用いたソースフォロアー回路とすれば、増幅率を1に近づける事が可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 ソフトスタートブロック
11 アンプ
12 ソフトスタート回路
13 基準電圧源
14 演算増幅器
15 ランプ波発振回路
16 PWMコンパレータ
17 電圧検出回路
18 方形波発振器
19 マルチプレクサ回路
20 バッファ回路
21 コンパレータ
30 パワートランジスタ
34、108 直流電圧源
22、112、113、114、115 定電流源