(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱流形成部は、前記熱流センサを挟んで前記吸熱側部位と反対側に配置されると共に前記測定空間内に少なくとも一部を露出させて当該測定空間内の熱を前記熱流センサを介して前記吸熱側部位に供給可能な伝熱部材を備え、
前記ペルチェ素子は、前記放熱側部位が前記外部空間内に位置するように配置される請求項6に記載の露点計。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献3の露点計では、測定空間が特定の湿度範囲内でないと伝熱部(ヒートパイプ)の内側部位の表面温度と測定空間の露点とが近似しないことが判明した。このため、上記の露点計では、露点を精度よく計測できる湿度範囲が狭いという問題があることが判明した。
【0014】
そこで、メンテナンス性がよく且つ簡略な構造でありながら、広い湿度範囲において露点を測定可能な露点計、及び湿度計を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく以下の知見に着目した。
【0016】
この知見は、熱流センサ内を通過する熱流の熱収支に関するものである。具体的には、熱流センサ内を通過するように測定空間内の熱を移動させたときに、測定空間から熱流センサ(又は当該熱流センサへ熱伝導可能に配置される部材)へ入る顕熱と、熱流センサ(又は前記部材)の結露によって熱流センサ(又は前記部材)へ供給された潜熱とを合わせた熱量が熱流センサ内を通過する熱流の量(熱流量)と等しくなるといった熱収支が測定空間の湿度に応じて潜熱が変化し成り立つというものである。
【0017】
この知見に基づき、本発明者らは、前記の熱収支を露点の観点から精査した結果、熱流センサ内を通過する熱流を形成するための部材(熱流形成部)又は熱流センサの温度、測定空間の温度、及び熱流センサ内を通過する熱流の熱流量と、露点との間に所定の関係式が成り立つことを発見した。
【0018】
本発明は、この関係式に着目することによってなされたものであり、測定空間の露点を測定するための露点計であって、表面と背面とを有し、これら表面と背面との間を通過する熱流の熱流量を計測する熱流センサと、前記熱流センサが取り付けられ、当該熱流センサの背面に熱伝導可能な熱流形成部と、前記熱流形成部の温度又は前記熱流センサの温度を計測する温度検出部と、前記測定空間の温度を計測する測定空間温度検出部と、前記測定空間の露点を算出する演算処理部と、を備える。そして、前記熱流形成部は、当該熱流形成部内の熱の移動により前記熱流センサの背面の温度を変化させて当該背面と前記表面との間に温度差を設けることにより前記熱流センサ内を通過する熱流を形成し、前記演算処理部は、前記熱流が形成されたときの前記熱流センサにおける熱収支に基づく関係式を用い、前記測定空間温度検出部での温度の計測位置と前記温度検出部での温度の計測位置との間の熱抵抗値と、前記温度検出部により計測される温度と、前記測定空間温度検出部により計測される温度と、前記熱流センサにより計測される熱流量と、から前記測定空間の露点を算出する。
【0019】
この露点計によれば、熱流形成部又は熱流センサの温度、測定空間の温度、及び熱流センサの表面と背面との間(熱流センサ内)を通過した熱流の熱流量を計測し、これらと、所定の熱抵抗値(測定空間温度検出部での温度の計測位置と温度検出部での温度の計測位置との間の熱抵抗値)とを、その内部を通過する熱流が形成されたときの熱流センサにおける熱収支に基づく関係式に代入することにより、広い湿度範囲において測定空間の露点を精度よく求めることができる。これは、測定空間の湿度に応じて潜熱が変化することにより成り立つ前記の熱流センサにおける熱収支に基づく関係式を用いて露点を算出するためである。
【0020】
また、当該露点計では、熱流センサと、熱流形成部と、温度検出部と、測定空間温度検出部と、演算処理部とにより構成されるので、従来の鏡面冷却式露点計のように非常に多くの部材で構成されるものに比べて構造を簡略化することができる。また、この露点計は、従来の乾湿球湿度計のようにウィックを必要としないので、古くなって水の吸い上げが悪くなる毎にウィックを交換するといったメンテナンスに係る作業負担を軽減することができる。従って、本発明による露点計では、メンテナンスに係る作業負担を軽減しながら、構造を簡略化することができる。
【0021】
本発明にかかる露点計においては、前記熱流形成部は、前記測定空間と当該測定空間に対して断熱部で隔てられる外部空間とに跨って配置されるヒートパイプを有し、前記熱流センサは、前記背面が前記ヒートパイプの測定空間内に位置する部位と熱伝導可能となるように前記熱流形成部の測定空間内に位置する部位に取り付けられてもよい。
【0022】
かかる構成によれば、ヒートパイプにおいて内部空間内に位置する部位(内部側部位)から外部空間内に位置する部位(外部側部位)へ当該ヒートパイプ内の熱が移動することによって内部側部位と熱伝導可能な熱流センサの背面の温度が変化して当該背面と表面との間に温度差が生じ、これにより、内部側部位が熱流センサを介して測定空間内の熱を吸熱する。その結果、熱流センサ内を通過する熱流が形成される。
【0023】
具体的には、ヒートパイプにおいて内部側部位から外部側部位へ熱が移動することにより、内部側部位の温度が低下し、当該部位と熱伝導可能な熱流センサの背面の温度が低下して熱流センサの表面の温度よりも低くなる。これにより、測定空間内の熱が熱流センサの表面と背面との間を通過して内部側部位に入り、熱流センサ内に測定空間内の熱による熱流が形成される。
【0024】
また、熱流形成部が熱抵抗の小さなヒートパイプを備えることにより、応答性の優れた露点計が得られる。
【0025】
尚、熱流センサは、熱流形成部の外部空間内に位置する部位に取り付けられてもよい。この場合、具体的には、露点計は、前記熱流形成部に取り付けられる第1の断熱部を備え、前記熱流形成部は、前記測定空間と当該測定空間に対して第2の断熱部で隔てられる外部空間とに跨って配置されるヒートパイプを有し、前記熱流センサは、前記背面が前記ヒートパイプの外部空間内に位置する部位と熱伝導可能となるように前記熱流形成部の外部空間内に位置する部位に取り付けられ、前記第1の断熱部は、前記熱流センサの表面を残して当該熱流センサと前記熱流形成部の外部空間内に位置する部位とを囲う。
【0026】
かかる構成によれば、ヒートパイプにおいて内部側部位から外部側部位へ当該ヒートパイプ内の熱が移動することによって外側部位と熱伝導可能な熱流センサの背面の温度が変化して当該背面と表面との間に温度差が生じ、これにより、外部側部位が熱流センサを介して外部空間に熱を放出する。その結果、熱流センサ内を通過する熱流が形成される。
【0027】
具体的には、ヒートパイプにおいて内部側部位から外部側部位へ熱が移動することにより、外部側部位の温度が上昇し、当該部位と熱伝導可能な熱流センサの背面の温度が上昇して熱流センサの表面の温度よりも高くなる。これにより、内部側部位で吸熱されて外部側部位まで移動した測定空間内の熱が熱流センサの背面と表面との間を通過して外部空間に放出される。その結果、熱流センサ内に測定空間内の熱による熱流が形成される。
【0028】
尚、熱流形成部の外部空間内に位置する部位に熱流センサが取り付けられる場合には、第1の断熱部を取り付け、内部側部位からヒートパイプ内に入った測定空間内の熱が全て熱流センサ内を通過して外部空間に放出されるようにして内部側部位からヒートパイプ内に入った測定空間内の熱と熱流センサを通過して外部空間に放出される熱との熱量を等しくすることにより、前記の熱流センサにおける熱収支に基づく関係式を用いて測定空間の露点を求めることが可能となる。
【0029】
また、熱流センサが外部空間内に位置するため、当該熱流センサへの結露を防ぎ、これにより熱流センサの結露による劣化を防止することができる。
【0030】
前記ヒートパイプは、前記熱流センサの背面と対応する形状の取付面を有し、前記熱流センサは、その背面が前記取付面と接するように前記ヒートパイプに取り付けられてもよい。
【0031】
かかる構成によれば、熱流センサが取り付け易くなる。また、熱流センサの背面とヒートパイプの取付面とが接するように熱流センサをヒートパイプに取り付けることにより、他の伝熱部材等をヒートパイプと熱流センサとの間に介在させる場合に比べて熱容量を小さくでき、これにより、露点を計測するときの応答速度を早くすることができる。
【0032】
前記熱流形成部は、ペルチェ素子を有し、前記熱流センサは、その背面が前記ペルチェ素子の吸熱側部位と熱伝導可能となるように前記熱流形成部に取り付けられてもよい。
【0033】
かかる構成によれば、ペルチェ素子の吸熱側部位が熱流センサを介して測定空間内の熱を吸熱しこの熱を放熱側部位から放出することにより、熱流センサ内を通過する熱流が形成される。
【0034】
具体的には、ペルチェ素子において吸熱側部位から放熱側部位へその内部の熱が移動することにより、吸熱側部位の温度が低下し、当該部位と熱伝導可能な熱流センサの背面の温度が低下して熱流センサの表面の温度よりも低くなる。これにより、測定空間内の熱が熱流センサの表面と背面との間を通過して吸熱側部位に入り、熱流センサ内に測定空間内の熱による熱流が形成される。
【0035】
しかも、ペルチェ素子を用いることにより、当該ペルチェ素子へ供給する電流量によって熱流センサを通過する熱流量を変更できるため、より広い湿度範囲において測定空間の露点を測定することが可能となる。
【0036】
また、ペルチェ素子に供給する電流を逆にして(即ち、熱流センサの背面に向けて熱を放出するようにして)熱流センサを通過する熱の熱流量を計測することにより、第2温度検出部での温度の計測位置と第1温度検出部での温度の計測位置との間の熱抵抗値を求めることができる。即ち、熱流形成部がペルチェ素子を備えることにより、予め前記熱抵抗値を演算や試験測定等を行って求めてこれをメモリ等に記憶させておかなくても、露点を測定することが可能となる。
【0037】
前記熱流センサは、前記ペルチェ素子の吸熱側部位に取り付けられ、前記ペルチェ素子は、前記吸熱側部位が前記熱流センサを介して前記測定空間内の熱を吸熱可能で、且つ、放熱側部位が前記吸熱側部位によって吸熱された前記熱を当該測定空間に対して断熱部で隔てられる外部空間へ放熱可能に配置されてもよい。
【0038】
かかる構成によれば、ペルチェ素子が駆動することにより生じる熱を外部空間に放出することができるため、測定空間内の温度が制御し易くなる。
【0039】
前記熱流形成部は、前記熱流センサを挟んで前記吸熱側部位と反対側に配置されると共に前記測定空間内に少なくとも一部を露出させて当該測定空間内の熱を前記熱流センサを介して前記吸熱側部位に供給可能な伝熱部材を備え、前記ペルチェ素子は、前記放熱側部位が前記外部空間内に位置するように配置されてもよい。
【0040】
かかる構成によれば、伝熱部材を熱流センサよりも測定空間側に配置することによって熱流センサが測定空間内に露出しないようにして露点測定時の当該センサへの結露を防ぎ、これにより、熱流センサの結露による劣化を防止することができる。
【0041】
また、放熱側部位が外部空間内に位置しているため、ペルチェ素子が駆動することによって生じる熱をより効率よく外部空間に放出することができる。
【0042】
前記ペルチェ素子と、前記吸熱側部位に取り付けられた熱流センサとが前記測定空間内に位置するように配置されてもよい。
【0043】
このようにペルチェ素子と熱流センサとを測定空間内に配置する構成とすることにより、熱を外部空間へ放出するための穴等を外部空間と測定空間とを隔てる断熱部等に設けることなく露点の計測が可能となる。また、放熱側部位の熱を外部空間に放出しなくてもよいため、測定空間内におけるペルチェ素子の配置の自由度が向上する。
【0044】
また、本発明は、測定空間の露点を測定するための露点計であって、表面と背面とを有し、これら表面と背面との間を通過する熱流の熱流量を計測する第1の熱流センサと、表面と背面とを有し、これら表面と背面との間を通過する熱流の熱流量を計測する第2の熱流センサと、前記第1の熱流センサが取り付けられ、当該第1の熱流センサの背面に熱伝導可能な第1の熱流形成部と、前記第2の熱流センサが取り付けられ、当該第2の熱流センサの背面に熱伝導可能な第2の熱流形成部と、前記第1及び第2の熱流形成部の温度、又は前記第1及び第2の熱流センサの温度をそれぞれ計測する温度検出部と、前記測定空間の温度を計測する測定空間温度検出部と、前記測定空間の露点を算出する演算処理部と、を備える。そして、前記第1の熱流形成部は、当該第1の熱流形成部内の熱の移動により前記第1の熱流センサの背面の温度を変化させて当該背面と前記表面との間に温度差を設けることにより当該第1の熱流センサ内を通過する熱流を形成し、前記第2の熱流形成部は、当該第2の熱流形成部内の熱の移動により前記第2の熱流センサの背面の温度を変化させて当該背面と前記表面との間に温度差を設けることにより当該第2の熱流センサ内を通過する熱流を形成すると共に、前記第2の熱流センサ内を通過する熱流の熱流量が前記第1の熱流センサ内を通過する熱流の熱流量と異なる量となるようにし、前記演算処理部は、前記熱流が形成されたときの各熱流センサにおける熱収支に基づく関係式を用いて、前記温度検出部により計測される前記第1及び第2の熱流形成部又は前記第1及び第2の熱流センサの温度と、前記測定空間温度検出部により計測される前記測定空間の温度と、前記第1及び第2の熱流センサによりそれぞれ計測される熱流量と、から前記測定空間の露点を算出する。
【0045】
この露点計によれば、各熱流形成部又は各熱流センサの温度、測定空間の温度、及び各熱流センサ内を通過した熱流の熱流量をそれぞれ計測し、これらを、内部に熱流が形成されたときの各熱流センサにおける熱収支に基づく関係式に代入することにより、広い湿度範囲において測定空間の露点を精度よく求めることができる。即ち、各熱流形成部又は各熱流センサの温度、及び各熱流センサ内を通過した熱流の熱流量をそれぞれ測定することにより、所定の熱抵抗値を用いることなく、広い湿度範囲において測定空間の露点を精度よく求めることができる。このため、内部に熱流が形成されたときの各熱流センサにおける熱収支に基づく関係式を準備しておけば、予め前記熱抵抗値を演算や試験測定等を行って求めてこれをメモリ等に記憶させておかなくても露点の測定の際に実測によって得られる値(各熱流形成部又は各熱流センサの温度、測定空間の温度、及び各熱流センサを通過した熱流の熱流量)だけで露点を測定することが可能となる。
【0046】
また、当該露点計では、第1及び第2の熱流センサと、第1及び第2の熱流形成部と、温度検出部と、測定空間温度検出部と、演算処理部とにより構成されるので、従来の鏡面冷却式露点計のように非常に多くの部材で構成されるものに比べて構造を簡略化することができる。また、この露点計は、従来の乾湿球湿度計のようにウィックを必要としないので、古くなって水の吸い上げが悪くなる毎にウィックを交換するといったメンテナンスに係る作業負担を軽減することができる。従って、本発明による露点計では、メンテナンスに係る作業負担を軽減しながら、構造を簡略化することができる。
【0047】
また、本発明は、測定空間の相対湿度を測定するための湿度計であって、上記のいずれか1項に記載の露点計と、前記露点計の演算処理部により求められた露点に基づいて前記測定空間の相対湿度を算出する湿度演算処理部と、を備える。
【0048】
この湿度計によれば、熱流形成部又は熱流センサの温度、測定空間の温度、及び熱流センサ内を通過した熱流の熱流量を計測することにより、広い湿度範囲において測定空間の露点が精度よく求まるため、この露点に基づき相対湿度を算出することにより、測定空間の相対湿度を精度よく求めることができる。
【0049】
また、本発明による湿度計では、熱流センサ、熱流形成部、各温度検出部(温度検出部及び測定空間温度検出部)、及び演算処理部を備える露点計と、湿度演算処理部とにより構成されるので、従来の鏡面冷却式露点計を用いた湿度計のように非常に多くの部材で構成されるものに比べて構造を簡略化することができる。しかも、従来の乾湿球湿度計のようにウィックを必要としないので、メンテナンスに係る作業負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0050】
以上より、本発明によれば、メンテナンス性がよく且つ簡略な構造でありながら、広い湿度範囲において露点を測定可能な露点計、及び湿度計を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0053】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態による露点計を説明するための概略構成図であり、
図2は、
図1の一部拡大斜視図であり、
図3は、
図1に示した露点計の熱流形成部及び熱流センサにおける熱の移動や熱抵抗を説明するための概念図である。
【0054】
本実施形態の露点計10は、測定空間S1内の露点T
dを測定するものであり、熱流センサ12と、熱流形成部20と、冷却ファン28と、第1温度検出部(温度検出部)14と、第2温度検出部(測定空間温度検出部)16と、演算処理部30とを備える。
【0055】
熱流センサ12は、その内部を通過する熱流の量(熱流量)Q
eoを計測する。具体的に、熱流センサ12は、表面12aと背面12bとを有し、これら表面12aと背面12bとの間を通過する熱流の熱流量Q
eoを計測する。この熱流センサ12は、演算処理部30に接続され、計測した熱流量Q
eoに応じた信号(熱流信号)を出力する。熱流センサ12は、測定空間S1内において熱流形成部20に取り付けられている。
【0056】
熱流形成部20は、ヒートパイプ22と、伝熱板24と、複数の冷却フィン26、26、…と、を備え、熱流形成部20内の熱の移動により熱流センサ12の背面12bの温度を変化させて当該背面12bと表面12aとの間に温度差を設けることにより当該熱流センサ12内を通過する熱流を形成する。
【0057】
ヒートパイプ22は、測定空間S1内と、この測定空間S1の外側の外部空間S2とに跨って配置される。ヒートパイプ22のうち測定空間S1内に位置する部位を内側部(内部測部位)22aとし、外部空間S2内に位置する部位を外側部(外部側部位)22bとする。測定空間S1は、例えば、断熱壁100(断熱部)で囲まれた恒温恒湿槽101の内側の空間である。一方、外部空間S2は、前記恒温恒湿槽101の外側の空間である。恒温恒湿槽101の駆動により測定空間S1の温度を外部空間S2の温度よりも高くすることが可能となっている。この恒温恒湿槽101を構成する断熱壁100には貫通孔100aが形成されている。ヒートパイプ22は、この貫通孔100aに挿通されることにより、測定空間S1と外部空間S2とに跨って配置される。
【0058】
尚、本実施形態では、ヒートパイプ22が用いられるが、これに限定されない。例えば、ヒートパイプ22の代わりに、熱伝導率の高い(即ち、熱抵抗値の小さな)棒状部材(例えば、銅棒等)が用いられてもよい。
【0059】
伝熱板24は、熱流センサ12を通過した熱をヒートパイプ22の内側部22aに伝熱するための部材であり、測定空間S1内においてヒートパイプ22の内側部22aに取り付けられる。この伝熱板24は、板形状を有し、熱伝導率が高い(抵抗値の小さな)素材によって形成される。具体的に、伝熱板24の一方の主面(取付面)24aは熱流センサ12の背面12bと同一の形状を有し、伝熱板24の厚さはヒートパイプ22の外径よりも大きい(
図2参照)。この伝熱板24にその厚み方向と直交する方向に内側部22aが挿入されることによりヒートパイプ22が取り付けられる。また、伝熱板24の取付面24aには、熱流センサ12の背面12bが面接触するように熱流センサ12が取り付けられる。これにより、熱流センサ12の背面12bとヒートパイプ22の内側部22aとが熱伝導可能になる。
【0060】
各冷却フィン26は、ヒートパイプ22の外側部22bに取り付けられる板状の部材であり、外部空間S2における表面積を増やすことによりヒートパイプ22の外側部22bの熱を外部空間S2に効率よく放出するための部材である。尚、ヒートパイプ22の外側部22bには、冷却フィン26の変わりにペルチェ素子等の冷却手段が設けられてもよい。
【0061】
冷却ファン28は、ヒートパイプ22の外側部22bに対して送風することにより、外側部22bから外部空間S2への熱の放出量を増加させる。この冷却ファン28は、演算処理部30に接続され、当該演算処理部30からの指令信号に基づいて送風の開始及び停止や送風量の変更を行う。
【0062】
尚、ヒートパイプ22の外側部22bから外部空間S2に熱を十分に放出できれば、冷却フィン26や冷却ファン28が設けられなくてもよい。また、冷却フィン26及び冷却ファン28の一方のみが設けられてもよい。
【0063】
第1温度検出部14は、露点T
dを求めるための演算に用いられる熱流形成部20の温度T
eを計測する。本実施形態の第1温度検出部14は、伝熱板24の取付面24aに配置され、当該取付面24aの温度を計測し、その計測結果に応じた信号(第1温度信号)を出力する。
【0064】
第2温度検出部16は、露点T
dを求めるための演算に用いられる測定空間S1の温度(測定空間温度)T
iを計測する。この第2温度検出部16は、測定空間S1内に配置され、測定空間S1内の温度T
iを計測し、その計測結果に応じた信号(第2温度信号)を出力する。
【0065】
演算処理部30は、測定空間S1内の露点T
dを算出し、この算出した露点T
dを表示(出力)する。この演算処理部30は、各種情報(信号)を出し入れ自在に格納可能な記憶部31と、露点T
dを算出する演算部32と、演算部32での演算結果を出力する出力部33と、を備える。本実施形態の演算処理部30には、各温度検出部14、16及び熱流センサ12が当該演算処理部30に対して切り離し可能に接続されている。
【0066】
記憶部31は、露点T
dを求めるための演算に用いられる所定の関係式T
d1及び熱抵抗値R
ieを予め格納している。本実施形態では、記憶部31として、例えば、ハードディスクやRAM等が用いられる。
【0067】
関係式T
d1は、熱流形成部20によって熱流センサ12内を通過する熱流が形成されたときの当該熱流センサ12における熱収支に基づくものであり、以下のようにして求められる。
【0068】
測定空間の温度(測定空間温度)T
iよりも外部空間の温度(外部空間温度)が低くなるように測定空間温度T
iと外部空間温度との間に所定の温度差を設けると、ヒートパイプ22において作動流体により内側部22aから外側部22bに向けてヒートパイプ内の熱が輸送される。このため内側部22aの温度が低下し、当該部位と伝熱板24を介して熱伝導可能な熱流センサ12の背面12bの温度も低下して当該背面12bの温度が熱流センサ12の表面12aの温度よりも低くなる。このように表面12aと背面12bとの間に温度差が生じると測定空間S1内の熱が表面12aから熱流センサ12内に入って当該熱流センサ12内を通過して内側部22aに入り、これにより、熱流センサ12内に測定空間S1内の熱による熱流が形成される。このとき、熱流センサ12の表面12aの温度が測定空間S1の露点以下となって表面12aに結露が生じる。ここで、測定空間S1から熱流センサ12を介して伝熱板24へ入る顕熱をQ
ieとし、結露により測定空間S1から熱流センサ12を介して伝熱板24へ供給される潜熱をQ
ieLとすると、顕熱Q
ieは、
【0069】
【数1】
で表され、潜熱Q
ieLは、
【0070】
【数2】
で表される。ここで、T
iT
e間の熱抵抗値をR
ie、測定空間S1の絶対湿度をx
i、測定空間S1の露点をT
d、水の潜熱をλ、測定空間S1の比熱をC
pa、測定空間S1の飽和蒸気圧をP
s、測定空間S1の大気圧をP、第1温度検出部14による温度計測面である取付面24aにおける絶対湿度をx
eとする。尚、潜熱係数fは、以下の式(3)により定義する。
【0071】
【数3】
ここで、外側部22bを内側部22aよりも低温にして熱流センサ12の表面12aを測定空間S1の露点以下にし、表面12aに結露を生じさせたときに、測定空間S1から伝熱板24へ入る顕熱Q
ieと結露によって伝熱板24に供給された潜熱Q
ieLとを合わせた熱量が熱流センサ12を通過した熱流の熱流量Q
eoと等しくなるといった熱収支が測定空間S1の湿度に応じて潜熱が変化し成り立つ。従って、Q
ie、Q
ieL、Q
eoの間には、
【0072】
【数4】
で表される関係が成り立つ(
図3参照)。
【0073】
そして、式(4)に上記の式(1)〜式(3)を代入して整理することにより、露点T
dを求めるための関係式T
d1は、
【0075】
このように求められた関係式T
d1には、熱流形成部20の種類や形状等によって異なり且つ露点T
dの計測中に得られる各種温度等のデータからは導出することができない熱抵抗値R
ieが含まれている。そのため、本実施形態の露点計10では、演算や事前実験等により熱抵抗値R
ieを求め、これらの値を記憶部31に格納し、演算部32が自由に使用できるようにしておくことにより、露点T
dの測定の際に得られる温度データから演算部32が露点T
dを算出することを可能にしている。
【0076】
演算部32は、各温度検出部14、16からの第1及び第2温度信号と、熱流センサ12からの熱流信号とを受信すると、記憶部31に格納されている関係式T
d1と熱抵抗値R
ieとを用いて測定空間S1の露点T
dを算出する(求める)。そして、演算部32は、求めた露点T
dを出力部33に出力する。
【0077】
出力部33は、演算部32の演算結果を受けて測定空間S1の露点T
dを出力する。本実施形態の出力部33は、演算結果を表示するように構成される。尚、出力部33は、演算結果を表示する構成に限定されずに、液晶ディスプレイ等の外部の表示装置等に前記演算結果等を表示させるための信号を出力するように構成されてもよく、印字等によって出力するように構成されてもよい。
【0078】
このように構成される露点計10では、以下のようにして測定空間S1の露点T
dが測定される。
【0079】
ヒートパイプ22の内側部22aと外側部22bとの間に温度差が形成される。具体的には、演算処理部30が恒温恒湿槽101を駆動させ、測定空間温度T
iを外部空間温度よりも高くする。これにより、ヒートパイプ22内の作動流体により内側部22aの熱が外側部22bに輸送され、内側部22aが低温となり、この内側部22aと伝熱板24を介して熱伝導可能な熱流センサ12の背面12bが冷却される。その結果、熱流センサ12の表面12aと背面12bとの間に温度差が形成され、測定空間S1内の熱が熱流センサ12内を通過して内側部22aに入る、即ち、熱流センサ12内を表面12aから背面12bに向けて通過する熱流が形成される。このとき、熱流センサ12の表面12aの温度が露点以下となり表面12aに測定空間S1中に存在する水分が付着して凝縮し、結露が生じる。
【0080】
内側部22aに入った熱は、前記の通りヒートパイプ22の作動流体によって外側部22bに輸送され、外側部22bに到達すると外側部22bの表面及び複数の冷却フィン26、26、…から外部空間S2に放出される。このとき、演算処理部30が冷却ファン28を駆動し、冷却フィン26に向けて送風することにより、測定空間S1からの熱が効率よく外部空間S2に放出される。
【0081】
このようにして、測定空間S1内の熱が熱流センサ12を通じて内側部22aに入り、作動流体によって外側部22bまで輸送され、冷却フィン26から外部空間S2に放出される(
図3参照)。
【0082】
このとき、演算部32は、第1温度検出部14が計測した伝熱板24の取付面24aの温度と第2温度検出部16が計測した測定空間温度T
iと熱流センサ12が計測した熱流量Q
eoとを第1温度信号、第2温度信号、及び熱流信号として受信し、これらと、記憶部31に格納されている関係式T
d1と熱抵抗値R
ieとを用いて測定空間の露点T
dを算出する。そして、出力部33が、演算部32によって算出された測定空間S1の露点T
dを表示(出力)する。
【0083】
以上説明したように、第1実施形態の露点計によれば、熱流形成部20(詳しくは、伝熱板24の取付面24a)の温度T
e、測定空間温度T
i、及び熱流センサ12の表面12aと背面12bとの間(熱流センサ12内)を通過した熱流の熱流量Q
eoを計測し、これらと、関係式T
d1と、熱抵抗値(測定空間S1における第2温度検出部16での温度の計測位置と熱流形成部20における第1温度検出部14での温度の計測位置との間の熱抵抗値)R
ieとから、広い湿度範囲において測定空間S1の露点T
dを精度よく求めることができる。これは、熱流センサ12の表面12aが結露した状態であれば測定空間S1の相対湿度に関係なく成り立つ前記の熱流センサ12における熱収支に基づく関係式T
d1を用いて露点T
dを算出するためである。
【0084】
また、当該露点計10では、熱流センサ12と、熱流形成部20と、第1温度検出部14と、第2温度検出部16と、演算処理部30とにより構成されるので、従来の鏡面冷却式露点計のように非常に多くの部材で構成されるものに比べて構造を簡略化することができる。また、この露点計10は、従来の乾湿球湿度計のようにウィックを必要としないので、古くなって水の吸い上げが悪くなる毎にウィックを交換するといったメンテナンスに係る作業負担を軽減することができる。従って、本発明による露点計10では、メンテナンスに係る作業負担を軽減しながら、構造を簡略化することができる。
【0085】
また、熱流形成部20において熱抵抗の小さなヒートパイプ22を用いることにより、応答性の優れた露点計10が得られる。
【0086】
<第2実施形態>
図4は、本発明の第2実施形態による露点計を説明するための概略構成図であり、
図5は、
図4に示した露点計の熱流形成部及び熱流センサにおける熱の移動や熱抵抗を説明するための概念図である。次に、
図4及び
図5を参照して、本発明の第2実施形態による露点計の構成について説明するが、上記第1実施形態と同様の構成には同一符号を用いると共に詳細な説明を省略し、異なる構成についてのみ詳細に説明する。
【0087】
本実施形態の露点計10Aは、
図4に示されるように、熱流センサ12と、熱流形成部20Aと、冷却ファン28と、断熱部(第1の断熱部)40と、第1温度検出部14と、第2温度検出部16と、演算処理部30とを備える。
【0088】
熱流センサ12は、第1実施形態と異なり、外部空間S2内において熱流形成部20Aに取り付けられる。
【0089】
熱流形成部20Aは、ヒートパイプ22と、伝熱板24と、を備え、伝熱板24は、第1実施形態と異なり、外部空間S2内においてヒートパイプ22の外側部22bに取り付けられる。
【0090】
冷却ファン28は、熱流形成部20に取り付けられた熱流センサ12の表面12aに向けて送風可能に配置される。
【0091】
断熱部40は、熱流形成部20Aに取り付けられる。具体的に、断熱部40は、熱伝導率の低い素材で形成され、熱流センサ12の表面12aを残して当該熱流センサ12と熱流形成部20Aの断熱壁100よりも外部空間S2側に位置する部位(具体的には、ヒートパイプ22の外側部22bとこれに取り付けられた伝熱板24)とを囲う。これにより、ヒートパイプ22の外側部22bから外部空間S2へ放出される熱は、全て熱流センサ12を通過する。即ち、熱流形成部20Aの外部空間S2内に位置する部位に熱流センサ12が取り付けられる場合には、断熱部40を設けることにより、内側部22aからヒートパイプ22内に入った測定空間S1内の熱が全て熱流センサ12内を通過して外部空間S2に放出されるようにする。これにより、内側部22aからヒートパイプ22内に入った測定空間S1内の熱と熱流センサ12を通過して外部空間S2に放出される熱との熱量が等しくなり、関係式T
d1を用いて露点T
dを測定することができる。
【0092】
第1温度検出部14は、ヒートパイプ22の内側部22aの表面に配置され、当該表面の温度を計測し、その計測結果に応じた第1温度信号を出力する。
【0093】
演算処理部30の記憶部31に格納されている熱抵抗値R
ieは、測定空間S1内の所定位置(第2温度検出部16による温度計測位置)とヒートパイプ22の内側部22aの表面(第1温度検出部14による温度計測位置)との間の熱抵抗値である。
【0094】
このように構成される露点計10Aでは、以下のようにして測定空間S1の露点T
dが測定される。
【0095】
演算処理部30が恒温恒湿槽101を駆動させ、測定空間温度T
iを外部空間温度よりも高くすることにより、ヒートパイプ22の内側部22aと外側部22bとの間に温度差が形成される。これにより、ヒートパイプ22の内側部22aの熱が外側部22bに輸送され、伝熱板24を介して熱流センサ12の背面12bに前記熱が伝熱される。これにより、熱流センサ12の表面12aと背面12bとの間に温度差が形成され、ヒートパイプ22の内側部22aからの熱が熱流センサ12を通過して外部空間S2に放出される、即ち、熱流センサ12内を背面12bから表面12aに向けて通過する熱流が形成される。このとき、冷却ファン28が熱流センサ12の表面12aに向けて送風することにより熱流センサ12の表面12aから外部空間S2に放出される熱量が大きくなるため、外側部22bからの熱が効率よく外部空間S2に放出される。
【0096】
一方、ヒートパイプ22の内側部22aでは、当該内側部22aの熱が外側部22bに輸送されて外部空間S2に放出されるため、内側部22aの温度が低温となって測定空間S1内の熱が内側部22a内に入る。このとき、内側部22aが測定空間S1の露点以下となっているため、その表面に測定空間S1中に存在する水分が付着して凝縮し、結露が生じる。
【0097】
このようにして、測定空間S1内の熱がヒートパイプ22の内側部22aに入り、作動流体によって外側部22bまで輸送され、熱流センサ12を通じて外部空間S2に放出される(
図5参照)。
【0098】
このとき、演算部32は、第1温度検出部14が計測したヒートパイプ22の内側部22aの表面の温度T
eと第2温度検出部16が計測した測定空間温度T
iと熱流センサ12が計測した熱流量Q
eoとを第1温度信号、第2温度信号、及び熱流信号として受信し、これらと、記憶部31に格納されている関係式T
d1と熱抵抗値R
ieとを用いて測定空間の露点T
dを算出する。そして、出力部33が、演算部32によって算出された測定空間S1の露点T
dを表示(出力)する。
【0099】
以上説明したように、本実施形態の露点計10Aのように熱流センサ12を熱流形成部20Aの外部空間S2内に位置する部位に取り付けても、測定空間S1の露点T
dを計測することができる。しかも、熱流センサ12を外部空間S2内に配置することにより当該熱流センサ12への結露を防ぐことができ、その結果、熱流センサ12の結露による劣化を防止することができる。
【0100】
<第3実施形態>
図6は、本発明の第3実施形態による露点計を説明するための概略構成図であり、
図7は、
図6に示した露点計の熱流形成部及び熱流センサにおける熱の移動や熱抵抗を説明するための概念図である。次に、
図6及び
図7を参照して、本発明の第3実施形態による露点計の構成について説明するが、上記第1及び第2実施形態と同様の構成には同一符号を用いると共に詳細な説明を省略し、異なる構成についてのみ詳細に説明する。
【0101】
本実施形態の露点計10Bは、熱流センサ12と、熱流形成部20Bと、冷却ファン28と、第1温度検出部14と、第2温度検出部16と、演算処理部30とを備える。
【0102】
熱流形成部20Bは、第1及び第2実施形態と異なり、伝熱部材42と、ペルチェ素子44と、を備える。
【0103】
伝熱部材42は、熱流センサ12を挟んでペルチェ素子44の吸熱側部位44aと反対側に配置されると共に測定空間S1内に一部を露出させて測定空間S1内の熱を熱流センサ12を介して吸熱側部位44aに供給する。具体的に、伝熱部材42は、熱伝導率の高い素材で形成された柱状の部材であり、恒温恒湿槽101の側壁を構成する断熱壁100に形成された貫通孔100aに挿通されて一方の端部(ペルチェ素子44と反対側の端部)42aが測定空間S1内に突出(露出)するように配置される。この伝熱部材42の測定空間S1内に突出する端部42aと反対側の端部42bには、当該端部42bの端面に熱流センサ12の表面12aが接するように熱流センサ12が取り付けられる。尚、本実施形態では、伝熱部材42の一部が測定空間S1内に突出するように配置されているが、例えば、貫通孔100a内にペルチェ素子44を配置して伝熱部材42全体が測定空間S1内に突出(露出)するように配置されてもよい。
【0104】
ペルチェ素子44は、吸熱側部位44aが熱流センサ12を介して測定空間S1内の熱を吸熱可能で、且つ、放熱側部位44bが吸熱側部位44aによって吸熱された熱を外部空間S2へ放熱可能に配置される。具体的には、ペルチェ素子44は、外部空間S2において、吸熱側部位44aが熱流センサ12の背面12bと接するように熱流センサ12に取り付けられ、放熱側部位44bが外部空間S2に露出するように配置される。このペルチェ素子44は、演算処理部30と接続され、当該演算処理部30からの指示信号に基づいて駆動する。
【0105】
熱流センサ12は、外部空間S2内においてその背面12bがペルチェ素子44の吸熱側部位44aと熱伝導可能となるように当該ペルチェ素子44に取り付けられる。具体的に、熱流センサ12は、ペルチェ素子44と伝熱部材42との間に挟み込まれるように熱流形成部20Bに取り付けられる。尚、本実施形態では、熱流センサ12がペルチェ素子44に直接取り付けられているが、これに限定されず、例えば、ペルチェ素子44の吸熱側部位44aに伝熱部材(上記の伝熱部材42と異なる伝熱部材)が取り付けられ、この伝熱部材に熱流センサ12が取り付けられてもよい。
【0106】
第1温度検出部14は、伝熱部材42の測定空間S1内への突出側端部42aの端面に配置され、当該端面の温度を計測してその計測結果に応じた第1温度信号を出力する。
【0107】
演算処理部30の記憶部31に格納されている熱抵抗値R
ieは、測定空間S1内の所定位置(第2温度検出部16による温度計測位置)と伝熱部材42の測定空間S1内への突出側端部42aの端面(第1温度検出部14による温度計測位置)との間の熱抵抗値である。
【0108】
このように構成される露点計10Bでは、以下のようにして測定空間S1の露点T
dが測定される。
【0109】
演算処理部30がペルチェ素子44を駆動させると、吸熱側部位44aの熱が放熱側部位44bに輸送され、放熱側部位44bから外部空間S2に放出されることにより、熱流センサ12を介して伝熱部材42のペルチェ素子44側の端部42bが冷却され、測定空間S1内に突出している部位との間に温度差が形成される。これにより、測定空間S1内の熱が伝熱部材42の前記突出部位の表面から伝熱部材42の内部に入ってペルチェ素子側の端部42bへ移動し、熱流センサ12を通じてペルチェ素子44の吸熱側部位44aに供給される。このとき、熱流センサ12内を表面12aから背面12bに向けて通過する熱流が形成される。このとき、伝熱部材42の突出側端部42aが露点以下となりその端面に測定空間S1中に存在する水分が付着して凝縮し、結露が生じる。
【0110】
ペルチェ素子44の吸熱側部位44aに入った熱は、放熱側部位44bに輸送され、外部空間S2に放出される。このとき、演算処理部30が冷却ファン28を駆動し、放熱側部位44bに向けて送風することにより、測定空間S1からの熱が効率よく外部空間S2に放出される。
【0111】
このようにして、測定空間S1内の熱が伝熱部材42から熱流センサ12を通じてペルチェ素子44の吸熱側部位44aに供給され、放熱側部位44bから外部空間S2に放出される(
図7参照)。
【0112】
演算部32は、第1温度検出部14が計測した伝熱部材42の突出側端部42aの端面の温度T
eと第2温度検出部16が計測した測定空間温度T
iと熱流センサ12が計測した熱流量Q
eoとを第1温度信号、第2温度信号、及び熱流信号として受信し、これらと、記憶部31に格納されている関係式T
d1と熱抵抗値R
ieとを用いて測定空間の露点T
dを算出する。そして、出力部33が、演算部32によって算出された測定空間S1の露点T
dを表示(出力)する。
【0113】
以上説明したように、本実施形態の露点計10Bによれば、ペルチェ素子44を用いることにより、供給する電流量によって熱流センサ12を通過する熱流量を変更できるため、より広い湿度範囲において測定空間S1の露点T
dを測定することが可能となる。
【0114】
また、本実施形態の露点計10Bによれば、ペルチェ素子44が駆動することにより生じる熱を外部空間S2に放出することができるため、測定空間S1内の温度が制御し易くなる。しかも、放熱側部位44bが外部空間S2内に位置しているため、ペルチェ素子44が駆動することによって生じる熱をより効率よく外部空間に放出することができる。
【0115】
また、本実施形態の露点計10Bによれば、伝熱部材42を熱流センサ12よりも測定空間S1側に配置することによって熱流センサ12が測定空間S1内に露出しないようにして露点測定時の当該センサ12への結露を防ぎ、これにより、熱流センサ12の結露による劣化を防止することができる。
【0116】
<第4実施形態>
図8は、本発明の第4実施形態による露点計を説明するための概略構成図であり、
図9は、
図8に示した露点計の熱流形成部及び熱流センサにおける熱の移動や熱抵抗を説明するための概念図である。次に、
図8及び
図9を参照して、本発明の第4実施形態による露点計の構成について説明するが、上記第1〜第3実施形態と同様の構成には同一符号を用いると共に詳細な説明を省略し、異なる構成についてのみ詳細に説明する。
【0117】
本実施形態の露点計10Cは、熱流センサ12と、ペルチェ素子(熱流形成部)20Cと、第1温度検出部14と、第2温度検出部16と、演算処理部30とを備える。
【0118】
熱流センサ12は、測定空間S1内においてその背面12bがペルチェ素子20Cの吸熱側部位20Caと熱伝導可能となるように当該ペルチェ素子20Cに取り付けられる。尚、本実施形態では、熱流センサ12がペルチェ素子20Cに直接取り付けられているが、これに限定されず、例えば、ペルチェ素子20Cの吸熱側部位20Caに伝熱部材が取り付けられ、この伝熱部材に熱流センサ12が取り付けられてもよい。
【0119】
ペルチェ素子20Cは、第3実施形態と異なり、放熱側部位20Cbと吸熱側部位20Caに取り付けられた熱流センサ12とが測定空間S1内に位置するように配置される。即ち、ペルチェ素子20Cは、熱流センサ12が取り付けられた状態で、全体が測定空間S1内に位置するように配置される。
【0120】
第1温度検出部14は、ペルチェ素子20Cの吸熱側部位20Caにおける熱流センサ12と接する面に配置され、当該面の温度を計測してその計測結果に応じた第1温度信号を出力する。
【0121】
演算処理部30の記憶部31に格納されている熱抵抗値R
ieは、測定空間S1内の所定位置(第2温度検出部16による温度計測位置)とペルチェ素子20Cの吸熱側部位20Caにおける熱流センサ12と接する面(第1温度検出部14による温度計測位置)との間の熱抵抗値である。
【0122】
このように構成される露点計10Cでは、以下のようにして測定空間S1の露点T
dが測定される。
【0123】
演算処理部30がペルチェ素子44を駆動すると、吸熱側部位44aの熱が放熱側部位44bに輸送され、放熱側部位44bから測定空間S1内に放出されることにより、熱流センサ12の背面12bが冷却され、この背面12bと表面12aとの間に温度差が形成される。これにより、測定空間S1内の熱が熱流センサ12を通じてペルチェ素子44の吸熱側部位44aに吸熱される、即ち、熱流センサ12内を表面12aから背面12bに向けて通過する熱流が形成される。このとき、熱流センサ12の表面12aが露点以下となり測定空間S1中に存在する水分が付着して凝縮し、結露が生じる。
【0124】
ペルチェ素子44の吸熱側部位44aに入った熱は、放熱側部位44bに輸送され、測定空間S1に放出される。
【0125】
このようにして、測定空間S1内の熱が熱流センサ12を通じてペルチェ素子44の吸熱側部位44aに吸熱され、放熱側部位44bから測定空間S1に放出される(
図9参照)。
【0126】
このとき、演算部32は、第1温度検出部14が計測したペルチェ素子44の熱流センサ12が取り付けられた面の温度T
eと第2温度検出部16が計測した測定空間温度T
iと熱流センサ12が計測した熱流量Q
eoとを第1温度信号、第2温度信号、及び熱流信号として受信し、これらと、記憶部31に格納されている関係式T
d1と熱抵抗値R
ieとを用いて測定空間の露点T
dを算出する。そして、出力部33が、演算部32によって算出された測定空間S1の露点T
dを表示(出力)する。
【0127】
以上説明したように、本実施形態の露点計10Cによれば、熱を外部空間S2へ放出するための穴等を外部空間S2と測定空間S1とを隔てる断熱壁100等に設けることなく露点T
dの計測が可能となる。また、放熱側部位44bの熱を外部空間S2に放出しなくてもよいため、測定空間S1内におけるペルチェ素子44の配置の自由度が向上する。
【0128】
<第5実施形態>
図10は、本発明の第5実施形態による湿度計を説明するための概略構成図である。次に、
図10を参照して、本発明の第5実施形態による湿度計の構成について説明するが、上記第1〜第4実施形態と同様の構成には同一符号を用いると共に詳細な説明を省略し、異なる構成についてのみ詳細に説明する。
【0129】
本実施形態の湿度計50は、測定空間S1内の相対湿度を測定するものであり、上記第1実施形態の露点計10を構成する各構成要素に加え、さらに湿度演算処理部36を備える。尚、露点計の構成は、第1実施形態の露点計10に限定されず、第2〜第4実施形態の露点計10A、10B、10C等でもよい。
【0130】
湿度演算処理部36は、露点計10の演算部32(演算処理部30)により算出された露点T
dから測定空間S1の相対湿度Φを算出する。
【0132】
湿度演算処理部36は、以下の式(6)に演算部32により算出された露点T
dを代入することにより測定空間S1の絶対湿度X
iを算出する。
【0133】
【数6】
ここで、Pは、大気の全圧である。
【0134】
そして、湿度演算処理部36は、この絶対湿度X
iから測定空間S1の水蒸気分圧P
viを以下の式(7)に基づき算出する。
【0135】
【数7】
湿度演算処理部36は、空気温度と飽和水蒸気圧との関係を示すテーブルを有し、このテーブルと式(7)により算出した水蒸気分圧P
viとから、以下の式(8)に基づいて測定空間S1の相対湿度Φを算出する。
【0136】
【数8】
ここで、測定空間温度T
iでの飽和蒸気圧をP
vsとする。
【0137】
このように構成される湿度計50では、第1実施形態と同様にして演算部32が測定空間S1の露点T
dを算出することにより、これに基づいて湿度演算処理部36が測定空間S1の相対湿度Φを算出する。そして、出力部33が、演算部32によって算出された測定空間S1の露点T
d及び湿度演算処理部36によって算出された測定空間S1の相対湿度Φを表示(出力)する。尚、湿度計50は、相対湿度Φのみを表示するように構成されてもよい。
【0138】
この湿度計50によれば、熱流形成部20の温度T
e、測定空間温度T
i、及び熱流センサ12内を通過した熱流の熱流量Q
eoを計測することにより、広い湿度範囲において測定空間S1の露点T
dが精度よく求まるため、この露点T
dに基づき相対湿度Φを算出することにより、測定空間S1の相対湿度Φを精度よく求めることができる。
【0139】
また、本発明による湿度計50では、熱流センサ12、熱流形成部20、各温度検出部(第1温度検出部14、第2温度検出部16等)、及び演算処理部30を備える露点計10と、湿度演算処理部36とにより構成されるので、従来の鏡面冷却式露点計を用いた湿度計のように非常に多くの部材で構成されるものに比べて構造を簡略化することができる。しかも、従来の乾湿球湿度計のようにウィックを必要としないので、メンテナンスに係る作業負担を軽減することができる。
【0140】
尚、本発明の露点計及び湿度計は、上記第1〜第5実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0141】
第1温度検出部14は、熱流形成部20、20A、20B、20C又は熱流センサ12の温度を計測できる位置であれば、具体的な配置位置は限定されない。上記第1〜第5実施形態の露点計10、10A、10B、10Cにおいては、第1温度検出部14は、熱流形成部20、20A、20B、20Cの測定空間内に位置する部位の温度を計測しているが、この位置の温度に限定されない。例えば、第1及び第2実施形態の熱流形成部20、20Aにおけるヒートパイプ22の外側部22bやこの外側部22bに取り付けられた伝熱板24の温度でもよく、第3実施形態の熱流形成部20Bにおけるペルチェ素子44や伝熱部材42の熱流センサ12と接する面や伝熱部材42の内部等の温度でもよい。また、第1温度検出部14によって温度が計測される位置は、熱流センサ12の表面12aや背面12b等であってもよい。
【0142】
このように、第1温度検出部14によって温度T
eを計測する位置を上記第1〜第5実施形態における位置から変えても、露点T
dの導出に用いられる熱抵抗値R
ieを測定空間温度T
iを測定した位置と第1温度検出部14によって温度T
eを測定した位置との間の熱抵抗値とすることにより、関係式T
d1を用いて測定空間S1の露点T
dを精度よく算出することができる。
【0143】
また、上記第3及び第4実施形態のように、熱流形成部20B、20Cがペルチェ素子44を備える場合には、記憶部31に熱抵抗値R
ieを予め格納せずに、測定空間S1の露点T
dを測定するときに演算処理部30の演算部32等が熱抵抗値R
ieを求めてこれを用いるように構成されてもよい。
【0144】
具体的には、演算処理部30がペルチェ素子44に供給する電流を逆にして(即ち、熱流センサ12の背面12bに向けて熱を放出するようにして)結露しない条件下で熱流センサ12を通過する熱流の熱流量Q
eoを計測することにより、測定空間S1における第2温度検出部16での温度計測位置と熱流形成部20B、20Cにおける第1温度検出部14での温度計測位置との間の熱抵抗値R
ieを求めることができる。
【0145】
詳しくは、演算処理部30がペルチェ素子44に供給する電流を逆にすることにより、熱流センサ12を通じてペルチェ素子44から測定空間S1に熱が放出される。このときの熱流量Q
eoを熱流センサ12が計測する。そして、演算部32等が
【0146】
【数9】
に熱流センサ12により計測された熱流量Q
eoと、このときに第1温度検出部14及び第2温度検出部16によって検出された温度T
e、T
iとを代入することにより、熱抵抗値R
ieが求められる。演算部32は、これを記憶部31に格納する。その後、演算部32は、この記憶部31に格納された熱抵抗値R
ieを用いて、第3実施形態及び第4実施形態と同様にして、測定空間S1の露点T
dを求める。
【0147】
このように、熱流形成部20B、20Cがペルチェ素子44を備えることにより、予め熱抵抗値R
ieを演算や試験測定等を行って求めてこれをメモリ等の記憶部に記憶させておかなくても、露点T
dを測定することが可能となる。
【0148】
また、上記第3実施形態では、熱流センサ12を挟んでペルチェ素子44と反対側に伝熱部材42が配置されているが、この伝熱部材42を配置せずに熱流センサ12の表面12aが測定空間S1に露出する構成でもよい。
【0149】
また、熱伝導率の高い素材で形成された伝熱部材42に限定されず、内部に閉じ込められた作動流体によって内部の熱が移動するヒートパイプ方式の伝熱部材144が用いられてもよい(
図11参照)。かかる構成によれば、熱流形成部の熱容量が小さくなるため、応答性のよい露点計が得られる。
【0150】
また、上記第1〜第5実施形態においては、熱流センサ12及び熱流形成部20(20A、20B、20C)がそれぞれ1個ずつ配置されているが、
図12に示されるように、第1の熱流センサ112A及び第2の熱流センサ112Bと、第1の熱流センサ112Aが取り付けられる第1の熱流形成部120A及び第2の熱流センサ112Bが取り付けられる第2の熱流形成部120B(
図12においてはいずれもペルチェ素子)と、を備える構成でもよい。かかる構成によれば、第1〜第5実施形態における熱抵抗値R
ieを用いることなく、広い湿度範囲において測定空間S1の露点T
dを精度よく求めることができる。このため、第1の熱流形成部120Aによって第1の熱流センサ112A内を通過する熱流が形成されると共に第2の熱流形成部120Bによって第2の熱流センサ112B内を通過する熱流が形成されたときの各熱流センサ112A、112Bにおける熱収支に基づく関係式T
d2を準備しておけば、予め熱抵抗値R
ieを演算や試験測定等を行って求めてこれをメモリ等の記憶部31に記憶させておかなくてもよく、露点T
dの測定の際に実測によって得られる値(各熱流形成部120A、120Bの温度T
e、T
e’、測定空間S1の温度、及び各熱流センサ112A、112Bを通過した熱流の熱流量Q
eo、Q
eo’)から露点T
dを求めることが可能となる。
【0151】
具体的には、以下のようにして露点T
dが求められる。
【0152】
演算処理部30は、第1及び第2の熱流センサ112A、112B内を通過する熱流の熱流量Q
eo,Q
eo’が互いに異なる量となるように、各熱流形成部120A、120Bを制御する。具体的に、第1及び第2の熱流形成部120A、120Bがいずれもペルチェ素子の場合には、各ペルチェ素子に供給する電流量を互いに異なる量とする。そして、第1及び第2の熱流形成部120A、120B(又は第1及び第2の熱流センサ112A、112B)の温度を計測する第3温度検出部(温度検出部)は、第1及び第2の熱流形成部120A、120Bの温度(又は第1及び第2の熱流センサ112A、112Bの温度)T
e、T
e’をそれぞれ計測する。
【0153】
演算部32は、下記の関係式T
d2に第3温度検出部によって計測された各熱流形成部120A、120Bの温度T
e、T
e’と、各熱流センサ112A、112Bによって計測された熱流量Q
eo,Q
eo’と第2温度検出部16によって計測された測定空間温度T
iとを代入することにより露点を算出する。
【0154】
【数10】
尚、関係式T
d2は、以下のようにして求められる。
【0155】
第1及び第2の熱流センサ112A、112Bについて、それぞれ下記の式(11−1)と式(11−2)とが成立する。
【0156】
【数11】
これらの式(11−1)と式(11−2)とから、
【0158】
そして、式(12−1)=式(12−2)より、
【0160】
上記第1及び第2実施形態では、熱流センサ12は、ヒートパイプ22に設けられた伝熱板24に取り付けられているが、
図13に示されるような取付部23が形成されたヒートパイプ22に直接取り付けられてもよい。具体的に、ヒートパイプ22の外側部22bに熱流センサ12の背面12bと同一形状の取付面23aを有する取付部23が形成されている。そして、熱流センサ12の背面12bが取付面23aと接するように熱流センサ12がヒートパイプ22に取り付けられる。尚、熱流センサ12を測定空間S1内に配置する露点計の場合には、取付部23は、ヒートパイプ22の内側部22aに形成される。
【0161】
かかる構成によれば、熱流センサ12が取り付け易くなる。また、熱流センサ12の背面12bとヒートパイプ22の取付面23aとが接するように熱流センサ12をヒートパイプ22に取り付けることにより、他の伝熱部材等をヒートパイプ22と熱流センサ12との間に介在させる場合に比べて熱容量をより小さくでき、これにより、露点T
dを計測するときの応答速度を早くすることができる。